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特許7417399目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20240111BHJP
   E04F 21/18 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
E04G21/18 C
E04F21/18 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019186384
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059955
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-10-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・2018年10月22日~2018年10月26日 日鉄鋼板株式会社西日本製造所(湖南地区)内 施工実験棟にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 極
(72)【発明者】
【氏名】永木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 悦二
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-172347(JP,A)
【文献】特開平10-196124(JP,A)
【文献】特開平07-317322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
E04F 21/18
E04B 1/348
E04B 2/56-2/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右方向に並ぶ第一パネルと第二パネルとの間の目地幅を調整するための目地幅調整治具であって、
前記第一パネル及び前記第二パネルに対して前方又は後方に配置される、左右方向に長尺の治具本体と、
前記治具本体の左右方向の一端部に設けられ、前記第一パネルのうち前記第二パネルとは反対側を向く側面に引っ掛かるように構成された引っ掛け部と、
前記第二パネルのうち前記第一パネルとは反対側を向く側面に当たるように構成された押圧部と、
前記治具本体の左右方向の他端部に設けられ、前記押圧部を左右方向にスライド移動させることのできるスライド操作部と、を備え、
前記押圧部は、
前記スライド操作部によってスライド移動される本体部と、
前記本体部に取り付けられた少なくとも一つのパネル受け部と、を有し、
前記少なくとも一つのパネル受け部は、前記第二パネルの前記側面を直接受けるように構成された受け面を有
前記少なくとも一つのパネル受け部は、前後方向に距離をあけて位置する第一パネル受け部と第二パネル受け部であり、
前記本体部と前記第一パネル受け部と前記第二パネル受け部との間には、スペースが設けられている、
目地幅調整治具。
【請求項2】
前記スライド操作部は、
前記治具本体に対して左右方向に移動可能に取り付けられたボルトを有し、
前記ボルトは、
回転操作される頭部と、
前記押圧部の前記本体部に回転自在に連結された軸部と、を含む、
請求項1に記載の目地幅調整治具。
【請求項3】
前記治具本体の左右方向の長さが変更自在である、
請求項1又は2に記載の目地幅調整治具。
【請求項4】
前記治具本体の左右方向の一部に設けられる吸着部材を更に備え、
前記吸着部材は、マグネット又は吸盤からなる吸着部を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の目地幅調整治具。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の目地幅調整治具を用いて、前記第一パネルと前記第二パネルとの間の前記目地幅を調整する目地幅調整方法であって、
前記第一パネルの前記側面に前記引っ掛け部を引っ掛け、
前記スライド操作部を操作して、前記押圧部を左右方向にスライド移動させることで、前記第二パネルの前記側面に前記押圧部の前記少なくとも一つのパネル受け部の前記受け面を当て、
次いで、前記押圧部で前記第二パネルを押圧することで、前記第二パネルをスライド移動させ、前記第一パネルと前記第二パネルとの間の前記目地幅を調整する、
目地幅調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パネル間の目地幅を調整する目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、横並びに配置した2枚のパネル間の目地幅を調整する目地幅調整治具が記載されている。
【0003】
この目地幅調整治具は、2枚のパネルに対して屋外側又は屋内側に配置される治具本体と、一方のパネルの外側端部に係止させる係止片と、他方のパネルの外側端部に押し当てる押し当て片と、押し当て片を治具本体に沿ってスライドさせる操作部と、を備えている。
【0004】
この目地幅調整治具では、一方のパネルの外側端部に係止片を係止させ、他方のパネルの外側端部に接続板を配置し、接続板を介して他方のパネルの外側端部に押し当て片を押し当てた状態で、操作部を操作することで、パネル間の目地幅の調整が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-172347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の目地幅調整治具を用いた目地幅調整方法では、目地幅調整治具とは別に接続板が必要であり、この接続板をパネルの外側端部に付け外しする作業が必要であるため、この分だけ、目地幅を調整するための作業が多くなっていた。
【0007】
上記事情に鑑みて、本開示は、パネル間の目地幅の調整がより簡単に行える目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法を提案することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る目地幅調整治具は、左右方向に並ぶ第一パネルと第二パネルとの間の目地幅を調整するための目地幅調整治具である。この目地幅調整治具は、左右方向に長尺の治具本体と、前記治具本体の左右方向の一端部に設けられた引っ掛け部と、押圧部と、前記治具本体の左右方向の他端部に設けられ、前記押圧部を左右方向にスライド移動させることのできるスライド操作部と、を備える。前記治具本体は、前記第一パネル及び前記第二パネルに対して前方又は後方に配置される。前記引っ掛け部は、前記第一パネルのうち前記第二パネルとは反対側を向く側面に引っ掛かるように構成されている。前記押圧部は、前記第二パネルのうち前記第一パネルとは反対側を向く側面に当たるように構成されている。前記押圧部は、前記スライド操作部によってスライド移動される本体部と、前記本体部に取り付けられた少なくとも一つのパネル受け部と、を有する。前記少なくとも一つのパネル受け部は、前記第二パネルの前記側面を直接受けるように構成された受け面を有する。
