(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】スティック剤形用化粧料組成物およびメイクアップ修正用スティック
(51)【国際特許分類】
A61K 8/92 20060101AFI20240111BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240111BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/60 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/55 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/02
A61Q1/02
A61K8/06
A61K8/60
A61K8/55
A61K8/31
A61K8/37
(21)【出願番号】P 2019230487
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】10-2019-0000362
(32)【優先日】2019-01-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【氏名又は名称】久本 秀治
(72)【発明者】
【氏名】金 鏡 眞
(72)【発明者】
【氏名】沈 ▲民▼ 敬
(72)【発明者】
【氏名】梁 槿 容
(72)【発明者】
【氏名】朴 孝 英
(72)【発明者】
【氏名】兪 賢 珠
(72)【発明者】
【氏名】趙 泓 來
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-508919(JP,A)
【文献】特開2005-239590(JP,A)
【文献】Dualist Matte and Illuminating Concealer,ID 6173615,Mintel GNPD[online],2018年12月,[検索日2023.06.28],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックス、オイル粘増剤、オイル、水、乳化剤および塩基を含み、
前記ワックスは、25℃で固体形状を有する油脂類であり、
前記オイル粘増剤は、デキストリン系オイル粘増剤を含み、
前記オイルは、ハイドロカーボン系オイル、エステル系オイル、ジエステル系オイル、トリグリセリド系オイル、カーボネート系オイル、アルコール系オイル、シリコーン系オイルまたはこれらの組み合わせであり、
前記乳化剤は、油中水型またはシリコーン中水型剤形を有し、
前記塩基は、アミノメチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、ジソディウムフォスフェートおよびメチルグルカミンからなる群より選ばれたいずれか一つ以上を含み、化粧料組成物総量に対して0.1重量%~10重量%で含まれ、
7<pH≦10である、スティック剤形用化粧料組成物。
【請求項2】
前記スティック剤形用化粧料組成物は、7<pH≦9である、請求項1に記載のスティック剤形用化粧料組成物。
【請求項3】
前記塩基は、KOH、NaOH
、トリエタノールアミ
ンおよびトロメタミンからなる群より選ばれたいずれか一つ以上を
さらに含む、請求項1に記載のスティック剤形用化粧料組成物。
【請求項4】
前記乳化剤は、HLB(Hydrophilic-lipophilic balance;親水性-親油性バランス)が7以下の化合物を1種以上含む、請求項
1に記載のスティック剤形用化粧料組成物。
【請求項5】
前記化粧料組成物は、界面活性剤、パウダー、水相粘増剤またはこれらの組み合わせを含む添加剤をさらに含む、請求項1に記載のスティック剤形用化粧料組成物。
【請求項6】
前記化粧料組成物は、メイクアップ修正用であることを特徴とする、請求項1に記載のスティック剤形用化粧料組成物。
【請求項7】
請求項1
~6のいずれか一項に記載の化粧料組成物を用いて製造された、メイクアップ修正用スティック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スティック剤形用化粧料組成物およびそれを用いて製造されたメイクアップ修正用スティックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に化粧の仕上げ用に使われるパウダータイプの製品としてはその特性と類型によって大きくフェースパウダー、パウダーパクト、ツウィンパクトなどに分けられる。これらの製品は様々な種類のパウダーを少量のオイルバインダーでつなげてパウダー粒子間の飛散なく皮膚に密着して塗られるようにして皮膚表現を改善することを共通の特徴としている。このようなパウダー製品を使用する目的は消費者によって軽重はあるが、主に皮膚の欠点をカバーし、汗と皮脂に対するコントロール効果で華やかな皮膚を表現し、その他にも紫外線からの皮膚保護効果などが考えられる。
【0003】
