(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】状態監視システム、船舶、および状態監視方法
(51)【国際特許分類】
B63B 73/20 20200101AFI20240111BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20240111BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20240111BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B63B73/20
B63B49/00 Z
G08C15/00 D
G08C17/00 A
(21)【出願番号】P 2019082946
(22)【出願日】2019-04-24
【審査請求日】2022-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】田口 雅規
(72)【発明者】
【氏名】黒田 裕貴
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-128170(JP,A)
【文献】特開2004-354183(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0137993(US,A1)
【文献】国際公開第2008/060150(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3151038(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0349259(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0108534(KR,A)
【文献】中国実用新案第203929111(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0257819(US,A1)
【文献】特開2005-225375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 73/20
B63B 49/00
G08C 17/00
G08C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶が備える金属製の船殻の内部に格納された監視対象装置の状態を計測する計測装置と、
前記船殻の内部に格納され、前記計測装置が出力する前記監視対象装置の状態の計測値を示す状態信号を送信する信号処理装置と、
前記船殻の上部を覆う甲板の上面に設けられ、前記信号処理装置から前記状態信号を受信し、無線通信により前記状態信号を送信する第1通信装置と、
前記第1通信装置から前記状態信号を受信し、前記状態に係る情報を出力する、持ち運び可能な第2通信装置と
を備え、
前記甲板には孔が設けられ、
前記信号処理装置から送信された前記状態信号が、前記孔を通って前記第1通信装置に受信され、
前記監視対象装置を制御する制御装置を備え、
前記第2通信装置は、前記監視対象装置の制御を指示する制御指示信号を送信し、
前記第1通信装置は、前記制御指示信号を受信し、前記制御指示信号を前記制御装置に出力し、
前記監視対象装置は、前記船舶の主機関および操舵装置を備え、
前記第2通信装置は、前記船舶の航路および前記主機関の動作パターンの入力を受け付け、入力された航路および動作パターンに従って航行するための前記制御指示信号を送信し、
前記制御装置は、前記船舶の航路に基づいて前記操舵装置を制御し、前記動作パターンに基づいて前記主機関を制御する
状態監視システム。
【請求項2】
前記第2通信装置が、前記船殻の上に設けられた、非金属性の壁面を有する上部構造体の内部に設けられる
請求項1に記載の状態監視システム。
【請求項3】
前記第2通信装置は、二次電池の電力によって稼働し、
前記船殻の上に設けられた非金属性の壁面を有する上部構造体の内部に設けられ、前記第2通信装置の前記二次電池を充電するための充電装置を備える
請求項1または請求項2に記載の状態監視システム。
【請求項4】
前記第2通信装置は、
利用可能な周波数帯の複数のチャネルのうち1つのチャネルを前記状態信号の送信チャネルに設定する設定信号を前記第1通信装置に送信し、
前記複数のチャネルの中から前記状態信号を受信する受信チャネルを設定する
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の状態監視システム。
