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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】センタレス研削盤
(51)【国際特許分類】
   B24B 5/18 20060101AFI20240111BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20240111BHJP
   B24B 47/20 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B24B5/18 A
B24B49/10
B24B47/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021090603
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182853
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114019
【氏名又は名称】ミクロン精密株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 考臣
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-103149(JP,U)
【文献】特開2019-063891(JP,A)
【文献】特許第6408512(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/18
B24B 49/10
B24B 47/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを研削する円柱状の研削砥石と、
円柱状の調整砥石と、
前記研削砥石および前記調整砥石の間に配置されたブレードと、
前記研削砥石と前記調整砥石との間隔を調節するように、前記調整砥石及び前記ブレードと、前記研削砥石との少なくとも一方を移動させるアクチュエータと、
前記調整砥石を軸線周りに回転させる調整砥石駆動機構と、
前記アクチュエータ及び前記調整砥石駆動機構の動作を制御する制御装置と、
を備えているセンタレス研削盤であって、
前記ブレードに作用する外力に応じた信号を出力する外力センサを備え、
前記制御装置は、
前記ブレードの上面である傾斜面と前記調整砥石の外周面とに前記ワークが支えられている状態から、前記研削砥石と前記ワークとの間隔が狭められるように前記アクチュエータの動作を制御し、
前記研削砥石と前記ワークとの間隔が狭められていく過程で、前記調整砥石駆動機構により前記調整砥石を加工時の回転方向とは逆方向の反時計方向に回転させることで、前記研削砥石と前記ワークとの接触により前記ワークを介して前記研削砥石は反時計方向に回転運動を与えられ、その時の力の反作用で前記ワークから前記ブレードに力が作用することで前記外力センサの出力が変化したか否かを判定し、当該判定結果が肯定的であることを要件として、前記研削砥石と前記ワークとの接触を検知し、前記アクチュエータの動作を制御することを特徴とするセンタレス研削盤。
【請求項2】
ワークを研削する円柱状の研削砥石と、
円柱状の調整砥石と、
前記研削砥石および前記調整砥石の間に配置されたブレードと、
前記調整砥石及び前記ブレードと前記研削砥石との少なくとも一方を移動させるアクチュエータと、
前記研削砥石を軸線周りに回転させる研削砥石駆動機構と、
前記アクチュエータ及び前記研削砥石駆動機構の動作を制御する制御装置と、
を備えているセンタレス研削盤であって、
前記ブレードに作用する外力に応じた信号を出力する外力センサを備え、
前記制御装置は、
前記ブレードの上面である傾斜面と前記調整砥石の外周面とに前記ワークが支えられている状態から、前記研削砥石と前記ワークとの間隔が狭められるように前記アクチュエータの動作を制御し、
前記研削砥石と前記ワークとの間隔が狭められていく過程で、前記調整砥石は回転させず、前記研削砥石駆動機構により前記研削砥石を加工時と同じ時計方向に回転させ、前記ワークとの接触により、前記ワークを介して前記ブレードに力が作用することで前記外力センサの出力が変化したか否かを判定し、当該判定結果が肯定的であることを要件として、前記研削砥石と前記ワークとの接触を検知し、前記アクチュエータの動作を制御することを特徴とするセンタレス研削盤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセンタレス研削盤において、
前記調整砥石の軸線が、前記研削砥石の軸線よりも下方に位置するように設けられていることを特徴とするセンタレス研削盤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のセンタレス研削盤において、
