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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】貨物自動車の荷台機構
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/32 20060101AFI20240111BHJP
   B60P 1/43 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B60P1/32
B60P1/43 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022186604
(22)【出願日】2022-11-22
【審査請求日】2023-08-31
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社花見台自動車が、JAF(一般社団法人日本自動車連盟)、株式会社ニーズ、株式会社からつレッカー、株式会社緊急レッカー隊、有限会社佐藤自動車レッカー、および神奈川レッカーサービス株式会社に、能條幹也が発明した「貨物自動車の荷台機構」を搭載した貨物自動車(セフテーローダグライド4)について、販売目的で、当該貨物自動車が記載されたカタログを用いて公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591084388
【氏名又は名称】株式会社花見台自動車
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】能條 幹也
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105215(JP,A)
【文献】登録実用新案第3186284(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/32
B60P 1/43
B60P 1/00
B60P 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーシに設けられたガイドレールに沿って荷台を前後方向に移動させて荷台を傾斜させたり該荷台を該シャーシ上に水平状態で配置させたりする荷台移動傾斜機構が設けられた貨物自動車の荷台機構であって、
荷物が載置される床部を備えた荷台と、
前記床部の後端部に設けられたヒンジと、
前記ヒンジを介して前記床部の後端部に連結されている荷台後端スロープと、
前記ガイドレールに対して前記荷台後端スロープを着脱自在に固定するロック機構とを備え、
前記ロック機構は、
前記ガイドレール及び前記荷台が前記シャーシの上に配置され且つ該シャーシに対して平行な走行可能状態のときに、前記荷台後端スロープを該荷台に対して略水平に倒伏している状態で該ガイドレールに固定しロックするようになっているとともに、
前記荷台移動傾斜機構により前記荷台を前後方に移動させることで、前記荷台後端スロープをロックしたり、該ロックを解除したりするようになっていることを特徴とする特徴とする貨物自動車の荷台機構。
【請求項2】
前記荷台移動傾斜機構により前記荷台を後方に移動させつつ傾斜させて該荷台の底面部の後端側を地面に接地させた状態にすると、自動的に、該荷台の後端部に連結されている荷台後端スロープが該荷台と地面を架け渡す登り勾配のテーパ面を形成するようになっていることを特徴とする請求項1に記載の荷台機構。
【請求項3】
前記ロック機構は、
前記ガイドレールの後方側に設けられた略舌形状に突出する舌片部と、
前記荷台後端スロープの裏面に設けられた、該舌片部が着脱自在に挿嵌される受け部とを有し、
前記荷台後端スロープの受け部に前記ガイドレールの舌片部が挿嵌されて該荷台後端スロープが前記ガイドレールに固定しロックされているときに、前記荷台移動傾斜機構により荷台を後方に移動させることで前記荷台後端スロープの受け部が前記舌片部から離間してロックが解除され、
前記荷台後端スロープが前記ガイドレールに固定さていない状態のときに、前記荷台移動傾斜機構により荷台を前方に移動させることで、前記荷台後端スロープの受け部に前記ガイドレールの舌片部が挿嵌されて該荷台後端スロープが前記ガイドレールにロックされるようになっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷台機構。
【請求項4】
