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特許7417417電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置
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  • 特許-電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20240111BHJP
   G03G 5/04 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G03G5/05 101
G03G5/04
G03G5/05 104B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019237081
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105672
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】満田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】池末 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 久美子
(72)【発明者】
【氏名】鯨井 秀文
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-314969(JP,A)
【文献】特開平06-075386(JP,A)
【文献】特開平03-282477(JP,A)
【文献】特開昭61-095358(JP,A)
【文献】特開平05-323646(JP,A)
【文献】特開昭62-008160(JP,A)
【文献】特開2001-242656(JP,A)
【文献】特開2016-065950(JP,A)
【文献】特開2006-243642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に単一の感光層を有する電子写真感光体であって、
該感光層が、結着樹脂、電荷発生材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、シロキサン変性アクリル樹脂、及びターフェニル化合物を含有し、
該ターフェニル化合物の含有量が、該シロキサン変性アクリル樹脂の全質量に対して、50質量%以上であることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項2】
前記ターフェニル化合物が、下記式(1)で示されるターフェニル化合物である請求項1記載の電子写真感光体。
【化1】
(式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基を示す。)
【請求項3】
前記式(1)中、R、R、及びRがそれぞれ水素原子である請求項に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体、電子写真感光体を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター、及び複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体としては、例えば、積層型の感光層を有する電子写真感光体、及び単層型の感光層を有する電子写真感光体が挙げられる。積層型の感光層は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含む複数の層からなる感光層である。単層型の感光層は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する単一の感光層である。
【0003】
近年、層構成が簡単で生産性に優れる単層型の感光層を有する電子写真感光体が広く検討されている。単層型の感光層を有する電子写真感光体は、繰り返しの使用により、感光層が摩耗した場合、感光体の電子写真特性に与える影響が、積層型の感光層を有する感光体に比べて大きくなり易い。よって、単層型の感光層を有する電子写真感光体は、感光層の耐摩耗性が課題となる。
【0004】
感光体の表面層の耐摩耗性を向上させる技術として、特許文献1には、シロキサン変性アクリル樹脂を電子写真感光体の表面層に含有させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6406931号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らが、特許文献1に記載の技術によって、単層型の感光層を有する電子写真感光体の耐摩耗性の向上を試みたところ、感光体の耐摩耗性は向上する一方で、残留電位が大きいことが課題となった。
【0007】
したがって、本発明の目的は耐摩耗性が良好で、残留電位が小さい、単層型の感光層を有する電子写真感光体、プロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかる電子写真感光体は、支持体と、該支持体上に単一の感光層を有する電子写真感光体であって、
該感光層が、結着樹脂、電荷発生材料、正孔輸送材料、電子輸送材料、シロキサン変性アクリル樹脂、及びターフェニル化合物を含有し、
該ターフェニル化合物の含有量が、該シロキサン変性アクリル樹脂の全質量に対して、50質量%以上であることを特徴とする電子写真感光体。
【0009】
又、本発明は、上記電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカートリッジに関する。
【0010】