前記制御装置が、前記判定結果が肯定的であることを要件として、前記研削砥石と前記調整砥石との間隔を所定値まで広げた上で停止するように前記アクチュエータの動作を制御し、当該停止位置を前記研削砥石の原位置として記憶保持することを特徴とするセンタレス研削盤。
【請求項5】
請求項4に記載のセンタレス研削盤において、
前記制御装置が、前記判定結果が肯定的であることを要件として、前記研削砥石と前記調整砥石との接近速度が低下するように前記アクチュエータの動作を制御することを特徴とするセンタレス研削盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを、センタ支持することなく、研削砥石、調整砥石およびブレードの3部材との接触により回転可能に支持しながら研削するセンタレス研削盤に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人により、加工対象であるワーク(被加工物)を変更し、その径の変化に応じて調整砥石台または研削砥石台が、自動で位置決め設定できるセンタレス研削盤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のセンタレス研削盤では、研削砥石および調整砥石の間に配置されたブレードと、ワークを上方から押圧して、ワークに外力を作用させる外力作用機構と、を備え、研削砥石と調整砥石との間隔が狭められていく過程でブレードに作用する外力が減少した場合に、研削砥石がワークに当接したことを検出し、この位置を研削砥石の原位置としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6408512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のセンタレス研削方法では、ワークを上方から押圧して、ワークに外力を作用させる外力作用機構を設けており、部品点数が増加し、さらに、外力作用機構の位置決めに手間がかかるという問題があった。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、ワークを上方から押圧する押圧機構を用いることなく、研削砥石、ブレードおよび調整砥石の位置関係を高精度で自動調節しうるセンタレス研削盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明のセンタレス研削盤は、ワークを研削する円柱状の研削砥石と、
円柱状の調整砥石と、
前記研削砥石および前記調整砥石の間に配置されたブレードと、
前記研削砥石と前記調整砥石との間隔を調節するように、前記調整砥石及び前記ブレードと、前記研削砥石との少なくとも一方を移動させるアクチュエータと、
前記調整砥石を軸線周りに回転させる調整砥石駆動機構と、
前記アクチュエータ及び前記調整砥石駆動機構の動作を制御する制御装置と、
を備えているセンタレス研削盤であって、
前記ブレードに作用する外力に応じた信号を出力する外力センサを備え、
前記制御装置は、
前記ブレードの上面である傾斜面と前記調整砥石の外周面とに前記ワークが支えられている状態から、前記研削砥石と前記ワークとの間隔が狭められるように前記アクチュエータの動作を制御し、
前記研削砥石と前記ワークとの間隔が狭められていく過程で、前記調整砥石駆動機構により前記調整砥石を加工時の回転方向とは逆方向の反時計方向に回転させることで、前記研削砥石と前記ワークとの接触により前記ワークを介して前記研削砥石は反時計方向に回転運動を与えられ、その時の力の反作用で前記ワークから前記ブレードに力が作用することで前記外力センサの出力が変化したか否かを判定し、当該判定結果が肯定的であることを要件として、前記研削砥石と前記ワークとの接触を検知し、前記アクチュエータの動作を制御することを特徴とする。
なお、加工時の調整砥石の回転方向である時計方向は、調整砥石が研削砥石の右側に配置された状態での時計方向である。すなわち、調整砥石が研削砥石の左側に配置されて、加工時に調整砥石が反時計方向に回転するものも、反対側から見た場合には、調整砥石が研削砥石の右側に配置されて、加工時に調整砥石が時計方向に回転するものであり、同じ構成を示す。また、上記円柱状とは、少なくとも外周部が、円柱状の外周部の形状であればよく、例えば、中央部が凹んだ形状等も含むものである。
【0008】
本発明によれば、ワークがブレードに当接している状態で、ブレードに作用する外力(または外力センサの出力信号)の出力が変化した場合に、アクチュエータの動作が制御される。ワークと研削砥石との当接態様に応じてブレードに作用する外力が変化することに鑑みて、研削砥石、ブレードおよび調整砥石の位置関係が高精度で自動調節されうる。これにより、作業者が工具に接触することなく作業の安全性が確保できる。