前記荷台は、左右両側に側アオリが設けられておらず、後端側の底面部に接地ローラが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の貨物自動車の荷台機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台移動傾斜機構が設けられた貨物自動車の荷台機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車を運搬する車載専用車は、法律上、自動車しか搭載することができないため、自動車と一緒に、その自動車に関連するバンパーやタイヤ等を輸送したいときには、別途、車載専用ではない貨物自動車(例えば、一般貨物型・貨物自動車)を用意する必要がある。また、車載専用車は、荷台がホイールベースの2/3まで認められているため、市街地等を走行している際に荷台の後方部をぶつけてしまう虞があり、慎重な運転が求められ、運転手に大きな業務負担を負わせている。
【0003】
そのため、近年では、荷台を後方に移動させつつ傾斜させる荷台移動傾斜機構が設けられた、一般貨物型・貨物自動車を用いて、自動車等の車両を搬送することが行われている。この荷台移動傾斜機構が設けられた、一般貨物型・貨物自動車は、荷台に、自動車とその関連部品(タイヤ、バンパー等)を一緒に搭載して運ぶことができるとともに、自動車を搬送する以外の用途にも使えるという利点がある。また、この一般貨物型・貨物自動車は、荷台がホイールベースの1/2までしか認められていないため、車載専用車と比べて、運転が簡単であり、運転手の業務負担を軽減することができる。
【0004】
そして、リアゲートが設けられている貨物自動車に車両を積み込む場合には、荷台移動傾斜機構により、荷台の後端部側を地面に設置させる(積み降ろしできる姿勢にする)。その後、作業者は、荷台のゲートロック機構を解除し、立設しているリアゲートを回動させてリアゲートの先端(自由端)を地上に接地させる。これにより、荷台およびリアゲートによって地上から連続的に繋がった登坂路が形成される。作業者は、地上の運搬車両を運転し、上記の登坂路を通行させて、荷台に運搬車両を搭載できるようになっている。
また、荷台に車両を積み込んだ後は、リアゲートの先端を持ち上げ回動させて起立させた状態にしてロック機構で固定するとともに、荷台駆動手段により、荷台を前方に移動させるとともに、傾斜姿勢の傾動ベースを前方に移動させて水平姿勢に戻す。
【0005】
なお、車両を運ぶタイプのものではないが、一般貨物型・貨物自動車に、荷台移動傾斜機構が設けた構成が、例えば、特許文献1に開示されている。
具体的には、特許文献1に記載の貨物自動車は、自動車本体の後端部を支点として後傾動作可能に設けられた傾動ベースと、この傾動ベースの上に取り付けられ当該傾動ベースに対して平面視重複して荷物を運搬し得る水平姿勢から後端部よりも後方に迫り出した際に自重により傾動ベースを後傾動作させて後端を接地させた積み降ろし姿勢まで前後スライド可能に取り付けられたスライド荷台(以下、「荷台」)と、荷台を傾動ベースに対して前後方向にスライド動作させ得る荷台駆動手段とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実用新案登録3186284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上述した従来技術の一般貨物型・貨物自動車は、走行するときには、水平な荷台に対して、矩形・板状のリアゲートが略垂直に立設した状態で固定されているため、空荷のときにも、リアゲートが風の抵抗を受けることになり、燃費の悪化を招くという課題を有している。
また、上述した従来技術の一般貨物型・貨物自動車は、荷台に車両等の貨物の積み下ろしをする際に、その都度、作業者が荷台のロック機構を操作して、ロック状態を切り替えたり、リアゲートを倒したり、立設させたりする作業が発生するため、作業者に労力負担をかけるといる課題も有している。
【0008】
なお、実際の車両運搬の実務では、全長寸法が長い車両を荷台に積んで運搬するような場合に、リサゲートを後方側に傾斜させた状態で固定することも行われている(法律上、リアゲートを車両全長の1/10だけ斜めに傾けて走っても良いことになっている)。このような場合、後方側に傾斜させた状態で固定されたリアゲートの近傍に、運搬する車両のバンパーが配置されることがあり、ロック機構のロックが緩んでバンパーを傷つけてしまうことが発生している。
