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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】ケース付きガス栓
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/12 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
F16K27/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020121467
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018384
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000151977
【氏名又は名称】株式会社藤井合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】西川 忠良
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-077374(JP,U)
【文献】特開2015-034614(JP,A)
【文献】実開平03-080179(JP,U)
【文献】特開2018-040439(JP,A)
【文献】特開2001-279741(JP,A)
【文献】特開2019-215036(JP,A)
【文献】米国特許第04230345(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00 - 27/12
F16K 35/00 - 35/16
F16L 37/00 - 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス栓本体の上流端に配管接続用の配管接続部が、下流端にソケット接続用のプラグ部がそれぞれ備えられたガス栓にケース体を被覆させると共に、前記プラグ部が下に向く姿勢で壁面に固定させるケース付きガス栓において、
前記ケース体は、背面が壁面に固定され且つ前記ガス栓本体の胴部を少なくとも正面側から両側方にかけて包囲すると共にその下方開放部から前記プラグ部がソケットを着脱可能に露出する固定ケースと、前記壁面に平行な揺動軸に揺動可能に軸支され且つ前記固定ケースの下方開放部を開閉自在な揺動ケースとからなり、
前記揺動ケースは、前記固定ケースの下方開放部を閉塞させた閉塞姿勢にて、前記ガス栓本体の正面側から前記プラグ部の下方にかけて円弧状に包囲する包囲板部とその両側に連設され且つ前記プラグ部の両側方を包囲する側板部とからなり、
前記揺動ケースの閉塞姿勢にて、前記ガス栓本体の正面側に対応する前記包囲板部の一端に切欠部が開放すると共に、前記切欠部を外側から被覆し且つ前記包囲板部の円弧に沿った断面円弧状のカバー部が前記固定ケースの前記下方開放部より下方へ延設され、
前記揺動ケースを、前記閉塞姿勢から、前記固定ケースの下方開放部を開放させる開放姿勢へ揺動させると、前記揺動ケース全体が前記固定ケース内に収容されると共に、前記切欠部内に前記ガス栓本体の胴部が嵌まり込み、
前記揺動ケースの揺動支点は、前記プラグ部の軸線よりも壁面側に設けられ且つ前記揺動ケースの重心の位置は、前記揺動支点より壁面から離れた位置に設けられているケース付きガス栓。
【請求項2】
請求項1に記載のケース付きガス栓において、前記揺動ケースの開放姿勢にて、前記揺動ケースと前記固定ケースの相互に対向する各位置に、ロック状態にて前記揺動ケースを前記開放姿勢に維持し、ロック解除状態にて前記揺動ケースを前記閉塞姿勢へ揺動可能とする開ロック機構が設けられているケース付きガス栓。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のケース付きガス栓において、前記揺動ケースの閉塞姿勢にて、前記揺動ケースと前記固定ケースの相互に対向する各位置に、ロック状態にて前記揺動ケースを前記閉塞姿勢に維持し、ロック解除状態にて前記揺動ケースを前記開放姿勢へ揺動可能とする閉ロック機構が設けられているケース付きガス栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース付きガス栓、特に、壁面に固定されるケース付きガス栓に関する。
