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特許7417339アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患の治療
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患の治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/675 20060101AFI20240111BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20240111BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K31/675
A61P31/20
A61K38/13
A61P43/00 121
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023165960
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2023128607の分割
【原出願日】2023-08-07
【審査請求日】2023-09-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505144728
【氏名又は名称】シンバイオ製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】福島 耕治
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】Record History: NCT04706923,ClinicalTrials.gov [online],[2023年11月8日検索],2023年4月7日,インターネット,<URL:https://clinicaltrials.gov/study/NCT04706923?cond=brincidofovir&page=2&rank=18&tab=history&a=8>
【文献】Microbiology Spectrum,2022年,10(1),e01569-21
【文献】Biol Blood Marrow Transplant,2017年,23,pp.512-521
【文献】Antiviral Research,2021年,195,105182
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、
ブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、
前記治療は、(i)ヒト対象へブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与すること、又は(ii)ヒト対象へブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与すること、を含む、
医薬組成物
【請求項2】
前記0.38~0.42mg/kgは0.4mg/kg、且つ前記18~22mg/回は20mg/回である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記(i)の対象の体重は特定の体重未満であり、前記(ii)の対象の体重は特定の体重以上であり、且つ前記(i)及び(ii)の特定の体重は同一で48~52kgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記(i)の対象の体重は特定の体重未満であり、前記(ii)の対象の体重は特定の体重以上であり、且つ前記(i)及び(ii)の特定の体重は同一で50kgである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
ブリンシドフォビルを含有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染症の治療用である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記治療は、ブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与期間が、治療中止基準に基づいて終了する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記治療中止基準が、4週目の治療を経過したことを含む、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記治療は、ブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与期間が、(a)対象の血液サンプル中のアデノウイルス量を複数回測定し、2回連続でアデノウイルスが検出限界未満であった場合、及び(b)4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことに基づいて終了する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記治療はブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与期間が、(a)対象のサンプル中のアデノウイルス量を複数回測定し、2回連続でアデノウイルスが検出限界未満であった場合、及び(b)4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことに基づいて終了する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記(a)の測定は、3日以上14日以内の間隔を空けて複数回実施される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記(a)は、対象のサンプル中のアデノウイルス量を複数回測定し、最新の2回の測定において、2回連続でアデノウイルスが検出限界未満であった場合である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記治療は、シクロスポリン及びブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の併用投与の環境下で実施される場合、前記(i)及び(ii)のブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与量が55~65%に低減される、請求項1~12いずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記55~65%は60%である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記治療は、ブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を1.5~4時間かけて点滴静注することで実施される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記1.5~4時間は2時間である、請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
ブリンシドフォビル(BCV)は、天然痘の治療薬として2021年に米国食品医薬品局(FDA)から承認されている。非特許文献1には、天然痘治療におけるBCVのベネフィット・リスク評価について記載されている。また、非特許文献2には、2022年5月からサル痘が流行し始めており、その確定症例の管理のためにBCVの使用が推奨されることが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】"Benefit-risk assessment for brincidofovir for the treatment of smallpox: U.S. Food and Drug Administration's Evaluation" Chan-Tack et al., Antiviral Res. 2021 Nov;195:105182.
【文献】"Monkeypox: A Mini-Review on the Globally Emerging Orthopoxvirus" Evans et al., Int J Environ Res Public Health. 2022 Nov 25;19(23):15684.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
BCVを用いたアデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患の治療効果や治療方法に関しては、不明な点が多く残されていた。
【0005】
一方で本願発明者らは、後述の実施例に記載の通り、特定の用法及び用量によるBCVの静脈投与が、アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患に対する、特に優れた治療効果を示すことを明らかにした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、ブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、前記治療は、(i)ヒト対象へブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与すること、又は(ii)ヒト対象へブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与すること、を含む、医薬組成物が提供される。この医薬組成物を用いれば、アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患に対する、特に優れた治療効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コホート1の試験結果を示す。
図2】コホート2の試験結果を示す。