なお、上述した従来技術のリアゲートを設けた一般貨物型・貨物自動車は、水平な荷台に対して、リアゲートを略垂直に立設させた状態でしっかりと固定できるロック機構を設ける必要があり、重量増加やコストアップの要因になっている。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷台移動傾斜機構が設けられた貨物自動車の荷台機構であって、荷台に搬送対象の貨物を積み下ろしさせる際の作業者の労力を軽減させるとともに、走行時の風の抵抗を軽減させる荷台機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明は、シャーシに設けられたガイドレールに沿って荷台を前後方向に移動させて荷台を傾斜させたり該荷台を該シャーシ上に水平状態で配置させたりする荷台移動傾斜機構が設けられた貨物自動車の荷台機構であって、荷物が載置される床部を備えた荷台と、前記床部の後端部に設けられたヒンジと、前記ヒンジを介して前記床部の後端部に連結されている荷台後端スロープと、前記ガイドレールに対して前記荷台後端スロープを着脱自在に固定するロック機構とを備え、前記ロック機構は、前記ガイドレール及び前記荷台が前記シャーシの上に配置され且つ該シャーシに対して平行な走行可能状態のときに、前記荷台後端スロープを該荷台に対して略水平に倒伏している状態で該ガイドレールに固定しロックするようになっているとともに、前記荷台移動傾斜機構により前記荷台を前後方に移動させることで、前記荷台後端スロープをロックしたり、該ロックを解除したりするようになっていることを特徴とする。
【0011】
このように、本発明の荷台機構では、ガイドレール及び荷台がシャーシの上に配置され且つシャーシに対して平行な走行可能状態のときに、ロック機構が荷台後端スロープを荷台に対して略水平に倒伏している状態でガイドレールに固定しロックするようになっている。そのため、本発明の荷台機構を備えた貨物自動車では、従来技術の「荷台に対して垂直に立設して固定されているリアゲート」を備えた貨物自動車のように、走行している際に、荷台後端スロープが強い風の抵抗を受けることがない。
すなわち、貨物自動車に、本発明の荷台機構を搭載すれば、従来技術のリアゲートを備えた貨物自動車のような「空荷のときにも、風の抵抗を受けるという問題」が生じることがなく、従来技術のリアゲートを備えた貨物自動車と比べて、燃費性能を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の貨物自動車の荷台機構のロック機構は、荷台移動傾斜機構により荷台を前後方に移動させることで、荷台後端スロープをロックしたり、当該ロックを解除したりするようになっている。すなわち、本発明の構成によれば、荷台移動傾斜機構により荷台を前後方に移動させることで、自動的に、荷台後端スロープのロック状態とロック解除状態を切り替えることができる。そのため、本発明によれば、従来技術のリアゲート(或いは後あおり)のように、「荷台に車両等の貨物の積み下ろしをする際に、その都度、作業者が荷台のロック機構を操作して、リアゲート(或いは後あおり)をロックしたり、ロックを解除させる作業」が不要になり、作業者の労力負担が大幅に軽減される。
【0013】
また、本発明の荷台機構では、走行可能状態のときには、荷台後端スロープが荷台に対して略水平に倒伏している状態でロックされている。そのため、例えば、全長寸法が長い自動車(車両)を荷台に積んで運搬するような場合であっても、リアゲートを備えた貨物自動車のように、運搬する車両のバンパー等を傷つけてしまうことがない。
また、本発明の荷台機構では、ロック機構が、荷台後端スロープを荷台に対して略水平に倒伏している状態でガイドレールに固定しロックする構成であるため、従来技術の「荷台に対して垂直に立設して固定されているリアゲート」と比べて、簡単な構造のロック機構を採用することができ、軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0014】
また、前記荷台移動傾斜機構により前記荷台を後方に移動させつつ傾斜させて該荷台の底面部の後端側を地面に接地させた状態にすると、自動的に、該荷台の後端部に連結されている荷台後端スロープが該荷台と地面を架け渡す登り勾配のテーパ面を形成するようになっていることが望ましい。
【0015】
この構成によれば、従来技術の「リアゲートを備えた貨物自動車」のように、作業者がリアゲートを倒す操作(人力操作や機械操作)をし、荷台と地面との間にリアゲートを架け渡してテーパ面を形成する必要がなく、作業者の労力が軽減される。
【0016】
また、前記ロック機構は、前記ガイドレールの後方側に設けられた略舌形状に突出する舌片部と、前記荷台後端スロープの裏面に設けられた、該舌片部が着脱自在に挿嵌される受け部とを有し、前記荷台後端スロープの受け部に前記ガイドレールの舌片部が挿嵌されて該荷台後端スロープが前記ガイドレールに固定しロックされているときに、前記荷台移動傾斜機構により荷台を後方に移動させることで前記荷台後端スロープの受け部が前記舌片部から離間してロックが解除され、前記荷台後端スロープが前記ガイドレールに固定さていない状態のときに、前記荷台移動傾斜機構により荷台を前方に移動させることで、前記荷台後端スロープの受け部に前記ガイドレールの舌片部が挿嵌されて該荷台後端スロープが前記ガイドレールにロックされるようになっていることが望ましい。
