(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】列車車室の振動監視方法、振動信号特徴ライブラリの構築及び応用方法
(51)【国際特許分類】
G01H 17/00 20060101AFI20240111BHJP
B61L 25/04 20060101ALI20240111BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240111BHJP
【FI】
G01H17/00 Z
B61L25/04
B60L3/00 N
(21)【出願番号】P 2023513270
(86)(22)【出願日】2021-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2021070117
(87)【国際公開番号】W WO2022141623
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-02-23
(73)【特許権者】
【識別番号】518309666
【氏名又は名称】中南大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】劉 輝
(72)【発明者】
【氏名】于 程名
(72)【発明者】
【氏名】李 燕飛
(72)【発明者】
【氏名】秦 進
(72)【発明者】
【氏名】張 雷
(72)【発明者】
【氏名】尹 詩
(72)【発明者】
【氏名】段 鋳
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-051518(JP,A)
【文献】特開2018-184014(JP,A)
【文献】特開2017-077055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0189393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01H 1/00-17/00
G01M 17/08-17/10
B61L 25/00-25/08
B60L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車車室の非侵入的な振動監視方法であって、
列車車室外での既知の振動源が正常に振動している条件及び異常に振動している条件において、それぞれ列車車室内での複数のサブ測定点の横方向、縦方向、垂直方向における振動データMを予め収集し、列車車室内での総測定点の横方向、縦方向、垂直方向における振動データCを予め収集し、列車車室外での各既知の振動源の横方向、縦方向、垂直方向における振動データSを予め収集するステップ1と、
各サブ測定点での振動データMの上位1~J次高調波信号の位相情報及び振幅情報を抽出し、総測定点での振動データCの上位1~J次高調波信号の位相情報及び振幅情報を抽出し、各既知の振動源での上位1~J次高調波信号の位相情報及び振幅情報を抽出するステップ2と、
各非総測定点での振動データと総測定点での振動データとの間の上位1~J次高調波位相差及び高調波振幅比を入力とし、総測定点に対する各非総測定点の横方向、縦方向、垂直方向における位置情報を出力とし、機械学習アルゴリズムによって訓練してモデル1を取得し、
各非総測定点での振動データと総測定点での振動データとの間の上位1~J次高調波位相差を入力とし、各非総測定点での振動データと総測定点での振動データとの間の上位1~J次高調波振幅比を出力とし、機械学習アルゴリズムによって訓練してモデル2を取得し、
非総測定点がサブ測定点と既知の振動源とで構成されるステップ3と、
総測定点の横方向、縦方向、垂直方向におけるリアルタイム振動データCRを収集するステップ4と、
総測定点に対する振動源の位相オフセット、各既知の振動源の組み合わせの動作状態、異常振動タイプを独立変数とし、最適化目的を設定し、モデル1及びモデル2に基づいて多目的最適化アルゴリズムを実行し、列車車室の振動監視結果情報を出力し、前記振動監視結果情報は振動が発生する振動源の位置及び/又は振動が発生する振動源の異常振動タイプ及び/又は総測定点に対する振動が発生する振動源での上位1~J次高調波位相オフセット及び/又は総測定点に対する振動が発生する振動源での上位1~J次高調波振幅比を含むステップ5と、を含むことを特徴とする列車車室の非侵入的な振動監視方法。
【請求項2】
前記ステップ1において、列車車室外での既知の振動源が正常に振動していることは、列車車室外での各既知の振動源がいずれも正常に振動している第1の場合と、列車車室外でのいずれか1つの既知の振動源が独立して正常に振動しているが、残りの既知の振動源が振動していない第2の場合と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の列車車室の非侵入的な振動監視方法。
【請求項3】
前記ステップ1において、列車車室外での既知の振動源が異常に振動していることは、列車車室外でのいずれか1つの既知の振動源が独立して異常に振動しているが、残りの既知の振動源が振動していない第1の場合と、列車車室外でのいずれか1つの既知の振動源が独立して異常に振動しているが、残りの既知の振動源が正常に振動している第2の場合と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の列車車室の非侵入的な振動監視方法。
【請求項4】
前記ステップ1において、M=[L
M,m(t)]、C=[L
C,c(t)]、S=[L
