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特許7417322神経変性疾患及び/又はその臨床的状態を抑制及び/又は治療するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】神経変性疾患及び/又はその臨床的状態を抑制及び/又は治療するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/404 20060101AFI20240111BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240111BHJP
   C07D 209/40 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
A61K31/404
A61P25/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P43/00 111
C07D209/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022524720
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2020060319
(87)【国際公開番号】W WO2021090172
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】62/930,022
(32)【優先日】2019-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519373648
【氏名又は名称】シーケー・リジョン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ガン-ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ミンギュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン-フン
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0119941(KR,A)
【文献】国際公開第2019/027239(WO,A2)
【文献】国際公開第2018/194309(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/88677(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/041954(WO,A1)
【文献】特表2011-529873(JP,A)
【文献】国際公開第2013/142817(WO,A2)
【文献】特表2009-523125(JP,A)
【文献】国際公開第2012/065065(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/088677(WO,A1)
【文献】特表2002-541244(JP,A)
【文献】国際公開第2005/107466(WO,A1)
【文献】特表2022-505057(JP,A)
【文献】特表2018-515616(JP,A)
【文献】Chem. Biol.,2003年,10(12),1255-1266,doi: 10.1016/j.chembiol.2003.11.010
【文献】J. Mol. Graph. Model.,2016年,65,100-107,doi: 10.1016/j.jmgm.2016.03.001
【文献】European Journal of Medicinal Chemistry,2006年,41,373-378,doi: 10.1016/j.ejmech.2005.10.018
【文献】GSK3βとグリオーマ,Neuro-Oncologyの進歩,2018年,25(1),1-9,DOI: 10.11452/neurooncology.25.1_1
【文献】Journal of Molecular Graphics and Modelling,2015年,61,231-242,doi: 10.1016/j.jmgm.2015.07.010
【文献】J. Med. Chem.,2004年,47(4),935-946,doi: 10.1021/jm031016d
【文献】Int. J. Obes.,2014年,38(8),1044-1052,doi: 10.1038/ijo.2013.209
【文献】J. Med. Chem.,2017年,60,4949-4962,DOI: 10.1021/acs.jmedchem.7b00324
【文献】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2017年,27,5122-5125,doi: 10.1016/j.bmcl.2017.10.069
【文献】Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2014年,58(2),995-1004,DOI: 10.1128/AAC.02094-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1に示される化合物を含む、又は、前記化合物およびその製薬学的に許容される水和物、塩、代謝産物もしくは担体を含む、対象体の神経変性疾患と関連する状態及び疾患又は関連する臨床的状態のうち少なくとも一方の状態を治療する方法で使用するための製薬学的組成物。
【化1】
【請求項2】
経口、局所、鼻腔、非経口、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、頭蓋内、腫瘍内、又は肺伝達によって対象体に投与されることを特徴とする、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
神経変性疾患又は関連する臨床的状態は、認知症、アルツハイマー病、及びパーキンソン病から選ばれた少なくとも一つの疾患を含むことを特徴とする、請求項又は請求項に記載の組成物。
【請求項4】
神経変性疾患又は関連する臨床的状態は、パーキンソン病であることを特徴とする、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2019年11月4日に出願された米国仮出願第62/930,022号に基づいた優先権主張出願であり、該当の出願の明細書に開示された全ての内容は本出願に援用される。
【0002】
技術分野
本明細書に開示された多様な様態及び実施形態は、神経変性疾患と関連する状態/疾患又はそれと関連する臨床的状態のモデリング、治療、治療に対する耐性の低減、予防、及び診断に関する。実施形態は、組成物および本明細書に開示された組成物の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階を備える、状態/疾患を治療するための方法を含む。他の実施形態は、対象体でのGLP-1の活性を変更及び/又は増進させるための方法を含む。
【背景技術】
【0003】
アルツハイマー病(AD)及びパーキンソン病(PD)を含む神経変性疾患は、高齢者層で罹患することがあり、高齢化社会と共に、患者の数が幾何級数的に増加し得る。若い人達にとって、神経変性疾患の早期発病は珍しいことではない。高齢者達に最も多く見られる形態の認知症であるアルツハイマー病は、記憶、認知、性格、及び他の機能を撹乱させる不可逆的な脳の変性を引き起こし、結果として、完全な脳機能障害によって死亡に至ることがある。遺伝的要因と、食事、活動、喫煙、外傷性脳損傷、糖尿病及び他の医学的疾患を含む環境的要因とが、このような形態の疾患の発病リスクに影響する。パーキンソン病は、認知症の最も多く見られる形態であり、記憶及び学習能力、日常機能及び人生の質に影響を及ぼす認知不全及び行動変化に特徴を持つ。パーキンソン病は、脳でドーパミンを生成するニューロンの主な損失に要因があるとされている。
【0004】
一部の研究は、アルツハイマー病及びパーキンソン病などの神経変性疾患の発生にグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)が関与するということを報告した。GLP-1は、神経及び認知機能に影響を及ぼし得るだけでなく、ブドウ糖の代謝に対する調節効果にも影響を及ぼすことがある。認知損傷のメカニズムは、脳インスリン信号伝逹の損傷、アミロイド代謝の変化、終末糖化産物の蓄積、及び酸化ストレスを含むものと推定される。アルツハイマー病及びパーキンソン病などの神経変性疾患は、その制御過程を含む過程が複雑であるため、新たな治療法の開発が強く要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
GLP-1の陰性調節剤としてのCXXC5の投与によってアルツハイマー病及び/又はパーキンソン病を有する対象体の脳におけるCXXC5が想定以上に過剰発現していることを考慮すると、CXXC5-DVLインターフェース(CXXC5-DVL界面)を阻害することによってこれらの疾患を改善できる化合物を開発することは魅力的な目的となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の様態は、CXXC5-DVLインターフェースを阻害する化合物、及びこれを用いて対象体のアルツハイマー病及びパーキンソン病などの神経変性疾患に影響を及ぼす方法及び/又は神経変性疾患を治療するための方法を含む。
【0007】
本出願の実施形態は、対象体の神経変性疾患と関連する状態及び/又は疾患又は関連する臨床的状態を治療するための組成物及び方法に関する。特定の実施形態において、ここで開示された組成物及び方法は、治療法の一つ以上の副作用の抑制を含む。他の実施形態は、対象体での活性GLP-1の発現の抑制に少なくとも部分的に起因する、神経変性疾患に寄与する疾患として診断された、又はそのような状態を有する対象体を治療するための組成物及び方法に関する。
【0008】
第1様態において、ここに開示された組成物は、対象体でのCXXC5-DVLインターフェース、すなわち、XXCフィンガータンパク質5(CXXC5)とディシブルド(dishevelled)(DVL)との間のインターフェースを阻害することによって作用し得る少なくとも一つの製剤を含む。一部の実施形態において、CXXC5-DVLインターフェースを阻害する少なくとも一つの製剤は、ディシブルド(DVL)及び/又はDVL結合モチーフのPDZドメインと結合する少なくとも一つの製剤、少なくとも一つのGSK3β阻害剤、少なくとも一つのGLP-1類似体、及び/又は少なくとも一つのGLP-1受容体作動薬(agonist)、又はこれらの組み合わせを含む。
【0009】
第1実施形態は、対象体の神経変性疾患と関連する状態及び/又は疾患又は関連する臨床的状態を治療する方法で使用するための化1(式I)の化合物を含む。
【0010】
【化1】
【0011】
前記式において、Xは、Rに選択的に置換されたO又はNである。
【0012】
ここで、Rは、水素、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、又は、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、アリール、又はベンジルに選択的に置換されたアルコキシであるか、水素、アルキル、アルケニル、又は、ブチル、アルケニル、ハロアルキル、アリール、又はベンジルに置換されたアルコキシである。
【0013】
は、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、又はカルボキシである。
【0014】
は、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、又はカルボキシでるか、水素、フッ素、ヨウ素、アスタチン、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、OCF、エトキシ、プロピルオキシ、ブチルオキシ、ハロアルコキシ、カルボキシ、臭素、又は塩素である。ここで、Rが臭素又は塩素である場合、Rは水素でなく、Rが塩素である場合、Rは塩素でない。
【0015】
は、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、又はカルボキシであるか、水素、ニトロ、フッ素、臭素、ヨウ素、アスタチン、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、又はカルボキシである。;及び/又は、Rが塩素であるとき、Rは、水素又はニトロでなく、
【0016】
は、水素、ニトロ、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、又はカルボキシである。
【0017】
第2実施形態は、第1実施形態の化合物にかかり、XがOである化合物を含む。
【0018】
