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特許7417372経路案内システム、経路案内装置、経路案内方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】経路案内システム、経路案内装置、経路案内方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20240111BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G01C21/34
G01C21/26 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019135556
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021018207
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小河原 正行
(72)【発明者】
【氏名】井上 彩子
【審査官】武内 俊之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/167701(WO,A1)
【文献】特開2004-125726(JP,A)
【文献】特開2014-235078(JP,A)
【文献】特開2014-132227(JP,A)
【文献】特開2014-174032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも出発地と目的地とが含まれる探索条件に基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を1つ以上探索する探索手段と、
前記探索手段により探索された1つ以上の経路の各々について、前記経路を車両で走行にした場合における前記車両の運転のしやすさを表す指標値をそれぞれ算出する算出手段と、
前記探索手段により探索された1つ以上の経路の各々と、前記1つ以上の経路の各々に対して前記算出手段により算出された指標値とそれぞれ対応付けて表示する表示手段と、
を有し、
前記探索条件には、出発時刻と、前記出発時刻の月日、前記出発時刻の曜日、前記出発時刻の天候、前記出発時刻が祝日か否かを表す情報、及び前記出発時刻の路面状態の少なくとも1つとが含まれる条件が更に含まれ、
前記探索手段は、
記憶部に記憶されている事故情報のうち、前記事故情報が表す事故が発生したときの時間帯と、月日、曜日、天候、祝日か否か、及び路面状態の少なくとも1つとが前記条件に合致する事故情報に含まれる事故コストを用いて、前記経路を探索
前記事故コストは、前記事故情報が表す事故の事故種別、重大度及び発生頻度から決定されるコストである、ことを特徴とする経路案内システム。
【請求項2】
前記算出手段は、
前記経路に含まれる所定の判定ポイントにおける前記経路の方向に応じて決定される第1の点数と、前記経路又は前記経路の周辺で過去に発生した事故に応じて決定される第2の点数と、前記経路に含まれる道路の道幅格に応じて決定される第3の点数とに基づいて、前記指標値を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の経路案内システム。
【請求項3】
前記算出手段は、
予め決められた第1の配点から前記第1の点数を減算した値と、予め決められた第2の配点から前記第2の点数を減算した値と、予め決められた第3の配点から前記第3の点数を減算した値との合計値を前記指標値とする、ことを特徴とする請求項2に記載の経路案内システム。
【請求項4】
前記表示手段は、
前記経路上又は前記経路の周辺で過去に事故が頻発していることを示すアイコン又は重大な事故が発生したことを示すアイコンを更に表示する、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の経路案内システム。
【請求項5】
前記探索手段は、
前記記憶部に記憶されている道路ネットワーク情報を更に参照して、前記道路ネットワーク情報に含まれるリンクコスト及びノードコストと、前記事故情報に含まれる事故種別、重大度及び発生頻度に応じて決定される前記事故コストとを用いて、前記リンクコストと前記ノードコストと前記事故コストとの合計が最小となるように前記経路を探索する、ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の経路案内システム。
【請求項6】