【背景技術】
【0002】
ソケット接続用のプラグ部が下を向く姿勢で壁面に固定されたケース付きガス栓として、特開2018-44671号に開示のものがある。
このものは、上流側の配管接続部から下流側のプラグ部に至る直線状のガス流路が形成されたガス栓に、壁面に取付板を介して固定される上下開放の固定ケースと、前記固定ケースの下方に、上下に摺動可能に設けられた上下開放の可動ケースとからなるケース体を被覆させたもので、前記固定ケースの上方開放部からは前記配管接続部が突出し、可動ケースの下方開放部からソケットを挿入させて前記プラグ部に接続させる構成となっている。
【0003】
なお、前記可動ケースの内壁には、ソケットの挿入時にソケットの先端の進退スリーブが当接する押圧部が設けられており、前記ソケットを前記ケース体の前記下方開放端に差し込むと、進退スリーブは押圧部を押圧しながら可動ケースを上方へ押し上げる。ソケットがプラグ部に接続されると、前記進退スリーブは上方に進出し、前記可動ケースは押し上げられた状態のまま、ソケットとプラグ部との係合が保持される。そして、この状態の可動ケースを下方へ押し下げると、進退スリーブが前記押圧部に押されて後退し、これにより、プラグ部との係合が解除されて、ソケットはプラグ部から取り外される。
【0004】
この従来のケース付きガス栓では、ケース体によりガス栓を屋外の直射日光や風雨から保護することができる上に、プラグ部に接続状態にあるソケットは、可動ケースを降下させることでプラグ部との係合を解除して取り外すことが出来るから、プラグ部に接続させたソケットを取り外すためのソケット取外し機構を別途搭載させる必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-44671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ソケットをプラグ部に接続させていないガス栓の不使用状態では、上記ケース体の下方開放部は開放したままであるから、屋外設置型のガス栓では、前記下方開放部からケース体内に、土埃や雨水の跳ね返りや虫等の異物が侵入することによりプラグ部が汚損されたり、又は、故意にいたずらされたりするおそれがある。よって、上記した従来のケース付きガス栓では、ソケットを接続させない不使用状態においては、プラグ部の保護が不十分であった。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、壁面に固定させるケース付きガス栓において、ソケットがプラグ部に接続されていないガス栓の不使用状態でも、プラグ部を含むガス栓全体を確実に保護することができるケース付きガス栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために講じた本発明の解決手段は、
ガス栓本体の上流端に配管接続用の配管接続部が、下流端にソケット接続用のプラグ部がそれぞれ備えられたガス栓にケース体を被覆させると共に、前記プラグ部が下に向く姿勢で壁面に固定させるケース付きガス栓において、
前記ケース体は、背面が壁面に固定され且つ前記ガス栓本体の胴部を少なくとも正面側から両側方にかけて包囲すると共にその下方開放部から前記プラグ部がソケットを着脱可能に露出する固定ケースと、前記壁面に平行な揺動軸に揺動可能に軸支され且つ前記固定ケースの下方開放部を開閉自在な揺動ケースとからなり、
前記揺動ケースは、前記固定ケースの下方開放部を閉塞させた閉塞姿勢にて、前記ガス栓本体の正面側から前記プラグ部の下方にかけて円弧状に包囲する包囲板部とその両側に連設され且つ前記プラグ部の両側方を包囲する側板部とからなり、