第3実施形態は、第1実施形態の化合物にかかり、XがNであり、Rがヒドロキシ、又は、アルキル、アルケニル、ハロアルキル、アリール、又はベンジルに選択的に置換されたアルコキシ、又は、Rが水素、アルキル、アルケニル、又は、ブチル、アルケニル、ハロアルキル、アリール、又はベンジルに置換されたアルコキシである化合物を含む。
【0019】
第4実施形態は、第1乃至第3実施形態のうちいずれか一つの化合物にかかり、Rがアルキル、アルケニル、ハロアルキル、アリール、又はベンジルに選択的に置換されたアルコキシである化合物を含む。
【0020】
第5実施形態は、第1乃至第4実施形態のうちいずれか一つの化合物にかかり、化合物が図11図12、及び/又は表2-5に開示された化合物のうちいずれか一つである化合物を含む。
【0021】
第6実施形態は、第1乃至第5実施形態のうちいずれか一つの化合物にかかり、下記の化2の化合物を含む少なくとも一つの化合物を含む。
【0022】
【化2】
【0023】
第7実施形態は、対象体の神経変性疾患と関連する状態及び/又は疾患又は関連する臨床的状態を治療する方法で使用するための化3(式II)の化合物を含む。
【0024】
【化3】
【0025】
前記式において、R、R、R、R、及びR10は、独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、又は化4である。
【0026】
【化4】
【0027】
11のそれぞれは、R12に置換された、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、N、ジイミド、であり、化5に示される化合物の少なくとも一つである。
【0028】
【化5】
【0029】
あるいは、R11は、下記化6に示される化合物の少なくとも一つである。
【0030】
【化6】
【0031】
12は、化7のうちのいずれか一つである。
【0032】
【化7】
【0033】
13は、水素、又は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキルである。
【0034】
14のそれぞれ、R15のそれぞれ、及びR16のそれぞれは、独立して水素;ハロゲン;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアルコキシに選択的に置換されたハロアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルコキシ;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルケニル;又は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキニルである。
【0035】
、X及びXは、独立して炭素、窒素、酸素、又は硫黄である。
【0036】
第8実施形態は、第7実施形態にかかり、R11がR12にそれぞれ置換されたN又はジイミドである化合物を含む。
【0037】
第9実施形態は、第7乃至第8実施形態のうちいずれか一つにかかり、R11が下記の化合物のうちいずれか一つである化合物を含む:
【0038】
【化8】
【0039】
第10実施形態は、第7乃至第9実施形態のうちいずれか一つに係る化合物を含み、化合物は下記の化9に示される化合物のいずれか一つである。
【0040】
【化9】
【0041】
第11実施形態は、対象体の神経変性疾患と関連する状態及び/又は疾患又は関連する臨床的状態を治療する方法で使用するための化10(式III)の化合物を含む。
【0042】
【化10】
【0043】
前記式において、R17のそれぞれは、独立して水素;ハロゲン;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアルコキシに選択的に置換されたハロアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルコキシ;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルケニル;又は水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキニルである。
【0044】
及びXは、独立して窒素、酸素、又は硫黄である。
【0045】
第12実施形態は、第11実施形態にかかり、R17のそれぞれが独立してハロゲン又はヒドロキシである化合物を含む。
【0046】
第13実施形態は、第11乃至第12実施形態のうちいずれか一つに係る化合物を含み、化合物は下記の化11に示される化合物である。
【0047】
【化11】
【0048】
第14実施形態は、対象体の神経変性疾患と関連する状態及び/又は疾患又は関連する臨床的状態を治療する方法で使用するための化12(式IV)の化合物を含む。
【0049】
【化12】
【0050】
前記式において、R18のそれぞれ及びR19は、独立して水素;ヒドロキシ;ハロゲン;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアルコキシに選択的に置換されたハロアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルコキシ;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルケニル;又は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキニルである。
【0051】
第15実施形態は、第14実施形態にかかり、R19が水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキルである化合物を含む。
【0052】
第16実施形態は、第14乃至第15実施形態のうちいずれか一つにかかり、R18のそれぞれが独立して水素、ヒドロキシ、ハロゲン、アルコキシ、アルキル、アルケニル、又はハロアルキルである化合物を含む。
【0053】
第17実施形態は、第14乃至第16実施形態のうちいずれか一つに係る化合物を含み、化合物は下記の化13に示される化合物である。
【0054】
【化13】
【0055】
第18実施形態は、対象体の神経変性疾患と関連する状態及び/又は疾患又は関連する臨床的状態を治療する方法で使用するための化14(式V)の化合物を含む。
【0056】
【化14】
【0057】
前記式において、R'のそれぞれ及びR''のそれぞれは、独立して水素;ハロゲン;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアルコキシに選択的に置換されたハロアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルコキシ;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルケニル;又は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキニルである。
【0058】
第19実施形態は、第18実施形態にかかり、R'のそれぞれ及びR''のそれぞれが独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、又はハロアルキルである化合物を含む。
【0059】
第20実施形態は、第18乃至第19実施形態のうちいずれか一つに係る化合物を含み、化合物は下記の化15に示される化合物である。
【0060】
【化15】
【0061】
第21実施形態は、対象体の神経変性疾患と関連する状態及び/又は疾患又は関連する臨床的状態を治療する方法で使用するための化16(式VI)の化合物を含む。
【0062】
【化16】
【0063】
前記式において、R20のそれぞれ及びR21のそれぞれは、独立して水素;ハロゲン;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアルコキシに選択的に置換されたハロアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、又は、水素、ハロゲン、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたカルボニルに選択的に置換されたアルキル;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルコキシ;水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルケニル;又は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、又はハロアルキルに選択的に置換されたアルキニルである。
【0064】
第22実施形態は、第21実施形態にかかり、R20のそれぞれ及びR21のそれぞれが独立して水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、カルボニル、カルボキシル、又はハロアルキルである化合物を含む。
【0065】
第23実施形態は、第21乃至第22実施形態のうちいずれか一つに係る化合物を含み、化合物は下記の化17に示される化合物である。
【0066】
【化17】
【0067】
第24実施形態は、第1乃至第23実施形態のうちいずれか一つに係る化合物のうち少なくとも一つを含み、前記化合物は、CXXC5-DVLインターフェース、CXXC5とDVLとの間の相互作用、及び/又はCXXC5及び/又はCXXC5-DVLインターフェースの活性を阻害又は低減する。また(及び/又は)、前記化合物は、対象体でのGLP-1の発現及び/又は活性を増加又は増進する。また(及び/又は)、神経変性疾患又は類似する状態は、認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、老人性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリック病とも言う)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、小脳性運動失調、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、多発性硬化症(MS)、及びギラン・バレー症候群(GBS)のうち少なくとも一つの状態、又はこれらを含む少なくとも一つの状態を含む。
【0068】
第25実施形態は、上述した実施形態のうちいずれか一つに係る化合物のうち少なくとも一つを含み、前記化合物は、DVLにある結合部位に対してCXXC5と直接競争し、DVLに直接結合し、及び/又はDVLのPZDドメインに直接結合することによってCXXC5とDVLとの間の相互作用を阻害又は低減する。
【0069】
第26実施形態は、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は製薬学的に許容されるその水和物、塩、代謝産物、又は担体を含む製薬学的組成物を含む。
【0070】
第2様態において、本明細書に開示された方法は、本明細書に開示された組成物のうちいずれかの少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階を含む少なくとも一つの臨床的状態を治療する方法を含む。対象体は、アルツハイマー病及びパーキンソン病などの神経変性疾患又はその類似する状態から選択される状態、及び/又はこれらを含む臨床的状態と診断され得る。特定の実施形態において、本明細書に開示された方法は、本明細書に開示された組成物のうちいずれか複数の化合物の治療的有効容量を対象体に投与する段階をさらに含む。
【0071】
第27実施形態は、CXXC5-DVLインターフェース、CXXC5とDVLとの間の相互作用、及び/又はCXXC5及び/又はCXXC5-DVLインターフェースの活性を阻害又は低減する少なくとも一つの製剤の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階、及び/又はGLP-1の発現及び/又は活性を増進する少なくとも一つの製剤の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階、及び/又は第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物を含む少なくとも一つの製剤の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階を含む、神経変性疾患又は類似する状態を治療する方法を含む。
【0072】
第28実施形態は、第27実施形態に係る方法を含むとともに、さらに、対象体におけるCXXC5の上向き調節された発現を検出する段階を含む。これらの実施形態と一貫して、対象体の血液、血液単核細胞、中枢神経系、及び/又は脳でCXXC5の上向き調節された発現が検出され得る。
【0073】
第29実施形態は、第27乃至第28実施形態のうちいずれか一つに係る方法を含み、さらに、神経変性疾患又は類似する状態に対する危険のある対象体を確認する段階を含む。