化粧料、特にメイクアップ化粧料において、その効果が長時間にわたって持続されることは重要である。メイクアップ後に時間が経過するにつれて、汗と皮脂分泌などによってムラや浮き、色変化の現象が起きるので、これらの影響を最小化することは、化粧の持続性において大変重要である。従来にはメイクアップの修正のために、例えば、オイルペーパー/フィルムなどで分泌した皮脂を除去した後にパウダー製品を塗布する方法や、クレンジングティッシュなどで既存のメイクアップを落として再び塗布する方法や、ファンデーションを薄く塗布する方法などが使われた。しかし、皮脂を除去してパウダー製品を重ね塗りする場合、ムラなどの現象は減るが、カバー力が足りず満足できない修正になり、クレンジング後に再び塗布する方法については非常に煩わしいという問題がある。また、ファンデーションを重ね塗りする場合、カバー力はあるが、厚い化粧膜を形成して不自然な仕上げになりやすい。
【0004】
最新のメイクアップのトレンドは、皮膚の欠点をカバーしながらも、あたかも化粧をしていないような自然な皮膚表現を要求する。従来のメイクアップ修正に使われたパウダー製品やファンデーションの場合、適正水準のカバーおよび皮膚表現のために顔料を含有するため、これらの製品を重ねて塗るほど、不自然な皮膚表現により満足できないことが多く、修正用に適した化粧料の開発が必要な状態である。
【0005】
従来のパウダー類を剤形化するために、板状パウダー成分、球状パウダー成分、顔料、オイルバインダー成分などを主に使用するが、成形安定性などの理由から各成分の含有量は制限され、特定のパウダー成分の含有量を高めにくい問題があった。
【0006】
そのため、最近では、パウダー類なしでスティック剤形を形成できる修正化粧用化粧料組成物が再び注目されている。従来にも修正化粧用スティックはあったが、これを構成する化粧料組成物はオイル粘増剤、オイルおよび界面活性剤からなるものであり、オイルと界面活性剤の力でメイクアップを除去する水準に極限されていた。また、従来の修正化粧用スティックは顔料をよく落とすことはできるが、染料をよく落とすことはできないという致命的な短所がある。したがって、強烈な色感のチントを唇に塗布すると唇の皮膚にチントの染料が染着するが、チントを塗布する時にきれいに塗布しないと、染着した染料によって歪んだ唇線が長時間維持され、ユーザーに大きい不便さを招く。
【0007】
そこで、本発明者らは、顔料でない染料のような皮膚に直接染着する着色剤の塗布時にも、これを落とす方法および化粧料組成物の組成に対する研究を絶えず行った結果、皮膚に染着した染料を容易でかつきれいに落とすことができるメイクアップ修正用スティック剤形化粧料組成物を開発するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態は、高発色のチントのように強烈な色感を有する染料を着色剤として使用した化粧品を皮膚に塗布した後にも、それを容易にきれいに落とすことができるスティック剤形用化粧料組成物を提供する。
【0009】
他の一実施形態は、前記スティック剤形用化粧料組成物を用いて製造されたメイクアップ修正用スティックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態によれば、ワックス、オイル粘増剤、オイル、水、乳化剤および塩基を含み、7<pH≦10である、スティック剤形用化粧料組成物を提供する。
【0011】
前記スティック剤形用化粧料組成物は、7<pH≦9、すなわち、7超9以下のpHを有し得る。
【0012】
前記塩基は、KOH、NaOH、アミノメチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、トリエタノールアミン、ジソディウムフォスフェート、メチルグルカミンおよびトロメタミンからなる群より選ばれたいずれか一つ以上を含み得る。
【0013】
前記塩基は、前記化粧料組成物総量に対して0.1重量%~10重量%で含まれ得る。
【0014】
前記乳化剤は、油中水型またはシリコーン中水型剤形を有する乳化剤であり得る。
【0015】
前記乳化剤は、HLB(Hydrophilic-lipophilic balance;親水性-親油性バランス)が7以下の化合物を1種以上含み得る。
【0016】
前記オイルは、ハイドロカーボン系オイル、エステル系オイル、ジエステル系オイル、トリグリセリド系オイル、カーボネート系オイル、アルコール系オイル、シリコーン系オイルまたはこれらの組み合わせを含み得る。
【0017】
前記オイル粘増剤は、デキストリン系オイル粘増剤であり得る。
【0018】
前記ワックスは、25℃で固体形状を有する油脂類であり得る。
【0019】
前記化粧料組成物は、界面活性剤、パウダー、水相粘増剤またはこれらの組み合わせを含む添加剤を、さらに含み得る。
【0020】
前記化粧料組成物は、メイクアップ修正用であることを特徴とすることができる。
【0021】
他の一実施形態は、前記化粧料組成物を用いて製造されたメイクアップ修正用スティックを提供する。
【発明の効果】
【0022】
一実施形態によるスティック剤形用化粧料組成物は、スティックで製造されることができ、ユーザーに容易な使用感を提供し、顔料だけでなく皮膚に染着した染料まできれいに除去することができ、従来のスティック型修正化粧用組成物と比較してメイクアップ修正効果において大きな差を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、染料が皮膚に塗布されたときを示す模式図である。
