(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】特にミルクまたはミルクフォームを加熱する方法、ならびにその方法を実施するための装置
(51)【国際特許分類】
A47J 31/44 20060101AFI20240111BHJP
A47J 31/46 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A47J31/44 410
A47J31/46
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019204467
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-10-13
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】504237533
【氏名又は名称】シュタイナー・アーゲー・ウェギス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナー,アドリアン
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0340161(US,A1)
【文献】特表2009-509881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
B67D 1/00- 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミルクまたはミルクフォームを加熱する方法であって、前記ミルクまたは前記ミルク/空気混合物は通路開口(20)を通して運ばれ、高温蒸気は少なくとも1つの蒸気ライン(11)を通して横断方向に前記通路開口(20)内へと運ばれる、方法において、
前記通路開口(20)の少なくとも1つの横断方向の入口開口(19)において、流れる前記ミルクまたは前記ミルク/空気混合物に前記高温蒸気が直接接触して液化するように、前記通路開口(20)、および前記通路開口に横断方向に開口する前記蒸気ライン(11)の前記少なくとも1つの入口開口(19)、前記蒸気ライン内の蒸気圧、および前記ミルクまたは前記ミルク/空気混合物が流れる前記通路開口(20)内の圧力は、相互に調整されており、これにより、前記蒸気から凝縮水への相変化によって生じ
る熱エネルギーが前記ミルクまたは前記ミルク/空気混合物の熱に直接移行する、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記蒸気ライン(11)内の前記蒸気圧は、圧力補償のための減圧弁(21)によって、前記入口開口(19)における略一定の蒸気圧に調整されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蒸気ライン(11)内の前記蒸気圧は
、1.5~2.5バールの間であり、前記蒸気の温度は
、110~140℃の間である、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置であって
、ミルクまたはミルク/空気混合物のための通路開口(20)と、高温蒸気を供給するために前記通路開口に横断方向に開口する蒸気ライン(11)の少なくとも1つの入口開口(19)と、を有する装置において、
前記ミルクまたは前記ミルク/空気混合物のための前記通路開口(20)は、パイプラインとして構成されており、前記通路開口に横断方向に開口する前記蒸気ライン(11)の前記少なくとも1つの入口開口(19)は、前記通路開口(20)の内径
と等しい内径または前記通路開口の内径より
も小さい内径に寸法設定されている、ことを特徴とする装置。
【請求項5】
前記通路開口(20)および前記入口開口(19)の前記内径は、それぞ
れ2.0mm~4.0mmの間であることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記通路開口(20)と前記蒸気ライン(11)の長手軸は、少なくと
も前記入口開口(19)において、交差することを特徴とする、請求項4または5に記載の装置。
【請求項7】
流れる前記ミルクまたは前記ミルク/空気混合物への加熱力を増加させるために、前記通路開口(20)に横断方向に開口する入口開口であって、互いに直列に接続された2つの入口開口(19)が、前記蒸気ライン(11’,11”)にそれぞれ設けられていることを特徴とする、請求項4~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記通路開口(20)には、それぞれ前記通路開口に開口する前記入口開口(19)の前および/または後に、制限器(23、24)が組み込まれていることを特徴とする、請求項4~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記蒸気ライン(11)を接続可能なボイラが、前記高温蒸気を発生させるための蒸気源として設けられており、前記蒸気ライン(11)において前記入口開口(19)の前で略一定の圧力が得られるように、前記蒸気ラインには、圧力補償のための少なくとも1つ
の減圧弁(21)が組み込まれている、ことを特徴とする、請求項4~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
ミルク容器からのサクションライン(12)には、切替弁(22)が組み込まれており、前記切替弁は、一方の切替位置では、ミルクを通過させるために開くのに対して、他方の切替位置では、ミルクフォームを生成すべきときに、絞り弁として構成されることで、動作中の前記ミルク容器内の充填レベルの低下を補償することが可能である、ことを特徴とする、請求項4~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