【0009】
また、本開示の一態様に係る目地幅調整方法は、前記の目地幅調整治具を用いて、前記第一パネルと前記第二パネルとの間の前記目地幅を調整する目地幅調整方法である。この目地幅調整方法では、前記第一パネルの前記側面に前記引っ掛け部を引っ掛け、前記スライド操作部を操作して、前記押圧部を左右方向にスライド移動させることで、前記第二パネルの前記側面に前記押圧部の前記少なくとも一つのパネル受け部の前記受け面を当てる。次いで、前記押圧部で前記第二パネルを押圧することで、前記第二パネルをスライド移動させ、前記第一パネルと前記第二パネルとの間の前記目地幅を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係る目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法では、パネル間の目地幅の調整がより簡単に行える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態の目地幅調整治具を用いてパネル間の目地幅を調整する様子を示す一部破断した平面図である。
図2図2は、同上の目地幅調整治具の一部を示す斜視図である。
図3図3は、同上の目地幅調整治具を拡大して示す一部破断した平面図である。
図4図4は、同上の目地幅調整治具を示す側面図である。
図5図5は、同上の目地幅調整治具を示す他の側面図である。
図6図6は、同上のパネルの一例を示す斜視図である。
図7図7A図7Bは、同上のパネルの側端部を示す平断面図である。
図8図8は、同上のパネルを示す側断面図である。
図9図9A図9B図9Cは、同上の目地幅調整治具を用いてパネル間の目地幅を調整する様子を順に示す一部破断した平面図である。
図10図10は、同上のパネルを構造躯体に複数枚取り付けて形成される壁構造の一例を示す斜視図である。
図11図11は、同上の目地幅調整治具を用いてパネル間の目地幅を調整する様子の他例を示す一部破断した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.概要
図1に示す一実施形態の目地幅調整治具1は、左右方向に並ぶ第一パネルP1と第二パネルP2との間の目地幅を調整するための目地幅調整治具である。目地幅調整治具1は、左右方向に長尺の治具本体2と、治具本体2の左右方向の一端部に設けられた引っ掛け部3と、押圧部4と、治具本体2の左右方向の他端部に設けられたスライド操作部5と、を備える。治具本体2は、第一パネルP1及び第二パネルP2に対して前方又は後方に配置される。引っ掛け部3は、第一パネルP1のうち第二パネルP2とは反対側を向く側面60aに引っ掛かるように構成されている。押圧部4は、第二パネルP2のうち第一パネルP1とは反対側を向く側面60bに当たるように構成されている。スライド操作部5は、押圧部4を左右方向にスライド移動させることができるように構成されている。押圧部4は、スライド操作部5によってスライド移動される本体部40と、本体部40に取り付けられた少なくとも一つのパネル受け部41と、を有する。少なくとも一つのパネル受け部41は、第二パネルP2の側面60bを直接受けるように構成された受け面410を有する。
【0013】
上記構成を備える一実施形態の目地幅調整治具1では、第一パネルP1の側面60aに引っ掛け部3を引っ掛け、第二パネルP2の側面60bを押圧部4のパネル受け部41の受け面410で直接受けることができる。一実施形態の目地幅調整治具1では、この状態でスライド操作部5を操作することで、押圧部4によって第二パネルP2を押圧してスライド移動させることができ、パネルP1,P2間の目地幅を調整することができる。このように一実施形態の目地幅調整治具1では、目地幅調整治具1が有する受け面410で第二パネルP2の側面60bを直接受けることができる。そのため、一実施形態の目地幅調整治具1では、第二パネルP2と押圧部4との間に接続用の部材を別途配置する必要がなくて、パネルP1,P2間の目地幅の調整がより簡単に行える。
【0014】
また、一実施形態の目地幅調整方法は、上述した目地幅調整治具1を用いて、第一パネルP1と第二パネルP2との間の目地幅を調整する目地幅調整方法である。この目地幅調整方法では、第一パネルP1の側面60aに引っ掛け部3を引っ掛け、スライド操作部5を操作して、押圧部4を左右方向にスライド移動させることで、第二パネルP2の側面60bに押圧部4の少なくとも一つのパネル受け部41の受け面410を当てる。この目地幅調整方法では、次いで、押圧部4で第二パネルP2を押圧することで、第二パネルP2をスライド移動させ、第一パネルP1と第二パネルP2との間の前記目地幅を調整する。
【0015】
上記構成を備える一実施形態の目地幅調整方法では、目地幅調整治具1が有する受け面410で第二パネルP2の側面60bを直接受けることができる。そのため、一実施形態の目地幅調整方法では、第二パネルP2と押圧部4との間に接続用の部材を別途配置する必要がなくて、パネルP1,P2間の目地幅の調整がより簡単に行える。
【0016】
2.詳細
続いて、図1に示す一実施形態の目地幅調整治具1及びこれを用いた目地幅調整方法について更に詳しく説明する。
【0017】
本明細書では、パネルP1,P2が並ぶ方向を左右方向とし、パネルP1,P2の厚み方向を前後方向とし、この左右方向及び前後方向に対して直交する方向を上下方向として、各構成について詳しく説明する。
【0018】
2-1.目地幅調整治具
目地幅調整治具1は、図1から図5に示すように、治具本体2、引っ掛け部3、押圧部4、及びスライド操作部5を備える。
【0019】
2-1-1.治具本体
図1に示すように、治具本体2は、左右方向に長尺な棒状の部材である。本実施形態では、治具本体2は、その左右方向の長さが変更自在である。
【0020】
治具本体2は、左右方向に長尺な第一部材20と、第一部材20に対して左右方向にスライド自在に接続される左右方向に長尺な第二部材21と、第二部材21を第一部材20に対して固定する固定具22と、を有する。
【0021】
第一部材20は、中空の角管状であり、第二部材21は、第一部材20よりも一回り大きい中空の角管状である。第二部材21は、第一部材20よりも左右方向の長さが長い。第一部材20は、第二部材21の左側部分の内側に出し入れ可能である。第一部材20には、左右方向に等間隔に並ぶ複数の連結孔200が設けられており、第二部材21には、左右方向に等間隔に並ぶ複数の連結孔210が設けられている。固定具22は、例えば、ボルトとナットで構成される。
【0022】
第一部材20と第二部材21とは、複数の連結孔200のうちの一つと複数の連結孔210のうちの一つとを上下方向に並べ、この上下に並ぶ連結孔200,210に固定具22を挿通することで、スライド不可に固定される。複数の連結孔200,210から固定具22を挿通する一つの連結孔200,210を選択することで、治具本体2の左右方向の長さが変更可能である。