【
図2】
図2は、顔料が皮膚に塗布されたときを示す模式図である。
【
図4】
図4は、染料が染着した皮膚に、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2による各化粧料組成物で製造されたスティックを処方し、染着した染料が落ちるかどうかを確認した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0025】
本明細書において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるという時、これは他の部分「真上に」ある場合だけでなくその中間にまた他の部分がある場合も含む。逆にある部分が他の部分の「真上に」あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。
【0026】
本明細書において別途の定義がない限り、「組み合わせ」とは混合または共重合を意味する。また、「共重合」とはブロック共重合ないしランダム共重合を意味し、「共重合体」とはブロック共重合体ないしランダム共重合体を意味する。
【0027】
以下、一実施形態によるスティック剤形用化粧料組成物について説明する。
【0028】
一実施形態によるスティック剤形用化粧料組成物は、ワックス、オイル粘増剤、オイル、水、乳化剤および塩基を含み、pHが7超10以下の値を有する。
【0029】
例えば、前記スティック剤形用化粧料組成物のpHは、7<pH≦9である。
【0030】
一実施形態による化粧料組成物のpHが7以下の場合、染着した染料の除去能が劣り、一実施形態による化粧料組成物のpHが10超の場合、これを皮膚に塗布したとき皮膚刺激が激しくなるため好ましくない。さらに化粧品法規上、pHが10を超える組成物は化粧料組成物として使用することができない。
【0031】
前記塩基は、KOH、NaOH、アミノメチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、トリエタノールアミン、ジソディウムフォスフェート、メチルグルカミンおよびトロメタミンからなる群より選ばれたいずれか一つ以上を含み得る。例えば、前記塩基は、アミノメチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、ジソディウムフォスフェートおよびメチルグルカミンからなる群より選ばれたいずれか一つ以上を含み得る。前記塩基としてKOH、NaOH、トリエタノールアミンなどを使用する場合、一実施形態による化粧料組成物のpHを前記範囲に容易に調節することもできるが、固体相への成形が多少難しい。しかし、前記塩基としてアミノメチルプロパンジオール、アミノメチルプロパノール、ジソディウムフォスフェート、メチルグルカミンなどを使用する場合、一実施形態による化粧料組成物は、前記範囲のpHを有すると同時に皮膚に染着した染料を除去する能力を最大化することができ、メイクアップ修正用途に使われるのに適するだけでなく、固体相への成形も容易であり、スティック形態のメイクアップ修正用化粧品を容易に提供することができる。
【0032】
前記塩基は、前記化粧料組成物総量に対して0.1重量%~10重量%で含まれ得る。前記塩基が前記化粧料組成物総量に対して前記含有量範囲で含まれた場合、皮膚に染着した染料を除去する能力を最大化することができる。ただし、前記化粧料組成物のpHが酸性、中性または塩基性であるかによって前記塩基の含有量も少しずつ変わる。
【0033】
さらに、一実施形態による化粧料組成物は水を含むため、前記塩基は皮膚に染着した染料除去という塩基としての役割をより卓越するように遂行することができる。
【0034】
一実施形態による化粧料組成物は、スティック剤形を有するので、水を剤形化したスティック内に含ませるために、そして前述した塩基も組成物内に必ず含まれなければならないため、一実施形態による化粧料組成物は必ず乳化スティックを形成しなければならない。したがって、必ず乳化剤が必要であり、例えば前記乳化剤は油中水型剤形またはシリコーン中水型剤形を有し得る。
【0035】
前記乳化剤は、HLB(Hydrophilic-lipophilic balance;親水性-親油性バランス)が7以下の化合物を1種以上含み得る。例えば、前記乳化剤は、7以下のHLBを有するポリグリセリルエステル乳化剤、具体的にはポリグリセリル-2セスキオレエート(Polyglyceryl-2 Sesquioleate)、ポリグリセリル-10ペンタオレエート(POLYGLYCERYL-10 PENTAOLEATE)、ポリグリセリル-5ヘキサステアレート(POLYGLYCERYL-5 HEXASTEARATE)、ポリグリセリル-4ジイソステアレート/ポリヒドロキシステアレート/セバケート共重合体(POLYGLYCERYL-4 DIISOSTEARATE/POLYHYDROXYSTEARATE/SEBACATE)、ジイソステアロイルポリグリセリル-3ダイマージリノレエート(DIISOSTEAROYL POLYGLYCERYL-3 DIMER DILINOLEATE)またはこれらの組み合わせなどを含み得るが、必ずしもこれに限定されるものではなく、前述した成分のうち2以上の混合物を乳化剤として使用することもできる。