【0017】
このように、本発明のロック機構は、ガイドレールの後方側に設けた舌片部と、荷台後端スロープの裏面に設けた受け部とを有する構成、すなわち、従来技術の「荷台に対して垂直に立設して固定されているリアゲート」のロック機構と比べて、簡単な構成になっているため、軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0018】
また、前記荷台は、左右両側に側アオリが設けられておらず、後端側の底面部に接地ローラが設けられていることが望ましい。
このように、本発明では、荷台の後端側・底面部には、接地ローラが設けられているため、地面に荷台の後端部が降ろされたときに、接地ローラが地面GLに接地し、地面でスムーズに、荷台及び後端スロープ30を移動させることができるようになる。
また、荷台には左右両側に側アオリが設けられていないため、横幅寸法が長い車両を荷台に積んで運搬することにも対応できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、荷台移動傾斜機構が設けられた貨物自動車の荷台機構であって、荷台に搬送対象の貨物を積み下ろしさせる際の作業者の労力を軽減させるとともに、走行時の風の抵抗を軽減させる荷台機構を提供することとができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の荷台移動傾斜機構及び荷台機構を備えた貨物自動車を示した模式図であり、荷台移動傾斜機構によりシャーシから荷台全体が地面に降ろされて傾斜させた状態にされ、且つ荷台後端スロープが荷台と地面を架け渡している状態を示した模式図である。
図2】本発明の実施形態の荷台移動傾斜機構及び荷台機構を備えた貨物自動車がシャーシの上に荷台及び荷台後端スロープを水平状態で配置した状態を示した模式図であり、(a)が貨物自動車の後端側の側面を示した模式図であり、(b)が貨物自動車の後面を示した模式図である。
図3】本発明の実施形態の荷台機構を構成する荷台、ヒンジ及び荷台後端スロープを平面視した模式図である。
図4】本発明の実施形態の荷台機構を構成するロック機構を説明するための模式図であり、(a)が貨物自動車のガイドレールの後端部の舌片部に、荷台後端スロープの受け部が挿嵌される前のロックが解除されている状態を示した模式図であり、(b)が貨物自動車のガイドレールの後端部の舌片部に、荷台後端スロープの受け部が挿嵌されてロックされている状態を示した模式図である。
図5】本発明の実施形態の貨物自動車のガイドレールの後方側に設けられたロック機構を構成する舌片部の構成を示した模式図である。
図6】本発明の実施形態の貨物自動車の荷台後端スロープの裏面側に設けられたロック機構を構成する受け部の構成を示した模式図である。
図7】本発明の実施形態の変形例の荷台移動傾斜機構及び荷台機構を備えた貨物自動車を示した模式図であり、荷台移動傾斜機構によりシャーシから荷台の一部が地面に降ろされて傾斜させた状態にされ、且つ荷台後端スロープが荷台と地面を架け渡している状態を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態の貨物自動車の荷台機構について、図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態の荷台機構は、荷台移動傾斜機構が設けられた、一般貨物型・貨物自動車に搭載されるものであり、自動車以外の貨物を搬送することができるようになっている。
【0022】
また、本実施形態の貨物自動車Wは、「荷台20と、荷台20の後端部に設けられたヒンジ40及び荷台後端スロープ30と、荷台後端スロープ30のロック機構50とを備えた荷台機構」の構成に特徴があり、それ以外の構成は従来のものと同じである。そのため、以下では、上記の特徴を詳細に説明し、それ以外の構成については、省略或いは簡略化して説明する。
【0023】
《貨物自動車の全体構成》
先ず、本実施形態の貨物自動車Wの全体構成について、図1~3を参照しながら説明する。
ここで、図1は、本実施形態の荷台移動傾斜機構及び荷台機構を備えた貨物自動車を示した模式図であり、荷台移動傾斜機構によりシャーシから荷台全体が地面に降ろされて傾斜させた状態にされ、且つ荷台後端スロープが荷台と地面を架け渡している状態を示した模式図である。図2は、本実施形態の荷台移動傾斜機構及び荷台機構を備えた貨物自動車がシャーシの上に荷台及び荷台後端スロープを水平状態で配置した状態を示した模式図であり、(a)が貨物自動車の後端側の側面を示した模式図であり、(b)が貨物自動車の後面を示した模式図である。また、図3は、本実施形態の荷台機構を構成する荷台、ヒンジ及び荷台後端スロープを平面視した模式図である。