少なくとも出発地と目的地とが含まれる探索条件に基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を1つ以上探索する探索手段と、
前記探索手段により探索された1つ以上の経路の各々について、前記経路を車両で走行にした場合における前記車両の運転のしやすさを表す指標値をそれぞれ算出する算出手段と、
前記探索手段により探索された1つ以上の経路の各々と、前記1つ以上の経路の各々に対して前記算出手段により算出された指標値とそれぞれ対応付けて表示する表示手段と、
を有し、
前記探索条件には、出発時刻と、前記出発時刻の月日、前記出発時刻の曜日、前記出発時刻の天候、前記出発時刻が祝日か否かを表す情報、及び前記出発時刻の路面状態の少なくとも1つとが含まれる条件が更に含まれ、
前記探索手段は、
記憶部に記憶されている事故情報のうち、前記事故情報が表す事故が発生したときの時間帯と、月日、曜日、天候、祝日か否か、及び路面状態の少なくとも1つとが前記条件に合致する事故情報に含まれる事故コストを用いて、前記経路を探索
前記事故コストは、前記事故情報が表す事故の事故種別、重大度及び発生頻度から決定されるコストである、ことを特徴とする経路案内装置。
【請求項7】
少なくとも出発地と目的地とが含まれる探索条件に基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を1つ以上探索する探索手順と、
前記探索手順で探索された1つ以上の経路の各々について、前記経路を車両で走行にした場合における前記車両の運転のしやすさを表す指標値をそれぞれ算出する算出手順と、
前記探索手順で探索された1つ以上の経路の各々と、前記1つ以上の経路の各々に対して前記算出手順で算出された指標値とそれぞれ対応付けて表示する表示手順と、
をコンピュータが実行し、
前記探索条件には、出発時刻と、前記出発時刻の月日、前記出発時刻の曜日、前記出発時刻の天候、前記出発時刻が祝日か否かを表す情報、及び前記出発時刻の路面状態の少なくとも1つとが含まれる条件が更に含まれ、
前記探索手順は、
記憶部に記憶されている事故情報のうち、前記事故情報が表す事故が発生したときの時間帯と、月日、曜日、天候、祝日か否か、及び路面状態の少なくとも1つとが前記条件に合致する事故情報に含まれる事故コストを用いて、前記経路を探索
前記事故コストは、前記事故情報が表す事故の事故種別、重大度及び発生頻度から決定されるコストである、ことを特徴とする経路案内方法。
【請求項8】
少なくとも出発地と目的地とが含まれる探索条件に基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を1つ以上探索する探索手順と、
前記探索手順で探索された1つ以上の経路の各々について、前記経路を車両で走行にした場合における前記車両の運転のしやすさを表す指標値をそれぞれ算出する算出手順と、
前記探索手順で探索された1つ以上の経路の各々と、前記1つ以上の経路の各々に対して前記算出手順で算出された指標値とそれぞれ対応付けて表示する表示手順と、
をコンピュータに実行させ、
前記探索条件には、出発時刻と、前記出発時刻の月日、前記出発時刻の曜日、前記出発時刻の天候、前記出発時刻が祝日か否かを表す情報、及び前記出発時刻の路面状態の少なくとも1つとが含まれる条件が更に含まれ、
前記探索手順は、
記憶部に記憶されている事故情報のうち、前記事故情報が表す事故が発生したときの時間帯と、月日、曜日、天候、祝日か否か、及び路面状態の少なくとも1つとが前記条件に合致する事故情報に含まれる事故コストを用いて、前記経路を探索
前記事故コストは、前記事故情報が表す事故の事故種別、重大度及び発生頻度から決定されるコストである、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経路案内システム、経路案内装置、経路案内方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
出発地から目的地までの経路を探索した上で、これらの探索された経路を所定の基準で評価し、その評価結果が良い順に各経路をユーザに提示する技術が知られている。例えば、各経路の目的地までの到着時間や各経路で目的地まで向かった際に発生する料金、各経路で目的地まで向かった際のガソリン消費量等を評価し、その評価結果が良い順(到着時間が早い順、料金が安い順、ガソリン消費量が少ない順等)に各経路をユーザに提示する技術が知られている。
【0003】
また、道路や或る単位エリアにおける車両の走りやすさを評価する技術も知られている(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-194867号公報