【0023】
治具本体2の左右方向の長さは、パネルP1,P2の左右方向の合計長さに応じて、適宜設定される。本実施形態では、治具本体2の左右方向の長さは、パネルP1,P2の左右方向の合計長さよりも若干長い。治具本体2は、例えば、パネルP1,P2の前方に配置される。
【0024】
2-1-2.引っ掛け部
引っ掛け部3は、図1及び図5に示すように、第一パネルP1の左の側面60aに引っ掛かるように構成されている。
【0025】
引っ掛け部3は、治具本体2の第一部材20の後面(第一パネルP1側を向く面)に固定された固定板30と、固定板30の左端部から前方に延びる引っ掛け板31とを有する。固定板30は、図示されていないが、例えば、後方から見て、右側の部分ほど上下方向の長さが短い、等脚台形状である。引っ掛け板31は、左方から見て略矩形状である。固定板30と引っ掛け板31は、金属製であり、例えば1枚の鋼板を折り曲げ加工することで形成される。
【0026】
引っ掛け部3は、引っ掛け板31のうち、第一パネルP1の側面60aに当てられる側の面に取り付けられた緩衝材(図示せず)を更に有する。緩衝材としては、ナイロン樹脂、ゴム等で形成された薄厚のものが用いられる。
【0027】
引っ掛け部3は、緩衝材を介して引っ掛け板31を第一パネルP1の側面60aに当てることで、第一パネルP1の側面60aに引っ掛かる。引っ掛け部3は、例えば、第一パネルP1の側面60aの前端部に引っ掛かる。
【0028】
2-1-3.スライド操作部
スライド操作部5は、図2及び図3に示すように、治具本体2に左右方向に移動可能に取り付けられたボルト50を有する。ボルト50は、回転操作される頭部51と、押圧部4に回転自在に連結された軸部52と、を含む。
【0029】
本実施形態では、スライド操作部5は、治具本体2の第二部材21の後面(第二パネルP2側を向く面)に固定された板状の連結部53と、連結部53の後端部に設けられたナット状の軸受け部54とを更に有する。スライド操作部5は、本実施形態では、金属製である。
【0030】
連結部53は、平面視台形状の平板であり、後側の部分ほど左右方向の長さが短い。連結部53の後端部に、ナット状の軸受け部54が結合されている。軸受け部54は、例えば溶接によって連結部53に結合されている。軸受け部54は、左右方向を軸方向とする筒状であり、その内側に、左右方向に貫通したねじ孔540を有する。
【0031】
軸部52は、軸受け部54のねじ孔540に接続されている。軸部52の右端部に頭部51が設けられている。軸部52の左端部が押圧部4に回転自在に連結される。スライド操作部5は、軸部52の左端部に取り付けられ、押圧部4への軸部52の連結に用いられる2つのナット55,56を更に有する。
【0032】
ボルト50は、頭部51を電動工具やラチェットレンチ等の工具で回転操作することで、左右方向に移動し、これにより、押圧部4を左右方向に移動させることができる。
【0033】
2-1-4.押圧部
押圧部4は、図2図3及び図4に示すように、第二パネルP2の右の側面60bに当たるように構成されている。なお、図2及び図4では、第二パネルP2の右の側面60bを簡略的に図示しており、耐火材7とパッキン64の図示を省略している。押圧部4は、スライド操作部5によってスライド移動される本体部40と、本体部40に取り付けられた少なくとも一つのパネル受け部41と、を有する。少なくとも一つのパネル受け部41は、第二パネルP2の右の側面60bを直接受けるように構成された受け面410を有する。
【0034】
少なくとも一つのパネル受け部41は、本実施形態では、前後方向に距離をあけて位置する第一パネル受け部41aと第二パネル受け部41bである。本体部40と第一パネル受け部41aと第二パネル受け部41bとの間には、スペースS1が設けられている。
【0035】
本体部40は、本実施形態では、パネル受け部41が取り付けられるベース部材42と、ボルト50の軸部52が取り付けられる接続部材43と、接続部材43をベース部材42に対して取り付ける取付部材44と、を有する。本体部40は、例えば、金属製である。
【0036】
ベース部材42は、矩形板状の平板部420と、平板部420の前後の端部から左方(第二パネルP2側)に突出した一対の規制片421と、平板部420の上下の端部から右方(第二パネルP2とは反対側)に突出した一対の突片422と、を有する。ベース部材42は、例えば一枚の鋼板を折り曲げ加工することで形成される。
【0037】
接続部材43は、左方に開口した中空の半球状(ドーム状)の本体部430と、本体部430の右端部を左右方向に貫通する貫通孔431と、を有する。接続部材43は、貫通孔431にボルト50の軸部52が通され、軸部52に取り付けた二つのナット55,56の間に、本体部430の貫通孔431の周囲の部分が配置されることで、ボルト50に対して回転可能及び傾斜可能に連結される。接続部材43は、ボルト50の軸部52の周方向に回転可能であり、軸部52の長手方向(左右方向)に対して交差する方向に傾くことが可能である。本体部430の左端面は、ボルト50の軸部52よりも外径の大きい円環状の当接面となっている。この当接面が、ベース部材42の平板部420に当たる。なお、本体部430の形状は、中空の半球状に限らず、その他の形状であってもよい。
【0038】
取付部材44は、貫通孔440が設けられた矩形板状の支持部441と、支持部441の前後の端部から左方に突出した一対の連結片442と、一対の連結片442の左端部から前後方向外側に延びた一対の固定片443と、を有する。
【0039】
支持部441と一対の連結片442とで囲まれる部分には、接続部材43の本体部430が収まるスペース444が形成される。取付部材44は、接続部材43の本体部430を、スペース444に配置し、ボルト50の軸部52に取り付けられたナット55を貫通孔440に通した状態で、ベース部材42に取り付けられる。取付部材44は、一対の固定片443にねじ等の固定具445を挿入することで、ベース部材42の平板部420に固定される。本実施形態では、固定具445の先端部(左端部)は、パネル受け部41a,41b内に埋め込まれ、これにより、パネル受け部41a,41bは、ベース部材42の平板部420に固定される。
【0040】
第一パネル受け部41aと第二パネル受け部41bは、第二パネルP2の側面60bに当たる受け面410a,410bを有する。パネル受け部41a,41bのそれぞれは、例えば、樹脂製である。
【0041】
受け面410a,410bのそれぞれは、第二パネルP2の側面60bを直接受けることができるように構成されている。本実施形態では、前側に位置する第一パネル受け部41aの受け面410aは、第二パネルP2の側面60bの平坦な部分(後述する平板部624a)を受ける平面部411aと、第二パネルP2の前面を受けることが可能な規制面412aと、を有する。規制面412aは、平面部411aの前端部から左方に突出している。
【0042】