S,s(t)]であり、m(t)がサブ測定点に対応する振動信号値であり、c(t)が総測定点に対応する振動信号値であり、s(t)が既知の振動源に対応する振動信号値であり、L
Mがサブ測定点に対応する振動データのタグ値であり且つL
M=[l
M,l
t,l
g,l
d,l
o1]であり、L
Cが総測定点に対応する振動データのタグ値であり且つL
C=[l
s,l
t,l
g,l
d]であり、L
Sが既知の振動源に対応する振動データのタグ値であり且つL
S=[l
S,l
t,l
g,l
d,l
o2]であり、l
Mがサブ測定点の番号タグであり、l
tがタイムスタンプタグであり、l
gが異常振動タイプタグであり、l
o1が総測定点に対するサブ測定点の横方向、縦方向又は垂直方向における位置情報タグであり、l
sは振動が同時に発生する既知の振動源タグであり、l
dが振動方向タグであり、l
Sが既知の振動源の番号タグであり、l
o2が総測定点に対する既知の振動源の横方向、縦方向又は垂直方向における位置情報タグであることを特徴とする請求項1に記載の列車車室の非侵入的な振動監視方法。
【請求項5】
前記ステップ5において、各既知の振動源振動信号の周波数領域特徴の和と総測定点振動信号の各高調波次数の周波数領域特徴との加重差の最小化を実現することを第1最適化目的とし、各既知の振動源振動信号の各高調波次数差の加重分散の最小化を実現することを第2最適化目的とすることを特徴とする請求項4に記載の列車車室の非侵入的な振動監視方法。
【請求項6】
ステップ5において取得された振動監視結果情報を時間領域内のリアルタイム振動源振動信号に変換・復元するステップ6を更に含むことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の列車車室の非侵入的な振動監視方法。
【請求項7】
列車車室の振動信号特徴ライブラリの構築方法であって、
請求項6に記載の列車車室の非侵入的な振動監視方法を含み、
リアルタイム振動源振動信号の周波数領域特徴、時間領域特徴及び画像特徴を抽出して、リアルタイム振動源振動信号の周波数領域特徴及び時間領域特徴に対して特徴融合又は特徴再構築を行うステップ7と、
ステップ7において取得された周波数領域特徴、時間領域特徴、画像特徴、特徴融合又は特徴再構築結果に基づいて、列車車室の振動信号特徴ライブラリを構築するステップ8と、を更に含むことを特徴とする列車車室の振動信号特徴ライブラリの構築方法。
【請求項8】
列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける情報を利用して前記モデル1及び/又はモデル2に対してオンライン訓練を行うことを更に含むことを特徴とする請求項7に記載の列車車室の振動信号特徴ライブラリの構築方法。
【請求項9】
請求項7に記載の列車車室の振動信号特徴ライブラリの構築方法で構築された列車車室の振動信号特徴ライブラリの応用方法であって、
訓練して列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける振動信号特徴と列車就役性能評価パラメータとの関係モデルを取得し、列車運行過程において、リアルタイムに取得された列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける振動信号特徴を関係モデルの入力とし、リアルタイム列車就役性能評価パラメータを出力して取得することを含むことを特徴とする列車車室の振動信号特徴ライブラリの応用方法。
【請求項10】
請求項7に記載の列車車室の振動信号特徴ライブラリの構築方法で構築された列車車室の振動信号特徴ライブラリの応用方法であって、
列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける振動信号特徴の時系列情報を利用して、時系列予測方法によって将来のある時刻での振動源での異常振動状況を予測することを含むことを特徴とする列車車室の振動信号特徴ライブラリの応用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は列車車室の振動識別の技術分野に属し、特に列車車室の振動監視方法、振動信号特徴ライブラリの構築及び応用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、我が中国では高速列車が絶えず発展しており、列車の高速運行過程において、列車車室の内部は外部振動源からの影響を受けて振動が発生することとなり、車室の振動は車室に接触している列車部材の運行状況を反映し得る一方、乗客の快適性及び乗車体験に影響することとなる。
【0003】
従来の列車車室のリアルタイムな振動監視方法は下記欠点がある。
【0004】
第1としては、主要箇所のみにセンサが取り付けられており、未知の振動源の監視を実現できない。例えば、開示番号CN111044303Aの特許には磁気浮上式列車客室の異常振動診断方法が提案されており、該方法は列車の客室に大量のセンサが取り付けられており、列車客室の異常振動の監視を実現しているが、該特許は未知の振動源の監視には関わっていない。
【0005】
第2としては、従来の監視方式は主に列車に対して大量のセンサを侵入的に取り付けて直接監視を行うことであり、精度が高いが、センサの冗長化・浪費状況が不可避的に発生してしまうこととなる。例えば、開示番号CN110879102Aの特許には軌道列車の振動モニタリングシステムが提案されており、該システムは各両の車両内に複数の振動モニタリング端末を設置し、且つ主制御センターにデータをリアルタイムに伝送することで、車両の振動が異常であるかどうかを判断できるが、該方法は列車振動源のモニタリングに関わっておらず、且つ必要なセンサなどのモニタリングデバイスが比較的多く、コストが比較的高い。
