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特許7417350光学素子、光学材料、光学機器及びトリアリールアミン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】光学素子、光学材料、光学機器及びトリアリールアミン化合物
(51)【国際特許分類】
   C08F 20/34 20060101AFI20240111BHJP
   C07C 217/76 20060101ALI20240111BHJP
   C07C 217/92 20060101ALI20240111BHJP
   C07C 219/32 20060101ALI20240111BHJP
   C08F 12/00 20060101ALI20240111BHJP
   C08G 59/02 20060101ALI20240111BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
C08F20/34
C07C217/76
C07C217/92
C07C219/32 CSP
C08F12/00
C08G59/02
G02B1/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018040129
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2018165355
(43)【公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-01
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2017063817
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】田上 慶
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 輝伸
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】井口 猶二
【審判官】宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-91851(JP,A)
【文献】米国特許第7001708(US,B1)
【文献】特表2016-516084(JP,A)
【文献】特開2006-85043(JP,A)
【文献】特開2006-72293(JP,A)
【文献】特開2007-11320(JP,A)
【文献】特開2007-86522(JP,A)
【文献】特開平11-92442(JP,A)
【文献】特開2006-58822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/04
C08F 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を有する材料が単独重合又は共重合された硬化物を有することを特徴とする光学素子。
【化1】
(上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換あるいは無置換の炭素数1~10のアルキル基、重合性官能基を有する置換あるいは無置換の炭素数1~8のアルキレン基から選ばれ、R~R12は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換のアルキル基、重合性官能基を有する置換あるいは無置換のアルキレン基、又は重合性官能基から選ばれるが、R~R12のうち少なくとも一つは電子吸引性基であり、かつR1~R12のうち少なくとも一つは重合性官能基を有する。)
【請求項2】
前記重合性官能基がアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、又はエポキシ基である請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
、R、R、R10のうち少なくとも一つが電子吸引性基であり、該電子吸引性基がシアノ基又はトリフルオロメチル基である請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記光学素子はレンズ基板を有し、
前記硬化物が前記レンズ基板上に設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記光学素子は2つのレンズ基板を有し、
前記硬化物が前記2つのレンズ基板の間に設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記硬化物における前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、1.0重量%以上99重量%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記硬化物は樹脂を含み、
前記硬化物における前記樹脂の含有量が、0.01重量%以上99重量%以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記硬化物における前記一般式(1)で表される化合物の含有量が、50重量%以上99重量%以下である請求項1~5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記硬化物は樹脂を含み、
前記硬化物における前記樹脂の含有量が、0.01重量%以上50重量%以下である請求項1~5または8のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の光学素子を有する光学機器。
【請求項11】
前記光学素子がレンズであり、前記光学機器がカメラである請求項10に記載の光学機器。
【請求項12】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物。
【化2】
(上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換あるいは無置換の炭素数1~10のアルキル基、重合性官能基を有する置換あるいは無置換の炭素数1~8のアルキレン基から選ばれ、R~R12は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換のアルキル基、重合性官能基を有する置換あるいは無置換のアルキレン基、又は重合性官能基から選ばれるが、R~R12のうち少なくとも一つは電子吸引性基であり、かつR1~R12のうち少なくとも一つは重合性官能基を有する。)
【請求項13】
前記重合性官能基が、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、又はエポキシ基である請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
、R、R、R10のうち少なくとも一つが電子吸引性基であり、該電子吸引性基がシアノ基又はトリフルオロメチル基である請求項12又は13に記載の化合物。
【請求項15】
請求項12~14のいずれか一項に記載された前記化合物を有する材料が単独重合又は共重合された硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、光学材料、光学機器及びトリアリールアミン化合物に関し、特に屈折率の分散特性(アッベ数(νd))が高く、かつ2次分散特性(θg,F)が高い(高θg,F)特性を有するトリアリールアミン化合物、光学材料、光学素子及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、硝材や有機樹脂等の光学材料の屈折率は、短波長側になるにつれ徐々に屈折率が高くなる。この屈折率の波長分散性を表す指標として、アッベ数(νd)や2次分散特性(θg,F)等が挙げられる。このアッベ数やθg,F値は、各光学材料に特有の値であるが、多くの場合、ある一定の範囲内に収まっている。従来の光学材料(硝材&有機樹脂)の2次分散特性とアッベ数との関係を図1に示す。