又、本発明は、上記電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有する電子写真装置に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐摩耗性が良好で、残留電位の小さい、単層型の感光層を有する電子写真感光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電子写真感光体を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
本発明者が検討したところ、シロキサン変性アクリル樹脂を含有する単層型の感光層を有する電子写真感光体は、耐摩耗性が良好な一方で、残留電位が大きいことが課題となった。上記の課題を解決するために、感光層に含有させる添加剤を検討した。その結果、ターフェニル化合物を感光層に含有させることで、残留電位を低減できることが明らかとなった。
【0014】
本発明者らは、本発明の電子写真感光体の、残留電位が小さい理由を以下のように推測している。
感光体に対して帯電と露光を繰り返した際、シロキサン変性アクリル樹脂の、シロキサン部位及びアクリル基に、電荷発生材料から発生した電荷が捕捉されることで、単層の感光層内部に電荷がトラップされるため、残留電位が大きくなると推測した。
【0015】
本発明に係る感光体は、単層型の感光層内にターフェニル化合物が存在することで、電荷発生材料から発生した電荷が、シロキサン変性アクリル樹脂のシロキサン部位及びアクリル基に捕捉されることを効果的に抑制できるものとなっていると考える。その結果、本発明に係る感光体は、単層の感光層内部での電荷のトラップが抑制され良好な電気特性が得られるものとなっていると推測している。
【0016】
以上のメカニズムのように、本発明は、シロキサン変性アクリル樹脂及びターフェニル化合物の各構成が相乗的に効果を及ぼし合うことによって、本発明の効果を達成することが可能となる。
【0017】
[電子写真感光体]
本発明にかかる電子写真感光体は、少なくとも支持体と単層型の感光層を有し、前記の感光層が、シロキサン変性アクリル樹脂、ターフェニル化合物、結着樹脂、電荷発生材料、正孔輸送材料、及び電子輸送材料を含有することを特徴とする。
【0018】
単層型の感光層とは、電荷発生能、正孔輸送能及び電子輸送能を有する感光層をいう。単層型とは、感光層が単層であることを示している。
【0019】
以下、各層について説明する。
<支持体>
本発明において、電子写真感光体は、支持体を有する。本発明において、支持体は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。又、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。又、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
【0020】
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
又、樹脂やガラスには、導電性材料を混合又は被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
【0021】
<下引き層>
本発明において、支持体の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
【0022】
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。又、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0023】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
【0024】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【0025】
又、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などを更に含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
又、下引き層は、添加剤を更に含有してもよい。
【0026】
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0027】
下引き層は、上述の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0028】
<単層型感光層>
感光層は、シロキサン変性アクリル樹脂、ターフェニル化合物、結着樹脂、電荷発生材料、正孔輸送材料、及び電子輸送材料を含有する。
単層型の感光層の構成要素について、以下で詳しく説明する。
【0029】
(シロキサン変性アクリル樹脂)
本実施形態における単層型の感光層には、シロキサン変性アクリル樹脂が添加される。
シロキサン変性アクリル樹脂は、アクリル主鎖にシロキサン重合体(シリコンマクロマー)をグラフト共重合させた共重合体(アクリル化合物)であることが好ましい。
シロキサン変性アクリル樹脂中のシロキサン構造によって潤滑性が発揮され、感光層の耐摩耗性を向上させることができる。シロキサン構造を持つ化合物としては、例えば、他にポリシロキサン樹脂が挙げられるが、ポリシロキサン樹脂はシロキサン変性アクリル樹脂と比べ、表面移行性が高く、感光体を繰り返し使用した際に、潤滑性が持続しない。一方でシロキサン変性アクリル樹脂は、主鎖がアクリル樹脂であるため、適度な表面移行性を示し、単層の感光層中に比較的均一に分布することで、感光体を繰り返し使用した際に、潤滑性が持続する。その結果、感光体を繰り返し使用した際、高い耐摩耗性が発揮されると考えている。
【0030】
本発明で用いる、シロキサン変性アクリル樹脂中のシロキサン構造部分は、シロキサン変性アクリル樹脂全質量に対して、2質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
【0031】
購入可能なシロキサン変性アクリル樹脂としては、ビックケミー・ジャパン(株)製のBYK-3550などが挙げられる。例えば、BYK-3550は、シロキサン変性アクリル樹脂を含む溶液(メトキシプロピルアセテート52質量%溶液(シロキサン変性アクリル樹脂の含有量:52質量%))である。