前記揺動ケースの閉塞姿勢にて、前記ガス栓本体の正面側に対応する前記包囲板部の一端に切欠部が開放すると共に、前記切欠部を外側から被覆し且つ前記包囲板部の円弧に沿った断面円弧状のカバー部が前記固定ケースの前記下方開放部より下方へ延設され、
前記揺動ケースを、前記閉塞姿勢から、前記固定ケースの下方開放部を開放させる開放姿勢へ揺動させると、前記揺動ケース全体が前記固定ケース内に収容されると共に、前記切欠部内に前記ガス栓本体の胴部が嵌まり込み、
前記揺動ケースの揺動支点は、前記プラグ部の軸線よりも壁面側に設けられ且つ前記揺動ケースの重心の位置は、前記揺動支点より壁面から離れた位置に設けられていることである。
【0009】
上記手段は次のように作用する。
固定ケースと揺動ケースとからなるケース体をガス栓本体に装着させた状態で、プラグ部が下方を向く姿勢で壁面にネジ止め等により固定する。プラグ部にソケットを接続させないガス栓の不使用時には、ガス栓本体の胴部は固定ケースに、プラグ部は閉塞姿勢にある揺動ケースで全体的に包囲された状態となる。この閉塞姿勢において、揺動ケースの包囲板部に設けた切欠部は、固定ケースの下方開放部から下方に延設させたカバー部によって外から被覆される構成となっているから、切欠部が外部に開放することない。
前記閉塞姿勢にある揺動ケースを開放方向に揺動させると、前記揺動ケースの包囲板部の円弧状外面が固定ケースのカバー部の円弧状内面に沿って、前記揺動ケースは固定ケース内にスムーズに収容されていくと共に、その最終揺動位置にて、ガス栓本体の胴部が前記切欠部に嵌まり込む。このように、ガス栓本体が揺動ケースの揺動の邪魔になることなく、揺動ケースを開放姿勢とすることができ、固定ケースの下方開放部からプラグ部を露出することができる。
揺動ケースの開放姿勢にて、プラグ部はソケットを着脱可能な状態に固定ケースの下方開放部から露出しているから、ソケットはプラグ部に接続し易く、また、ソケットをプラグ部から取り外す際には、指で接続解除の操作が可能である。
開放姿勢にある揺動ケースの揺動支点は、前記プラグ部の軸線よりも壁面側に設けられ且つ前記揺動ケースの重心の位置は前記揺動支点より壁面から離れた位置に設けられているから、ソケットを取外すと、揺動ケースは自重により下方へ揺動し、閉塞姿勢に戻る。
【0010】
上記ケース付きガス栓において、好ましくは、『前記揺動ケースの開放姿勢にて、前記揺動ケースと前記固定ケースの相互に対向する各位置に、ロック状態にて前記揺動ケースを前記開放姿勢に維持し、ロック解除状態にて前記揺動ケースを前記閉塞姿勢へ揺動可能とする開ロック機構が設けられている』ことである。
揺動ケースは、開ロック機構により前記開放姿勢を維持することができるから、プラグ部へのソケットの脱着作業時に揺動ケースが不用意に閉塞方向に揺動することがない。よって、プラグ部へのソケットの脱着の際に、揺動ケースが邪魔になることなく、容易に且つ確実にソケットの脱着を行うことができる。
プラグ部からソケットを取り外した後に、前記開ロック機構のロックを解除すれば、揺動ケースが自重により固定ケースの下方開放端を閉塞する方向に揺動し、閉塞姿勢となる。
【0011】
上記ケース付きガス栓において、好ましくは、『前記揺動ケースの閉塞姿勢にて、前記揺動ケースと前記固定ケースの相互に対向する各位置に、ロック状態にて前記揺動ケースを前記閉塞姿勢に維持し、ロック解除状態にて前記揺動ケースを前記開放姿勢へ揺動可能とする閉ロック機構が設けられている』ことである。
揺動ケースは、閉ロック機構により前記閉塞姿勢を維持する状態にロックされるから、ガス栓が不使用状態にあるとき、前記揺動ケースが外的衝撃やいたずら等により不用意に開放する不都合を防止でき、ガス栓を確実に保護することができる。