【0003】
なお、アッベ数(νd)、2次分散特性(θg,F)は以下の式で表される。
アッベ数[νd]=(nd-1)/(nF-nC)
2次分散特性[θg,F]=(ng-nF)/(nF-nC)
(上記式において、ndは波長587.6nmでの屈折率、nFは波長486.1nmでの屈折率、nCは波長656.3nmでの屈折率、ngは波長435.8nmでの屈折率をそれぞれ表す。)
【0004】
しかし、光学材料(硝材、有機樹脂等)の構成(材料種や分子構造)を詳細に設計することにより、前記一定の範囲内の値から外れた高θg,F特性を有する光学材料も合成されている。例えば、有機樹脂であるポリビニルカルバゾール(図1中の点Aに位置する)は、汎用有機樹脂材料よりも高いθg,F特性を有している。
【0005】
一般に、屈折光学系では、分散特性の異なる硝材を組み合わせることによって色収差を減らしている。例えば、望遠鏡等の対物レンズでは分散の小さい硝材を正レンズ、分散の大きい硝材を負レンズとし、これらを組み合わせて用いることで軸上に現れる色収差を補正している。このため、レンズの構成、枚数が制限される場合や使用される硝材が限られている場合などでは、色収差を十分に補正することが非常に困難となる場合がある。このような課題を解決する方法の一つとして、異常分散特性を有するガラス材料を活用した光学素子類の設計が行われている。
【0006】
また、色収差補正機能に優れる非球面形状等を有する光学素子を製造する場合、硝材を材料として用いるより、球面ガラス等の上に有機樹脂を成形するなどした方法が量産性や成形性、形状の自由度、軽量性に優れるという利点がある。しかし、従来の有機樹脂の光学特性は、図1に示すように限られた一定の範囲内に収まっており、特異な分散特性を示す有機樹脂類は非常に少ない。
【0007】
特許文献1では、図1の点Aに位置する有機材料であるスルホン(メタ)アクリレートが、汎用の有機材料よりも高い2次分散特性(高θg,F特性)を有していることが報告されている。
【0008】
一方、トリアリールアミン化合物は、電子写真感光体、有機エレクトロニクス材料、有機非線系光学材料などに幅広く利用されている。特許文献2では、電子写真感光体の最表面層に用いる電荷輸送性化合物として、トリアリールアミン化合物が提案されている。特許文献3では、高分子バインダーに分散させてなる非線形光学活性を有する有機化合物として、トリアリールアミン化合物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2012-167019号公報
【文献】特開2007-011320号公報
【文献】特開2005-227368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1において提案されている材料は高い2次分散特性(高θg,F特性)を有しているが、近年さらに高いθg,F特性が求められている。本発明者らの検討の結果、トリアリールアミン化合物が高い2次分散特性(高θg,F特性)を示すことがわかった。しかしながら、特許文献2及び3に開示されたトリアリールアミン化合物では、光学材料として実用化(低着色、高透明)するには改善が必要であり、特に透過率の改善が必要であった。
【0011】
本発明は、この様な背景技術に鑑みて、屈折率の分散特性(アッベ数(νd))及び2次分散特性(θg,F)が高い(高θg,F特性)、すなわち色収差補正機能の高い特性を有し、なおかつ透過率が高いトリアリールアミン化合物、並びに該化合物を用いた光学材料、光学素子、及び光学機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの観点は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化1】
(上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換あるいは無置換の炭素数1~10のアルキル基、重合性官能基を有する置換あるいは無置換の炭素数1~8のアルキレン基から選ばれ、R~R12は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換のアルキル基、重合性官能基を有する置換あるいは無置換のアルキレン基、又は重合性官能基から選ばれるが、R~R12のうち少なくとも一つは電子吸引性基であり、かつR1~R12のうち少なくとも一つは重合性官能基を有する。)
本発明の他の観点は、該一般式(1)で表される化合物の重合物(硬化物)を含む光学材料である。
本発明のさらに他の観点は、該光学材料を成形してなる光学素子である。
本発明のさらに別の観点は、該光学素子を有する光学機器である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、屈折率の分散特性(アッベ数(νd))が高く、かつ2次分散特性(θg,F)が高い(高θg,F特性)、すなわち色収差補正機能の高い特性を有するトリアリールアミン化合物、それを用いた光学材料及び光学素子を提供することができる。
【0014】
また、本発明によれば、図1中の範囲A内の特性を有する光学材料を提供することができる。該光学材料により成形した光学素子を用いることで、効率良く色収差を取り除くことができる。そのため、光学系をより軽量短小化することができる。なお、以下の説明において、高θg,F特性とは図1中の範囲A内に包含された特性のことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】市販されている光学材料の2次分散特性とアッベ数の関係を示したグラフである。
図2】本発明に係る光学素子の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明につき実施の形態を挙げて詳細に説明する。
本発明の一つの観点は、下記一般式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
【化2】
(上記一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、置換あるいは無置換の炭素数1~10のアルキル基、重合性官能基を有する置換あるいは無置換の炭素数1~8のアルキレン基から選ばれ、R~R12は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、トリフルオロメチル基、置換あるいは無置換のアルキル基、重合性官能基を有する置換あるいは無置換のアルキレン基、又は重合性官能基から選ばれるが、R~R12のうち少なくとも一つは電子吸引性基であり、かつR1~R12のうち少なくとも一つは重合性官能基を有する。)
【0017】
本発明者らは、図1中の範囲A内の特性を満たし、かつ透過率が高いトリアリールアミン化合物を提供すべく鋭意検討を重ねた結果、トリアリールアミン化合物のアリール基がフルオレニル基と2つのフェニル基からなり、フェニル基の置換基に電子吸引性基を有する構造が、高い2次分散特性(高θg、F)と高い透過率を兼ね備えた材料になることを見出した。
【0018】