【0032】
シロキサン変性アクリル樹脂の含有量としては、感光層の全質量に対して、0.01質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上3質量%以下である。
【0033】
(ターフェニル化合物)
本実施形態における単層型の感光層には、ターフェニル化合物が添加される。
ターフェニル化合物としては、置換もしくは無置換のo-ターフェニル、置換もしくは無置換のm-ターフェニル、置換もしくは無置換のp-ターフェニルが挙げられる。置換ターフェニルの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ニトロ基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0034】
本発明の効果の点から、下記式(1)で示されるターフェニル化合物が好ましい。
【化1】
前記式(1)中、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、置換もしくは無置換のアリール基を示す。本発明の効果が高まる点で、R、R、及びRが水素原子であることがより好ましい。
ターフェニル化合物の含有量としては、シロキサン変性アクリル樹脂の全質量に対して、20質量%以上であり、50質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上5000質量%以下である。
【0035】
ターフェニル化合物の含有量としては、例えば、感光層の全質量に対して、0.02質量%以上25質量%以下であり、本開示の態様の効果が高まる点で、0.05質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
【0036】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、特に制限はないが、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-無水マレイン酸共重合体、シリコーン樹脂、シリコーンアルキッド樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、スチレン-アルキッド樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリシラン等が挙げられる。これらの結着樹脂は、単独又は2種以上混合して用いてもよい。
【0037】
(電荷発生材料)
電荷発生材料としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、無金属フタロシアニン顔料、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生材料の含有量としては、例えば、感光層の全質量に対して、0.05質量%以上30質量%以下がよく、望ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より望ましくは2質量%以上10質量%以下である。
【0038】
(正孔輸送材料)
正孔輸送材料としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
正孔輸送材料は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
正孔輸送材料の含有量としては、例えば、感光層の全質量に対して、1質量%以上50質量%以下であり、好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
【0039】
(電子輸送材料)
電子輸送材料としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
これらの電子輸送材料は、一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
電子輸送材料の含有量としては、例えば、感光層の全質量に対して、1質量%以上50質量%以下であり、好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
【0040】
-単層型の感光層の形成-
単層型の感光層は、支持体上に単層型の感光層が直接設けられてもよいし、上記した下引き層上に設けられてもよい。
【0041】
単層型の感光層は、上記成分を溶剤に加えた感光層形成用塗布液を用いて形成される。
溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素類、アセトン、2-ブタノン等のケトン類、塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン、エチルエーテル等の環状若しくは直鎖状のエーテル類等の通常の有機溶剤が挙げられる。これら溶剤は単独又は2種以上混合して用いる。
【0042】
本発明の電子写真感光体を製造する方法としては、上述した各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、突き上げ塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、ナイフ塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布及びリング塗布が挙げられる。これらの中でも、効率性及び生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
【0043】
本発明の単層型の感光層の膜厚は、望ましくは5μm以上40μm以下、より望ましくは10μm以上30μm以下の範囲に設定される。
【0044】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明のプロセスカートリッジは、これまで述べてきた電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段及びクリーニング手段からなる群より選択される少なくとも1つの手段とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とする。