ガス栓の使用時には、前記閉ロック機構のロック状態を解除すれば、揺動ケースは揺動させることができるので、プラグ部にソケットを接続させて使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、揺動カバーを閉塞姿勢とすることで、プラグ部を含むガス栓全体をケース体で覆うことができるから、このケース付きガス栓を屋外の壁面に固定した場合に、直射日光や風雨からガス栓を保護することができる上に、土埃や塵芥、又は、虫等がケース体内に侵入したり、故意にいたずらされたりするのを防止できる。よって、不使用状態におけるガス栓全体を確実に保護することができる。
また、揺動ケースは、円弧状の包囲板部が固定ケースの断面円弧状のカバー部に沿って揺動すると共に、開放姿勢にて、揺動ケースに設けた切欠部に、固定ケース内のガス栓本体の胴部に嵌まり込む構成としたから、固定ケース内への揺動ケースの収容のために大きなスペースが不要となり、ケース体全体をコンパクトに構成することができる。これにより、壁面に取り付けたとき、ケース体は壁面から大きく突出することがないから、邪魔になったり障害となったりすることがない。
また、プラグ部からソケットを取り外すと、開放姿勢にある揺動ケースは自重により閉塞姿勢となる構造としたから、固定ケースの下方開放端を閉塞し忘れる不都合がなく、不使用時におけるガス栓をケース体で確実に覆って保護することができる。
さらに、ソケットをプラグ部に接続した状態において、プラグ部とソケットの接続部の正面側は、カバー部で覆われる態様となるから、前記接続部の保護も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願発明の第1番目の実施の形態のケース付きガス栓の分解斜視図である。
図2】本願発明の第1番目の実施の形態のケース付きガス栓の揺動ケースを閉塞姿勢とした状態を示す斜視図である。
図3】本願発明の第1番目の実施の形態のケース付きガス栓の揺動ケースを開放姿勢とした状態を示す説明図である。
図4】本願発明の第2番目の実施の形態のケース付きガス栓の揺動ケースを閉塞姿勢とした状態を示す斜視図である。
図5】本願発明の第2番目の実施の形態のケース付きガス栓の揺動ケースを開放姿勢とした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態にて採用したガス栓は、図1に示すように、直線状のガス流路を有するガス栓本体(3)の下流端にソケット接続用のプラグ部(3a)が接続され、上流端に継手を介してフレキ配管(図示せず)が接続される配管接続部(3b)が備えられているもので、ガス栓本体(3)の背面側には、壁面にネジ止めするためのネジ挿通孔(30)を有する固定板(31)が備えられている。
【0015】
上記したガス栓を覆うケース体(100)は、ガス栓本体(3)を覆う固定ケース(1)と、その下方に揺動自在に軸支されている揺動ケース(2)とからなり、固定ケース(1)は、その背面側に配設させる背面板(11)を介して、ガス栓本体(3)の固定板(31)と共に、プラグ部(3a)が下を向く姿勢で、壁面(W)にネジ止めにより固定される。
なお、この実施の形態では、ガス栓本体(3)の正面側を前方、背面側を後方と言う。
【0016】
固定ケース(1)は、図1に示すように、ガス栓本体(3)の正面側を覆う正面板(1a)と、正面板(1a)の両側に連続し且つガス栓本体(3)の両側面を覆う一対の側面板(1b)とから、上下方及び後方に開放する横断面略コ字状体に形成されており、正面板(1a)の下方には、両側面板(1b)の下端よりも下方へ円弧状に延びるカバー部(10)が延設されている。
【0017】
固定ケース(1)の背面に具備させる背面板(11)は、配管接続部(3b)を挿通可能な挿通孔(110)が形成された頂面板(11a)と、その後辺から垂下して壁面(W)に添設させる添設板(11b)とからなり、頂面板(11a)が固定ケース(1)の上端開放部に嵌め込まれると共に、固定ケース(1)の後方開放端に設けられた複数の係合部(41)を、それらに対応する添設板(11b)の両側各位置に設けられている被係合部(40)に係合させることにより、固定ケース(1)の背面側に背面板(11)が組み付けられる。