【0024】
図1に示すように、本実施形態の貨物自動車Wは、キャビン1と、キャビン1に接続され且つ車両前後方向(X方向)に延びるシャーシ3とを有しているとともに、荷台移動傾斜機構が設けられているとともに、荷台機構が搭載されている。
【0025】
荷台移動傾斜機構は、シャーシ3に設けられたガイドレール10に沿って荷台20を前後方向に移動させることができるようになっており、荷台20を後方に移動させて傾斜させた状態(図1に示す状態)にしたり、荷台20をシャーシ3の上に水平状態で配置させた状態(図2に示す状態)にしたりする。
【0026】
具体的には、荷台移動傾斜機構は、シャーシ3の後部の傾斜基軸5により支持される一対のガイドレール(以下、単に「レール」)10を備えている。このレール10は、荷台20を摺動自在支持しており、荷台20がレール10に沿って車両の前後方向(X方向)に往復移動できるようになっている。また、荷台移動傾斜機構は、レール10の後部に形成された下方に突出する支持脚13と、レール10に沿って車両前後方向に荷台20を往復移動させるスライドシリンダ(図示せず)とを備えている。なお、スライドシリンダには、例えば、油圧シリンダを用いることができる。
【0027】
また、レール10を支持する傾斜基軸5は、シャーシ3の後端部のフレーム間において、レール10の長手方向に対して垂直に軸止されている。レール10の底部には、傾斜基軸5と対応する位置に係合部が形設されており、この係合部に傾斜基軸5が挿嵌されて、レール10がシャーシ3に回動自在に支持されている。
【0028】
また、図2に示すような、シャーシ3の上にレール10及び荷台20が水平(シャーシ3に対して平行)に載置されている状態(説明の便宜上、「走行可能状態」)において、荷台20を後方に移動させて傾斜させる場合、荷台移動傾斜機構のスライドシリンダを伸長させて、荷台20に対して、車両・後方側に荷重をかける。これにより、荷台20は、レール10に沿って水平に後方移動する。なお、レール10自体は、傾斜基軸5に連結されているので、水平方向には移動しない。
【0029】
そして、荷台20が、ある程度後方に移動すると、荷台20自体の重量(若しくは荷台2と貨物を合わせた重量)により、レール10が後方側に傾斜し、且つ荷台20がレール10と共に傾斜しつつ、レール10に沿って後方に移動する。即ち、傾斜基軸5を中心として、傾斜基軸5より後方にかかるモーメントが一定値になると荷台20が傾斜しながら後方側に移動していき、荷台20の大部分が地面GLに降ろされて傾斜した状態(図1に示す状態)になる。なお、荷台20の後端部に連結されている荷台後端スロープ30も荷台20とともに、地面GLに降ろされる。
なお、後方移動及び傾斜動作は、例えば、支持脚13がに地面GLに接地するタイミングで、スライドシリンダを停止させることで完了する。
【0030】
また、荷台20を傾斜状態(図1に示す状態)から水平な走行可能状態(図2に示す状態)に戻すときには、スライドシリンダを収縮させて、荷台20に対して、車両・前方側に荷重をかけて、上記と逆の動作をさせる。なお、荷台20の後端部に連結されている荷台後端スロープ30も荷台20とともに、シャーシ3の上に平行な状態で戻される。
なお、本実施形態では、一例として、荷台移動傾斜機構が、荷台20自体の重量(若しくは荷台20と貨物を合わせた重量)により、レール10及び荷台20を傾斜させるタイプのもの(例えば、特許第3172130号公報、特許第3361734号公報に記載された荷台移動傾斜機構)を示しているが特にこれに限定されるものではない。荷台移動傾斜機構は、荷台20を後方に移動させて傾斜させるものであれば、どのような構成のものであっても、本実施形態の荷台機構(荷台20、荷台後端スロープ30、ヒンジ40及びロック機構50)を搭載することができる。
【0031】
《荷台機構》
次に、本実施形態の荷台機構について説明する。
本実施形態の荷台機構は、図1~3に示すように、荷物が載置される床部21を備えた荷台20と、床部21の後端部に設けられたヒンジ40と、ヒンジ40を介して床部21の後端部に回動自在に連結されている荷台後端スロープ30と、ガイドレール10に対して荷台後端スロープ30を着脱自在に固定するロック機構50(図4参照)とを備えている。
【0032】
荷台20は、車両(自動車)等の貨物が載置される平面視・矩形の床部21と、床部21の前端側(キャビン1側)に、床部21に対して上方に向けて直角に延設されている鳥居部23とを備えてる。
