(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/00 20060101AFI20240111BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240111BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G03G15/00 303
G03G21/00 386
G03G15/01 Y
G03G15/01 113
(21)【出願番号】P 2019226807
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2019134014
(32)【優先日】2019-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】財津 義貴
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-148027(JP,A)
【文献】特開2004-289200(JP,A)
【文献】特開2015-202606(JP,A)
【文献】特開2009-029622(JP,A)
【文献】特開2007-133309(JP,A)
【文献】特開2010-122870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/00
G03G 21/00
G03G 15/01
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに画像を形成する画像形成手段と、
前記シートの特性値を検出する検出手段と、
前記シートを光学的に読み取る読取手段と、
前記シートに画像を形成した後に前記読取手段に前記シートの非画像領域を読み取らせることで取得した判定値と、
前記画像形成手段が前記シートに画像を形成する前に前記検出手段が検出した前記特性値に基づく基準判定値と、を比較することで、画像不良が生じているか否かを判定する判定処理を実行する制御手段と、
前記画像形成手段により画像が形成された前記シートを、再度、前記画像形成手段による前記シートへの画像形成位置に搬送するための循環搬送路と、
を備え
、
前記読取手段は、前記循環搬送路において前記シートの前記非画像領域を読み取り、
前記制御手段は、基準特性値と、前記基準特性値に関連付けられた前記基準判定値とを保持しており、前記検出手段が検出した前記特性値と前記基準特性値との差分が所定値より大きい場合、前記基準特性値を前記検出手段が検出した前記特性値で更新し、前記シートに画像を形成することなく前記シートを前記循環搬送路に搬送して前記読取手段に前記シートの表面を読み取らせ、前記基準判定値を、前記読取手段が前記シートの表面を読み取ることで取得した前記判定値で更新する更新処理を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御手段は
、前記検出手段が検出した前記特性値と前記基準特性値との差分が
前記所定値より小さい場合、前記基準特性値に関連付けられた前記基準判定値を使用して前記判定処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記更新処理の実行後、前記シートに対する前記判定処理を実行することを特徴とする請求項
1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記シートを格納する複数のシート格納部をさらに備えており、
前記制御手段は、前記複数のシート格納部それぞれに対して前記基準特性値と、当該基準特性値に関連付けられた前記基準判定値とを保持することを特徴とする請求項
1から
3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記複数のシート格納部の内、画像形成対象の前記シートが格納されていたシート格納部の前記基準特性値と、前記検出手段が検出した前記特性値との差分が前記所定値より小さい場合、前記シート格納部の前記基準特性値に関連付けられた前記基準判定値を使用して前記判定処理を実行することを特徴とする請求項
4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記複数のシート格納部の内、画像形成対象の前記シートが格納されていたシート格納部の前記基準特性値と、前記検出手段が検出した前記特性値との差分が前記所定値より大きい場合、前記シート格納部の前記基準特性値を前記検出手段が検出した前記特性値で更新し、前記シートに画像を形成することなく前記シートを前記循環搬送路に搬送して前記読取手段に前記シートの表面を読み取らせ、前記シート格納部の前記基準特性値に関連付けられた前記基準判定値を、前記読取手段が前記シートの表面を読み取ることで取得した前記判定値で更新する更新処理を実行することを特徴とする請求項