【0036】
また、前記乳化剤として下記化合物も使用できるが、これらは後述する界面活性剤としても使用が可能である。
- Cyclopentasiloxane*disteardimonium hectorite*PEG-10 dimethicone
- Cetyl PEG/PPG-10/DIMETHICONE*PENTAERYTHRYTIL TETRA-DI-T-BUTYL HYDROXYHYDROCINNAMATE PEG-10 DIMETHICONE
- PEG-10 DIMETHICONE
- PEG-30 DIPOLYHYDROXYSTEARATE
- LAURYL PEG-9 POLYDIMETHYLSILOXYETHYL
- DIISOSTEAROYL POLYGLYCERYL-3 DIMER DILINOLEATE
- LAURYL PEG-8 DIMETHICONE
- DIMETHICONE*PENTAERYTHRITYL TETRA-DI-T-BUTYL*BIS-PEG/PPG-14/14 DIMETHICONE
- POLYGLYECRYL-4 DIISOSTEARATE/POLYHYDROXYSTEARATE/SEBACATE
- CETYL PEG/PPG-10/1 DIMETHICONE*PENTAERYTHRYTHRITYL TETRA-DI-T-BUTYL HYDROXYHYDROCINNAMATE
- GLYCERYL OLEATE
- POLYGLYCERYL-2 DIPOLYHYDROXYSTEARATE
【0037】
前記オイルは、ポリブテン(Polybutene)、水添ポリイソブテン(Hydrogenated polyisobutene)、天然オイルなどのハイドロカーボン系オイルや、ヘキシルラウレート(Hexyl laurate)、ジカプリリルカーボネート(Dicaprylyl carbonate)、ジイソステアリルマレート(Diisostearyl malate)、ブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート(Butylene glycol dicaprylate/dicaprate)、セチルエチルヘキサノエート(Cetyl ethylhexanoate)、トリエチルヘキサノイン(Triethylhexanoin)、ジセテアリルダイマージリノレエート(Dicetearyl dimer dilinoleate)などのエステル系もしくはジエステル系オイルや、カプリリック/カプリックトリグリセリド(Caprylic/capric triglyceride)、パルミチック/ステアリックトリグリセリド(Palmitic/Stearic Triglyceride)などのトリグリセリド系オイルや、ジプロピルカーボネート(Dipropyl Carbonate)、ヒドロキシプロピレンカーボネート(Hydroxypropylene Carbonate)、プロピレンカーボネート(Propylene Carbonate)などのカーボネート系オイルや、オクチルドデカノール(octyldodecanol)などのアルコール系オイルや、フェニルトリメチコン(Phenyl trimethicone)、ジメチコン(Dimethicone)などのシリコーン系オイルや、またはそれらの組み合わせを含み得るが、オイルの種類がこれに限定されるものではない。
【0038】
前記オイル粘増剤は、デキストリン系オイル粘増剤、グルタミド系オイル粘増剤またはこれらの組み合わせであり得る。前記デキストリン系オイル粘増剤は、パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸/2-エチルヘキサン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、パルミチン酸/ステアリン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、イソパルミチン酸デキストリン、イソステアリン酸デキストリンなどが挙げられ、前記グルタミド系オイル粘増剤は、ジブチルラウロイルグルタミド、ジブチルエチルヘキサノイルグルタミドなどが挙げられ、これらより選ばれる1種または2種以上を使用することができる。
【0039】
前記ワックスは、25℃で固体形状を有する油脂類であり得、温度を高めて前記ワックスの融点以上の温度では液体性状を有し得る。慣用名で「-wax」がつく原料以外にも、シェーバターなどのように「-butter」がつく場合、またはその他語尾がつかない原料もすべて本願のワックスとして使用することができる。
【0040】
一実施形態による化粧料組成物がスティック剤形を有し得るのは、前記ワックスおよびオイル粘増剤(具体的にはデキストリン系オイル粘増剤)を使用するためであり、前記ワックスおよびオイル粘増剤を使用しないと、スティック剤形を形成できない。したがって、従来の液状リムーバーなどは、一実施形態による化粧料組成物とはその組成が相違するだけでなく、液状リムーバーは固体状態ではないので、使用がわずらわしい問題があり、液状であるためクレンジング力よりは皮膚保湿面で優れた効果を奏する。これに対して、一実施形態によるスティック剤形用化粧料組成物は、従来の液状リムーバーと比較して手軽な使用感を提供し、固相であるため皮膚保湿よりは皮膚に染着した染料の除去(クレンジング力の向上)に非常に優れた効果を奏するため、使用感およびクレンジング力の側面から一実施形態による化粧料組成物は、従来のリムーバー用化粧料組成物と比較して効果面においても大きな差を有する。