図3】コホート3の試験結果を示す。
図4】便中のAdV量を調べた結果を示す。
図5】コホート3の患者のリンパ球数を調べた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、同様な内容については繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
【0009】
(1) 方法
本発明の一実施形態によれば、アデノウイルス(AdV)感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、ブリンシドフォビル(BCV)、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含む、治療方法が提供される。この方法において、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与する工程、を含んでもよい。この方法を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療ができる。
【0010】
(2) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)特定の体重未満の対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回投与する工程、又は(ii)特定の体重以上の対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与する工程、を含み、前記(i)及び(ii)の特定の体重は同一で48~52kgである、治療方法が提供される。この方法を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療ができる。
【0011】
(3) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与する工程(但し、シクロスポリンとの併用投与の環境下では、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与量が55~65%に低減される)、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与する工程(但し、シクロスポリンとの併用投与の環境下では、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与量が55~65%に低減される)、を含む、治療方法が提供される。この方法を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療ができる。
【0012】
(4) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、シクロスポリン及びBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の併用投与の環境下で実施されない場合、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与すること、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与する工程、を含み、投与する工程は、シクロスポリン及びBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の併用投与の環境下で実施される場合、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.21~0.27mg/kgで週2回静脈投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を9.9~14.3mg/回で週2回静脈投与する工程を含む、治療方法が提供される。この方法を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療ができる。
【0013】
(5) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.21~0.27mg/kgで週2回静脈投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を9.9~14.3mg/回で週2回静脈投与する工程を含み、前記対象は、シクロスポリンを投与されていない患者である、又は投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.21~0.27mg/kgで週2回静脈投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を9.9~14.3mg/回で週2回静脈投与する工程を含み、前記対象は、シクロスポリンを投与されている患者である、治療方法が提供される。この方法を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療ができる。
【0014】
(6) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与する工程、を含み、投与の期間は、治療中止基準に基づいて終了するものであり、前記治療中止基準は、4週目の治療を経過したことを含む、治療方法が提供される。この方法を利用すれば、上記の特定の用法及び用量から予測される患者の応答を考慮して、投与の終了を早い段階で判断できるため、特に治療期間の短縮ができる。
【0015】
(7) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与する工程、を含み、投与の期間は、(a)対象のサンプル中のAdV量を複数回測定し、2回連続でAdVが検出限界未満であった場合、及び(b)4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことに基づいて終了する、治療方法が提供される。この方法を利用すれば、上記の特定の用法及び用量から予測される患者の応答を考慮して、投与の終了を早い段階で判断できるため、特に治療期間の短縮ができる。
【0016】
(8) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与する工程、を含み、投与の期間は、(a)対象のサンプル中のAdV量を複数回測定し、2回連続でAdVが陰性であった場合、及び(b)4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことに基づいて終了する、治療方法が提供される。この方法を利用すれば、上記の特定の用法及び用量から予測される患者の応答を考慮して、投与の終了を早い段階で判断できるため、特に治療期間の短縮ができる。
【0017】
(9) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量として0.38~0.42mg/kgに相当する量の前記医薬組成物を週2回投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量として18~22mg/回に相当する量の前記医薬組成物を週2回静脈投与する工程、を含む、治療方法が提供される。この方法を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療ができる。別の観点からは、本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCVの量として0.38~0.42mg/kgに相当する量の前記医薬組成物を週2回投与する工程、又は(ii)対象へBCVの量として18~22mg/回に相当する量の前記医薬組成物を週2回静脈投与する工程、を含む、治療方法が提供される。別の観点からは、本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含む医薬組成物を対象に投与する工程、及び対象のサンプル(例えば血液又は便)のAdV量を測定する工程を含む、治療方法が提供される。別の観点からは、本発明の一実施形態によれば、対象のサンプル(例えば血液又は便)中のAdV量を低減させる方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む、治療方法が提供される。
【0018】
(10) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物をヒト対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)体重が50kg未満の対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.4mg/kgで週2回静脈投与する工程(但し、シクロスポリンとの併用投与の環境下では、BCVの投与量が60%に低減される)、又は(ii)体重が50kg以上の対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を20mg/回で週2回静脈投与する工程(但し、シクロスポリンとの併用投与の環境下では、BCVの投与量が60%に低減される)、を含み、投与の期間は、(a)対象のサンプル中のAdV量を複数回測定し、2回連続でAdVが検出限界未満であった場合、及び(b)4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことに基づいて終了するものであり、投与は、2時間かけて点滴静注(例えば、持続点滴静注)するものであり、前記ヒト対象は、同種造血細胞移植患者である、治療方法が提供される。この方法を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療ができる。
【0019】
(11) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週1回静脈投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週1回静脈投与する工程、を含んでもよい。この方法を利用すれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療ができる。