また、荷台20は、側アオリ及び後アオリが設けられておらず(図1、2参照)、その後端部に、車幅方向(Y方向)の全域に沿って延設された全幅丁番式のヒンジ40を介して、荷台後端スロープ(以下、「後端スロープ」)30が回動自在に連結されている(図1、3参照)。
【0033】
また、荷台20の後端側の底面部には、接地ローラ25が設けられている。この構成によれば、地面GLに荷台20の後端部が降ろされたときに、接地ローラ25が地面GLに接地し、地面GLでスムーズに、荷台20及び後端スロープ30を移動させることができる。
【0034】
また、後端スロープ30は、平面視矩形状に形成されており、車幅方向(Y方向)の長さ寸法が、荷台20の車幅方向(Y方向)の長さ寸法と略同じ寸法になっている。また、後端スロープ30は、上面側が、後端部(自由端部)からヒンジ40に連結されている前端部に向けて緩やかな登り勾配のテーパ面になっている(図1参照)。
【0035】
そして、後端スロープ30は、図1に示すように、荷台20と共に地面GLに降ろされた状態のときには、地面GLに対して、その下面(裏面)側が接地するとともに、荷台20の後端部にヒンジ40を介して架け渡された状態になり、その上面(表面)側が、地面GLと荷台20を繋ぐ緩やかな登り勾配のテーパ面を形成する。このように、後端スロープ30により、地面GLから荷台20に繋がった緩やかな登り勾配のテーパ面が形成されるため、作業者は、地面GLにある運搬対象の車両を運転し、上記のテーパ面を通行させて、荷台20に車両を搭載できる。
【0036】
なお、本実施形態の後端スロープ30は、その車幅方向(Y方向)の長さ寸法が、荷台20の車幅方向(Y方向)の長さ寸法と同じ寸法であり、荷台20の後端部に、荷台20の車幅方向(Y方向)の全域に沿って延設された全幅丁番式のヒンジ40を介して連結されている(図1、3参照)。
そのため、荷台20の上に、自動車等の車両を乗り入れる作業を簡単に行うことができる。
【0037】
また、後端スロープ30は、図2に示すように、レール10及び荷台20がシャーシ3の上に配置され且つシャーシ3に対して平行な状態(走行可能状態)のときには、後述するロック機構50により、荷台20のに対して略水平に倒伏している状態で固定されるようになっている。
【0038】
このように、本実施形態の貨物自動車Wは、荷台20の後端部にリアゲートや後あおりがなく、荷台20に車両等の貨物を積み下ろすための後端スロープ30が設けられている。また、後端スロープ30は、走行可能状態のときには、荷台20のに対して略水平に倒伏している状態で固定されている(図2(a)参照)。そのため、本実施形態の貨物自動車Wの後端スロープ30は、従来技術の「荷台に対して垂直に立設して固定されているリアゲート」を備えた貨物自動車のように、走行している際に、強い風の抵抗を受けることがない。
また、後端スロープ30は、走行可能状態のときには、荷台20のに対して略水平に倒伏している状態で固定されているため、例えば、全長寸法が長い自動車(車両)を荷台に積んで運搬するような場合であっても、リアゲートを備えた貨物自動車のように、運搬する車両のバンパー等を傷つけてしまうことがない。
【0039】
また、本実施形態の荷台20は、左右両側に側アオリが設けられていないため、横幅寸法が長い車両等の貨物を荷台に積んで運搬することにも対応できる。
【0040】
《後端スロープ30のロック機構50》
次に、本実施形態の貨物自動車Wの後端スロープ30を固定するロック機構50について、図4図6を参照しながら説明する。
【0041】
ここで、図4は、本実施形態の荷台機構を構成するロック機構を説明するための模式図であり、(a)が貨物自動車のガイドレールの後端部の舌片部に、荷台後端スロープの受け部が挿嵌される前のロックが解除されている状態を示した模式図であり、(b)が貨物自動車のガイドレールの後端部の舌片部に、荷台後端スロープの受け部が挿嵌されてロックされている状態を示した模式図である。
また、図5は、本実施形態の貨物自動車のガイドレールの後方側に設けられたロック機構を構成する舌片部の構成を示した模式図である。図6は、本実施形態の貨物自動車の荷台後端スロープの裏面側に設けられたロック機構を構成する受け部の構成を示した模式図である。
【0042】
上記のロック機構50は、レール10の後方側に設けられた雄部材を構成する舌片部50A(図4図5参照)と、後端スロープ30の裏面に設けられた雌部材を構成する受け部50B(図4図6参照)とを有し、舌片部50Aが受け部50Bに着脱自在に挿嵌されるようになっている。
【0043】
舌片部50Aは、図4、5に示すように、レール10の後方側において、車両前後方向(X方向)と平行で且つ後方に向けて突出する略舌状に形成されている。