【請求項5】
船舶が備える金属製の船殻の内部に格納された監視対象装置の状態を計測する計測装置と、
前記船殻の外部に設けられ、前記監視対象装置の状態の計測値を示す状態信号を送信する第1通信装置と、
前記第1通信装置を介して前記状態信号を受信し、前記状態に係る情報を出力する、持ち運び可能な第2通信装置と、
前記監視対象装置を制御する制御装置と、
前記船舶の位置情報を計測する位置計測装置と、
を備え、
前記監視対象装置は、前記船舶の主機関および操舵装置を備え、
前記第2通信装置は、
前記主機関の駆動開始時刻から駆動終了時刻までの間に計測された前記位置情報に基づいて航路候補を特定し、
前記航路候補の選択によって前記船舶の航路の入力を受け付け、
前記主機関の動作パターンの入力を受け付け、
入力された航路および動作パターンに従って航行するために前記監視対象装置の制御を指示する制御指示信号を送信し、
前記第1通信装置は、前記制御指示信号を受信し、前記制御指示信号を前記制御装置に出力し、
前記制御装置は、前記船舶の航路に基づいて前記操舵装置を制御し、前記動作パターンに基づいて前記主機関を制御する
状態監視システム。
【請求項6】
金属製の船殻と、
前記船殻の内部に格納された監視対象装置である主機関および操舵装置と、
請求項1から
請求項5の何れか1項に記載の状態監視システムと
を備える船舶。
【請求項7】
船舶が備える金属製の船殻の内部に格納された監視対象装置の状態を計測装置が計測するステップと、
前記船殻の内部に格納された信号処理装置が、前記計測装置が出力する前記監視対象装置の状態の計測値を示す状態信号を送信するステップと、
前記船殻の上部を覆う甲板の上面に設けられた第1通信装置が、前記信号処理装置から前記状態信号を受信し、無線通信により前記状態信号を送信するステップと、
前記船殻の外部で用いられる第2通信装置が、前記第1通信装置から前記状態信号を受信するステップと、
前記第2通信装置が前記状態に係る情報を出力するステップと
を備え、
前記甲板には孔が設けられ、
前記信号処理装置から送信された前記状態信号が、前記孔を通って前記第1通信装置に受信され、
前記第2通信装置は、前記監視対象装置の制御を指示する制御指示信号を送信し、
前記第1通信装置は、前記制御指示信号を受信し、前記監視対象装置を制御する制御装置に前記制御指示信号を出力し、
前記監視対象装置は、前記船舶の主機関および操舵装置を備え、
前記第2通信装置は、前記船舶の航路および前記主機関の動作パターンの入力を受け付け、入力された航路および動作パターンに従って航行するための前記制御指示信号を送信し、
前記制御装置は、前記船舶の航路に基づいて前記操舵装置を制御し、前記動作パターンに基づいて前記主機関を制御する
状態監視方法。
【請求項8】
船舶が備える金属製の船殻の内部に格納された、前記船舶の主機関および操舵装置を備える監視対象装置の状態を計測装置が計測するステップと、
位置計測装置が前記船舶の位置情報を計測するステップと、
前記船殻の外部に設けられた第1通信装置が、前記監視対象装置の状態および前記位置情報の計測値を示す状態信号を送信するステップと、
持ち運び可能な第2通信装置が、前記第1通信装置を介して前記状態信号を受信し、前記状態に係る情報を出力するステップと、
前記第2通信装置が、前記主機関の駆動開始時刻から駆動終了時刻までの間に計測された前記位置情報に基づいて航路候補を特定するステップと、
前記第2通信装置が、前記航路候補の選択によって前記船舶の航路の入力を受け付けるステップと、
前記第2通信装置が、前記主機関の動作パターンの入力を受け付けるステップと、
前記第2通信装置が、入力された航路および動作パターンに従って航行するために前記監視対象装置の制御を指示する制御指示信号を送信するステップと、
前記第1通信装置が、前記制御指示信号を受信し、前記監視対象装置を制御する制御装置に前記制御指示信号を出力するステップと、
前記制御装置が、前記船舶の航路に基づいて前記操舵装置を制御し、前記動作パターンに基づいて前記主機関を制御するステップと
状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状態監視システム、船舶、および状態監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、大型船舶において計測データの通信を行うための無線センサネットワークを構築する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