4又は
5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記検出手段は、前記シートに向けて光を射出し前記シートからの反射光を受光することと、超音波を送信し、前記シートを介して前記超音波を受信することとのいずれか、又は、両方により前記特性値を検出することを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記画像不良が生じていると判定すると、前記画像形成手段による画像形成条件を制御することを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成手段は、像担持体に形成された静電潜像をトナーで現像することで前記像担持体に画像を形成し、
前記画像形成条件は、前記現像の条件であることを特徴とする請求項
8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記判定処理において、前記判定値と前記基準判定値との差分が第1閾値より大きいことが所定の回数に達すると前記画像不良が生じていると判定することを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記判定処理において、前記判定値と前記基準判定値との差分が第2閾値より大きいことが所定の回数に達すると故障通知を行い、
前記第2閾値は前記第1閾値より大きいことを特徴とする請求項
10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記判定値は、白色度を示す値であることを特徴とする請求項1から
11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記判定値は、明度を示す値であることを特徴とする請求項1から
11のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記画像形成手段は、複数の色のトナーを使用して前記シートに画像を形成し、
前記読取手段は、前記シートの色値をさらに読み取り、
前記制御手段は、前記画像不良が生じていると判定すると、前記読取手段が読み取った前記色値と、前記シートの下地の色値との差分に基づき、前記画像不良を生じさせているトナーの色を判定することを特徴とする請求項
13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記判定処理を実行するか否かを設定する設定手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記設定手段が前記判定処理を実行すると設定している場合に前記判定処理を実行することを特徴とする請求項1から
14のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の画像形成装置に関し、特に、画像不良の検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シートに画像を形成後、当該シートを循環搬送路に搬送し、循環搬送路において当該シートの表面を読み取ることで画像不良を検出する画像形成装置を開示している。特許文献2は、シートの種別を判別する判別部を有する画像形成装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-17959号公報
【文献】特開2009-29622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像形成装置においては、カブリと呼ばれる画像不良が生じ得る。カブリとは、シート全体に略均一な濃度のトナーが付着する現象である。トナーによる現像の際の現像条件が不適切であるとカブリが生じ得る。カブリの発生を検出するためには、印刷前のシートの下地の色と、印刷後における当該シートの非画像領域(余白領域)の色を比較する必要がある。したがって、特許文献1に記載の構成においてカブリを検出するためには、シートへの印刷前にシートを循環搬送路に搬送してシートの下地の色を読み取る必要があり、印刷時間が増大する。
【0005】