後側に位置する第二パネル受け部41bの受け面410bは、第二パネルP2の側面60bの平坦な部分(後述する平板部632b)を受ける平面部411bと、第二パネルP2の側面60bの突出した部分(後述する湾曲部632a)が収まる凹面部412bと、を有する。凹面部412bは、平面部411bの後端部に連続している。凹面部412bは、第二パネルP2の後面を受けることが可能な規制面413bを含む。
【0043】
第一パネル受け部41aは、ベース部材42の平板部420の左面の前端部に取り付けられ、前側の規制片421に接する。第一パネル受け部41aの上下長さは、ベース部材42の平板部420の上下長さと略同じである。
【0044】
第二パネル受け部41bは、平板部420の左面の後端部に取り付けられ、後側の規制片421に接する。第二パネル受け部41bの上下長さは、ベース部材42の平板部420の上下長さと略同じである。
【0045】
本体部40の平板部420と第一パネル受け部41aと第二パネル受け部41bとの間に形成されるスペースS1には、第二パネルP2の側面60bの突出部分(後述する突出部624b、パッキン64、及び耐火材7)が収まる。
【0046】
2-2.第一パネルと第二パネル
第一パネルP1と第二パネルP2は、本実施形態では、住宅、ビル等の建物の壁を形成するサンドイッチパネル6であり、互いに同大同形である。以下では、サンドイッチパネル6について詳しく説明する。
【0047】
図6に示すように、サンドイッチパネル6は、矩形板状である。サンドイッチパネル6は、上下方向と平行な長手方向と、左右方向と平行な短手方向と、前後方向と平行な厚み方向とを有する。サンドイッチパネル6は、例えば、上下方向の長さが、0.5~6.0mであり、左右方向の長さ(幅)が、0.3~1.5mであり、前後方向の長さ(厚み)が、30~150mmである。
【0048】
サンドイッチパネル6は、図6図7A図7B及び図8に示すように、芯材61と、芯材61を前側から覆う第一外皮62と、芯材61を後側から覆う第二外皮63と、を備える。
【0049】
芯材61は、その全体形状が、矩形の板状である。全体形状が板状とは、1枚の板に限らず、複数の部材を1枚の板をなすように並べたものも含まれる。芯材61は、本体部61aと、本体部61aよりも耐火性の高い耐火部61bを含む。
【0050】
本体部61aは、左右の側面に凹条部610を有している。凹条部610は、本体部61aの左右の側面の前後方向の中央部に上下方向の全長にわたって位置する。凹条部610に、耐火部61bが配置される。耐火部61bは、ステープル等の固定具によって、本体部61aに固定される。
【0051】
本体部61aは、断熱性を有する。本体部61aは、ロックウールやグラスウールなどの繊維状無機材で形成される。本体部61aは、左右方向に並んだ複数のブロック体で構成される。複数のブロック体のそれぞれは、繊維状無機材をバインダー等でブロック状に固めたものである。複数のブロック体は、上下方向の長さが互いに同じであり、前後方向の長さが互いに同じである。複数のブロック体は、隣接する側面同士が当接して、全体として1枚の矩形板状の本体部61aを形成している。複数のブロック体のそれぞれは、繊維状無機材の長手方向が、前後方向に沿っている。なお、複数のブロック体のそれぞれは、例えば、ロックウール製のボードを短冊状に切断したもので構成してもよい。この場合、複数のブロック体は、繊維方向が前後方向に対して平行となり、かつ、全体として1枚の矩形板状をなすように並べられて、本体部61aを形成する。なお、本体部61aは、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡系の有機材で形成されてもよいし、スチレンボード、ウレタンボード等であってもよい。
【0052】
耐火部61bは、本体部61aに比べて耐火性の高い部材であり、例えば、石膏ボードや、珪酸カルシウムボードである。耐火部61bは、凹条部610に対応した形状であり、1枚の矩形板である。耐火部61bは、凹条部610の全体を埋める。
【0053】
第一外皮62と第二外皮63のそれぞれは、金属板をロール加工やプレス加工などにより所望の形状に成形することによって得られる。金属板は、例えば、厚みが0.25~2.0mmである。金属板は、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等であるが、これらに限定されない。
【0054】
第一外皮62は、後側に向けて開口した矩形の箱状である。第一外皮62は、芯材61の本体部61aの前面を覆う矩形板状の本体部620と、本体部61aの上面を覆う上壁部621と、本体部61aの下面を覆う下壁部622と、を有する。第一外皮62は更に、本体部61aの左の側面のうち凹条部610よりも前側の部分を覆う左の側壁部623と、本体部61aの右の側面のうち凹条部610よりも前側の部分を覆う右の側壁部624と、を有する。
【0055】
上壁部621は、本体部620の上縁から後側に突出し、下壁部622は、本体部620の下縁から後側に突出し、左の側壁部623は、本体部620の左縁から後側に突出し、右の側壁部624は、本体部620の右縁から後側に突出している。本体部620に対して4つの壁部621,622,623,624のそれぞれは、略直角である。上下の壁部621,622のそれぞれは、矩形の平板状である。左右の側壁部623,624は、矩形の平板部623a,624aと、平板部623a,624aの後端から左右方向外側に略直角に突出した矩形板状の突出部623b,624bとを有する。
【0056】
第二外皮63は、芯材61の本体部61aの後面を覆う矩形板状の本体部630と、本体部61aの左の側面を覆う左の側壁部631と、本体部61aの右の側面を覆う右の側壁部632と、を有する。左の側壁部631は、本体部61aの左の側面のうち凹条部610よりも後側の部分を覆う。右の側壁部632は、本体部61aの右の側面のうち凹条部610よりも後側の部分を覆う。左の側壁部631は、本体部630の左縁から前側に突出し、右の側壁部632は、本体部630の右縁から前側に突出している。なお、第二外皮63は、本体部61aの上面や下面を覆う部分を有さない。
【0057】
左右の側壁部631,632のそれぞれは、平面視U字状に湾曲した湾曲部631a,632aと、湾曲部631a,632aの前端部から前側に突出した矩形状の平板部631b,632bと、を有する。
【0058】
外皮62,63のそれぞれは、本体部620,630が芯材61の本体部61aの前後の面に接着されて、芯材61と一体化している。
【0059】
サンドイッチパネル6は、壁部621,622,623,624のそれぞれに取り付けられるパッキン64を更に備える。なお、図6では、パッキン64の図示は省略している。図7A図7B及び図8に示すように、パッキン64は、上壁部621の上面の前後方向の中央部と、下壁部622の下面の前後方向の中央部と、左右の側壁部623,624の平板部623a,624aの後端部のそれぞれに、取り付けられる。パッキン64は、長手方向に直交する断面が、中空の半円形状である。パッキン64は、サンドイッチパネル6を全周にわたって囲むように正面視にて矩形枠状に設けられる。パッキン64は、例えば合成ゴム製である。