【0006】
上記原因により、列車車室に対して非侵入的な振動監視を行って異常振動の発生源を特定することは、列車の使用・メンテナンスコストの削減、列車の安全運行の確保及び乗客の快適性の向上にとって重要な意味を持つ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の欠陥に対して、列車車室の非侵入的な振動監視方法、振動信号特徴ライブラリの構築及び応用方法を提供することにあり、大量のセンサを必要とせず、列車での既知の振動源及び未知の振動源の異常振動の監視を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的問題を解決するために、本発明が用いる技術案は以下のとおりである。
【0009】
列車車室の非侵入的な振動監視方法であって、
列車車室外での既知の振動源が正常に振動している条件及び異常に振動している条件において、それぞれ列車車室内での複数のサブ測定点の横方向、縦方向、垂直方向における振動データMを予め収集し、列車車室内での総測定点の横方向、縦方向、垂直方向における振動データCを予め収集し、列車車室外での各既知の振動源の横方向、縦方向、垂直方向における振動データSを予め収集するステップ1と、
各サブ測定点での振動データMの上位1~J次高調波信号の位相情報及び振幅情報を抽出し、総測定点での振動データCの上位1~J次高調波信号の位相情報及び振幅情報を抽出し、各既知の振動源での上位1~J次高調波信号の位相情報及び振幅情報を抽出するステップ2と、
各非総測定点での振動データと総測定点での振動データとの間の上位1~J次高調波位相差及び高調波振幅比を入力とし、総測定点に対する各非総測定点の横方向、縦方向、垂直方向における位置情報を出力とし、機械学習アルゴリズムによって訓練してモデル1を取得し、
各非総測定点での振動データと総測定点での振動データとの間の上位1~J次高調波位相差を入力とし、各非総測定点での振動データと総測定点での振動データとの間の上位1~J次高調波振幅比を出力とし、機械学習アルゴリズムによって訓練してモデル2を取得し、
非総測定点がサブ測定点と既知の振動源とで構成されるステップ3と、
総測定点の横方向、縦方向、垂直方向におけるリアルタイム振動データCRを収集するステップ4と、
総測定点に対する振動源の位相オフセット、各既知の振動源の組み合わせの動作状態、異常振動タイプを独立変数とし、最適化目的を設定し、モデル1及びモデル2に基づいて多目的最適化アルゴリズムを実行し、列車車室の振動監視結果情報を出力し、前記振動監視結果情報は振動が発生する振動源の位置及び/又は振動が発生する振動源の異常振動タイプ及び/又は総測定点に対する振動が発生する振動源での上位1~J次高調波位相オフセット及び/又は総測定点に対する振動が発生する振動源での上位1~J次高調波振幅比を含むステップ5と、を含むことを特徴とする。
【0010】
好ましい態様としては、前記ステップ1において、列車車室外での既知の振動源が正常に振動していることは、列車車室外での各既知の振動源がいずれも正常に振動している第1の場合と、列車車室外でのいずれか1つの既知の振動源が独立して正常に振動しているが、残りの既知の振動源が振動していない第2の場合と、を含む。
【0011】
好ましい態様としては、前記ステップ1において、列車車室外での既知の振動源が異常に振動していることは、列車車室外でのいずれか1つの既知の振動源が独立して異常に振動しているが、残りの既知の振動源が振動していない第1の場合と、列車車室外でのいずれか1つの既知の振動源が独立して異常に振動しているが、残りの既知の振動源が正常に振動している第2の場合と、を含む。
【0012】
好ましい態様としては、前記ステップ1において、M=[LM,m(t)]、C=[LC,c(t)]、S=[LS,s(t)]であり、m(t)がサブ測定点に対応する振動信号値であり、c(t)が総測定点に対応する振動信号値であり、s(t)が既知の振動源に対応する振動信号値であり、LMがサブ測定点に対応する振動データのタグ値であり且つLM=[lM,lt,lg,ld,lo1]であり、LCが総測定点に対応する振動データのタグ値であり且つLC=[lS,lt,lg,ld]であり、LSが既知の振動源に対応する振動データのタグ値であり且つLS=[lS,lt,lg,ld,lo2]であり、lMがサブ測定点の番号タグであり、ltがタイムスタンプタグであり、lgが異常振動タイプタグであり、lo1が総測定点に対するサブ測定点の横方向、縦方向又は垂直方向における位置情報タグであり、lSは振動が同時に発生する既知の振動源タグであり、ldが振動方向タグであり、lSが既知の振動源の番号タグであり、lo2が総測定点に対する既知の振動源の横方向、縦方向又は垂直方向における位置情報タグである。
【0013】
好ましい態様としては、前記ステップ5において、各既知の振動源振動信号の周波数領域特徴の和と総測定点振動信号の各高調波次数の周波数領域特徴との加重差の最小化を実現することを第1最適化目的とし、各既知の振動源振動信号の各高調波次数差の加重分散の最小化を実現することを第2最適化目的とする。
【0014】
更に、ステップ5において取得された振動監視結果情報を時間領域内のリアルタイム振動源振動信号に変換・復元するステップ6を含む。
【0015】
同じ発明構想に基づいて、本発明は列車車室の振動信号特徴ライブラリの構築方法を更に提供し、前記した列車車室の非侵入的な振動監視方法を含み、