一般に、芳香族化合物に代表される長い共役構造を有する化合物は、汎用材料よりもバンドギャップが小さいため、紫外領域の吸収端が可視光領域側にシフトしている。その影響により、長い共役構造を有する化合物は、高屈折率特性を有するようになる。この高屈折率特性は、短波長側により大きな影響を与えるため、必然的に高2次分散特性(θg、F)化が進行し、化合物の特性が図1中の該範囲A内に収まるようになる。しかし、単純に芳香族化合物を連結して長い共役構造を構築するだけでは実用性のある材料は得られない。例えば、大きな芳香族化合物では、合成性や他の化合物との相溶性、着色の点において課題が残る。一方、トリアリールアミンは、電子供与性を有しており、共役構造を有する芳香族化合物である。共役構造が長くなれば特性(θg、F)は向上するが、共役構造が長くなり過ぎると可視光領域の短波長側で透過率が低下する。そのため、光学用材料として利用する場合は透過率向上の観点から、共役構造の長さの調整が必要である。しかし、透過率の向上を図るために、芳香族化合物の共役構造を短くする、置換基の立体障害により分子間距離を広げるなどの作用は、同時に2次分散特性(θg、F)の低下をも招く。
【0019】
本発明に係る、高い2次分散特性(高θg、F)と高い透過率を兼ね備えたトリアリールアミン化合物について、本発明者らは以下のように考えている。フェニル基の電子吸引性基による置換は、立体障害による透過率向上に加え、電子吸引による2次分散特性(θg、F)向上効果を奏するものと推察される。その結果、電子吸引性基の立体障害による2次分散特性(θg、F)の低下が抑制されるため、高い2次分散特性(高θg、F)と高い透過率を兼ね備えたトリアリールアミン化合物になると考えている。
【0020】
上記一般式(1)において、R及びRにより表される置換あるいは無置換の炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基、iso-プロピル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、iso-ペンチル基、ネオペンチル基、2-エチルへキシル基等が挙げられるが、高θg、F特性が得られるのであればこれらに限定されない。炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0021】
上記一般式(1)において、R及びRにより表される重合性官能基を有する無置換の炭素数1~8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、iso-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基等が挙げられるが、高θg、F特性が得られるのであればこれらに限定されない。好ましくはメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基である。
【0022】
上記一般式(1)において、R及びRにより表される重合性官能基を有する置換の炭素数1~8のアルキレン基としては、アルキレン基の主鎖中のCHの少なくとも1つを酸素原子に置き換えて導かれる基、アルキレン基の主鎖中のCHの少なくとも1つを硫黄原子に置き換えて導かれる基が挙げられるが、高θg、F特性が得られるのであればこれらに限定されない。
【0023】
上記一般式(1)において、R~R12により表される置換あるいは無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、iso-プロピル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられるが、高θg、F特性が得られるのであればこれらに限定されない。好ましくはメチル基、エチル基である。
【0024】
上記一般式(1)において、R~R12により表される重合性官能基を有する無置換のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基等が挙げられるが、高θg、F特性が得られるのであればこれらに限定されない。好ましくはメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基である。
【0025】
上記一般式(1)において、R~R12により表される重合性官能基を有する置換の(置換された)炭素数1~8のアルキレン基としては、アルキレン基の主鎖中のCHの少なくとも1つを酸素原子に置き換えて導かれる基、アルキレン基の主鎖中のCHの少なくとも1つを硫黄原子に置き換えて導かれる基が挙げられるが、高θg、F特性が得られるのであればこれらに限定されない。
【0026】
上記一般式(1)において、電子吸引性の置換基としては、シアノ基、ハロゲン化アルキル基、ニトロ基、アルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン化アルコキシ基、スルホニルオキシ基、ハロゲン化アルキルチオ基、フッ素基などが挙げられる。好ましくは、シアノ基、ハロゲン化アルキル基であり、より好ましくは、シアノ基、トリフルオロメチル基である。特に、R、R、R、R10のうち少なくとも一つが電子吸引性基であり、該電子吸引性基がシアノ基又はトリフルオロメチル基であることが好ましい。
【0027】
上記一般式(1)において、重合性官能基としては、活性水素基や不飽和重合性基、エポキシ基などが挙げられる。活性水素基としては、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基及びメトキシ基が挙げられ、好ましくはヒドロキシ基である。不飽和重合性基としては、ビニル基、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基が挙げられ、好ましくは、アクリロイルオキシ基及びメタクリロイルオキシ基である。
【0028】
なお、本発明において、「R~R12のうち少なくとも一つは重合性官能基を有する」という表現は、当該少なくとも一つの置換基が重合性官能基であるか、あるいは当該置換基の一部に重合性官能基を含むことを意味する。換言すれば、本発明に係るトリアリールアミン化合物おいて、重合性官能基は、フェニル基にそのまま置換していても、アルキレン基を介して間接的にフェニル基に結合していてもよい。
上記一般式(1)において、重合性官能基の数は、硬化性の観点から二つ以上が好ましく、合成容易性の観点から二つがより好ましい。
【0029】
次に、下記表1~5に、本発明に係る化合物の具体例を示すが、本発明は、これらに限定されるわけではない。また、化合物は複数組み合わせて使用してもよい。すなわち、本発明に係る光学材料は、上記一般式(1)で表される化合物の単独重合体であっても共重合体であってもよい。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
【表5】
【0035】
本発明に係るトリアリールアミン化合物の製造方法について例を挙げて説明する。
前記トリアリールアミン化合物の製造方法としては、特定の製造ルートに限定されず、どの様な製造方法でも採用することが可能である。本発明における一般式(1)で表される構造を有する誘導体は、例えば特開2000-066425号公報、特開2008-165248号公報に記載の公知の合成方法を用いて合成することが可能である。
【0036】
一般式(1)で表される構造を有する誘導体に重合性官能基を導入するためには、2つの方法がある。1つ目は、一般式(1)で表される構造を有する誘導体に、直接、重合性官能基を導入する方法である。2つ目は、一般式(1)で表される構造を有する誘導体に、重合性官能基又は重合性官能基の前駆体と成り得る官能基を有する構造を導入する方法である。2つ目の方法としては、例えばモノアリールアミン誘導体を基に、金属触媒と塩基を使用したカップリング反応を用い、官能基含有アリール基を導入する方法がある。
【0037】
一般式(1)で表される構造を有する誘導体が不飽和炭化水素基(例えばアクリル基、メタクリル基)を有するようにするためには、以下の方法が挙げられる。すなわち、ヒドロキシ基を有する一般式(1)で表される構造を有する誘導体を基に、(メタ)アクリレートを作用させる方法、あるいは一般式(1)で表される構造を有する誘導体に直接、重合性官能基を導入する方法がある。
【0038】
