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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】搬送用ローラおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
B65H5/06 B
B65H5/06 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020200312
(22)【出願日】2020-12-02
(65)【公開番号】P2021091553
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2019218575
(32)【優先日】2019-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596117773
【氏名又は名称】株式会社トライテック
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】矢代 浩一
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-170046(JP,A)
【文献】特開2011-164326(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034715(WO,A1)
【文献】特開2002-249976(JP,A)
【文献】特開平02-238930(JP,A)
【文献】特開2016-068012(JP,A)
【文献】特開平04-306673(JP,A)
【文献】特開2001-315987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/06
B65H 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブを搬送する搬送用ローラであって、
カーボンにより断面円形に形成されたローラ本体の外周面に、インクジェット印刷用樹脂インクによる樹脂の硬化物により形成され且つ搬送される前記ウェブに当接することで前記ウェブに対して張力を作用させる樹脂製凸部が配置されており、
前記樹脂製凸部は、前記ウェブと前記樹脂製凸部との当接部において、前記ローラ本体の軸方向の位置によって異なる張力を作用させるように、前記ローラ本体の前記軸方向の位置によって異なる高さに前記樹脂の硬化物が積層された構造を有することを特徴とする搬送用ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送用ローラにおいて、前記インクジェット印刷用樹脂インクは活性光線硬化型樹脂インクであることを特徴とする搬送用ローラ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の搬送用ローラにおいて、前記樹脂製凸部は、前記ローラ本体の外周面に、前記軸方向に対し所定の角度の螺旋溝が形成されるように、前記軸方向に所定の幅で且つ前記軸方向に対し前記所定の角度で前記外周面に螺旋状に設けられていることを特徴とする搬送用ローラ。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送用ローラにおいて、前記軸方向に関して前記ローラ本体の両端部側にそれぞれ前記樹脂製凸部が設けられていることを特徴とする搬送用ローラ。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の搬送用ローラにおいて、前記樹脂製凸部の高さは、前記軸方向に関して、前記ローラ本体の中央部よりも、前記ローラ本体の両端部のほうが高くなるよう形成されていることを特徴とする搬送用ローラ。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の搬送用ローラにおいて、前記樹脂製凸部の高さは、前記軸方向に関して、前記ローラ本体の中央部よりも、前記ローラ本体の両端部のほうが低くなるよう形成されていることを特徴とする搬送用ローラ。
【請求項7】
ウェブを搬送する搬送用ローラの製造方法であって、
カーボンにより断面円形に形成されたローラ本体の外周面に、インクジェット印刷用樹脂インクによる樹脂の硬化物により形成され且つ搬送される前記ウェブに対して張力を作用させる樹脂製凸部であって、前記ローラ本体の軸方向の位置によって高さが異なる形状の前記樹脂製凸部を配置する樹脂製凸部配置工程を有し、
前記樹脂製凸部配置工程は、前記樹脂製凸部の前記形状に対応し前記ローラ本体の前記軸方向の位置に応じて色濃度が異なる印刷画像を取り込む取り込み工程と、前記取り込み工程により取り込まれた前記印刷画像の色濃度に応じてインクジェット印刷機のインクジェットヘッドから前記インクジェット印刷用樹脂インクを前記外周面に付与するインク付与工程と、前記インク付与工程により前記外周面に付与された前記インクジェット印刷用樹脂インクを硬化させるインク硬化工程とを含み、