【0045】
又、本発明の電子写真装置は、これまで述べてきた電子写真感光体、帯電手段、露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする。
【0046】
図1に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
【0047】
1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正又は負の所定電位に帯電される。尚、図においては、ローラ型帯電部材によるローラ帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。又、クリーニング手段を別途設けず、上記付着物を現像手段などで除去する、所謂、クリーナーレスシステムを用いてもよい。電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。又、本発明のプロセスカートリッジ11を電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
【0048】
本発明の電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機、ファクシミリ、及び、これらの複合機などに用いることができる。
【0049】
[実施例/比較例]
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例の記載において、「部」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。また、実施例5及び実施例7は、参考例である。
【0050】
[実施例1]
(感光層形成用塗布液の作製)
下記の組成物を混合し、ボールミルにて50時間分散処理し、感光層形成用の塗布液を作製した。
・シロキサン変性アクリル樹脂溶液
(BYK-3550、ビックケミー・ジャパン(株)製) 3.8部
・構造式(A-1)で示される化合物 6部
・構造式(B-1)で示される化合物 30部
・構造式(B-2)で示される化合物 30部
・構造式(C)で示される化合物 100部
・無金属フタロシアニン顔料 12部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂 220部
・テトラヒドロフラン 1500部
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【0051】
(電子写真感光体の作製)
直径30mm、長さ357.5mmのアルミニウム基材上に、上記の感光層用塗布液を漬塗布法して塗膜を形成し、得られた塗膜を100℃、40分の条件で加熱乾燥させることで、厚さ30μmの単層型の感光層を形成した。
以上のようにして、実施例1の電子写真感光体を作製した。
【0052】
[実施例2]
(感光層形成用塗布液の作製)
下記の組成物を混合し、ボールミルにて50時間分散処理し、感光層形成用の塗布液を作製した。
・シロキサン変性アクリル樹脂溶液
(BYK-3550、ビックケミー・ジャパン(株)製) 3.8部
・構造式(A-1)で示される化合物 1部
・構造式(B-1)で示される化合物 30部
・構造式(B-2)で示される化合物 30部
・構造式(C)で示される化合物 100部
・無金属フタロシアニン顔料 12部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂 220部
・テトラヒドロフラン 1500部
【0053】
(電子写真感光体の作製)
上記の感光層形成用塗布液を用いて感光層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の電子写真感光体を作製した。
【0054】
[実施例3]
(感光層形成用塗布液の作製)
下記の組成物を混合し、ボールミルにて50時間分散処理し、感光層形成用の塗布液を作成した。
・シロキサン変性アクリル樹脂溶液
(BYK-3550、ビックケミー・ジャパン(株)製) 3.8部
・構造式(A-1)で示される化合物 100部
・構造式(B-1)で示される化合物 30部
・構造式(B-2)で示される化合物 30部
・構造式(C)で示される化合物 100部
・無金属フタロシアニン顔料 12部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂 220部
・テトラヒドロフラン 1500部
【0055】
(電子写真感光体の作製)
上記の感光層形成用塗布液を用いて感光層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の電子写真感光体を作製した。
【0056】
[実施例4]
(感光層形成用塗布液の作製)
下記の組成物を混合し、ボールミルにて50時間分散処理し、感光層形成用の塗布液を作製した。
・シロキサン変性アクリル樹脂溶液
(BYK-3550、ビックケミー・ジャパン(株)製) 19.2部
・構造式(A-1)で示される化合物 5部
・構造式(B-1)で示される化合物 30部
・構造式(B-2)で示される化合物 30部
・構造式(C)で示される化合物 100部
・無金属フタロシアニン顔料 12部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂 220部
・テトラヒドロフラン 1500部
【0057】
(電子写真感光体の作製)
上記の感光層形成用塗布液を用いて感光層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の電子写真感光体を作製した。
【0058】
[実施例5]
(感光層形成用塗布液の作製)
下記の組成物を混合し、ボールミルにて50時間分散処理し、感光層形成用の塗布液を作製した。
・シロキサン変性アクリル樹脂溶液
(BYK-3550、ビックケミー・ジャパン(株)製) 1.2部
