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  • 特許-放射線検出装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】放射線検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/20 20060101AFI20240111BHJP
   G01T 1/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01T1/20 C
G01T1/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020113227
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011840
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】598041566
【氏名又は名称】学校法人北里研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 成世
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智之
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0221724(US,A1)
【文献】特開2005-177469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 1/16
1/167- 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状に形成され、周方向における所定の照射方向から、側面を通じて入射されるX線の強度分布に応じた発光分布を示す発光体からなる本体部と、
円柱状に形成された前記本体部の側面全体に接しながらリング状に形成された部材であって、半径方向に所定の厚さを有してなるリング状構造物である遮蔽部と、
前記遮蔽部の内部において、円柱状に形成された前記本体部の中心軸線方向における位置、および、周方向における位置を互いに異ならせて配置された複数のX線検出部と、
を備え、
前記X線検出部は、その全体が、リング状構造物である前記遮蔽部の肉厚の内部に埋め込まれて配置される、
放射線検出装置。
【請求項2】
前記X線検出部は、前記X線の照射に応じて発光する発光体である、
請求項1に記載の放射線検出装置。
【請求項3】
前記X線検出部から発光された光を、前記中心軸線方向における端面に導くガイドファイバを更に備える、
請求項2に記載の放射線検出装置。
【請求項4】
前記X線検出部は、周方向の所定範囲において規定された配置パターンが、周方向に沿って繰り返し適用されている、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、放射線ビームの線量分布測定を高精度に行うことを狙いとした発明が開示されている。この発明は、平行平板電離箱の複数を積層状に保持するホルダーを備える。上記ホルダーは、平行平板電離箱のそれぞれの間に空間を形成するスペーサを有していることを特徴とする。このようにすることで、特許文献1は、積層状に配置された電離箱に基づいて、X線照射強度の三次元分布を正確に把握することができることを主張している(段落0008)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-042415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線量分布測定では均質なファントム(均質媒質)中の三次元的な線量分布を測定することが望ましい。しかし、平行平板電離箱を水中で積層する場合、検出器により放射線が大きく乱れ、正確な線量分布を測定することが困難である。また、検出器を配置する場所によって検出器のサイズが制限されて、空間分解能が制限され得る。
上記の問題を解決できる線量分布測定器として、小型の電離箱線量計やさらに検出器のサイズが小さい半導体検出器を二次元平面に複数配置した形状(二次元線量分布測定器)の線量分布測定器が知られている。この線量分布測定器により三次元線量分布を測定するには、放射線ビーム照射中に二次元線量分布測定器を水中で操作すれば取得できる。しかし、このような測定は時間を要するため、時間とともに放射線のビーム強度や照射野を変化させる強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy,IMRT)といった高精度放射線治療の三次元線量分布を測定することが困難である。
