IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エイターリンク株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】マルチ・アンテナおよび受電装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/28 20060101AFI20240111BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20240111BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20240111BHJP
【FI】
H01Q21/28
H01Q1/42
H02J50/20
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023078740
(22)【出願日】2023-05-11
【審査請求日】2023-05-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520354692
【氏名又は名称】エイターリンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田邉 勇二
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 良輔
(72)【発明者】
【氏名】小舘 直人
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-191392(JP,A)
【文献】特開2017-228892(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031270(WO,A1)
【文献】特開2022-024292(JP,A)
【文献】特開昭50-137455(JP,A)
【文献】特許第7284550(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/28
H01Q 1/42
H02J 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子の前記第1給電点と前記第2アンテナ素子の前記第2給電点を、前記1の領域を通って接続する接続線と、
を備え、
前記接続線は、前記第1アンテナ素子の前記第1給電点を頂点としてなる前記2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、前記第1アンテナ素子の前記第1給電点に接続され、
前記接続線は、前記第2アンテナ素子の前記第2給電点を頂点としてなる前記2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、前記第2アンテナ素子の前記第2給電点に接続される、
マルチ・アンテナ。
【請求項2】
基板と、
前記基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子の前記第1給電点と前記第2アンテナ素子の前記第2給電点を接続する接続線と、
を備え、
前記第1アンテナ素子は、第一端に向かって第一方向に延伸しており、第二端に向かって第二方向に延伸しており、
前記第2アンテナ素子は、第三端に向かって第三方向に延伸しており、第四端に向かって第四方向に延伸しており、
第一方向と第二方向とがなす内角と、第三方向と第四方向とがなす内角とは、90度未満の角度である、
マルチ・アンテナ。
【請求項3】
前記第1アンテナ素子の前記第1給電点を頂点としてなる前記2本の線状アンテナにより形成される内角と、前記第2アンテナ素子の前記第2給電点を頂点としてなる前記2本の線状アンテナにより形成される内角とは、90度未満の角度である、
請求項2記載のマルチ・アンテナ。
【請求項4】
基板と、
前記基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子の前記第1給電点と前記第2アンテナ素子の前記第2給電点を接続する接続線と、
を備え、
前記第1アンテナ素子は、第一端に向かって第一方向に延伸しており、第二端に向かって第二方向に延伸しており、
前記第2アンテナ素子は、第三端に向かって第三方向に延伸しており、第四端に向かって第四方向に延伸しており、
第一方向と第二方向とがなす内角と、第三方向と第四方向とがなす内角とは、90度より大きな鈍角である、
マルチ・アンテナ。
【請求項5】
基板と、
前記基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子の前記第1給電点と前記第2アンテナ素子の前記第2給電点を接続する接続線と、
を備え、
前記接続線は、前記第1アンテナ素子の前記第1給電点に曲がって接続され、
前記接続線は、前記第2アンテナ素子の前記第2給電点に曲がって接続される、
マルチ・アンテナ。
【請求項6】
基板と、
前記基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点を有する第1アンテナ素子と、第2給電点を有する第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子の前記第1給電点と前記第2アンテナ素子の前記第2給電点を、前記1の領域を通って接続する接続線と、
を備え、
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子は、逆Fアンテナである、
マルチ・アンテナ。
【請求項7】
基板と、
前記基板の1の領域を囲むように配置され、第3給電点を有する第3アンテナ素子と、第4給電点を有する第4アンテナ素子と、
を備え、
前記第3アンテナ素子および前記第4アンテナ素子は、逆Fアンテナであり、
前記接続線は、前記第1アンテナ素子の前記第1給電点と、前記第2アンテナ素子の前記第2給電点と、前記第3アンテナ素子の前記第3給電点と、前記第4アンテナ素子の前記第4給電点とを接続する、
請求項6記載のマルチ・アンテナ。
【請求項8】
基板と、
前記基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点を有する第1アンテナ素子と、第2給電点を有する第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子の前記第1給電点と前記第2アンテナ素子の前記第2給電点を接続する接続線と、
マルチ・アンテナを囲むハウジングと、
を備え、
前記第1アンテナ素子および前記第2アンテナ素子は、逆Fアンテナであり、
前記ハウジングは基板周から基板中央に向かって基板鉛直方向に向かって傾斜を有する突出形状に形成されている、
マルチ・アンテナ。
【請求項9】
基板と、
前記基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本のスリットより構成される第1アンテナと、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本のスリットより構成される第2アンテナと、
前記第1アンテナの前記第1給電点と前記第2アンテナの前記第2給電点を接続するDC接続線と、
を備え、
前記第1アンテナおよび前記第2アンテナは金属基板上に形成されたスリットとして形成された、
マルチ・アンテナ。
【請求項10】
ワイヤレス電力伝送(WPT)の受電装置において、送電装置からマイクロ波を用いて送電されるエネルギを受電するために用いられる請求項1から9のいずれか記載のマルチ・アンテナ。
【請求項11】
基板と、
前記基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子と、
前記第1アンテナ素子の前記第1給電点と前記第2アンテナ素子の前記第2給電点を接続する接続線と、
ハウジングと、
を備え、
前記ハウジングは、配置したときに前記1の領域と直交する方向に、当該ハウジングを配置する配置対象における前記ハウジングとの接触面から所定距離以上離間するように支持するスタンドを有する、
ワイヤレス電力伝送(WPT)の受電装置。
【請求項12】
前記ハウジングは、配置したときに前記1の領域と直交する方向が当該ハウジングを配置する配置対象における前記ハウジングとの接触面と交差するように支持するスタンドを有する、
請求項11記載の受電装置。
【請求項13】
前記ハウジングは、配置したときに前記1の領域と直交する方向が当該ハウジングを配置する配置対象における前記ハウジングとの接触面と略鉛直方向となるように支持するスタンドを有する、
請求項11記載の受電装置。
【請求項14】
前記ハウジングは、吊り下げ可能な吊り下げ支持部を有する、
請求項11記載の受電装置。
【請求項15】
前記接続線は、前記基板上に設けられた、
請求項1から9のいずれか記載のマルチ・アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ・アンテナおよび受電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、ワイヤレス電力伝送(WPT:Wireless Power Transfer)が利用されている。WPTを活用することで、有線による電力伝送の場合と比較して、配線の負担、破断、メンテナンス等の問題を回避することができる。
【0003】
一般的に、WPTの受電装置側では、送電されるエネルギを受電するため、ダイポール・アンテナ等の線状アンテナが用いられている。通常、1本の線状アンテナを用いる場合、十分な受電量や指向性を確保することが困難なため、複数本の線状アンテナ又はマルチ・アンテナが用いられている。
【0004】
マルチ・アンテナを用いる場合、アンテナの本数、アンテナ間の距離、向き及び接続等を最適化する必要がある。そうでなければ、電磁カップリング等が生じて、受電効率が低下する虞があるからである。最適な組み合わせは環境に大きく依存する。
【0005】
本技術分野の背景技術として、特開2010-41566号公報(特許文献1)がある。特許文献1には、2本のダイポール・アンテナを十字形に交差させた例が示されている。
本技術分野の背景技術として、国際公開第2018/096740号(特許文献2)がある。特許文献2には、2本のダイポール・アンテナを十字形に交差させるとともに、各端部側を矢印状とし、さらにその形態を縦方向及び横方向で繰り返した例が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-41566号公報
【文献】国際公開第2018/096740号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、製造コストが安価かつ、受信性能が優れたマルチ・アンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子と、第1アンテナ素子の第1給電点と第2アンテナ素子の第2給電点を接続する接続線と、を備え、接続線は、第1アンテナ素子の第1給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第1アンテナ素子の第1給電点に接続され、接続線は、第2アンテナ素子の第2給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第2アンテナ素子の第2給電点に接続される、マルチ・アンテナ。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、製造コストが安価かつ、受信性能が優れたマルチ・アンテナを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】WPTシステムの全体の構成を示す図である。
図2】送電装置と、受電装置との構成例を表すブロック図である。
図3】受電装置1、2の本体の上面図および側面図である。
図4】受電装置1の本体に内蔵された基板10の上面図である。
図5】FPCに配置されるマルチ・アンテナの単体の斜視図である。
図6】マルチ・アンテナ(第一実施例)の第一実施形態にかかる構成を示す図である。
図7】マルチ・アンテナ(第一実施例)の第二実施形態にかかる構成を示す図である。
図8】マルチ・アンテナ(第一実施例)の第三実施形態にかかる構成を示す図である。
図9】マルチ・アンテナ(第一実施例)の第四実施形態にかかる構成を示す図である。
図10】マルチ・アンテナ(第一実施例)の第五実施形態にかかる構成を示す図である。
図11】マルチ・アンテナ(第一実施例)の第六実施形態にかかる構成を示す図である。
図12】マルチ・アンテナ(第一実施例)の第七実施形態にかかる構成を示す図である。
図13】マルチ・アンテナ(第一実施例)の第八実施形態にかかる構成を示す図である。
図14】マルチ・アンテナ(第一実施例)の複数の組み合わせを示す平面図である。
図15】マルチ・アンテナ(第一実施例)の変形例にかかる構成を示す図である。
図16】マルチ・アンテナ(第二実施例)の第一実施形態にかかる構成を示す図である。
図17】マルチ・アンテナ(第二実施例)の第二実施形態にかかる構成を示す図である。
図18】マルチ・アンテナ(第二実施例)の第三実施形態にかかる構成を示す図である。
図19】マルチ・アンテナ(第二実施例)の複数の組み合わせを示す平面図である。
図20】マルチ・アンテナ(第二実施例)の変形例にかかる構成を示す図である。
図21】マルチ・アンテナ(第三実施例)の第一実施形態にかかる構成を示す図である。
図22】マルチ・アンテナ(第三実施例)の第二実施形態にかかる構成を示す図である。
図23】マルチ・アンテナ(第三実施例)の第二実施形態にかかる構成を示す図である。
図24】マルチ・アンテナ(第三実施例)の第二実施形態にかかる構成を示す図である。
図25】マルチ・アンテナ(第三実施例)を含む受電装置1、2の本体の側面図である。
図26】受電装置1、2(第四実施例)の本体の上面図、側面図および斜視図である。
図27】受電装置1、2(第五実施例)の本体の上面図、側面図および斜視図である。
図28】マルチ・アンテナ(第六実施例)の第一実施形態にかかる構成を示す図である。
図29】アンテナ素子、接続線、整流器との接続関係を図示したものである。