なお、固定ケース(1)の両側面板(1b)の後方下端の対向位置には、揺動軸(14)が内方に突設されている。
【0018】
揺動ケース(2)は、ガス栓本体(3)の下部域からプラグ部(3a)の下方にかけて円弧状に包囲する包囲板部(2a)とその両側に連設され且つプラグ部(3a)の両側方を包囲する一対の側板部(2b)とからなり、図1及び図2の姿勢における揺動ケース(2)の側板部(2b)の後方上端部には、前述した固定ケース(1)の揺動軸(14)を挿通可能な軸孔(24)が貫通している。包囲板部(2a)の一端である前端中央部には、切欠部(20)が開放しており、後端中央部には、図3に示すような係止突片(21)が突設されている。
なお、切欠部(20)は、ガス栓本体(3)の胴部(33)が嵌まり込み可能な大きさに形成されている。
【0019】
このケース体(100)をガス栓に装着させるには、まず、固定ケース(1)の揺動軸(14)を揺動ケース(2)の軸孔(24)に挿通させて、揺動ケース(2)を固定ケース(1)の下方に揺動可能に軸支する。包囲板部(2a)は、揺動ケース(2)の揺動半径に沿った円弧状に形成されており、固定ケース(1)の正面板(1a)の下端近傍からカバー部(10)にかけての円弧状内面は、包囲板部(2a)の外面に沿った円弧に形成されている。
【0020】
そして、背面板(11)の頂面板(11a)に設けられている挿通孔(110)に、ガス栓の配管接続部(3b)を下方から挿通し、固定板(31)のネジ挿通孔(30)を、添設板(11b)のネジ挿通孔(13)に合わせて、前方から取付ネジ(43)を挿通させて、壁面(W)の所定個所にネジ止めする。ネジ挿通孔(13)(30)は、図示されていないが、それぞれ左右一対ずつ設けられているものとする。
その後、背面板(11)の被係合部(40)に、固定ケース(1)の係合部(41)を前方から係合させることにより、図2及び図3に示すように、ケース付きガス栓を壁面(W)に取り付けることができる。なお、壁面(W)へ取り付けられた態様にて、固定ケース(1)の揺動軸(14)は、壁面(W)に平行に位置する態様となっている。
【0021】
図2は、揺動ケース(2)で固定ケース(1)の下方開放部を閉塞させた閉塞姿勢を示しており、配管接続部(3b)を除くガス栓全体が固定ケース(1)と揺動ケース(2)とで覆われた状態となっている。なお、切欠部(20)が形成されている揺動ケース(2)の包囲板部(2a)の前端中央部から両側板部(2b)の前方域にかけて、固定ケース(1)から延設されたカバー部(10)で覆われている。すなわち、揺動ケース(2)の閉塞姿勢においては、ガス栓本体(3)及びプラグ部(3a)の全体がケース体(100)で被覆されることとなり、屋外の壁面(W)に取り付けられた場合であっても、不使用状態にあるガス栓を直射日光や風雨から確実に保護することができる上に、土埃や塵芥、又は、虫等がケース体内に侵入したり、故意にいたずらされたりする不都合も防止できる。よって、ガス栓全体を確実に保護することができる。
【0022】
なお、この閉塞姿勢において、図示しないが、揺動ケース(2)の後端中央部に突設させた係止突片(21)が、背面板(11)の添設板(11b)の下端中央部に強制的に押し込まれて係止される寸法関係に設定されている。すなわち、この実施の形態では、揺動ケース(2)の係止突片(21)と添設板(11b)の下端が、発明特定事項としての閉ロック機構として機能することとなり、係止突片(21)を背面板(11)の添設板(11b)の下端に強制的に押し込んで係止させることにより、揺動ケース(2)は閉塞姿勢に維持され、外的衝撃等により不用意に開放することはない。
【0023】
揺動ケース(2)の両側板部(2b)を指で挟んで手前側に引っ張れば、係止突片(21)と添設板(11b)の下端との係合を解除することができ、揺動ケース(2)を、固定ケース(1)の揺動軸(14)を揺動支点として、開放姿勢へ向けて揺動させることができる。