前記インク付与工程において前記外周面に付与される前記インクジェット印刷用樹脂インクの量を前記色濃度の濃淡に応じて異ならしめることにより、前記軸方向の位置によって高さが異なる形状の前記樹脂製凸部を前記外周面に形成することを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の搬送用ローラの製造方法であって、前記インクジェット印刷用樹脂インクは活性光線硬化型樹脂インクであり、前記インク硬化工程は前記インク付与工程により前記外周面に付与された前記活性光線硬化型樹脂インクに対して活性光線を照射することで付与された前記活性光線硬化型樹脂インクを硬化させる活性光線照射工程であることを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の搬送用ローラの製造方法において、前記樹脂製凸部配置工程は、前記インク付与工程と前記インク硬化工程とを各々順次複数回繰り返すことを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の搬送用ローラの製造方法において、前記樹脂製凸部は、前記ローラ本体の外周面に、前記軸方向に対し所定の角度の螺旋溝が形成されるように、前記軸方向に所定の幅で且つ前記軸方向に対し前記所定の角度で前記外周面に螺旋状に設けられていることを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の搬送用ローラの製造方法において、前記樹脂製凸部配置工程を、前記軸方向に関して前記ローラ本体の両端部側に実施することを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項12】
ウェブを搬送する搬送用ローラの製造方法であって、
カーボンにより断面円形に形成されたローラ本体の外周面に、インクジェット印刷用樹脂インクによる樹脂の硬化物により形成され且つ前記ローラ本体の軸方向に関する位置によって高さが異なる形状の樹脂製凸部を配置する樹脂製凸部配置工程を有し、
前記樹脂製凸部配置工程は、インクジェット印刷機のインクジェットヘッドから前記インクジェット印刷用樹脂インクを前記外周面に吐出して付与するインク付与工程と、前記インク付与工程により前記外周面に付与された前記インクジェット印刷用樹脂インクを硬化させるインク硬化工程とを含み、前記インク付与工程と前記インク硬化工程とを各々順次且つ前記樹脂凸部の形状に応じた回数繰り返すことにより、前記樹脂の硬化物を前記軸方向に関する位置によって高さが異なるように前記外周面に積層することで前記樹脂製凸部を形成することを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の搬送用ローラの製造方法において、前記インクジェット印刷用樹脂インクは活性光線硬化型樹脂インクであることを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載の搬送用ローラの製造方法において、前記樹脂製凸部は、前記軸方向に対し所定の角度の螺旋溝が形成されるように、前記軸方向に所定の幅で且つ前記軸方向に対し前記所定の角度で前記外周面に螺旋状に設けられていることを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の搬送用ローラの製造方法において、前記軸方向に関して前記ローラ本体の両端部側にそれぞれ前記樹脂製凸部が設けられていることを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項16】
請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の搬送用ローラの製造方法において、前記樹脂製凸部の高さは、前記軸方向に関して、前記ローラ本体の中央部よりも前記ローラ本体の両端部のほうが高くなるよう形成されていることを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【請求項17】
請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の搬送用ローラの製造方法において、前記樹脂製凸部の高さは、前記軸方向に関して、前記ローラ本体の中央部よりも前記ローラ本体の両端部のほうが低くなるよう形成されていることを特徴とする搬送用ローラの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜状ウェブ、たとえばフィルムを搬送する搬送用ローラおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からフィルムを搬送する搬送用ローラが提案されているが、搬送用ローラは搬送されるフィルムに過剰な張力が付与されないように軽量化が要求され、近年はカーボン製の搬送用ローラ(カーボン繊維を連続的に巻回して形成したローラ)が提案されている(特許文献1)。