【文献】特開2010-2364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来では、ユーザが運転しやすい経路(例えば、右左折が少ない経路、道幅が比較的広い経路、事故が少ない経路等)であるかといった観点で経路を評価する技術は存在しなかった。このため、経路探索によって探索された経路が、ユーザが運転しやすい経路であるか否かが不明であった。
【0006】
本発明の実施形態は、上記の点に鑑みてなされたもので、探索された各経路に関してユーザの運転しやすさを評価することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本実施形態に係る経路案内システムは、少なくとも出発地と目的地とが含まれる探索条件に基づいて、前記出発地から前記目的地までの経路を1つ以上探索する探索手段と、前記探索手段により探索された1つ以上の経路の各々について、前記経路を車両で走行にした場合における前記車両の運転のしやすさを表す指標値をそれぞれ算出する算出手段と、前記探索手段により探索された1つ以上の経路の各々と、前記1つ以上の経路の各々に対して前記算出手段により算出された指標値とそれぞれ対応付けて表示する表示手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
探索された各経路に関してユーザの運転しやすさを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】経路案内画面の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る経路案内装置の機能構成の一例を示す図である。
図3】事故情報の一例を示す図である。
図4】角度判定における方向の定義の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係る経路案内処理の一例を示すフローチャートである。
図6】本実施形態に係る経路案内装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以降、「本実施形態」とも表す。)について説明する。本実施形態では、経路探索によって探索された各経路に関して、ユーザが車両を運転して当該経路を走行する場合における運転のしやすさを評価することが可能な経路案内装置10について説明する。ここで、本実施形態では、経路の運転のしやすさを評価するための評価指標として「優しさ度」を導入する。優しさ度は、その値が高いほど運転しやすい経路であることを表し、後述するように、例えば、経路中で右左折等が少ないほど高く、経路中の道路幅が広いほど高く、経路中で過去に発生した重大な事故が少ないほど高くなる。
【0011】
<経路案内画面>
経路探索によって探索された各経路とこれら各経路の優しさ度は、経路案内画面上に表示され、経路案内装置10のユーザに提示される。これにより、ユーザは、各経路とこれら各経路の優しさ度(つまり、運転のしやすさ)とを知ることができる。
【0012】
ここで、本実施形態に係る経路案内装置10によって表示される経路案内画面の一例について、図1を参照しながら説明する。図1は、経路案内画面の一例を示す図である。図1では、一例として、経路探索によって出発地Sから目的地Gに向かう2つの経路が探索された場合について説明する。なお、図1に示す例では、簡単のため、地図を省略しているが、経路R1及びR2は地図上に表示される。
【0013】
図1に示す経路案内画面1000には、出発地Sから目的地Gまでの経路R1及びR2と、これらの経路R1及びR2の優しさ度がそれぞれ表示される優しさ度表示欄1100とが含まれる。図1に示す例では、経路R1の優しさ度「50点」と、経路R2の優しさ度「80点」とが優しさ度表示欄1100に表示されている。これにより、ユーザは、経路R1よりも経路R2の方が運転しやすい経路であることを知ることができる。したがって、ユーザは、例えば、経路R2を選択した上で「出発」ボタン等を押下することにより、運転しやすい経路である経路R2に従った経路案内を開始させることができる。
【0014】
また、図1に示す経路案内画面1000には、経路R1及びR2上における事故多発地点(又は重大事故が発生した地点)を示すアイコンC1~アイコンC5が表示されている。これにより、ユーザは、経路R1及びR2上で事故が多発している地点(又は重大事故が発生した地点)を知ることができる。なお、図1に示す例では、アイコンC1とアイコンC2とアイコンC4とアイコンC5とが経路R1上における事故多発地点(又は重大事故が発生した地点)をそれぞれ示しており、アイコンC2とアイコンC3とが経路R2上における事故多発地点(又は重大事故が発生した地点)をそれぞれ示している。ただし、これらの事故多発地点(又は重大事故が発生した地点)を示すアイコンは必ずしも表示されなくてもよいし、例えば、ユーザの操作や設定等により表示と非表示とを切り替えることができてもよい。