【0009】
また、調整砥石を加工時の回転方向(時計方向)とは逆方向の反時計方向に回転させることで、研削砥石とワークとの接触によりワークを介して研削砥石は反時計方向に回転運動を与えられ、つまり、研削砥石とワークの接点において、研削砥石は接線方向上方に力を受け、ワークはその力の反作用で接線方向下方に力が加わり、その力がブレードに作用する。その作用により、ワークを上方から押圧する押圧機構を用いることなく、たとえ軽量なワークであってもブレードに力を加えることができ、容易に研削砥石がワークに接触したことを検出することができる。
【0010】
ここで、研削砥石とワークとの間隔が狭められていく調節時に、ワークを回転させずに研削砥石に接触させる従来のものでは、周面に凹凸のあるワークでは、研削砥石をワークに近づけたときに、ワークの最も凹んでいる凹部が最初に研削砥石に接触した場合に、この位置を外周面とした疑似的な真円としてワークが検出される。この場合、該位置がワークの径方向の研削開始位置となる。このため、ワークの最も凹んでいる凹部を径方向の研削開始位置としてワークを回転させた場合、ワークの凸部を一度に研削することになり、研削砥石に大きな負荷がかかり損傷することがある。
【0011】
本願発明によれば、調節時には、調整砥石を加工時の回転方向(時計方向)とは逆方向の反時計方向に回転させるので、ワークを時計方向に回転させることができ、周面に凹凸のあるワークでは、研削砥石をワークに近づけたときに、ワークの最も突出している凸部が最初に研削砥石に接触する。この場合、最も突出している凸部を外周面とした疑似的な真円としてワークが検出される。これにより、この疑似的な真円の外周面を基準(切削開始位置)としてワークを切削することができ、ワークの凸部を徐々に研削することができるので、研削砥石に大きな負荷がかかることを抑制し、研削砥石が損傷することを抑制することができる。
【0012】
[2]本発明のセンタレス研削盤は、ワークを研削する円柱状の研削砥石と、
円柱状の調整砥石と、
前記研削砥石および前記調整砥石の間に配置されたブレードと、
前記調整砥石及び前記ブレードと前記研削砥石との少なくとも一方を移動させるアクチュエータと、
前記研削砥石を軸線周りに回転させる研削砥石駆動機構と、
前記アクチュエータ及び前記研削砥石駆動機構の動作を制御する制御装置と、
を備えているセンタレス研削盤であって、
前記ブレードに作用する外力に応じた信号を出力する外力センサを備え、
前記制御装置は、
前記ブレードの上面である傾斜面と前記調整砥石の外周面とに前記ワークが支えられている状態から、前記研削砥石と前記ワークとの間隔が狭められるように前記アクチュエータの動作を制御し、
前記研削砥石と前記ワークとの間隔が狭められていく過程で、前記調整砥石は回転させず、前記研削砥石駆動機構により前記研削砥石を加工時と同じ時計方向に回転させ、前記ワークとの接触により、前記ワークを介して前記ブレードに力が作用することで前記外力センサの出力が変化したか否かを判定し、当該判定結果が肯定的であることを要件として、前記研削砥石と前記ワークとの接触を検知し、前記アクチュエーの動作を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、ワークがブレードに当接している状態で、ブレードに作用する外力(または外力センサの出力信号)の出力が変化した場合に、アクチュエータの動作が制御される。ワークと、研削砥石または研削砥石および調整砥石との当接態様に応じてブレードに作用する外力が変化することに鑑みて、研削砥石、ブレードおよび調整砥石の位置関係が高精度で自動調節されうる。
【0014】
また、調整砥石は回転させず、研削砥石を加工時と同じ時計方向に回転させ、ワークとの接触により、ワークを介してブレードに力が作用することで外力センサの出力が変化したか否かを判定するので、ワークを上方から押圧する押圧機構を用いることなく、ワークからブレードに加わる力を変化させることができ、容易に研削砥石がワークに接触したことを検出することができる。
【0015】
[3]前記調整砥石の軸線が、前記研削砥石の軸線よりも下方に位置するように設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、調整砥石の軸線と研削砥石の軸線とが平行なものに比べて、重力によりワークが調整砥石に向かう力が増える。これにより、調節時に調整砥石の回転力がワークに伝達された際に、伝達される力を増加させることができる。
【0017】