リアルタイム振動源振動信号の周波数領域特徴、時間領域特徴及び画像特徴を抽出して、リアルタイム振動源振動信号の周波数領域特徴及び時間領域特徴に対して特徴融合又は特徴再構築を行うステップ7と、
ステップ7において取得された周波数領域特徴、時間領域特徴、画像特徴、特徴融合又は特徴再構築結果に基づいて、列車車室の振動信号特徴ライブラリを構築するステップ8と、を更に含むことを特徴とする。
【0016】
更に、列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける情報を利用して前記モデル1及び/又はモデル2に対してオンライン訓練を行うことを含む。
【0017】
同じ発明構想に基づいて、本発明は前記した列車車室の振動信号特徴ライブラリの構築方法で構築された列車車室の振動信号特徴ライブラリの応用方法を更に提供し、
訓練して列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける振動信号特徴と列車就役性能評価パラメータとの関係モデルを取得し、列車運行過程において、リアルタイムに取得された列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける振動信号特徴を関係モデルの入力とし、リアルタイム列車就役性能評価パラメータを出力して取得することを特徴とする。
【0018】
同じ発明構想に基づいて、本発明は前記した列車車室の振動信号特徴ライブラリの構築方法で構築された列車車室の振動信号特徴ライブラリの応用方法を更に提供し、
列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける振動信号特徴の時系列情報を利用して、時系列予測方法によって将来のある時刻での振動源での異常振動状況を予測することを特徴とする。
【0019】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
【0020】
1)非侵入的な列車車室の振動監視方法を用い、実際に監視する際に列車車室内での総測定点での振動信号のみを取得する必要があり、センサの冗長化を回避し、コストを節約し、列車の軽量化に寄与する。
【0021】
2)総測定点振動信号に対する各サブ測定点振動信号の高調波位相オフセット、高調波振幅減衰の両方と相対位置情報との関係をモデリングし、上記関係の非線形モデリングを実現することができ、振動源位置と位相オフセット、振幅減衰との関係を正確かつリアルに反映し、非侵入的な振動監視のために基礎を築き、未知の振動源の振動状況を監視することができる。
【0022】
3)非侵入的な列車車室振動監視及び振動源位置計算方法を提案し、多目的最適化方法を用いて最適な位相シフト、最適な振動信号の組み合わせを決定し、更に位相シフトと位置情報との関係によって振動源位置の計算を実現する。該方法は実際に監視する際に総測定点での振動信号のみを測定する必要があり、且つ振動源の異常振動を識別することができ、これにより異常振動の処理に根拠を提供する。
【0023】
4)非侵入的な振動源信号の収集及び多重振動信号特徴ライブラリのリアルタイム更新方法を提案し、総測定点振動信号のみを測定するうえで振動源信号の再構築を実現することができ、これによりその多重振動信号特徴ライブラリのリアルタイム更新を実現し、且つ多重振動信号特徴ライブラリは振動信号の最適化分解、振動信号の画像認識、異常振動信号の認識などにデータ基礎を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
列車の高速運行過程において、列車車室の内部は外部振動源からの影響を受けて振動が発生することとなり、車室振動は車室に接触している列車部材の運行状況を反映できる一方、乗客の快適性及び乗車体験に影響することとなり、車室振動に対して非侵入的な監視を行うことは、列車の就役性能及び異常振動の発生源の特定に重要なサポートを提供することができ、列車の安全運行の確保及び乗客の快適性の向上にとって重要な意味を持つ。
【0026】
【0027】
列車車室振動データを複数の収集点で侵入的に予め収集するステップ1
本発明においては、列車車室の非侵入的な振動監視を行う前に、初期訓練データの一部を予め収集する必要がある。該初期訓練データは複数の測定点での侵入的な収集を用い、
ステップ101においては、まず、列車車室内に複数のサブ測定点及び1つの総測定点を配置する。サブ測定点の配置ルールは、列車の複数の横方向断面に対して、横方向断面毎には列車車室の横方向振動信号を測定するための振動センサを少なくとも2つ配置すること、列車の複数の縦方向断面に対して、縦方向断面毎には列車車室の縦方向振動信号を測定するための振動センサを少なくとも2つ配置すること、列車の複数の垂直方向断面に対して、垂直方向断面毎には列車車室の垂直方向振動信号を測定するための振動センサを少なくとも2つ配置すること、である。総測定点には、それぞれ総測定点での横方向、縦方向、垂直方向における振動信号を測定するための振動センサが合計して3つ配置されている。それと同時に、列車車室外での各既知の振動源に対して、各既知の振動源には、それぞれ対応する既知の振動源での横方向、縦方向、垂直方向における振動信号を測定するための振動センサがいずれも3つ配置されている。
【0028】
ステップ102においては、実験用列車の正常運行過程(即ち、列車車室外での各既知の振動源がいずれも正常に振動している)において、車室での各サブ測定点振動信号、総測定点振動信号及び外部での既知の振動源振動信号を収集する。