船舶の運転者は、操舵室に設置されたモニタを監視することにより、運転状況を監視する。そのため、運転者は、運航状況の監視および船舶の操作を行うにあたって操舵室から離れることができない。
本発明の目的は、操舵室の外において運転状況を監視することができる状態監視システム、船舶、および状態監視方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、状態監視システムは、船舶が備える金属製の船殻の内部に格納された監視対象装置の状態を計測する計測装置と、前記船殻の外部に設けられ、前記監視対象装置の状態の計測値を示す状態信号を送信する第1通信装置と前記第1通信装置を介して前記状態信号を受信し、前記状態に係る情報を出力する、持ち運び可能な第2通信装置とを備える。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様に係る状態監視システムにおいて、前記第2通信装置が、前記船殻の上に設けられた、非金属性の壁面を有する上部構造体の内部に設けられるものであってよい。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様に係る状態監視システムが、前記第2通信装置は、二次電池の電力によって稼働し、前記船殻の上に設けられた非金属性の壁面を有する上部構造体の内部に設けられ、前記第2通信装置の前記二次電池を充電するための充電装置を備えるものであってよい。
【0008】
本発明の第4の態様によれば、第1から第3の何れかの態様に係る状態監視システムにおいて、前記第2通信装置は、利用可能な周波数帯の複数のチャネルのうち1つのチャネルを前記状態信号の送信チャネルに設定する設定信号を前記第1通信装置に送信し、前記複数のチャネルの中から前記状態信号を受信する受信チャネルを設定するものであってよい。
【0009】
本発明の第5の態様によれば、第1から第4の何れかの態様に係る状態監視システムが、前記監視対象装置を制御する制御装置を備え、前記第2通信装置は、前記監視対象装置の制御を指示する制御指示信号を送信し、前記第1通信装置は、前記制御指示信号を受信し、前記制御指示信号を前記制御装置に出力するものであってよい。
【0010】
本発明の第6の態様によれば、第5の態様に係る状態監視システムが、前記監視対象装置は、前記船舶の主機関および操舵装置を備え、前記第2通信装置は、前記船舶の航路および前記主機関の動作パターンの入力を受け付け、入力された航路および動作パターンに従って航行するための前記制御指示信号を送信し、前記制御装置は、前記船舶の航路に基づいて前記操舵装置を制御し、前記動作パターンに基づいて前記主機関を制御するものであってよい。
【0011】
本発明の第7の態様によれば、第6の態様に係る状態監視システムが、前記船舶の位置情報を計測する位置計測装置を備え、前記第2通信装置は、前記主機関の駆動開始時刻から駆動終了時刻までの間に計測された前記位置情報に基づいて航路候補を特定し、前記航路候補の選択によって前記船舶の航路の入力を受け付けるものであってよい。
【0012】
本発明の第8の態様によれば、船舶は、金属製の船殻と、前記船殻の内部に格納された監視対象装置である主機関および操舵装置と、第1から第7の何れかの態様に係る状態監視システムとを備える。
【0013】
本発明の第9の態様によれば、状態監視方法は、船舶が備える金属製の船殻の内部に格納された監視対象装置の状態を計測装置が計測するステップと、前記船殻の外部に設けられた第1通信装置が、前記監視対象装置の状態の計測値を示す状態信号を送信するステップと前記船殻の外部で用いられる第2通信装置が、前記第1通信装置を介して前記状態信号を受信するステップと、前記第2通信装置が前記状態に係る情報を出力するステップとを備える。
【発明の効果】
【0014】
上記態様によれば、状態監視システムは、第2通信装置を用いて船殻外の任意の場所において運転状況を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態に係る船舶の構成を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る船舶の操舵室内部の構成を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施形態に係る第2通信装置の演算装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】第2の実施形態に係る第2通信装置の演算装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】第3の実施形態に係る船舶の構成を示す概略図である。