本発明は、印刷時間の増大を抑制して画像不良を検出する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、画像形成装置は、シートに画像を形成する画像形成手段と、前記シートの特性値を検出する検出手段と、前記シートを光学的に読み取る読取手段と、前記シートに画像を形成した後に前記読取手段に前記シートの非画像領域を読み取らせることで取得した判定値と、前記画像形成手段が前記シートに画像を形成する前に前記検出手段が検出した前記特性値に基づく基準判定値と、を比較することで、画像不良が生じているか否かを判定する判定処理を実行する制御手段と、前記画像形成手段により画像が形成された前記シートを、再度、前記画像形成手段による前記シートへの画像形成位置に搬送するための循環搬送路と、を備え、前記読取手段は、前記循環搬送路において前記シートの前記非画像領域を読み取り、前記制御手段は、基準特性値と、前記基準特性値に関連付けられた前記基準判定値とを保持しており、前記検出手段が検出した前記特性値と前記基準特性値との差分が所定値より大きい場合、前記基準特性値を前記検出手段が検出した前記特性値で更新し、前記シートに画像を形成することなく前記シートを前記循環搬送路に搬送して前記読取手段に前記シートの表面を読み取らせ、前記基準判定値を、前記読取手段が前記シートの表面を読み取ることで取得した前記判定値で更新する更新処理を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、印刷時間の増大を抑制して画像不良を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】一実施形態による画像不良の検出処理のフローチャート。
【
図8】一実施形態による画像不良の検出処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による画像形成装置1の構成図である。シート格納部であるカセット11に収容されたシートは、給送ローラ12によりシートの搬送路に給送され、ローラ13により下流側へと搬送される。画像形成部31は、シートに転写するトナー像を形成する。転写ローラ32は、転写バイアス電圧を出力することで、画像形成部31が形成したトナー像をシートに転写する。トナー像が転写されたシートは、定着部33に搬送される。定着部33は、シートにトナー像を定着させる。その後、シートは、排出ローラ51によりトレイ52に排出される。搬送路には、シートを検出するためのセンサ81a及び81bが設けられる。判別部20は、シートへのトナー像の転写前に、シートの特性を検出する。読取部40は、シートへのトナー像の定着後、シートの表面を光学的に読み取って表面の画像情報を出力する。なお、本実施形態において、読取部40は、定着部33と、画像形成装置からのシートの排出口との間の搬送路を搬送されているシートの表面を読み取っている。しかしながら、読取部40を、画像形成部31と定着部33との間に設ける構成とすることもできる。制御部90は、画像形成装置1を制御する。
【0011】
図2は、画像形成部31の構成図である。像担持体である感光体311は、画像形成時、図の反時計回り方向に回転駆動される。帯電ローラ312は、感光体311を一様な電位に帯電させる。露光部313は、帯電された感光体311を露光して、感光体311に静電潜像を形成する。現像部の現像ローラ314は、現像バイアス電圧を出力し、トナーボックス315のトナーを感光体311の静電潜像に付着させることで静電潜像を現像する。クリーニングブレード316は、シートに転写されず感光体311に残留したトナーをボックス317に回収する。なお、現像ローラ314は、感光体311に近接する近接状態と、感光体311から所定距離だけ離間する離間状態とに設定され得る。所定距離は、近接状態における現像ローラ314と感光体311との距離より大きい。
図2は、近接状態の現像ローラ314を示している。
【0012】
図3は、判別部20の構成図である。判別部20は、超音波を用いてシートの特性値を検出する超音波検出部21と、光を用いてシートの特性値を取得する光検出部22と、を備えている。なお、超音波検出部21と光検出部22のいずれか一方のみを使用する構成であっても良い。超音波検出部21は、シートの搬送路に対して互いに逆側に設けられる送信部211と、受信部212と、を有する。シートが送信部211と受信部212の間にあるときに、送信部211は、超音波を送信し、受信部212は、シートを介してこの超音波を受信する。受信部212は、受信した超音波の強度(レベル)に応じた電気信号を制御部90に出力する。制御部90は、この電気信号のレベルや、最大となるタイミング等からシートの密度や厚さに関する特性値を取得することができる。
【0013】