【0029】
ステップ103においては、各振動源での独立振動実験(即ち、列車車室外でのいずれか1つの既知の振動源が独立して正常に振動しているが、残りの既知の振動源が振動していない)及び各振動源での異常振動実験を設計し、後者は各振動源での異常振動・独立振動実験(即ち、列車車室外でのいずれか1つの既知の振動源が独立して異常に振動しているが、残りの既知の振動源が振動していない)及び単一振動源での異常振動・複数の振動源での混合振動実験(即ち、列車車室外でのいずれか1つの既知の振動源が独立して異常に振動しているが、残りの既知の振動源が正常に振動している)に分けられ、車室での各サブ測定点振動信号、総測定点振動信号及び外部での既知の振動源振動信号を収集し、且つ同じ実験を5回繰り返す。
【0030】
ステップ104においては、ステップ102及びステップ103において取得された振動信号をデータ記憶モジュールにリアルタイムに保存し、主に、列車車室内での複数のサブ測定点の横方向、縦方向、垂直方向における振動データM=[LM,m(t)]、列車車室内での総測定点の横方向、縦方向、垂直方向における振動データC=[LC,c(t)]、列車車室外での各既知の振動源の横方向、縦方向、垂直方向における振動データS=[LS,s(t)]、のデータ記憶フォーマットを用い、m(t)がサブ測定点に対応する振動信号値であり、c(t)が総測定点に対応する振動信号値であり、s(t)が既知の振動源に対応する振動信号値であり、LMがサブ測定点に対応する振動データのタグ値であり且つLM=[lM,lt,lg,ld,lo1]であり、LCが総測定点に対応する振動データのタグ値であり且つLC=[lS,lt,lg,ld]であり、LSが既知の振動源に対応する振動データのタグ値であり且つLS=[lS,lt,lg,ld,lo2]であり、lMがサブ測定点の番号タグ(異なる車室での測定点からの信号を区別するためのもの)であり、ltがタイムスタンプタグであり、lgが異常振動タイプタグ(異常振動タイプが従来技術によって決定される)であり、lo1が総測定点に対するサブ測定点の横方向、縦方向又は垂直方向における位置情報タグであり、lsは振動が同時に発生する既知の振動源タグ(現在振動中の振動源をラベリングするためのもの)であり、ldが振動方向タグ(横方向、縦方向又は垂直方向における振動信号を区別するためのもの)であり、lSが既知の振動源の番号タグ(異なる振動源での測定点からの信号を区別するためのもの)であり、lo2が総測定点に対する既知の振動源の横方向、縦方向又は垂直方向における位置情報タグである。
【0031】
以上のタグ値は信号を送り返す振動センサIDに基づいて自動的に与えられたものであり、異常タイプタグは手動でラベリングする必要があるが、非侵入的な特徴収集を実現すると、自動的に与えられることとなる。
【0032】
ステップ2は、車室振動信号の周波数領域特徴の抽出を行い、各サブ測定点での振動データMの上位1~J次高調波信号の位相情報及び振幅情報を抽出し、総測定点での振動データCの上位1~J次高調波信号の位相情報及び振幅情報を抽出し、各既知の振動源での上位1~J次高調波信号の位相情報及び振幅情報を抽出する。具体的には、
信号の更なる分析を容易にし、且つ信号の非侵入的な監視を実現するために、初期訓練セット信号の周波数領域特徴に対して分析抽出を行う必要がある。異なる振動源で発生した振動信号はその時間周波数領域特徴並びに総振動信号測定点との高調波位相シフト、信号時間シフト及び振幅減衰などの特性が区別可能性を有し、同じ振動源での異なる異常振動状況に対応する信号特徴も一意性を有し、信号に対して時間周波数領域分析を行うことは非侵入的な監視及び特徴収集の精度を向上させることができる。
【0033】
ステップ1において測定して取得された列車車室での総測定点振動信号、サブ測定点振動信号及び振動源振動信号の信号値m(t)、c(t)及びs(t)に対してFFT変換を行い、周波数領域分析のための振動シーケンス信号が5sであり、即ち各サンプル信号に対して周波数領域分析を5sの間隔で行うと、各振動信号の1~J次高調波信号{m1(t),m2(t),…,mJ(t)}、{c1(t),c2(t),…,cJ(t)}、{s1(t),s2(t),…,sJ(t)}を取得することができ、更に振動信号の各高調波次数の振幅情報及び位相情報を取得し、即ちmA={ma1(t),ma2(t),…,maJ(t)}、cA={ca1(t),…,ca2(t),caJ(t)}、sA={sa1(t),sa2(t),…,saJ(t)}及びmB={mψ1(t),mψ2(t),…,mψJ(t)}、cB={cψ1(t),cψ2(t),…,cψJ(t)}、sB={sψ1(t),sψ2(t),…,sψJ(t)}である。ここで、mJが車室での測定点信号の第J次高調波信号を示し、sJが振動源信号の第J次高調波信号を示し、cJがある振動源信号の第J次高調波信号を示し、拡張子A及びBがそれぞれ振幅集合及び位相集合を示し、拡張子a及びψがそれぞれ振幅及び位相値を示す。
【0034】
ステップ3は、車室振動信号の高調波位相シフト、振幅減衰及び測定点位置の関係データをモデリングする。
【0035】
ステップ3において、各非総測定点での振動データと総測定点での振動データとの間の上位1~J次高調波位相差及び高調波振幅比を入力とし、総測定点に対する各非総測定点の横方向、縦方向、垂直方向における位置情報を出力とし、機械学習アルゴリズムによって訓練してモデル1を取得し、各非総測定点での振動データと総測定点での振動データとの間の上位1~J次高調波位相差を入力とし、各非総測定点での振動データと総測定点での振動データとの間の上位1~J次高調波振幅比を出力とし、機械学習アルゴリズムによって訓練してモデル2を取得し、ここで、非総測定点がサブ測定点と既知の振動源とで構成される。