【
図6】第3の実施形態に係る第2通信装置の演算装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図7】第3の実施形態に係る航行履歴の特定方法を示すフローチャートである。
【
図8】第3の実施形態に係る自動操船方法を示すフローチャートである。
【
図9】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〈第1の実施形態〉
《船舶の構成》
図1は、第1の実施形態に係る船舶の構成を示す概略図である。
船舶100は、船殻110と、船殻110の上部を覆う甲板130と、甲板130の上部に設けられた上部構造体150とを備える。船殻110、甲板130、および上部構造体150は、鋼鉄、アルミニウム、またはその他の金属によって構成される。上部構造体150の内部には操舵室151が形成される。上部構造体150のうち、操舵室151の前面に相当する壁面には、窓152が設けられる。窓152は、非金属性の壁面の一例である。
【0017】
船殻110には、プロペラ111および舵112が設けられる。船殻110の内部には、主機関113、回転センサ114、操舵機115、舵角センサ116、信号処理装置117が設けられる。
主機関113は、例えば、ディーゼルエンジンである。主機関113の主軸は、プロペラ111を回転させる。回転センサ114は、主機関113の主軸の回転数を計測する。操舵機115は、舵112に回転力を与える。操舵機115は、例えば油圧によって駆動する。舵角センサ116は、舵112の舵角を計測する。信号処理装置117は、回転センサ114および舵角センサ116の計測値を処理する。例えば、信号処理装置117は、回転センサ114および舵角センサ116が出力するアナログ信号をデジタル信号に変換する。
主機関113および操舵機115は、監視対象装置の一例である。回転センサ114および舵角センサ116は、計測装置の一例である。
【0018】
甲板130の上面には、信号処理装置117と有線または無線で接続される第1通信装置131が設けられる。第1通信装置131は、信号処理装置117によって処理された計測値を示す状態信号を、無線通信によって、甲板130の上方、すなわち船殻110の外部へ発信する。第1通信装置131は、例えば920MHz帯(サブギガ帯)の電波を用いて状態信号を発信する。
甲板130には、信号処理装置117と第1通信装置131とを通信可能に接続するための孔が設けられる。信号処理装置117と第1通信装置131とが有線で接続される場合、孔を通して通信用のケーブルが配される。信号処理装置117と第1通信装置131とが無線で接続される場合、孔は無線信号を通過させる。そのため、第1通信装置131のアンテナは、孔の直上に、または孔を貫通するように設けられることが好ましい。
【0019】
《操舵室の構成》
図2は、第1の実施形態に係る船舶の操舵室内部の構成を示す斜視図である。
上部構造体150の操舵室151内には、第2通信装置170と充電装置153と操舵管制装置154とが設けられる。
【0020】
第2通信装置170は、無線通信によって第1通信装置131から状態信号を受信し、主機関113および操舵機115の状態を示す情報を表示する。第2通信装置170は、演算装置171、タッチパネル172、二次電池173を備える。二次電池173は、第2通信装置170を稼働させるための電力を供給する。第2通信装置170としては、例えばタブレット端末を用いることができる。つまり、第2通信装置170は、持ち運び可能に構成される。持ち運び可能とは、少なくとも筐体の外部に電源装置を設けることなく動作可能であることをいう。
【0021】
充電装置153は、第2通信装置170の二次電池173を充電するためのクレードルである。第2通信装置170に設けられる図示しない端子と充電装置153の図示しない端子とが嵌合することにより、充電装置153から二次電池173への充電がなされる。充電装置153は、窓152に沿って窓152の近傍に設けられる。窓152は、ガラスなどの非金属(誘電体)によって構成されるため、電波を通過させる。したがって、充電装置153が窓152に沿って設けられることで、充電装置153にセットされた第2通信装置170は、窓152を通して第1通信装置131が発信する無線信号を受信することができる。特に、サブギガ帯の無線信号は、より高周波数の無線信号と比較して障害物に回り込む性質を有するため、窓152と第1通信装置131とが互いに対向しない場合にも、操舵室151の内部に無線信号を到達させることができる。
【0022】