[4]前記制御装置が、前記判定結果が肯定的であることを要件として、前記研削砥石と前記調整砥石との間隔を所定値まで広げた上で停止するように前記アクチュエータの動作を制御し、当該停止位置を前記研削砥石の原位置として記憶保持することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、容易に研削砥石の原位置を検出することができる。
【0019】
[5]前記制御装置が、前記判定結果が肯定的であることを要件として、前記研削砥石と前記調整砥石との接近速度が低下するように前記アクチュエータの動作を制御することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、研削砥石がワークに当接したことを契機として、研削砥石と調整砥石との接近速度(相対的な接近速度)が減速されるので、研削砥石の空転時間が短縮され、ワークの研削加工に要する時間の短縮が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態としてのセンタレス研削盤の構成説明図。
図2A】調節時のセンタレス研削盤の調整砥石と研削砥石とワークとブレードとを示す構成図。
図2B】研削砥石がワークに接触した状態のセンタレス研削盤の調整砥石と研削砥石とワークとブレードとを示す構成図。
図3】本発明の第3実施形態としてのセンタレス研削盤の構成説明図。
図4】本発明の第4実施形態としてのセンタレス研削盤の構成説明図。
図5】本発明の第5実施形態としてのセンタレス研削盤の主要部の構成説明図。
図6】本発明の第6実施形態としてのセンタレス研削盤の主要部の構成説明図。
図7】本発明の第7実施形態としてのセンタレス研削盤の主要部の構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
(センタレス研削盤の構成)
図1に示されている本発明の一実施形態としてのセンタレス研削盤は、調整砥石1と、研削砥石2と、ブレード4と、制御装置20と、第1アクチュエータ41と、第2アクチュエータ42と、を備えている。
【0023】
調整砥石1は、略円柱状であり、調整砥石駆動機構21によって軸線O1(Z軸に平行な軸線)回りに回転可能に支持されている。調整砥石1、ブレード4及びワークレスト6は、水平方向(±X方向(必要に応じてさらに±Z方向))または水平面に対して傾斜した面に沿って往復動可能に、基台11に支持されている。基台11は、ベッドに搭載されており、第1アクチュエータ41によって駆動される。調整砥石1の近傍には、その外周面をドレッシングする調整砥石ドレッシング装置が設けられていてもよい。
【0024】
研削砥石2は、略円柱状であり、調整砥石1の外周面に対してその外周面を対向させるように配置され、研削砥石駆動機構22により軸線O2(Z軸に平行な軸線)回りに回転可能に支持されている。研削砥石2は、ベッドに搭載されている研削砥石スライダ12によって例えば水平方向(±X方向(必要に応じてさらに±Z方向))または水平面に対して傾斜した面に沿って往復動可能に支持されている。研削砥石スライダ12は第2アクチュエータ42によって駆動される。研削砥石2の近傍には、その外周面をドレッシングする研削砥石ドレッシング装置が設けられていてもよい。
【0025】
調整砥石1および研削砥石2の間にワークWを供給することによって、ワークWと、調整砥石1、研削砥石2およびブレード4のそれぞれとの三接点が適当に位置決めされ、調整砥石1または研削砥石2をワークWの径方向に切り込むことで所望の研削結果が実現される。X-Y平面における調整砥石1の中心(軸線O1)および研削砥石2の中心(軸線O2)を結ぶ線分Lは、X軸に平行であり、ワークWの中心Owは当該線分Lの上方に位置する。
【0026】
ブレード4は、調整砥石1および研削砥石2の間に配置されている。ブレード4は、ベッドの上に搭載されているワークレスト6に対して固定されている。ワークレスト6には、ブレード4に作用する外力(またはワークレスト6のひずみ量)に応じた信号を出力する外力センサ8が設けられている。外力センサ8は、例えばひずみゲージにより構成されている。
【0027】
制御装置20は、コンピュータ(CPU(演算処理装置)、ROMまたはRAMなどのメモリ(記憶装置)および入出力I/F回路等により構成されている。)により構成されている。制御装置20は、調整砥石駆動機構21、研削砥石駆動機構22、第1アクチュエータ41及び第2アクチュエータ42の動作を制御する。
【0028】
(センタレス研削盤の制御方法(研削砥石の原位置設定))
調整砥石1、ブレード4及びワークレスト6を、手動で+X方向または-X方向に動かすことで、調整砥石1及びブレード4と、研削砥石2とのX方向の間隔がワークWの径に応じて調節される。
【0029】
図2Aに示すように、上記調節時に、調整砥石駆動機構21は、調整砥石1を軸線周りに反時計方向に回転させる。これにより、ワークWは軸線Ow回りに時計方向に回転、乃至は回転させる作用をもたらす。