【0036】
具体的には、
本発明はデータモデリング方式を用いて異なる測定点振動信号の位相シフト、振幅減衰及び測定点位置の関係を分析する。理想的な状態において、振動信号の位相オフセット、振幅減衰及び信号伝搬距離は特定関係を持つが、列車車室の材料の構造が複雑であるなどにより、従来の方法は信号オフセット、減衰及び測定点位置の本当の関係を反映することができない場合が多く、このため、本発明はデータモデリング方式を用いてそれを分析する。
【0037】
ステップ301においては、非総測定点信号(車室でのサブ測定点振動信号及び既知の振動源信号を含む)及び総測定点振動信号の高調波位相差Δψ
ki、高調波振幅比μ
ki、非測定点信号及び総測定点信号の位置関係l
oを計算し、ここで、kが信号kを代表し、iが高調波次数を代表し、複数回測定して取得された測定点での高調波位相差の平均値を取って、総測定点に対するサブ測定点又は既知の振動源での振動信号の各高調波次数の高調波位相差及び高調波振幅比
【数1】
を取得する。
【0038】
高調波位相差、高調波振幅比-総測定点の相対位置の関係データをモデリングするステップ302
(1)横方向、縦方向、垂直方向における総測定点に対する各サブ測定点及び振動源での測定点の高調波位相差、高調波振幅比データ及び総測定点に対する位置関係データを読み取って、データセットの80%を訓練セット、20%をテストセットとする。
【0039】
(2)総測定点信号に対する各非総測定点信号の高調波位相差、高調波振幅比を入力とし、Ik=[Δψk,μk]、I=[I1,I2,…Ik]であり、総測定点に対する各非総測定点の位置を出力とし、O=[lo1,lo2,…lok]である。
【0040】
(3)深いエコー状態ネットワークを用いて総測定点信号に対する各非総測定点信号の高調波位相差、高調波振幅比及び総測定点に対する各非総測定点の位置情報に対してモデリング記述を行い、深いエコー状態ネットワークのパラメータ設定については、リザーバのノード数を10として設定し、10分割交差検証を用いてリザーバの層数及び行列のスペクトル半径に対して適応決定を行い、選択範囲を[1,2,3,…,10]及び[0.1,0.2,…,0.9]とし、上記関係を正確に反映できるパラメータを選択し、最後に各非総測定点での高調波位相差及び高調波振幅比並びに総測定点に対する各非総測定点の位置情報の非線形関係モデルf1z(I)、f1h(I)、f1c(I)を構築し、それらがそれぞれ縦方向、横方向、垂直方向における振動信号関係モデルを代表する。
【0041】
各非総測定点信号の高調波位相差及び高調波振幅比の関係データをモデリングするステップ303
(1)横方向、縦方向、垂直方向における総測定点に対する各サブ測定点及び振動源での測定点の高調波位相差、高調波振幅比データを読み取って、データセットの80%を訓練セット、20%をテストセットとする。
【0042】
(2)総測定点信号に対する各非総測定点信号の高調波位相差を入力とし、
【数2】
であり、総測定点に対する各非総測定点の高調波振幅比を出力とし、O=[μ
1,μ
2,…μ
k]である。
【0043】
(3)深いエコー状態ネットワークを用いて総測定点信号に対する各非総測定点信号の高調波位相差及び高調波振幅比の関係に対してモデリング記述を行い、深いエコー状態ネットワークのパラメータ設定については、リザーバのノード数を10として設定し、10分割交差検証を用いてリザーバの層数及び行列のスペクトル半径に対して適応決定を行い、選択範囲を[1,2,3,…,10]及び[0.1,0.2,…,0.9]とし、上記関係を正確に反映できるパラメータを選択し、最後に総測定点振動信号に対する各非総測定点振動信号の高調波位相シフト及び高調波振幅比の縦方向、横方向、垂直方向における関係モデルf2z(I)、f2h(I)、f2c(I)を構築し、それらがそれぞれ縦方向、横方向、垂直方向における振動信号関係モデルを代表する。
【0044】
ステップ304は、上記ステップ302~ステップ303を高調波次数に応じてJ回繰り返して、振動信号の各高調波次数の対応関係モデルを取得する。
【0045】
列車車室での総測定点の横方向、縦方向、垂直方向におけるリアルタイム振動データCRを非侵入的に収集するステップ4
列車の高速運行過程において、列車車室の内部での総測定点のみに横方向、縦方向、垂直方向の3つの方向における総測定点のための振動センサを取り付け、3つの方向における総測定点振動信号をリアルタイムに収集し、且つタイムスタンプを記録し、4G方式でリアルタイム収集データをデータ記憶モジュールに送信し、データ伝送間隔を1分間とする。
【0046】
多目的最適化位相分解による非侵入的な振動源信号を監視し、その位相シフトを決定するステップ5
ステップ5は具体的に以下を含み、
ステップ501においては、多目的グレイウルフオプティマイザー方法を選択して振動源信号及びその位相シフト決定モデルを構築し、多目的最適化方法を選択して対応するハイパーパラメータを合理的に選択し、それについては、多目的粒子群最適化モデルを用いて対応するパラメータ、例えば最大反復回数を50、グレイウルフ数を100、アーカイブ数を50として決定する。モデル特徴ライブラリは振動源振動信号の周波数領域特徴で構成される特徴ライブラリのみを用いる。
【0047】
ステップ502においては、変数を異なる振動源及び異常振動タイプに最適化する。
【0048】