操舵管制装置154は、運転者による操舵輪やレバーなどの操作を受け付け、操舵機115に舵角を指示する制御信号を出力する。
【0023】
つまり、第1の実施形態によれば、船舶100の運転者は、第2通信装置170を充電装置153から取り外すことで、任意の場所において船舶100の状態を監視することができる。他方、船舶100の運転者は、第2通信装置170を充電装置153に取り付けることで、第2通信装置170を充電するとともに、操舵室151の内部にて、船舶100の状態を監視することができる。これにより、第2通信装置170の充電中にも、運転者は、船舶100の状態を監視しながら操舵管制装置154を用いて操舵操作を行うことができる。つまり、二次電池173の充電量が第2通信装置170を稼働させるために十分な量に満たない場合にも、少なくとも操舵操作を行う際には、船舶100の状態を監視することができる。
【0024】
《第2通信装置の構成》
図3は、第1の実施形態に係る第2通信装置の演算装置の構成を示す概略ブロック図である。
第2通信装置170の演算装置171は、信号受信部701と表示制御部702とを備える。信号受信部701は、第1通信装置131から状態信号を受信する。表示制御部702は、受信した状態信号に基づいて表示画面を生成し、タッチパネル172に出力する。
【0025】
《作用・効果》
第1の実施形態において、回転センサ114、舵角センサ116、信号処理装置117、第1通信装置131、第2通信装置170、および充電装置153は、状態監視システムを構成する。
第1の実施形態に係る状態監視システムによれば、および操舵機115の状態を示す状態信号は、船殻110の外部に設けられた第1通信装置131から、持ち運び可能な第2通信装置170に伝送される。これにより、船舶100の運転者は、船殻110が金属製である場合にも、第2通信装置170を用いて船殻外の任意の場所において運転状況を監視することができる。
【0026】
また、第1の実施形態によれば、第2通信装置170は、非金属性の壁面である窓152を有する上部構造体150の内部に設けられる。第1通信装置131からの無線信号は窓152を通って上部構造体150の内部に到達することができるため、運転者は、上部構造体150の内部にて第2通信装置170を用いることができる。
【0027】
また、第1の実施形態に係る状態監視システムは、窓152を有する上部構造体150の内部に設けられ、第2通信装置170の二次電池173を充電するための充電装置153を備える。これにより、第2通信装置170は、二次電池173の充電中にも第1通信装置131からの無線信号を受信することができる。つまり、運転者は、第2通信装置170の充電をしながら船舶100の状態を監視することができる。
【0028】
〈第2の実施形態〉
第1の実施形態に係る状態監視システムによれば、第2通信装置170は、一の船舶100の情報を表示する。これに対し、第2の実施形態の状態監視システムによれば、第2通信装置170は、近傍を運航する複数の船舶100の情報を表示することができる。
【0029】
《第2通信装置の構成》
図4は、第2の実施形態に係る第2通信装置の演算装置の構成を示す概略ブロック図である。
第2の実施形態に係る演算装置171は、第1の実施形態の構成に加え、さらにチャネル設定部703、チャネル選択部704を備える。
チャネル設定部703は、サブギガ帯の複数のチャネルのうち、タッチパネル172を介して利用者から選択されたチャネルを状態信号の送信チャネルに設定する設定信号を、第1通信装置131に送信する。送信チャネルの設定画面は、表示制御部702によって生成され、タッチパネル172に表示される。送信チャネルの設定画面には、利用可能な複数のチャネルの一覧が含まれる。
チャネル選択部704は、信号を捕捉可能なチャネルのうち、タッチパネル172を介して利用者から選択されたチャネルを信号受信部701による受信チャネルに設定する。受信チャネルの選択画面は、表示制御部702によって生成され、タッチパネル172に表示される。受信チャネルの設定画面には、捕捉可能な複数のチャネルの一覧が含まれる。補足可能なチャネルは、例えば信号受信部701が各チャネルをスキャンすることによって特定される。
【0030】
《作用・効果》
第2の実施形態によれば、第2通信装置170は、複数のチャネルの中から状態信号を受信すべきチャネルを選択することができる。ここで、複数の船舶100が並走している状況において、予めチャネル設定部703によって各船舶100の送信チャネルが互いに異なるチャネルに設定されている場合について説明する。この場合、一の船舶100の運転者は、第2通信装置170を操作し、受信チャネルを切り替えることで、近傍の他の船舶100の状態情報を認識することができる。