【0020】
(12) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.58~0.62mg/kgで週1回静脈投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を28~32mg/回で週1回静脈投与する工程、を含んでもよい。この方法を利用すれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療ができる。
【0021】
(13) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.78~0.82mg/kgで週1回静脈投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を38~42mg/回で週1回静脈投与する工程、を含んでもよい。この方法を利用すれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療ができる。
【0022】
(14) 方法
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療方法であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与する工程を含み、投与する工程は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.82mg/kgで週1回静脈投与する工程、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~42mg/回で週1回静脈投与する工程、を含んでもよい。この方法を利用すれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療ができる。
【0023】
(15) 方法
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(14))の方法は、例えば、(i)対象のAdV感染又はAdV感染に伴う疾患の罹患の有無を検査する工程、(ii)AdV感染又はAdV感染に伴う疾患を有する対象を特定する工程、(iii)AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療を必要としている対象を特定する工程、(iv)AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の予防を必要としている対象を特定する工程、(v)同種又は自家移植(例えば、造血細胞移植)後の対象を特定する工程、(vi)免疫抑制状態の対象を特定する工程、(vii)免疫抑制剤を投与後の対象を特定する工程、又は(viii)免疫不全症候群患者を特定する工程、を含んでもよい。また、本発明の実施形態(例えば上記(1)~(14))の方法は、例えば、指定した場合は以下を含んでもよく含まなくてもよい:サイトメガロウイルス(CMV)、BKウイルス(BKV)、EBウイルス(EBV)、又はバリオラウイルス(VaV)感染を有する対象を特定する工程、CMV、BKV、EBV又はVaV感染に伴う疾患の予防又は治療を目的とした方法。
【0024】
(16) 組成物
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、前記治療は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与すること、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与すること、を含む、医薬組成物が提供される。この医薬組成物を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、又は治療期間の短縮ができる。
【0025】
(17) 組成物
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、前記治療は、(i)特定の体重未満対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与すること、又は(ii)特定の体重未満対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与すること、を含み、前記(i)及び(ii)の特定の体重は同一で48~52kgである、医薬組成物が提供される。この医薬組成物を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、又は治療期間の短縮ができる。
【0026】
(18) 組成物
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、前記治療は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与すること(但し、シクロスポリンとの併用投与の環境下では、BCVの投与量が55~65%に低減される)、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与すること(但し、シクロスポリンとの併用投与の環境下では、BCVの投与量が55~65%に低減される)、を含む、医薬組成物が提供される。この医薬組成物を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、又は治療期間の短縮ができる。
【0027】
(19) 組成物
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、前記治療は、(i)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与すること、又は(ii)対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与すること、を含み、前記治療は、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与期間が、(a)対象のサンプル中のAdV量を複数回測定し、2回連続でAdVが検出限界未満であった場合、及び(b)4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことに基づいて終了する、医薬組成物が提供される。この医薬組成物を利用すれば、上記の特定の用法及び用量から予測される患者の応答を考慮して、投与の終了を早い段階で判断できるため、特に治療期間の短縮ができる。
【0028】
(20) 組成物
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、前記治療は、(i)ヒト対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量として0.38~0.42mg/kgに相当する量の前記医薬組成物を週2回静脈投与すること、又は(ii)ヒト対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量として18~22mg/回に相当する量の前記医薬組成物を週2回静脈投与すること、を含む、医薬組成物が提供される。この医薬組成物を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、又は治療期間の短縮ができる。別の観点からは、本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、前記治療は、(i)ヒト対象へBCVの量として0.38~0.42mg/kgに相当する量の前記医薬組成物を週2回静脈投与すること、又は(ii)ヒト対象へBCVの量として18~22mg/回に相当する量の前記医薬組成物を週2回静脈投与すること、を含む、医薬組成物が提供される。
【0029】
(21) 組成物
本発明の一実施形態によれば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、前記治療は、(i)体重が50kg未満の対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.4mg/kgで週2回静脈投与すること(但し、シクロスポリンとの併用投与の環境下では、BCVの投与量が60%に低減される)、又は(ii)体重が50kg以上の対象へBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を20mg/回で週2回静脈投与すること(但し、シクロスポリンとの併用投与の環境下では、BCVの投与量が60%に低減される)、を含み、前記治療は、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与期間が、(a)対象のサンプル中のAdV量を複数回測定し、2回連続でAdVが検出限界未満であった場合、及び(b)4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことに基づいて終了するものであり、前記治療においてBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与は、2時間かけて持続点滴静注する、医薬組成物が提供される。この医薬組成物を利用すれば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、又は治療期間の短縮ができる。
【0030】
(22) 組成物
本発明の一実施形態によれば、上記(1)~(15)に記載の方法に使用するための、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含む、医薬組成物が提供される。
【0031】
(23) キット
本発明の一実施形態によれば、上記(16)~(22)に記載の医薬組成物を含む、キットが提供される。キットは、例えば、取扱説明書、緩衝液、容器、又は包装を含んでいてもよい。
【0032】
(24) 使用