【0003】
さらに、搬送用ローラは搬送されるフィルムに作用する張力を制御すべく、ローラの形状をローラの中央部と左右両端部で径の大小を変更するクラウン形状や逆クラウン形状にしたり、またローラの外周面にヘリカル溝(45度の螺旋溝)を形成したりしたものもある。
【0004】
この点、金属製のローラであれば、金型の使用や切削等してクラウン形状や逆クラウン形状に形成したり、ヘリカル溝を形成したりするため、簡易に任意の形状とすることができる。
【0005】
しかしながら、カーボン製のローラの場合、たとえば、クラウン形状や逆クラウン形状のカーボンローラを形成する場合、径小部を形成するための切削等による加工はカーボン繊維を切断してしまうため好ましくなく、また徐々に径大となる部分を形成するためのカーボンテープを用いての巻回加工は、カーボンテープの厚みおよび幅が均一であるため精度よく仕上げることは厄介である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平2-238930公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、軽量であり、さらにローラ外周面に任意の加工を施した搬送用ローラを簡易に提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、鋭意創作の結果、以下の発明を見出した。
【0009】
すなわち、ウェブを搬送する搬送用ローラであって、
カーボンにより断面円形に形成されたローラ本体の外周面に印刷用インクによる樹脂の硬化物により形成される樹脂製凸部が配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、前記印刷用インクは、インクジェット印刷用インクであることを特徴とする搬送用ローラとしてもよい。
【0011】
また、前記印刷用インクは活性光線硬化型樹脂インクであることを特徴とする搬送用ローラとしてもよい。
【0012】
また、前記樹脂製凸部は、前記ローラ本体の外周面に、前記ローラ本体の軸方向に関して、所定の間隔をあけて、複数配置されていることを特徴とする搬送用ローラとしてもよい。
【0013】
また、前記樹脂製凸部は、前記ローラ本体外周面上において、ヘリカル溝を形成するように、前記所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とする搬送用ローラとしてもよい。
【0014】
また、前記樹脂製凸部の高さが前記軸方向に関して異なることを特徴とする搬送用ローラとしてもよい。
【0015】
また、前記樹脂製凸部の高さは、前記ローラ本体の前記軸方向中央部よりも、前記軸方向左右両端部のほうが高くなるよう形成されていることを特徴とする搬送用ローラとしてもよい。
【0016】
また、前記樹脂製凸部の高さは、前記ローラ本体の前記軸方向中央部よりも、前記軸方向左右両端部のほうが低くなるよう形成されていることを特徴とする搬送用ローラとしてもよい。
【0017】
さらに、ウェブを搬送する搬送用ローラの製造方法であって、
カーボンにより断面円形に形成されたローラ本体の外周面に、印刷用インクによる樹脂の硬化物により形成される樹脂製凸部を配置する樹脂製凸部配置工程を有し、前記樹脂製凸部配置工程は、前記印刷用インクを前記ローラ本体外周面に付与するインク付与工程と、前記インク付与工程により前記ローラ本体外周面に付与された前記印刷用インクを硬化させるインク硬化工程とを含むことを特徴とする搬送用ローラの製造方法とすることもできる。
【0018】
さらに、前記印刷用インクはインクジェット印刷用インクであり、前記樹脂製凸部配置工程は、インクジェット印刷機により実施される工程であって、前記インク付与工程は、インクジェットヘッドから前記インクジェット印刷用インクを前記ローラ本体外周面に吐出して付与するインクジェット印刷用インク付与工程であることを特徴とする搬送用ローラの製造方法とすることもできる。
【0019】
さらに、前記印刷用インクは活性光線硬化型樹脂インクであり、前記インク硬化工程は前記インク付与工程により前記ローラ本体外周面に付与された前記活性光線硬化型樹脂インクに対して活性光線を照射することで付与された前記活性光線硬化型樹脂インクを硬化させる活性光線照射工程であることを特徴とする搬送用ローラの製造方法とすることもできる。
【0020】
さらに、前記樹脂製凸部配置工程は、前記インク付与工程と前記インク硬化工程とを各々順次複数回繰り返すことで、前記樹脂製凸部の高さを任意に設定することを特徴とする搬送用ローラの製造方法とすることもできる。
【0021】
さらに、前記樹脂製凸部配置工程を、前記ローラ本体軸方向に所定の間隔をあけて順次複数回実施することを特徴とする、搬送用ローラの製造方法とすることもできる。