【0041】
一方、前記スティック剤形用化粧料組成物は、前記水をスティック内に安定化させ、クレンジング力をさらに向上させるために界面活性剤をさらに含み得、塗布性の向上などを図るためにパウダー、水相粘増剤またはこれらの組み合わせを含む添加剤をさらに含み得る。
【0042】
前記界面活性剤としては前述した化合物を使用し得る。
【0043】
前記パウダーとしては、タルク(Talc)、マイカ(Mica)および合成フルオロフロゴパイト(Synthetic Fluorphlogopite)などの板状パウダー、ウレタンパウダー、シリカ(Silica)、ポリメチルメタクリレート(Polymethylmethacrylate)、カルシウムアルミニウムボロシリケート(Calcium aluminium borosilicate)などの球状パウダーまたはこれらの組み合わせなどを使用し得る。
【0044】
前記水相粘増剤としては、カルボマー、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、アカシアセネガルガム、ベントナイト、ケイ酸マグネシウムナトリウム、PEG-14M、ヒドロキシエチルアクリレート/ナトリウムアクリロイルジメチルタウレート共重合体、オクチルアクリルアミド/アクリレート/ブチルアミノエチルメタクリレート共重合体またはこれらの組み合わせなどを使用し得る。
【0045】
前述したように、一実施形態による化粧料組成物は、メイクアップ修正用、具体的には皮膚に染着した染料を落とすことを特徴とし、紫外線遮断や皮膚保湿などのような目的は有しない。
【0046】
また、一実施形態によるスティック剤形用化粧料組成物は、化粧料の製造時に通常使用するエタノール、抽出物、機能性効能成分、色素、香り、防腐剤などの補助成分を適正量含有し得、好ましくはスティック剤形用化粧料組成物の総量に対して0重量%~90重量%の量で含有し得る。
【0047】
他の一実施形態は、前記スティック剤形用化粧料組成物を用いて製造されたメイクアップ修正用スティックを提供する。
【0048】
以下、本発明の内容を実施例および比較例によりさらに具体的に説明する。これら実施例は本発明の内容を理解するために提示されるだけであり、本発明の権利範囲はこれら実施例と試験例に限定されるものではなく、当業界において通常周知されている変形、置換および挿入などを遂行することができ、これに対することも本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0049】
<製造例:スティック剤形用化粧料組成物の製造>
下記表1の組成によりスティック剤形用化粧料組成物を製造した。
【0050】
【0051】
<試験例:pH、染着した染料クレンジング効果および使用感(官能)>
前記製造例で製造された組成物をそれぞれ固形化してスティック剤形に成形した後、実施例1~実施例3および比較例1~比較例4のスティック剤形化粧料のpH、染着した染料のクレンジング効果および使用感を比較評価し、その結果を下記表2に示す。染着した染料のクレンジング効果および使用感は、社内パネル25名を対象に強力な色感を有するチント(染料)を塗った後、前記製造例のスティック剤形用化粧料組成物それぞれを硬化させて製造したスティックを、前記チントを塗ったところに塗布して落ちやすさの程度(クレンジング)および感じられる使用感の程度を数値化(1から10までのいずれか一つ。数字が大きくなるほど該当項目の程度が激しい。例えば数字が大きくなるほどスティックのクレンジング効果が良く、使用感が優れる。)して表現させ、その結果を下記表2に示す。
【0052】
【0053】
前記表2からわかるように、一定の範囲のpHを有する一実施形態による化粧料組成物は、スティック剤形で製造が可能であるため、優れた使用感を提供できるだけでなく、皮膚に染着した染料をきれいに落としてクレンジング力が非常に優れることを確認することができる。
【0054】
また、染着効果を肉眼で確認するために、
図3のように腕にチント(染料)を塗り広げた後、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2による化粧料組成物それぞれを硬化させて製造したスティックを前記腕に処方し、染料がよく落ちるかどうかを確認した(
図4参照)。その結果、中性(比較例1)および酸性(比較例2)のpHを有する化粧料組成物の場合、染着した染料を落とす効果が殆どなく、塩基性のpHを有する化粧料組成物(実施例2、実施例3)の場合、染着した染料を落とす効果があるが、強塩基性(実施例3)のpHを有すると皮膚に刺激感が激しく、弱塩基性のpHを有する組成物が化粧料組成物として最も適することを確認することができる。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を用いた当業者の種々の変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。