【0060】
図3に示すように、サンドイッチパネル6の右の側面60bには、耐火材7がビス等の固着具で取り付けられる。耐火材7は、アルカリアースシリケートブランケット(生体溶解性繊維)などの繊維状無機材料で形成された帯状のものである。本実施形態では、耐火材7は、圧縮した場合に復元しにくい部材である。耐火材7は、サンドイッチパネル6の右の側面60bのうち、耐火部61bに対向する部分に、サンドイッチパネル6の長手方向の全長にわたって取り付けられる。なお、耐火材7のサンドイッチパネル6の側面60bへの取り付けは、施工現場にて行われる。
【0061】
図6及び図8に示すように、サンドイッチパネル6は、横架材9への取り付けに用いられる下取付部材65と、他の横架材9への取り付けに用いられる上取付部材66と、を更に有する。下取付部材65は、サンドイッチパネル6の後面の下端部に固定され、上取付部材66は、サンドイッチパネル6の後面の上端部に固定されている。
【0062】
下取付部材65は、サンドイッチパネル6の後面の下端部に固定される側面視L字状の三つのパネル固定板65aと、パネル固定板65aに固定される二つの側面視略Z字状の取付板65bとから構成される。二つの取付板65bは、三つのパネル固定板65aのうち左端と右端の二つのパネル固定板65aにボルト67により固定される。ボルト67は、本実施形態では、片面側から締結することができるワンサイドボルトである。
【0063】
三つのパネル固定板65aは、左右方向に間隔をおいて配置されている。三つのパネル固定板65aのそれぞれは、サンドイッチパネル6の後面に平行な縦片650と、縦片650の下端部から前側に延び、サンドイッチパネル6の下面に平行な横片651とを有する。縦片650がサンドイッチパネル6の第二外皮63の本体部630の下端部にビス等の固定具で固定され、横片651の前端部がサンドイッチパネル6の第一外皮62の下壁部622にビス等の固定具で固定されている。
【0064】
左端と右端の二つのパネル固定板65aのそれぞれの縦片650の上部に、取付板65bの上部がボルト67で固定され、縦片650の下部と、取付板65bの下部との間には、横架材9の縦板部90を差し込み可能な差込溝68が形成される。差込溝68の幅は、ボルト67のねじ締め具合で調整可能である。ボルト67を最後までねじ締めることで、パネル固定板65aを縦板部90に押し当てることができる。
【0065】
上取付部材66は、サンドイッチパネル6の後面の上端部に固定される側面視L字状の二つのパネル固定板66aと、二つのパネル固定板66aのそれぞれにボルト69により固定される二つの矩形板状の取付板66bとから構成される。ボルト69は、本実施形態では、片面側から締結することができるワンサイドボルトである。
【0066】
二つのパネル固定板66aは、左右方向に間隔をおいて配置されている。二つのパネル固定板66aは、左右方向における位置が、三つのパネル固定板65aのうち、左右両端に位置する二つのパネル固定板65aと同じである。二つのパネル固定板66aのそれぞれは、サンドイッチパネル6の後面に平行な縦片660と、縦片660の上端部から前側に延び、サンドイッチパネル6の上面に平行な横片661とを有する。縦片660がサンドイッチパネル6の第二外皮63の本体部630の上端部にビス等の固定具で固定され、横片661の前端部がサンドイッチパネル6の第一外皮62の上壁部621にビス等の固定具で固定されている。二つのパネル固定板66aのそれぞれの縦片660に、取付板66bの下部がボルト69で固定される。
【0067】
サンドイッチパネル6は、下取付部材65の二つの差込溝68に、横架材9の縦板部90を差し込んで、二つの取付板65bを縦板部90に引っ掛けることで、横架材9によって左右方向にスライド移動可能に支持される。なお、このとき、ボルト67は、取付板65bがパネル固定板65aから外れない程度にねじ締めされた仮保持状態とされる。
【0068】
2-3.その他
目地幅調整治具1は、図1に示すように、治具本体2の長手方向(左右方向)の一部に取り付けられた吸着部材8を更に備える。吸着部材8は、治具本体2の第一部材20に取り付けられた吸着部80と、吸着部80を第一パネルP1の前面に対して着脱操作するための吸着操作部81と、を有する。
【0069】
吸着部80は、本実施形態では、マグネット又は吸盤である。そのため、吸着部80は、表面が平滑であり金属製であるサンドイッチパネル6に対して吸着させやすく、また、サンドイッチパネル6の表面に傷を付けにくい。吸着操作部81は、本実施形態では、吸着部80を第一パネルP1の前面に当たる位置と、この前面から離れた位置との間で前後方向に移動させるように構成されている。
【0070】
図10に示すように、横架材9は、構造躯体の一部を構成するものであり、本実施形態では、側面視L字状のアングル材である。横架材9は、鋼製である。横架材9は、縦板部90と、縦板部90の下端部から後側に延びた横板部91と、を有する。
【0071】
構造躯体は、上下に並ぶ複数の横架材9を備える。複数の横架材9のそれぞれは、建物の床や天井を構成する土台10に取り付けられている。なお、複数の横架材9のそれぞれは、梁に固定されてもよいし、複数の柱に架け渡して固定されてもよい。
【0072】
上下に並ぶ複数の横架材9は、サンドイッチパネル6に取り付けられた上下の取付部材65,66の間隔と同程度、上下方向に離れて位置する。上下に並ぶ二つの横架材9のうち、上側に位置する横架材9には、サンドイッチパネル6の上取付部材66が取り付けられ、下側に位置する横架材9には、サンドイッチパネル6の下取付部材65が取り付けられる。
【0073】
各横架材9の縦板部90のうち、サンドイッチパネル6の下取付部材65の左右方向の中央に位置するパネル固定板65aに対応する部分の前面には、このパネル固定板65aを下から支持する側面視L字状の受け部材92が溶接等で固定されている。
【0074】
3.目地幅調整方法
続いて、上述した目地幅調整治具1を用いて、第一パネルP1と第二パネルP2の間の目地幅を調整する方法について説明する。
【0075】
まず、図1に示すように、構造躯体(本実施形態では横架材9)に対して位置が固定された第一パネルP1の側方(右方)に、第二パネルP2を配置する。このとき、第二パネルP2の下端部の下取付部材65の二つの取付板65bを、横架材9の縦板部90に引っ掛ける。取付板65bは、ボルト67によってパネル固定板65aに対して仮止めしておき、第二パネルP2を横架材9の長手方向に沿ってスライド移動可能としておく。第二パネルP2は、第二パネルP2の左の側面60aが第一パネルP1の右の側面60bに取り付けられた耐火材7に当たるように配置する。なお、第二パネルP2は、クレーン等の吊り上げ手段によって吊り上げた状態で、目地幅の調整が行われる。
【0076】