【0022】
さらに、前記樹脂製凸部配置工程によって、前記樹脂製凸部を、前記ローラ本体外周面に、前記樹脂製凸部の高さが前記ローラ本体軸方向に関して異なるように配置することを特徴とする、搬送用ローラの製造方法とすることもできる。
【0023】
さらに、前記樹脂製凸部の高さは、前記樹脂製凸部配置工程において用いられる前記インクジェット印刷機に適用される印刷画像の色濃度により、前記樹脂製凸部の前記ローラ本体外周面上の配置位置は前記印刷画像の形状により、各々決定されることを特徴とする、搬送用ローラの製造方法とすることもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上述のように構成したから、軽量なカーボン製の搬送用ローラの外周面に任意の加工を施した搬送用ローラおよびその製造方法を極めて簡易に提供できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施例に係るカーボン製ローラ本体1の斜視図である。
図2】本実施例に係る搬送用ローラの斜視図である。
図3図2の断面図である。
図4】本実施例に用いられるインクジェット印刷装置の模式図である。
図5】本実施例に用いられる印刷画像の例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本実施例は、円筒形(若しくは円柱形)のカーボン製のローラ本体1の外周面を活性光線硬化型樹脂(具体的には紫外線硬化樹脂)を用いたインクジェット印刷機20により印刷処理し、任意の部位において径が異なるようにした外形状の搬送用ローラ4である。
【0027】
さらに、詳細には、インクジェット印刷機20により、前記カーボン製のローラ本体1を回転させながら、インクジェットヘッド21をローラ本体1の上方においてローラ本体1の長さ方向(回転軸6の軸方向)に水平移動させ、ローラ本体1の外周面にインクジェットヘッド21から吐出されたインクを着弾させて、当該インクを活性光線(具体的には紫外線)の照射により硬化させ、これを適宜繰り返す盛り上げ印刷処理により、中央部が径小で左右両端部に向かって徐々に径大となる外表面が凹曲面形状(逆クラウン形状)の搬送用ローラ4を製造するものである。もちろん、中央部が径大で左右両端部に向かって徐々に径小となる外表面が凸曲面形状(クラウン形状)の搬送用ローラ4の製造も可能である。
【0028】
以下具体的な実施例について図1~5に基づいて説明する。
【0029】
本実施例の断面円形のカーボン製の搬送用ローラ4は、様々な部材の搬送に用いることができるが、特に紙や合成樹脂フィルムなどの薄い膜形状となるウェブ等の部材を搬送する際に好適である。紙であれば、たとえばコート紙、光沢紙、合成紙、普通紙など、また合成樹脂フィルムであれば、ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ナイロンフィルムなど、さらに、布、不織布、金属箔等にも好適である。
【0030】
搬送用ローラ4は、たとえばインクジェット印刷機のウェブ搬送機構に組み込まれて使用されることが想定される。両端の支持部3に駆動モータ等の回転動力を接続せず、搬送用ローラ4が回動可能となるように支持部3を保持し、ウェブの搬送方向を変更設定することに用いることが想定される。また、両端の支持部3に駆動モータ等の回転動力を接続し、搬送用ローラ4自体を回転駆動させて使用してもよい。
【0031】
また、この搬送用ローラ4は、逆クラウン形状であり(中央部が両端部に比し径小となっている形状)、さらに、ヘリカル溝2(回転軸に対して45度の螺旋溝)を形成している。この逆クラウン形状およびヘリカル溝2は、この搬送用ローラ4に巻回されて搬送されるフィルムに対し、搬送用ローラ4の両端側方向(被搬送物たるフィルムの幅方向)に張力を作用させて可及的にフィルムにシワが生じないようにし、また搬送中のフィルムの蛇行を抑制するためのものである。
【0032】
この搬送用ローラ4の前記形状は、インクジェット印刷機による印刷処理により形成される。図4は、本実施例の搬送用ローラ4の製造に用いられるインクジェット印刷機の模式図である。インクジェット印刷機20には、インクジェットヘッド21及び活性光線照射装置22がキャリッジ23に搭載されており、ローラ本体1を、回転軸6を中心に回転させながら、インクジェットヘッド21からインクをローラ本体1の外周面に対して吐出し着弾させ、着弾したインクに対して活性光線照射装置22から活性光線を照射してインクを硬化させることで、樹脂製凸部5を配置する。また、インクジェット印刷機20に接続される図示しない制御コンピューターに取り込まれた印刷用画像により、樹脂製凸部5の形状、高さ、配置位置を適宜決定する。なお、インクジェット印刷機20は、例えば、インクジェットヘッド21を移動させ、ローラ本体1を固定した状態で印刷する形式でもよく、また活性光線照射装置22を異なる位置に配置してもよく、インクジェット印刷機20の機械構成は限定されるものではないことを確認する。