これにより、運転者は、例えば複数の船舶100の運航を指揮する場合などに、他の船舶100の情報を容易に確認することができる。
【0031】
〈第3の実施形態〉
第1の実施形態に係る状態監視システムによれば、船舶100は、操舵管制装置154によって操船される。これに対し、第3の実施形態の状態監視システムによれば、第2通信装置170の操作によって船舶100を操船することができる。また第3の実施形態の状態監視システムによれば、第2通信装置170の操作によって過去の航行履歴を参照し、同じ航路に沿って操船させることができる。航行履歴は、航路候補の一例である。
【0032】
《船舶の構成》
図5は、第3の実施形態に係る船舶の構成を示す概略図である。
第3の実施形態に係る船舶100は、第1の実施形態の構成に加え、さらに制御装置118および測位装置132を備える。
制御装置118は、第1通信装置131を介して第2通信装置170から受信した指示に従って主機関113および操舵機115を制御する。
測位装置132は、GNSS(Global Navigation Satellite System)信号に基づいて船舶100の位置を測定する。
【0033】
《第2通信装置の構成》
図6は、第3の実施形態に係る第2通信装置の演算装置の構成を示す概略ブロック図である。
第3の実施形態に係る演算装置171は、第1の実施形態の構成に加え、さらに位置特定部705、航行履歴記録部706、航行履歴記憶部707、制御指示部708を備える。
【0034】
位置特定部705は、測位装置132から船舶100の位置情報を取得する。
航行履歴記録部706は、信号受信部701が受信した状態情報および位置特定部705が特定した位置情報に基づいて、船舶100の航行履歴を特定し、当該航行履歴を航行履歴記憶部707に記録する。航行履歴は、位置情報および主機関113の回転数の時系列によって示される。具体的には、航行履歴記録部706は、受信した状態情報が示す主機関113の回転数に基づいて、主機関113の駆動開始時刻および駆動終了時刻を特定し、駆動開始時刻から駆動終了時刻までの位置情報および主機関113の回転数を時系列に特定することで、航行履歴を特定する。
【0035】
制御指示部708は、航行履歴記憶部707が記憶する複数の航行履歴の中から選択された1つの航行履歴に基づいて、操舵機115の舵角および主機関113の回転数を制御する制御信号を生成し、第1通信装置131に送信する。具体的には、制御指示部708は、以下の手順で制御信号を生成する。制御指示部708は、選択された航行履歴を時間順に読み出し、直近の目標位置を決定する。制御指示部708は、選択された航行履歴において、特定した目標位置に関連付けられた主機関113の回転数を目標回転数に決定する。制御指示部708は、位置特定部705が特定した位置情報と目標位置とのずれ量に基づいて、目標舵角を決定する。目標舵角の決定は、例えばオートクルーズ機能によって実現される。制御指示部708は、決定した目標回転数および目標舵角を示す制御信号を生成する。
【0036】
《航行履歴の特定方法》
図7は、第3の実施形態に係る航行履歴の特定方法を示すフローチャートである。
信号受信部701が状態信号を受信し、位置特定部705が位置情報を取得すると(ステップS101)、航行履歴記録部706は、状態情報に含まれる主機関113の回転数を参照し、主機関113が駆動しているか否かを判定する(ステップS102)。例えば、航行履歴記録部706は、主機関113の回転数が所定の閾値以上である場合に、主機関113が駆動していると判定する。航行履歴記録部706は、主機関113が駆動していないと判定した場合(ステップS102:NO)、航行履歴を記録せずに処理を終了する。
【0037】
他方、航行履歴記録部706は、主機関113が駆動していると判定した場合(ステップS102:YES)、現在時刻を航行開始時刻として特定する(ステップS103)。航行履歴記録部706は、取得した位置情報および受信した状態情報に含まれる主機関113の回転数を内部メモリに記録する(ステップS104)。
【0038】
次の演算周期において、信号受信部701が状態信号を受信し、位置特定部705が位置情報を取得すると(ステップS105)、航行履歴記録部706は、状態情報に含まれる主機関113の回転数を参照し、主機関113が駆動しているか否かを判定する(ステップS106)。航行履歴記録部706は、主機関113が駆動していると判定した場合(ステップS106:YES)、ステップS104に戻り、位置情報および主機関113の回転数を内部メモリに保持する。このとき、航行履歴記録部706は、新たな位置情報および主機関113の回転数を、内部メモリに既に保持されている位置情報および主機関113の回転数の末尾に加えることで、位置情報および主機関113の回転数を時系列として内部メモリに保持する。