【0015】
なお、図1に示す経路案内画面1000では、2つの経路R1及びR2と、これらの経路R1及びR2それぞれの優しさ度とが表示されているが、これは一例であって、例えば、1つの経路とこの経路の優しさ度とが表示されてもよいし、3つ以上の経路とこれらの経路それぞれの優しさ度とが表示されてもよい。
【0016】
<機能構成>
次に、本実施形態に係る経路案内装置10の機能構成について、図2を参照しながら説明する。図2は、本実施形態に係る経路案内装置10の機能構成の一例を示す図である。
【0017】
図2に示すように、本実施形態に係る経路案内装置10は、経路案内処理部110と、記憶部120とを有する。経路案内処理部110は、例えば、経路案内装置10にインストールされた1以上のプログラムがプロセッサに実行させる処理により実現される。また、記憶部120は、例えば、補助記憶装置等の各種記憶装置を用いて実現可能である。
【0018】
経路案内処理部110は、経路探索を行うと共に経路探索によって探索された経路の優しさ度を算出し、経路探索によって探索された経路と当該経路の優しさ度とが含まれる経路案内画面を表示する処理(経路案内処理)を実行する。
【0019】
記憶部120は、経路探索や優しさ度の算出、経路案内画面の表示等に用いられる各種データが記憶されている。
【0020】
例えば、記憶部120には、経路案内画面の表示に用いられるデータとして、地図データが記憶されている。地図データとは、地図を表示するためのデータであり、各種の表示データを含むレイヤーを重ねることで作成される。例えば、地図データは、都道府県等の区間を表した表示データを含むレイヤーに、緑地や河川、道路、鉄道、記号、注釈等のそれぞれの表示データを含むレイヤーを重ねて1つの背景を構成し、更にその上に店舗や家形枠等の表示データを含むレイヤーを重ねることで作成される。なお、家形枠とは、一般住宅や商業施設等の建物の形状を表す表示データのことである。
【0021】
また、例えば、記憶部120には、経路の探索に用いられるデータとして、ネットワークデータが記憶されている。ネットワークデータとは、道路ネットワークを表すデータのことである。ネットワークデータには、例えば、交差点や分岐点、道路属性が変化する箇所、道路幅が変化する箇所等の各種地点を示すノードに関するデータ(以降、「ノードデータ」とも表す。)と、ノード間を繋ぐリンクに関するデータ(以降、「リンクデータ」とも表す。)とが含まれる。ノードデータには、例えば、ノード番号、緯度・経度、交差点の名称(漢字及びその読み)、信号機の有無等が含まれる。また、交差点を表すノードのノードデータには、経路探索に用いられるコスト(このコストを「交差点コスト」とも表す。)が含まれる。一方で、リンクデータには、例えば、リンク長や座標点列、経路探索に用いられるコスト(このコストを「リンクコスト」とも表す。)、リンクの両端にあるノードのノード番号、道路種別(国道、一般道、高速道路、細街路等)、道路幅、経路探索に用いられるリンク(道路)であるかを示す探索対象フラグ、進行方向、高度等が含まれる。なお、ネットワークデータは、同一の緯度及び経度で地図データと対応付けられている。
【0022】
また、例えば、記憶部120には、経路の優しさ度の算出に用いられるデータとして、各種テーブルや事故多発地点(又は重大事故が発生した地点)を示す情報(以降、「事故情報」とも表す。)等が記憶されている。これらのテーブルの詳細については後述する。また、事故情報についても後述するが、事故情報には、事故発生した日付や時間帯、事故が発生した場所(発生場所)、事故の発生頻度、発生した事故の重大度、発生した事故の種別(事故種別)等が含まれる。
【0023】
ここで、経路案内処理部110には、条件設定部111と、経路探索部112と、算出部113と、表示制御部114とが含まれる。
【0024】
条件設定部111は、経路探索の条件(この条件を「探索条件」とも表す。)を設定する。探索条件には少なくとも出発地と目的地とが含まれる。これら以外にも、探索条件には、例えば、出発日時、経由地、天候、有料道路の利用有無等が含まれていてもよい。このような探索条件の全部又は一部は、例えば、ユーザによって入力されてもよいし、予め設定されていてもよい。また、出発地として現在地を用いる場合には、GPS(Global Positioning System)受信機等の位置測位装置により測位された位置情報(現在地を示す位置情報)が用いられてもよい。