(1)独立変数は主に総測定点に対する振動源の位相オフセット、各既知の振動源の組み合わせの動作状態、異常振動タイプを含み、ここで、総測定点に対する振動源の位相オフセットは連続独立変数であって、適切な位相に最適化するためのものであり、各既知の振動源の組み合わせの動作状態及び異常振動タイプは離散独立変数であって、適切な振動源信号の発生源及び異常振動タイプに最適化するためのものであり、独立変数は、
【数3】
に示されてもよく、式中、Dが振動源の個数を限定するためのものであり、Δψが位相シフトを示し、
(2)対応する連続独立変数は、
【数4】
であり、
式中、d∈[0.5,z+0.5)、Lc
i∈(0,1)、Lg
i∈(0,1)であり、
且つD=[d+1/2]、lc
i=[Lc
i]、lg
i=[Lg
i]であり、即ちDがdの切り上げであり、lc
i、lg
iがそれぞれLc
i、Lg
iの四捨五入であり、d、lc
i、lg
iは他の特別な意味がない。
【0049】
ステップ503においては、独立変数における位相オフセットに基づいて、ステップ303において取得された総測定点振動信号に対する各非総測定点振動信号の高調波位相シフト及び高調波振幅比の縦方向、横方向、垂直方向における関係モデルf
2z(I)、f
2h(I)、f
2c(I)を利用して、各振動源信号に対応する総測定点信号部分の高調波振幅比μ
iを計算し、更に各振動源信号に対応する高調波位相
【数5】
を取得し、
【数6】
であり、
ここで、
【数7】
は事前収集データ特徴ライブラリにおけるi番目の振動源信号が総測定点で発生した振動信号の第j次高調波位相を示し、該位相が振動源信号の変成比振幅及び位相と、位相オフセットとからなるベクトルである。
【0050】
ステップ504においては、最適化目的を設定することにより、各既知の振動源振動信号の周波数領域特徴の和と総測定点振動信号の各高調波次数の周波数領域特徴との加重差の最小化を実現することを第1最適化目的とし、各既知の振動源振動信号の各高調波次数差の加重分散の最小化を実現することを第2最適化目的とする。最適化目的関数は、
【数8】
であり、
ここで、F
1及びF
2が2つの目的関数を示し、w
jが各次高調波の重みであり、
【数9】
がリアルタイム総測定点信号の第j次高調波位相値を示し、該位相がその対応する振幅及び位相で構成され、aが各既知の振動源の総数である。
【0051】
ステップ505においては、独立変数に対して多目的グレイウルフオプティマイザーを行い始めて、すべての検索結果の最適化関数値を計算し、且つ非支配解を選択してファイルに記憶する。
【0052】
ステップ506においては、検索パスを更新して新たな独立変数計画を生成する。
【0053】
ステップ507においては、検索回数It=It+1であり、Itが最大反復回数よりも小さい場合、ステップ504に戻り、そうでない場合、多目的最適化アルゴリズムを終了して、最終的なアーカイブにおける非支配解セットNSを出力する。
【0054】
ステップ508においては、非支配解セットにおける目的関数を最小にする独立変数を取って、最終的な計画とする。
【0055】
ステップ509においては、選択された最適な振動源の組み合わせ及び最適な位相オフセットに基づいて、ステップ503を実行して対応する高調波振幅比を取得し、最適な位相オフセット及び対応する高調波振幅比を入力とし、ステップ402において訓練された各非総測定点信号及び総測定点信号の高調波位相差、高調波振幅比、並びに非総測定点信号と総測定点位置との関係モデルf1z(I)、f1h(I)、f1c(I)を利用して現在振動中の振動源の位置を取得する。
【0056】
ステップ5010においては、列車車室の振動監視結果情報を出力し、前記振動監視結果情報は振動が発生する振動源の位置及び/又は振動が発生する振動源の異常振動タイプ及び/又は総測定点に対する振動が発生する振動源での上位1~J次高調波位相オフセット及び/又は総測定点に対する振動が発生する振動源での上位1~J次高調波振幅比を含む。
【0057】
ステップ5011においては、取得された振動異常位置に基づいて対応する振動削減措置を取って乗客の快適性への要求を満たし、対応する故障早期警報措置を取って故障の発生を回避する。
【0058】
ステップ6は、リアルタイム・非侵入的な振動源信号を時間領域に復元し、即ちステップ5において取得された振動監視結果情報を時間領域内のリアルタイム振動源振動信号に変換・復元する。
【0059】
ステップ601においては、ステップ5における最適化結果に基づいて、高調波位相シフト、高調波振幅比を利用して各振動源信号を復元する。まず、ステップ5において取得された最適結果の(l
c1,l
c2,…)タグに基づいて、事前収集データ特徴ライブラリにおける対応する振動源の周波数領域信号fを抽出し、下記公式に基づいて事前収集振動源信号を補正してリアルタイム振動源周波数領域信号を取得し、
【数10】
ここで、A
sr及びψ
srがリアルタイム信号の周波数領域振幅及び高調波位相を示し、A
so及びψ
soが予め収集された振動源信号の周波数領域振幅及び高調波位相を示し、μ
so及びでΔψ
soが予め収集された振動源信号の総測定点に対する高調波振幅比及び高調波位相シフトを示し、μ
sr及びΔψ
srが最適化して取得した最適な高調波位相シフト及び高調波振幅比を示す。周波数領域信号の補正過程において、各高調波近傍の振幅補正は該高調波に対応する高調波振幅比を用いる。最終的に、リアルタイム振動源信号s(f)を取得することができる。
【0060】