【0074】
第30実施形態は、第27乃至第29実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第30実施形態において、前記神経変性疾患又は類似する状態は、認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、老人性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリック病とも言う)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、小脳性運動失調、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、多発性硬化症(MS)、及び/又はギラン・バレー症候群(GBS)から選ばれた、又はこれらを含む少なくとも一つの状態を含む。
【0075】
第31実施形態は、第27乃至第30実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第31実施形態において、前記対象体は、非正常的GLP-1水準、脂質プロファイル、インスリン抵抗性、及び/又は血中グルコース水準を示す。
【0076】
第32実施形態は、第27乃至第31実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第32実施形態において、前記対象体は、肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、認知症、アルツハイマー病(AD)、及び/又はパーキンソン病(PD)と診断される。
【0077】
第33実施形態は、第27乃至第32実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第33実施形態において、CXXC5-DVLインターフェースを阻害し、CXXC5とDVLとの間の相互作用を阻害し、CXXC5及び/又はCXXC5-DVLインターフェースの活性を阻害し、及び/又はGLP-1の発現及び/又は活性を増進する少なくとも一つの製剤は、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物を含む。
【0078】
第34実施形態は、第33実施形態に係る方法のうち少なくとも一つを含む。第34実施形態において、前記方法は、GSK3β阻害剤、Wnt/β-カテニン経路の阻害剤、GLP-1類似体、GLP-1受容体作動薬、体重減量薬、及び/又は糖尿薬から選ばれた、又はこれらを含む少なくとも一つの追加製剤の少なくとも一つの治療的有効容量を投与する段階をさらに含む。これらの実施形態と一貫して、少なくとも一つの追加製剤は、オルリスタット、ロルカセリン、フェンテルミン-トピラマート、ナルトレキソン-ブプロピオン、リラグルタイド、ベンズフェタミン、ジエチルプロピオン、スルホニルウレア、メグリチニド、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、インスリン類似体、α-グルコシダーゼ阻害剤、SGL T2阻害剤、シタグリプチン、メトホルミン、ロシグリタゾン、オカリバ、セロンセルチブ、エラフィブラノール、セニクリビロック、MGL-3196、GR-MD-02、アラムコール、GLP-1類似体、及び/又はGLP-1受容体作動薬を含む。
【0079】
第35実施形態は、第27乃至第34実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第35実施形態において、前記対象体は、人間の大人、人間の子供、及び/又は動物である。
【0080】
第36実施形態は、第27乃至第35実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第35実施形態において、少なくとも一つの製剤及び/又は少なくとも一つの追加製剤は、経口、鼻腔、皮下、又は静脈内経路において投与される。
【0081】
第37実施形態は、第27乃至第36実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第37実施形態において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約5mg乃至約2000mg程度であり、化合物の容量は、少なくとも1日1回対象体に投与される。一部の実施形態において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約10mg乃至約1900mg;約15mg乃至約1800mg;約15mg乃至約1700mg;約20mg乃至約1600mg;約25mg乃至約1500mg;約30mg乃至約1000mg;約50mg乃至約1000mg;約50mg乃至約800mg;約100mg乃至約800mg;約300mg乃至約800mg;約500mg乃至約800mg;約5mg乃至約50mg;約1000mg乃至約1700mg;約1200mg乃至約1700mg;約1500mg乃至約1700mg;約10mg乃至約1000mg;約10mg乃至約30mg;約1500mg乃至約2000mg;約100mg乃至約200mg;約100mg乃至約150mg;及び/又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに制限されるのではない。これらの実施形態と一貫して、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約1mg/m乃至約1500mg/m;約10mg/m乃至約1000mg/m;約20mg/m乃至約800mg/m;約10mg/m乃至約50mg/m;約800mg/m乃至約1200mg/m;約50mg/m乃至約500mg/m;約500mg/m乃至約1000mg/m;約80mg/m乃至約150mg/m;約80mg/m乃至約120mg/m;及び/又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに制限されるのではない。
【0082】
第38実施形態は、第27乃至第36実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第38実施形態において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約0.01mg乃至約200mg程度であり、該容量の化合物は、少なくとも1日1回対象体に投与される。一部の実施形態において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約0.01mg乃至約150mg;約0.01mg乃至約100mg;約0.01mg乃至約80mg;約0.01mg乃至約60mg;約0.05mg乃至約100mg;約0.05mg乃至約80mg;約0.05mg乃至約50mg;約0.1mg乃至約100mg;約0.1mg乃至約50mg;約0.2mg乃至約100mg;約0.2mg乃至約50mg;約0.5mg乃至約100mg;約0.5mg乃至約50mg;約100mg乃至約200mg;約100mg乃至約150mg;及び/又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに制限されるのではない。これらの実施形態のうち一部において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約0.01mg/m乃至約100mg/m;約0.01mg/m乃至約80mg/m;約0.01mg/m乃至約50mg/m;約0.01mg/m乃至約25mg/m;約0.05mg/m乃至約100mg/m;約0.05mg/m乃至約80mg/m;約0.05mg/m乃至約50mg/m;約80mg/m乃至約150mg/m;約80mg/m乃至約120mg/m;及び/又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに制限されるのではない。
【0083】
第3様態において、本出願によって提供された方法は、治療法の副作用を低減及び/又は抑制し、前記方法は、対象体でCXXC5-DVLインターフェースを阻害又は低減し、及び/又はGLP-1の発現及び/又は活性を増進する少なくとも一つの製剤の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階、及び/又は第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物を含む少なくとも一つの製剤の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階を含む。第3様態において、前記対象体は、薬物療法、手術治療、及び/又はこれらの組み合わせから選ばれた少なくとも一つの治療法を受けており、前記対象は、治療法の結果として少なくとも一つの副作用を示す。これらの実施形態と一貫して、副作用は、薬物耐性、再発、炎症、又はこれらの任意の組み合わせを含み得るが、これらに制限されるのではない。
【0084】
第39実施形態は、代謝性及び/又は神経変性疾患又は状態を有すると疑われる、又は有すると知られている対象体から血液、細胞、又は組織のサンプルを提供する段階及びサンプルでのCXXC5及び/又はβ-カテニンの上向き調節を検出し、及び/又はGLP-1の下向き調節を検出する段階を含む、一つ以上の神経変性マーカーを検出する方法を含む。
【0085】
第40実施形態は、第39実施形態に係る方法を含む。第40実施形態において、前記神経変性疾患又は類似する状態は、認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、老人性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(LBD)、多系統萎縮症(MSA)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、パーキンソン病(PD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリック病とも言う)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、小脳性運動失調、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、多発性硬化症(MS)、及び/又はギラン・バレー症候群(GBS)から選ばれた、又はこれらを含む少なくとも一つの状態を含む。
【0086】
上述した実施形態の全部と一貫して、対象体の血液、脳及び/又は中枢神経系でのCXXC5が代謝性及び/又は神経変性疾患を有さないと知られている正常対象体と比較して、少なくとも約10%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約200%、約300%、約400%、約500%、及び/又は約1000%、又はこれらの任意の組み合わせだけ過剰発現され;及び/又は対象体の血液、脳及び/又は中枢神経系でのCXXC5が代謝性及び/又は神経変性疾患を有さないと知られている正常対象体と比較して、少なくとも約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約50倍、及び/又は約100倍、又はこれらの任意の組み合わせだけ過剰発現される。
【0087】
第41実施形態は、第39又は第40実施形態に係る方法のうち少なくとも一つを含み、さらに、第27乃至第38実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの方法を用いて対象体を治療する段階を含む。
【0088】
第42実施形態は、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物、又はその製薬学的に許容される塩、又はその代謝産物の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に提供する段階を含む、対象体でのGLP-1の活性を増進する方法を含み;及び/又は、少なくとも一つの化合物の有効容量は、GLP-1の活性及び/又はGLP-1の発現を増進する。
【0089】
第43実施形態は、対象体が人間、動物、細胞、及び/又は組織である第42実施形態に係る方法を含む。
【0090】
第44実施形態は、CXXC5-DVLインターフェース、CXXC5とDVLとの間の相互作用、及び/又はCXX5及び/又はCXXC5-DVLインターフェースの活性を阻害又は低減する少なくとも一つの製剤の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階;及び/又は第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物を含む少なくとも一つの製剤の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階を含む、治療法に対する耐性を低減する方法を含む。