本発明の一実施形態によれば、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の、上記(16)~(22)に記載の医薬組成物の製造のための使用が提供される。
【0033】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、ブリンシドフォビル(BCV、brincidofovir)は、下記式で示される構造を有する化合物を含む。BCVは[(2S)-1-(4-amino-2-oxopyrimidin-1-yl)-3-hydroxypropan-2-yl]oxymethyl-(3-hexadecoxypropoxy)phosphinic acidのIUPAC名で示すこともできる。BCVは444805-28-1のCAS登録番号で示される化合物を含む。本明細書においてBCVは、ブリンシドフォビルを略して記載したものであり、それらは同一の意味を有する。
【化1】
【0034】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、アデノウイルス(AdV)は、例えば、DNAウイルスの一種で、AdV感染症を引き起こし得るウイルスを含む。本明細書においてAdVは、アデノウイルスを略して記載したものであり、それらは同一の意味を有する。AdVは、アデノウイルス科のウイルスを含む。アデノウイルス科のウイルスは、例えば、マストアデノウイルス属のウイルスを含む。AdV感染又はAdV感染に伴う疾患に対する治療効果は、例えば、医薬組成物投与後の対象のサンプルのAdV量の経時変化を観察することにより評価してもよい。このとき、AdV量が減少傾向を示していることに基づいて、治療効果があると評価してもよい。またこのとき、医薬組成物投与前又は陰性コントロール投与時と比較して、AdV量が有意に低下した場合に、治療効果があると判断してもよい。AdV量は、例えば、AdV DNA量を測定する方法(例えば定量PCR法又はイムノクロマト法)によって測定してもよい。測定は、定量的又は定性的測定であってもよい。
【0035】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、AdV感染に伴う疾患は、AdV感染に起因する疾患を含む。AdV感染に伴う疾患は、例えば、アデノウイルス血症、AdV感染に伴う発熱、下記の臓器障害を伴う症候性もしくは無症候性のAdV感染症、複数の臓器の機能異常もしくは全身症状を伴う播種性AdV感染症、AdV感染による全身状態の悪化もしくはそれに伴う死亡、AdV心筋炎、AdV中枢神経系感染症、AdV腎臓感染症、AdV感染に伴う消化器疾患(例えば、肝炎又は胃腸炎)、AdV感染に伴う呼吸器感染症(例えば、気道炎(例えば、鼻炎、咽頭炎又は扁桃炎)又は肺炎)、AdV感染に伴う眼疾患(例えば、流行性角結膜炎)、AdV感染に伴う咽頭結膜熱、又はAdV性出血性膀胱炎を含む。
【0036】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量としての0.38~0.42mg/kgは、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患のより効果的な治療の観点から、0.39~0.41mg/kgがより好ましく、0.4mg/kgが最も好ましい。効果的な治療は、例えば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療を含む。0.38~0.42mg/kgは、0.38、0.39、0.4、0.41、又は0.42mg/kgであってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
【0037】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量としての0.58~0.62mg/kgは、0.59~0.61mg/kgであってもよく、0.6mg/kgであってもよい。0.58~0.62mg/kgは、0.58、0.59、0.6、0.61、又は0.62mg/kgであってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。0.78~0.82mg/kgは、0.79~0.81mg/kgであってもよく、0.8mg/kgであってもよい。0.78~0.82mg/kgは、0.78、0.79、0.8、0.81、又は0.82mg/kgであってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。0.38~0.82mg/kgは、0.39~0.81mg/kgであってもよく、0.4~0.8mg/kgであってもよく、0.4、0.6、又は0.8mg/kgであってもよい。0.38~0.82mg/kgは、0.38、0.4、0.42、0.5、0.58、0.6、0.62、0.7、0.78、0.8、又は0.82mg/kgであってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
【0038】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量としての18~22mg/回は、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患のより効果的な治療の観点から、19~21mg/回がより好ましく、20mg/回が最も好ましい。効果的な治療は、例えば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療を含む。18~22mg/回は、18、19、20、21、又は22mg/回であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。mg/回はmg/bodyで表すこともできる。
【0039】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量としての28~32mg/回は、29~31mg/回であってもよく、30mg/回であってもよい。28~32mg/回は、28、29、30、31、又は32mg/回であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。38~42mg/回は、39~41mg/回であってもよく、40mg/回であってもよい。38~42mg/回は、38、39、40、41、又は42mg/回であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。18~42mg/回は、19~41mg/回であってもよく、20~40mg/回であってもよく、20、30、又は40mg/回であってもよい。18~42mg/回は、18、20、22、25、28、30、32、35、38、40、又は42mg/回であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
【0040】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、「BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量として」は、例えば、特定量の医薬組成物が対象に投与されるときに、その特定量の医薬組成物に含まれるBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の部分の量を意味し得る。例えば、A量(mg/kg又はmg/回)の医薬組成物が、B量のBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物と、C量の添加剤とを含む場合、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の部分の量はB量である。ここで、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の量としてB量に相当する量の医薬組成物は、A量の医薬組成物である。また、「BCVの量として」は、特定量の医薬組成物が対象に投与されたときに、その特定量の医薬組成物に含まれるBCV部分の量を意味し得る。例えば、D量(mg/kg又はmg/回)の医薬組成物が、E量のBCVと、F量の添加剤とを含む場合、BCV部分の量はE量である。ここで、BCVの量としてE量に相当する量の医薬組成物は、D量の医薬組成物である。また例えば、G量(mg/kg又はmg/回)の医薬組成物が、H量のBCVの薬学的に許容される塩と、I量の添加剤とを含む場合、BCV部分の量はH量中のBCVのフリー体に相当する部分の量(言い換えると、H量からBCVのフリー体と組み合わされた上記の塩部分を除いた量)である。ここで、BCVの量としてH量中のBCVのフリー体に相当する部分の量に相当する量の医薬組成物は、G量の医薬組成物である。最終的な製剤の投与量ではなく、成分量を基準に投与量を表現することは、医薬分野で一般的に行われている。そのため、当業者は成分量を基準に投与量が表現された医薬組成物又は治療方法の実施形態を理解し得る。
【0041】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、週2回の投与は、1週間を1日目~7日目に区分けした場合に、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目のいずれか1日に1回投与し、別の1日に1回投与することを含む。週2回の投与は、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患のより効果的な治療の観点から、1日目及び3、4又は5日目に投与することが好ましく、1日目及び4日目に投与することが最も好ましい。1日目は、治療開始日、投与初日又は週の初日であってもよく、曜日は日、月、火、水、木、金、又は土であってもよい。
