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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/86 20180101AFI20240111BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240111BHJP
   F24F 11/74 20180101ALI20240111BHJP
【FI】
F24F11/86
F25B1/00 387Z
F25B1/00 361A
F25B1/00 371M
F25B1/00 381D
F25B1/00 383
F24F11/74
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019098835
(22)【出願日】2019-05-27
(65)【公開番号】P2020193746
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 孝二
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特許第6309169(JP,B2)
【文献】特開平06-018104(JP,A)
【文献】国際公開第2016/016918(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/089938(WO,A1)
【文献】特開2000-046401(JP,A)
【文献】国際公開第2014/109193(WO,A1)
【文献】特開2013-053818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機の運転周波数が所定周波数以下での運転が一定時間継続された場合に、前記圧縮機の最低周波数を一時的に上昇させる最低周波数上昇制御を行う空気調和機であって、
前記最低周波数上昇制御の開始と同時に、サーモオフ条件を、通常のサーモオフ条件よりもサーモオフが発生しにくい条件に変更し、
前記サーモオフ条件の変更は、冷房時にはサーモオフ温度を下げる変更、暖房時にはサーモオフ温度を上げる変更を含むものであり、
前記最低周波数上昇制御は、当該最低周波数上昇制御の開始から第1所定時間経過後に終了するものであり、
前記最低周波数上昇制御の開始時に変更された前記サーモオフ温度は、当該最低周波数上昇制御の開始から前記第1所定時間よりも長い第2所定時間経過後に元に戻されることを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機であって、
前記最低周波数上昇制御の実施中には、サーモオフが発生しにくくなる運転条件の変更を併せて実施することを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
圧縮機の運転周波数が所定周波数以下での運転が一定時間継続された場合に、前記圧縮機の最低周波数を一時的に上昇させる最低周波数上昇制御を行う空気調和機であって、
前記最低周波数上昇制御の開始と同時に、サーモオフ条件を、通常のサーモオフ条件よりもサーモオフが発生しにくい条件に変更し、
さらに前記最低周波数上昇制御の実施中には、サーモオフが発生しにくくなる運転条件の変更を併せて実施し、
前記運転条件の変更は、室内機における風向を、天井または壁側に向けた風向とする変更を含むことを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
圧縮機の運転周波数が所定周波数以下での運転が一定時間継続された場合に、前記圧縮機の最低周波数を一時的に上昇させる最低周波数上昇制御を行う空気調和機であって、
前記最低周波数上昇制御の開始と同時に、サーモオフ条件を、通常のサーモオフ条件よりもサーモオフが発生しにくい条件に変更し、
前記最低周波数上昇制御の実施中に室温がサーモオフ条件に近づいた場合、最低周波数の上昇を一時的に解除することを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)を利用する空気調和機は、圧縮機を作動させて冷媒をサイクル内で循環させるようになっている。圧縮機の内部には、稼働部材の動きを良好にするために潤滑用のオイルが注入されている。
【0003】
圧縮機の作動中、オイルの一部は冷媒に溶け込み、冷媒と共に圧縮機外部に出ていく。圧縮機外部に出て行ったオイルは、サイクルを循環した後で再び圧縮機へ戻ってくるが、圧縮機の運転周波数(以下、圧縮機周波数と称する)が低く、配管内の流速が低い場合にはオイルの返油性が悪くなる。
【0004】