本発明の目的は、上述した課題を解決する放射線検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る放射線検出装置は、照射されるX線の強度分布に応じた発光分布を示す発光体からなる本体部と、本体部を周方向全体に渡り囲むように形成され、本体部に入射される外光を遮蔽する遮蔽部と、遮蔽部の内部において、本体部の中心軸線方向における位置、および、周方向における位置を互いに異ならせて配置された複数のX線検出部と、を備える。
また、放射線検出装置のX線検出部は、X線の照射に応じて発光する発光体である。
また、放射線検出装置は、X線検出部から発光された光を、中心軸線A方向における端面に導くガイドファイバを更に備える。
また、放射線検出装置のX線検出部は、周方向の所定範囲において規定された配置パターンが、周方向に沿って繰り返し適用されている。
【発明の効果】
【0006】
上記態様のうち少なくとも1つの態様によれば、放射線の線量分布を、高精度に、深さ方向も含めた三次元的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る線量分布計測システムの全体構成を示す図である。
図2】一実施形態に係るファントムの構成を示す図である。
図3】一実施形態に係るファントムの構成を示す図である。
図4】一実施形態に係る線量分布計測システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《線量分布計測システムの全体構成》
以下、図面を参照しながら線量分布計測システム1の全体構成について詳しく説明する。
図1は、線量分布計測システム1の全体構成を示す図である。
線量分布計測システム1は、放射線治療装置Xが照射する放射線の線量分布を計測する。放射線治療装置が照射する放射線の例としては、X線と、γ線が挙げられる。また、放射線治療装置Xは高精度放射線治療に用いられる。高精度放射線治療の例としては、強度変調放射線治療と、強度変調回転照射法(Volumetric Modulated Arc Therapy,VMAT)が挙げられる。
【0009】
図1には示すように、線量分布計測システム1は、放射線治療装置XのカウチX1に設置される。
線量分布計測システム1は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ2と、ファントム3と、制御装置(図示しない)とを有する。ファントム3は、放射線検出装置の一例である。
【0010】
CCDカメラ2は、撮像素子としてCCDイメージセンサー(図示しない)を備える。CCDイメージセンサーは光を電気信号に変換する。CCDカメラ2は、カメラの光軸がファントム3の中心軸線Aに一致するように配置される。
ファントム3は、放射線治療装置XにおけるガントリX2に囲まれる位置に配置される。
【0011】
放射線治療装置XのガントリX2は、その内側に向けてX線を照射する機構である。ガントリX2が回転することで、X線の照射方向が変更される。ここで、ファントム3の中心軸線Aは、ガントリX2によるX線の回転軸線に一致するように配置される。また、XガントリX2は、カウチX1に対し並進移動可能とされる。これにより、放射線治療装置Xは、X線の照射方向を中心軸線A周りに回転させながら、さらに深さ方向(中心軸線A方向)における並進移動を行うことができる。このようなX線照射に対する操作(照射方向の回転、並進移動)は、患者個別に定められた治療計画(X線の照射範囲)に基づいて事前に定義される。治療計画は事前に制御装置の記憶部(図示しない)に記録される。
【0012】
《ファントムの構成》
図2及び図3は、ファントム3の構成を示す図である。
ファントム3は、放射線治療装置Xが照射するX線を検出して発光する。
図2及び図3に示すように、ファントム3は、本体部30と、遮蔽部31と、X線検出部32と、ガイドファイバ33とを備える。
【0013】
本体部30は円柱形状に形成され、シンチレータから構成される。なお、本体部30は円柱形状のものに限定されない。シンチレータは発光体の一例である。シンチレータを構成する発光物質はX線に係る入射粒子との衝突により、そのエネルギーを吸収して発光する。そのため、シンチレータは、ガントリX2により照射されるX線の強度分布に応じて発光分布を示すことができる。シンチレータの例としては、プラスチックシンチレータが挙げられる。プラスチックシンチレータは、炭素、水素、酸素などの低原子番号元素から構成される。そのため、プラスチックシンチレータは、高原子番号元素を含む物質に比べると放射線の検出の精度が高い。
【0014】
遮蔽部31は本体部30を周方向全体に渡り一定の厚さで囲むように形成され、本体部30に入射される外光を遮蔽する。なお、遮蔽部31は一定の厚さのものに限定されない。遮蔽部31の例としては、黒色のアクリル製のリング状構造物が挙げられる。遮蔽部31を黒色とすることにより、遮蔽部31の外光の遮蔽性能を高めることができる。遮蔽部31が本体部30に入射される外光を遮蔽するため、遮蔽部31の内部で発光する光は、照射されたX線を吸収してシンチレータが発光した光である。