金属触媒によるカップリング反応は、任意に選択することが可能である。代表的な方法としては、銅を利用するウルマン反応、アミン等を利用するブッフバルト・ハートウィッグ反応、ホウ酸等を利用する鈴木カップリング、有機スズを利用するスティルカップリング、有機亜鉛を利用する根岸カップリング等が好適に用いられる。
【0039】
(メタ)アクリレート化反応は、任意に選択することが可能である。代表的な方法としては、(メタ)アクリル酸ハライドや(メタ)アクリル酸無水物を使用して水酸基をエステル化する方法、(メタ)アクリル酸の低級アルコールのエステルを使用するエステル交換反応、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドなどの脱水縮合剤を使用して(メタ)アクリル酸と該ジオールとを脱水縮合させる直接エステル化反応、(メタ)アクリル酸と該ジオールを硫酸等の脱水剤存在下で加熱する方法などが好適に用いられる。
【0040】
また、本発明のトリアリールアミン化合物については、反応時や保存時に重合が進行しないように重合禁止剤を必要に応じて使用しても良い。重合禁止剤の例としては、p-ベンゾキノン、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5-ジフェニルパラベンゾキノンなどのヒドロキノン類、テトラメチルピペリジニル-N-オキシラジカル(TEMPO)などのN-オキシラジカル類、t-ブチルカテコールなどの置換カテコール類、フェノチアジン、ジフェニルアミン、フェニル-β-ナフチルアミンなどのアミン類、ニトロソベンゼン、ピクリン酸、分子状酸素、硫黄、塩化銅(II)などを挙げることができる。この中でもヒドロキノン類、フェノチアジン及びN-オキシラジカル類が汎用性かつ重合抑制の点で好ましく、特にヒドロキノン類が好ましい。
【0041】
重合禁止剤の使用量は、前記トリアリールアミン化合物に対して、下限が、通常10ppm以上、好ましくは50ppm以上であり、上限が、通常10000ppm以下、好ましくは1000ppm以下である。少なすぎる場合は、重合禁止剤としての効果が発現しないか、発現しても効果が小さく、反応時や後処理工程での濃縮時に重合が進行するおそれがある。逆に、多すぎる場合には、例えば、後述する光学材料を製造する際の不純物となり、また、重合反応性を阻害する等の悪影響を及ぼすおそれがあり好ましくない。
【0042】
次に、本発明に係る光学材料について説明する。
本発明に係る光学材料は、上記のトリアリールアミン化合物と重合開始剤、前記重合禁止剤、さらに必要に応じて光増感剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、酸化防止剤や樹脂を含有する組成物からなる。
【0043】
本発明の光学材料に含有されるトリアリールアミン化合物の含有量は、材料全体に対して、1.0重量%以上99重量%以下、好ましくは50重量%以上99重量%以下が望ましい。
【0044】
重合開始剤には、光照射によりラジカル種を発生するものやカチオン種を発生するもの、熱によりラジカル種を発生するもの等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0045】
光照射によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、4-フェニルベンゾフェノン、4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジフェニルベンゾフェノン、4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン等であるがこれらに限定されない。
【0046】
また、光照射によりカチオン種を発生する重合開始剤としては、ヨードニウム(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]-ヘキサフルオロフォスフェートが好適な重合開始剤として挙げられるがこれに限定されない。
【0047】
さらに、熱によりラジカル種を発生する重合開始剤としては、アゾビソイソブチルニトリル(AIBN)等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシネオヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシネオヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオヘキサノエート、クミルパーオキシネオデカノエート等の過酸化物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0048】
光として紫外線等を照射して重合を開始させる場合には、公知の増感剤等を使用することもできる。増感剤の代表的なものとしては、ベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2-ジエトキシアセトフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0049】
なお、重合可能な樹脂成分に対する光重合開始剤の添加比率は、光照射量、さらには、付加的な加熱温度に応じて適宜選択することができる。また、得られる重合体の目標とする平均分子量に応じて、調整することもできる。
【0050】
本発明に係る光学材料の重合(硬化)・成形に用いる光重合開始剤の添加量は、重合可能な成分に対して0.01重量%以上10.00重量%以下の範囲が好ましい。光重合開始剤は樹脂の反応性、光照射の波長によって1種類のみを使用することもできるし、2種類以上を併せて使用することもできる。
【0051】
耐光安定剤については、成形体の光学特性に大きな影響を及ぼさないものであれば特に制限は無く、代表的なものとして、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-[5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル]-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2,2’-メチルレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)]フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール等のベンゾトリアゾール系材料、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸エチル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸 2-エチルヘキシル等のシアノアクリレート系材料、トリアジン系材料、オクタベンゾン、2,2’-4,4’-テトラヒドロベンゾフェノン等のベンゾフェノン系材料等を挙げることができる。耐光安定剤が光増感剤の役割を果たす場合もあり、その場合は添加しなくても良い。
【0052】
本発明の光学材料の重合(硬化)・成形に用いる耐光安定剤の添加量は、重合可能な成分の全量に対して、0.01重量%以上10.00重量%以下の範囲が好ましい。
【0053】
耐熱安定剤としては、成形体の光学特性に大きな影響を及ぼさないものであれば特に制限は無く、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-ert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸 3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ、C7-C9側鎖アルキルエステル、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)]プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]プロピオネート等のヒンダードフェノール系材料、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系材料、ジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート等のイオウ系材料等を使用することができる。