圧縮機周波数は、通常、室温と設定温度との温度差が大きい状態(例えば、空気調和機の運転開始直後)では高くなり、室温が設定温度に近づいて温度差が小さくなるにつれて低くなる。また、圧縮機周波数には運転範囲が設定されており、特に圧縮機周波数の下限値として最低周波数が設定されている。そして、室温と設定温度との温度差が小さく、圧縮機周波数が低い状態(最低周波数に近い状態)で長時間運転が継続されると、圧縮機においてオイル不足が生じる恐れがある。このため、従来の空気調和機では、圧縮機周波数が低い状態で長時間運転が継続されると、圧縮機の最低周波数を一時的に上昇させてオイルの返油性を上げる制御(以下、最低周波数上昇制御)が行われている。
【0005】
しかしながら、室温と設定温度との温度差が小さい状態で圧縮機周波数を上げると、これによって、部屋の温度が暖房時には上がりすぎたり冷房時には下がりすぎたりして、サーモオフが発生しやすくなる。また、サーモオフによって圧縮機が停止した後は、信頼性確保のため、所定時間(3分程度)は圧縮機を再起動させないようになっている。サーモオフが発生すると、その間、空気調和機は運転停止となるため、サーモオフの頻繁な発生は快適性の低下(室温の変動)や空気調和機の効率低下に繋がる。
【0006】
特許文献1には、サーモオフ条件が成立した場合(冷房時においては室内吸込み温度がサーモオフ設定温度以下、暖房時においては室内吸込み温度がサーモオフ設定温度以上となった場合)に、現在の圧縮機周波数が最低周波数よりも高ければサーモオフ猶予制御可と判断し、圧縮機の最低周波数を一時的に下げて運転を継続するサーモオフ猶予制御を行うようにした空気調和機が開示されている。
【0007】
一方、特許文献2には、圧縮機内部の油(潤滑用オイル)濃度を推定し、油濃度が基準値を下回る場合には、サーモオフ条件が成立しても圧縮機の運転を継続させるようにした空気調和機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5932759号公報
【文献】特許第6309169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1におけるサーモオフ猶予制御は、サーモオフによる空気調和機の断続運転を極力避けることができるが、サーモオフ猶予制御期間中は圧縮機の最低周波数が下げられるため、オイルの返油性はより悪化する。すなわち、特許文献1の空気調和機は、圧縮機周波数が低い状態で運転が継続される場合の圧縮機のオイル不足を解決できるものではない。
【0010】
また、特許文献2における空気調和機は、油濃度が基準値を下回る場合には、サーモオフ条件が成立しても圧縮機の運転を継続させるものであるため、油濃度が基準値を下回る間、サーモオフは発生しなくなる。しかしながら、特許文献2の空気調和機では、油濃度が基準値を下回っている間はサーモオフができないため、室温と設定温度との温度差が大きくなりすぎて快適性が大きく損なわれる恐れがある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、圧縮機の最低周波数上昇制御時において、サーモオフの発生を抑制しながら空気調和機の信頼性や快適性も確保できる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、圧縮機の運転周波数が所定周波数以下での運転が一定時間継続された場合に、前記圧縮機の最低周波数を一時的に上昇させる最低周波数上昇制御を行う空気調和機であって、前記最低周波数上昇制御の開始と同時に、サーモオフ条件を、通常のサーモオフ条件よりもサーモオフが発生しにくい条件に変更することを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、空気調和機の信頼性を確保するために最低周波数上昇制御を実施したときに、最低周波数上昇制御の開始と同時にサーモオフの発生を抑制できるようなサーモオフ条件の変更を行うことで、サーモオフの頻繁な発生を抑制することができ、空気調和機の信頼性や快適性が確保できる。
【0014】
また、上記空気調和機では、前記サーモオフ条件の変更は、冷房時にはサーモオフ温度を下げる変更、暖房時にはサーモオフ温度を上げる変更を含むものであり、前記最低周波数上昇制御は、当該最低周波数上昇制御の開始から第1所定時間経過後に終了するものであり、前記最低周波数上昇制御の開始時に変更された前記サーモオフ温度は、当該最低周波数上昇制御の開始から前記第1所定時間よりも長い第2所定時間経過後に元に戻される構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、冷房時にはサーモオフ温度を下げる変更、暖房時にはサーモオフ温度を上げる変更を行うことで、最低周波数上昇制御時のサーモオフを抑制することができる。また、変更されたサーモオフ温度は、最低周波数上昇制御の終了からしばらくたってから戻されるため、最低周波数上昇制御の終了と同時にサーモオフが発生することも抑制できる。
【0016】