【0039】
航行履歴記録部706は、主機関113が駆動していないと判定した場合(ステップS106:NO)、現在時刻を航行終了時刻として特定する(ステップS107)。航行履歴記録部706は、内部メモリに保持された位置情報および主機関113の回転数の時系列を、ステップS103で特定した航行開始時刻およびステップS107で特定した航行終了時刻に関連付けて航行履歴記憶部707に記録する(ステップS108)。
上記処理を航行のたびに繰り返し実行することで、航行履歴記憶部707には、複数の航行履歴が記録される。
【0040】
《自動操船方法》
図8は、第3の実施形態に係る自動操船方法を示すフローチャートである。
利用者によって第2通信装置170の自動操船機能が起動されると、表示制御部702は、航行履歴記憶部707から複数の航行履歴を読み出す(ステップS201)。航行履歴の一覧を含む航行履歴選択画面を生成し、タッチパネル172に出力する(ステップS202)。航行履歴選択画面には、例えば、航行開始時刻および航行終了時刻に関連付けて、地図に重畳して航路が描かれる。運転者は、航行履歴選択画面から一の航路を選択し、タッチパネル172に入力する。
【0041】
制御指示部708は、タッチパネル172への入力に基づいて、航行履歴記憶部707が記憶する複数の航行履歴の中から選択された航行履歴を読み出す(ステップS203)。制御指示部708は、航行履歴の最初の時刻に係る位置情報を目標位置として特定する(ステップS204)。位置特定部705は、測位装置132から現在位置を示す位置情報を取得する(ステップS205)。制御指示部708は、ステップS204で特定した目標位置と、ステップS205で取得した現在位置との差が所定の距離以内であるか否かを判定する(ステップS206)。
【0042】
目標位置と現在位置との差が所定の距離以内でない場合(ステップS206:NO)、制御指示部708は、目標位置と現在位置とに基づいて目標舵角を決定する(ステップS207)。また制御指示部708は、航行情報のうち目標位置に関連付けられた主機関113の回転数を、目標回転数に決定する(ステップS208)。制御指示部708は、決定した目標舵角および目標回転数に基づいて制御指示信号を生成し、第1通信装置131に送信する(ステップS209)。第1通信装置131は、制御指示信号を制御装置118に出力することで、制御装置118が主機関113および操舵機115を制御する。そして、第2通信装置170は、ステップS205に処理を戻し、目標位置に基づいて制御指示信号を生成する。
【0043】
ステップS206において目標位置と現在位置との差が所定の距離以内である場合(ステップS206:YES)、制御指示部708は、現在の目標位置が航行情報の最後の時刻に係る位置情報であるか否かを判定する(ステップS210)。現在の目標位置が航行情報の最後の時刻に係る位置情報でない場合(ステップS210:NO)、制御指示部708は、目標位置を次の位置情報が示す位置に変更する(ステップS211)。そして、ステップS205に処理を戻し、新たな目標位置に基づいて制御指示信号を生成する。
【0044】
ステップS210において現在の目標位置が航行情報の最後の時刻に係る位置情報である場合(ステップS210:YES)、目的地に到達したので、第2通信装置170は、自動操船処理を終了する。
【0045】
《作用・効果》
このように、第3の実施形態に係る状態監視システムによれば、第2通信装置170は、主機関113および操舵機115の制御を指示する制御指示信号を送信し、第1通信装置131は、制御指示信号を受信して制御装置118に出力する。これにより、運転者は、第2通信装置170を充電装置153から取り外すことで、船殻外の任意の場所において操船操作を行うことができる。
【0046】
また、第2通信装置170は、船舶100の航路および主機関113の回転数の時系列である航行履歴の入力を受け付け、入力された航行履歴に従って航行するための制御指示信号を送信する。これにより、第2通信装置170は、過去の航路および主機関113の運転パターンに倣って船舶100を航行させることができる。特に、操舵の履歴によらず位置情報の履歴に基づいて操舵を制御することで、航行履歴に係る航行の時と潮の流れが異なる場合にも、適切に船舶100を航行させることができる。なお、第3の実施形態においては、制御指示部708において目標位置と位置情報とに基づいて舵角を決定するが、これに限られない。例えば、制御装置118がオートクルーズ機能を有する場合、制御指示部708は目標位置を送信し、制御装置118が目標位置に基づいて舵角を決定してもよい。また、他の実施形態においては、第2通信装置170が自動操船ではなく手動による操船の入力を受け付けてもよい。