【0091】
第45実施形態は、第44実施形態に係る方法を含む。第45実施形態において、CXXC5-DVLインターフェースを阻害する、CXXC5とDVLとの間の相互作用を阻害する、及び/又はCXXC5及び/又はCXXC5-DVLインターフェースの活性を阻害する少なくとも一つの製剤は、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物を含む。
【0092】
第46実施形態は、第44乃至第45実施形態のうちいずれか一つに係る方法を含む。第46実施形態において、前記対象体は、手術、体重減量、健康な食餌、身体活動、インスリン療法、及び/又は医薬/薬物療法を含むが、これらに制限されない少なくとも一つの治療養生法で以前に治療されたり又は現在治療中であり;及び/又は、前記対象体は、少なくとも部分的に対象体での活性GLP-1の抑制された発現により、神経変性疾患に寄与する疾患と診断されたり、又はそのような状態を有する。
【0093】
第47実施形態は、第44乃至第46実施形態のうちいずれか一つに係る方法を含む。第47実施形態において、前記対象体は、オルリスタット、ロルカセリン、フェンテルミン-トピラマート、ナルトレキソン-ブプロピオン、リラグルタイド、ベンズフェタミン、ジエチルプロピオン、スルホニルウレア、メグリチニド、チアゾリジンジオン、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)阻害剤、インスリン類似体、α-グルコシダーゼ阻害剤、SGL T2阻害剤、シタグリプチン、メトホルミン、ロシグリタゾン、オカリバ、セロンセルチブ、エラフィブラノール、セニクリビロック、MGL-3196、GR-MD-02、アラムコール、GLP-1類似体、及び/又はGLP-1受容体作動薬を用いて過去に治療を受けていた、あるいは現在治療中である。
【0094】
第48実施形態は、本明細書に開示された前述の方法のうちいずれか一つを行うためのキットを含む。キットの構成要素は、本明細書に開示された製剤/組成物のうち一つ以上の製剤/組成物、試薬、容器、装置及び/又はキット取扱説明書を含むが、これらに制限されるのではない。
【0095】
第49実施形態は、第48実施形態に係るキットを含み、前記製剤/組成物のうち一つ以上の製剤/組成物が第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物を含む。
【0096】
第50実施形態は、第27乃至第47実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第50実施形態において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約5mg乃至約2000mg程度であり、化合物の容量は、少なくとも1日1回対象体に投与される。一部の実施形態において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約10mg乃至約1900mg;約15mg乃至約1800mg;約15mg乃至約1700mg;約20mg乃至約1600mg;約25mg乃至約1500mg;約30mg乃至約1000mg;約50mg乃至約1000mg;約50mg乃至約800mg;約100mg乃至約800mg;約300mg乃至約800mg;約500mg乃至約800mg;約5mg乃至約50mg;約1000mg乃至約1700mg;約1200mg乃至約1700mg;約1500mg乃至約1700mg;約10mg乃至約1000mg;約10mg乃至約30mg;約1500mg乃至約2000mg;約100mg乃至約200mg;約100mg乃至約150mg;及び/又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに制限されるのではない。これらの実施形態と一貫して、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約1mg/m乃至約1500mg/m;約10mg/m乃至約1000mg/m;約20mg/m乃至約800mg/m;約10mg/m乃至約50mg/m;約800mg/m乃至約1200mg/m;約50mg/m乃至約500mg/m;約500mg/m乃至約1000mg/m;約80mg/m乃至約150mg/m;約80mg/m乃至約120mg/m;及び/又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに制限されるのではない。
【0097】
第51実施形態は、第27乃至第47実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第51実施形態において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約0.01mg乃至約200mg程度であり、化合物の容量は、少なくとも1日1回対象体に投与される。一部の実施形態において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約0.01mg乃至約150mg;約0.01mg乃至約100mg;約0.01mg乃至約80mg;約0.01mg乃至約60mg;約0.05mg乃至約100mg;約0.05mg乃至約80mg;約0.05mg乃至約50mg;約0.1mg乃至約100mg;約0.1mg乃至約50mg;約0.2mg乃至約100mg;約0.2mg乃至約50mg;約0.5mg乃至約100mg;約0.5mg乃至約50mg;約100mg乃至約200mg;約100mg乃至約150mg;及び/又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに制限されるのではない。これらの実施形態のうち一部において、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物の治療的有効容量は、約0.01mg/m乃至約100mg/m;約0.01mg/m乃至約80mg/m;約0.01mg/m乃至約50mg/m;約0.01mg/m乃至約25mg/m;約0.05mg/m乃至約100mg/m;約0.05mg/m乃至約80mg/m;約0.05mg/m乃至約50mg/m;約80mg/m乃至約150mg/m;約80mg/m乃至約120mg/m;及び/又はこれらの任意の組み合わせを含むが、これらに制限されるのではない。
【0098】
第52実施形態は、対象体の神経変性疾患の存在を測定する方法を含み、前記方法は、基準値と比較して、対象体の血液、脳及び/又は中枢神経系で上昇したCXXC5遺伝子の発現水準及び/又はCXXC5タンパク質の発現水準を分析する段階を含む。
【0099】
第53実施形態は、第52実施形態に係る方法を含む。第53実施形態において、神経変性疾患は認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、老人性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリック病とも言う)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、小脳性運動失調、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、多発性硬化症(MS)、及び/又はギラン・バレー症候群(GBS)から選ばれた、又はこれらを含む少なくとも一つの状態を含む
【0100】
第54実施形態は、第52又は第53実施形態のうちいずれか一つに係る方法を含む。第54実施形態において、基準値は代謝性及び/又は神経変性疾患を有さないと知られている正常対象体でのCXXC5遺伝子の発現水準又はCXXC5タンパク質の発現水準である
【0101】
第55実施形態は、第52乃至第54実施形態のうちいずれか一つに係る方法を含み、準値と比較して、対象体の血液、脳、及び/又は中枢神経系、白色脂肪組織、膵臓、及び/又は腸で減少したGLP-1遺伝子の発現水準及び/又はGLP-1タンパク質の発現水準を分析する段階をさらに含む。
【0102】
第56実施形態は、第52乃至第55実施形態のうちいずれか一つに係る方法を含む。第56実施形態において、CXXC5遺伝子の発現水準及び/又はCXXC5タンパク質の発現水準は、基準値と比較して、少なくとも約10%、約20%、約25%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、約200%、約300%、約400%、約500%、及び/又は約1000%、又はこれらの任意の組み合わせだけ上昇し;及び/又は、CXXC5遺伝子の発現水準及び/又はCXXC5タンパク質の発現水準は、基準値と比較して、少なくとも約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、約5倍、約6倍、約7倍、約8倍、約9倍、約10倍、約15倍、約20倍、約25倍、約50倍、及び/又は約100倍、又はこれらの任意の組み合わせだけ上昇する。
【0103】
第57実施形態は、第52乃至第56実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含み、第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物及び/又は第26実施形態に係る少なくとも一つの組成物を含む少なくとも一つの製剤とCXXC5とを接触させる段階をさらに含む。
【0104】
第58実施形態は、第52乃至第57実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含み、対象体の脳及び/又は中枢神経系でのCXXC5の存在を検出する段階をさらに含む。
【0105】
第59実施形態は、第52乃至第58実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含み、第27乃至第38実施形態及び第50乃至第51実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの方法を用いて対象体を治療する段階をさらに含む。
【0106】
第60実施形態は、第52乃至第59実施形態のうちいずれか一つに係る方法のうち少なくとも一つを含む。第60実施形態において、対象体は細胞、動物、又は人間を含む。これらの実施形態と一貫して、細胞は、脂肪細胞、血液単核細胞、及び/又は神経細胞を含むことができる。
【0107】
第61実施形態は、神経変性疾患又は関連する臨床的状態の治療用医薬の製造で使用される第1乃至第25実施形態のうちいずれか一つに係る少なくとも一つの化合物又はその製薬学的に許容される水和物、塩、代謝産物、又は担体を含む組成物の使用を含む。
【0108】
第62実施形態において、組成物は経口、局所、鼻腔、非経口、癌周辺、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、頭蓋内、腫瘍内、又は肺伝達によって対象体に投与される任意の前述した実施形態の方法又は使用を含む。
【0109】
第63実施形態は第61又は第62実施形態の用途を含む。第63実施形態において、神経変性疾患又は関連する臨床的状態は認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、老人性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリック病とも言う)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、小脳性運動失調、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、多発性硬化症(MS)、及び/又はギラン・バレー症候群(GBS)から選ばれた、又はこれらを含む少なくとも一つの状態を含む。
【図面の簡単な説明】
【0110】
下記の各図面は、本明細書の一部を形成し、特定の実施形態をさらに証明するために含まれる。一部の実施形態は、これらの図面のうち一つ以上を単独で又は提示された特定の実施形態の詳細な説明と共に参照することによってさらによく理解され得る。
【0111】
図1A】正常かつ健康な対照群と治療されていないステージ1のパーキンソン病(PD)患者との間の末梢血中のGLP-1及びCXXC5のmRNA発現水準の比較を示したグラフである(平均±s.e.m.、n=4、*P<0.05 and ***P<0.0005)。
図1B】正常かつ健康な対照群と治療されていないステージ1のアルツハイマー病(AD)患者との間の末梢血中のGLP-1及びCXXC5のmRNA発現水準の比較を示したグラフである(平均±s.e.m.、n=13、*P<0.05)。
図1C】アルツハイマー病モデル形質転換マウスのCXXC5の発現に対する抗糖尿病薬物であるピオグリタゾンの効果を示したグラフである(平均±s.e.m.、n=7、*P<0.05)。
図2A】高脂肪食餌(HFD)又は正常食餌(NCD)中であったマウスの多様な種類の組織(epiWAT、BAT、肝臓、筋肉、膵臓、腸、脾臓、腎臓及び心臓)の相対的GLP-1 mRNA発現を示したグラフである。