【0025】
経路探索部112は、条件設定部111により設定された探索条件に基づいて、出発地から目的地までの経路を探索する。このとき、経路探索部112は、ダイクストラ法等の既知のアルゴリズムにより出発地から目的地までのコストが最小(例えば、リンクコストと交差点コストとの合計が最小)となるような経路を探索する。なお、経路探索部112は1つの経路のみを探索してもよいし、探索条件の一部(例えば、経由地等)を変更して複数の経路を探索してもよいし、経路探索に用いるコストを変更して複数の経路を探索(例えば、リンクコストと交差点コストとの両方を用いた経路探索と、リンクコストと交差点コストとに加えて、後述する事故コストも用いた経路探索)してもよい。
【0026】
算出部113は、経路探索部112により探索された経路の優しさ度を算出する。優しさ度の算出方法の詳細については後述する。
【0027】
表示制御部114は、経路探索部112により探索された経路を示す経路情報と、算出部113により算出された優しさ度とを用いて、経路と当該経路の優しさ度とが含まれる経路案内画面を表示させる。
【0028】
なお、本実施形態に係る経路案内装置10としては、例えば、車載器やPC(パーソナルコンピュータ)、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、ゲーム機器等を用いることが可能である。
【0029】
また、図2に示す経路案内装置10の機能構成は一例であって、他の機能構成であってもよい。例えば、経路案内装置10の一部の機能(例えば、経路探索部112及び算出部113の少なくとも一方)は、経路案内装置10と通信ネットワークを介して接続されるサーバが有していてもよい(つまり、経路案内装置10とサーバとで経路案内システムを構成していてもよい。)。この場合、記憶部120に記憶されているデータのうち、当該一部の機能を実現するために必要なデータは当該サーバによって保持される。
【0030】
<優しさ度の算出方法>
ここで、算出部113が優しさ度の算出方法について説明する。本実施形態では、優しさ度は100満点であるものとし、カテゴリ毎に予め決められた配点から減点することで、優しさ度を算出するものとする。
【0031】
優しさ度を算出するためのカテゴリとその配点の一例を以下の表1に示す。なお、この表1に対応するテーブルは、例えば、記憶部120に記憶されている。
【0032】
【表1】
ここで、カテゴリY1「ルート探索基準点」は優しさ度の最低点を設定するためのカテゴリであり、このカテゴリの配点は減点対象とならない。一方で、カテゴリY2~カテゴリY4の配点は減点対象となる。ただし、各カテゴリの点数がマイナスとなることを防止するため、減点の結果、点数がマイナスとなる場合は当該カテゴリの点数は0とする。
【0033】
以上により、カテゴリY1~カテゴリY4の点数をそれぞれa~aとすれば、優しさ度は、a+a+a+aで算出される。なお、上記の表1に示すカテゴリ及びその配点は一例であって、例えば、各カテゴリの配点はユーザ等によって適宜変更することができてもよいし、カテゴリY1を設けなくてもよい。
【0034】
ここで、aはカテゴリY1の配点(つまり、本実施形態では「10」)である。一方で、aはカテゴリY2の配点から減点数の合計を減算して小数点以下を切り上げた値又は0のいずれか大きい方、つまり、MAX(0,ROUNDUP(カテゴリY2の配点-カテゴリY2での減点数の合計))である。同様に、aはMAX(0,ROUNDUP(カテゴリY3の配点-カテゴリY3での減点数の合計))であり、aはMAX(0,ROUNDUP(カテゴリY4の配点-カテゴリY4での減点数の合計))である。なお、MAXは引数として指定された数値のうちの最大値を返す関数であり、ROUNDUPは引数として指定された数値の小数点以下を切り上げた数値を返す関数である。
【0035】
例えば、カテゴリY3の減点数の合計が1.5である場合、a=MAX(0,ROUNDUP(40-1.5))=39となる。カテゴリY2やY4についても同様である。
【0036】
以降では、カテゴリY2~カテゴリY3の減点数の合計を算出する方法について説明する。
【0037】
・カテゴリY2「事故多発地点判定」の減点数の合計の算出方法