図30】インターフェイス基板(第七実施例)にかかる構成を示す図および複数本の線状アンテナから成るマルチ・アンテナに対するインターフェイス基板の適用例を示す図である。
図31】マルチ・アンテナを適用可能な、基板を対比して表で示した図の例である。
図32】各種のマルチ・アンテナの放射効率を(1)乃至(3)で図示した例である。
図33】ビルマネジメント領域で、受電装置を適用する例、受電装置の使用形態について概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明を説明するために用いられた実施形態の例に過ぎない。以下の記載に基づいて本願発明の内容が限定して解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0012】
近年、様々な分野で、PC、センサ、アクチュエータ、ロボット、機器等にエネルギを送電するために、WPT(ワイヤレス電力伝送:Wireless Power Transmission又はWireless Power Transfer)が利用されている。
例えば、WPTでは、送電装置と受電装置との間で、マイクロ波を用いて、エネルギが送電されている。
一般的に、受電装置内では、送電装置から送電されるエネルギを受電するため、ダイポール・アンテナ等の線状アンテナが用いられている。
【0013】
WPTに基づいて、効率的にエネルギの送受電するためには、様々な課題を考慮する必要がある。例えば、送電装置側では、自由空間内での送電中に電波が減衰する等という、物理的制約を考慮する必要がある。また、送電される電力の上限は、1Wに規制される等という、法的制約を考慮する必要がある。
一方、受電装置側では、このような法的制約は緩和されている。しかしながら、受電装置側では、以下に記載のような、特有の課題がある。
【0014】
「電気的課題」
1本のアンテナを用いてエネルギを受電する場合、センサ等を稼働するために十分な受電量や指向性を得ることが難しいことがある。一方、マルチ・アンテナを用いる場合、アンテナの本数、アンテナ間の距離、向き及び接続等を最適化する必要がある。そうでなければ、マルチ・アンテナの受電効率が低下するからである。
【0015】
「物理的課題」
受電装置内でマルチ・アンテナを配置し、保持するためには、筐体を用いて配置を最適化することがある。ただし、筐体の材料としてフレキシブル基板が用いられる場合、熱や強い応力に弱いという物理的課題がある。従って、それら熱や強い応力に起因してマルチ・アンテナの配置が損なわれないようにする必要がある。
【0016】
「環境的課題」
マルチ・アンテナが周囲環境で露出又は突出して配置されるような場合、美観が損なわれる虞がある。一般的に、マルチ・アンテナの受電量(複数のアンテナを大きな面積領域で最適に配置すること)と、美観(人間がアンテナを意識しないこと)とは、トレードオフの関係にある。従って、不自然でないように、周囲環境とマルチ・アンテナとを融合することが好ましい。
【0017】
「製造的課題」
一般的に、部品実装面積が小さく、基板面積が大きいマルチ・アンテナは、その製造コストを増大させる傾向がある。また、マルチ・アンテナに用いられる各線状アンテナ等が統一的に適用できない場合には、大量生産の効率を損なう虞がある。従って、製造面での負担が少ないようにマルチ・アンテナを構成することが好ましい。
【0018】
「法的課題」
上記のように、送信電力、送信アンテナ利得については、上限が定められていることがある。ただし、受電装置側では、厳しい規制は課されておらず、受信アンテナ数については、上限が定められていないことがある。ただし、送信側の問題を理解した上で、送電装置と受電装置との間での受電の効率を高めることが好ましい。
【0019】
「ビルマネジメント領域の課題」
ビルマネジメント領域(オフィスビルや商業施設等の建築物の管理に関する総合的なマネジメント)で受電装置が用いられる場合、受信アンテナのサイズは比較的制約を受けにくいとされている。ただし、送電装置と受電装置との間の距離が比較的に長くなりやすいため、受電の効率を高めることが求められている。また、受電用のアンテナを周囲の環境に溶け込ませることが一層求められている。
【0020】
本出願人は、これら様々な観点に鑑みて、WPTの受電装置に用いられるマルチ・アンテナについて、好適なパフォーマンスが得られるように工夫を行った(第一実施例から第六実施例)。さらに、各線状アンテナの配置と接続とを補助するためのインターフェイス基板を提供した(第七実施例)。
【0021】
一般的に、複数のエレメントを並べたアンテナをアレー・アンテナという。通常、アレー・アンテナでは、同じ形状、寸法のエレメントを配置している。エレメントの数、設置の仕方等によって、受電量や指向性等の所望の特性を設計することができる。
一般的に、アレー・アンテナは、特定方向へ強く放射されている。受信する電波の強さは、ほぼ距離に反比例して小さくなる。
また、一般的に、アレー・アンテナは、電流の位相差を極力なくして、均一で強い電流を流すようにエレメントの長さを調整している。
【0022】
エレメントは、例えば、銅線等を用いて構成されたダイポール・アンテナ等の線状アンテナとして構成されている。
一般的に、ダイポール・アンテナは、針金1本に単純化できる。ダイポール・アンテナは、左右の長さを同じにして、左右に流れる電流の大きさを等しくした平衡回路である。
また、一般的に、ダイポール・アンテナの長さは、波長のほぼ半分のときに共振現象が発生して、最も強い電流が流れる。
【0023】
一般的に、ダイポール・アンテナは、1/2λ(半波長)ダイポール・アンテナともいい、その長さdを動作周波数f(Hz)に基づいて、以下のように求めることができる。
d=3×108/2f(m)
【0024】
ただし、dを求める計算式は、上式に限定されない。例えば、誘導性リアクタンスをなくすため、エレメントの長さを96%から97%の範囲内に抑えることがある。
d={3×108/2f}×(0.96~0.97)(m)
【0025】
このように、ダイポール・アンテナは、共振型のアンテナとして、動作周波数の波長をもとに電界検出型として設計される。しかしながら、電気回路の基板上に設ける際、基板の誘電体層の厚さや誘電率によって、波長短縮率が相違することがある。さらに、ダイポール・アンテナの配置の仕方等によっては、上記dを求める式に修正等を加えることは可能である。
【0026】
本実施例に係るマルチ・アンテナでは、基本的に、アレー・アンテナの設計思想を踏襲しているが、エレメントの配置と接続の仕方に特段の工夫をしている。
本実施例に係るマルチ・アンテナを適用することにより、センサ等を稼働するために十分な受電量や指向性を確保することを可能にした。この際、各線状アンテナを効率的に結ぶとともに、各線状アンテナの間の距離、方位、接続等によって、電磁カップリング等の問題が生じることを抑制した。
【0027】
この基本態様を複数配置することによって、十分な受電量と指向性を確保して、放射効率を向上させるように工夫した。
さらに、マルチ・アンテナをDC出力のコネクタ又はDC接続線(以下、単に接続線という)によって接続する際、近接する2本の線状アンテナの成す内角の二等分線に沿って接続線を配置することによって、アンテナに対して悪影響を与えないように工夫した。
【0028】
なお、DC接続線は近接する2本の線状アンテナの成す内角の二等分線に沿ってDC接続線を配置する必要は必ずしもない。DC接続線は、2本の線状アンテナの成す内角の二等分線に沿わずに2本の線状アンテナに接続して配置しても構わない。
【0029】
さらに、インターフェイス基板を用いることによって、マルチ・アンテナを構成する各線状アンテナと接続線との配置及び接続を効率的に行えるように工夫した。
【0030】
<WPTシステムの基本構成>
図1は、本実施形態に係るWPTシステムの全体の構成を示す図である。
【0031】
図1に示すWPTシステムは、例えば、送電装置4、受電装置1、2、第1情報処理装置61、及び第2情報処理装置62を備える。図1に示すWPTシステムは、例えば、ビル、又は工場等で利用される。なお、送電装置4と第1情報処理装置61との接続、及び第1情報処理装置61と第2情報処理装置62との接続は、有線であっても無線であっても構わない。
【0032】
図1において、WPTシステムが送電装置4を3台含む例を示しているが、WPTシステムに含まれる送電装置4の数は、3台に限定されない。WPTシステムに含まれる送電装置4は、2台以下であってもよいし、4台以上であってもよい。
【0033】
図1において、WPTシステムが受電装置1、2を7台含む例を示しているが、WPTシステムに含まれる受電装置1、2の数は、7台に限定されない。WPTシステムに含まれる受電装置1、2は、6台以下であってもよいし、8台以上であってもよい。
【0034】
図1において、WPTシステムが第1情報処理装置61を2台含む例を示しているが、WPTシステムに含まれる第1情報処理装置61の数は、2台に限定されない。WPTシステムに含まれる第1情報処理装置61は、1台であってもよいし、3台以上であってもよい。
【0035】
送電装置4は、例えば、受電装置1、2へ給電信号、又はデータ信号を送信する。送電装置4は、例えば、920MHz帯の電波により、受電装置1、2へ給電信号を送信する。送電装置4は、例えば、2.4GHz帯の電波により、受電装置1、2へデータ信号を送信する。送電装置4は、データ信号を、920MHz帯の電波により送信してもよい。
【0036】
送電装置4は、例えば、1台の受電装置1、2へ給電信号を送信してもよいし、複数台の受電装置1、2へ給電信号を送信してもよい。送電装置4は、例えば、1台の受電装置1、2へデータ信号を送信してもよいし、複数台の受電装置1、2へデータ信号を送信してもよい。送電装置4は、例えば、他の送電装置4と同じデータ信号を送信してもよいし、他の送電装置4と異なるデータ信号を送信してもよい。送電装置4は、例えば、所定のコマンド信号をデータ信号として受電装置1、2へ送信してもよいし、予め設定された信号をデータ信号として受電装置1、2へ送信してもよい。
【0037】
送電装置4は、例えば、受電装置1、2から送信されるデータ信号を受信する。送電装置4は、例えば、1台の受電装置1、2から送信されるデータ信号を受信してもよいし、複数の受電装置1、2から送信されるデータ信号を受信してもよい。送電装置4は、受電装置1、2から送信されるデータ信号を第1情報処理装置61へ送信する。送電装置4は、送電装置4の状態に関する情報を第1情報処理装置61へ送信する。
【0038】
受電装置1、2は、例えば、送電装置4から送信される給電信号、又はデータ信号を受信する。受電装置1、2は、例えば、蓄電部を有する場合、送電装置4から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力を蓄電部に貯える。受電装置1、2は、例えば、所定のセンサを有する場合、送電装置4から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力によりセンサを駆動させる。蓄電部には、バッテリ、キャパシタ等を用いることができる。
【0039】
受電装置1、2は、例えば、受電装置1、2の状態に関する情報、又はセンサによる計測結果に関する情報を、データ信号として送電装置4へ送信する。
【0040】
第1情報処理装置61は、WPTシステムに収容される送電装置4、受電装置1、2の動作を監視する情報処理装置である。例えば、第1情報処理装置61は、送電装置4から送信される、送電装置4、及び受電装置1、2の状態に関する情報に基づき、送電装置4、又は受電装置1、2が予め設定された状態になっているか否かを判断する。予め設定された状態になっていると判断した場合、第1情報処理装置61は、所定の情報を第2情報処理装置62へ送信する。
【0041】
また、第1情報処理装置61は、WPTシステムに収容される送電装置4、受電装置1、2についての情報を蓄積する。例えば、第1情報処理装置61は、送電装置4から送信される、送電装置4及び受電装置1、2の状態に関する情報を、第1情報処理装置61に設けられる記憶部に記憶する。
【0042】
また、第1情報処理装置61は、WPTシステムに収容される送電装置4の動作を制御する。
【0043】
また、第1情報処理装置61は、WPTシステムに収容される送電装置4の動作を制御する。例えば、第1情報処理装置61は、所定の指示、又は情報を送電装置4へ送信する。
【0044】
また、第1情報処理装置61は、第2情報処理装置62の動作を制御する。
【0045】
第2情報処理装置62は、例えば、WPTシステムの管理者が操作する情報処理装置である。第2情報処理装置62は、WPTシステムに収容される送電装置4、受電装置1、2、又はこれらの両方が所定の状態になっている旨の連絡を第1情報処理装置61から受信すると、送電装置4、受電装置1、2、又はこれらの両方が所定の状態になっていることをユーザに提示する。
【0046】
また、第2情報処理装置62は、第1情報処理装置61に蓄積されている、送電装置4及び受電装置1、2の状態に関する情報を分析し、所定の情報をユーザに提示する。所定の情報は、例えば、以下である。
・送電装置4の配置に関する情報
・受電装置1、2の配置に関する情報
・消費電力に関する情報
・電力強度に関する情報
【0047】
<送電装置と受電装置の基本構成>
図2は、図1に示す送電装置4と、受電装置1、2との構成例を表すブロック図である。図2に示すように、送電装置4と受電装置1、2とは、例えば、互いに所定間隔で離間する。例えば、送電装置4と受電装置1、2とは、数m程度の距離だけ隔てられて設置される。具体的には、例えば、送電装置4は、屋内の高所、例えば、天井、又は壁に設けられた所定の高位置に固定して設置される。受電装置1、2は、屋内の所定のデバイスに設置されたり、給電が必要なデバイスの近傍に載置されたりする。また、受電装置1、2は、ユーザにより携帯されてもよい。送電装置4は、所定の周波数、例えば、920MHz帯の電波により、受電装置1、2へ給電信号を送信する。受電装置1、2は、送電装置4から送信される給電信号を電力へ変換し、変換した電力を充電するか、又は、変換した電力を所定のデバイスへ供給する。
【0048】