図2B】高脂肪食餌(HFD)を進行したCxxc5+/+及びCxxc5-/-マウスのepiWATのGLP-1及び他のWnt/β-カテニン信号伝逹標的遺伝子(Tcf7l2、Axin2、Dvl1、Wisp1、及びFosl1)の相対的発現水準を示したグラフである。
図2C】賦形剤、A3334、及びシタグリプチンで治療されたNCD-マウス及びHFD-マウスのGLP-1及び他のWnt/β-カテニン信号伝逹標的遺伝子(Tcf7l2、Axin2、Dvl1、Wisp1、及びFosl1)の相対的発現水準を示したグラフである。
図3A】高脂肪食餌(HFD)を進行したCxxc5+/+及びCxxc5-/-マウスの血清活性GLP-1水準を示したグラフである。
図3B】高脂肪食餌(HFD)-給与された、ストレプトゾトシン(STZ)によって誘導された糖尿病Cxxc5+/+マウス及び高脂肪食餌(HFD)-給与された、STZによって誘導された糖尿病Cxxc5-/-マウスの血清活性GLP-1水準を示したグラフである。
図4A】賦形剤、A3334、及びシタグリプチンで治療されたNCD-マウス及びHFD-マウスの血清活性GLP-1水準を示したグラフである。
図4B】賦形剤、A3334、及びシタグリプチンで治療された高脂肪食餌(HFD)-給与された、STZによって誘導された糖尿病マウスの血清活性GLP-1水準を示したグラフである。
図5】高脂肪食餌(HFD)-給与された、CClによって誘導されたNASH Cxxc5+/+マウス及び高脂肪食餌(HFD)-給与された、CClによって誘導されたNASH Cxxc5-/-マウスの血清活性GLP-1水準を示したグラフである。
図6A】NCD-マウス(「CHow」)、及び賦形剤、A3334、A3051、セロンセルチブ、及びオカリバで治療された高脂肪食餌(HFD)-給与された、STZによって誘導されたNASHマウスの血清活性GLP-1水準を示したグラフである。
図6B】NCD-マウス(「CHow」)、及び賦形剤、A3334、A3051、セロンセルチブ、オカリバ(「OCA」)、及びA3486を処理した高脂肪食餌(HFD)-給与された、メチオニン-コリン欠乏食餌(MCD)によって誘導されたNASHマウスの血清活性GLP-1水準を示したグラフである。
図7A】非分化状態(「+bFGF」)及び分化された状態(「-bFGF」)を示したラット神経幹細胞(NSC)の写真である。非分化NSCは、10ng/ml bFGF(「+bFGF」)を含有する培養培地中に維持された。
図7B】多様な濃度(0μM、1μM、5μM、及び10μM)のA3051で治療時の形態変化を示したラット神経幹細胞(NSC)の写真である。非分化NSCは、10ng/ml bFGFを含有する培養培地中に維持された。
図8A】H4野生型(WT)細胞(対照群細胞)及びH4/SWE細胞(APPスェーデン突然変異神経膠腫H4セルライン)のβ-カテニン、CXXC5及び非活性形態のGSK3β(p-GSK3β)の発現を示したウェスタンブロットである。
図8B】H4 WT及びH4/SWE細胞のβ-カテニン、CXXC5及びp-GSK3β(S9)の相対的発現水準を示したグラフである。
図9A】DMSO(対照群)、A3334、A3051、A4733、A4735、インディルビン、インディルビン-3'-オキシム(I30)、6-ブロモインディルビン-3'-オキシム(BIO)で治療されたH4/SWE細胞及びH4 WT細胞のβ-カテニン、CXXC5及びp-GSK3β(S9)及びα-チューブリンの水準を示したウェスタンブロットである。
図9B】DMSO、A3334、A3051、A4733、A4735、インディルビン、I30、BIOで治療されたH4/SWE細胞及びH4 WT細胞のβ-カテニンの水準及び偏在化を示した免疫細胞化学イメージである。ここで緑色信号はβ-カテニンの発現を示し、青色信号は、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した核を示す。
図10】DMSO、A3334、A3051、A4733、A4735、インディルビン、I30、BIOで治療されたH4/SWE細胞及びH4 WT細胞で分泌されたヒトアミロイドβ-42の水準を示したヒトAβ-42酵素-結合免疫吸着分析(ELISA)である。
図11】本明細書に開示されたインディルビン類似体の各例の化学構造を示す図である。
図12】本明細書に開示されたインディルビン類似体の各例の化学構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0112】
定義
「約」という用語は、値プラス又はマイナス10パーセントの範囲を意味し、例えば、約1.0は、0.9から1.1までの値を含む。
【0113】
「CXXC5-DVLインターフェース」という用語は、CXXC5(CXXCフィンガータンパク質5)とDVL(ディシブルド)との間の相互作用及び/又は結合を意味し、これは、当業界に公知となっている生物学的活性を誘導することができる。相互作用及び/又は結合は、対象体内でCXXC5-DVL経路を活性化できる物理的又は化学的相互作用であってよい。CXXC5-DVLインターフェースは複合体の形態で存在することができる。
【0114】
「CXXC5-DVLインターフェースの阻害剤」という用語は、CXXC5-DVLインターフェースの機能及び/又は活性を変更、又はCXXC5-DVLインターフェースに立体形態的変化を誘導する製剤を意味する。CXXC5-DVLインターフェースの阻害剤の各例は、CXXC5とDVLとの間の結合/分離を変更する製剤及び/又はCXXC5-DVL複合体の組み立て/機能を阻害する製剤を含むが、これらに制限されるのではない。
【0115】
「神経変性疾患又は類似する状態」という用語は、認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、老人性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリック病とも言う)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、小脳性運動失調、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、多発性硬化症(MS)、及び/又はギラン・バレー症候群(GBS)を含むことができるが、これらに制限されるのではない。
【0116】
「代謝性疾患又は類似する状態」という用語は、代謝障害、代謝症侯群、肥満、高血圧、高血糖、高血清中性脂肪、高尿酸血症、脂肪肝、多嚢胞性卵巣症侯群、勃起不全、黒色表皮腫、2型糖尿病、低アディポネクチン血症、肝硬変症、門脈圧亢進症、心血管疾患、冠状動脈疾患、脂肪異栄養症、脂質異常症、肝脂肪変性、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、及び/又は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を含むことができるが、これらに制限されるのではない。
【0117】
「製薬学的に許容される」という用語は、哺乳類及び/又は動物、及びさらに具体的に、人間で使用するために米国FDA又はEMAなどの政府規制機関によって承認された、又は承認可能な、又は米国薬典又は他の一般的に認められる薬典に登録されたものを意味する。
【0118】
「製薬学的に許容される賦形剤」又は「製薬学的に許容される担体」という用語は、他の意味で言及又は他の意味が内包されない限り、製剤に含まれ得る活性成分以外の他の任意の成分を説明するために使用される。担体の選択は、投与方式、溶解度及び安定性に対する担体の影響、及び剤形の性質などの各要因に大きく左右されることがある。
【0119】
「製薬学的組成物」という用語は、CXXC5-DVLインターフェースの治療的活性阻害剤又はGSKβの治療的活性阻害剤、及びCXXC-DVLインターフェースの阻害剤及び/又はGSKβの阻害剤と共に対象体に投与される少なくとも一つの製薬学的に許容される賦形剤/担体を意味する。
【0120】
「対象体」という用語は、人間(大人及び/又は子供)、動物、家畜、細胞、及び/又は組織を意味する。
【0121】
「治療的有効量」という用語は、疾患、又は疾患の臨床的症状のうち少なくとも一つの治療のために対象体に投与されたとき、疾患又はその症状の治療に影響を及ぼすのに十分なCXXC5-DVLインターフェースの阻害剤、本明細書に開示された少なくとも一つの化合物、GLP-1類似体、GLP-1受容体作動薬又はGSKβの阻害剤の量を意味する。「治療的有効量」という用語は、例えば、CXXC5-DVLインターフェースの阻害剤、疾患及び/又は疾患の症状、疾患及び/又は疾患又は障害の症状の重症度、治療される対象体の年齢、体重及び/又は健康状態、及び主治医の判断によって変わることがある。
【0122】
「治療的有効容量」という用語は、対象体の疾患又は障害の効果的な治療を提供する容量を意味する。治療的有効容量は、化合物ごとに及び対象体ごとに変わることがあり、対象体の状態及び/又は投与経路などの各要因に左右されることがある。
【0123】
「治療法」という用語は、手術、体重減量、健康な食餌、身体活動、インスリン療法、及び/又は医薬/薬物療法を含み得るが、これらに制限されない。一部の実施形態において、医薬/薬物療法は、オルリスタット、ロルカセリン、フェンテルミン-トピラマート、ナルトレキソン-ブプロピオン、リラグルタイド、ベンズフェタミン、ジエチルプロピオン、スルホニルウレア、メグリチニド、チアゾリジンジオン、DPP-4阻害剤、インスリン類似体、α-グルコシダーゼ阻害剤、SGL T2阻害剤、シタグリプチン、メトホルミン、ロシグリタゾン、オカリバ、セロンセルチブ、エラフィブラノール、セニクリビロック、MGL-3196、GR-MD-02、アラムコール、GLP-1類似体、及び/又はGLP-1受容体作動薬を含む少なくとも一つの製剤による1回以上の治療を含むが、これらに制限されるのではない。
【0124】
任意の疾患又は状態を「治療する」又は「治療」という用語は、疾患又は疾患の臨床的症状のうち少なくとも一つを好転、緩和、中断、又は改善すること、疾患又は疾患の臨床的症状のうち少なくとも一つの危険を減少させること、疾患又は疾患の臨床的症状のうち少なくとも一つの進行を抑制すること、又は疾患又は疾患の臨床的症状のうち少なくとも一つの発生危険を減少させることを意味する。一部の実施形態において、「治療する」又は「治療」という用語は、疾患を身体的に(例えば、識別可能な症状の安定化)又は生理学的に(例えば、身体的変数の安定化)、又は二つの方式で抑制すること、及び対象体の識別可能な又は識別不可能な少なくとも一つの身体的変数を抑制することを意味する。特定の実施形態において、「治療する」又は「治療」という用語は、対象体が疾患の症状を未だに経験していないか又は示していないとしても、疾患又は状態が発症またはそのような素因にあり得る対象体における疾患又は状態の開始又はその少なくとも一つ以上の症状の発症を遅延させることを意味する。
【0125】
詳細な説明
新規技術の原理に対する理解を深めるために、好ましい実施形態のそれぞれが参照され、それぞれを説明するために特定の言語が使用される。しかし、新規技術の範囲に対する制限が意図されておらず、新規技術の属する当業界の当業者に通常起こり得ると考慮される新規技術の原理に対する変更、変形及び追加用途は、本発明及び請求項の範囲内に含まれる。
【0126】
神経変性疾患は、神経機能の消失又は減少により、運動調節、認知、知覚、感覚機能及び自律神経系などの多様なシステムに発生する機能障害と関連する複合的な病理学的状態を有する。神経変性疾患は、長い期間、その状態を正常に治療できる薬物又は他のインターベンション(intervention)は何らない不治の複雑な状態と見なされていた。現在のアプローチは、人々が精神機能を維持し、行動症状を管理し、疾患の症状を遅延させることを援助することに重点を置いている。よって、全身性病理学的過程を標的にして、神経変性疾患の全般的な状態を改善する効果的な薬物は現在までに存在していない。
【0127】
代謝性疾患は、肥満、動脈硬化性脂質異常症、インスリン抵抗性及び2型糖尿病(T2DM)発病の増加した危険と関連する複合的な病理学的状態を有する。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、肝臓に蓄積された脂肪によって肝臓に生じた炎症及び損傷として特定することができる。病気にかかった多くの患者達は、肥満、2型糖尿病、耐糖能障害、脂質異常症及び/又は代謝性疾患を示す。NASHの発病率は、肥満の増加と共に全世界的に増加しているが、その病理学的メカニズムは詳しく理解されていない。
【0128】