算出部102は、記憶部120に記憶されている事故情報を参照して、経路探索部112により探索された経路(又はその周辺)で過去に発生した事故に応じて減点数を算出する。ここで、事故情報の一例を図3に示す。図3に示すように、事故情報には、事故が発生した日付、事故が発生した時間帯、事故が発生した発生場所、事故の発生頻度、事故の重大度、及び事故種別等が含まれる。なお、重大度及び事故種別は、例えば、当該発生場所で発生した事故のうち、最も重大な事故の重大度及び事故種別が設定される。これらの事故情報は、例えば、事故情報を提供する装置又はシステム等により取得される。
【0038】
このとき、算出部102は、事故情報の発生場所を参照することで、経路探索部112により探索された経路上(又はその周辺(つまり、当該経路から所定の範囲内))で発生した事故の事故情報を特定した上で、特定した事故情報を用いて、以下の表2~表4により減点基準点と第1の係数と第2の係数とを特定する。なお、これらの表2~表4のそれぞれに対応するテーブルは、例えば、記憶部120に記憶されている。
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
そして、算出部102は、事故情報毎に、減点基準点×第1の係数×第2の係数により減点数を計算した上で、これらの減点数の合計を、カテゴリY2「事故多発地点判定」の減点数の合計とする。
【0042】
例えば、経路探索部112により探索された経路(又はその周辺)で過去に発生した事故の事故情報として事故情報Aと事故情報Bとが特定されたとして、事故情報Aは発生頻度「高」、重大度「中」、事故種別「重傷」であり、事故情報Bは発生頻度「中」、重大度「小」、事故種別「軽傷」であったとする。この場合、事故情報Aに関する減点数は5×1.2×1.2=7.2であり、事故情報Bに関する減点数は2×1.1×1.1=2.42となる。したがって、この場合の減点数の合計は、9.62となる。
【0043】
なお、経路探索部112により探索された経路(又はその周辺)で様々な種別の事故が過去に発生している場合、同一発生場所で、かつ、事故種別が異なる複数の事故情報が特定される。この場合には、例えば、これらの複数の事故情報の中でも、第2の係数の値が最も高い事故種別を採用して減点数を算出すればよい。すなわち、例えば、同一発生場所で、事故種別「重傷」の事故と事故種別「軽傷」の事故とが過去に発生している場合、事故種別「重傷」に対応する第2の係数「1.2」を用いて、当該発生場所における事故情報に関する減点数を算出すればよい。
【0044】
・カテゴリY3「角度判定」の減点数の合計の算出方法
算出部102は、経路探索部112により探索された経路に含まれる判定ポイントにおける車両の進行方向に対する経路の方向を判定する。ここで、判定ポイントとは車両の進行方向に対する経路の方向を判定するための地点のことであり、例えば、リンクとリンクとの接点のノード等が挙げられる。このとき、算出部102は、例えば、当該経路に沿って判定ポイントに車両が進入する直前の車両の進行方向(つまり、例えば、直前のリンクの方向)と、判定ポイントを通過して進入したリンクを車両が出る際の方向との角度を用いて、経路の方向を判定する。
【0045】
例えば、判定ポイントに車両が進入する直前の進行方向を0°として、判定ポイントを通過して進入したリンクを車両が出る際の方向をθとする。このとき、図4に示すように、「θ≧315°又はθ≦45°」である場合は経路の方向を「直進」、「45°<θ≦135°」である場合は経路の方向を「右折」、「225°≦θ<315°」である場合は経路の方向を「左折」、「135°<θ≦170°」である場合は経路の方向を「後方右」、「190°≦θ<225°」である場合は経路の方向を「後方左」、「170°<θ<190°」である場合は経路の方向を「Uターン」と判定する。
【0046】
そして、算出部102は、経路の方向を用いて、以下の表5により減点数の合計を算出する。なお、この表5に対応するテーブルは、例えば、記憶部120に記憶されている。
【0047】
【表5】
例えば、経路探索部112により探索された経路には5つの判定ポイントが含まれ、これら5つの判定ポイントで判定された経路の方向がそれぞれ「直進」、「直進」、「右折」、「直進」、「左折」、「直進」であったとする。この場合、減点数の合計は、0+0+1+0+0.5+0=1.5となる。
【0048】
・カテゴリY4「道路格判定」の減点数の合計の算出方法
算出部102は、経路探索部112により探索された経路に含まれるリンクの道路種別や道路幅、探索対象フラグにより道路格判定を行って、減点対象のリンクであるか否かを判定する。例えば、算出部102は、経路探索部112により探索された経路に含まれる各リンクについて、道路種別「細街路」であるか、道路幅が狭い(例えば、車線数が所定数以下や道路幅が所定の幅以下)か、又は探索対象フラグが「1」(つまり、経路探索に用いられないことを示す値)であるかの少なくとも1つに該当するか否かを判定し、該当するリンクを減点対象のリンクであると判定する。