・構造式(A-1)で示される化合物 0.3部
・構造式(B-1)で示される化合物 30部
・構造式(B-2)で示される化合物 30部
・構造式(C)で示される化合物 100部
・無金属フタロシアニン顔料 12部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂 220部
・テトラヒドロフラン 1500部
【0059】
(電子写真感光体の作製)
上記の感光層形成用塗布液を用いて感光層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の電子写真感光体を作製した。
【0060】
[実施例6]
実施例1において、感光層形成用塗布液に用いた構造式(A-1)で示される化合物を、構造式(A-2)で示される化合物に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の電子写真感光体を作製した。
【化6】
【0061】
[実施例7]
(感光層形成用塗布液の作製)
下記の組成物を混合し、ボールミルにて50時間分散処理し、感光層形成用の塗布液を作製した。
・シロキサン変性アクリル樹脂溶液
(BYK-3550、ビックケミー・ジャパン(株)製) 3.8部
・構造式(A-1)で示される化合物 0.4部
・構造式(B-1)で示される化合物 30部
・構造式(B-2)で示される化合物 30部
・構造式(C)で示される化合物 100部
・無金属フタロシアニン顔料 12部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂 220部
・テトラヒドロフラン 1500部
【0062】
(電子写真感光体の作製)
上記の感光層形成用塗布液を用いて感光層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の電子写真感光体を作製した。
【0063】
[比較例1]
(感光層形成用塗布液の作製)
下記の組成物を混合し、ボールミルにて50時間分散処理し、感光層形成用の塗布液を作製した。
・シロキサン変性アクリル樹脂溶液
(BYK-3550、ビックケミー・ジャパン(株)製) 3.8部
・構造式(B-1)で示される化合物 30部
・構造式(B-2)で示される化合物 30部
・構造式(C)で示される化合物 100部
・無金属フタロシアニン顔料 12部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂 220部
・テトラヒドロフラン 1500部
【0064】
(電子写真感光体の作製)
上記の感光層形成用塗布液を用いて感光層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を作製した。
【0065】
[比較例2]
(感光層形成用塗布液の作製)
下記の組成物を混合し、ボールミルにて50時間分散処理し、感光層形成用の塗布液を作製した。
・構造式(B-1)で示される化合物 30部
・構造式(B-2)で示される化合物 30部
・構造式(C)で示される化合物 100部
・無金属フタロシアニン顔料 12部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂 220部
・テトラヒドロフラン 1500部
【0066】
(電子写真感光体の作製)
上記の感光層形成用塗布液を用いて感光層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の電子写真感光体を作製した。
【0067】
[比較例3]
(感光層形成用塗布液の作製)
下記の組成物を混合し、ボールミルにて50時間分散処理し、感光層形成用の塗布液を作製した。
・ジメチルポリシロキサンオイル
(KF-96-50cs、信越化学工業(株)製) 2部
・構造式(A-1)で示される化合物 6部
・構造式(B-1)で示される化合物 30部
・構造式(B-2)で示される化合物 30部
・構造式(C)で示される化合物 100部
・無金属フタロシアニン顔料 12部
・ビスフェノールZポリカーボネート樹脂 220部
・テトラヒドロフラン 1500部
【0068】
(電子写真感光体の作製)
上記の感光層形成用塗布液を用いて感光層を形成した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の電子写真感光体を作製した。
【0069】
[評価]
以下に記載の方法で、実施例1~7、比較例1~3の電子写真感光体を評価した。
評価装置として、キヤノン(株)製の複写機imageRUNNER ADVANCE C3330を正帯電方式に対応するように改造して用いた。評価装置のシアンステーションに電子写真感光体を装着して評価を行った。評価装置は、温度23℃湿度50%RHの環境下に設置した。
【0070】
(残留電位の評価)
評価装置から現像用カートリッジを抜き取り、そこに電位測定装置を挿入した。電位測定装置は、現像用カートリッジの現像位置に電位測定プローブを配置することで構成されており、電位測定プローブの位置は、電子写真感光体の母線方向の中央とした。
次に、暗部電位Vdが+700Vになるように帯電部材(帯電ローラー)への印加電圧を調整した。波長780nmのレーザー光を照射した際の明部電位Vlが+250Vになるようにレーザー光量を調整し、ベタ黒画像を20枚連続出力後の残留電位Vrを評価した。
残留電位については、上記評価条件で測定された残留電位Vrの絶対値|Vr|が、80V以下であれば、残留電位が小さいと判断した。
【0071】
(耐摩耗性評価)
続いて、印字率5%濃度のテストチャートを用いて、A4横送りで30000枚の耐久画出しを行い、耐久画出し終了後に感光層の膜厚を測定した。耐久前後の膜厚の変化量を感光層の削れ量[μm]とした。感光層の削れ量が3.0μm以下の場合、耐摩耗性が良好と判断した。
【0072】
残留電位と耐摩耗性評価の結果を表1に示す。
【表1】
【符号の説明】
【0073】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
図1