光検出部22の光源221は、シートに向けて光を射出する。ロッドレンズ222は、シートの表面で反射した反射光を受光部223に導く。受光部223は、反射光の受光強度(又は受光量)に応じた電気信号を制御部90に出力する。制御部90は、この電気信号の平均値や変化量から、シートの輝度・明度や、シート表面の粗さに関する特性値を取得することができる。なお、ガラス224は、シートが光源221や、ロッドレンズ222に接触することを防止するために設けられる。また、コロ225は、シートの表面と光源221及びロッドレンズ222との間の距離が、所定距離以上、離れない様にするために設けられる。なお、受光部223を、シートの搬送方向及び搬送方向と直交する方向に沿って複数設ける構成とすることもできる。受光部223を、2次元平面状に配置することで、制御部90は、シートの2次元的な表面の粗さに関する特性値を取得することができる。
【0014】
図4は、読取部40の構成図である。光源42は、シートに向けて光を射出する。なお、光源42は、シートの搬送方向とは直交する方向(幅方向)の全体に渡る光を射出する。ロッドレンズアレイ43は、複数のロッドレンズを幅方向に並べた構造を有し、シート表面で反射した反射光を受光素子アレイ44に導く。受光素子アレイ44は複数の受光素子を幅方向に並べた構造を有し、各受光素子は、受光強度(又は受光量)に対応した電気信号を制御部90に出力する。制御部90は、この電気信号に基づきシート表面の画像情報を取得することができる。例えば、光源42が白色光を射出し、各受光素子が受光量に対応した電気信号を出力する場合、画像情報は、シート表面の各位置の輝度(又は明度)を示す輝度情報(又は明度情報)、言い換えるとモノクロ画像情報になる。例えば、光源42がR(赤)、G(緑)、B(青)の光を、時間的に切り替えて射出し、各受光素子が受光量に対応した電気信号を出力する場合、画像情報はカラー画像情報となる。ガラス45は、シートが光源42や、ロッドレンズ43に接触することを防止するために設けられる。対向ガイド46は、シートとロッドレンズアレイ43との間の距離が、所定距離以上、離れない様にするために設けられる。
【0015】
図5は、本実施形態による画像不良が生じているかを判定する判定処理のフローチャートである。制御部90は、画像を形成するシートを搬送路に搬送し、当該シートが判別部20による判別位置に到達すると、S10で、判別部20によりシートの特性値を取得する。制御部90は、取得したシートの特性値に基づき、S11で、シートの白色度の基準判定値を取得する。なお、制御部90の図示しないメモリには、予め、特性値と基準判定値との対応関係を示す変換テーブル(関係情報)を格納しておく。
図6は、変換テーブルの一例を示している。本例において、変換テーブルは、光検出部22が検出した特性値である反射光強度変化量と超音波検出部21が検出した特性値である超音波透過信号強度との組み合わせと、基準判定値である白色度との関係を示している。白色度が高い程、シートの色は、白に近い明るい色となる。反射光強度変化量は、受光部223が受光する反射光の強度の変化量であり、受光部223が出力する電気信号強度の変化に対応している。また、超音波透過信号強度は、受信部212がシートを介して受信する超音波の強度であり、受信部223出力する電気信号強度に対応する。
図6の変換テーブルにおいて、これら電気信号強度は、それぞれ、0から1の間の値となる様に正規化されている。変換テーブルは、種々のシートについて測定した白色度と、判別部20を用いて取得したこれら種々のシートの特性値とに基づき作成される。
【0016】
図6の変換テーブルには、反射光強度変化量及び超音波透過信号強度に基づき判定されるシートの種別も表示している。"普通紙"とは主に文書の印刷に用いられるシートである。"厚紙"とは"普通紙"よりも厚いシートである。"薄紙"とは"普通紙"よりも薄いシートである。"光沢紙"とは、"厚紙"と同程度の厚さであって、且つ、表面を平坦にする加工が施されたシートである。"再生紙"とは、使用済のシートをリサイクルした白色度の低い材料で製造されたシートである。
【0017】
なお、光検出部22と超音波検出部21のいずれか一方のみを使用する場合、使用する検出部が取得できる特性値に応じて変換テーブルは作成される。また、使用する特性値についても、
図6に示すものに限定されず、シートの白色度と相関が有る任意の特性値を使用することができる。また、ユーザにより印刷に使用されるシートの種別が事前に明示的に指定されている場合、S10で判別部20が検出した特性値を用いるのではなく、指定されたシートの種別に対応する白色度を基準判定値とすることができる。例えば、シートの種別として厚紙Aが指定されている場合、制御部90は、