また、受け部50Bは、図4、6に示すように、後端スロープ30の下面(裏面)の後方側に、前面に開口50B1を有する略アーチ状に形成され、開口部50B1に舌片部50Aが挿入され、舌片部50Aが嵌合するようになっている。
なお、受け部50Bの開口50B1は、舌片部50Aが着脱自在に挿嵌できる大きさ寸法に形成されている。
【0044】
そして、後端スロープ30がロック機構50により固定されていないロック解除状態(図4(a)に示す状態)から、荷台移動傾斜機構により、荷台20を車両・前方側に移動させると、荷台20とともに後端スロープ30も車両・前方側に移動する。また、荷台20とともに後端スロープ30が車両・前方側に移動すると、レール10の後方側の舌片部50Aに向けて、後端スロープ30の受け部50Bが前進し近接していき、図4(b)に示すように、レール10の舌片部50Aに、後端スロープ30の受け部50Bが挿嵌される。これにより、後端スロープ30が、荷台20のに対して略水平に倒伏している状態で、レール10に固定(ロック)された状態になる。
【0045】
一方、後端スロープ30がロック機構50により固定されている状態(図4(b)に示す状態)において、ロック機構50の固定(ロック)を解除する場合、荷台移動傾斜機構により荷台20を後方にスライド移動させる。これにより、荷台20とともに後端スロープ30も後方にスライド移動していき、後端スロープ30の受け部Bがレール10の凸片部50Aの嵌合から外れて離間し、ロック機構50による固定(ロック)が解除される。
【0046】
《貨物自動車に貨物を積み下ろす際の荷台機構の動作》
次に、本実施形態の貨物自動車Wによる貨物の積み下ろし作業の際の荷台機構の動作について、荷台20に車両(自動車)を積み込む場合を例にして説明する。
ここでは、貨物自動車Wが走行可能状態(図2に示す状態)において、荷台20を地面GLに降ろし傾斜させ、荷台20に車両を積み込む場合について説明する。
なお、図2に示す貨物自動車Wでは、ロック機構50により、荷台20の後端部に連結されている後端スロープ30が荷台20のに対して略水平に倒伏している状態で、レール10に固定されている。
【0047】
作業者は、図2に示す走行可能状態の貨物自動車Wの荷台移動傾斜機構を稼働させ、荷台移動傾斜機構により荷台20に後方側への荷重をかけて、荷台20(及び後端スロープ30)を後方に移動させる。このとき、上述したように、ロック機構50によりガイドレール10に固定されてる後端スロープ30のロックが自動的に解除される。
【0048】
その後、荷台20(及び後端スロープ30)が、ある程度後方に移動すると、荷台20自体の重量により、レール10が後方側に傾斜し、且つ荷台20がレール10と共に傾斜しつつ、レール10に沿って後方に移動する。このとき、後端スロープ30も荷台20に押されて、荷台20とともに後方に移動する。また、荷台20及び後端スロープ30が、ある程度、後方に移動すると、荷台20の後端側の底面部の接地ローラ25が地面GLに接地すると共に、後端スロープ30の裏面側が地面に当接した状態になる。その後、荷台20及び後端スロープ30は、図1に示すような荷台20の大部分が地面GLに降ろされて傾斜した状態になるまで後方に移動し停止する。
本実施形態では、荷台20の後端部に接地ローラが設けられているので、地面GLに荷台20の後端部が降ろされたときに、接地ローラ25が地面GLに接地し、地面GLに対してスムーズに、荷台20及び後端スロープ30を移動させることができる。
【0049】
そして、図1に示すように、シャーシ3から荷台20を地面GL側に降ろし、荷台20の後端部(接地ローラ25)を地面GLに接地させて傾斜させた状態にすると、自動的に、荷台20の後端部に連結されている後端スロープ30が荷台と地面GLを架け渡す緩やかな登り勾配のテーパ面を形成する。
その後、作業者は、例えば、搬送対象の車両(自動車)を運転し、緩やかな登り勾配のテーパ面の後端スロープ30を通って荷台20の床部21に車両を移動させて積み込み、床部21に車両を固定する。
【0050】
また、荷台20の床部21に車両を移動させて積み込み固定すると、作業者は、貨物自動車Wの荷台移動傾斜機構を稼働させ、荷台移動傾斜機構により荷台20に前方側への荷重をかけて、上記と逆の動作をさせると、シャーシ3の上にレール10及び荷台20が水平(シャーシ3に対して平行)に載置されている走行可能状態(図2に示す状態)に戻る。このとき、上述したように、ロック機構50により後端スロープ30が、荷台20に対して略水平に倒伏している状態で該ガイドレール10に自動的にロックされた状態になる。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態によれば、荷台移動傾斜機構により荷台20を前後方に移動させることで、自動的に、後端スロープ30のロック状態とロック解除状態を切り替えることができる。また、荷台20を傾斜状態にすると、自動的に、荷台20の後端部に連結されている後端スロープ30が荷台20と地面GLを架け渡す緩やかな登り勾配のテーパ面を形成する。