次いで、目地幅調整治具1の引っ掛け部3を第一パネルP1の左の側面60aに引っ掛け、吸着操作部81を操作して第一パネルP1の前面に吸着部80を吸着させる。このとき、図9Aに示すように、目地幅調整治具1の押圧部4の二つのパネル受け部41a,41bは、第二パネルP2の右の側面60bに対して距離をおいて対向して位置する。このように吸着部80を第一パネルP1の前面に吸着させることで、目地幅調整治具1は、パネルP1,P2によって仮保持される。
【0077】
次いで、図9Bに示すように、スライド操作部5のボルト50の頭部51を電動工具やラチェットレンチ等の工具で回転操作して、押圧部4を左方にスライド移動させ、二つのパネル受け部41a,41bの受け面410a,410bを、第二パネルP2の右の側面60bに当てる。このとき、第二パネルP2の右の側面60bにあるパッキン64と耐火材7と突出部624bは、二つのパネル受け部41a,41bの間のスペースS1に収まる。またこのとき、第二パネルP2の湾曲部632aは、第二パネル受け部41bの受け面410bの凹面部412b内に収まり、傷付きや変形が抑制される。耐火材7は、スペースS1に収まることで、押圧部4によって圧縮されて変形することを防ぐことができる。これにより、第二パネルP2の右側に他のパネルを施工するときに、第二パネルP2と他のパネルとで耐火材7を圧縮させて変形させることができ、第二パネルP2と他のパネルとの隙間を耐火材7によって適切に埋めることができる。
【0078】
次いで、図9Cに示すように、スライド操作部5を更に回転操作して、押圧部4で第二パネルP2の右の側面60bを押圧して第二パネルP2を左方にスライド移動させて、第一パネルP1と第二パネルP2との間の目地幅を所定の長さに調整する。第一パネルP1と第二パネルP2との間の目地幅が所定の長さになったら、スライド操作部5の回転操作を止める。
【0079】
以上のように施工することで、目地幅調整治具1を用いて、第一パネルP1と第二パネルP2との間の目地幅を所定の長さに調整することができる。
【0080】
続いて、第一パネルP1に対する目地幅が調整された第二パネルP2を横架材9に対して固定する方法の一例について説明する。
【0081】
まず、第二パネルP2の上取付部材66の二つの取付板66bを上側の横架材9の縦板部90に対して、溶接等の適宜手段で固定する。
【0082】
次いで、第二パネルP2の下取付部材65の二つのボルト67を最後までねじ締めして、二つの取付板65bを横架材9の縦板部90に押し当てる。このとき、第二パネルP2の下端部の左右方向の中央部に位置するパネル固定板65aは、横架材9の縦板部90に固定された受け部材92の上に載置され、第二パネルP2の自重は受け部材92によって支持される。なお、受け部材92に対してパネル固定板65aは、溶接等で固定しない。
【0083】
第二パネルP2の下側に他のサンドイッチパネル6が既に設置されている場合には、第二パネルP2の二つの取付板65bとこれに対向するパネル固定板65aとの間に、横架材9の縦板部90と他のサンドイッチパネル6の取付板66bとを挟み込む。
【0084】
以上のように施工することで、第二パネルP2は、上下二つの横架材9に対して固定される。
【0085】
第二パネルP2の上下二つの横架材9への固定が終わったら、スライド操作部5を反対側に回転操作して、押圧部4を右方にスライド移動させ、第二パネルP2の右の側面60bから押圧部4を離す。次いで、吸着部材8の吸着操作部81を操作して、吸着部80の第一パネルP1への吸着を解除し、目地幅調整治具1をパネルP1,P2から取り外す。
【0086】
以上のように施工することで、第二パネルP2は、第一パネルP1との間に所定の目地幅を形成した状態で、横架材9に固定される。上述の施工方法により複数のサンドイッチパネル6を横架材9に対して固定することで、例えば、図10に示す壁構造を形成することができる。上下方向に並ぶ複数のサンドイッチパネル6の間には、耐火材7が挟み込まれている。
【0087】
4.作用効果
以上説明した本実施形態の目地幅調整治具1では、第一パネルP1の側面60aに引っ掛け部3を引っ掛け、第二パネルP2の側面60bを押圧部4のパネル受け部41a,41bの受け面410a,410bで直接受けることができる。本実施形態の目地幅調整治具1では、この状態でスライド操作部5を操作することで、押圧部4によって第二パネルP2を押圧して第二パネルP2をスライド移動させることができ、パネルP1,P2間の目地幅を調整することができる。このように本実施形態の目地幅調整治具1では、目地幅調整治具1が有する受け面410a,410bで第二パネルP2の側面60bを直接受けることができる。そのため、本実施形態の目地幅調整治具1では、第二パネルP2と押圧部4との間に接続用の部材を別途配置する必要がなくて、パネルP1,P2間の目地幅の調整がより簡単に行える。
【0088】
また、スライド操作部5の操作は、施工者が一人で行うことができるため、本実施形態の目地幅調整治具1を用いることで、パネルP1,P2の間の目地幅の調整が簡単に行える。
【0089】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、スライド操作部5を操作して、パネルP1,P2の間の目地幅を所定の長さに調整した状態で、押圧部4が第二パネルP2の固定位置からの移動を制限するストッパーとして機能する。
【0090】
そのため、本実施形態の目地幅調整治具1を用いることで、第二パネルP2の横架材9への固定も、目地幅調整治具1を操作した施工者が行え、第二パネルP2の設置に必要な人数を抑えることができる。
【0091】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、スライド操作部5が、押圧部4に連結され、回転操作されるボルト50を有するため、押圧部4のスライド位置を無段階で調整することができて、パネルP1,P2の間の目地幅の調整がしやすい。
【0092】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、第二パネルP2の側面60bを押圧する押圧部4が、本体部40と、本体部40に取り付けられるパネル受け部41とを有し、パネル受け部41が第二パネルP2の側面60bを受ける受け面410を有している。そのため、本実施形態の目地幅調整治具1では、本体部40は金属で形成して強度の向上を図ったうえで、パネル受け部41は樹脂で形成して第二パネルP2の側面60bに傷を付けにくくすることができる。なお、パネル受け部41を取り換えることで、パネルP1,P2とは側面の形状が異なる他のパネル間の目地幅の調整にも用いることができる。
【0093】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、押圧部4の第二パネル受け部41bの受け面410bが凹面部412bを有し、第二パネルP2の側面60aの突出した湾曲部632aが凹面部412bに収まる。そのため、本実施形態の目地幅調整治具1では、湾曲部632aが押圧部4に押されて変形することを防ぐことができる。