【0054】
酸化防止剤としては、成形体の光学特性に大きな影響を及ぼさないものであれば特に制限は無く、代表的なものとして、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート等のヒンダードアミン系材料等が挙げられる。本発明に係る光学材料の重合(硬化)・成形に用いる酸化防止剤の添加量は、重合可能な成分の全量に対して、0.01重量%以上10.00重量%以下の範囲が好ましい。
【0055】
本発明の光学材料に利用できる樹脂としては、特に制限は無く、例えば、1,3-アダマンタンジオールジメタクリレート、1,3-アダマンタンジメタノールジメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート、ステアリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソボニルアクリレート、イソボニルメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-メタクリロイルオキシ)フェニル]フルオレン、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ブチキシエチルアクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2-ビス(4-アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1-ビス(4-アクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-メタクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1-ビス(4-メタクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1-ビス(4-アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、1,1-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレート、メチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9-ジビニルスピロビ(m-ジオキサン)等のビニル化合物、ジイソプロペニルベンゼン等であるがこれらに限定されない。
【0056】
また、前記樹脂は熱可塑性樹脂でもよく、例えば、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等の1種又は2種以上のα-オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルとの1種又は2種以上のランダム又はブロック共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとプロピレン以外の1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等の1種又は2種以上のα-オレフィンとのランダム又はブロック共重合体、1-ブテン単独重合体、アイオノマー樹脂、さらにこれら重合体の混合物などのポリオレフィン系樹脂;石油樹脂、テルペン樹脂などの炭化水素原子系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXDなどポリアミド系樹脂;ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン,アクリロニトリル系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体などのポリビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリケトン樹脂;ポリメチレンオキシド樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0057】
本発明に係る光学材料に含有される樹脂の含有量は、0.01重量%以上99重量%以下、好ましくは得られる光学材料のθg,F特性や成形体の脆性を考慮すると0.01重量%以上50重量%以下であることが望ましい。
【0058】
次に、本発明に係る光学素子について図を参照しながら説明する。
本発明の光学素子は、上記の成形体を有することを特徴とする。図2は、本発明の光学素子の例を示す概略図である。図2(a)の光学素子は、光学材料(または光学用組成物)を成形加工してなる薄膜(光学部材10)がレンズ基板20の片方の面上に設けられている。図2(a)の光学素子を作製する方法としては、例えば、光透過性材料からなる基板上に膜厚の薄い層構造を形成する方法が採用される。具体的には、金属材料からなる型をガラス基板から一定の距離を置いて設け、この型とガラス基板との間にある空隙に流動性の光学材料又は光学用組成物を充填してから、軽く抑えることで、型成形を行う。そして必要に応じてその状態に保ったまま光学材料又は光学用組成物の重合を行う。
【0059】
かかる重合反応に供する光照射は、光重合開始剤を用いたラジカル生成に起因する機構に対応して、好適な波長の光、通常、紫外光もしくは可視光を用いて行う。例えば、前記基板として利用する光透過性材料、具体的にはガラス基板を介して、成形されている光学材料又は光学用組成物のモノマー等の原料に対して、均一に光照射を実施する。照射光量は、光重合開始剤を利用したラジカル生成に起因する機構に応じて、また、含有される光重合開始剤の含有比率に応じて、適宜選択される。
【0060】
一方、かかる光重合反応による光学材料又は光学用組成物の成形体の作製においては、照射される光が型成形されているモノマー等の原料の全体に均一に照射されることがより好ましい。従って、利用される光照射は、基板に利用する光透過性材料、例えばガラス基板を介して、均一に行うことが可能な波長の光を選択することが一層好ましい。この際、光透過性材料の基板上に形成する光学材料の成形体の厚さを薄くすることは、本発明にはより好適である。
【0061】
一方、図2(b)の光学素子は、前記光学用組成物を成形加工してなる薄膜(光学部材10)がレンズ基板30とレンズ基板40との間に設けられている。図2(b)の光学素子を作製する方法としては、例えば、前述した成形体の光学材料又は光学用組成物の面と、対応する別のレンズの両者の間に、同様の未硬化の光学材料又は光学用組成物等を流し込み、軽く抑えることで成形を行う。そしてこの状態に保ったまま未硬化の樹脂組成物の光重合を行う。それにより前記光学材料又は光学用組成物がレンズに挟まれた成形体を得ることができる。
【0062】
同様に、熱重合法により成形体の作製を行うこともできる。この場合、全体の温度をより均一とすることが望ましく、光透過性材料の基板上に形成する重合性組成物の成形体の総厚を薄くすることは、本発明にはより好適なものとなる。また、形成する光学用組成物の成形体の総厚を厚くする場合には、より膜厚、樹脂成分の吸収、微粒子成分の吸収を考慮した照射量、照射強度、光源等の選択が必要である。
【0063】
本発明の光学用組成物を上記の成形方法で成形した成形体は、光学素子として光学機器に用いることができる。光学素子の利用例としては、例えばカメラレンズ等が挙げられる。
【実施例