送電装置4は、例えば、発振器401、送信アンテナ402、マイコン(制御器又はMCU)403、データ送受信機404、データ送受信アンテナ405を有する。発振器401、マイコン403、データ送受信機404、データ送受信アンテナ405、又はこれらのうち少なくともいずれかの組み合わせは、例えば、PCB(プリント基板)に実装されていてもよい。
【0049】
発振器401は、所定周波数帯、例えば、920MHz帯の信号を発振させる。発振された信号は、必要に応じて、増幅されて、不要周波数成分が除去されてもよい。
【0050】
送信アンテナ402は、例えば、920MHz帯の電波を効率的に送信可能に形成されている。送信アンテナ402は、発振器401で発振された信号を、給電信号として放射する。
【0051】
マイコン403は、送電装置4の動作を制御する。マイコン403は、例えば、ARMプロセッサを搭載したシングルボードコンピュータにより実現される。マイコン403は、例えば、送信アンテナ402による電波の送信を制御する。
【0052】
データ送受信機404は、デジタルデータのアナログ化、アナログデータの変調等の処理を実施する。また、データ送受信機404は、データ送受信アンテナ405で受信されるデータ信号の復調、復調されたデータのデジタル化等の処理を実施する。データ送受信機404は、例えば、データ送受信アンテナ405で受信されるデータ信号から所定の信号を抽出し、デジタルデータに変換してマイコン403へ送信する。
【0053】
データ送受信アンテナ405は、例えば、2.4GHz帯の電波を効率的に送受信可能に形成されている。データ送受信アンテナ405は、データ送受信機404から供給されるデータ信号を放射する。また、データ送受信アンテナ405は、受電装置1、2から送信されたデータ信号を受信する。
【0054】
図3Aは、受電装置1の本体の上面図である。図3Bは、受電装置1の本体の側面図である。図4は、受電装置1の本体に内蔵された基板10の上面図である。
【0055】
受電装置1は、例えば、マルチ・アンテナ11、整流器14、電力管理部141、蓄電部142、マイコン145、データ送受信機144、データ送受信アンテナ143を有する。マルチ・アンテナ11、接続線111、整流器14、電力管理部141、蓄電部142、マイコン145、データ送受信機144、データ送受信アンテナ143、又はこれらのうち少なくともいずれかの組み合わせは、例えば、PCB又はFPC(フレキシブル基板)に実装されていてもよい。また、基板10上に配置された、電力管理部141、蓄電部142、マイコン145、データ送受信機144、データ送受信アンテナ143は全体として回路12を形成する。
接続線111は、2本の線状アンテナ1122および1132を、整流器14を介して接続する信号線である。接続線111は、マルチ・アンテナ11から受信した電力信号に対して、整流器14を介して整流された信号(整流信号)を出力するための出力線である。接続線111は、正極の電力信号を出力する第1接続線、および、負極の電力信号を出力する第2接続線の2本の接続線から構成される。線状アンテナ1122および1132の第1接続線および第2接続線の接続手法としては、2種類の組み合わせが許される(図4A図4B)。
具体的に、線状アンテナ1122Aと整流器14を介して接続する信号線を接続線111A、線状アンテナ1122Bと整流器14を介して接続する信号線を接続線111B、線状アンテナ1132Aと整流器14を介して接続する信号線を接続線111C、線状アンテナ1132Bと整流器14を介して接続する信号線を接続線111Dとする。
この場合、図4Aにおいては、接続線111Aに接続線111Cを接続し、接続線111Bに接続線111Dを接続する。図4Bにおいては、接続線111Aに接続線111Dを接続し、接続線111Bに接続線111Cを接続する。いずれの場合も線状アンテナ1122、1132が受信した電力信号を接続線111から取り出すことができる。
【0056】
マルチ・アンテナ11は、例えば、920MHz帯の電波を効率的に受信可能に形成されている。マルチ・アンテナ11は、送信アンテナ402から放射された給電信号を受信する。
【0057】
整流器14は、給電信号として受信した電波を整流し、直流電圧に変換する。
【0058】
電力管理部141は、直流電圧を管理する。例えば、電力管理部141は、直流電圧に基づいて充電電圧を制御する。電力管理部141は、充電電圧を制御することで、蓄電部142を充電する。また、電力管理部141は、例えば、蓄電部142に所定容量以上の電力が蓄えられると、直流電圧を、接続される部材へ供給する。
【0059】
また、電力管理部141は、マイコン145からの制御に応じ、蓄電部142に蓄えられた電力を放出させる。
【0060】
蓄電部142は、電力管理部141からの指示に応じて電力を蓄える。また、蓄電部142は、電力管理部141からの指示に応じて蓄えている電力を放出する。
【0061】
マイコン145は、受電装置1、2の動作を制御する。マイコン145は、電力管理部141から供給される直流電圧、又は蓄電部142に蓄えられた電力により駆動される。マイコン145は、電力管理部141を制御し、蓄電部142に蓄えられた電力を放出させる。
【0062】
受電装置1、2には、例えば、種々のセンサが接続可能である。例えば、熱センサ、温度センサ、光センサ、湿度センサ、振動センサ等が受電装置1、2に接続される。受電装置1、2に接続されたセンサは、例えば、電力管理部141から供給される直流電圧、又は蓄電部142から放出される電力により駆動される。マイコン145は、受電装置1、2の所定部位における電圧値、受電装置1、2に接続されるセンサの状況、センサにより検出された情報等を、継続的又は断続的に監視する。マイコン145は、受電装置1、2の所定部位における電圧値、受電装置1、2に接続されるセンサの状況、センサにより検出された情報等をデジタルデータとしてデータ送受信機144へ送信する。なお、センサは、受電装置1、2に内蔵されていてもよい。
【0063】
データ送受信機144は、マイコン145から供給されるデジタルデータのアナログ化、アナログデータの変調等の処理を実施する。また、データ送受信機144は、データ送受信アンテナ143で受信されるデータ信号の復調、復調されたデータのデジタル化等の処理を実施する。データ送受信機144は、例えば、電力管理部141から供給される直流電圧、又は蓄電部142から放出される電力により駆動される。
【0064】
データ送受信アンテナ143は、例えば、2.4GHz帯の電波を効率的に送受信可能に形成されている。データ送受信アンテナ143は、データ送受信機144から供給されるデータ信号を放射する。また、データ送受信アンテナ143は、送電装置4から送信されたデータ信号を受信する。例えば、データ送受信アンテナ143は、例えば、電力管理部141から供給される直流電圧、又は蓄電部142から放出される電力により駆動される。
【0065】
<受電装置(実施例1)>
実施例1にかかる受電装置1の構成を以下に説明する。
受電装置1は、ワイヤレス電力伝送(WPT)に基づいて、3次元空間内でワイヤレスに送電されるエネルギを受電する受電装置である。具体的に、受電装置1は、送電装置からマイクロ波を用いて送電されるエネルギを受電するために用いられるワイヤレス電力伝送(WPT)の受電装置である。
受電装置1は、本体と、本体に内蔵された基板10と、本体に内蔵されたマルチ・アンテナ11と、本体に内蔵されたマルチ・アンテナ11の機能を発揮させるための回路12と、機器13と、を含む。受電装置1は、マルチ・アンテナ11を介して送電装置から送電されたマイクロ波を受電し、回路12、機器13等に電力を供給することが可能である。回路12は、整流器14と機能的に結合される。回路12は、整流器14を介してマルチ・アンテナ11に接続される。
マルチ・アンテナ11は、接続線111、第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113を含む。
【0066】
受電装置1は、制御器(МCU)と有線で接続されて、受電に関するデータをМCUに送信することができる。例えば、受電装置は、МCUに対して、受電量をフィードバックしてもよい。回路12は、МCUの機能を有していてもよい。または、回路12は、図示しないМCUとデータ通信可能なように構成されていてもよい。
【0067】
<基板10の構成>
具体的に、受電装置1の本体は、多層状に構成される。基板10の一種であるFPC(フレキシブル基板)には、プリント配線板(基板)を設けることができる。特に、FPCには、3次元空間内で、ワイヤレスに送電されるエネルギを受電可能なマルチ・アンテナ11が設けられる。
【0068】
FPCは、可撓性を有することができる。例えば、FPCは、厚さの薄い絶縁材(プラスチックフィルム)を用いて形成することができる。このため、シート状の受電装置1を、内蔵されているFPCと一緒に丸めることができる。
【0069】
<マルチ・アンテナ11の構成>
図5は、FPCに配置されるマルチ・アンテナの単体の斜視図である。
図6は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第一実施形態にかかる構成を示す図である。
FPCには、マルチ・アンテナ11を1つだけ備えていてもよい。
FPCには、マルチ・アンテナ11を複数備えていてもよい。
【0070】
マルチ・アンテナは、FPC(基板10)上に配置された線状のダイポール・アンテナ等の線状アンテナにより構成される。
【0071】
第1アンテナ素子112は、第1給電点1121、第1給電点1121から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナ1122を備える。第2アンテナ素子113は、第2給電点1131、第2給電点1131から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナ1132を備える。
なお、マルチ・アンテナ11が備えるアンテナ素子は2つである必要はなく、2よりも多い数のアンテナ素子を含んでも良い、つまり、本開示にかかるマルチ・アンテナ11は、少なくとも2以上のアンテナ素子を含むマルチ・アンテナである。
【0072】
第1アンテナ素子112の2本の線状アンテナ1122は、第1給電点1121において90度の角度で直交してなることが好適である。第2アンテナ素子113の2本の線状アンテナ1132は、第2給電点1131において90度の角度で直交してなることが好適である。
具体的に、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113が備える2本の線状アンテナ1122、1132は、第1給電点1121、第2給電点1131を頂点としたL字型に折り曲げられた形状で、第1給電点1121、第2給電点1131から直交した90度の角度で2方向へ延伸して形成されている。好適には、線状アンテナ1122、1132は、それぞれ、第1給電点1121、第2給電点1131から実質的に等しい長さで延伸してなる。
これにより、線状アンテナ1122、1132が互いに干渉して電磁カップリングが起きることを抑制し、受電効率を向上させることができる。また、線状アンテナ数を少なくすることにより、製造コストを低減することができる。
【0073】
なお、線状アンテナ1122、1132は対称に構成されているが、実装時には、一部非対称に構成されても構わない。線状アンテナ1122、1132は必ずしもまっすぐな直線ではなくとも構わない。例えば、図4図12図13図15Aに示すように、曲線であっても良い。
【0074】
第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113は、基板10の1の領域101を囲むように配置されている。
具体的に、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113は、略正多角形の領域101の4辺に沿って延在してなる。
第1給電点1121、第2給電点1131を頂点としてL字型に折り曲げられた形状で形成された2本の線状アンテナ1122、1132は、基板10の1の領域101を囲むように、領域101の中央を中心として点対称に配置される。これにより、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113は、略正方形状の領域101を囲むように、対向して配置される。
例えば、基板10の一辺の長さは8cm程度であり、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113の、線状アンテナ1122、1132の長さは7cm程度として構成されている。回路12は正方形状に形成されており一辺の長さは3.5cm程度である。
【0075】
なお、第1給電点1121、第2給電点1131のそれぞれは、2本の線状アンテナ1122、1132のL字型に折り曲げられた頂点に配置される必要は必ずしもない。例えば、図9のマルチ・アンテナのように、折り曲げられた頂点から外れた(オフセットした)線状アンテナ1122、1132上の位置に設けても良い。
【0076】
図7は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第二実施形態にかかる構成を示す図である。
第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113が囲む領域101は、正方形状である必要はなく、長方形状でも構わない。略正方形状の領域101を囲むように配置することにより、長方形状の領域101を囲むように配置する場合に比べて、小さな基板面積で、製造コストが安価かつ、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0077】
また、λを受電装置の動作波長として、第1アンテナ素子の一端から、第1アンテナ素子の一端に近接する第2アンテナ素子の一端までの距離は、λ/64以上の距離離れていることが望ましい。特に、第1アンテナ素子の一端から、第1アンテナ素子の一端に近接する第2アンテナ素子の一端までの距離は、λ/32以上の距離離れていることが好適である。