ミルクのためのサクションライン(12)につながる空気供給ライン(13)には、空気制御弁(15)が配置されており、前記空気制御弁は、可変制御要素として調整可能なニードル弁を有する、ことを特徴とする、請求項4~10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1および/または請求項4の前文に記載の、ミルクまたはミルクフォームを加熱する方法、ならびにその方法を実施するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
公開されている特許文献1による周知の装置では、蒸気の供給は、ピストンポンプによって長手軸方向に運ばれるミルクが通る細長い室内に対して横断方向に、蒸気注入ノズルによって行われる。さらに、この室の出口端には流量制限器が設けられており、これにより、ミルクは室内に十分に長い時間留まって、注入された蒸気との接触が維持されることで、それらの間の熱交換は延長されて、これにより規定のミルク温度に達する。このとき、蒸気を室内に径方向または接線方向に注入することによって、渦流を発生させることで、熱交換を増大させる。ところが、実際には、渦流の発生によって、ミルクの十分に急速な加熱は得られず、よって、最適なミルクフォームの生成は得られないことが判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ミルク/空気混合物が通過するときに、ミルクおよび/またはミルク/空気混合物が効率的に加熱されることにより、より優れたミルクフォームが生成される、方法および装置を確立することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明により、請求項1および請求項4の特徴によって解決される。
【0006】
本発明による方法により、通路開口の横断方向の入口開口において、流れるミルクまたはミルク/空気混合物に高温蒸気が直接接触して液化するように、一方で、蒸気ライン内の蒸気圧、およびミルクおよびミルク/空気混合物が流れる通路開口内の圧力を調整し、他方で、通路開口、および通路開口に横断方向に開口する少なくとも1つの蒸気ラインの入口開口を寸法設定する。
【0007】
これにより、蒸気から水への相変化によって生じる追加の熱エネルギーがミルクまたはミルク/空気混合物に直接伝達されて、比較的少量の高温蒸気の供給による非常に効率的な温度上昇が実現する。
【0008】
この最大加熱力を確保するために、蒸気ライン内の蒸気圧は、効果的には、入口開口で略一定の圧力が得られるように、減圧弁で調整される。
【0009】
本方法のための本発明による装置では、ミルクまたはミルク/空気混合物のための通路開口は、パイプラインとして設計されており、通路開口に横断方向に開口する蒸気ラインの少なくとも1つの入口開口は、通路開口の内径と略等しい内径またはそれよりも若干小さい内径に寸法設定されている。これにより、ミルクまたはその混合物を加熱するための単純な構成であって、それでも極めて効率的な加熱が可能となる構成が得られる。
【0010】
本発明、ならびにそのさらなる効果について、図面を参照して、例示的な実施形態により、さらに詳細に以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明による装置の流体圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、特にミルクまたはミルクフォームを蒸気で加熱するための装置10を示している。蒸気は、効果的には、より詳細には図示していない水ポンプによって水タンクまたは水パイプラインから供給を受ける蒸気源として設けられるボイラから、蒸気ライン11を介して供給される。
【0013】
一方、ミルクは、図示していない冷却容器から、例えばギアポンプである制御可能ポンプ14によって、サクションライン12を通して引き込まれる。ミルクフォームの調製のために、ポンプ14の上流に、切替可能な空気制御弁15を有する空気供給ライン13が接続されている。原理的には、この装置を用いて、例えばチョコレート飲料または他の混合飲料など、類似の飲料を媒体として加熱することもできる。
【0014】
さらに、記載の装置10には、従来の洗浄回路が設けられており、その供給ラインをオンまたはオフに切替可能な洗浄弁29を図示している。この回路によって、効果的に、動作時にミルクまたはミルクフォームを運ぶラインを1回または複数回の使用後ごとに水または洗浄剤を用いて通常の方法でリンスする。
【0015】
二方弁28は、1つには、ミルクまたはミルクフォームを、コーヒーカップなどに注ぐために、より詳細には図示していない出口までライン20’を通過させるように機能する。この弁28は、閉じることができ、または、それ以外にリンス水の通路を解放することができる。
【0016】
ミルクまたはミルクフォームを加熱する方法では、空気供給をオンに切り替えると、ミルクまたはミルク/空気混合物は、ポンプ14によって通路開口20を通して運ばれ、高温蒸気は、蒸気ライン11を通り、次に2つの隣接した別々のライン11’、11”を通して、横断方向に通路開口20内へと運ばれる。それぞれのライン11’、11”には、遮断弁16、17および逆止弁18が関連付けられており、それらの遮断弁16、17は、個々に開閉することができる。また、逆止弁18は、空気制御弁15と共に、ミルクが通路開口20から蒸気ラインに流入することも阻止する。
【0017】
本発明によれば、通路開口20または通路開口20の横断方向の入口開口19において、流れるミルクまたはミルク/空気混合物に高温蒸気が直接接触して液化するように、通路開口20、および通路開口に横断方向にそれぞれ開口する蒸気ライン11の2つの入口開口19、蒸気ライン11内の蒸気圧、およびミルクまたはミルク/空気混合物が流れる通路開口20内の圧力は、相互に調整されており、その結果、蒸気から凝縮水への相変化によって生じる追加のエネルギーがミルクまたはミルク/空気混合物の熱に直接移行し、これにより、この効率的かつ急速な温度上昇が実現する。