【0094】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、押圧部4のパネル受け部41が、前後方向に距離をあけて位置する第一パネル受け部41aと第二パネル受け部41bで構成され、第一パネル受け部41aと第二パネル受け部41bの間にスペースS1が形成されている。そのため、本実施形態の目地幅調整治具1では、第二パネルP2が側面60bに突出部分(パッキン64、耐火材7、及び突出部624b)を有していても、この突出部分が押圧部4に押されて変形することを防ぐことができる。
【0095】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、接続部材43がボルト50の軸部52に対して傾斜可能であるため、第二パネルP2の側面60bが前後方向や上下方向に対して傾いている場合でも、押圧部4を第二パネルP2の側面60bに押し当てやすい。
【0096】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、治具本体2の長さが変更自在であるため、パネルP1,P2とは左右方向の長さが異なる他のパネル間の目地幅も調整することができる。
【0097】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、吸着部材8の吸着部80を第一パネルP1に吸着させて仮留めできるため、狭い箇所での施工がしやすい。また、吸着部材8の吸着部80は、マグネット又は吸盤であるため、表面が平滑で金属製のサンドイッチパネル6からなる第一パネルP1に対して吸着させやすく、また、第一パネルP1の表面に傷を付けにくい。
【0098】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、吸着部材8の吸着部80が治具本体2の長手方向の途中で一旦、第一パネルP1に吸着しているので、締め付けによる治具本体2の撓みの発生を抑制できる。
【0099】
5.変形例
以上説明した本実施形態の目地幅調整治具1及びこれを用いた目地幅調整方法の変形例について説明する。
【0100】
スライド操作部5は、押圧部4を左右方向にスライド移動させることができるように構成されたものであればよく、図3等に示す構造のものに限定されない。例えば、スライド操作部5は、回転しながらスライド移動するものに限らず、回転せずにスライド移動するものであってもよい。また、スライド操作部5は、ボルト50の頭部51に連結される操作レバーを更に有してもよい。
【0101】
押圧部4は、第二パネルP2の側面60bに当たるように構成されたものであればよく、図3等に示す構造のものに限定されない。例えば、押圧部4は、本体部40に、パネル受け部41を一つだけ取り付けたものであってもよい。この場合、パネル受け部41は、例えば、第二パネルP2の側面60bに前後方向の全長にわたって当たる受け面410を有する。
【0102】
目地幅調整治具1は、治具本体2の左右方向の長さが変更自在なものに限らず、治具本体2の長さが一定のものであってもよい。また、治具本体2の左右方向の長さを変更自在とするための構造は、図1に示す構造に限定されず、その他の周知の構造を適用してもよい。
【0103】
目地幅調整治具1は、吸着部材8を備えなくてもよく、また、吸着部材8の吸着部80は、マグネット又は吸盤に限らず、その他の吸着可能な部材で構成されてもよい。また、吸着部材8は、治具本体2のうち、第一部材20に限らず、第二部材21に設けてもよく、第二パネルP2に対して吸着してもよい。
【0104】
目地幅調整方法は、図11に示すように、目地幅調整治具1の治具本体2を、第一パネルP1及び第二パネルP2に対して後方に配置して使用してもよい。この場合、目地幅調整治具1の押圧部4は、スライド操作部5のボルト50の軸部を中心に回転可能であり、第二パネルP2の側面60bを受ける姿勢へと回転可能である。またこの場合、目地幅調整治具1の引っ掛け部3は、第一パネルP1の左の側面60aの湾曲部631aに当てられて引っ掛けられる。湾曲部631aは、弾性変形可能であり、そのため、引っ掛け部3によって押圧されて一旦変形しても、元の形状に戻ることが可能である。
【0105】
目地幅調整治具1は、第二パネルP2の右の側面60bに押圧部4を当てて押圧するものに限らず、第二パネルP2の左の側面60aに押圧部4を当てて押圧して、第二パネルP2の右側に配置された第一パネルP1との間の目地幅を調整してもよい。
【0106】
目地幅調整治具1によって、目地幅が調整されるパネルP1,P2は、図6から図8に示す構造のサンドイッチパネル6に限定されない。パネルP1,P2は、金属製の外皮を有するサンドイッチパネル6に限らず、窯業系のパネルであってもよいし、金属サイディング材であってもよいし、木製のパネルであってもよく、特に限定されない。
【0107】
目地幅調整方法は、押圧部4を第二パネルP2の側面60bに当てた状態で、スライド操作部5を回転操作することで、引っ掛け部3を右方にスライド移動させて、引っ掛け部3を第一パネルP1の側面60aに当ててもよい。
【0108】
また、目地幅調整方法は、第一パネルP1が横架材9に対して固定されていない状態で、パネルP1,P2間の目地幅を調整してもよい。
【0109】
第一パネルP1と第二パネルP2とは、異なる形状及び大きさのパネルであってもよい。また、第一パネルP1は、第二パネルP2が引っ掛かる横架材9とは別の構造躯体に対して位置が固定されたものであってもよい。
【0110】
6.まとめ
以上説明した一実施形態及びその変形例のように、第一態様の目地幅調整治具(1)は、下記の構成を備える。
【0111】
すなわち、第一態様の目地幅調整治具(1)は、左右方向に並ぶ第一パネル(P1)と第二パネル(P2)との間の目地幅を調整するための目地幅調整治具である。目地幅調整治具(1)は、左右方向に長尺の治具本体(2)と、治具本体(2)の左右方向の一端部に設けられた引っ掛け部(3)と、押圧部(4)と、治具本体(2)の左右方向の他端部に設けられたスライド操作部(5)と、を備える。治具本体(2)は、第一パネル(P1)及び第二パネル(P2)に対して前方又は後方に配置される。引っ掛け部(3)は、第一パネル(P1)のうち第二パネル(P2)とは反対側を向く側面(60a)に引っ掛かるように構成されている。押圧部(4)は、第二パネル(P2)のうち第一パネル(P1)とは反対側を向く側面(60b)に当たるように構成されている。スライド操作部(5)は、押圧部(4)を左右方向にスライド移動させることができる。押圧部(4)は、スライド操作部(5)によってスライド移動される本体部(40)と、本体部(40)に取り付けられた少なくとも一つのパネル受け部(41)と、を有する。少なくとも一つのパネル受け部(41)は、第二パネル(P2)の側面(60b)を直接受けるように構成された受け面(410)を有する。
【0112】