最近の研究において、アルツハイマー病(AD)及び/又はパーキンソン病(PD)がインスリン抵抗性及び2型糖尿病(T2DM)と関連する複合的な病理学的状態を有することが示唆されている。T2DMを伴う全身のインスリン抵抗性は、パーキンソン病と関連する場合があり、パーキンソン病に罹患する患者は、通常、脳のインスリン抵抗性を誘発し得る耐糖能障害を示す。T2DMの病理生理学的特徴と知られている高インスリン血症及びインスリン抵抗性も、認知損傷に有意な影響を及ぼすものと証明された。また、損傷したインスリン信号伝逹は、α-シヌクレイン蓄積及びミトコンドリア機能障害と関連するだけでなく、損傷した認知、不安及びうつ病性障害などのパーキンソン病の患者から見える行動異常とも関連していた。認知損傷のメカニズムは、脳のインスリン信号伝逹の損傷、アミロイド代謝の変化、終末糖化産物の蓄積、及び酸化ストレスを含むと仮定される。また、一部の研究において、インスリン信号伝逹経路がパーキンソン病で何らかの役割をすることができ、糖尿病と神経変性疾患との間に連関性があり得ることが確認された。
【0129】
老人達に最も多く見られる形態の認知症であるアルツハイマー病は、記憶、認知、性格、及び他の機能を撹乱させる非可逆的な脳の変性であり、結果として、完全な脳機能障害によって死亡に至るようになる。パーキンソン病は、認知症の最も多く見られる形態であり、記憶及び学習能力、日常機能及び人生の質に影響を及ぼす認知不全と行動変化とを特徴とする。パーキンソン病は、脳でドーパミンを生成するニューロンの主な損失によってもたらされ得る。
【0130】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、プログルカゴン遺伝子に由来する30-アミノ酸長さのペプチドホルモンであり、食物が十二指腸に入り込むとき、小腸の末端で分泌される。GLP-1受容体は、脳の中枢神経系で発見されて拡散され、刺激を受けたときに、細胞生存を増進させ、神経保護を促進する。GLP-1は、神経及び認知機能だけでなく、ブドウ糖代謝に対する調節効果にも影響を及ぼす。よって、GLP-1受容体作動薬が神経変性疾患の治療のための薬物として考慮されたが、全身性病理学的過程を標的にして、神経変性疾患の全般的な状態を改善する効果的な薬物は未だに利用できない。
【0131】
CXXCフィンガータンパク質5(CXXC5)は、Wnt/β-カテニン信号伝逹の陰性調節剤であり、細胞質でディシブルド(DVL)のPDZドメインとの相互作用を通じて機能する。CXXC5-DVL相互作用の阻害は、骨粗鬆症、縦方向への骨の成長、皮膚の傷、及びWnt/β-カテニン信号伝逹の活性化を通じた脱毛を含むWnt/β-カテニン信号伝逹を伴ういくつかの病理生理学的表現型を改善した。
【0132】
本明細書に開示されたように、CXXC5発現は、アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病と診断された患者の脳組織で驚くほど増加した。また、Wnt/β-カテニン信号伝逹標的遺伝子GLP-1によって、アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病に罹患する患者の脳組織でCXXC5過剰発現を伴うβ-カテニン信号伝逹の非活性化によって抑制されることが明らかになった。また、GLP-1、TCF7L2、及びFOSL1などのWnt/β-カテニン経路標的遺伝子は、AD及び/又はPDと診断された患者において抑制されることが明らかになった。Cxxc5-/-マウスは、AD及び/又はPDを含む神経変性疾患の何ら表現型も発生させなかった。本明細書に開示された結果は、CXXC5が神経変性疾患の発生に寄与することを示唆する。よって、本発明は、制限ではないが、AD及び/又はPDを含む神経変性疾患の治療につながり得るCXXC5-DVLインターフェースの新規機能を提供する。
【0133】
本明細書に開示された実施形態は、対象体の神経変性疾患と関連する状態及び/又は疾患及び/又は関連する臨床的状態を治療するための組成物及び方法に関する。特定の実施形態において、本明細書に開示された組成物及び方法は、治療法の副作用の抑制に関する。他の実施形態は、神経変性疾患と診断された、又は、認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、老人性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリック病とも言う)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、小脳性運動失調、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、多発性硬化症(MS)、及び/又はギラン・バレー症候群(GBS)に関連する状態を有する対象体を治療するための組成物及び方法に関する。
【0134】
本明細書に開示された方法は、本明細書に開示された化合物及び/又は組成物のうちいずれか一つの少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階を含む、臨床的状態を治療する方法を含む。対象体は、神経変性疾患又は類似する状態から選ばれた、及び/又はそれを含む臨床的状態と診断され得る。特定の実施形態において、本明細書に開示された方法は、本明細書に開示された化合物及び/又は組成物のうちいずれか一つの複数の治療的有効容量を対象体に投与する段階をさらに含む。
【0135】
一部の実施形態において、本明細書に開示された組成物は、対象体のCXXC5-DVLインターフェースを阻害する少なくとも一つの製剤を含む。これらの実施形態と一貫して、CXXC5-DVLインターフェースを阻害する少なくとも一つの製剤は、本明細書に開示された少なくとも一つの化合物を含む。一部の実施形態において、CXXC5-DVLインターフェースを阻害する少なくとも一つの製剤は、CXXC5-DVLインターフェースの立体形態を物理的に及び/又は化学的に破壊することができる。一部の実施形態において、本明細書に開示された少なくとも一つの化合物は、対象体において、GLP-1の発現及び/又は活性を増進する。
【0136】
製薬学的組成物
本発明によって提供された製薬学的組成物は、対象体に適宜投与するための組成物を提供するために、一つ以上の製薬学的に許容される適切な量の賦形剤と共に、本明細書に開示された一つ以上の組成物の治療的有効量を含むことができる。適切な製薬学的賦形剤は、当業界に公知となっている。
【0137】
経口投与に適した本発明の製薬学的組成物は、それぞれ予め定められた量の活性成分を含有するカプセル、カシェ、錠剤又はロゼンジなどを個別単位として;粉末又は顆粒であってよく;シロップ、エリクシール又は水薬などの水性液体又は非水性液体中の溶液又は懸濁液であってよく;又は水中油滴型液体エマルジョン又は油中水滴型液体エマルジョンであってよい。また、組成物は、ボーラス、練り薬、又はペーストであってもよい。錠剤は、活性成分を製薬学的に許容される担体と共に圧縮又は成形することによって製造され得る。圧縮錠剤は、例えば、結合剤、非活性希釈剤、潤滑剤、崩壊剤及び/又は表面活性剤と混合し、粉末又は顆粒などの自由流動形態の活性成分を適切な機械で圧縮することによって製造することができる。成形錠剤は、非活性液体希釈剤で濡らした粉末形態の活性成分の混合物を適切な機械で成形することによって製造することができる。錠剤は、選択的にコーティング又は分割線が表示されてよく、活性成分の遅延又は制御放出を提供するように製剤化されてよい。
【0138】
非経口投与に適した本発明の製薬学的組成物は、水性及び非水性滅菌注射溶液を含み、また、抗酸化剤、バッファー、静菌剤及び受益者の血液と等張性組成物で作る溶液、及び、例えば、懸濁剤及び増粘剤を含有し得る水性及び非水性滅菌懸濁液を含むことができる。製剤は、単一単位容量又は多重容量容器に存在することができ、使用前の滅菌液体担体の添加を要する凍結乾燥状態で保管され得る。
【0139】
製薬学的に許容される塩は、哺乳類に使用するのに安全且つ効果的であり、所望の治療活性を有する本発明によって提供された化合物の塩を含む。製薬学的に許容される塩は、本発明によって提供された化合物に存在する酸性又は塩基性の塩を含む。製薬学的に許容される酸付加塩は、制限されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチジン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカル酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(すなわち、1,1'-メチレン-ビス-(2-ヒドロキシ-3-ナフトエ酸))塩を含む。開示された特定の化合物は、多様なアミノ酸と共に製薬学的に許容される塩を形成することができる。適切な塩基塩は、制限されないが、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛、及びジエタノールアミン塩を含む。本明細書に説明された方法を実施するために使用され得る一部の製薬学的に許容される塩に対する追加情報に対して、Berge,et al.,66 J. PHARM.SCI.1-19(1977),Haynes,et al.,J.Pharma.Sci.,Vol.94,No.10,Oct.2005,pgs.2111-2120などの論文を参照することができる。
【0140】
一部の実施形態において、組成物は、製薬学的に許容される潤滑剤を含有することができる。製薬学的に許容される潤滑剤は、製薬学的組成物の成分が共に凝集し、開示された組成物を生成するペレットプレスに付着することを防止する。また、潤滑剤は、組成物とダイプレスの壁との間の摩擦が少ない状態でペレットの形成、及びペレットプレスからの排出が行われるようにする。一部の実施形態において、潤滑剤は、加工特徴を改善するために、例えば、組成物の可撓性を増加させ、破損を減少させることを援助するために製薬学的組成物に添加される。
【0141】
開示された製薬学的組成物に使用することができる潤滑剤の種類は多様であってよい。一部の実施形態において、製薬学的に許容される潤滑剤は、滑石、シリカ、植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ベヘン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ミネラルオイル、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、植物性オイル、ステアリン酸亜鉛及びこれらの組み合わせから選ばれる。一部の実施形態において、製薬学的に許容される潤滑剤はステアリン酸である。
【0142】
開示された製薬学的組成物に使用することができる賦形剤の種類は多様であってよい。一部の実施形態において、製薬学的に許容される賦形剤は、結合剤、充填剤及びこれらの組み合わせから選ばれる。一部の実施形態において、製薬学的に許容される賦形剤は、アスコルビン酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンK-30(ポビドンK-30)、モノステアリン酸グリセリル(GMS)又はモノステアリン酸塩グリセリル、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、糖、デキストラン、トウモロコシ澱粉、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ラクトース、微細結晶質セルロースを含むセルロース、マンニトール、塩化ナトリウム、乾燥澱粉、予備ゼラチン化された澱粉、圧縮可能な糖、マンニトール、ラクトース一水和物、澱粉、リン酸水素カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、粉末セルロース、微細結晶質セルロース、ラクトース、グルコース、プラクトース、スクロース、マンノース、デキストロース、ガラクトース、相応する糖アルコール及び他の糖アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、及び上述したもののうちいずれかの組み合わせから選ばれる。一部の実施形態において、製薬学的に許容される賦形剤は、ポビドンK-30とも言うポリビニルピロリドンK-30である。一部の実施形態において、製薬学的に許容される賦形剤は、平均分子量(MW)が40,000であるポビドンK-30とも言うポリビニルピロリドンK-30である(CAS 9003-39-8)。一部の実施形態において、製薬学的に許容される賦形剤は、モノステアリン酸グリセリル(GMS)又はモノステアリン酸塩グリセリル、ベヘン酸グリセリル及びパルミトステアリン酸グリセリルから選ばれる。一部の実施形態において、製薬学的に許容される賦形剤は、モノステアリン酸グリセリル(GMS)又はモノステアリン酸塩グリセリルである。一部の実施形態において、製薬学的に許容される賦形剤はベヘン酸グリセリルである。一部の実施形態において、製薬学的に許容される賦形剤はパルミトステアリン酸グリセリルである。
【0143】
一部の実施形態において、抗酸化剤は、開示された組成物の他の成分の酸化を防止する。酸化は、例えば、自由ラジカルが生成される滅菌の間に起きることがある。抗酸化剤又は自由ラジカルスカベンジャーの添加は、酸化を有意に減少させ、組成物を対象体で使用することをさらに製薬学的に許容可能にする。