具体的に、図5において、第1アンテナ素子の線状アンテナ1132の一端は、第2アンテナ素子の線状アンテナ1122の一端とLだけの距離離間している。同様に、第1アンテナ素子の線状アンテナ1132の他端は、第2アンテナ素子の線状アンテナ1122の他端とLだけの距離離間している。
離間距離Lは、あまりに小さいと第1アンテナ素子および第2アンテナ素子が互いに干渉して電磁カップリングが生じることにより受電効率が低下する。一方、離間距離Lを大きくすると基板面積が大きくなることにより製造コストが高価なものとなる。
具体的に、λを受電装置の動作波長として、Lはλ/64以上、より好適にはλ/32以上であることが望ましい。また、Lは、λ、または、λの任意整数倍よりも小さい距離としても構わない。また、λ/16以上の距離離れているものとしても構わない。
【0078】
図8は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第三実施形態にかかる構成を示す図である。
第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113、接続線111等の基本構成は、マルチ・アンテナ(第一実施例)、マルチ・アンテナ(第二実施例)と同様であるため詳細な説明は省略する。
マルチ・アンテナ(第一実施例)の第三実施形態においては、長方形状の領域101を囲むように配置された第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113の第1給電点1121および第2給電点1131を、接続線111は直線状に接続する。
この場合、接続線111は、第1アンテナ素子の第1給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第1アンテナ素子の第1給電点に接続される。接続線111は、第2アンテナ素子の第2給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第2アンテナ素子の第2給電点に接続される。
なお、正方形状の領域101を囲むように配置された第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113においても、接続線111は、第1アンテナ素子の第1給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第1アンテナ素子の第1給電点に接続されても良い。同様に、接続線111は、第2アンテナ素子の第2給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第2アンテナ素子の第2給電点に接続されても良い。
なお、後述する図13におけるマルチ・アンテナ(第一実施例)の第八実施形態のような場合においても、接続線111は、第1アンテナ素子の第1給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第1アンテナ素子の第1給電点に接続されても良い。同様に、接続線111は、第2アンテナ素子の第2給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第2アンテナ素子の第2給電点に接続されても良い。
この場合も、安価かつ受電効率が優れたマイクロ波を用いるWPTの受電装置に用いるマルチ・アンテナを実現することができる。
【0079】
図9は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第四実施形態にかかる構成を示す図である。
第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113、接続線111等の基本構成は、マルチ・アンテナ(第一実施例)、マルチ・アンテナ(第二実施例)と同様であるため詳細な説明は省略する。
マルチ・アンテナ(第一実施例)の第四実施形態においては、菱形形状または四角形形状の領域101を囲むように配置された第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113の第1給電点1121および第2給電点1131を、接続線111は直線状に接続する。
第1アンテナ素子112は、第一端に向かって第一方向に延伸しており、第二端に向かって第二方向に延伸している。第2アンテナ素子113は、第三端に向かって第三方向に延伸しており、第四端に向かって第四方向に延伸している。第一方向と第二方向とがなす内角と、第三方向と第四方向とがなす内角とは、90度未満の角度である。
具体的に、2本の線状アンテナ1122、1132の折り曲げられた頂点の内角は、90度未満の鋭角に形成されている。第1給電点1121、第2給電点1131のそれぞれは、2本の線状アンテナ1122、1132の折り曲げられた頂点に配置されておらず、折り曲げられた頂点からオフセットした位置に設けても良い。
これにより、小さな基板面積で、製造コストが安価かつ、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0080】
図10は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第五実施形態にかかる構成を示す図である。
第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113、接続線111等の基本構成は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第四実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。
第1アンテナ素子112の第1給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角と、第2アンテナ素子113の第2給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角とは、90度未満の角度である。
具体的に、第1給電点1121、第2給電点1131のそれぞれは、2本の線状アンテナ1122、1132の折り曲げられた頂点に配置される。
これにより、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第四実施形態に比べて同様の基盤面積で、受信性能がより優れた好適なマルチ・アンテナを実現することができる。
【0081】
図11は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第六実施形態にかかる構成を示す図である。
第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113、接続線111等の基本構成は、マルチ・アンテナ(第一実施例)、マルチ・アンテナ(第二実施例)と同様であるため詳細な説明は省略する。
マルチ・アンテナ(第一実施例)の第六実施形態においては、菱形形状または四角形形状の領域101を囲むように配置された第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113の第1給電点1121および第2給電点1131を、接続線111は直線状に接続する。
第1アンテナ素子112は、第一端に向かって第一方向に延伸しており、第二端に向かって第二方向に延伸している。第2アンテナ素子113は、第三端に向かって第三方向に延伸しており、第四端に向かって第四方向に延伸している。第一方向と第二方向とがなす内角と、第三方向と第四方向とがなす内角とは、90度以上の角度である。
第1アンテナ素子112の第1給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角と、第2アンテナ素子113の第2給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角とは、90度以上の角度である。
具体的に、2本の線状アンテナ1122、1132の折り曲げられた頂点の内角は、90度以上の鈍角に形成されている。第1給電点1121、第2給電点1131のそれぞれは、2本の線状アンテナ1122、1132の折り曲げられた頂点に配置されておらず、折り曲げられた頂点からオフセットした位置に設けても良い。
なお、第1給電点1121、第2給電点1131のそれぞれは、2本の線状アンテナ1122、1132の折り曲げられた頂点に配置しても良い。
これにより、アンテナの本数が少なく製造コストが安価かつ、広い領域で電波を受信することが出来る。コンパクトで高効率な、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0082】
図12は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第七実施形態にかかる構成を示す図である。
第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113、接続線111等の基本構成は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第三実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。
本開示においては、第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113を構成する、線状アンテナ1122、線状アンテナ1132のうち、長辺に沿って設けられた線状アンテナは、波線状に屈曲を繰り返した形状で形成される。また、線状アンテナ1122、線状アンテナ1132のうち、短辺に沿って設けられた線状アンテナを、波線状に屈曲を繰り返した形状で形成しても良い。
なお、線状アンテナ1122、線状アンテナ1132は定まった波長の破線状に形成される必要は必ずしもなく、任意の屈曲形状であっても構わない。これにより、例えば基板10を線状アンテナ1122、線状アンテナ1132の形状に沿って形成することができる。受信装置の外形に沿って、線状アンテナ1122、線状アンテナ1132を自由に配置することができる。
例えば、線状アンテナ1122、線状アンテナ1132の形状に沿って、基板およびハウジング(ケース)を波線状に形成しても良い。例えば、受電装置1、2がユーザにより把持される携帯型の装置である場合において、波線状に形成したハウジングを、ユーザが把持する際のグリップとして用いても良い。
【0083】
図13は、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第八実施形態にかかる構成を示す図である。
第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113、接続線111等の基本構成は、マルチ・アンテナ(第一実施例)、マルチ・アンテナ(第二実施例)と同様であるため詳細な説明は省略する。
接続線111は、第1アンテナ素子の第1給電点に曲がって接続される。接続線111は、第2アンテナ素子の第2給電点に曲がって接続される。
本開示においては、接続線111は所定の曲率のもと屈曲しており、第1給電点および第2給電点に曲がって接続される。
このような場合においても、アンテナの本数が少なく製造コストが安価かつ、広い領域で電波を受信することが出来る。コンパクトで高効率な、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0084】
<マルチ・アンテナ11の構成(変形例)>
図15Aは、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第1変形例にかかる構成を示す図である。
図15Bは、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第2変形例にかかる構成を示す図である。
図15Cは、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第3変形例にかかる構成を示す図である。
図15Dは、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第4変形例にかかる構成を示す図である。
図15Eは、マルチ・アンテナ(第一実施例)の第5変形例にかかる構成を示す図である。
本開示にかかるマルチ・アンテナ11が含むアンテナ素子112、113の数は2本に限られない。また、アンテナ素子112、113が含む線状アンテナ1122、1132は領域101を囲むように、点対称ではなく、線対称に配置されていても構わない。また、線状アンテナが囲む領域は多角形である必要はなく、円形、楕円形でも構わない。
図15Aに示すように、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113の線状アンテナ1122、1132は、回路12が配置された略正方形状の領域101の4辺に沿って曲線状に延在してなる場合も許される。
図15Bに示すように、線状アンテナ1122、1132、1142は、回路12が配置された略正三角形状の領域101を囲むように配置されても良い。線状アンテナ1122、1132、1142は、線対称である正三角形を形成する。
図15Cに示すように、線状アンテナ1122~1162は、回路12が配置された略正五角形状の領域101を囲むように配置されても良い。線状アンテナ1122~1162は、線対称である正五角形を形成する。
図15Dに示すように、線状アンテナ1122~1172は、回路12が配置された略正六角形状の領域101を囲むように配置されても良い。線状アンテナ1122~1172は、線対称および点対称である正六角形を形成する。
図15Eに示すように、線状アンテナ1122、1132、1142は、回路12が配置された略正円形状の領域101を囲むように配置されても良い。線状アンテナ1122、1132、1142は、円形を形成する。
【0085】
<接続線111の構成>
接続線111は、ダイポール・アンテナを結ぶDC接続線である。好適には、各アンテナ素子は平衡回路を構成するように、左右で等しい長さを有する。その中央には整流器が備えられている。各アンテナは整流器に接続され、それらは接続線111によって結ばれる。その際、整流器の極性は揃えて接続されるものとする。なお、マルチ・アンテナにかかるすべての実施例においても同様である。