また、上記空気調和機は、前記最低周波数上昇制御の実施中には、サーモオフが発生しにくくなる運転条件の変更を併せて実施する構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、最低周波数上昇制御の実施時に、運転条件の変更によってサーモオフ条件がより成立しにくくなり、最低周波数上昇制御時のサーモオフをより効果的に抑制できる。
【0018】
また、上記空気調和機では、前記運転条件の変更は、室内ファンおよび/または室外ファンの回転数を低下させる変更を含む構成とすることができる。
【0019】
また、上記空気調和機では、前記運転条件の変更は、室内機における風向を、風量が少なくなるような風向とする変更を含む構成とすることができる。
【0020】
また、上記空気調和機は、前記最低周波数上昇制御の実施中にサーモオフ条件に近づいた場合、最低周波数の上昇を一時的に解除する構成とすることができる。
【0021】
上記の構成によれば、最低周波数上昇の一時的解除によってサーモオフ条件の成立を回避することができ、最低周波数上昇制御時のサーモオフをより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の空気調和機は、空気調和機の信頼性を確保するために最低周波数上昇制御を実施したときに、最低周波数上昇制御の開始と同時にサーモオフの発生を抑制できるようなサーモオフ条件の変更を行うことで、サーモオフの頻繁な発生を抑制し、空気調和機の信頼性や快適性が確保できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施の形態1に係る空気調和機の概略構成図である。
図2】実施の形態1に係る制御を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1の制御の実施時における室温の変化と圧縮機周波数の変化とを示すグラフであり、(a)が室温の変化、(b)が圧縮機周波数の変化を示している。
図4】実施の形態2に係る制御を示すフローチャートである。
図5】実施の形態2の制御の実施時における室温の変化と圧縮機周波数およびファン回転数の変化とを示すグラフであり、(a)が室温の変化、(b)が圧縮機周波数およびファン回転数の変化を示している。
図6】実施の形態3に係る制御を示すフローチャートである。
図7】実施の形態3の制御の実施時における室温の変化と圧縮機周波数の変化とを示すグラフであり、(a)が室温の変化、(b)が圧縮機周波数の変化を示している。
図8】実施の形態3の制御の実施時における圧縮機周波数の変化の別例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
〔実施の形態1〕
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態1に係る空気調和機10の概略構成図であり、空気調和機10において適用される冷凍サイクルを示している。
【0025】
空気調和機10は、室内ユニット(室内機)100および室外ユニット(室外機)110により構成されている。空気調和機10における冷凍サイクルの経路上には、室内ユニット100側に室内熱交換器101が備えられており、室外ユニット110側に圧縮機111、室外熱交換器112、四方弁113および膨張弁114が備えられている。また、室内ユニット100には、室内熱交換器101で熱交換された空気を室内に送り出すための室内ファン102が備えられており、室外ユニット110には、室外熱交換器112に空気を送るための室外ファン115が備えられている。
【0026】
四方弁113は、空気調和機10の暖房/冷房運転に応じて、冷媒の循環の向きを切り替えるものである(図1は暖房運転時の状態を示している)。暖房運転時には、圧縮機111、四方弁113、室内熱交換器101、膨張弁114、室外熱交換器112、四方弁113、圧縮機111の順で冷媒が循環する。すなわち、暖房運転時には、室内熱交換器101が凝縮器、室外熱交換器112が蒸発器として機能する。一方、冷房運転時には、圧縮機111、四方弁113、室外熱交換器112、膨張弁114、室内熱交換器101、四方弁113、圧縮機111の順で冷媒が循環する。すなわち、冷房運転時には、室外熱交換器112が凝縮器、室内熱交換器101が蒸発器として機能する。
【0027】
また、空気調和機10は、室内温度(室温)を検知するための室温センサ121を有している。室温センサ121は、例えば、室内熱交換器101における空気の吸込み温度を室温として検知する。
【0028】