【0064】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、合成した生成物の分析は、NMR装置(日本電子(株)製JNM-ECA400(製品名))を用いて行った。
【0065】
[実施例1]
(化合物例N1の製造)
(1)N1中間体の合成
【化3】
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコに、2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレン2.0g、4-ブロモ-2-(トリフルオロメチル)フェノール5.30g、ナトリウムtert-ブトキシド2.76g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.27g、及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル0.46g、オルトキシレン70mLを入れ、130℃まで加熱した後、その温度(130℃)で10時間撹拌を行った。加熱後、室温まで放冷した後、有機相をクロロホルムで抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN1中間体2.2g(収率43%)を得た。HNMRによりその構造を確認した。
H-NMR(CDCl3):δ 1.52(s、6H)、6.96(d、1H)、7.31-7.37(m、3H)、7.44(d、1H)、7.50-7.55(m、2H)、7.67(d、1H)、7.70-7.75(m、4H)、7.93(s、1H)、11.96(s、2H)
【0066】
(2)N1の合成
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに、N1中間体2.0g、クロロホルム30mL、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)0.14g、ピリジン10mLを投入した。反応容器を0℃まで冷却し、メタクリロイルクロリド1.0mLを滴下した。反応液をトルエン30mLで希釈後に2N塩酸水溶液で反応を停止させ、得られた有機層を酸性及び塩基性水溶液で洗浄した後、飽和食塩水及び無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた。溶剤を除去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することでN1を1.25g(収率50%)得た。生成物はHNMRによりその構造を確認した。また、生成物の光学特性を表6に示す。
H-NMR(CDCl3):δ 1.49(s、6H)、1.54(s、6H)、5.88(t、2H)、6.46(t、2H)、7.10(d、1H)、7.28-7.43(m、5H)、7.63-7.71(m、4H)、7.78(d、1H)、8.10(d、1H)、8.17(d、1H)
【0067】
[実施例2]
(化合物例N22の製造)
(1)N22中間体1の合成
【化4】
窒素雰囲気下、300mL三口フラスコに、2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレン5.0g、4-ブロモベンゾニトリル4.35g、ナトリウム tert-ブトキシド6.89g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.27g、及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル0.46g、オルトキシレン180mLを入れ、130℃まで加熱した後、その温度(130℃)において10時間撹拌を行った。加熱後、室温まで放冷した後、有機相をクロロホルムで抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN22中間体1を7.5g(収率72%)得た。
【0068】
(2)N22中間体2の合成
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコに、N22中間体1の4.0g、4-ブロモベンジルアルコール3.37g、ナトリウム tert-ブトキシド4.95g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.37g、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル0.61g、オルトキシレン140mLを入れ、130℃まで加熱した後、その温度(130℃)で10時間撹拌を行った。加熱後、室温まで放冷した後、有機相をクロロホルムで抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN22中間体2を3.4g(収率63%)得た。
【0069】
(3)N22の合成
【化5】
窒素雰囲気下、100mL三口フラスコに、N22中間体2の3.0g、クロロホルム45mL、MEHQ0.27g、ピリジン10mLを投入した。反応容器を0℃まで冷却し、メタクリロイルクロリド2.1mLを滴下した。反応液をトルエン30mLで希釈後に、2N塩酸水溶液で反応を停止させ、得られた有機層を酸性及び塩基性水溶液で洗浄した後、飽和食塩水及び無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた。溶剤を除去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することでN22を1.51g(43%)得た。生成物はHNMRによりその構造を確認した。また、生成物の光学特性は表6に示す。
H-NMR(CDCl3):δ δ 1.49(s、6H)、1.53(s、6H)、5.05-5.11(m、2H)、5.50(t、1H)、6.02(t、1H)、6.85(dd、1H)、7.05(dd、1H)、7.19(d、4H)、7.30-7.36(m、2H)、7.40(d、1H)、7.48(d、4H)、7.63(d、2H)
【0070】
[実施例3]
(化合物例N31の製造)
(1)N31中間体1の合成
【化6】
窒素雰囲気下、500mL三口フラスコに、3-アミノベンゾトリフルオリド15.0g、3-ブロモベンゾトリフルオリド20.95g、ナトリウム tert-ブトキシド26.85g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム2.68g、及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル4.44g、オルトキシレン300mLを入れ、120℃まで加熱した後、その温度(120℃)において6時間撹拌を行った。加熱後、室温まで放冷した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN31中間体1を19.2g(収率68%)得た。
【0071】
(2)N31中間体2の合成
窒素雰囲気下、1L三口フラスコに、N31中間体1の15.0g、2-ブロモフルオレン12.05g、ナトリウム tert-ブトキシド18.89g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.28g、及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル0.47g、オルトキシレン500mLを入れ、120℃まで加熱した後、その温度(120℃)において10時間撹拌を行った。加熱後、室温まで放冷した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN31中間体2を10.5g(収率46%)得た。
【化7】
【0072】
(3)N31中間体3の合成