【0015】
図2及び図3に示すように、X線検出部32は、遮蔽部31の内部において、本体部30の中心軸線A方向における位置、および、周方向における位置を互いに異ならせて配置される。また、X線検出部32は、X線の照射に応じて発光するシンチレータである。シンチレータの例としては、小型プラスチックシンチレータが挙げられる。また、図2及び図3に示すように、X線検出部32は、周方向の所定範囲において規定された配置パターンが、周方向に沿って繰り返し適用される。図2及び図3に示す配置パターンは一例であり、配置パターンはこれに限定されない。なお、図3に示すファントム3に係る寸法及び角度は一例であり、ファントム3に係る寸法及び角度はこれに限定されない。
【0016】
ガイドファイバ33は、X線検出部32と接続し、X線検出部32から発光された光を、中心軸線A方向における端面(発光面33a)に導く。ガイドファイバ33の例としては、アクリル製の円筒状の棒が挙げられる。中心軸線A方向におけるX線検出部32の位置が異なるため、ガイドファイバ33の長さDは、接続するX線検出部32ごとに異なる。ガイドファイバ33は、遮蔽部31の内部でX線検出部32が発光する光を、遮蔽部31の端面まで導く。これにより、線量分布計測システム1は、遮蔽部31の外部において、X線検出部32が遮蔽部31の内部で発光した光を検出することができる。なお、ガイドファイバ33が導く光は、中心軸線A方向に異なる位置に存在するX線検出部32が発光した光である。そのため、線量分布計測システム1は、CCDカメラ2とファントム3が対向する2次元の端面に係る光だけでなく、当該端面の奥側で発光した光も検出することができる。すなわち、線量分布計測システム1は、中心軸線A方向の位置がそれぞれ異なるX線検出部32のうちどのX線検出部32が発光しているかを判別することで、深さ方向の次元を含む3次元光分布を検出することができる。また、CCDカメラ2の3次元光分布の撮像により、線量分布計測システム1は3次元線量分布を計測することができる。
【0017】
《制御装置の構成》
制御装置は、CCDカメラ2に信号を送り、CCDカメラ2がファントム3の端面(CCDカメラと対向するファントム3の端面)を撮像するように制御する。これにより、CCDカメラ2は、3次元線量分布を示す画像を撮像する。
【0018】
制御装置は、記憶部が記憶している治療計画に基づいて、中心軸線AにおけるガントリX2の位置(以下、前後位置と称する)を制御する。また、制御装置は、記憶部が記憶している治療計画に基づいて、ファントム3の周方向においてガントリX2がX線を照射する位置(以下、照射位置と称する)を制御する。
【0019】
制御装置は、CCDカメラ2から撮像した3次元線量分布を示す画像と、当該画像が撮像された時間(以下、撮像時間と称する)と、当該撮像時間の前後位置と、当該撮像時間の照射位置とを対応付けて、計測情報として記憶部(図示しない)に記録する。このように、制御装置は、3次元線量分布と撮像時間とを対応付けて記録するため、時間の次元を含む4次元線量分布を計測することができる。制御装置の記録により、記憶部は複数の4次元線量分布に係る計測情報を記憶することになる。
【0020】
制御装置はディスプレイ装置(図示しない)に治療計画と、対応する計測情報を出力する。ディスプレイ装置の表示により、線量分布計測システム1のユーザはリアルタイムで計測された4次元線量分布を把握することができる。なお、線量分布計測システム1のユーザは表示された治療計画に係る画像と計測情報に係る画像とを比較することにより、治療計画に基づく放射線治療装置XのX線の放射の精度を把握することができる。なお、放射の精度が低い場合、線量分布計測システム1のユーザは、治療計画と計測情報を照らし合わせて、低い精度に係る計測情報に対応付けられた照射位置及び前後位置を特定することができる。これにより、線量分布計測システム1のユーザは、低い放射の精度に係るガントリX2の動作を特定することができる。
【0021】
《線量分布計測システムの動作》
以下、線量分布計測システム1の動作について説明する。
図4は、線量分布計測システム1の動作を示すフローチャートである。
【0022】
制御装置は、事前に記録された治療計画に基づいて、放射線治療装置Xを動作させる(ステップS1)。具体的には、制御装置は治療計画に基づいて、ガントリX2を動作させてガントリX2の照射位置及び前後位置を変化させる。
【0023】
制御装置は、ガントリX2からファントム3にX線を照射させる(ステップS2)。
本体部30及びX線検出部32は、ステップS2により照射されたX線を吸収して発光する(ステップS3)。