【0144】
開示された製薬学的組成物に使用することができる抗酸化剤の種類は多様であってよい。一部の実施形態において、抗酸化剤は、メチルパラベン及びその塩、プロピルパラベン及びその塩、ビタミンE、ビタミンE TPGS、没食子酸プロピル、亜硫酸塩、アスコルビン酸(L-アスコルビン酸、また、アスコルビン酸のL-鏡像異性体、ビタミンCを含む。)、安息香酸ナトリウム、クエン酸、シクロデキストリン、過酸化物スカベンジャー、安息香酸、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)及びその塩、連鎖停止剤(例えば、チオール及びフェノール)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、及びこれらの組み合わせから選ばれる。
【0145】
使用又は治療方法
本明細書に開示された方法及び組成物は、CXXC5-DVLインターフェース及び/又はGSKβの阻害剤が治療的恩恵を提供すると知られている、又はそうであると後で発見される神経変性疾患、障害、状態、及び症状で苦しむ対象体を治療するために使用されることができる。
【0146】
一部の実施形態において、本明細書に開示された方法は、本明細書に開示された組成物のうちいずれかの少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階を含む、神経変性疾患又はその臨床的状態を治療する方法を含む。対象体は、認知症、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、老人性認知症、前頭側頭型認知症(FTD)、レビー小体型認知症(LBD)、パーキンソン病(PD)、多系統萎縮症(MSA)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)、ハンチントン病(HD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS又はルー・ゲーリック病とも言う)、原発性側索硬化症(PLS)、進行性球麻痺(PBP)、進行性筋萎縮症(PMA)、仮性球麻痺、遺伝性痙性対麻痺(HSP)、小脳性運動失調、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、多発性硬化症(MS)、及び/又はギラン・バレー症候群(GBS)から選択される状態、及び/又は薬物治療、療法及び/又は手術治療と関連し、それによって誘導された、又はそれに対して既に耐性を有する他の任意の状態、又はこれらを含む臨床的状態と診断され得る。一部の実施形態において、本明細書に開示された方法は、本明細書に開示された組成物のうちいずれかの少なくとも一つの追加の治療的有効容量を対象体に投与する段階をさらに含む。一部の実施形態において、本明細書に開示された組成物のうちいずれかの少なくとも一つの治療的有効容量は、経口、非経口、皮下、静脈内、吸入及び/又は経皮方式で投与できる。
【0147】
他の実施形態は、対象体でCXXC5-DVLインターフェースを阻害する、及び/又はGLP-1の発現及び/又は活性を増進する少なくとも一つの製剤の少なくとも一つの治療的有効容量を対象体に投与する段階を含む、治療法の副作用を低減する方法を含んでよく;対象体は、薬物治療、手術、療法を含む少なくとも一つの治療法の移行を受けており、対象体は、治療法から由来した少なくとも一つの副作用を示す。これらの実施形態と一貫して、副作用は薬物耐性及び/又は再発を含み得るが、これらに制限されない。
【0148】
キット
追加の様態において、本発明によってキットが提供され、このようなキットは、一つ以上の製薬学的組成物、容器内で滅菌されたそれぞれの組成物、対象体に製薬学的組成物を投与するための手段、及び取扱説明書を含む。
【0149】
一部の実施形態は、本明細書に開示された方法を行うためのキットを含む。このようなキットは、典型的に臨床的状態を治療するために必要な二つ以上の構成要素を含む。キットの構成要素は、制限されないが、本明細書に説明された一つ以上の製剤/組成物、試薬、容器、装置及び/又はキット取扱説明書を含む。よって、本明細書において説明された組成物及び方法は、本明細書に説明された予め包装されたキットを用いて行うことができる。
【実施例
【0150】
下記の各実施例は、本発明の多様な様態を例示する。本発明の範囲を逸脱しない範囲で、材料及び方法に対して多くの変形が実施可能であることが当業者にとって明白であろう。
【0151】
CXXC5-タイプのジンクフィンガータンパク質5(CXXC5)は、ディシブルド(Dvl)結合を通じて機能するWnt/β-カテニン経路の陰性フィードバック調節剤である。CXXC5は、特定の病理生理学的状態で再生成組織リモデリングを伴う多様な病理生理学的役割を行う。しかし、神経変性疾患の進行過程でのCXXC5の役割は未だに明らかになっていない。本発明において、CXXC5がAD及び/又はPD患者の脳組織及び/又は末梢血で高度に発現され、GLP-1などのWnt/β-カテニン標的遺伝子の発現が減少することが予想もせずに発見された。
【0152】
本明細書に開示されたように、制限されないが、A3334及び/又はA3051を含むCXXC-DVLタンパク質-タンパク質相互作用(PPI)を妨害する低分子が確認され、AD及びPDと診断された患者のGLP-1の発現及び活性を改善できる潜在的薬物が特性化された。各インディルビン誘導体は、CXXC5によるこの経路の陰性フィードバック機能の解除を通じて、GLP-1を含む代謝を伴うWnt/β-カテニン信号伝逹標的遺伝子の活性化によってこのような機能を発揮する。よって、本発明は、対象体でGLP-1を誘導/活性化し、神経幹細胞をドーパミン生成神経細胞に分化し、そして、AD及びPDを含む神経変性疾患を治療するにおいて本明細書に開示されたインディルビン類似体の用途に関する。
【0153】
生物情報学データ分析
GEOデータベースの分子経路遺伝子セット空間でCXXC5及びGLP-1 mRNA発現の交差-種比較を行い、二つのヒトのパーキンソン病及びヒト/マウスのアルツハイマー病トランスクリプトームデータセットでStudent’s-T検定によって統計的に有意な調節障害が定義された(正常(n=4)対パーキンソン病患者(n=4)対象体、正常(n=13)対アルツハイマー病患者(n=13)対象体、及び対照群(n=7)対ピオグリタゾン(n=7))。
【0154】
血液化学
心臓穿刺によってマウスの全血液を収集した。30分間血液を凝固させた後、3,000×gで30分間遠心分離することによって上澄み液を獲得し、活性GLP-1の濃度を測定した。ELISA分析キットを用いて血清活性GLP-1(7-36)を評価した。
【0155】
定量的実時間重合酵素連鎖反応(PCR)
製造者の指針に従い、TRIzol試薬(Invitrogen)を用いて粉砕された組織粉末から総RNAを抽出した。この総RNA 2μgを用いてM-MLV逆転写酵素(Invitrogen)で逆転写を行った。合成されたcDNAを100ng/μlの濃度に希釈した。Rotor-gene Q実時間PCRサイクラー(Qiagen)でSYBR緑色試薬(Qiagen)を用いて定量的PCR分析を行った。このとき、条件は、95℃10分、その後、95℃5秒、60℃15秒の40サイクルであった。比較Ct法(ΔΔCt)を用いてmRNA水準の相対的定量値を推定した。Glp-1 mRNA値をGAPDHに対して正規化した。
【0156】
神経幹細胞(NSC)培養
E14.5ラットの前脳からNSCを抽出し、bFGF(Peprotech)10ng/mlを含有する培地で培養することによって未分化状態に維持した。未分化NSC(1×10)を各化合物(10μM)で処理し、24時間後に細胞の黒白イメージを画像化することによって細胞の形態を評価した。
【0157】
動物
Cxxc5-/-マウスの生成は前述の通り説明された。Cxxc5異形接合マウスを4世代にわたって交配し、同腹の野生型及びCxxc5-/-マウスを獲得し、C57BL/6バックグラウンドに維持した。6週齢のCxxc5+/+及びCxxc5-/-マウスに8週間HFDを給与した。野生型の雄C57BL/6マウス(KOATECH、韓国ソウル)には、脂肪60%カロリーで構成されたHFD(研究食餌、D12492)を8週間給与した。インスリン抵抗性を検証するためのマウスモデルが成功的に確立され、禁食状態のブドウ糖数値をOne Touch Ultra血糖計(LifeScan)で評価した。その次に、8週目及び12週目に禁食状態のブドウ糖数値が16.7mmol/Lを超えるHFD-給与マウスのそれぞれにA3334(25mg kg-1)、シタグリプチン(50mg kg-1)、又はメトホルミン(100mg kg-1)を5日間毎日経口投与した。薬物の除去後、マウスを3週間高脂肪食餌(HFD)状態に維持した。膵臓再生をモニタリングするために、6週齢のCxxc5+/+及びCxxc5-/-マウスに前記のようにHFDを給与した。4週間食餌療法を行った後、マウスにSTZ(50mg/kg/d)を1週間腹腔内注射し、対照群には食塩水を注射した。2週後、Cxxc5+/+マウスにA3334又はA3051(25mg kg-1)及びシタグリプチン(50mg kg-1)を4週間経口胃管栄養法によって毎日投与した。
【0158】
Dvl-CXXC5試験管内の結合分析
Dvl-CXXC5試験管内の結合分析のために、5mg/mlの精製されたDvl PDZドーパミン100μlを96-ウェルMaxibinding Immunoplate(SPL)に添加し、4℃のチャンバー(Chamber)で一晩中インキュベートした(incubated)。PBSで洗浄した後、10μM PolyR-DBM37を各ウェル(well)に添加し、室温で3時間にわたってインキュベートした。PBSで洗浄した後、PBS中の1μM、5μM、及び10μM A3334 100μlを各ウェルに添加し、室温で1時間にわたってインキュベートした。PBSで3回洗浄した後、各ウェルの蛍光をFluorstar Optimaマイクロプレートリーダー(BGM Lab Technologies)を用いて測定した。スクリーニングに使用されたA3334は、ハン・ギュンヒ博士(延世大学校、韓国ソウル)によって設計及び合成された。
【0159】
ウェスタンブロット分析
H4及びH4/SWE細胞をモルタルと乳棒で粉砕した後、RIPAバッファー(150mM NaCl、10mM Tris、pH 7.2、0.1% SDS、1.0% Triton X-100、1%デオキシコール酸ナトリウム、及び5mM EDTA)で溶解した。サンプルを6-12% SDSポリアクリルアミドゲル上で分離し、PROTRANニトロセルロース膜(Schleicher and Schuell Co.)上に移した。5%無脂肪乾燥脱脂乳及び0.07%(vol/vol) Tween 20を含有するPBSで膜を遮断し、β-カテニン(1:1,000、Santa Cruz Biotechnology、Inc.)、CXXC5(1:500、Santa Cruz Biotechnology、Inc.)、p-GSK3β(S9)(1:500、Santa Cruz Biotechnology、Inc.)に特異的な抗体と共にインキュベートした。次に、膜をホースラディッシュペルオキシダーゼ-コンジュゲート抗-ウサギ(1:5,000、Bio-Rad Laboratories)又は抗-マウス(1:5000、Cell Signaling Technology)IgG 2次抗体と共にインキュベートした。発光イメージ分析機LAS-3000(Fujifilm)を用いて増進した化学発光(GE Healthcare)によってタンパク質バンドを視覚化した。Multi-Gauge V3.0ソフトウェア(Fujifilm)を用いてウェスタンブロットバンドを分析した。
【0160】
免疫細胞化学分析
各化合物を用いて処理されたH4又はH4/SWE細胞をPBSで洗浄し、室温で15分間PBS中に含まれる4%(wt/vol)パラホルムアルデヒド(PFA)に固定した。次に、細胞をPBSで洗浄し、15分間PBS中に含まれる0.1%(vol/vol) Triton X-100で透過した。PBSで洗浄した後、細胞を30分間PBS中に含まれる10%ウシ血清アルブミン(BSA)と共にインキュベートし、その次に、4℃で一晩中β-カテニン(1:100;BD)に特異的な抗体と共にインキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、1時間にわたり室温でAlexa Fluor 488-コンジュゲートIgG 2次抗体(1:400;Molecular Probes)と共にインキュベートした。細胞核を10分間DAPIで対比染色し、染色されたサンプルをLSM510 META顕微鏡で検査した。
【0161】
ヒトAβ42 ELISA分析