窒素雰囲気下、500mL三口フラスコにN31中間体2の9.44g、N,N-ジメチルアセトアミド160mLを入れて撹拌した後に、ナトリウム tert-ブトキシド6.77gを入れ、5℃まで冷却し、酢酸4-ブロモブチル10.21gをN,N-ジメチルアセトアミド40mLに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下後、20℃まで昇温した後、その温度(20℃)において20時間撹拌を行った。撹拌後、5℃まで冷却し、次いでナトリウムメトキシド5.44gを入れ、20℃まで徐々に昇温した。昇温後、その温度(20℃)において10時間撹拌を行った。撹拌後、氷水に反応液を投入し、トルエンで有機層を抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN31中間体3を5.5g(収率45%)得た。生成物は1HNMRによりその構造を確認した。
H-NMR(CDCl3):δ 0.71(t、2H)、1.38(d、4H)、1.60(d、4H)、1.94-2.00(m、4H)、3.22-3.29(m、4H)、7.08(dd、1H)、7.17(d、1H)、7.26-7.43(m、11H)、7.67(t、2H)
【0073】
3)N31の合成
【化8】
窒素雰囲気下、300mL三口フラスコに、N31中間体3の5.0g、テトラヒドロフラン175mL、MEHQ0.30g、トリエチルアミン4.6mLを投入した。反応容器を0℃まで冷却し、メタクリロイルクロリド2.3mLを滴下した。反応液をトルエンで希釈後に、2N塩酸水溶液で反応を停止させ、得られた有機層を酸性及び塩基性水溶液で洗浄した後、飽和食塩水及び無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた。溶剤を除去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することでN31を1.65g(27%)得た。生成物は1HNMRによりその構造を確認した。また、生成物の光学特性は表6に示す。
H-NMR(CDCl3):δ 1.42(d、4H)、1.71(d、4H)、1.78(s、6H)、2.13-2.18(m、4H)、3.22-3.27(m、4H)、5.43(t、2H)、5.80(t、2H)、6.90(dd、1H)、7.10(dd、1H)、7.22(d、4H)、7.30-7.36(m、2H)、7.42(d、1H)、7.50(d、4H)、7.65(d、2H)
【0074】
[実施例4]
(化合物例N32の製造)
(1)N32中間体1の合成
【化9】
窒素雰囲気下、300mL三口フラスコにN31中間体2の10.00g、N,N-ジメチルアセトアミド80mLを入れ撹拌後に、ナトリウム tert-ブトキシド7.17gを入れ、5℃まで冷却し、酢酸2-ブロモエチル9.25gをN,N-ジメチルアセトアミド20mLに溶解させた液を30分かけて滴下した。滴下後、20℃まで昇温した後、その温度(20℃)において20時間撹拌を行った。撹拌後、5℃まで冷却しナトリウムメトキシド5.75gを入れ、20℃まで徐々に昇温した。昇温後、その温度(20℃)において10時間撹拌を行った。撹拌後、氷水に反応液を投入し、トルエンで有機層を抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN32中間体1を4.2g(収率35%)得た。生成物は1HNMRによりその構造を確認した。
H-NMR(CDCl3):δ 0.71(t、2H)、2.21-2.27(m、2H)、2.31-2.37(m、2H)、3.02-3.12(m、4H)、7.08(dd、1H)、7.18(d、1H)、7.27-7.44(m、11H)、7.67(t、2H)
【0075】
(2)N32の合成
【化10】
窒素雰囲気下、300mL三口フラスコに、N32中間体1の3.0g、テトラヒドロフラン105mL、MEHQ0.20g、トリエチルアミン3.0mLを投入した。反応容器を0℃まで冷却し、メタクリロイルクロリド1.5mLを滴下した。反応液をトルエンで希釈後に、2N塩酸水溶液で反応を停止させ、得られた有機層を酸性及び塩基性水溶液で洗浄した後、飽和食塩水及び無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた。溶剤を除去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することでN32を1.91g(52%)得た。生成物は1HNMRによりその構造を確認した。また、生成物の光学特性は表6に示す。
H-NMR(CDCl3):δ 1.78(s、6H)、2.29-2.34(m、2H)、2.42-2.47(m、2H)、3.45-3.50(m、2H)、3.61-3.66(m、2H)、5.43(t、2H)、5.81(t、2H)、6.90(dd、1H)、7.10(dd、1H)、7.21(d、4H)、7.30-7.36(m、2H)、7.42(d、1H)、7.51(d、4H)、7.65(d、2H)
【0076】
[実施例5]
(化合物例N33の製造)
(1)N33中間体1の合成
【化11】
窒素雰囲気下、500mL三口フラスコに、2-アミノフルオレン5.0g、4-ブロモベンゾトリフルオリド12.72g、ナトリウム tert-ブトキシド10.61g、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム0.16g、及び2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル0.26g、オルトキシレン175mLを入れ、120℃まで加熱した後、その温度(120℃)において6時間撹拌を行った。加熱後、室温まで放冷した後、有機相を酢酸エチルで抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN33中間体1を5.3g(収率41%)得た。
【0077】
(2)N33中間体2の合成
【化12】
窒素雰囲気下、300mL三口フラスコにN33中間体1の5.0g、N,N-ジメチルアセトアミド50mLを入れて撹拌した後に、ナトリウム tert-ブトキシド3.58gを入れ、5℃まで冷却し、酢酸4-ブロモブチル5.35gをN,N-ジメチルアセトアミド12mLに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下後、20℃まで昇温した後、その温度(20℃)において20時間撹拌を行った。撹拌後、5℃まで冷却し、次いでナトリウムメトキシド2.87gを入れ、20℃まで徐々に昇温した。昇温後、その温度(20℃)において10時間撹拌を行った。撹拌後、氷水に反応液を投入し、トルエンで有機層を抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN33中間体2を2.6g(収率40%)得た。生成物は1HNMRによりその構造を確認した。
H-NMR(CDCl3):δ 0.69(t、2H)、1.36(d、4H)、1.62(d、4H)、1.96(dd、4H)、3.08(dd、4H)、7.10(dd、1H)、7.17(dd、4H)、7.22(d、1H)、7.32-7.40(m、2H)、7.43(d、1H)、7.51(d、4H)、7.68(t、2H)
【0078】
(3)N33の合成
【化13】
窒素雰囲気下、300mL三口フラスコに、N33中間体2の2.0g、テトラヒドロフラン70mL、MEHQ0.12g、トリエチルアミン1.8mLを投入した。反応容器を0℃まで冷却し、メタクリロイルクロリド1.0mLを滴下した。反応液をトルエンで希釈後に、2N塩酸水溶液で反応を停止させ、得られた有機層を酸性及び塩基性水溶液で洗浄した後、飽和食塩水及び無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた。溶剤を除去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することでN33を1.33g(54%)得た。生成物は1HNMRによりその構造を確認した。また、生成物の光学特性は表6に示す。