【0033】
以下、インクジェット印刷機20による搬送用ローラ4の製造方法について詳述する。
【0034】
図1は搬送用ローラ4の元となるカーボン製のローラ本体1である。ローラ本体1に、のちに詳述するように樹脂製凸部5を配置することで、本実施例の搬送用ローラ4を製造する。本実施例のカーボン製ローラ本体1は、炭素繊維を巻回し、マトリックス樹脂を含浸硬化して断面円形に形成されるもの(炭素繊維強化プラスチック(CFRP))であるが、カーボンを主体としたものであればCFRP製以外のものものでも良い。また、ローラ本体1は、円筒形状であり(もちろん、円柱形状でもよい。)、両端に軸などに支持される支持部3が設けられており、支持部3の中心を通過するローラ本体1の回転中心を通過する回転軸6を軸に回転させることができる。
【0035】
搬送用ローラ4に軽量なカーボン製のローラ本体1を用いることで、搬送されるフィルムに発生する張力を軽減し、フィルムの伸び等の形状変化を抑制することができる。すなわち、搬送用ローラ4を、駆動モータ等の回転動力を接続せずに、搬送されるフィルムの搬送方向の変更等に使用する場合、フィルムは回転動力が接続された巻き出し部や巻き取り部などの別途の動力により搬送方向の上流から下流へ搬送される。そして、搬送用ローラ4自体は、フィルムの表面を搬送用ローラ4の外周面に接触させ、フィルムが別途の動力により搬送方向に引っ張られる力を、搬送用ローラ4に対して、搬送用ローラ4とフィルムと搬送用ローラ4の外周面との接触面の摩擦力により伝達させることで、回転させる。この場合、フィルムには、搬送方向に引っ張られる力と、フィルムと搬送用ローラ4外周面との摩擦力により搬送用ローラ4を回転させるための力とによって張力が発生する。搬送用ローラ4の重量が重いほど搬送用ローラ4を回転させるために大きい力が必要となり、フィルムにはより大きい張力が発生する。しかし、搬送用ローラ4が軽量であれば、より少ない力で搬送用ローラ4を回転させることができることから、搬送されるフィルムに発生するフィルムの張力を軽減できる。フィルムの張力を軽減することで、フィルムの伸びなどを防止軽減し、安定した精度の良い搬送を実現できる。
【0036】
インクジェット印刷機20を用いて円筒形のローラ本体1の外周面にインクジェット印刷処理による樹脂製凸部配置工程を実施し、ローラ本体1の外周面に任意形状の樹脂製凸部を形成する。
【0037】
樹脂製凸部配置工程においてインクジェット印刷機20に用いられるインクは、適宜の樹脂インクを使用することができる。樹脂製凸部を任意の形状に形成することを容易とする観点からは、インクがローラ本体1の外周面に着弾してから活性光線を照射するまでの時間を設定することでインク乾燥硬化までの間に発生するインクの形状変化(レベリング等)を制御することのできる活性光線硬化型樹脂インクが好ましい。活性光線硬化型樹脂インクには、たとえば紫外線硬化型インク、電子線硬化型インクなどが想定されているが、本実施例では、活性光線の取り扱いの容易性等から、紫外線硬化型樹脂インクを用いている。
【0038】
以下、インクジェット印刷処理による、樹脂製凸部配置工程を詳述する。
【0039】
本実施例の樹脂製凸部配置工程は、インク付与工程とインク硬化工程を各々実施する工程からなる。
【0040】
まず、インク付与工程を実施する。ローラ本体1をインクジェット印刷機20の固定治具(マンドレル等)に、支持部3により軸支し、このローラ本体1を、回転軸6を中心に回転させながら、インクジェットヘッド21をこのローラ本体1の、その回転中心を通過して伸びる軸方向の一方端部上方に移動させ、紫外線硬化型樹脂インクをインクジェットヘッド21から吐出してローラ本体1外周面に着弾させる。
【0041】
インク付与工程を実施したのち、インク硬化工程を実施する。インク付与工程においてローラ本体1の外周面に付与されたインクに対して、活性光線照射装置22から紫外線を照射して前記インクを硬化させるインク硬化工程を行う。インクが付与されてから活性光線を照射するまでの時間は、インクの性能や意図する樹脂製凸部の形状に応じて適宜設定する。
【0042】
以上のインク付与工程とインク硬化工程を、ローラ本体1の外周面全体に意図する形状の樹脂製凸部を形成されるまで、ローラ本体1の軸方向一方端部から他方端部まで、各々交互に繰り返し順次実施する。
【0043】
また、ローラ本体1の軸方向一方端部から他方端部までのインク付与工程とインク硬化工程をさらに複数回繰り返し、紫外線硬化型樹脂インクの硬化物を積層させるインクの盛り上げ印刷処理をし、樹脂製凸部の高さを意図する高さにする。
【0044】
ローラ本体1の外周面に形成する任意の樹脂製凸部の形状に応じ、また、使用するインクの表面張力、粘度等の諸性能、ローラ本体1外周面の濡れ性等の諸性能に応じて、インク付与工程およびインク硬化工程の実施回数や実施時間の組み合わせを調整する。また、ローラ本体1の軸方向関するインク付与工程とインク硬化工程の開始位置や終了位置なども、インクジェット装置の機械構成に応じ任意設定する。