ステップ602においては、IFFT技術を用いてリアルタイム振動信号の周波数領域値をフーリエ逆変換して、時間領域におけるリアルタイム振動源信号を取得し、s(t)=IFFT(s(f))である。
【0061】
リアルタイム・非侵入的な振動源信号に対して特徴抽出及び特徴融合又は再構築を行うステップ7
リアルタイム振動信号に対して特徴抽出を行うステップ701
(1)信号に対して周波数領域の特徴抽出を行うことについては、ステップ6において取得されたリアルタイム振動源信号に対してステップ2において言及した周波数領域の特徴抽出方法を繰り返して、その周波数領域特徴を抽出する。
【0062】
(2)信号に対して時間領域の特徴抽出を行うことについては、リアルタイム振動源信号に対して、その時間領域特徴、例えば最大振幅、時間オフセット、5s平均値などを抽出する。
【0063】
(3)信号に対して画像の特徴抽出を行うことについては、リアルタイム振動源信号の時間領域及び周波数領域画像に対して特徴抽出を行って、画像特徴を取得する。
【0064】
リアルタイム振動信号に対して特徴融合を行うステップ702
KPCA方法を用いて時間領域、周波数領域特徴に対して特徴融合又は特徴再構築を行い、カーネル関数がガウスカーネルを用い、特徴融合過程において、特徴の累積寄与率を計算し、累積寄与率が95%よりも大きな特徴を特徴融合結果とする。すべての特徴データに対して10分割交差検証を行って最適な特徴数を決定する。
【0065】
非侵入的且つリアルタイムに更新される列車車室振動信号の多重特徴ライブラリを構築するステップ8
ステップ7において抽出した信号特徴に基づいて特徴の適用方法及び特徴の特性に応じて多重特徴ライブラリを構築し、
(1)非侵入的な振動信号の最適化分解特徴ライブラリの構築
上記ステップにおいて取得された各リアルタイム振動源信号特徴において、その周波数領域特徴は高調波位相、高調波振幅、高調波位相シフト、高調波振幅比などの特徴を含み、振動源信号の周波数領域特徴ライブラリを更に豊富化することができ、ステップ2におけるデータフォーマットでデータ記憶モジュールに記憶して、非侵入的な振動信号の多目的最適化分解特徴ライブラリのリアルタイム更新及び補足を完了する。該特徴ライブラリは非侵入的な振動監視に再び応用され得る。
【0066】
(2)非侵入的な振動信号認識特徴ライブラリの構築
上記ステップにおいて取得された異なる位置でのリアルタイム振動源信号特徴に基づいて、リアルタイムに更新される非侵入的な振動信号認識特徴ライブラリを構築することができ、該非侵入的な振動信号認識特徴ライブラリは人工知能アルゴリズムによる異なる発生源振動信号の認識に応用することができ、該リアルタイム振動源信号特徴はその周波数領域特徴、時間領域特徴、融合特徴を含む。
【0067】
(3)非侵入的な異常振動信号認識特徴ライブラリの構築
上記ステップにおいて取得された異なるリアルタイム振動源信号特徴に基づいて、その中の異常振動信号特徴に対して指定収集を行い、リアルタイムに更新される非侵入的な異常振動信号認識特徴ライブラリを構築することができる。
【0068】
(4)非侵入的且つリアルタイムに更新される列車車室の振動画像識別特徴ライブラリの構築
画像学習に基づく深層学習アルゴリズムは振動特徴をより正確に認識することができ、リアルタイム且つ非侵入的に収集された振動源信号に基づいて1つの膨大な列車車室での振動源画像特徴ライブラリを構築することができ、人工知能画像識別方法の応用のために基礎を築く。
【0069】
(5)非侵入的且つリアルタイムに更新される列車車室の振動融合特徴の構築、特徴データベースの再構築
ステップ7における特徴融合、特徴再構築方法に基づいて各振動源信号の融合特徴を取得することができ、融合特徴は振動信号の認識過程において効果がより顕著であり、非侵入的な列車車室振動信号の融合特徴ライブラリの構築は人工知能アルゴリズムの本分野での応用を促進することに役立つ。
【0070】
非侵入的なリアルタイム列車振動源信号の多重特徴ライブラリを多重に応用するステップ9
(1)列車部材の就役性能のリアルタイム評価
実験データを用いて列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける振動信号特徴と列車就役性能評価パラメータとの関係モデルを構築し、モデル構築方法はサポートベクターマシン、極限学習機械、人工ニューラルネットワーク、長短期ディープニューラルネットワークなどを用いてもよく、列車運行過程において、ステップ8によって取得された列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける振動信号特徴を関係モデルの入力とし、リアルタイム列車就役性能評価パラメータを出力して取得し、列車部材の就役性能のリアルタイム評価を実現することができる。
【0071】
(2)列車部材の故障予測
ステップ8において構築された列車車室の振動信号特徴ライブラリにおける振動信号特徴の時系列情報に基づいて、よく使用される時系列予測方法を用いて将来のある時刻での振動源での異常振動状況を予測し、列車運行過程における分間レベルの列車部材の故障予測を実現することができ、列車の安全性能のリアルタイム管理に役立つ。
【0072】
以上は図面を合わせて本発明の実施例を説明したが、本発明は上記した具体的な実施形態に限定されるものではなく、上記した具体的な実施形態は単に模式的なものであって、限定的なものではなく、当業者であれば本発明の示唆に基づき、本発明の趣旨及び特許請求の範囲で保護する範囲から外れることのない状況で、数多くの形式を創出することもでき、これらはいずれも本発明の保護範囲内に属する。