【0030】
基台11または研削砥石スライダ12を移動させ、図2Bに示すように研削砥石2がワークWの外周面に接触すると、研削砥石2とワークWとの接触によりワークWを介して研削砥石2は反時計方向に強制的に回転運動を与えられ、その時の力の反作用でワークWからブレード4に力が作用(ブレード4に作用する外力が増加)する。これにより、ワークWを上方から押圧する押圧機構を用いることなく、ワークWからブレード4に力を加えることができ、容易に研削砥石2がワークWに接触したことを検出することができる。
【0031】
(センタレス研削盤の制御方法(ワークの研削))
ワークWが、時計方向に回転された調整砥石1と、ブレード4とにより支持されている一方、研削砥石2から離間している状態から、制御装置20が、第1アクチュエータ41の動作を制御することにより、基台11を-X方向に基準速度で移動させる、または第2アクチュエータ42の動作を制御することにより研削砥石スライダ12を+X方向に基準速度で前進駆動する。すなわち、研削砥石2とワークWとの相対的な接近速度が基準速度に制御される。これにより、研削砥石2とワークWとの間隔が徐々に狭められるように制御される。この過程で、外力センサ8の出力信号により表わされるブレード4に作用する外力が増加またはあらかじめ制御装置20に設定された閾値を超えて増加したか否かが判定される。
【0032】
当該判定結果が否定的である場合、研削砥石2とワークWの接近速度を基準速度で前進駆動させる。その一方、当該判定結果が肯定的である場合、制御装置20が第1アクチュエータ41の動作を制御することにより、基台11を-X方向に移動させうる移動速度、または第2アクチュエータ42の動作を制御することにより研削砥石スライダ12を+X方向に移動させる移動速度を減少させ、研削砥石2とワークWとの接近速度を減少させる。これにより、研削砥石2がワークWに当接したことを契機として相対的な接近速度が減速されるので、研削砥石の空転時間が短縮され、ワークWの研削加工に要する時間の短縮が図られる。
【0033】
調整砥石1が軸線O1回りに時計回りに回転し、かつ、研削砥石2が軸線O2回りに時計回りに回転するように、調整砥石駆動機構21および研削砥石駆動機構22のそれぞれの動作が制御される。この過程で、ワークWが軸線Ow回りに反時計回りに回転しながら、前記のようにワークWとの当接を契機として減速された研削砥石2とワークWとの接近速度で外周から研削加工または切り込み加工される。このように研削砥石2とワークWの接触を検出することで加工時間の短縮するメリットももたらす。
【0034】
ワークWと研削砥石2との接触を検出する過程で、ワークWを回転させずに研削砥石2に接触させる従来のものでは、周面に凹凸のあるワークWでは、ワークWの最も凹んでいる凹部が最初に研削砥石2に接触した場合に、この位置を外周面とした真円として検出され、該位置がワークWの径方向の研削開始位置となる。このため、ワークの最も凹んでいる凹部を研削開始位置としてワークを回転させた場合、ワークの凸部を一度に研削することになり、研削砥石2に大きな負荷がかかり損傷することがある。
【0035】
これに対して、本願発明では、ワークWと研削砥石2との接触を検出する過程で、調整砥石1を軸線O1回りに反時計方向に回転させることで、ワークWを軸線Ow回りに時計方向に回転させることが可能となるので、周面に凹凸のあるワークWにおいて、最も突出している凸部を外周面とした疑似的な真円を作ることができる。これにより、この疑似的な真円の外周面を基準(研削開始位置)としてワークWを切削することができ、ワークWの凸部を徐々に研削することができるので、研削砥石2に大きな負荷がかかることを抑制し、研削砥石2が損傷することを抑制することができる。
【0036】
(本発明の他の実施形態:第2実施形態)
上記実施形態では、ワークWと研削砥石2との接触を検出する過程で、調整砥石1を軸線O1回りに反時計方向に回転させているが、ワークWと研削砥石2との接触を検出する過程で、調整砥石1を回転させず、研削砥石2を加工時と同じ時計方向に回転させるようにしてもよい。
【0037】
この第2実施形態では、調整砥石1を回転させず、研削砥石2を加工時と同じ時計方向に回転させた状態で、研削砥石2がワークWに接触すると、ワークWを介してブレード4に力が作用することで、外力センサ8の出力が変化したか否かの判定結果が肯定的となる。この場合、研削砥石2とワークWとの接触を検知し、以降は上記第1実施形態と同様の制御を行う。なお、この場合には、研削砥石2の周速度は小さいことが好ましく、例えば、0.1~1.0m/sであることが好ましい。
【0038】
(本発明の他の実施形態:第3実施形態)