【0042】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、(i)のBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで静脈投与する対象の体重は、特定の体重未満であり、(ii)のBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で静脈投与する対象の体重は、特定の体重以上であり、(i)及び(ii)の対象における特定の体重は同一で48~52kgであってもよい。48~52kgは、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患のより効果的な治療の観点から、49~51kgがより好ましく、50kgが最も好ましい。48~52kgは、48、49、50、51、又は52kgであってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。特定の体重は、所定の体重を含む。
【0043】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与期間は、治療中止基準に基づいて終了してもよい。この治療中止基準を利用すれば、上記の特定の用法及び用量から予測される患者の応答を考慮して、投与の終了を早い段階で判断できるため、特に治療期間の短縮ができる。治療中止基準は、例えば、初回投与から4週目の治療を経過したことを含んでもよい。
【0044】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与期間は、(a)対象のサンプル中のAdV量を複数回測定し、2回連続でAdVが検出限界未満であった場合、及び(b)4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことに基づいて終了してもよい。この場合、上記の特定の用法及び用量から予測される患者の応答を考慮して、投与の終了を早い段階で判断できるため、特に治療期間の短縮ができる。上記(a)の測定は、3日以上の間隔を空けて複数回実施してもよい。上記(a)の測定は、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与日と同日に実施してもよい。上記(a)の測定は、週2回投与の先の投与日と同日、又は後の投与日と同日に実施してもよい。上記(a)の測定は、週2回投与の1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目のいずれか1日又は2日に実施してもよい。上記(a)の測定は、少なくとも週1回又は週2回で少なくとも4週間の間に測定してよい。複数回は、例えば、2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、又は30回以上であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内の回数であってもよい。上記(a)は、対象のサンプル中のAdV量を複数回測定し、最新の2回の測定において、2回連続でAdVが検出限界未満であった場合であってもよい。最新の2回は、例えば、投与期間を終了するかどうかの判断をするときを基準にして最新の2回(例えば、直近の測定時及びその1回前の測定時)であってもよい。最新の2回は、例えば、投与期間が4週間で終了する場合は、4週間の中の最後の測定時と、最後から2番目の測定時であってもよい。最新の2回は、例えば、投与4週間以内にAdVが検出限界未満に達しなかった場合は、5週間目以降で最初にAdVが検出限界未満であった測定時と、その次の測定時であってもよい。最新の2回は、例えば、投与4週間以内の最後の測定時にAdVが初めて検出限界未満に達した場合は、投与4週間以内の最後の測定時と、投与5週間目の最初の測定時であってもよい。上記(a)の3日以上は、3日以上14日以内が好ましい。3日以上は、例えば、3、4、5、6、7、8、10、12、又は14日であってもよく、それらいずれか1つの値以上、又はそれらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。別の観点からは、本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与期間は、(a)対象のサンプル中のAdV量を複数回測定し、2回連続でAdVが陰性であった場合、及び(b)4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことに基づいて終了してもよい。この場合、上記の特定の用法及び用量から予測される患者の応答を考慮して、投与の終了を早い段階で判断できるため、特に治療期間の短縮ができる。別の観点からは、本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与期間は、対象のサンプル中のAdV量を複数回測定し、2回連続でAdVが検出限界未満又は陰性であった場合に終了してもよい。この場合、投与の終了を早い段階で判断できるため、特に治療期間の短縮ができる。
【0045】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、AdVが検出限界未満であることは、例えば、PCR法(例えば定量PCR法(例えば、リアルタイム定量PCR法))を実施して、AdVが検出限界に達しないことを含む。検出限界未満であることは、陰性であることを含んでもよい。上記のPCR法は、例えば、検出限界25コピー/mL、定量下限190コピー/mL、定量上限1×109コピー/mLの条件で実施してもよい。AdVの検出限界は、例えば、100、75、50、又は25コピー/mLであってもよい。AdVの検出方法は、例えば、Ison et al., Microbiol Spectr. 2016 Aug;4(4)を参照できる。
【0046】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、シクロスポリン及びBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の併用投与の環境下で治療が実施される場合、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の投与量は、55~65%に低減されてもよい。55~65%に低減された投与量は、元の投与量を0.55~0.65倍した投与量と同じである。55~65%は、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患のより効果的な治療の観点から、57~63%がより好ましく、59~61%がさらに好ましく、60%が最も好ましい。55~65%は、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、又は65%であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。上記(i)において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与する場合、55~65%に低減された用量は、0.21~0.27mg/kgを含む。0.21~0.27mg/kgは、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患のより効果的な治療の観点から、0.23~0.25mg/kgがより好ましく、0.24mg/kgが最も好ましい。0.21~0.27mg/kgは、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、又は0.27mg/kgであってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。上記(ii)において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与する場合、55~65%に低減された用量は、9.9~14.3mg/回を含む。9.9~14.3mg/回は、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患のより効果的な治療の観点から、11~13mg/回がより好ましく、12mg/回が最も好ましい。9.9~14.3mg/回は、9.9、10、11、12、13、14、又は14.3mg/回であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。
【0047】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、シクロスポリン及びBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物の併用投与時のシクロスポリンの用法及び用量は、例えば、本願出願時にPMDA又はFDAから承認された又は公知のシクロスポリンの用法及び用量を採用してもよい。例えば、移植患者に対して、移植1日目からシクロスポリンとして6~16mg/kg/日の範囲内の用量を1日2回に分けて経口投与し、以後1日2mg/kgずつ又は徐々に減量してもよい。維持量は2~6mg/kg/日の範囲内の用量を標準とし、症状により適宜増減してもよい。シクロスポリンは、持続静脈注射で投与してもよい。シクロスポリンの投与は、BCVの血中濃度に影響を与えない。シクロスポリンは59865-13-3のCAS登録番号で示される化合物を含む。
【0048】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、併用は、2つ以上の処置(例えば投与)が存在している場合に、1つの処置を基準として他の処置を前、同時、又は後に実施することを含む。
【0049】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、4週目の治療を経過した場合は、例えば、初回投与から4週間経過した場合、又は4週目2回目の投与が完了した場合を含む。
【0050】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、投与期間は、例えば、初回投与時から、特定の頻度(例えば週2回)で投与を繰り返した後、投与を中止するまでの期間を含む。例えば、週2回の投与を4週間実施した場合、投与期間は4週間であってもよい。投与期間は、例えば、持続点滴静注の期間と、インターバルの期間(例えば、持続点滴静注を受けない期間)を含む。投与期間は、治療期間を含む。