【0047】
また、第2通信装置170は、主機関113の駆動開始時刻から駆動終了時刻までの間に計測された位置情報に基づいて航行履歴を特定し、航行履歴の選択によって船舶100の航路の入力を受け付ける。これにより、第2通信装置170は、運転者に航行履歴の記録を意識させることなく航行履歴を記録することができる。なお、他の実施形態においては、第2通信装置170は、航行開始および航行終了の入力を受け付け、当該航行開始から航行終了までの間に計測された位置情報に基づいて航行履歴を特定してもよい。
【0048】
なお、第3の実施形態に係る状態監視システムは、1つの船舶100を対象として操船操作を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、状態監視システムが第3の実施形態に係る操船機能に加え、第2の実施形態に係るチャネルの選択機能を有することで、1つの第2通信装置170によって複数の船舶の操船を行ってもよい。
【0049】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。例えば、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0050】
他の実施形態に係る第2通信装置170は、窓152に沿って、充電装置153に加えてまたは代えて中継装置を備えてもよい。この場合、第2通信装置170は、中継装置を介して第1通信装置131が発信する状態信号を受信することで、窓152から離れた位置においても船舶100の状態を表示することができる。また他の実施形態においては、中継装置が船殻110内(例えば機関室)に設けられてもよい。これにより、運転者は、船殻内でも第2通信装置170を用いて船舶100の状態を表示することができる。
【0051】
他の実施形態においては、状態監視システムは、2つ以上の第2通信装置170を備えてもよい。ただし、第3の実施形態のように第2通信装置170を用いた操船を行う場合には、操船機能を実施可能な第2通信装置170を1台に定める必要がある。
【0052】
〈コンピュータ構成〉
図9は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ900は、プロセッサ901、メインメモリ902、ストレージ903、インタフェース904を備える。
上述の演算装置171および制御装置118は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムをストレージ903から読み出してメインメモリ902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ902に確保する。プロセッサ901の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0053】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0054】
ストレージ903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムをメインメモリ902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0055】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
100 船舶
110 船殻
111 プロペラ
112 舵
113 主機関
114 回転センサ
115 操舵機
116 舵角センサ
117 信号処理装置
118 制御装置
130 甲板
131 第1通信装置
132 測位装置
150 上部構造体
151 操舵室
152 窓
153 充電装置
154 操舵管制装置
170 第2通信装置
173 二次電池
171 演算装置
172 タッチパネル
701 信号受信部
702 表示制御部
703 チャネル設定部
704 チャネル選択部
705 位置特定部
706 航行履歴記録部
707 航行履歴記憶部
708 制御指示部
900 コンピュータ
901 プロセッサ
902 メインメモリ
903 ストレージ
904 インタフェース