本実施例では、任意の種類の整流器を適用できることを理解されたい。
一般的に、各アンテナ素子を結ぶ接続線111は、煩雑な構成とならないように配置されている。接続線111は、各アンテナ素子の給電点を最短距離で接続することが好適である。
【0086】
接続線111の一端は第1アンテナ素子112の第1給電点1121に接続され、接続線111の他端は第2アンテナ素子113の第2給電点1131に接続される。なお、マルチ・アンテナ11を構成するアンテナ素子の数が2よりも多い場合においては、接続線111は各アンテナ素子の給電点を接続する。
【0087】
接続線111は、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113の第1給電点1121、第2給電点1131を頂点としてなる内角の二等分線に沿って、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113の第1給電点1121、第2給電点1131に接続される。
具体的に、接続線111は、第1アンテナ素子112の2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿って、第1アンテナ素子112の第1給電点1121に接続される。接続線111は、第2アンテナ素子113の2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿って、第2アンテナ素子113の第2給電点1131に接続される。
【0088】
なお、接続線111は、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113の第1給電点1121、第2給電点1131を頂点としてなる内角の二等分線に沿わずに、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113の第1給電点1121、第2給電点1131に接続されても構わない。
具体的に、接続線111は、第1アンテナ素子112の2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第1アンテナ素子112の第1給電点1121に接続される。接続線111は、第2アンテナ素子113の2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第2アンテナ素子113の第2給電点1131に接続される。
【0089】
具体的に、接続線111は、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113の第1給電点1121、第21131のそれぞれに、接続線111と整流器1123、1133を介して接続される。
図29は、アンテナ素子112、113、接続線111、整流器1123、1133との接続関係を図示したものである。
これにより、マルチ・アンテナとGNDとの電位差を大きく取ることができ、マルチ・アンテナの性能を向上させることができる。
また、接続線111は、アンテナ素子112および整流器1123、アンテナ素子113および整流器1133を併せたレクテナ(Rectenna)からの出力を取り出すための信号線と解することができる。具体的に、接続線111は、レクテナが受信した電波エネルギーを電流として取り出す信号線である。
【0090】
<回路12の構成>
受電装置1の本体は、FPCに内蔵したマルチ・アンテナの機能を発揮させるための回路12が内蔵されている。FPCと回路とは、有線で接続することができる。
回路12には、マルチ・アンテナ内を流れる平衡電流の流れをよくするため、任意のデバイスを追加することができる。例えば、フィルタやミキサ等を追加することが可能である。
【0091】
回路12は、基板10の面と直交する方向から見たときに、マルチ・アンテナ11に含まれる任意のアンテナ素子と重ならない位置に設けられる。なお、マルチ・アンテナにかかるすべての実施例においても同様である。
例えば、回路12は、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113が囲む基板10の1の領域101の中央領域に設けても良い。
第1アンテナ素子112の第1給電点1121から回路12までの距離は、第2アンテナ素子113の第2給電点1131から回路12までの距離と略等しい位置に設けることが好適である。
これにより、回路12の領域を電磁カップリングを抑制するための手段として利用することにより、小さな基板面積で、製造コストが安価かつ、受電効率が優れた受電装置を実現することができる。
【0092】
なお、マルチ・アンテナ11が第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113以外の他のアンテナ素子を含む場合がある。このような場合においても、回路12は、他のアンテナ素子を含む任意のアンテナ素子と重ならない位置に設けられることが好適である。
なぜなら、アンテナ素子と回路12が重複してしまうと、アンテナ素子と回路12との間の電磁カップリングにより受電効率が低下してしまうためである。
【0093】
具体的に、第1アンテナ素子112および前記第2アンテナ素子113は、回路12からλ/8以上の距離離れていることが好適である。特に、第1アンテナ素子112および前記第2アンテナ素子113は、回路12からλ/4以上の距離離れていることが望ましい。
なお、λはエネルギを受電するための電磁波(マイクロ波)の波長(動作波長)である。波長λは、動作周波数f(Hz)に基づいて、λ(m)=c(m/s)÷f(Hz)として求めることができる。c(m/s)は光速である。
これにより、アンテナ素子と回路12との間の電磁カップリングを効果的に抑制することができ、受電効率が優れた受電装置を実現することができる。
【0094】
回路12の形状は、第1アンテナ素子112および第2アンテナ素子113の指向性とは反対方向に離れるような形状に形成されていても良い。
第1アンテナ素子112の指向性は、領域101の内側から第1給電点1121を通る外側方向に向いている。また、第2アンテナ素子113の指向性は、領域101から第2給電点1131を通る外側方向に向いている。
この場合、回路12は、基板10の面と直交する方向から見たときに四角形状の形状に形成されている。本開示においては、四角形状の回路12の第1頂点121、第2頂点122をそれぞれ第1アンテナ素子112の第1給電点1121、第2アンテナ素子113の第2給電点1131から離れる方向に凹ませたり、切り欠き形状としても良い。
また、回路12を、45度回転させて領域101に配置しても良い。
【0095】
<受電装置(実施例2)>
実施例2にかかる受電装置2の構成を以下に説明する。なお、基本的な構成は実施例1にかかる受電装置1と共通しており、共通する構成についての説明は省略する。
受電装置2は、ワイヤレス電力伝送(WPT)に基づいて、3次元空間内でワイヤレスに送電されるエネルギを受電する受電装置である。具体的に、受電装置2は、送電装置からマイクロ波を用いて送電されるエネルギを受電するために用いられるワイヤレス電力伝送(WPT)の受電装置である。
受電装置2は、本体と、本体に内蔵された基板20と、本体に内蔵されたマルチ・アンテナ21と、本体に内蔵されたマルチ・アンテナ21の機能を発揮させるための回路22と、機器23と、を含む。受電装置2は、マルチ・アンテナ21を介して送電装置から送電されたマイクロ波を受電し、回路22、機器23等に電力を供給することが可能である。
マルチ・アンテナ21は、接続線211、線状アンテナ212~217を含む。
【0096】
<マルチ・アンテナ21の構成>
図16は、マルチ・アンテナ(第二実施例)の第一実施形態にかかる構成を示す図である。
マルチ・アンテナ21は、基板20を4つの領域201、202、203、204に画定するように略十字形に配置された2本の線状アンテナ212、213と、4つの領域201、202、203、204を囲むように基板上で最も外側において、略四角形の4辺に配置された4本の線状アンテナ214~217と、を含む。
これにより、同じ基板面積で、線状アンテナのアンテナ長をより長くとることができる。これにより、受電効率が優れた受電装置を実現することができる。
なお、線状アンテナ212~217は、必ずしもまっすぐな直線ではなくとも構わない。例えば、曲線であっても良い。
【0097】
具体的に、等しい長さを有する2本の線状アンテナ212、213は、互いに中央部分で90度の角度で互いに直交してなる。また、直交して配置された2本の線状アンテナ212、213を、外側から囲むように配置された4本の線状アンテナ214~217は、それぞれ、2本の線状アンテナ212、213に対して45度の角度で傾斜して配置される。
これにより、受電装置(実施例1)に比べて、受電効率が優れた受電装置を実現することができる。
【0098】
図17は、マルチ・アンテナ(第二実施例)の第二実施形態にかかる構成を示す図である。
4本の線状アンテナ214~217の少なくとも一部の少なくとも一端は、4つの領域の内側または外側に向けて折り曲げられている。
具体的に、4本の線状アンテナ214~217の両端は、それぞれ、4つの領域の内側に向けて折り曲げられた折り曲げ部2141、2142、2151、2152、2161、2162、2171、2172を有する。
本開示においては一例として、4本の線状アンテナ214~217のすべての両端が、4つの領域の内側に向けて折り曲げられた態様を一例として開示するが、4本の線状アンテナ214~217の一部または全部の、一端または両端のいずれかが4つの領域の内側に向けて折り曲げられた態様としても良い。
具体的に、線状アンテナ212、213の外側に設けられた、4本の線状アンテナ214~217は、両端が45度の角度で内側に折り曲げられてなり、これにより、折り曲げ部2141、2142、2151、2152、2161、2162、2171、2172を形成する。
なお、本開示においては、折り曲げ部2141、2142、2151、2152、2161、2162、2171、2172は、4つの領域の外側に向けて折り曲げられていても良い。
【0099】
図18は、マルチ・アンテナ(第二実施例)の第三実施形態にかかる構成を示す図である。
4本の線状アンテナ214~217の少なくとも一部の少なくとも一端は、前記4つの領域の内側または外側に向けて2回折り返されている、
具体的に、4本の線状アンテナ214~217の両端は、それぞれ、4つの領域の内側に向けて2回折り返されている折り返し部2143、2144、2153、2154、2163、2164、2173、2174を有する。
線状アンテナ212、213の外側に設けられた、4本の線状アンテナ214~217は、両端が45度と90度の角度で内側に向かって2回折り返されてなり、これにより、折り返し部2143、2144、2153、2154、2163、2164、2173、2174を形成する。
これにより、同じ基板面積で、線状アンテナのアンテナ長をより長くとることができる。これにより、受電効率が優れた受電装置を実現することができる。
なお、折り返し部2143、2144、2153、2154、2163、2164、2173、2174は、4つの領域の外側に向けて2回折り返されていても良い。
【0100】
<マルチ・アンテナ21の構成(変形例)>
図20は、マルチ・アンテナ(第二実施例)の変形例にかかる構成を示す図である。
本開示にかかるマルチ・アンテナ21が含む線状アンテナ212~217の数は6本に限られない。
略四角形の4辺に配置された4本の線状アンテナ214~217は、必ずしもまっすぐな直線ではなくとも構わない。例えば、曲線であっても良い。
略十字形に配置された2本の線状アンテナ212、213は、必ずしもまっすぐな直線ではなくとも構わない。例えば、曲線であっても良い。
【0101】
<接続線211の構成>
接続線211は、線状アンテナ212~217の6本のすべてを、時計回り又は反時計回りで一筆書き状に結んで接続される。なお、マルチ・アンテナ21を構成する線状アンテナの数が6よりも多い場合においては、接続線211は各線状アンテナを接続する。
接続線211は、2本の線状アンテナ212、213の直交部から、線状アンテナ215の略中央部に90度の角度で接続する。線状アンテナ212、213と接続線211は45度の角度をなす。
【0102】
一例として、接続線211が、線状アンテナ212~217の6本のすべてを、時計回りで一筆書き状に結んで接続する事例を説明する。
接続線211は、2本の線状アンテナ212、213の直交部から、線状アンテナ216の略中央部に90度の角度で接続する。線状アンテナ212、213と接続線211は45度の角度をなす。
接続線211は、線状アンテナ216の略中央部に45度の角度で接続され、線状アンテナ217の略中央部に45度の角度で接続される。
接続線211は、線状アンテナ217の略中央部に45度の角度で接続され、線状アンテナ214の略中央部に45度の角度で接続される。
接続線211は、線状アンテナ214の略中央部に45度の角度で接続され、線状アンテナ215の略中央部に45度の角度で接続される。
【0103】
<回路22の構成>
回路22は、基板20の面と直交する方向から見たときに、マルチ・アンテナ21に含まれる任意の線状アンテナと重ならない位置に設けられる。
例えば、回路22は、線状アンテナ212~217が画定する4つの領域201、202、203、204のうちのいずれか1つの領域の内側に、前記線状アンテナとは重ならない位置に設けても良い。
これにより、回路22の領域を電磁カップリングを抑制するための手段として利用することにより、小さな基板面積で、製造コストが安価かつ、受電効率が優れた受電装置を実現することができる。
【0104】
<変形例>
図14図19に示すように、複数のマルチ・アンテナ11、21を縦方向(y軸方向)及び/又は横方向(x軸方向)に並べて配置しても良い。この場合、隣り合うマルチ・アンテナ11、21同士をオフセット(ずらす)して配置しても良い。このオフセットの間隔は、任意である。