H4又はH4/SWE細胞を10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco)で培養し、5%CO及び95%空気加湿雰囲気中で合流点まで成長させた。10%FBSで補充されたDMEM中で6-ウェルプレートに細胞を播種し、これを一晩中密着させた。細胞を24時間にわたり各化合物(1μM~20μM)で処理し、これを培地1mlに収集した。プロテアーゼによるアミロイドβの変性を避けるためにプロテアーゼ阻害剤カクテル(PIC)でサンプルを処理し、3分間3000rpmで遠心分離した。実験は、ヒトAβ42 ELISAキットプロトコル(Invitrogen)の指針に従って行われた。分泌されたアミロイドβの量は、総タンパク質濃度を測定して正規化した。
【0162】
統計分析
データは、平均±標準偏差(SD)として表示される。統計分析は、対応のない両側t検定(unpaired two tailed Student’s t-test)を用いて行われた。アスタリスクは、統計的に有意な差を示す(*、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.005)。
【0163】
5,6-ジクロロインディルビン-3'-メトキシム(A3051)
【0164】
【化18】
【0165】
5-メトキシルインディルビン-3'-オキシム(A3334)
【0166】
【化19】
【0167】
インディルビン-3'-オキシム(I3O又はIO)
【0168】
【化20】
【0169】
6-ブロモインディルビン-3'-オキシム(BIO)
【0170】
【化21】
【0171】
インディルビン
【0172】
【化22】
【0173】
5,6-ジクロロインディルビン-3'-プロピルオキシム(A3486)
【0174】
【化23】
【0175】
5,6-クロロインディルビン-3'-ベンジルオキシム(A3538)
【0176】
【化24】
【0177】
(Z)-5'-ブロモ-6'-ニトロ-[2,3'-ビインドリニリデン]-2',3-ジオン(A2785)
【0178】
【化25】
【0179】
6-ニトロ-5-トリフルオロメトキシインディルビン-3'-メトキシム(A2794)
【0180】
【化26】
【0181】
5-トリフルオロメトキシインディルビン-3'-エチルオキシム(A4733)
【0182】
【化27】
【0183】
5-トリフルオロメトキシインディルビン-3'-ベンジルオキシム(A4735)
【0184】
【化28】
【0185】
CXXC5-DVL相互作用を阻害する化合物のスクリーニング
CXXC5-DVL相互作用を阻害した低分子を先に確認するために、既に説明された試験管内の結合分析によって化学ライブラリ(2,280個の化合物:ChemDivから1,000個及びSigmaLOPACから1,280個)をスクリーニングした。例えば、Kim et al.(2015)CXXC5 is a negative-feedback regulator of the Wnt/beta-catenin pathway involved in osteoblast differentiation.Cell.Death.Differ.22,912-920を参照する。すなわち、精製されたDVL-PDZドメイン5mg/mlを16時間にわたって4℃で96-ウェルMaxibinding Immunoplate(SPL、韓国ソウル)の各ウェルでインキュベートした。各ウェルに10μM FITC-タグPTD-DBMPを添加した後、化学ライブラリの各化合物又は対照群(DMSO)を30μMの最終濃度でウェルに処理した。Fluorstar Optimaマイクロプレートリーダー(BGM Lab Technologie、ドイツのオルテンベルク)を用いて蛍光強度を測定し、「(「化合物-処理されたグループ」-「ブランク」)/(「DMSO-処理されたグループ」-「ブランク」)*100」に示されるように正規化した。
【0186】
CXXC5-DVL(PZD-DVL-PTD-DBMP(FITC)相互作用を90%以上抑制する初期的中化合物として19個の化合物を選択し、Wnt/β-カテニン経路を活性化する能力を、染色体内にpTOPFlashリポーターを潜伏させているHEK293細胞を用いて確認した。これらの化合物のうちBIO及びI30を含むインディルビン類似体が確認された。高-処理量スクリーニング結果の概要が表1に提供される。
【0187】
【表1】
【0188】
【表2】
【0189】
インディルビン類似体化合物(#8及び#12;表2)がCXXC5-DVL阻害剤として繰り返して確認され、リポーター分析を用いたWnt/β-カテニン経路の活性の有効性を示した。機能的に改善された化合物を得るために、インディルビン-3'-オキシム(I30)(#12;表2)の構造に基づいたインディルビンバックボーンのR及びR部位にある官能基を置換することによって約60個のインディルビン誘導体を新たに合成した。新たに合成された各インディルビン誘導体が表3-5に提示され、これらの化合物の構造を図11及び図12に示す。
【0190】
【表3】
【0191】
【表4】
【0192】
【表5】
【0193】
Wnt/β-カテニン経路は、病理学的過程で一定の役割をはたし、その反応遺伝子は、代謝性疾患のための治療標的として使用され得る。CXXC5-タイプのジンクフィンガータンパク質5(CXXC5)は、ディシブルド(Dvl)結合を通じて機能するWnt/β-カテニン経路の陰性調節剤である。本明細書に提供されたように、神経変性疾患でのCXXC5の機能的役割及びCXXC5とWnt/β-カテニン信号伝逹との間の関係がヒト脳組織、血液、及びマウスモデルで調査された。CXXC5は、AD及び/又はPD患者の脳及び中枢神経系で過剰発現される。
【0194】
高脂肪食餌(HFD)が給与されたCxxc5-/-マウスでは、GLP-1及び他のWnt/β-カテニン信号伝逹標的遺伝子の相対的mRNA発現が増加した。これらの結果は、神経変性疾患の治療のための治療標的としてCXXC5を提示する。CXXC5-Dvl相互作用を阻害する低分子は、HFD-給与されたCxxc5-/-マウスで観察された通りに表現型を回復した。本明細書に開示された化合物及び/又は組成物のうち少なくとも一つの投与は、HFD-給与されたマウスの血清活性GLP-1水準を増加させた。DDP-4阻害剤であるシタグリプチンの効果と異なり、血清活性GLP-1水準の増加は、HFD-給与された、STZ-誘導された糖尿病マウスで有意にさらに高かった。総合すると、Dvl結合の低分子-媒介妨害によるCXXC5活性の阻害は、AD及びPDを含む神経変性疾患の治療のための潜在的な治療接近方式であり得る。
【0195】
アルツハイマー病及び/又はパーキンソン病と診断された患者の脳で上昇したCXXC5水準及び減少したGLP-1水準
図1A-1Bを参照すると、CXXC5の発現は、AD又はPDと診断された患者の末梢血又は血液単核細胞で有意に増加したが、これらの患者でのGLP-1の発現は、健康な対照群より有意にさらに低かった。CEBPα/PPARβを制御するように設計された糖尿病薬物であるピオグリタゾンはCXXC5の発現を抑制したが、これは、神経変性疾患でCXXC5過剰発現による阻害効果が糖尿病を制御することによって抑制され得ることを示す(図1C)。総合すると、これらの結果は、GLP-1発現がCXXC5過剰発現によって抑制され得ることを提示し、これは、CXXC5-DVL PPIのメカニズムによってWnt/β-カテニン経路を阻害する。
【0196】
GLP-1mRNA発現は、正常Chow食餌(NCD)が給与されたマウスと比較して、HFDが給与されたマウスの副睾丸白色脂肪組織(epiWAT)、膵臓、及び腸でさらに低い。
図2A-2Cを参照すると、epiWATでのGLP-1及び他のWnt/β-カテニン信号伝逹標的遺伝子(Tcf7l2、Axin2、Dvl1、Wisp1、及びFosl1)の相対的発現水準は、正常Chow食餌(NCD)中のCxxc5+/+マウスと比較して、Cxxc5+/+マウスに高脂肪食餌(HFD)が給与されたときに減少した。Cxxc5-/-マウスにHFDを給与したときは、epiWATでのGLP-1及び他のWnt/β-カテニン信号伝逹標的遺伝子(Tcf7l2、Axin2、Dvl1、Wisp1、及びFosl1)の相対的発現水準が回復された(図2B)。A3334治療は、HFD-給与されたCxxc5-/-マウスで観察された通りに表現型を回復させたが、シタグリプチン治療はそうでなかった(図2C)。
【0197】
血清活性GLP-1水準は、Cxxc5-/-HFD-マウス又はSTZ誘導されたCxxc5-/-HFD-マウスで回復された。
糖尿病は、主要代謝性疾患の一つであり、スルホニルウレア、SGLT2阻害剤、PPARγ作動薬、DPP4阻害剤、及びビグアナイドを含む現在臨床的に利用可能な薬物は、膵臓、腸、筋肉、及び肝臓などの末梢インスリン標的組織に作用することによって血中ブドウ糖水準を制御することができる。食餌-誘導された肥満及び糖尿病モデルで抑制されたWnt/β-カテニン経路を回復させる薬物候補のうち一例であるA3334は、主要な抗-糖尿病薬物であるDPP4阻害剤シタグリプチン及びビグアナイド医薬メトホルミン(データは図示せず)と類似する一時的な初期効果を示した。図3A-3Bを参照すると、HFDによって誘導された低い血清活性GLP-1水準は、Cxxc5-/-マウスとSTZ-誘導された糖尿病Cxxc5-/-マウスで全て回復された。HFD-マウス及びSTZ-誘導された糖尿病HFD-マウスに対するA3334治療は、二つの場合のいずれにおいても、NCDが給与されたマウスと類似する水準まで血清活性GLP-1水準を回復させた。DPP4阻害によってGLP-1を安定化するように設計された抗糖尿病薬物であるシタグリプチンが陽性対照群として使用された。A3334治療は、シタグリプチン治療で観察された効果と比較して、血液血清で活性GLP-1発現を有意に回復(増加)させた。
【0198】
血清活性GLP-1水準は、CCl誘導されたCxxc5-/-HFD-マウスで回復された。
図5を参照すると、NASHマウスモデルでHFD及びCCl誘導された血清活性GLP-1水準の抑制が、CXXC5ノックアウトマウスでは回復された。A3334又はA3051治療は、血液血清で活性GLP-1発現を有意に回復(増加)させ、CXXC5ノックアウトによって観察された効果を擬態した。しかし、セロンセルチブ及びオカリバ治療は何ら効果も示さなかった(図6A-6B)。
【0199】
A3051は、ラット神経幹細胞(NSC)の神経分化を誘導した。
図7A-7Bを参照すると、NSCがE14マウス胚から分離され、bFGF及びEGFで補充された維持培地に維持された。異なる濃度のA3051で処理し、神経分化を誘導した。明視野光学顕微鏡を用いてインディルビン類似体3051を処理した後、24時間で細胞の形態をキャプチャーした。
【0200】
APPスウェーデン突然変異神経膠腫H4セルラインで上昇したCXXC5水準及び減少したβ-カテニン水準
図8A-8Bを参照すると、アルツハイマー病の早期発病を引き起こすアミロイド前駆体タンパク質のスウェーデン突然変異(K595N/M596L)を有するH4/SWE細胞(APP-swe)を用いてCXXC5及びβ-カテニンの発現を確認した。ウェスタンブロット分析は、H4/SWEセルラインがH4 WTセルラインよりβ-カテニン、GSK3β非活性形態(p-GSK3β(S9))のさらに低い発現水準、及びCXXC5のさらに高い発現水準を有することを示した。
【0201】
A3051及びA3334を含むいくつかのインディルビン類似体化合物は、H4/SWE細胞でβ-カテニンの水準及び核転座を増加させた。
図9A-9Bを参照すると、H4/SWE細胞は、H4 WT細胞と比較してさらに低いβ-カテニン発現を示した。A3334、A3051、インディルビン、I3O、及びBIOを含むいくつかの化合物は、ウェスタンブロット分析によって示したように、H4/SWE細胞で低下したβ-カテニンの水準を回復させ、p-GSK3β(S9)を増加させた(図9A)。また、A3334及びA3051は、これらの細胞でCXXC5の水準を減少させた(図9A)。また、免疫細胞化学分析は、いくつかのインディルビン類似体化合物、特に、A3334及びA3051がH4/SWE細胞でβ-カテニンの核転座を増加させたことを証明した(図9B)。
【0202】
A3051及びA3334は、H4/SWE細胞で上昇したAβ42分泌を抑制した。
図10を参照すると、A3051及びA3334、特にA3051治療は、H4/SWE細胞でAβ42の分泌を阻害した。
【0203】
新規技術を図面及び上述した説明で詳細に例示して説明したが、これは、特性の制限でない例示として見なされ、好ましい実施形態を示して説明したものに過ぎなく、新規技術の思想内に含まれる全ての変化及び変形が保護されなければならないことが理解される。また、新規技術は、具体的な例、理論的論証、説明、及び例示を用いて例示したが、これらの例示及び伴われた論議は、決して技術を制限するものと解釈してはならない。本出願で参照した全ての特許、特許出願及び参照した文章、科学論文、刊行物などは、本明細書の明示的教示と矛盾しない程度まで、その全体が参考として本明細書に統合される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12