【0049】
そして、算出部102は、減点対象のリンクのリンク長(距離)の合計をLとして、以下の表6により減点数の合計を算出する。なお、この表6に対応するテーブルは、例えば、記憶部120に記憶されている。
【0050】
【表6】
例えば、Lが800mであった場合、減点数の合計は5となる。同様に、Lが3000mであった場合は減点数の合計は10、Lが6000mであった場合は減点数の合計は20となる。
【0051】
<経路案内処理>
次に、本実施形態に係る経路案内処理について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施形態に係る経路案内処理の一例を示すフローチャートである。
【0052】
まず、経路案内処理部110の条件設定部111は、探索条件を設定する(ステップS101)。なお、上述したように、探索条件には少なくとも出発地と目的地とが含まれる。また、これら以外にも、探索条件には、例えば、出発日時、経由地、天候、有料道路の利用有無等が含まれていてもよい。
【0053】
次に、経路案内処理部110の経路探索部112は、上記のステップS101で設定された探索条件に基づいて、出発地から目的地までの1つ以上の経路を探索する(ステップS102)。このとき、経路探索部112は、ダイクストラ法等の既知のアルゴリズムにより出発地から目的地までのコストが最小(例えば、リンクコストと交差点コストとの合計が最小)となるような経路を探索する。
【0054】
ここで、上記のコストとして、リンクコストと交差点コストとに加えて、事故コストが用いられてもよい。事故コストとは、記憶部120に記憶されている事故情報の事故種別や重大度、発生頻度等から決定されるコストである。例えば、事故コストは、事故種別が「死亡」、「重傷」、「軽傷」の順に高くなる。また、例えば、重大度が大きいほど、かつ、発生頻度が高いほど、事故コストが高くなる。
【0055】
事故コストを用いることで、事故の発生頻度が高い場所や重大な事故が発生した場所等を回避するような経路を探索することが可能となる。なお、事故コストを決定する際に、上記のステップS101で設定された探索条件に基づいて、事故コストの決定に用いる事故情報を記憶部120から抽出してもよい。
【0056】
例えば、上記のステップS101で設定された探索条件として出発日時が含まれる場合、記憶部120に記憶されている事故情報のうち、事故が発生した時間帯として当該出発日時が含まれる事故情報を抽出してもよい。また、これ以外にも、例えば、上記のステップS101で設定された探索条件に含まれる各種条件(例えば、月、日、曜日、天候、祝日か否か、路面状態等)に応じて、記憶部120に記憶されている事故情報のうち、当該条件に合致した時に発生した事故の事故情報を抽出してもよい。これにより、探索条件として設定された条件で発生する可能性がある事故の事故コストを考慮した経路探索を行うことができるようになる。
【0057】
次に、経路案内処理部110の算出部113は、上述した優しさ度の算出方法により、上記のステップS102で探索された各経路の優しさ度をそれぞれ算出する(ステップS103)。
【0058】
最後に、経路案内処理部110の表示制御部114は、上記のステップS102で探索された経路と、上記のステップS103で算出された優しさ度とを用いて、経路と当該経路の優しさ度とが含まれる経路案内画面(例えば、図1に示すような経路案内画面1000)を表示させる(ステップS104)。これにより、ユーザに対して、出発地から目的地までの経路と、この経路の運転のしやすさを示す優しさ度とが提示される。したがって、ユーザは、運転のしやすい経路を選択し、選択した経路に基づく経路案内を受けることが可能となる。
【0059】
また、表示制御部114は、記憶部120に記憶されている事故情報を参照して、上記のステップS102で探索された経路上における事故多発地点(又は重大事故が発生した地点)を示すアイコンを表示する。このとき、表示制御部114は、記憶部120に記憶されている事故情報を参照して、例えば、当該経路上で発生した過去の事故のうち、発生頻度が所定以上の事故や重大度が所定以上の事故が発生した地点を事故多発地点(又は重大事故が発生した地点)としてアイコンを表示する。なお、このとき、上記のステップS102の経路探索で事故コストが用いられた場合には、事故コストの決定に用いられた事故情報のうち、発生頻度が所定以上の事故や重大度が所定以上の事故情報によって表される事故が発生した地点を事故多発地点(又は重大事故が発生した地点)としてもよい。