本実施の形態1に係る空気調和機10は、圧縮機周波数が低い状態で長時間運転が継続されると、圧縮機111の最低周波数を一時的に上昇させてオイルの返油性を上げる最低周波数上昇制御を行うことを前提とする。そして、最低周波数上昇制御開始からの一定期間において、サーモオフの発生を抑制しながら、快適性の低下や空気調和機の効率低下をも抑制するできる制御方法に特徴を有する。図2は、本実施の形態1に係る制御(以下、本制御と称する)を示すフローチャートである。尚、本制御が適用される場合の空気調和機10の運転は、暖房運転であっても冷房運転であってもよい。また、本制御は、空気調和機10における制御部(図示せず)にて実行される。
【0029】
空気調和機10の運転中は、最低周波数上昇制御の要否が確認されている。具体的には、空気調和機10は、圧縮機111の運転が所定周波数以下(最低周波数付近)で一定時間(例えば30分)継続されているか否かを監視している(S1)。S1でYESとなった場合は、最低周波数上昇制御が開始され、同時に時間積算が開始される(S2)。この最低周波数上昇制御は、圧縮機111の最低周波数を一時的に上昇させてオイルの返油性を上げ、空気調和機10の信頼性を確保するために実施されるものである。
【0030】
本制御では、最低周波数上昇制御を開始するとき、同時にサーモオフ条件の変更を行う(S3)。この変更は、空気調和機10のサーモオフが生じにくくするための変更である。すなわち、最低周波数上昇制御は、室温と設定温度との温度差が小さい状態で発生するものであり、この状態で圧縮機周波数を上げると室温の上がりすぎ(暖房時)または下がりすぎ(冷房時)によってサーモオフが発生しやすくなる。但し、サーモオフの頻繁な発生は、快適性の低下や空気調和機の効率低下に繋がるため、本制御では、サーモオフ条件の変更によって最低周波数上昇制御時のサーモオフ発生を抑制するようにしている。
【0031】
空気調和機10における通常のサーモオフは、冷房時には室温がサーモオフ温度以下となる状態が一定時間(サーモオフ判定時間)続いた場合、暖房時には室温がサーモオフ温度以上となる状態が一定時間(サーモオフ判定時間)続いた場合に発生する。尚、サーモオフ温度は、空気調和機10の運転状態(冷房or暖房)および設定温度に応じて予め設定されている。
【0032】
S3におけるサーモオフ条件の変更としては、サーモオフ温度および/またはサーモオフ判定時間を変更することが考えられる。サーモオフ温度を変更する場合、冷房時にはサーモオフ温度が通常時よりも下げられ、暖房時にはサーモオフ温度が通常時よりも上げられる。また、サーモオフ判定時間を変更する場合は、サーモオフ判定時間が通常時よりも長くされる。これらの変更により、サーモオフ条件が変更されている間は、通常時よりもサーモオフが発生しにくくなる。
【0033】
最低周波数上昇制御開始から第1所定時間(例えば3分)が経過すると(S4でYES)、最低周波数上昇制御が終了する(S5)。さらに、最低周波数上昇制御開始から第2所定時間(例えば5分)が経過すると(S6でYES)、S3で変更されたサーモオフ条件を元に戻し、積算時間をリセットする(S7)。S7の後は、処理は再びS1へ戻る。
【0034】
図3は、本制御の実施時における室温の変化と圧縮機周波数の変化とを示すグラフであり、(a)が室温の変化、(b)が圧縮機周波数の変化を示している。また、図3のグラフは、本制御を冷房運転時に適用した場合を例示している。
【0035】
図3(a)に示すように、室温は空気調和機10の運転開始から下がり始め、室温が設定温度に到達すると、空気調和機10は室温を維持するように運転を継続する。また、図3(b)に示すように、圧縮機周波数は、室温が低下するにつれて小さくなり、室温が設定温度に維持されている間は最低周波数付近で維持される。そして、圧縮機周波数が最低周波数付近で維持される状態が一定時間(例えば30分)継続すると、空気調和機10は最低周波数上昇制御を開始する。図3では、時刻t0が最低周波数上昇制御の開始時刻を示している。
【0036】
最低周波数上昇制御が開始されると、圧縮機周波数は、上昇させた最低周波数まで上昇する。そして、圧縮機周波数の上昇に伴い、室温は設定温度から低下し始める。但し、本制御では、最低周波数上昇制御の開始と同時にサーモオフ条件が変更される。図3の例では、最低周波数上昇制御の開始と同時にサーモオフ温度が下げられている。このようにサーモオフ温度を下げることで、最低周波数上昇制御によるサーモオフの発生を抑制することができる。
【0037】
最低周波数上昇制御開始から第1所定時間Δt1が経過すると、最低周波数上昇制御が終了し、上昇させた最低周波数が元に戻され、圧縮機周波数も低下する。そして、圧縮機周波数の低下に伴い、室温も上昇し始める。そして、低周波数上昇制御開始から第2所定時間Δt2(>Δt1)が経過すると(すなわち、最低周波数上昇制御の終了からしばらくたつと)、変更されていたサーモオフ温度が元に戻される。
【0038】
ここで、変更されたサーモオフ温度を、最低周波数上昇制御の終了と同時に元に戻さず、最低周波数上昇制御の終了からしばらくたってから戻すのは、最低周波数上昇制御の終了と同時にサーモオフが発生することを防止するためである。すなわち、最低周波数上昇制御の終了時点では、室温が通常のサーモオフ温度よりも低くなっている可能性が高く、この時点でサーモオフ温度を元に戻すと、最低周波数上昇制御の終了と同時にサーモオフが発生する恐れがある。