揺動に伴って、揺動ケース(2)の包囲板部(2a)の円弧状外面が、固定ケース(1)の正面板(1a)の円弧状内面に沿いながら、揺動ケース(2)は固定ケース(1)内に収容されていき、揺動ケース(2)の包囲板部(2a)に形成された切欠部(20)にガス栓本体(3)の胴部(33)が嵌まり込むことで、揺動ケース(2)を最終揺動地点まで揺動させて固定ケース(1)の下方開放部を開放させることができる。
【0024】
この開放姿勢において、揺動ケース(2)の包囲板部(2a)の円弧状外面が、固定ケース(1)の正面板(1a)の円弧状内面に圧接する態様となるように相互の円弧の大きさを設定しておけば、揺動ケース(2)から手を放しても、揺動ケース(2)が自重により閉塞姿勢へ戻ることはなく、開放姿勢にロックされた状態となる。すなわち、揺動ケース(2)の包囲板部(2a)の円弧状外面と、固定ケース(1)の正面板(1a)の円弧状内面とが、揺動ケース(2)を開放姿勢に維持する発明特定事項としての開ロック機構として機能するように設定されている。
【0025】
前記開ロック機構により、揺動ケース(2)を開放姿勢にロックしておけば、固定ケース(1)の下方、特に、側板部(1b)の下方にプラグ部(3a)を露出させた状態が維持されるから、揺動ケース(2)が邪魔になることなく、プラグ部(3a)にソケット(4)を脱着させ易い。
なお、ソケット(4)をプラグ部(3a)に脱着させ易いように、背面板(11)の内面中央には、図1及び図3に示すように、浅い凹み部(15)が形成されている。
【0026】
図3の一点鎖線に示すように、ソケット(4)は、プラグ部(3a)に接続されると、先端部に設けられている進退スリーブ(44)が上方へ進出し、プラグ部(3a)に抜け止め状態にロックされる。進出状態にある進退スリーブ(44)を退出する方向(図面では下方)に押し込むと、前記ロック状態が解除され、ソケット(4)をプラグ部(3a)から取り外すことができる。
この実施の形態では、プラグ部(3a)に接続されて進出状態にあるソケット(4)の進退スリーブ(44)も、固定ケース(1)の側板部(1b)の下方に露出する構成となっているから、側板部(1b)の下方に指を入れて進退スリーブ(44)を下方へ押込めば、ソケット(4)をプラグ部(3a)から容易に取り外すことが出来る。
【0027】
また、プラグ部(3a)とソケット(4)の接続部分の正面側は、固定ケース(1)のカバー部(10)で被覆されて保護される態様となる。
【0028】
上記開放姿勢にある揺動ケース(2)を閉塞姿勢に戻すには、固定ケース(1)の下方開放端から指を入れて、揺動ケース(2)を強制的に下方に引っ張って、固定ケース(1)の正面板(1a)の円弧状内面への揺動ケース(2)の包囲板部(2a)の円弧状外面の圧接を解除させれば、前記開ロック機構のロック状態は解除され、揺動ケース(2)は、その自重により、閉塞方向へ揺動し、図2に示す閉塞姿勢に戻る。この状態から、さらに、揺動ケース(2)を背面板(11)側へ押込めば、係止突片(21)は背面板(11)の下端に係止されて、閉ロック機構がロック状態となり、揺動ケース(2)の開放方向への不用意な揺動を防止することができる。
【0029】
第2番目の実施の形態のケース体(100)は、図4及び図5に示すように、固定ケース(1)の正面板(1a)の下端中央部にのみ、上記第1番目の実施の形態におけるカバー部(10)に相当する舌片(12)を延設させたもので、舌片(12)の大きさは、図4に示すように、閉塞姿勢における揺動ケース(2)の前端中央部に開放させる切欠部(20)を閉塞可能な大きさに設定されている。
【0030】
また、この実施の形態の揺動ケース(2)の後端全域には、上記第1番目の実施の形態における係止突片(21)に相当する延長片(23)が後方へ延設されていると共に、後端両側部には、一対の操作片(22)が延長片(23)に対して直角方向に突設されている。
なお、一対の操作片(22)間の距離は、図5に示すように、舌片(12)の横幅よりもやや大きく設定されている。
【0031】