複数のマルチ・アンテナ11、21を縦方向(y軸方向)及び/又は横方向(x軸方向)に並置する場合、実施例1にかかるマルチ・アンテナ11と、実施例2にかかるマルチ・アンテナ21と、を組み合わせて任意に配置しても構わない。
【0105】
隣り合うマルチ・アンテナ11、21同士をオフセットしてもよい。
時計回り又は反時計回りに、複数のマルチ・アンテナ11、21のうちのいずれかを回転させてもよい。
複数のマルチ・アンテナ21を並置する場合、最も外側の線状アンテナ214~217の少なくともいずれか一部を共有するように並べて配置してもよい。
【0106】
なお、上述のように、一般的に、ダイポール・アンテナは、1/2λ(半波長)ダイポール・アンテナともいい、その長さdを動作周波数f(Hz)に基づいて、以下のように求めることができる。
d=3×108/2f(m)、または
d={3×108/2f}×(0.96~0.97)(m)。
従って、当業者であれば、以上の説明から、本実施例のマルチ・アンテナ11、21に含まれる各線状アンテナの寸法について、概略的に理解することができるであろう。しかしながら、マルチ・アンテナ11、21に含まれる各線状アンテナの寸法は、実施形態に応じて様々な修正を加えることができることを理解されたい。
【0107】
<マルチ・アンテナの構成>
図21は、マルチ・アンテナ(第三実施例)の第一実施形態にかかる構成を示す図である。
第1アンテナ素子312、第2アンテナ素子313、接続線311、基板30等の基本構成は、マルチ・アンテナ(第一実施例)、マルチ・アンテナ(第二実施例)における第1アンテナ素子112、第2アンテナ素子113、接続線111、基板10と同様であるため詳細な説明は省略する。なお、領域301の内側には、回路が配置されていても良い。
マルチ・アンテナ(第三実施例)の第一実施形態においては、第1アンテナ素子312および第2アンテナ素子313は、逆Fアンテナである。接続線311は、第1アンテナ素子312の第1給電点3121と第2アンテナ素子313の第2給電点3131に接続される。また、第1アンテナ素子312の第1接地点3122、第2アンテナ素子313の第2接地点3132は、それぞれグランド(基板31)に接続される。なお、第1接地点3122、第2接地点3132はそれぞれ共通のグランドに接続される必要はなく、それぞれ独立したグランドに接続されても構わない。例えば、第1接地点3122、第2接地点3132は、それぞれ、複数の領域に独立して分割されたグランド線に接続されても良い。
接続線311は、グランド(基板31)に接続しないように配線される。なお、接続線311は、第1給電点3121および第2給電点3131を最短距離で接続する必要は必ずしもない。どのような経路で接続されても構わない。
第1アンテナ素子312および第2アンテナ素子313は、領域301を囲むように対向して配置される。第1アンテナ素子312および第2アンテナ素子313は、基板30に対して鉛直方向に立体的に形成される。
【0108】
図22は、マルチ・アンテナ(第三実施例)の第二実施形態にかかる構成を示す図である。
第3アンテナ素子314および第4アンテナ素子315は、逆Fアンテナである。接続線311は、第1アンテナ素子312の第1給電点3121と、第2アンテナ素子313の第2給電点3131と、第3アンテナ素子314の第3給電点3141と、第4アンテナ素子315の第4給電点3151とを接続する。
マルチ・アンテナ(第三実施例)の第二実施形態においては、マルチ・アンテナ(第三実施例)の第一実施形態に加えて、逆Fアンテナである第3アンテナ素子314および第4アンテナ素子315を備える。接続線311は、第3アンテナ素子314の第3給電点3141と第4アンテナ素子315の第4給電点3151に接続される。また、第3アンテナ素子314の第3接地点3142、第4アンテナ素子315の第4接地点3152は、それぞれグランド(基板31)に接続される。なお、第1接地点3122、第2接地点3132、第3接地点3142、第4接地点3152はそれぞれ共通のグランドに接続される必要はなく、それぞれ独立したグランドに接続されても構わない。例えば、第1接地点3122、第2接地点3132、第3接地点3142、第4接地点3152は、それぞれ、複数の領域に独立して分割されたグランド線に接続されても良い(図23図24)。
接続線311は、グランド(基板31)に接続しないように配線される。なお、接続線311は、第1給電点3121、第2給電点3131、第3給電点3141および第4給電点3151を最短距離で接続する必要は必ずしもない。また、それぞれの給電点に任意の順番で接続されても良い。接続線311は、第1給電点3121、第2給電点3131、第3給電点3141および第4給電点3151に対して任意の経路で接続しても良い。
第3アンテナ素子314および第4アンテナ素子315は、領域301を囲むように対向して配置される。また、第1アンテナ素子312、第2アンテナ素子313、第3アンテナ素子314、第4アンテナ素子315は、領域301を囲むように配置される。第1アンテナ素子312および第2アンテナ素子313は、基板30に対して鉛直方向に立体的に形成される。
これにより、受信装置を金属製の導体机上などの環境に設置した場合においても、マルチ・アンテナを導体面から離間させることにより、効率的に電波を受信する事ができる。また、厚みを抑えることができ、コンパクトで高効率な、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
第1アンテナ素子312~第4アンテナ素子315は、それぞれ、基板31の端部(基板端)に設けられる必要は必ずしもなく、基板31の端部から内側の領域に、領域301を囲むように設けられていれば良い。
また、アンテナ素子の数は2つ、および、4つに限られない。領域301を囲むように設けられた任意の本数の逆Fアンテナのアンテナ素子から構成されるマルチ・アンテナを実現することが可能である。
【0109】
図25は、マルチ・アンテナ(第三実施例)を含む受電装置1、2の本体の側面図である。
ハウジング35は、マルチ・アンテナ(第三実施例)を囲む外装(ケース)である。ハウジング35は、基板30およびマルチ・アンテナを内部に内蔵し、収容する。
ハウジング35は、内蔵する基板30およびマルチ・アンテナ等の無線機器を保護する役割を有している。ハウジング35は、耐衝撃性および耐久性を有するプラスチック(ABS樹脂)や金属素材を組み合わせて構成される。また、内部の熱を外部に効果的に拡散するための、通気孔、通気スリット等の通気部が設けられても良い。
ハウジング35はマルチ・アンテナの領域301の面方向に比べて、領域301の鉛直方向の厚みが薄く形成されており、基板10およびマルチ・アンテナをコンパクトに収容することが可能である。
ハウジング35は、基板周から基板中央に向かって基板鉛直方向に向かって傾斜を有する突出形状に形成されている。具体的に、ハウジング35は、領域301の鉛直方向の厚みが領域301の中央から、領域301の周方向に向けて傾斜面351が形成されており薄くなっていく。具体的に、領域301の中央領域は、内蔵する逆Fアンテナ(例えば、第1アンテナ素子312)が領域301の領域面から鉛直方向に向けて突出しているため、それに応じてハウジング35も領域301の領域面から外側に向けて傾斜面351に沿って突出するように形成される。
これにより、受信装置の周方向に向かって厚みが薄くなるため、コンパクトで高効率な、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0110】
<受電装置(スタンド)の構成>
図26は、受電装置1、2(第四実施例)の斜視図である。
ハウジング35は、配置したときに領域と直交する方向が配置面と交差するように支持するスタンド352を有する。ハウジング35は、配置したときに領域と直交する方向が配置面と略鉛直方向となるように支持するスタンド352を有する。スタンド352は、耐久性および耐候性を有するプラスチック材などにより形成される。
具体的に、図26Aにおいて、受電装置1、2のハウジング35は、ハウジング35に内蔵された基板30および領域301を配置面に対して略垂直に支持可能なスタンド352により支持される。なお、スタンド352は、受電装置1、2のハウジング35の一部として形成されても構わないし、別体として形成されていても良い。受電装置1、2のハウジング35は、スタンド352から着脱可能に形成されていても良い。また、受電装置1、2のハウジング35は垂直に支持される可能性は必ずしもなく、図26B、C、Dのように、マルチ・アンテナの一部が少なくとも配置面から離間して配置可能な支持部材であればどのような角度でハウジング35を支持しても良い。
図26B、Cのように、スタンド352は、マルチ・アンテナの領域301が配置面と非平行(直交する)に受電装置1、2のハウジング35を支持することが好適である。なお、スタンド352は、マルチ・アンテナの領域301が、マルチ・アンテナの性能を発揮する上で十分な距離をとることができる場合は、図26Dのように、配置面と平行に(対向して)ハウジング35を支持しても良い。
これにより、受信装置を金属製の導体机上などの環境に設置した場合においても、マルチ・アンテナを導体面から離間させることにより、効率的に電波を受信する事ができる。効率的に電波を受信できる受信装置を実現することができる。
【0111】
なお、スタンド352は、ハウジング35の高さ(マルチ・アンテナの配置面からの離間距離)を調整可能なハウジング35を支持する柱部、ハウジング35の角度(マルチ・アンテナの配置面に対する角度)を調整可能なハウジング35と接続される多関節構造またはボールジョイント構造を有するアーム部、アーム部をハウジング35と接続させるためのブラケットやクランプ等の固定具からなる取り付け部などを備えても良い。
なお、スタンド352が支持するハウジング35が内蔵するマルチ・アンテナは、本開示にかかるすべての実施例にかかるマルチ・アンテナに対して適用可能である。
【0112】
<受電装置(吊り下げ支持部)の構成>
図27は、受電装置1、2(第五実施例)の本体の上面図、側面図および斜視図である。
ハウジング35は、吊り下げ可能な吊り下げ支持部353を有する。
具体的に、吊り下げ支持部353は、ハウジング35を机上に配置されたモニタ等の電子機器の左右端に、ハウジング35を吊り下げて支持する支持部材である。例えば、モニタ等の電子機器の左右端に固定されたアーム(吊り下げ支持部353)に、ハウジング35を固定し、ハウジング35を金属製の机から離間して支持する。なお、吊り下げ支持部353は、ハウジング35までの距離を調整可能なワイヤー、チェーン、ナイロンストラップ等の調整部材を備えていても良い。また、吊り下げ支持部353は、取り付けフックを、吊り下げフックへ係合させることにより、ハウジング35を吊り下げ可能な態様で支持しても良い。
なお、吊り下げ支持部353が支持するハウジング35が内蔵するマルチ・アンテナは、本開示にかかるすべての実施例にかかるマルチ・アンテナに対して適用可能である。
【0113】
<マルチ・アンテナ41の構成>
図28は、マルチ・アンテナ(第六実施例)の第一実施形態にかかる構成を示す図である。
第1アンテナ412および第2アンテナ413は金属基板上に形成されたスリット(空隙、スロット)として形成されている。金属基板上に形成されたスリットは、電波を受信可能なアンテナ素子として機能する。
マルチ・アンテナ(第六実施例)の第一実施形態においては、金属等の導体基板上に細長い空隙(スリット)である空隙、スリットが形成されている。具体的に、幅数mm程度の溝が導体基板上に設けられている。スリットは、マルチ・アンテナ(第一実施例)、マルチ・アンテナ(第二実施例)、マルチ・アンテナ(第三実施例)における線状アンテナと同様に、異なる2方向へ延伸してなる。また、マルチ・アンテナ(第六実施例)の第一実施形態のスリットの延伸方向は、マルチ・アンテナ(第一実施例)、マルチ・アンテナ(第二実施例)、マルチ・アンテナ(第三実施例)の線状アンテナと同様に、任意の形状に形成されることが許される。
また、接続線411は、L字型に折り曲げられた頂点の位置を接続するように設けられる。なお、接続線411は、必ずしも頂点の位置に設けられる必要はなく、頂点の位置からオフセットされた位置に設けられていても良い。本開示においては、第1アンテナ412および第2アンテナ413が受信した電波エネルギーを、接続線411から取得することができる。
なお、本開示においてスリットの数は2に限られない。領域401を囲むように設けられた任意の本数のスリットのアンテナから構成されるマルチ・アンテナを実現することが可能である。
マルチ・アンテナ(第六実施例)の第一実施形態においては、導体基板に設けられたスリットが受電するための磁流方式のアンテナとして機能することが可能である。これにより、受電装置1、2を構成することが可能である。
これにより、磁流方式アンテナにおいて、小さな基板面積で、製造コストが安価かつ、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0114】
<インターフェイス基板(第七実施例)>
図30A及びBは、インターフェイス基板(第七実施例)にかかる構成を示す図である。
図30Cは、複数本の線状アンテナから成るマルチ・アンテナに対するインターフェイス基板の適用例を示す図である。
図30A及びBを参照すると、上記マルチ・アンテナ11、21に含まれる線状アンテナ1122、1132、212~217、接続線111、211等の配置と接続を補助するインターフェイス基板(小基板)51が例示されている。
【0115】
インターフェイス基板51の本体52は、多角形をモデルとして構成されている。本実施例では、正8角形を基調として形成されている。正8角形は、各辺の長さがすべて等しく、それぞれの内角も135度、中心角は45度で一定となっている。
インターフェイス基板51の本体52は、略正多角形状に構成されるとともに、本体の各角54に2端子接続を可能とするコネクタを配置可能にしている。
【0116】
このインターフェイス基板51は、幾何学的に対称またはフラクタルに構成され得るマルチ・アンテナ11、21の各接続部分への適用を容易にしている。
図30A及びBに例示したように、インターフェイス基板51は、複数の角に配置されるコネクタを利用して、本体52の内部で電流の流れを様々に構成することができる。