図6の変換テーブルより、S11において基準判定値を76と判定する。なお、ユーザは例えば、画像形成装置1の図示されていない入力部(タッチパネル等)を用いてシートの種別を明示的に指定することができる。この様に、入力部(タッチパネル等)は、ユーザによるシート種別の指定を受け付ける受付部として機能する。
【0018】
S11で基準判定値を取得した後、シートには、画像形成部31により画像が形成され、定着部33により画像がシートに定着される。制御部90は、シートが読取部40の読取位置にくると、読取部40にシートの非画像領域、つまり、トナーが転写されていないシートの領域(余白領域)を読み取らせる。そして、制御部90は、S12で、読取部40からシートの非画像領域の読取結果を取得する。読取結果は、非画像領域の画像情報である。制御部90は、画像情報が示す輝度に基づき、非画像領域の白色度を求め、これを判定値とする。なお、輝度から白色度の求め方は、予め制御部90に設定されている。制御部90は、S13で、基準判定値と判定値との差分を求める。
【0019】
制御部90は、S14で、差分が第1閾値より大きいかを判定する。差分が第1閾値以下であると、印刷後のシートの非画像領域は、基準判定値に近く、非画像領域にはトナーが付着していない、或いは、付着していたとしても許容範囲内であると判定できる。したがって、制御部90は、差分が第1閾値以下であると
図5の処理を終了する。一方、差分が第1閾値より大きいと、制御部90は、カブリが生じていると判定する。この場合、制御部90は、S15で、差分が第2閾値より大きいかを判定する。なお、第2閾値は、第1閾値より大きい。差分が第2閾値以下であると、制御部90は、S16で、カブリを抑える様に、画像形成条件を調整する。本実施形態においては、カブリを抑えるため、現像条件、例えば、現像バイアス電圧を調整するが、他の画像形成条件であっても良い。一方、差分が第2閾値より大きいと、制御部90は、現像バイアス電圧の調整ではカブリを抑えることができないと判定し、S17でユーザに現像部の故障を通知する。
【0020】
故障通知は、画像形成装置1の図示しない表示部に表示したり、図示しないスピーカーから警告音又は音声を出力したり、ネットワークを介して所定の装置にメッセージを送信したりすることにより行うことができる。また、故障通知と共に、或いは、故障通知に代えて、画像形成装置1は、現像部の詳細な故障診断を実行する構成とすることもできる。なお、故障診断の内容は、予め決定して制御部90に設定しておく。また、
図5では、1つのシートについて、差分が第1閾値を超えているとカブリが生じていると判定したが、差分が第1閾値を超えた回数が所定回数に達するとカブリが生じていると判定する構成とすることもできる。差分と第2閾値との比較についても同様である。
【0021】
以上、本実施形態では、印刷前に読取部40によりシートを読み取る必要がなく、画像不良の検出のためにシートの印刷時間が長くなることを抑えることができる。
【0022】
なお、本実施形態において、判別部20は、シートへの画像形成前にシートの特性値を検出したが、超音波を用いる場合はシートへの画像形成後にシートの特性値を検出する構成であっても良い。また、
図5のフローチャートにおいては、S14で差分が第1閾値より大きいと画像不良が生じていると判定し、差分が第1閾値以下であると画像不良が生じていないと判定していた。しかしながら、S14で差分が第1閾値以上であると画像不良が生じていると判定し、差分が第1閾値未満であると画像不良が生じていないと判定する構成であっても良い。つまり、差分が第1閾値と等しい場合の処理を、差分が第1閾値より大きい場合と同じとするか、差分が第1閾値より小さい場合と同じとするかは設計事項であり、どちらでも良い。他の閾値についても同様である。
【0023】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について、第一実施形態との相違点を中心に説明する。
図7は、本実施形態による画像形成装置の構成図である。なお、
図1で説明した構成要素と同様の構成要素については、同じ参照符号を付与してその説明については省略する。本実施形態において、画像形成装置1は、4つの画像形成部31Y、31M、31C及び31Kを有する。なお、各画像形成部の構成は、基本的には
図2と同様である。なお、
図7において、各画像形成部の感光体311は、図の時計回り方向に回転駆動される。画像形成部31Y、31M、31C及び31Kは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー像を感光体311に形成し、中間転写ベルト325に転写する。なお、中間転写ベルト325は、画像形成時、図の反時計回り方向に回転駆動される。各画像形成部がトナー像を重ねて中間転写ベルト325に転写することで、中間転写ベルト325にはフルカラーのトナー像が形成される。中間転写ベルト325に転写されたトナー像は、中間転写ベルト325の回転により、転写ローラ32の対向位置に搬送され、ここで、シートに転写される。なお、シートに転写されず、中間転写ベルト325に残留したトナーは、クリーニングブレード326によりボックス327に回収される。