【0018】
室としてではなくパイプラインとして形成されたこの通路開口20内でミルクまたはミルク/空気混合物を加熱するための、本発明による方法では、驚くべきことに、これにつながる蒸気ライン11との調整により、この通路開口に配置された入口開口19がノズルとして構成されないことによって、最適な熱伝達が実現する。
【0019】
蒸気ライン11内の蒸気圧、およびミルクまたはミルク/空気混合物が流れる通路開口20内の圧力は、適切に事前設定することができ、これにより、通路開口20内の静圧は流量に依存する。
【0020】
流れるミルクまたはミルク/空気混合物への加熱力を増加させるために、互いに直列に接続された2つの入口開口19が、蒸気ライン11’、11”にそれぞれ設けられている。当然のことながら、1つのみの入口開口19、または2つよりも多くの入口開口19を設けることができる。
【0021】
蒸気ライン内の蒸気圧およびその温度は、好ましくは、1.5~2.5バールの間、かつ110~140℃の間である。これらは、装置10の性能特性要件に応じて、適宜、調整することができる。
【0022】
通路開口20には、ポンプ14の後かつ第1の入口開口19の前に第1の制限器23が配置され、2つの入口開口19の間に第2の制限器24が配置される。これらの制限器23、24がミルクまたはミルク/空気混合物の流量を低下させることで、ポンプ出口の後で既に泡状粘稠度を有するミルク/空気混合物において、これに含まれる気泡は、制限器が組み込まれていない場合よりも、小さい平均直径となる。これらの2つの連続して配置される制限器23、24は、好ましくは通路開口20の内径の20%~60%の間の、異なる制限レベルを有する。第2の制限器24の制限レベルは、効果的には、前の制限器23の制限レベルよりも小さい。
【0023】
通常はボイラを蒸気源として用いるため、これに伴って、そこで発生する蒸気の動作圧力は変動するので、ボイラに接続された蒸気ライン11では、圧力補償のための減圧弁21によって、常に略一定の蒸気圧が入口開口19において得られる。この減圧弁21によって、付与される圧力に応じて、蒸気の流量を減少または増加させることにより、この弁の出口において略一定の圧力が得られる。
【0024】
さらに、サクションライン12には、好ましくはミルク容器と空気供給ライン13との間に、切替弁22が配置されており、これは、ミルクを通過させるときに開くのに対して、もう一方の切替位置では、ミルクフォームを生成すべきときに、絞り弁として構成される。これに関して、ミルク容器内の低下レベルが補われると、すなわち、ミルク容器が補充されると、周知のように、容器の底よりも上方のサクションライン12の下端における静圧はより高くなる。容器が空になると、この圧力は低下し、これに対応して、ポンプ14の一定の吸引力で引き込まれるミルクは量的に減少する。ところが、この絞り弁によって、充填レベルによるこの圧力差は有意ではなくなるので、どのレベルでも略同じ量のミルクが圧送される。
【0025】
空気供給量を制御または調整する空気制御弁15では、本発明の範囲内で、調整可能なニードル弁を可変制御要素として用いる。一方、比例弁などを用いることもできる。
【0026】
これらの弁15、21、22を用いることによって、さらに、通過する媒体の加熱時に一定の条件が維持されること、ひいては、常に非常に優れた品質でミルクフォームが生成されること、が確保される。
【0027】
装置10では、本発明によれば、ミルクまたはミルク/空気混合物のための通路開口20は、室ではなくパイプラインとして構成されており、通路開口に横断方向に開口する蒸気ライン11の少なくとも1つの入口開口19は、通路開口20の内径と略等しい内径またはそれよりも若干小さい内径に寸法設定されている。
【0028】
好適には、通路開口20および/または入口開口19の内径は、それぞれ2.0mm~4.0mmの間である。内径のこの寸法設定は、通過させる媒体のスループットに依存する。通路開口20と蒸気ライン11の長手軸は、少なくとも概ね入口開口19において、交差する。これにより、入口開口19の断面は、これに対して横断方向に延びる通路開口20の通路に重なる。
【0029】
さらに、温度計26、およびミルクフォームの粘稠度を測定するための測定装置27を示しており、これらは、生成されたミルクフォームの通路開口20の後または通路開口20内に組み込まれる。加熱されたミルクまたは生成されたミルクフォームの温度を、搬送中に、温度計26によって測定する。
【0030】
ミルクフォームの粘稠度をこのように測定および特定することによって、これを監視することができ、さらには、空気量割合、ポンプ出力、蒸気圧などのパラメータを調整するとともに、通路開口20または入口開口19における圧力を変更することができ、これにより、所定の目標値を実現するための調整が可能となる。
【0031】
図2によれば、通路開口20、および弁を備えた入口開口19のための、モジュールとして構成された流体圧回路25が形成されている。これにより、修理が必要なときの組み立てまたは分解が簡単に可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明による方法、およびミルクを加熱するための装置は、特にカプチーノまたはその他のホットミルク飲料を生成するために、独立ユニットとしてのミルクモジュールに適用すること、またはコーヒーマシン内にミルクモジュールとして組み込むこと、のどちらも可能である。
【符号の説明】
【0033】
10 装置
11 蒸気ライン
11’ 蒸気ライン
11” 蒸気ライン
12 サクションライン
13 空気供給ライン
14 ポンプ
15 空気制御弁
16 遮断弁
17 遮断弁
18 逆止弁
19 入口開口
20 通路開口
20’ ライン
21 減圧弁
22 切替弁
23 第1の制限器
24 第2の制限器
25 流体圧回路ブロック
26 温度計
27 測定装置
28 二方弁
29 洗浄弁