【0051】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(15))の方法において、対象を特定する工程は、治療対象として対象を特定する工程、又は医薬組成物の投与対象として対象を特定する工程を含んでもよい。対象を特定する工程は、対象を選択する工程又は対象を同定する工程を含んでもよい。
【0052】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患を有する対象の特定は、被検対象のサンプル(例えば血液)中のAdV DNAが検出されたこと、比較対象(例えば健常人)に比べてサンプル中のAdV DNA量が有意に多いこと、又はサンプル中のAdVが1000コピー/ml以上又は10,000コピー/ml以上であることに基づいて実施してもよい。
【0053】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、サンプルは、例えば、生体サンプルを含んでもよい。サンプルは、例えば、体液(例えば、血液(例えば、血漿、血清又は全血)、咽頭ぬぐい液、唾液、尿、又は髄液)、喀痰、又は便を含んでもよい。サンプルは、例えば、検体を含んでもよい。対象の治療においては、対象のサンプル中のAdV量に基づいて治療効果を評価してもよく、AdV量を治療中止の指標としてもよい。
【0054】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、治療は、患者の疾患(例えばAdV感染又はAdV感染に伴う疾患)又は疾患に伴う1つ以上の症状に関して患者に有益な結果をもたらす作用(例えば、改善、軽減、緩和、治癒、寛解又は抑制(例えば、発症抑制(例えば予防)、進展抑制、又は再発抑制)を発揮しうることを含む。治療は、治療有効量のBCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を対象に投与することにより実施してもよい。本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、医薬組成物は、例えば有効成分と薬学的に許容される1つ以上の担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造してもよい。また医薬組成物は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体又は液体(例えば、緩衝液)であってもよい。上記担体の含有量は、例えば、製剤学上有効量であってもよい。有効量は、例えば、有効成分の製剤学的な安定性又は送達のために十分量であってもよい。例えば、緩衝液は、バイアル中における有効成分の安定化に有効である。また医薬組成物は、安定剤(例えば、マンニトール)、緩衝剤(例えば、アルギニン)、又はpH調整剤(例えば、NaOH)を含んでもよい。投与量、投与間隔、投与方法、投与経路は、特に限定されず、患者の年齢や体重、症状、対象臓器等により、適宜選択できる。また医薬組成物は、治療有効量、又は所望の作用を発揮する有効量の有効成分を含むことが好ましい。本発明の一実施形態において治療上有効量は、患者における症状の改善が臨床的に観察されるために必要な量を含む。本発明の一実施形態において薬学的に許容されるとは、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合って使用するのに適した状態を含む。医薬組成物中のBCV以外の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療効果は、患者のAdV量が、医薬組成物投与後に有意に減少した場合に、治療効果があったと判断してもよい。
【0055】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、対象(患者を含む)は、例えば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患を発症していると診断された対象、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患の発症が疑われる対象、又はAdV感染又はAdV感染に伴う疾患の治療を必要としている対象であってもよい。対象は、例えば、サンプル内にAdVが検出された対象、サンプル内のAdV量が比較対象(例えば健常人)に比べて増加している対象、又はサンプル内のAdVが1000コピー/ml以上又は10,000コピー/ml以上である対象であってもよい。対象は、例えば、AdV感染又はAdV感染に伴う疾患を経験した対象であってもよい。対象は、例えば、同種移植患者、自家移植患者、又は造血幹細胞移植患者であってもよい。対象は、例えば、同種造血幹細胞移植後の患者を含む免疫不全症又は状態の患者であってもよい。対象は、ヒト又はヒトを除く哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、又はチンパンジー等の1種以上)を含む。対象は、ヒト成人患者又はヒト小児患者(例えば、生後2カ月以上の患者)を含む。対象の年齢は、例えば、0、1、2、3、4、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、又は100であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。対象は、対象の集団を含む。
【0056】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、BCV、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物による治療対象は、AdV感染症に対してより効果的な治療を施す観点から、同種造血細胞移植患者であることが好ましい。効果的な治療は、例えば、治療非奏功の患者の発生の抑制、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間の短縮、治療期間の短縮、又は安全性に優れた治療を含む。
【0057】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、対象(ヒト対象を含む)へのBCV、その薬学的に許容される塩、もしくはそれらの溶媒和物(又はそれらを含む医薬組成物)の投与経路は、効果的な治療のために静脈内が好ましい。投与形態は、効果的な治療のために注射剤(例えば静脈注射)が好ましい。
【0058】
本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、塩は、特に限定されず、例えば、無機塩又は有機塩を含む(例えば、Bharate et al., Drug Discov Today. 2021 Feb;26(2):384-398.又はBerge et al., J Pharm Sci. 1977 Jan;66(1):1-19.参照)。塩は、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性又は酸性アミノ酸との塩等を含む。金属塩は、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アルミニウム塩等を含む。有機塩基との塩は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等との塩を含む。無機酸との塩は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩を含む。有機酸との塩は、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、メシル酸、トシル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩を含む。塩基性アミノ酸との塩は、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩を含む。酸性アミノ酸との塩は、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩を含む。塩は薬学的に許容可能な塩を含む。本発明の一実施形態において薬学的に許容可能とは、薬学的使用のために妥当なベネフィットを有する形態を含む。本発明の一実施形態において化合物又はその塩の一形態は、それらの溶媒和物の形態を含む。本発明の実施形態(例えば上記(1)~(24))において、溶媒和物は、溶質及び溶媒によって形成される化合物の形態を含む(例えば、Healy et a., Adv Drug Deliv Rev. 2017 Aug 1;117:25-46.参照)。溶媒和物は、特に限定されないが、例えば、水和物(例えば、一水和物、二水和物、三水和物等)又は有機溶媒和物(例えば、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール等)、アセトン、ジメチルホルムアミド、又は酢酸エチルとの溶媒和物等)を含む。溶媒は、溶媒和物を形成後に溶質の生理活性を実質的に維持可能な溶媒を含む。溶媒和物は、薬学的に許容可能な溶媒和物を含む。
【0059】
本発明の一実施形態(例えば上記(1)~(24))において「有意に」は、例えば、統計学的有意差をスチューデントのt検定(片側又は両側)を使用して評価し、p<0.05又はp<0.01である状態であってもよい。又は、実質的に差異が生じている状態であってもよい。
【0060】
本明細書において引用しているあらゆる刊行物は、その全体を参照により援用する。本明細書において「又は」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。本明細書において「A~B」は、A及びB並びにA及びBの間に含まれる値を含む。本明細書において「有する」は疾患に関する場合は罹患していることを含む。本明細書において「上記(1)~(24)」は、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)、(20)、(12)、(22)、(23)又は(24)のいずれか1つ以上への言及を含む。