【0045】
以上の工程によって、本実施例ではローラ本体1の外周面に樹脂製凸部による逆クラウン形状と、ヘリカル溝2を形成し、ローラ本体1を切削するなどの加工が困難なカーボン製のローラ本体1の外周面に意図する形状を付与した搬送用ローラ4を得ることができた。
【0046】
ヘリカル溝2を形成する場合、当該部分を残して、ローラ本体1の軸方向に所定の間隔をあけて複数の樹脂製凸部を配置することで、ヘリカル溝2を形成する(図2、3の場合、ローラ本体1の中央部には盛り上げ印刷処理を行なっていない。)。なお、ヘリカル溝の機能として、ウェブのしわを抑制する効果を発揮できれば、ヘリカル溝2の間にさらに樹脂製凸部が配置されていてもよい。
【0047】
また、樹脂製凸部の高さをローラ本体1の軸方向に関して異なるように樹脂製凸部を形成にすることで、上記のクラウン形状または逆クラウン形状をローラ本体1の外周面上に再現した搬送用ローラ4を得ることもできる。例えば、樹脂製凸部の軸方向両端部の高さを高くし、軸方向中央部になるに従い低くなるよう設定すれば、本実施例の搬送用ローラ4の径は、軸方向両端部の径よりも中央部が低い逆クラウン形状となる。反対に、樹脂製凸部の軸方向両端部の高さを低くし、軸方向中央部になるに従い高くなるよう設定すれば、本実施例の搬送用ローラ4の径は、軸方向両端部の径よりも中央部が高いクラウン形状となる。
【0048】
また、インクジェットヘッドが移動するに従いインクの吐出量が徐々に多くなるように制御したり、または徐々に少なくなるように制御したりする。このインクの吐出量の制御方法の一つとして、印刷画像による制御がある。すなわち、ローラ本体1に形成することを意図する任意の樹脂製凸部による凹凸曲面形状に作成した印刷画像の色濃度を制御して、インク吐出量を任意制御する。なお、インクの吐出量の制御は上記印刷画像による制御に限られるものではないことは言うまでもない。
【0049】
なお、本実施例では、図5に示す印刷画像30を、インクジェット印刷機20の制御用コンピューターに取り込み、樹脂製凸部配置工程を実施している。印刷画像30は、本実施例におけるローラ本体1に配置する樹脂製凸部の前記軸方向の一方端部側から中央部分までを平面の画像に展開したものである。印刷画像30は、樹脂製凸部配置部分31と樹脂製凸部非配置部分32を設定し、また、樹脂製凸部配置部分31の色濃度を、前記軸方向端部側を濃く設定し、中央部分になるに従い、薄くなるよう設定している。また、軸方向他方端部側は、樹脂製凸部の形状が、ローラ本体1外周面上で左右対称になるように、印刷画像30を反転させた画像を用いた。
【0050】
印刷画像30を用いて、樹脂製凸部配置工程を実施することで、ローラ本体1の外周面上に、図2に示す形状の、左右が対象で、樹脂製凸部配置部分31に対応する部分に樹脂製凸部が配置され、樹脂製凸部非配置部分32に対応する部分にヘリカル溝2が形成され、色濃度が濃くなっている左右両端部の樹脂製凸部の高さが高く、かつ中央部になるに従い樹脂製凸部の高さが低くなるような搬送用ローラ4を製造できた。
【0051】
なお、図面2、3は、逆クラウン形状でかつヘリカル溝2を形成したものであるが、上記の通り中央部に比して左右両端部が径小なクラウン形状に形成したり、またヘリカル溝2を設けたストレート形状の搬送用ローラ4にするなど、このインクジェット印刷機により外周面が任意の凹凸曲面形状の搬送用ローラ4を簡易に製造することが可能となる。
【0052】
その他、本実施例によれば、印刷画像30を変更することで、ローラ本体1外周面上の任意の位置に自由に樹脂製凸部を配置することができるので、Wヘリカル溝加工、ラジカルクラウン加工、段付き加工、表面粗し加工など種々の加工を簡易に行うことが可能となる。
【0053】
なお、本実施例は前記印刷処理において、印刷条件を任意に制御することで、任意の表面摩擦係数を有する搬送用ローラ4を得ることも可能である。
【0054】
本実施例は上述のように構成したから次のような作用効果を奏する。
【0055】
本実施例に係る搬送用ローラ4は、軽量であるため、自重で撓むことが可及的になく、さらに、上記の通り被搬送物に過剰な張力が作用することはない。また外周面が上述の形状であり、したがって、被搬送物は弛んだり、歪んだりせず、適性に搬送されることになる。さらに、この搬送用ローラ4はインクジェット印刷により上述の外周面に形成されるため、極めて簡易かつ効率的に形成することができる。
【0056】
尚、本発明は、この実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0057】
1 ローラ本体
2 ヘリカル溝
3 支持部
4 搬送用ローラ
5 樹脂製凸部
20 インクジェット印刷機
21 インクジェットヘッド
22 活性光線照射装置
30 印刷画像
図1
図2
図3
図4
図5