そのため、本実施形態によれば、従来技術のリアゲートのように、「荷台に車両等の貨物の積み下ろしをする際に、その都度、作業者が荷台のロック機構を操作して、リアゲートを倒したり、立設させたりする作業」が不要になり、車両(自動車)等の搬送対象物の荷台20への積み下ろし作業の労力を大幅に軽減することができる。
【0052】
また、本実施形態の荷台機構では、ロック機構50が、ガイドレール10及び荷台20がシャーシ3の上に配置され且つシャーシ3に対して平行な走行可能状態のときに、後端スロープ30を荷台20に対して略水平に倒伏している状態でガイドレール10に固定しロックするようになっている。
したがって、本実施形態によれば、従来技術の「荷台に対して垂直に立設して固定されているリアゲート」を備えた貨物自動車のように、走行している際に、荷台後端スロープが強い風の抵抗を受けることがないため、従来技術のリアゲートを備えた貨物自動車と比べて、燃費性能が向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、走行可能状態のときには、後端スロープ30が荷台20に対して略水平に倒伏している状態でロックされているため、例えば、全長寸法が長い自動車(車両)を荷台20に積んで運搬するような場合であっても、リアゲートを備えた貨物自動車のように、運搬する車両のバンパー等を傷つけてしまうことがない。
【0054】
また、本実施形態の貨物自動車Wでは、ロック機構50が、後端スロープ30を荷台20に対して略水平に倒伏している状態でレール10に固定しロックする構成であるため、従来技術の「荷台に対して垂直に立設して固定されているリアゲート」と比べて、簡単な構成(レール10に設けられた舌片部50A、及び後端スロープ30に設けられた受け部50B)を採用することができ、軽量化とコストダウンを図ることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、荷台移動傾斜機構が設けられた貨物自動車Wの荷台機構であって、荷台20に搬送対象の貨物を積み下ろしさせる際の作業者の労力を軽減させるとともに、走行時の風の抵抗を軽減させる荷台機構を提供することができる。
【0056】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【0057】
上述した図1では、シャーシ3から荷台20全体が、地面GLに降ろされ、荷台を緩やかに傾斜させた状態で配置するタイプの荷台移動傾斜機構を示しているが、特にこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、荷台20の一部(図示する例では半分位)が地面GLに降ろされて、傾斜させて配置させるタイプの荷台移動傾斜機構であっても、本実施形態の荷台機構を適用することができる。
ここで、図7は、本実施形態の変形例の荷台移動傾斜機構及び荷台機構を備えた貨物自動車を示した模式図であり、荷台移動傾斜機構によりシャーシから荷台の一部が地面に降ろされて傾斜させた状態にされ、且つ荷台後端スロープが荷台と地面を架け渡している状態を示した模式図である。
【符号の説明】
【0058】
W…貨物自動車
1…キャビン
3…シャーシ
5…傾斜基軸
10…ガイドレール
13…支持脚
20…荷台
21…床部
23…鳥居部
25…接地ローラ
30…荷台後端スロープ
40…ヒンジ
50…ロック機構
50A…舌片部
50B…受け部
50B1…開口
【要約】
【課題】荷台移動傾斜機構が設けられた貨物自動車の荷台機構であって、荷台に搬送対象の貨物を積み下ろしさせる際の作業者の労力を軽減させるとともに、走行時の風の抵抗を軽減させる荷台機構を提供する。
【解決手段】荷台移動傾斜機構が設けられた貨物自動車の荷台機構であって、床部21を備えた荷台22と、床部21の後端部に設けられたヒンジ40と、ヒンジ40を介して床部21の後端部に連結されている荷台後端スロープ30と、ガイドレール10に対して荷台後端スロープを着脱自在に固定するロック機構40とを備え、ロック機構50は、ガイドレール10及び荷台20がシャーシ3の上に配置され且つシャーシ3に対して平行な走行可能状態のときに、荷台後端スロープ30を荷台20に対して水平に倒伏している状態でガイドレール10に固定しロックする。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7