図30A及びBに例示したインターフェイス基板51は、マルチ・アンテナ11、21に関する線状アンテナ(ダイポール・アンテナ)、線状アンテナと一体の整流器、FPCケーブルと組み合わせて用いることができる。
【0117】
このインターフェイス基板を複数用いることで、様々な形態のマルチ・アンテナを構成することができる。
図30Cを参照すると、複数本の線状アンテナから成るマルチ・アンテナに対するインターフェイス基板51の適用例が示されている。
各線状アンテナは中央に整流器を有し、その位置でインターフェイス基板のコネクタと接続可能にされている。インターフェイス基板は、他のコネクタの位置でFPCケーブルや制御器等と接続可能にされている。
インターフェイス基板は、内部にスイッチ機構を有しており、線状アンテナ、FPCケーブル及び制御器との接続を自由に切替え、選択することができる。
【0118】
図30A及びBに例示したインターフェイス基板51は、本体52の内部で自由に接続が変更できるようにスイッチで構成することも可能である。
図30A及びBに例示したように、すべてのインターフェイス基板51は、各アンテナと接続する場合は2入力、2出力角度をつけるだけの途中の場合は1入力1出力とすることができる。
【0119】
制御器からインターフェイス基板内のスイッチを制御することで、マルチ・アンテナを再構成(リコンフィギュラブル)可能となっている。
インターフェイス基板を使用することで、3種類の基板パターンのみ(部品実装はその都度切り替えられる)で、あらゆるパターンを接続できる。この際、すべてフレキシブル基板として、片面実装とすることができる。従って、設計及び製造上で有利となっている。
【0120】
インターフェイス基板51を用いることで、マルチ・アンテナの設計変更への適用が容易となる。
さらに、インターフェイス基板51を用いることで、マルチ・アンテナに対して強い応力や熱等の負荷がかかった場合でも、耐性を増すことが可能となる。
さらに、インターフェイス基板51を半田、コネクタ、テープなどで接合し、筐体に収めることで、環境に溶け込むことを容易にする。
【0121】
以上、図5乃至図32を参照して、本実施例に係るマルチ・アンテナとフレキシブル基板について説明した。
次に、図33A及びBを参照して、図5乃至図19に例示したマルチ・アンテナとフレキシブル基板を含む受電装置1について説明する。
【0122】
<各種のマルチ・アンテナの対比テスト>
以下、本出願人によって実施された従来技術の各種のマルチ・アンテナの対比テストについて説明する。
複数本の線状アンテナを用いてマルチ・アンテナを構成する仕方には、様々な種類が存在する。
図32Aは、各種のマルチ・アンテナの放射効率を(1)乃至(3)で図示した例である。
図32Bは、マルチ・アンテナを図示した例である。
図32Aを参照すると、各種のマルチ・アンテナの構成と、放射効率とが(1)乃至(3)で例示されている。
(1)乃至(3)では、いずれも、1辺が12cmの正方形の枠の中で、6本の線状アンテナを組み合わせてマルチ・アンテナを構成している。
【0123】
同図の(1)では、ダイポール・アンテナ等の線状アンテナを、複数、それぞれの中心点で交差するように、放射状に配置したマルチ・アンテナが例示されている。この例では、隣り合う2本のアンテナが30度の角度を成すように、計6本のアンテナが配置されている。この場合、各アンテナは中心点でむすぶことができるため、接続が容易となっている。
【0124】
同図の(2)では、ダイポール・アンテナ等の線状アンテナを、複数、それぞれ平行に配置したマルチ・アンテナが例示されている。この例では、隣り合う2本のアンテナが所定距離で離間するように、計6本のアンテナが配置されている。各アンテナは、それぞれジグザグに折り曲げられたメアンダ状に接続することは可能である。
同図の(3)では、上記(1)、(2)の場合と比較して、より複雑に、6本のダイポール・アンテナ等の線状アンテナを配置させている。この例は、本出願人によって工夫されたものである。
【0125】
図32Bで拡大して示しているように、(3)の態様では、基板上の略中央において、2本の線状アンテナを略十字形に配置し、さらにその周囲を囲むように、四角形の4辺に沿って、線状アンテナを配置している。外側の線状アンテナは、それぞれ、両端を、45度と90度の角度で、内側に向って2回折り返されている。各アンテナは、黒色の接続線に沿って比較的簡単に結ぶことができる。
【0126】
図32Aを参照すると、上記(1)、(2)及び(3)の各種のマルチ・アンテナについて、放射効率を対比して示している。
実用域を鑑みて、0.8GHz乃至1.0GHzの周波数の範囲内で対比すると、上記(3)のマルチ・アンテナの放射効率が最も高く、例えば、周波数0.92GHzでは、アンテナの理想的な性能を100%としたとき、凡そ、90%を上回ることが確認された。これに対して、上記(1)、(2)のマルチ・アンテナでは、いずれも、0.92GHzの周波数では、アンテナの理想的な性能を100%としたとき、凡そ、85%程度であることが確認された。
【0127】
このように、複数本の線状アンテナを組み合わせてマルチ・アンテナを構成する場合、その構成の仕方は様々である。
図32Bで例示したようにマルチ・アンテナを配置する場合、比較的に高効率で受電できることは確認された。この場合、更にアンテナ本数を増やすことによって、一層、受電効率を高めることが可能になり得る。
【0128】
しかしながら、アンテナ本数と基板面積が比例する(アンテナ本数が増えるほど基板費用が高くなる)という課題がある。つまり、部品実装面積が小さいが基板面積が大きいマルチ・アンテナは製造コストが高くなる傾向がある。
また、限られた領域内で多数の線状アンテナを密集させる場合、近接するアンテナ同士の干渉等が生じた場合には、受電効率を悪化させる虞がある。
さらに、マルチ・アンテナの受電量(複数のアンテナを大きな面積領域で最適に配置すること)と、美観(人間がアンテナを意識しないこと)とは、トレードオフである。
【0129】
本実施例では、上記テストの結果に鑑みて、(3)で例示したマルチ・アンテナのパフォーマンスの低下を抑制しつつ製造コストを低減させるための改良を行った。特に、空間効率を高めるため、複数本の線状アンテナを互いに近接して配置するとともに、電磁カップリングの問題を回避又は抑制するように、複数本の線状アンテナの間に回路を配置した、マルチ・アンテナを提供する
【0130】
用語「マルチ・アンテナ」とは、空間効率を高めるため、複数本の線状アンテナ(ダイポール・アンテナ等)を互いに近接して配置したものをいう。
なお、電磁カップリングの問題を回避又は抑制するように、各アンテナを接続線(DC接続線等)によって接続するとよい。
用語「受電装置」とは、3次元空間内で、別体の送電装置からワイヤレスに送電されるエネルギを、内蔵したマルチ・アンテナを用いて受電する装置をいう。
【0131】
<受電装置1、2の適用例>
上述のように、本実施例では、WPT(ワイヤレス電力伝送)を利用して、PC、センサ、アクチュエータ、ロボット、機器13、23等に対して、ワイヤレスにエネルギを送電することができる。その実施形態は、様々に構成できる。
【0132】
図33Aは、ビルマネジメント領域で、受電装置を適用する例を概略的に示した図である。
図33Bは、受電装置の使用形態について概略図である。
図33Aを参照すると、WPTの受電装置1、2の適用例が概略的に例示されている。同図に示すように、受電装置1、2の外部には、送電装置が設けられており、送電装置は外部にエネルギEを送電している。受電装置1、2に内蔵されるマルチ・アンテナ11、21は、外部からワイヤレスに送電されるエネルギEを受電可能なように構成されている。受電装置1、2は、МCU(制御器)と有線で接続することができ、受電に関するデータをМCUに送信することができる。例えば、受電装置は、МCUに対して、受電量をフィードバックすることができる。
【0133】
図33Bを参照すると、受電装置1、2の使用形態について、概略図が示されている。上述のように、平面的、湾曲的、又は立体的に構成されるマルチ・アンテナ11、21を含む受電装置1、2は、デスクマットや、オブジェの他、様々な態様で利用することができる。図33Bでは、受電装置1の他の形態の例が、符号1、2を用いて概略的に例示されている。
【0134】
例えば、受電装置1、2は、デスクマット、マウスパッド、テーブルマット、ビニールマット、保護マット等として構成しても良い。受電装置1、2が設置される場所は、例えば、事務用の机、食事用のテーブル、または棚の上面等である。受電装置1、2は、机の外部にある送電装置からの送信電力を受信し、この電力を用いて例えば、受電装置1、2上に配置されたパソコンやマウス、スマートフォン、カメラ等の電子機器へ給電することができる。受電装置1、2からこれらの電子機器への給電は、ワイヤレス、又は有線で行うことができる。この様な構成を取ることにより、受電装置1、2上の配線を無くす若しくは減らすことができる。
受電装置1、2の本体は、好適には、多層状に構成され、表面と裏面とを含む。2つの反対側の面のうち、いずれか一方の面(例えば、裏面)を机の表面と当接させて、いずれか他方の面(例えば、表面)を机上の作業面とすることができる。
受電装置1、2は、表面と裏面のいずれも作業面として利用可能なように構成することができる(リバーシブルタイプ)。表面と裏面は、それぞれ、同じ色または同じ素材等を有していてもよい。または、表面と裏面は、それぞれ、異なる色または異なる素材等を有していてもよい。例えば、表面と裏面は、それぞれ、樹脂等を用いて構成することができる。
表面と裏面の間には、FPC(フレキシブル基板)4がサンドイッチ状に挟持されている。FPCには、プリント配線板(基板)を設けることができる。特に、FPCには、3次元空間内で、ワイヤレスに送電されるエネルギを受電可能なマルチ・アンテナが設けられている。
このように、マルチ・アンテナは外部からは視認できない。従って、周囲の環境の美観を損なわずに、マルチ・アンテナを配置することを可能にした。
【0135】
例えば、受電装置1、2は、3次元空間内で天井から吊り下げられる形態でもよい。例えば、コードまたはチェーン等で天井から吊り下げる照明の形態で、受電装置1、2を配置してもよい。照明のシェードまたは傘の平面または曲面を利用して、マルチ・アンテナを配置してもよい。受電装置1、2は、照明の他、天井から吊り下げられる任意の形態でもよい。
【0136】
例えば、受電装置1、2は、3次元空間内で部屋の壁に取付けられる形態でもよい。例えば、釘等により壁または柱等に取付けられる掛け時計のように、受電装置1、2を配置してもよい。掛け時計の盤面を利用して、マルチ・アンテナを配置してもよい。受電装置1、2は、時計の他、壁または柱に取付けられる任意の形態でもよい。
【0137】
例えば、受電装置1、2は、3次元空間内で床の上で立脚または自立する形態でもよい。例えば、三脚等の床の上に設けられた設置台上の絵、ポスター等の額縁又は板のように、受電装置1、2を配置してもよい。額縁等の枠の中を利用して、マルチ・アンテナを配置してもよい。受電装置1、2は、絵又は板の他、床の上で自立する任意の形態でもよい。
【0138】
例えば、受電装置1、2は、3次元空間内で床の上に置かれた形態でもよい。例えば、棚または机として、受電装置1、2を配置してもよい。棚または机の少なくとも1つの側面を利用して、マルチ・アンテナを配置してもよい。受電装置1、2は、棚または机の他、床の上に置かれる任意の形態でもよい。例えば、机の上に置かれるシートまたはオブジェの側面にマルチ・アンテナを配置するように受電装置1、2を構成してもよい。
【0139】
例えば、受電装置1、2は、3次元空間内で移動可能な形態でもよい。例えば、ビジネスバッグ、手提げバッグの1つの側面に、受電装置1、2を配置してもよい。例えば、ビジネスバッグ、手提げバッグの略長方形状の裏面を利用して、マルチ・アンテナを配置してもよい。受電装置1、2は、鞄の他、移動可能な任意の形態でもよい。例えば、携帯電話の側面にマルチ・アンテナを配置するように受電装置1、2を構成してもよい。
他、受電装置1、2は、机の四隅に配置することも可能である。また、机が設置される部屋の側面、天井又は床上に配置することも可能である。
【0140】
以上、受電装置1、2は、WPT(ワイヤレス電力伝送)を利用して、PC(パソコン)、センサ、アクチュエータ、ロボット、機器等に対して、ワイヤレスにエネルギを送電することができる。
この送電のターゲットは、他、携帯電話、PDA(携帯情報端末)、ワイヤレス・マイク、ワイヤレスUSB、ワイヤレス・シアター、ワイヤレス・テレビ、ワイヤレス・カメラ、ワイヤレス・ヘッドフォン、ワイヤレス・マウス、ワイヤレス・キーボード、ワイヤレス・ルータ、ワイヤレス・プリンタ等でもよい。
受電装置1、2は、これらターゲットと有線で結ぶことができる。それらの間に、任意の種類の蓄電装置等を介在させてもよい。さらに、受電装置1、2は、これらターゲットと一体化されてもよい。
【0141】
受電装置1、2は、可撓性を有するシート状または他の任意の形状に構成された本体を有し、その本体に内蔵したFPC上にマルチ・アンテナ11、21を配置することができる。
フレキシブル基板は、自由自在に曲げたり折ったりすることができるとともに、回路パターンを形成することもできる。フレキシブル基板は、FPC(Flexible Printed Circuit)とも呼ばれる。また、部品は実装できないが配線ができるFFC(Flexible Flat Cable)もある。
【0142】
本実施例では、マルチ・アンテナ11、21を基板10、20上に配置するが、例えば、フレキシブル基板10、20上に配置する。フレキシブル基板10、20には、FPCとFFCとが含まれ得る。
図31を参照すると、フレキシブル基板10、20について、見た目、形態、部品実装・パターン、形状変更、コスト、リードタイムの各観点から、FPCとFFCとを対比し示している。この図から理解できるように、FPCとFFCとには、それぞれ、長所と短所がある。本実施例では、実施環境に応じて、FPCとFFCとを用いることができる。
なお、本実施例では、マルチ・アンテナ11、21を配置する基板の形状、寸法、素材等は任意に選ばれ得ることを理解されたい。
【0143】