【0024】
また、本実施形態の画像形成装置1は、シートの両面に画像を形成するための循環搬送路82を有する。シートの片面のみに画像を形成する場合、トナー像の定着後、シートは、排出ローラ51によりトレイ52に排出される。なお、この際、フラッパ62は、シートを排出ローラ51に向けて搬送する向きに設定される。一方、シートの両面に画像を形成する場合、片面に転写されたトナー像の定着後、シートは、反転ローラ61に向けて搬送される。なお、この際、フラッパ62は、シートを反転ローラ61に向けて搬送する向きに設定される。シートの後端が、循環搬送路82への分岐位置を超えると、反転ローラ61は、それまでとは逆方向に回転される。これにより、シートは、循環搬送路82に向けて搬送される。なお、この際、フラッパ62は、シートを循環搬送路82に向けて搬送する向きに設定される。その後、シートは、ローラ47、71及び13により、再度、画像形成位置、つまり、転写ローラ32の対向位置に搬送され、シートの他の面にトナー像の転写が行われる。本実施形態においても、搬送路に沿って、シートを検出するセンサ81a、81b及び81cが設けられる。本実施形態において、読取部40は、循環搬送路82に設けられる。なお、循環搬送路82に向けてシートを搬送するための構成は、
図7の構成に限定されない。例えば、排出ローラ51を両方向に回転可能な様に構成し、排出ローラ51の逆回転により、循環搬送路82に向けてシートを搬送する様に構成することもできる。
【0025】
図8は、本実施形態による画像不良の判定処理のフローチャートである。制御部90は、画像を形成するシートを搬送路に搬送し、当該シートが判別部20による判別位置に到達すると、S20で、判別部20によりシートの特性値を取得する。制御部90は、S21で、取得した特性値と、制御部90が保持する基準特性値との第1差分を求める。詳細については、後述するが、基準特性値は、第1差分が所定値である第3閾値以下である間は更新されず、第1差分が第3閾値より大きくなると、そのときに判別部20が検出した特性値で更新される。特性値は、シートの特性を示すため、これは、同様の特性のシートに対して印刷を行っている間は基準特性値を更新せず、印刷を行うシートの特性が所定の基準(第3閾値)以上変動すると、基準特性値を更新することに対応する。
【0026】
第1差分が第3閾値以下であると、制御部90は、S23において、シートに画像を形成する。その後、制御部90は、シートを循環搬送路82に搬送し、S24で、シートの非画像領域を読み取って判定値を取得し、S25で、判定値と制御部90が保持する基準判定値との第2差分を求める。なお、本実施形態において、判定値及び基準判定値は、シートの下地の明度を示す値とする。しかしながら、第一実施形態と同様に、判定値及び基準判定値を白色度とすることもできる。さらに、判定値及び基準判定値を、任意の色空間の色値や、輝度とすることもできる。詳細については、後述するが、基準判定値は、基準特性値を取得したシートの下地の明度である。したがって、基準判定値は、基準特性値を更新する際に更新される。なお、後述する様に、カブリの色を判定するため、制御部90は、S24で、シートの非画像領域の色値も読み取る。また、基準特性値を更新する際、制御部90は、基準特性値を取得したシートの下地の色値を基準色値として保存する。
【0027】
制御部90は、S26で、第2差分が第1閾値より大きいかを判定する。第2差分が第1閾値以下であると、印刷後のシートの非画像領域は、基準判定値に近く、非画像領域にはトナーが付着していない、或いは、付着していたとしても許容範囲内であると判定できる。したがって、制御部90は、第2差分が第1閾値以下であると
図8の処理を終了する。一方、第2差分が第1閾値より大きいと、制御部90は、カブリが生じていると判定する。この場合、制御部90は、S27で、カブリの色、つまり、非画像領域に付着しているトナーの色を判定する。これは、S24で判定値と共に取得した色値に基づき行うことができる。より詳しくは、基準色値は、シートの下地の色を示すため、S24で取得した色値と基準色値との差分は、シートの下地の色の影響を抑えたトナーの色を示している。したがって、制御部90は、この差分に基づきカブリの色を判定することができる。続いて、制御部90は、S28で、第2差分が第2閾値より大きいかを判定する。なお、第2閾値は、第1閾値より大きい。第2差分が第2閾値以下であると、制御部90は、S29で、カブリを抑える様に、カブリの色に対応する現像部の現像バイアス電圧を調整する。一方、第2差分が第2閾値より大きいと、制御部90は、現像バイアス電圧の調整ではカブリを抑えることができないと判定し、S30でユーザにカブリの色に対応する現像部の故障を通知する。