上記構成を備えることで、第一態様の目地幅調整治具(1)では、第一パネル(P1)の側面(60a)に引っ掛け部(3)を引っ掛け、第二パネル(P2)の側面(60b)を押圧部(4)のパネル受け部(41)の受け面(410)で直接受けることができる。第一態様の目地幅調整治具(1)では、この状態でスライド操作部(5)を操作することで、押圧部(4)によって第二パネル(P2)を押圧して第二パネル(P2)をスライド移動させることができ、パネル(P1,P2)間の目地幅を調整することができる。このように第一態様の目地幅調整治具(1)では、目地幅調整治具(1)が有する受け面(410)で第二パネル(P2)の側面(60b)を直接受けることができる。そのため、第一態様の目地幅調整治具(1)では、第二パネル(P2)と押圧部(4)との間に接続用の部材を別途配置する必要がなくて、パネル(P1,P2)間の目地幅の調整がより簡単に行える。加えて、第一態様の目地幅調整治具(1)では、押圧部(4)が、本体部(40)とこれに取り付けられるパネル受け部(41)とを有するため、パネル受け部(41)を加工しやすい材料で形成することができる。そのため、第一態様の目地幅調整治具(1)では、パネル受け部(41)の受け面(410)の形状を、第二パネル(P2)の側面(60b)の形状に合わせやすい。これにより、第一態様の目地幅調整治具(1)では、第二パネル(P2)の側面(60b)を押圧部(4)で押圧する際に、第二パネル(P2)の側面(60b)の突起等の変形を防ぐことができる。
【0113】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第二態様の目地幅調整治具(1)は、第一態様の目地幅調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0114】
すなわち、第二態様の目地幅調整治具(1)では、スライド操作部(5)は、治具本体(2)に対して左右方向に移動可能に取り付けられたボルト(50)を有する。ボルト(50)は、回転操作される頭部(51)と、押圧部(4)の本体部(40)に回転自在に連結された軸部(52)と、を含む。
【0115】
上記構成を備える第二態様の目地幅調整治具(1)では、ボルト(50)の頭部(51)を回転操作することで、ボルト(50)の軸部(52)に連結された押圧部(4)で第二パネル(P2)を押圧して第一パネル(P1)側へ移動させることができる。このように、第二態様の目地幅調整治具(1)では、ボルト(50)の回転によって押圧部(4)を移動させるため、第二パネル(P2)の移動の微調整が行いやすい。また、第二態様の目地幅調整治具(1)では、ボルト(50)の軸部(52)が押圧部(4)に回転自在に連結されているため、押圧部(4)を第二パネル(P2)の側面(60b)を直接受ける姿勢に調整しやすい。
【0116】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第三態様の目地幅調整治具(1)は、第一又は第二態様の目地幅調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0117】
すなわち、第三態様の目地幅調整治具(1)では、少なくとも一つのパネル受け部(41)は、前後方向に距離をあけて位置する第一パネル受け部(41a)と第二パネル受け部(41b)である。本体部(40)と第一パネル受け部(41a)と第二パネル受け部(41b)との間には、スペース(S1)が設けられている。
【0118】
上記構成を備えることで、第三態様の目地幅調整治具(1)では、本体部(40)と第一パネル受け部(41a)と第二パネル受け部(41b)との間のスペース(S1)に、第二パネル(P2)の側面(60b)の突出部分を収めることができる。そのため、第三態様の目地幅調整治具(1)では、第二パネル(P2)の側面(60b)を押圧部(4)で押圧する際に、第二パネル(P2)の側面(60b)の突出部分の変形を防ぎやすい。
【0119】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第四態様の目地幅調整治具(1)は、第一から第三のいずれか一つの態様の目地幅調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0120】
すなわち、第四態様の目地幅調整治具(1)では、治具本体(2)の左右方向の長さが変更自在である。
【0121】
上記構成を備える第四態様の目地幅調整治具(1)では、治具本体(2)の左右方向の長さを変更することで、パネル(P1,P2)とは異なる左右長さを有する他のパネル間の目地幅の調整も行うことができる。
【0122】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第五態様の目地幅調整治具(1)は、第一から第四のいずれか一つの態様の目地幅調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0123】
すなわち、第五態様の目地幅調整治具(1)は、治具本体(2)の左右方向の一部に設けられる吸着部材(8)を更に備え、吸着部材(8)は、マグネット又は吸盤からなる吸着部(80)を有する。
【0124】
上記構成を備える第五態様の目地幅調整治具(1)では、パネル(P1,P2)が、例えば、その表面が平滑で金属製のサンドイッチパネルである場合に、パネル(P1,P2)の表面に対して吸着部材8の吸着部80を吸着させやすく、また、この表面を傷付けにくい。
【0125】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第六態様の目地幅調整方法は、第一から第五のいずれか一つの態様の目地幅調整治具(1)を用いて、第一パネル(P1)と第二パネル(P2)との間の目地幅を調整する目地幅調整方法である。この目地幅調整方法では、第一パネル(P1)の側面(60a)に引っ掛け部(3)を引っ掛け、スライド操作部(5)を操作して、押圧部(4)を左右方向にスライド移動させることで、第二パネル(P2)の側面(60b)に押圧部(4)の少なくとも一つのパネル受け部(41)の受け面(410)を当てる。次いで、押圧部(4)で第二パネル(P2)を押圧することで、第二パネル(P2)をスライド移動させ、第一パネル(P1)と第二パネル(P2)との間の目地幅を調整する。
【0126】
上記構成を備える第六態様の目地幅調整方法では、目地幅調整治具(1)が有する受け面(410)で第二パネル(P2)の側面(60b)を直接受けることができる。そのため、第六態様の目地幅調整方法では、第二パネル(P2)と押圧部(4)との間に接続用の部材を別途配置する必要がなくて、パネル(P1,P2)間の目地幅の調整がより簡単に行える。
【0127】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0128】
1 目地幅調整治具
2 治具本体
3 引っ掛け部
4 押圧部
40 本体部
41 パネル受け部
41a 第一パネル受け部
41b 第二パネル受け部
410 受け面
5 スライド操作部
50 ボルト
51 頭部
52 軸部
8 吸着部材
80 吸着部
P1 第一パネル
P2 第二パネル
S1 スペース
図1
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