受電装置1、2の本体又は筐体内では、FPC又はFFCを任意の手段から取付けることができる。例えば、その取付けでは、はんだ接着、コネクタ装着、銅箔テープ接着等を利用できる。
はんだ接着では、量産性が高いという利点があるものの、接着時の熱による基板の劣化が起こり得るという課題がある。
コネクタ装着では、再構成が容易という利点があるものの、コネクタを用いるために厚みが大きくなりやすいという課題がある。
銅箔テープ接着では、薄くて熱がかからないという利点があるものの、量産性に課題がある。
本実施例では、実施環境に応じて、これらを用いることができる。
【0144】
以上、図面を参照して、本実施例にかかるマルチ・アンテナについて説明したが、本実施例は、図示した形態に限定されないことを理解されたい。
例えば、本実施例にかかるマルチ・アンテナは、アンテナを保護するレドームと呼ばれるカバーと組み合わせることができる。
さらに、レドームは、その内部で、アンテナの背後に金属板を設置して、反射波を生成させて、アンテナの指向性を増やすことができる。
または、本実施例にかかるマルチ・アンテナは、室内の壁または天井等に設置した金属板を用いて、反射の状況を生成させてもよい。
【0145】
また、上記説明では、線状アンテナとして、ダイポール・アンテナを好適な例として説明したが、本実施例は、その形態に限定されないことを理解されたい。
例えば、本実施例にかかるマルチ・アンテナは、その一部または複数を、ボウタイダイポール、モノポールアンテナ、逆F型アンテナ等の他の線状の導体と置換したり、組み合わせて用いてもよい。
【0146】
さらに、本実施例にかかるマルチ・アンテナは、かならずしも、そのすべてをまっすぐな線状アンテナから構成されなくてもよい。本実施例にかかるマルチ・アンテナは、その一部または複数を、ジグザグに折り曲げたメアンダ状や、略一転から放射状に延在する星型状などの配置と置換したり、組み合わせて用いてもよい。
【0147】
さらに、本実施例にかかるマルチ・アンテナは、その一部または複数を、メタマテリアルの概念を利用したアンテナと置換したり、組み合わせて用いてもよい。メタマテリアルとは、金属や誘電体、磁性体で規則正しい構造を周期的に並べて、電磁波の波長に関係して特徴的な物理現象を人工的につくりだす人工媒質のことである。
【0148】
また、本実施例にかかるマルチ・アンテナは、平衡電流の流れをよくするため、任意のデバイス等を追加できることを理解されたい。例えば、実施形態によっては、阻止管(シュベルトップ)、バラン(BALUN)等の従来のアンテナ技術で採用可能な任意のデバイス等を追加することができる。
【0149】
また、上記説明では、特にワイヤレスに伝送されるエネルギの受電に関するが、その通信の方式は任意である。例えば、ワイヤレスLAN、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信の方式を採用できることを理解されたい。
【0150】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0151】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【0152】
<付記>
以上の各実施形態で説明した事項を以下に付記する。
【0153】
(付記1)
基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子(112)と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子(113)と、第1アンテナ素子の第1給電点と第2アンテナ素子の第2給電点を接続する接続線(111)と、を備え、接続線(111)は、第1アンテナ素子の第1給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第1アンテナ素子の第1給電点に接続され、接続線(111)は、第2アンテナ素子の第2給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第2アンテナ素子の第2給電点に接続される、マルチ・アンテナ。
これにより、アンテナの本数が少なく製造コストが安価かつ、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0154】
(付記2)
基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子(112)と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子(113)と、第1アンテナ素子の第1給電点と第2アンテナ素子の第2給電点を接続する接続線(111)と、を備え、第1アンテナ素子(112)は、第一端に向かって第一方向に延伸しており、第二端に向かって第二方向に延伸しており、第2アンテナ素子(113)は、第三端に向かって第三方向に延伸しており、第四端に向かって第四方向に延伸しており、第一方向と第二方向とがなす内角と、第三方向と第四方向とがなす内角とは、90度未満の角度である、マルチ・アンテナ。
これにより、小さな基板面積で、製造コストが安価かつ、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0155】
(付記3)
第1アンテナ素子(112)の第1給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角と、第2アンテナ素子(113)の第2給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角とは、90度未満の角度である、付記2記載のマルチ・アンテナ。
これにより、小さな基板面積で、製造コストが安価かつ、受信性能がより優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0156】
(付記4)
基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子(112)と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子(113)と、第1アンテナ素子の第1給電点と第2アンテナ素子の第2給電点を接続する接続線(111)と、を備え、第1アンテナ素子(112)は、第一端に向かって第一方向に延伸しており、第二端に向かって第二方向に延伸しており、第2アンテナ素子(113)は、第三端に向かって第三方向に延伸しており、第四端に向かって第四方向に延伸しており、第一方向と第二方向とがなす内角と、第三方向と第四方向とがなす内角とは、90度以上の角度である、付記1記載のマルチ・アンテナ。
これにより、アンテナの本数が少なく製造コストが安価かつ、広い領域で電波を受信することが出来る。コンパクトで高効率な、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0157】
(付記5)
基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子(112)と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子(113)と、第1アンテナ素子の第1給電点と第2アンテナ素子の第2給電点を接続する接続線(111)と、を備え、接続線(111)は、第1アンテナ素子の第1給電点に曲がって接続され、接続線(111)は、第2アンテナ素子の第2給電点に曲がって接続される、マルチ・アンテナ。
これにより、アンテナの本数が少なく製造コストが安価かつ、広い領域で電波を受信することが出来る。コンパクトで高効率な、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0158】
(付記6)
基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点を有する第1アンテナ素子(112)と、第2給電点を有する第2アンテナ素子(113)と、第1アンテナ素子の第1給電点と第2アンテナ素子の第2給電点を接続する接続線(111)と、を備え、第1アンテナ素子(112)および第2アンテナ素子(113)は、逆Fアンテナである、マルチ・アンテナ。
これにより、受信装置を金属製の導体机上などの環境に設置した場合においても、マルチ・アンテナを導体面から離間させることにより、効率的に電波を受信する事ができる。また、厚みを抑えることができ、コンパクトで高効率な、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0159】
(付記7)
基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第3給電点を有する第3アンテナ素子(114)と、第4給電点を有する第4アンテナ素子(115)と、を備え、第3アンテナ素子(114)および第4アンテナ素子(115)は、逆Fアンテナであり、接続線(111)は、第1アンテナ素子の第1給電点と、第2アンテナ素子の第2給電点と、第3アンテナ素子の第3給電点と、第4アンテナ素子の第4給電点とを接続する、付記6記載のマルチ・アンテナ。
これにより、受信装置を金属製の導体机上などの環境に設置した場合においても、マルチ・アンテナを導体面から離間させることにより、効率的に電波を受信する事ができる。また、厚みを抑えることができ、コンパクトで高効率な、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0160】
(付記8)
マルチ・アンテナを囲むハウジング(35)と、を備え、ハウジング(35)は基板周から基板中央に向かって基板鉛直方向に向かって傾斜を有する突出形状に形成されている、付記6記載のマルチ・アンテナ。
これにより、受信装置を金属製の導体机上などの環境に設置した場合においても、マルチ・アンテナを導体面から離間させることにより、効率的に電波を受信する事ができる。また、受信装置の周方向に向かって厚みが薄くなるため、コンパクトで高効率な、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0161】
(付記9)
基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点を有する第1アンテナ(112)と、第2給電点を有する第2アンテナ(113)と、第1アンテナの第1給電点と第2アンテナの第2給電点を接続する接続線(111)と、を備え、第1アンテナおよび第2アンテナは金属基板上に形成されたスリットとして形成された、マルチ・アンテナ。
これにより、磁流方式アンテナにおいて、小さな基板面積で、製造コストが安価かつ、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0162】
(付記10)
ワイヤレス電力伝送(WPT)の受電装置において、送電装置からマイクロ波を用いて送電されるエネルギを受電するために用いられる付記1から9のいずれか記載のマルチ・アンテナ。
これにより、アンテナの本数が少なく製造コストが安価かつ、受信性能が優れたマルチ・アンテナを実現することができる。
【0163】
(付記11)
基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子(112)と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子(113)と、第1アンテナ素子の第1給電点と第2アンテナ素子の第2給電点を接続する接続線(111)と、ハウジング(35)と、を備え、ハウジング(35)は、配置したときに領域と直交する方向が配置面と所定距離以上離間するように支持するスタンド(352)を有する、ワイヤレス電力伝送(WPT)の受電装置。
これにより、受信装置を金属製の導体机上などの環境に設置した場合においても、マルチ・アンテナを導体面から離間させることにより、効率的に電波を受信する事ができる。効率的に電波を受信できる受信装置を実現することができる。
【0164】
(付記12)
ハウジング(35)は、配置したときに領域と直交する方向が配置面と交差するように支持するスタンド(352)を有する、付記11記載の受電装置。
これにより、受信装置を金属製の導体机上などの環境に設置した場合においても、マルチ・アンテナを導体面から離間させることにより、効率的に電波を受信する事ができる。効率的に電波を受信できる受信装置を実現することができる。
【0165】
(付記13)
ハウジング(35)は、配置したときに領域と直交する方向が配置面と略鉛直方向となるように支持するスタンド(352)を有する、付記11記載の受電装置。
これにより、受信装置を金属製の導体机上などの環境から離間してマルチ・アンテナを配置することができる。効率的に電波を受信できる受信装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0166】
1 受電装置、10 基板、11 マルチ・アンテナ、12 回路、13 機器、2 受電装置、20 基板、21 マルチ・アンテナ、22 回路、23 機器、4 送電装置
【要約】
【課題】空間効率を高めるためとともに、電磁カップリングの問題を回避又は抑制した、マルチ・アンテナを提供する。
【解決手段】基板と、基板の1の領域を囲むように配置され、第1給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第1アンテナ素子と、第2給電点から異なる2方向へ延伸してなる2本の線状アンテナより構成される第2アンテナ素子と、第1アンテナ素子の第1給電点と第2アンテナ素子の第2給電点を接続する接続線と、を備え、接続線は、第1アンテナ素子の第1給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第1アンテナ素子の第1給電点に接続され、接続線は、第2アンテナ素子の第2給電点を頂点としてなる2本の線状アンテナにより形成される内角の二等分線に沿わずに、第2アンテナ素子の第2給電点に接続される、マルチ・アンテナ。
【選択図】 図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33