揺動ケース(2)は、図4に示す閉塞姿勢にて、延長片(23)が、背面板(11)の添設板(11b)の下端部に強制的に押込み可能に設定されている。すなわち、この第2番目の実施の形態では、揺動ケース(2)の延長片(23)とこれが係合する添設板(11b)の下端が、発明特定事項としての閉ロック機構として機能することとなり、延長片(23)が、背面板(11)の添設板(11b)の下端に強制的に押し込まれると、揺動ケース(2)は閉塞姿勢にロックされる。
このとき、操作片(22)を後方へ押し込めば、前記閉ロック機構を容易にロック状態とすることができる。
【0032】
前記ロック状態を解除して、揺動ケース(2)を開放姿勢へ揺動させる際には、図4にて、揺動ケース(2)の後端両側部から下方へ突出している操作片(22)のどちらか一方に指をかけて手前に押し出す。すると、延長片(23)の、添設板(11b)の下端への係止状態(閉ロック機構のロック状態)は容易に解除され、揺動ケース(2)は、固定ケース(1)の揺動軸(14)を揺動支点として、開放姿勢へ向かって揺動させることができる。
【0033】
揺動ケース(2)は、上記第1番目の実施の形態と同様、揺動ケース(2)の包囲板部(2a)の円弧状外面が、固定ケース(1)の正面板(1a)の円弧状内面を内方から圧接しながら揺動し、最終揺動地点にて、図5に示すように、ガス栓本体(3)の胴部(33)が切欠部(20)に嵌まり込んだ開放姿勢となる。この開放姿勢にて、一対の操作片(22)は、舌片(12)の両側に位置する正面板(1a)の下端に当接すると共に前方に突出する態様となる。
【0034】
すなわち、この第2番目の実施の形態においても、揺動ケース(2)の包囲板部(2a)の円弧状外面と、これが圧接する固定ケース(1)の正面板(1a)の円弧状内面とが、揺動ケース(2)を開放姿勢に維持する発明特定事項としての開ロック機構として機能させることができ、揺動ケース(2)の包囲板部(2a)の円弧状外面を正面板(1a)の円弧状内面に圧接させて、図5に示すように、開放姿勢にロックされたとき、固定ケース(1)の側板部(1b)の下方全域が開放する態様となるから、プラグ部(3a)のほぼ全体を露出することができる。これにより、プラグ部(3a)へのソケットの脱着が一層容易となる。
【0035】
そして、前記開ロック機構を解除するには、図5に示すように、正面板(1a)の舌片(12)の両側にて前方に突出している一対の操作片(22)の両方またはどちらか一方を指で下方へ押す。すると、包囲板部(2a)の円弧状外面の、正面板(1a)の円弧状内面への圧接は容易に解除され、揺動ケース(2)は自重により閉塞姿勢へ戻すことができる。
【0036】
なお、上記開ロック機構及び閉ロック機構としては、開放姿勢又は閉塞姿勢にある揺動ケース(2)が固定ケース(1)と相互に対向し合う各位置に各々設けられ且つ、解除自在に係止可能な他の係止手段であっても良い。
また、ガス栓本体(3)の形状も、略L字状のガス流路を有する形状のガス栓をプラグ部を下に向けて取り付けるようにしても良い。この場合、背面板(11)の添設板(11b)に、配管接続部(3b)を挿通させる挿通孔を形成し、頂面板(11a)としては挿通孔(110)を設けない構成としておけば良い。
【0037】
さらに、上記ケース付きガス栓は、屋内の壁面(W)に固定しても良く、上記したものと同様の作用効果を得ることができる上に、例えば、厨房の壁面(W)に設置したものでは、ケース体(100)によって、燃焼機器からの輻射熱や飛散する熱湯や高温の油からガス栓を確実に保護することができる。
また、壁面(W)への取付手段は、ネジ止めに限定されることはなく、溶接や接着等で壁面(W)に取り付けるようにしても良い。
【符号の説明】
【0038】
(1):固定ケース
(2):揺動ケース
(2a):包囲板部
(2b):側板部
(3): ガス栓本体
(3a): プラグ部
(3b): 配管接続用
(10):カバー部
(14):揺動軸
(20):切欠部
(33)胴部
(100):ケース体
(W):壁面
図1
図2
図3
図4
図5