【0039】
尚、S3におけるサーモオフ条件の変更を、図3に示すようなサーモオフ温度の変更で行う場合には、上述した理由により、変更したサーモオフ条件は最低周波数上昇制御の終了からしばらくたってから戻すことが好ましい。但し、本発明はこれに限定されるものではなく、S3におけるサーモオフ条件の変更をサーモオフ判定時間の変更とする場合には、変更したサーモオフ条件は最低周波数上昇制御の終了と同時に戻されるものであってもよい。
【0040】
以上のように、本実施の形態1に係る制御は、空気調和機10の信頼性を確保するために最低周波数上昇制御を実施したときに、最低周波数上昇制御中および制御終了後の一定期間において、サーモオフの発生を抑制できるようなサーモオフ条件の変更を行う。これにより、サーモオフの頻繁な発生を抑制し、快適性の低下や空気調和機10の効率低下を抑制することができる。
【0041】
また、サーモオフ条件が変更されている間は、サーモオフの発生が抑制されるのみであって、サーモオフが発生しなくなるものではない(変更後のサーモオフ条件が成立すればサーモオフは発生する)。したがって、サーモオフ条件が変更されている間も、室温と設定温度との温度差が大きくなりすぎて快適性が大きく損なわれるといった不都合は生じず、快適性を確保できる。
【0042】
〔実施の形態2〕
上記実施の形態1では、最低周波数上昇制御を開始するときに、サーモオフが生じにくくするためのサーモオフ条件の変更を行う制御を例示した。本実施の形態2では、このようなサーモオフ条件の変更だけでなく、さらに、サーモオフが生じにくくするための運転条件の変更を行う制御を例示する。
【0043】
図4は、本実施の形態2に係る制御(以下、本制御と称する)を示すフローチャートである。尚、図4に示す制御は、図2の制御におけるS3およびS5のステップを、S13およびS15のステップに置き替えたものである。このため、図2の制御と同様のステップについては詳細な説明を省略する。
【0044】
本制御では、最低周波数上昇制御を開始するとき、同時にサーモオフ条件の変更と運転条件の変更とを行う(S13)。ここでの運転条件の変更は、空気調和機10のサーモオフが生じにくくするための変更である。
【0045】
S13における運転条件の変更としては、例えば、室内ファン102および/または室外ファン115の回転数を低下させ、空気調和機10の能力を低下させることが考えられる。すなわち、空気調和機10の能力を低下させれば、最低周波数上昇制御中に室温と設定温度の温度差が大きくなりすぎることを抑制でき、サーモオフ条件がより成立しにくくなる(サーモオフが抑制できる)。特に、室内ファン102の回転数を低下させれば、室内温度の変動が抑制されるため、サーモオフを生じにくくするうえで有効である。
【0046】
S13で変更された運転条件は、最低周波数上昇制御開始から第1所定時間が経過し(S4でYES)、最低周波数上昇制御の終了と同時に元に戻される(S15)。
【0047】
図5は、本制御の実施時における室温の変化と圧縮機周波数およびファン回転数の変化とを示すグラフであり、(a)が室温の変化、(b)が圧縮機周波数およびファン回転数の変化を示している。また、図5のグラフは、本制御を冷房運転時に適用した場合を例示している。
【0048】
本制御では、最低周波数上昇制御が開始される時刻T0において、サーモオフ条件の変更(サーモオフ温度の変更)と併せて運転条件の変更が行われる。図5の例では、運転条件の変更として、室内ファン102および室外ファン115の回転数を低下させている。最低周波数上昇制御が開始されると、圧縮機周波数の上昇に伴って室温は設定温度から低下し始めるが、このとき、運転条件の変更によって室温の低下を緩やかにすることができる。これにより、サーモオフ条件がより成立しにくくなり、最低周波数上昇制御時のサーモオフをより効果的に抑制できる。
【0049】
最低周波数上昇制御開始から第1所定時間Δt1が経過すると、最低周波数上昇制御が終了し、上昇させた最低周波数が元に戻されると同時に、変更された運転条件も元に戻される。
【0050】
尚、上記説明では、運転条件の変更として、室内ファン102および/または室外ファン115の回転数を低下させることを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、空気調和機10の能力を低下させるような運転条件の変更であればよい。例えば、室内ユニット100における風向を、風量が少なくなるような風向に変更する(風向を天井や壁側に向ける)ことも可能である。
【0051】
〔実施の形態3〕