ガイドファイバ33は、ステップS3により発光した光をファントム3とCCDカメラ2とが対向する端面に導く(ステップS4)。
【0024】
CCDカメラ2は、ファントム3とCCDカメラ2とが対向する端面を撮像する(ステップS5)。これにより、CCDカメラ2は光を電気信号に変換することにより、3次元線量分布に係る画像を撮像できる。上記光とは、ステップS3で本体部30が発光した光である。
制御装置は、ステップS5で撮像された3次元線量分布を示す画像と、撮像時間と、撮像時間の前後位置と、撮像時間の照射位置を対応付けて計測情報として記憶部に記録する(ステップS6)。これにより、制御装置は撮像時間を含む4次元線量分布を計測できる。
【0025】
制御装置は、ステップS6で計測した計測情報を、対応する治療計画とともにディスプレイ装置に出力する(ステップS7)。これにより、線量分布計測システム1のユーザは4次元線量分布をリアルタイムで把握することができる。
【0026】
なお、上記のステップS1からステップS7までの動作は、治療計画に基づいて繰り返して行われる。
【0027】
《作用・効果》
本発明に係る放射線検出装置は、照射されるX線の強度分布に応じた発光分布を示す発光体からなる本体部30と、本体部30を周方向全体に渡り囲むように形成され、本体部30に入射される外光を遮蔽する遮蔽部31と、遮蔽部31の内部において、本体部30の中心軸線A方向における位置、および、周方向における位置を互いに異ならせて配置された複数のX線検出部32と、を備える。
【0028】
本体部30の中心軸線A方向における位置、および、周方向における位置を互いに異ならせて配置されたX線検出部32は、X線の強度分布を検出する。これにより、放射線検出装置は、放射線の線量分布を、高精度に、深さ方向も含めた三次元的に把握することができる。
【0029】
また、放射線検出装置のX線検出部32は、X線の照射に応じて発光する発光体である。
発光体は放射されたX線により発光する。放射線検出装置は発光した光に基づいて、放射線の線量分布を、高精度に、深さ方向も含めた三次元的に把握することができる。
【0030】
また、放射線検出装置は、X線検出部32から発光された光を、中心軸線A方向における端面に導くガイドファイバ33を更に備える。
ガイドファイバ33は、X線検出部32より発光した光を端面に導く。これにより、放射線検出装置は、端面に導かれた光に基づいて、放射線の線量分布を、高精度に、深さ方向も含めた三次元的に把握することができる。
【0031】
また、放射線検出装置のX線検出部32は、周方向の所定範囲において規定された配置パターンが、周方向に沿って繰り返し適用されている。
放射線検出装置は、繰り返して適用された配置に係るX線検出部32が発光した光に基づいて、放射線の線量分布を、高精度に、深さ方向も含めた三次元的に把握することができる。
【0032】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
上述した実施形態に係る制御装置は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、制御装置の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで制御装置として機能するものであってもよい。このとき、制御装置を構成する一部のコンピュータが作業機械の内部に搭載され、他のコンピュータが作業機械の外部に設けられてもよい。
【0033】
上述した実施形態に係るX線検出部32は、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るX線検出部32は、当該X線検出部32に接続するガイドファイバ33の長さDごとに、異なる色の光を発しても良い。この場合、線量分布計測システム1は、X線検出部32が発光した光の色に基づいて、深さ方向のX線の線量分布を計測することができる。
【0034】
上述した実施形態に係るX線検出部32及びガイドファイバ33は、これに限られない。例えば、他の実施形態に係るX線検出部32及びガイドファイバ33は、ファントム3の中心方向に複数の列で構成されても良い。例えば、線量分布計測システム1は、X線検出部32及びガイドファイバ33をファントム3の中心方向に2列で構成しても良い。線量分布計測システム1は、ファントム3の中心方向に並ぶ2列のX線検出部32を、中心軸線A方向に異なる位置になるようにすることで、より精度高くガントリX2から放射されたX線を検出できる。
【符号の説明】
【0035】
1 線量分布計測システム
2 CCDカメラ
3 ファントム
30 本体部
31 遮蔽部
32 X線検出部
33 ガイドファイバ
33a 発光面
X 放射線検出装置
X1 カウチ
X2 ガントリ
A 中心軸線
図1
図2
図3
図4