【0061】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明に含まれ得る形態の例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また本発明は、上記実施形態に記載の各構成又は特徴を組み合わせて、又は独立して採用することもできる。
【実施例
【0062】
以下、実施例によりさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
実施例1:AdV感染症治療に関するヒト臨床試験
以下の手順でアデノウイルス(AdV)感染症治療に関するヒト臨床試験を実施した。
【0064】
1.1 材料及び方法
1.1.1 患者
移植細胞による免疫再構成が達成される前の造血幹細胞移植患者、免疫抑制剤投与中の臓器移植患者、免疫不全症候群患者を含む、無症候性AdV感染症又はAdV疾患を有する、免疫抑制状態にある生後2ヶ月以上で、高レベルのAdV血症を伴う患者(1回のサンプルで10,000 copy/ml以上の患者、又は2回のサンプルで1000 copy/ml以上で1回目より2回目のウイルス量が増加している患者)。
【0065】
1.1.2 薬剤の説明
ブリンシドフォビル(BCV)注射剤は、10mg/mL BCVを含有する滅菌水溶液である。
薬剤概要
製品名:ブリンシドフォビル(BCV)
剤形:注射剤
単位用量:10mg/mL(1バイアルあたり1mL)
投与経路:静脈注射
物理的説明:滅菌済みガラス瓶入り無色透明溶液
保存方法:冷蔵(2~8℃)
投与方法:週2回(投与1、4日目)、2時間かけて持続点滴静注する。
【0066】
1.1.3 投与量
コホート1:0.2mg/kg(体重50kg以上の場合は10mg/回)を週2回投与
コホート2:0.3mg/kg(体重50kg以上の場合は15mg/回)を週2回投与
コホート3:0.4mg/kg(体重50kg以上の場合は20mg/回)を週2回投与
【0067】
1.1.4 薬剤投与
BCV 10mg/mL注射剤の投与量は患者の体重に基づいて調製する。静脈注射剤の調製及び投与には以下のキットを使用する。
静脈注射用バッグ:グルコース5%、100mL、非PVC、DEHPフリー
静脈注射用チューブ:チューブは可塑剤を含まず、DEHPフリーである。
静脈注射用ポンプ:承認済みチューブを使用する。
調製:滅菌済みシリンジと注射針を使用して、1バイアルから1mLのBCV静脈注射液を100mLのグルコース5%静脈注射用バッグに移し、希釈投与溶液を作る。10mg/回を超える場合は、上記と同様の手順で希釈投与液を1回追加調製する。バッグを5回以上静かに反転させて混和する。なお、バイアル内の溶液又はバッグ内の希釈投与溶液を激しく振らないようにする。
【0068】
患者の体重に応じた適切な量の希釈投与液を投与する。1回あたり2時間かけて一定速度で静脈内投与する。投与完了後、グルコース5%又はデキストロース5%で静脈注射ラインをフラッシュし、静脈注射ラインからすべての活性薬剤が除去されたことを確認する。施設の慣行に従って必要な場合は、グルコース5%又はデキストロース5%のフラッシュに続いて、通常の生理食塩水でフラッシュしてもよい。希釈投与液は原則として使用時に調製すべきであり、前日に調製すべきではない。
【0069】
コホート2の101-12、コホート3の101-15、101-18及び110-06の対象はBCV静注によるの治療期間中に免疫抑制剤であるシクロスポリンを服用する。事前の健常人に対するPK試験では、BCVとシクロスポリンの併用静注により、血漿中BCV曝露量の有意な増加が示されている。BCV及びシクロスポリンを同時に投与した場合、血漿中BCVのAUCinf及びCmaxは、BCV単独投与時の約3.4倍及び約2.3倍に増加した。シクロスポリンをBCV静注終了2時間後に2時間かけて投与した場合、血漿中BCVのAUCinf及びCmaxはBCV単独投与時の約1.8倍及び約1.3倍に増加した。また、コホート3の患者と健常人とで、BCV単独投与時の血漿中BCVのAUCinf及びCmaxは概ね同等であった。以上を考慮し、シクロスポリンを服用する上記患者については、上記1.1.3(コホート1~3)に示すいずれの用量も60%に低減して投与する。なお、シクロスポリンをBID(1日2回)経口剤又は注射剤として投与する場合、BCV静注終了から2時間のインターバルを空けて投与する。シクロスポリンを24時間持続注入する場合、インターバルはない。
【0070】
1.1.5 試験期間
試験期間は、1週間のスクリーニング期間、少なくとも4週間の治療期間、30日間の治療後フォローアップ期間に基づいて、少なくとも9週間とする。スクリーニングでは、患者にインフォームドコンセントを実施した後、本試験の適格性を決定するためのスクリーニング評価が実施される。治療期間の第1週初日、該当するコホート(上記1.1.3、コホート1~3参照)に基づいて患者に投与量が割り当てられる。治療期間は最低4週間、最長14週間であり、終了は後述の治療中止基準に基づく。医師の判断により、AdV感染/疾患の再発リスクが高いと評価された患者については、4週間の治療期間を終了した患者であっても、少なくとも3日間隔で連続した最新の2回の測定でAdV量が確認できない場合、最大10週間まで処置期間を延長することができる。すべての患者は最終投与後30日間フォローアップされる。有害事象については、米国国立がん研究所・有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)バージョン5.0(グレード1~5)に従って評価する。コホート1の安全性データのレビュー結果に基づいて、コホート2を開始するかどうかを決定する。同様に、コホート2の安全性データのレビュー結果に基づいて、コホート3の開始も決定される。グレード3以上の有害事象が前コホートの全対象の25%超に認められた場合、新規コホートへの登録は直ちに中止される。
【0071】
治療中止基準(treatment stopping criteria)に基づく治療期間の終了時期に関して以下に説明する。対象のサンプル中のアデノウイルスを複数回測定し、最新の2回の測定において連続でアデノウイルスが検出限界未満であった場合、及び4週目の治療を経過した場合、の両方の条件を満たしたことを治療中止基準とする。AdV血症が検出限界(LOD)より低いことを確認するには、血漿中ウイルス量がLODより低い結果が2回連続することが必要である。最初の結果がLODより低いと報告された後、最初の検体が採取されてから3日(丸2日)以上、14日(丸13日)以内に確認用採血をする必要がある。BCV静注治療を受けている患者は、AdVウイルス血症がLODより低いことが確認された場合でも、BCV特有の有害事象を管理するためのガイドラインで除外されない限り、4週間の治療を継続する。4週間のBCV治療が完了する前に、血漿中AdV量が2回連続してLODより低いことが確認された場合、患者は指定されたBCV治療を4週間まで継続する。5週目1日目までAdVウイルス血症が存在し、週1回の継続的なウイルス量検査で確認された場合、BCV治療を最長14週まで継続することができる。BCVを4週間投与された患者は、血漿中ウイルス量の連続2回の測定によってAdV血症がLODより低いことが確認されたら、BCV静注治療を中止し、治療後のフォローアップに移行する。
【0072】
1.1.6 ウイルス血症解析のための血液サンプル
各患者の血液をK2EDTAチューブに採血し、8~10回反転混和した後、1100~1300×gで10分間遠心分離し、採血直後又は採血後30分以内に血漿を分離した。血漿は-70℃を凍結保存し、リアルタイムqPCR法でAdV血症の解析を行った(検出限界25コピー/mL、定量下限190コピー/mL、定量上限1×109コピー/mL)。
【0073】
1.2 臨床試験データ
図1~3にコホート1~3の試験結果を示す。図1~3の横軸のW1D1のWは週を意味し、Dは日を意味する(即ち、W1D1は1週目1日目である)。W2D1以降も同様である。図1~3の縦軸は血漿中アデノウイルス量を示している。LLOQの線より下が検出限界未満である。コホート1~3には0~80歳、体重5.4~82.4kgの男性又は女性の患者が含まれる。体重50kg以上の患者はコホート1に1名、コホート2及び3に各2名含まれる。
【0074】
コホート1において、AdV量が検出限界未満に達した患者は2例であった。2例のうち1例は再発した。また、死亡した患者が1例見られた。コホート2において、AdVウイルス量が検出限界未満に達した患者は5例であった。5例は全体的に検出限界未満に達するまでの期間が長くかかっていた。また、死亡した患者が1例見られた。
【0075】
コホート3において、全例(10例)においてAdV量が検出限界未満に達した。また、全例で再発又は死亡した患者は見られなかった。さらに、10例は全体的に検出限界未満に達するまでの期間が短かった。コホート3では、4週以内に検出限界未満に達した患者が8例であり、残り2例も5週目及び6週目には検出限界未満に達した。以上から、コホート3では、治療非奏功の患者の発生を抑制できることが示された。またコホート3では、検出限界未満に達するまでの期間が短いため、治療期間を短縮できることが示された。さらにコホート3では、上記の治療中止基準に基づいて投与期間を終了することができるため、特に治療期間を短縮できることが示された。
【0076】
BCV関連の有害事象については、以下の通りであった。コホート1は、110-01:下痢 - グレード2(可能性あり)、109-01:上昇AST - グレード1(おそらくあり)、上昇AST - グレード1(おそらくあり)、上昇LDH - グレード1(可能性あり)。コホート2は、101-09:下痢 - グレード3(可能性あり)、109-03:吐き気 - グレード1(可能性あり)、101-14:高トランスアミナーゼ血症 - グレード3(可能性あり)。コホート3は、102-02:アラニンアミノトランスフェラーゼ増加 - グレード3(可能性あり)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ増加 - グレード3(可能性あり)、109-04:心臓が高鳴り感 - グレード1(可能性あり)、吐き気 - グレード1(可能性あり)。グレード3の有害事象については、コホート1が0例、コホート2が2例、コホート3が1例であった。コホート3はコホート2に比べて用量が多い一方で、グレード3の有害事象発生率は少なかった。