【0028】
一方、制御部90は、S22において、第1差分が第3閾値より大きいと、S31において、基準特性値と、基準判定値と、基準色値の更新処理を行う。この場合、制御部90は、S20で検出した特性値を、基準特性値とする。また、制御部90は、シートに画像を形成することなく、シートを循環搬送路82に向けて搬送する。なお、シートにトナーが付着することを防止するため、制御部90は、現像ローラ314を離間状態に設定する。読取部40は、循環搬送路82を搬送されているシートの表面(下地)の明度及び色値を読み取る。そして、制御部90は、この読み取ったシートの明度を基準判定値とする。また、制御部90は、この読み取ったシートの色値を基準色値とする。制御部90は、更新処理の実行後、シートを、再度、判別部20の対向位置に搬送して判定処理を実行する。なお、循環搬送路82での搬送により、再度、判別部20の対向位置にシートが搬送された際、判別部20がシートの特性を取得する面は、判別部20が、最初にシートの特性を取得した面とは逆になる。したがって、制御部90は、読取部40によるシートの読み取り後、当該シートに画像を形成することなく、再度、シートを循環搬送路82に向けて搬送する。その後、制御部90は、S20から処理を繰り返す。なお、シートの両側の面の色及び特性に大きな差がない場合、読取部40でシートの下地の色を読み取った後、そのままS20の処理を開始する構成とすることができる。
【0029】
本実施形態による画像形成装置1は、シートを収納するカセット11が1つのみであった。しかしながら、複数のカセット11を有し、複数のカセット11から選択的にシートを給送する画像形成装置1が一般的に使用されている。通常、複数のカセット11には、カセット11毎に異なる種類のシートが収容される。この様な場合、制御部90は、カセット11それぞれに対して基準特性値と、当該基準特性値に関連付けられた基準判定値及び基準色値を管理する。そして、画像形成対象であるシートの特性値が、当該シートを格納していたカセット11の基準特性値に対して第3閾値より大きく変動すると、制御部90は、当該カセット11の基準特性値、基準判定値及び基準色値を更新する。また、カブリの検知についても、シートを給送したカセット11の基準判定値に基づき行われる。
【0030】
なお、基準特性値、基準判定値及び基準色値は、第1差分が第3閾値より大きくなったときのみならず、現像部を交換/修理した際や、所定枚数のシートに印刷を行う度に更新する構成とすることもできる。
【0031】
以上、本実施形態では、基準判定値を動的に更新しながらカブリを判定するため、カブリの検知精度を高くすることができる。しかしながら、基準判定値を取得するのは、特性値が第3閾値より大きく変動した場合等、所定の条件が満たされた場合のみであるため、印刷に要する時間が全体的に長くなることを防ぐことができる。
【0032】
なお、上記実施形態では、カブリの検出を例にして説明したが、印刷前のシートの下地の色と、印刷後のシートの非画像領域の色とを比較することで検出できる任意の画像不良に本発明を適用することができる。また、第一実施形態において、読取部40は、定着部33と、画像形成装置からのシートの排出口との間の搬送路を搬送されているシートの表面を読み取っていた。しかしながら、第二実施形態の画像形成装置の様に、循環搬送路82を有する画像形成装置の場合、第一実施形態における読取部40を循環搬送路82に設けることもできる。
【0033】
また、画像不良の判定処理(
図5、
図8)を行うか否かを、ユーザが設定する構成とすることもできる。例えば、ユーザは、画像形成装置1の図示されていない入力部(タッチパネル等)を用いて画像不良の判定処理を実行するか否かを設定することができる。この様に、入力部(タッチパネル等)は、画像不良の判定処理を実行するか否かを設定する設定部として機能する。制御部は、設定部が画像不良の判定処理を実行すると設定している場合に判定処理を行い、それ以外の場合には判定処理を行わない。
【0034】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0035】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0036】
31:画像形成部、20:判別部、40:読取部、90:制御部