【0060】
更に、表示制御部114は、例えば、事故種別に応じて、事故多発地点(又は重大事故が発生した地点)を示すアイコンの種類を異ならせてもよい。例えば、表示制御部114は、事故種別に応じて、この事故種別の内容を端的に表すアイコンを表示させてもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、経路探索時に探索された経路の優しさ度を算出したが、これに限られず、例えば、いわゆるリルート時にも、このリルートによって探索された経路の優しさ度が算出されてもよい。なお、リルートとは、例えば、ユーザの現在地が経路から外れた場合等に、当該現在地に基づいて経路を再探索する機能又は処理のことである。
【0062】
<ハードウェア構成>
最後に、本実施形態に係る経路案内装置10のハードウェア構成について、図6を参照しながら説明する。図6は、本実施形態に係る経路案内装置10のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0063】
図6に示すように、本実施形態に係る経路案内装置10は、入力装置201と、表示装置202と、RAM(Random Access Memory)203と、ROM(Read Only Memory)204と、外部I/F205と、通信I/F206と、プロセッサ207と、補助記憶装置208とを有する。これら各ハードウェアは、バスBにより相互に通信可能に接続されている。
【0064】
入力装置201は、例えば、キーボードやマウス、タッチパネル、各種ボタン等であり、ユーザが経路案内装置10に各種入力を行うのに用いられる。表示装置202は、例えば、ディスプレイ等であり、経路案内装置10の処理結果(例えば、経路案内画面1000等)を表示する。
【0065】
RAM203は、プログラムやデータを一時保持する揮発性の半導体メモリである。ROM204は、電源を切ってもプログラムやデータを保持することができる不揮発性の半導体メモリである。ROM204には、例えば、OS(Operating System)に関する設定情報や通信ネットワークに接続するための設定情報等が格納されている。
【0066】
外部I/F205は、外部装置とのインタフェースである。外部装置には、記録媒体205a等がある。経路案内装置10は、外部I/F205を介して、記録媒体205aの読み取りや書き込み等を行うことができる。記録媒体205aには、例えば、SDメモリカードやUSBメモリ等がある。
【0067】
通信I/F206は、経路案内装置10を通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。プロセッサ207は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等であり、ROM204や補助記憶装置208等からプログラムやデータをRAM203上に読み出して、当該プログラムやデータに基づく処理を実行することで、経路案内装置10全体の制御や各種機能を実現する演算装置である。
【0068】
補助記憶装置208は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等であり、プログラムやデータを格納している不揮発性のメモリである。補助記憶装置208に格納されているプログラムやデータには、例えば、OS、当該OS上で動作するアプリケーションプログラム、経路案内処理部110を実現する1以上のプログラム等がある。
【0069】
本実施形態に係る経路案内装置10は、図6に示すハードウェア構成を有することにより、上述した経路案内処理を実現することができる。なお、図6に示すハードウェア構成は一例であって、本実施形態に係る経路案内装置10は、他のハードウェア構成を有していてもよい。例えば、本実施形態に係る経路案内装置10は、GPS受信機等の位置測位装置を有していてもよい。また、本実施形態に係る経路案内装置10は、複数のプロセッサ207を有していてもよいし、複数のメモリを有していてもよい。
【0070】
本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更等が可能である。
【符号の説明】
【0071】
10 経路案内装置
110 経路案内処理部
111 条件設定部
112 経路探索部
113 算出部
114 表示制御部
120 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6