H-NMR(CDCl3):δ 1.79(t、6H)、1.41(d、4H)、1.73(d、4H)、2.12-2.19(m、4H)、3.22-3.29(m、4H)、5.43(t、2H)、5.80(t、2H)、6.91(dd、1H)、7.13(dd、1H)、7.22(d、4H)、7.30-7.38(m、2H)、7.43(d、1H)、7.54(d、4H)、7.67(d、2H)
【0079】
[実施例6]
(化合物例N34の製造)
(1)N34中間体1の合成
【化14】
窒素雰囲気下、300mL三口フラスコにN33中間体1の5.0g、N,N-ジメチルアセトアミド50mLを入れて撹拌した後に、ナトリウム tert-ブトキシド3.58gを入れ、5℃まで冷却し、酢酸2-ブロモエチル4.62gをN,N-ジメチルアセトアミド10mLに溶解させた溶液を30分かけて滴下した。滴下後、20℃まで昇温した後、その温度(20℃)において20時間撹拌を行った。撹拌後、5℃まで冷却し、ナトリウムメトキシド2.87gを入れ、20℃まで徐々に昇温した。昇温後、その温度(20℃)において10時間撹拌を行った。撹拌後、氷水に反応液を投入し、トルエンで有機層を抽出した。得られた有機相を飽和食塩水、水の順で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製することでN34中間体1を1.8g(収率30%)得た。生成物は1HNMRによりその構造を確認した。
H-NMR(CDCl3):δ 0.69(t、2H)、2.25-2.37(m、4H)、3.09(dd、4H)、7.11(dd、1H)、7.16(dd、4H)、7.22(d、1H)、7.32-7.40(m、2H)、7.43(d、1H)、7.51(d、4H)、7.68(t、2H)
【0080】
(2)N34の合成
【化15】
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコに、N34中間体1の1.7g、テトラヒドロフラン60mL、MEHQ0.11g、トリエチルアミン1.7mLを投入した。反応容器を0℃まで冷却し、メタクリロイルクロリド0.9mLを滴下した。反応液をトルエンで希釈後に、2N塩酸水溶液で反応を停止させ、得られた有機層を酸性及び塩基性水溶液で洗浄した後、飽和食塩水及び無水硫酸マグネシウムで有機層を乾燥させた。溶剤を除去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することでN34を1.20g(56%)得た。生成物は1HNMRによりその構造を確認した。また、生成物の光学特性は表6に示す。
H-NMR(CDCl3):δ 1.79(t、6H)、2.30-2.37(m、2H)、2.40-2.49(m、2H)、3.46-3.51(m、2H)、3.62-3.67(m、2H)、5.43(t、2H)、5.82(t、2H)、6.91(dd、1H)、7.11(dd、1H)、7.22(d、4H)、7.31-7.37(m、2H)、7.43(d、1H)、7.52(d、4H)、7.66(d、2H)
【0081】
[実施例7]
(化合物例N35の製造)
【化16】
実施例3で用いた2-ブロモフルオレンを3-[2-ブロモ-9-(3-ヒドロキシ-プロピル)-9H-フルオレン-9-イル]-プロパン-1-オルに代えてN35中間体1を得た以外は、実施例3と同様の反応、精製を行った。また、生成物の光学特性は表6に示す。
H-NMR(CDCl3):δ 1.52(d、4H)、1.78(s、6H)、1.90(d、4H)、3.47-3.52(m、2H)、3.60-3.65(m、2H)、5.43(t、2H)、5.81(t、2H)、6.90(dd、1H)、7.10(dd、1H)、7.21(d、4H)、7.30-7.36(m、2H)、7.42(d、1H)、7.51(d、4H)、7.65(d、2H)
【0082】
[実施例8]
(化合物例N40の製造)
実施例3で用いた3-アミノベンゾトリフルオリドを4-アミノベンゾニトリルに、3-ブロモベンゾトリフルオリドを2-ブロモ-m-キシレンに、酢酸4-ブロモブチルを酢酸2-ブロモエチルにそれぞれ代えた以外は、実施例3と同様の反応、精製を行った。また、生成物の光学特性は表6に示す。
【0083】
[実施例9]
(化合物例N23の製造)
実施例2で用いた2-アミノ-9,9-ジメチルフルオレンを3,5-ビス(トリフルオロメチル)アニリンに、4-ブロモベンゾニトリルを2-ブロモ-9,9-ジ-n-オクチルフルオレンに、4-ブロモベンジルアルコールを2-(4-ブロモフェニル)エチルアルコールにそれぞれ代えた以外は、実施例2と同様の反応、精製を行った。また、生成物の光学特性は表6に示す。
【0084】
[実施例10]
(化合物例N46の製造)
実施例3で用いた3-ブロモベンゾトリフルオリドを4-ブロモベンジルアルコールに、2-ブロモフルオレンを3-[2-ブロモ-9-(3-ヒドロキシ-プロピル)-9H-フルオレン-9-イル]-プロパン-1-オルにそれぞれ代えた以外は、実施例3と同様の反応、精製を行った。また、生成物の光学特性は表6に示す。
【0085】
[実施例11]
(化合物例N2の製造)
【化17】
窒素雰囲気下、200mL三口フラスコに、水素化ナトリウム(55%)0.4gのテトラヒドロフラン溶液60mlを入れ、N1中間体2.0gを0℃でゆっくりと添加し、同温度で1時間撹拌した。次に、アリルブロミド1.6gを添加して反応を確認した後、飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。有機相を酢酸エチルで抽出後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。有機相を濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製することでN2を1.48g(収率77%)得た。生成物は1HNMRにより、その構造を確認した。また、生成物の光学特性を表6に示す。
H-NMR(CDCl3):δ 1.54(s、6H)、4.55-4.62(m、4H)、5.43(d、2H)、5.88(t、2H)、6.46(t、2H)、7.10(d、1H)、7.27-7.42(m、5H)、7.62-7.69(m、4H)、7.78(d、1H)、8.10(d、1H)、8.17(d、1H)
【0086】
[実施例12]
(化合物例N36の製造)
【化18】
実施例11のN1中間体をN34中間体に代えた以外は実施例11と同様の反応、精製を行った。
【0087】
[比較例1]
比較例化合物R1を合成し、屈折率、分散特性(アッベ数(νd))と2次分散特性(θg,F)、透過率を比較した。結果を表6に示す。
【化19】
【0088】
[比較例2]
比較例化合物R2を合成し、屈折率、分散特性(アッベ数(νd))と2次分散特性(θg,F)、透過率を比較した。結果を表6に示す。
【化20】
【0089】
(評価)
屈折率はアッベ屈折計(カルニュー光学工業(株)製)を用いて測定した。
透過率は、光路長の異なる2種類の膜を成形し、(株)日立ハイテクノロジーズ製分光光度計U-4000(製品名)でそれぞれ測定し、450nmでの内部透過率(500μm)に換算した結果を表6に示す。
【0090】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の光学素子、光学材料、光学機器及びトリアリールアミン化合物は、屈折率の分散特性(アッベ数(νd))が高く、かつ2次分散特性(θg,F)が高く(異常分散特性)、色収差補正機能の高い特性を有するので、カメラレンズ等の複数枚のレンズを有する装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0092】
10 光学部材
20 レンズ基板
30 レンズ基板
40 レンズ基板
図1
図2