上記実施の形態1,2では、最低周波数上昇制御中、最低周波数は常に上昇した状態とされている。これに対し、本実施の形態3に係る制御では、最低周波数上昇制御中においても、最低周波数上昇の一時的解除を行うことで、より確実にサーモオフを抑制しようとするものである。
【0052】
図6は、本実施の形態3に係る制御(以下、本制御と称する)を示すフローチャートである。尚、図6に示す制御は、図2の制御において、S4のNO判定の後ろにS28およびS29のステップを付け加えたものである。このため、図2の制御と同様のステップについては詳細な説明を省略する。また、本制御では、実施の形態2で説明した運転条件の変更を行っていないが、S3およびS5を図4のS13およびS15に置き換えることで、実施の形態2と同様に運転条件の変更を追加することも可能である。
【0053】
本制御では、最低周波数上昇制御の開始後、第1所定時間が経過するまで(最低周波数上昇制御の終了まで)は、S28およびS29のステップが繰り返し実行される。S28では、S3で変更されたサーモオフ条件に近づいたか否かが判定される。この判定は、例えば、室温とサーモオフ温度との温度差を所定の閾値と比較し、当該温度差が閾値よりも小さくなればサーモオフ条件に近づいたものと判定することができる。S28の判定がYESであれば処理はS29に移行し、NOであればS4に戻る。
【0054】
サーモオフ条件に近づいた場合(S28でYES)、空気調和機10は、最低周波数上昇を一時的に解除する(S29)。すなわち、最低周波数上昇制御によって上昇させた最低周波数が一時的に元に戻される。尚、最低周波数上昇の一時的な解除は、予め定められた一定時間(例えば1分)だけ行われるものであり、この一定時間が経過すると最低周波数は再び上昇させられる。また、最低周波数上昇が解除されている間は、S2で開始された時間積算も一時的に停止する。
【0055】
本制御では、最低周波数上昇制御中であっても、サーモオフ条件に近づくと最低周波数上昇が一時的に解除される(最低周波数上昇制御の終了ではない)。すなわち、最低周波数上昇の一時的解除によってサーモオフ条件の成立を回避することができ、最低周波数上昇制御時のサーモオフをより確実に抑制することができる。また、最低周波数上昇の解除中は時間積算も一時的に停止するため、最低周波数を上昇させている期間が短くなることはなく、最低周波数上昇制御によってオイルの返油性を上げることも十分に行える。すなわち、本制御において、最低周波数上昇の一時的解除によって空気調和機10の信頼性が低下することもない。
【0056】
図7は、本制御の実施時における室温の変化と圧縮機周波数の変化とを示すグラフであり、(a)が室温の変化、(b)が圧縮機周波数の変化を示している。また、図7のグラフは、本制御を冷房運転時に適用した場合を例示している。
【0057】
本制御では、時刻T0において最低周波数上昇制御が開始されるが、最低周波数上昇制御中もサーモオフ条件に近づくと(図3(a)の例では、室温がサーモオン温度に近づくと)最低周波数上昇が一時的に解除される。この解除に伴って圧縮機周波数が一時的に低下すると、室温は増加に転じてサーモオフ条件から遠ざかり、サーモオフ条件の成立を回避することができる。これにより、本制御では、最低周波数上昇制御時のサーモオフをより確実に抑制することができる。
【0058】
尚、図7では、最低周波数上昇制御開始から第1所定時間Δt1’の経過後に最低周波数上昇制御が終了している。但し、この第1所定時間Δt1’では、最低周波数の上昇が解除されている間は時間積算が一時的に停止される。このため、図7の第1所定時間Δt1’は、図3および図5における第1所定時間Δt1よりも長くなる可能性がある。同様に、最低周波数上昇制御開始から第2所定時間Δt2’にサーモオフ条件の変更が解除されているが、この第2所定時間Δt2’では、最低周波数の上昇が解除されている間は時間積算が一時的に停止される。このため、図7の第2所定時間Δt2’は、図3および図5における第2所定時間Δt2よりも長くなる可能性がある。
【0059】
また、上記説明では、サーモオフ条件に近づいたときには、最低周波数上昇を一時的に解除して元の最低周波数に戻している。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、サーモオフ条件に近づいたときには、最低周波数を元の最低周波数よりもさらに低い周波数に変更するものであってもよい(図8参照)。
【0060】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0061】
10 空気調和機
100 室内ユニット(室内機)
101 室内熱交換器
102 室内ファン
110 室外ユニット(室外機)
111 圧縮機
112 室外熱交換器
113 四方弁
114 膨張弁
115 室外ファン
121 室温センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8