上記実施形態では、X-Y平面における調整砥石1の中心(軸線O1)および研削砥石2の中心(軸線O2)を結ぶ線分LはX軸に平行であるが、図3に示すように、線分Lを、X軸に対して傾斜させるようにしてもよい。この場合、調整砥石1の中心(軸線O1)が、研削砥石2の中心(軸線O2)よりも下方となるようにすることが好ましく、線分Lが例えば10°~30°傾斜していることが好ましい。
【0039】
この第3実施形態(線分LがX軸に対して傾斜)では、線分LがX軸に平行(水平)であるものに比べて、重力によりワークWが調整砥石1に向かう力が増える。これにより、調整砥石1の回転力がワークWに伝達された際に、伝達される力を増加させ、ワークWは研削砥石2と接触させる前から回転しやすくなる。
【0040】
(本発明の他の実施形態:第4実施形態)
図4に示すように、X-Y平面における調整砥石1の中心(軸線O1)および研削砥石2の中心(軸線O2)を結ぶ線分Lを、X-Y平面において、X軸に平行で、ワークWの中心Owを、当該線分Lの下方に位置させるようにしてもよい。この場合にも、上記実施形態と同様の制御を行う。また、この実施形態では、上記実施形態の調整砥石1を軸線O1回りに反時計方向に回転させて、ワークWを軸線Ow回りに時計方向に回転させる調節時の制御に代えて、調整砥石1を軸線O1回りに時計方向に回転させて、ワークWを軸線Ow回りに反時計方向に回転させる調節時の制御を行うようにしてもよい。
【0041】
この第4実施形態では、ワークWの中心Owは、線分Lの下方に位置されているので、調整砥石1の回転方向に関係なく、調整砥石1を回転させてワークWを回転させることで、ワークWからブレード4に力を加えることができる。
【0042】
(本発明の他の実施形態:第5実施形態)
上記実施形態では、基台11に調整砥石1、ブレード4、およびワークレスト6を搭載しているが、図5に示すように調整砥石1だけを搭載した調整砥石スライダ13と、この調整砥石スライダ13を駆動する第3アクチュエータ(図示せず)と、を備え、自動で移動させるようにしてもよい。この第5実施形態でも、上記実施形態の制御装置20、第1アクチュエータ41、および第2アクチュエータ42を備え、制御装置20により、調整砥石スライダ13及び第3アクチュエータの駆動が制御される。
【0043】
(本発明の他の実施形態:第6実施形態)
上記実施形態では、基台11に調整砥石1、ブレード4、およびワークレスト6を搭載しているが、図6に示すようにブレード4、およびワークレスト6をベッドに固定して、調整砥石1だけを搭載した調整砥石スライダ13と、この調整砥石スライダ13を駆動する第4アクチュエータ(図示せず)と、を備え、自動で移動させるようにしてもよい。この第6実施形態でも、上記実施形態の制御装置20、第1アクチュエータ41、および第2アクチュエータ42備え、制御装置20により、調整砥石スライダ13及び第4アクチュエータの駆動が制御される。
【0044】
(本発明の他の実施形態:第7実施形態)
上記実施形態では、基台11に調整砥石1、ブレード4、およびワークレスト6を搭載しているが、図7に示すようにブレード4、およびワークレスト6を基台11やベッドに固定せず、ワークレスト6が搭載され、Y方向に移動可能なワークレストスライダ14と、このワークレストスライダ14を駆動する第5アクチュエータ(図示せず)と、を備え、自動で移動させるようにしてもよい。この第7実施形態でも、上記実施形態の制御装置20、第1アクチュエータ41、および第2アクチュエータ42備え、制御装置20により、ワークレストスライダ14及び第5アクチュエータの駆動が制御される。
【0045】
なお、上記実施形態では、研削砥石2がワークWに接触し、外力センサ8の出力信号により表わされるブレード4に作用する外力が増加またはあらかじめ制御装置20に設定された閾値を超えて増加したか否かの判定結果が肯定的である場合、研削砥石2とワークWとの接近速度を減少させる接近速度減少制御を行っているが、上記判定結果が肯定的である場合に、先ず、研削砥石2と調整砥石1との間隔を所定値まで広げた上で停止し、当該停止位置を研削砥石2の原位置として記憶保持するようにしてもよい。この場合、該停止後に再度、研削砥石2とワークWとの間隔を狭めるように制御し、再度、研削砥石2がワークWに接触して上記判定結果が肯定的である場合に、上記接近速度減少制御を行うよう。
【符号の説明】
【0046】
1…調整砥石、2…研削砥石、4…ブレード、6…ワークレスト、8…外力センサ、11…基台、12…研削砥石スライダ、13…調整砥石スライダ、14…ワークレストスライダ、20…制御装置、21…調整砥石駆動機構、41…第1アクチュエータ、42…第2アクチュエータ、W…ワーク。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7