【0077】
1.3. 考察
BCV注射液は、AdV感染症の治療及び免疫不全患者におけるAdV感染症の予防に有効である。0.4mg/kg(体重50kg以上の場合は20mg)の週2回静脈投与は、顕著に優れた治療効果を示した。この投与方法は、治療非奏功の患者の発生を抑制することができる。この投与方法は、AdV量が検出限界未満に達するまでの期間が短く、再発も抑制されるため、治療期間を短縮できる。この投与方法は、上記の治療中止基準を適用することで、治療期間を特に短縮できる。また、治療期間を短縮することにより、耐性株出現の抑制、患者の身体の負担軽減、有害事象の発生率の軽減、治療費の軽減など利益が得られる。この投与方法は、有害事象の発生率が少ないため、安全性に優れている。
【0078】
実施例2:便のAdV量の解析
実施例1の臨床試験において、患者の便中のAdV量を調べた。図4に示すように、患者の便を採取し検査を実施した。図中Dは検出(detected)、NDは非検出(not detected)、NPは非実施(not performed)を意味する。AdV量の解析にはリアルタイムqPCR法を用いた。
【0079】
コホート1において、試験期間中にAdV量が非検出となった患者は8例中1例であった。コホート2において、試験期間中にAdV量が非検出となった患者は9例中3例であった。3例中1例は、次週にはAdV量が検出された。
【0080】
コホート3において、試験期間中にAdV量が非検出となった患者は8例中5例であった。便中のAdVを排除できる医薬品は従来存在しなかったが、コホート3の投与方法により便中のAdVを効果的に排除できることが示された。
【0081】
実施例3:リンパ球の解析
実施例1の臨床試験において、コホート3の110-05の患者の血漿中のリンパ球数を調べた。図5にリンパ球数、AdV量、ALT値の測定結果を示す。AdV量は3週目に検出限界未満になった一方で、リンパ球は増加傾向を示した。リンパ球が増加傾向を示したことから、リンパ球が関係する免疫系の回復が得られたため、AdV血症の再発が生じにくいことが示唆された。
【0082】
実施例4:AdV感染症治療に関するヒト臨床試験
以下の手順でアデノウイルス(AdV)感染症治療に関するヒト臨床試験を実施する。
【0083】
4.1 材料及び方法
4.1.1 患者
移植細胞による免疫再構成が達成される前の造血幹細胞移植患者、免疫抑制剤投与中の臓器移植患者、免疫不全症候群患者を含む、無症候性AdV感染症又はAdV疾患を有する、免疫抑制状態にある生後2ヶ月以上の患者。
【0084】
4.1.2 薬剤の説明
ブリンシドフォビル(BCV)注射剤は、10mg/mL BCVを含有する滅菌水溶液である。
薬剤概要
製品名:ブリンシドフォビル(BCV)
剤形:注射剤
単位用量:10mg/mL(1バイアルあたり1mL)
投与経路:静脈注射
物理的説明:滅菌済みガラス瓶入り無色透明溶液
保存方法:冷蔵(2~8℃)
投与方法:週1回、2時間かけて持続点滴静注する。
【0085】
4.1.3 投与量
コホート4:0.4mg/kg(体重50kg以上の場合は20mg/回)を週1回投与
コホート5:0.6mg/kg(体重50kg以上の場合は30mg/回)を週1回投与
コホート6:0.8mg/kg(体重50kg以上の場合は40mg/回)を週1回投与
【0086】
4.1.4 薬剤投与
BCV 10mg/mL注射剤の投与量は患者の体重に基づいて調製する。静脈注射剤の調製及び投与には以下のキットを使用する。
静脈注射用バッグ:グルコース5%、100mL、非PVC、DEHPフリー
静脈注射用チューブ:チューブは可塑剤を含まず、DEHPフリーである。
静脈注射用ポンプ:承認済みチューブを使用する。
調製:滅菌済みシリンジと注射針を使用して、1バイアルから1mLのBCV静脈注射液を100mLのグルコース5%静脈注射用バッグに移し、希釈投与溶液を作る。10mg/回を超える場合は、上記と同様の手順で希釈投与液を1回追加調製する。バッグを5回以上静かに反転させて混和する。なお、バイアル内の溶液又はバッグ内の希釈投与溶液を激しく振らないようにする。
【0087】
患者の体重に応じた適切な量の希釈投与液を投与する。1回あたり2時間かけて一定速度で静脈内投与する。投与完了後、グルコース5%又はデキストロース5%で静脈注射ラインをフラッシュし、静脈注射ラインからすべての活性薬剤が除去されたことを確認する。施設の慣行に従って必要な場合は、グルコース5%又はデキストロース5%のフラッシュに続いて、通常の生理食塩水でフラッシュしてもよい。希釈投与液は原則として使用時に調製すべきであり、前日に調製すべきではない。
【0088】
事前の健常人に対するPK試験では、BCVとシクロスポリンの併用静注により、血漿中BCV曝露量の有意な増加が示されている。BCV及びシクロスポリンを同時に投与した場合、血漿中BCVのAUCinf及びCmaxは、BCV単独投与時の約3.4倍及び約2.3倍に増加した。シクロスポリンをBCV静注終了2時間後に2時間かけて投与した場合、血漿中BCVのAUCinf及びCmaxはBCV単独投与時の約1.8倍及び約1.3倍に増加した。また、コホート3の患者と健常人とで、BCV単独投与時の血漿中BCVのAUCinf及びCmaxは概ね同等であった。以上を考慮し、シクロスポリンを服用する上記患者については、上記4.1.3(コホート4~6)に示すいずれの用量も60%に低減して投与する。なお、シクロスポリンをBID(1日2回)経口剤又は注射剤として投与する場合、BCV静注終了から2時間のインターバルを空けて投与する。シクロスポリンを24時間持続注入する場合、インターバルはない。
【0089】
4.1.5 試験期間
試験期間は、1週間のスクリーニング期間、少なくとも4週間の治療期間、30日間の治療後フォローアップ期間に基づいて、少なくとも9週間とする。スクリーニングでは、患者にインフォームドコンセントを実施した後、本試験の適格性を決定するためのスクリーニング評価が実施される。治療期間の第1週初日、該当するコホート(上記4.1.3、コホート4~6参照)に基づいて患者に投与量が割り当てられる。治療期間は最低4週間、最長14週間であり、終了は後述の治療中止基準に基づく。医師の判断により、AdV感染/疾患の再発リスクが高いと評価された患者については、4週間の治療期間を終了した患者であっても、少なくとも3日間隔で連続した最新の2回の測定でAdV量が確認できない場合、最大10週間まで処置期間を延長することができる。すべての患者は最終投与後30日間フォローアップされる。有害事象については、米国国立がん研究所・有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)バージョン5.0(グレード1~5)に従って評価する。コホート4では、0.4mg/kg又は20mgの週1回静注を当初計画した投与レジメンとして患者を登録する。コホート4のn=3の患者で忍容性が確認されれば、コホート5を開始し、BCVを0.6mg/kg又は30mgの週1回静注に増量する。コホート5のn=3の患者で観察されたDLT(用量制限毒性)が1例以下の場合、コホート6を開始し、BCVを0.8mg/kg又は40mgの週1回静注(n=6)に増量する。
【0090】
治療中止基準に基づく治療期間の終了時期に関して以下に説明する。対象のサンプル中のアデノウイルスを複数回測定し、最新の2回の測定において連続でアデノウイルスが検出限界未満であった場合、及び初回投与から4週間経過した場合、の両方の条件を満たしたことを治療中止基準とする。AdV血症が検出限界(LOD)より低いことを確認するには、血漿中ウイルス量がLODより低い結果が2回連続することが必要である。最初の結果がLODより低いと報告された後、最初の検体が採取されてから3日(丸2日)以上、14日(丸13日)以内に確認用採血をする必要がある。BCV静注治療を受けている患者は、AdVウイルス血症がLODより低いことが確認された場合でも、BCV特有の有害事象を管理するためのガイドラインで除外されない限り、4週間の治療を継続する。4週間のBCV治療が完了する前に、血漿中AdV量が2回連続してLODより低いことが確認された場合、患者は指定されたBCV治療を4週間まで継続する。5週目1日目までAdVウイルス血症が存在し、週1回の継続的なウイルス量検査で確認された場合、BCV治療を最長14週まで継続することができる。BCVを4週間投与された患者は、治療後の経過観察後、血漿中ウイルス量の連続2回の測定によってAdV血症がLODより低いことが確認されたら、BCV静注治療を中止する。
【0091】
4.1.6 ウイルス血症解析のための血液サンプル
各患者の血液をK2EDTAチューブに採血し、8~10回反転混和した後、1100~1300×gで10分間遠心分離し、採血直後又は採血後30分以内に血漿を分離する。血漿は-70℃を凍結保存し、リアルタイムqPCR法でAdV血症の解析を行う。
【0092】
4.2 臨床試験データ
コホート4~6の患者は試験期間にAdV量が検出限界未満に達する。コホート4では有害事象の発生が特に抑制される。
【0093】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【要約】
【課題】 アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患の治療方法を提供する。
【解決手段】 アデノウイルス感染又はアデノウイルス感染に伴う疾患の治療用の医薬組成物であって、ブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を含有し、前記治療は、(i)ヒト対象へブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を0.38~0.42mg/kgで週2回静脈投与すること、又は(ii)ヒト対象へブリンシドフォビル、その薬学的に許容される塩又はそれらの溶媒和物を18~22mg/回で週2回静脈投与すること、を含む、医薬薬組成物を用いる。
【選択図】 図3
図1
図2
図3
図4
図5