IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 永大産業株式会社の特許一覧 ▶ エヌ・アンド・イー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-木質繊維ボード 図1
  • 特許-木質繊維ボード 図2
  • 特許-木質繊維ボード 図3
  • 特許-木質繊維ボード 図4
  • 特許-木質繊維ボード 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】木質繊維ボード
(51)【国際特許分類】
   B27N 3/04 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
B27N3/04 B
B27N3/04 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019239401
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021107135
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】307026352
【氏名又は名称】エヌ・アンド・イー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野 英治
(72)【発明者】
【氏名】前田 雄介
(72)【発明者】
【氏名】若松 建吾
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰則
(72)【発明者】
【氏名】木下 祐治
(72)【発明者】
【氏名】猪野 大起
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-515707(JP,A)
【文献】特開2001-001318(JP,A)
【文献】特開2012-214011(JP,A)
【文献】国際公開第2016/163080(WO,A1)
【文献】特開2000-052321(JP,A)
【文献】特開平10-264117(JP,A)
【文献】特開平10-244516(JP,A)
【文献】特開2017-177087(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002414(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27N 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
針葉樹を原料とする木削片を解繊した繊維から成形された木質繊維ボードであって、
前記繊維は、単繊維と、前記単繊維に解繊される前の状態の繊維集合体と、を備えており、
前記木質繊維ボードは、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体を、前記解繊した繊維に対して、40質量%~52質量%の範囲で含有し、
JIS Z 8781-4で規定されるL、a、およびbから算出される色差を△Eとしたときに、前記原料の針葉樹の色に対する木質繊維ボードの色の色差△Eが5.1以下であることを特徴とする木質繊維ボード。
【請求項2】
前記木質繊維ボードの表面には、前記木質繊維ボードの表面のLよりも高いLを有した化粧材が設けられていることを特徴とする請求項に記載の木質繊維ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針葉樹を原料とする木削片を解繊した繊維から成形された木質繊維ボードおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、木質繊維ボードは、フレーク、チップ、繊維等を熱圧成形して製造される。例えば、特許文献1には、水分を含む雰囲気下で針葉樹を原料とする木削片を加熱した後、加熱した木削片から繊維に解繊し、解繊した繊維を加圧および加熱することで木質繊維ボードを成形している。ここで、繊維に解繊する前の木削片の加熱条件の一例として、飽和蒸気圧下で5分、0.8MPa(具体的には加熱温度が170℃)の条件で、木削片を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-214011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す製造方法で木質繊維ボードを製造した場合、原料の木削片(針葉樹)の色と、木質繊維ボードの色とを比べると、解繊前の木削片の色に対して、木質繊維ボードの色が黒ずんでいることに発明者らは気付いた。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、解繊前の木削片の色に近い白みを帯びた木質繊維ボードとこれを製造する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明者らが、鋭意検討を重ねた結果、木質繊維ボードの色の黒ずみは、解繊工程において、単繊維への加工時の加工熱により単繊維の表面が変色することが原因であると突き止めた。特に、単繊維の状態でリファイナの歯の間を移動する際に、繊維が加熱され続ける場合があることがわかった。したがって、単繊維に加工された直後から単繊維がリファイナの歯の間を移動する間に、単繊維を集合させた繊維集合体を残せば、本来加熱される単繊維の熱を繊維集合体に吸熱させ、単繊維の変色を抑えることができると考えた。
【0007】
本発明は、発明者らの新たな知見に基づくものであり、本発明に係る木質繊維ボードの製造方法は、水分を含む雰囲気下で針葉樹を原料とする木削片を加熱した後、加熱した木削片から繊維に解繊する解繊工程と、前記解繊した繊維を加圧および加熱することで木質繊維ボードを成形する成形工程と、を含む木質繊維ボードの製造方法であって、前記解繊工程は、前記木削片から、前記繊維として、単繊維と、単繊維に解繊される前の状態の繊維集合体と、を生成するものであり、前記解繊工程において、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体が、前記解繊した繊維に対して、40質量%~52質量%の範囲となるように、前記木削片を解繊することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、目開きが150μmの篩を通過しないものは、単繊維が集合した繊維集合体であり、この繊維集合体が、解繊した繊維に対して、40質量%~52質量%の範囲となるように、木削片を解繊する。
【0009】
これにより、解繊工程において、単繊維および繊維集合体に加工された直後の加工熱で単繊維および繊維集合体が加熱されたとしても、繊維集合体の熱容量は単繊維に比べて大きいため、繊維集合体に加工熱が吸熱される。これにより、単繊維の変色を抑えることができる。木削片を解繊した繊維の色は、加熱前の木削片の色に近いため、この繊維から成形した木質繊維ボードの色も、加熱前の木削片の色に近い。このような結果、木材固有の色を有した木質繊維ボードを製造することができる。
【0010】
特に、針葉樹は、広葉樹に比べて白みを帯びているので、本発明の如く、針葉樹を原料とする木削片を用いれば、白みを帯びた木質繊維ボードを得ることができる。この結果、木質繊維ボードに、たとえば白色の突板を貼り合わせたとしても、突板の表面に、木質繊維ボードの表面の黒ずみが映り込むことを抑えることができる。
【0011】
解繊工程において、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体が、解繊した繊維全体に対して、40質量%未満となるように木削片を解繊した場合、単繊維の量が多く、繊維集合体の量が少ないため、単繊維に加工熱が入熱され易い。この結果、単繊維の変色を十分に抑えることができない。
【0012】
一方、解繊工程において、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体が、解繊した繊維全体に対して、52質量%を超えるように木削片を解繊した場合、繊維集合体の割合が多いため、この繊維で成形された木質繊維ボードの加湿環境下および吸水環境下における寸法変化が大きくなることがある。
【0013】
さらに、発明者らは、製造された木質繊維ボードの黒ずみは、解繊前に木削片を加熱した際に、木削片に含まれるヘミセルロースが熱により変色したことによると考えた。この変色は、木削片に入熱される熱エネルギに依存するため、木削片を解繊できる程度に、木削片に入熱される熱エネルギを抑えることが重要であるとの新たな知見を、発明者らは得た。
【0014】
より好ましい態様としては、前記解繊工程において、前記木削片を加熱する加熱温度が155℃~170℃の範囲であり、前記木削片を加熱する加熱時間が3分~6分の範囲であって、前記加熱温度と前記加熱時間とのグラフにおいて、加熱温度170℃、加熱時間3分となる第1の点と、加熱温度155℃、加熱時間3分となる第2の点と、加熱温度155℃、加熱時間6分となる第3の点と、を結んだ線分で囲まれた領域内の加熱温度および加熱時間で、前記木削片を加熱する。
【0015】
本発明によれば、解繊工程において、第1~第3の点を結んだ領域内の加熱温度および加熱時間で、木削片を加熱することにより、木削片が熱により黒色に変色することを抑えることができる。これにより、木削片を解繊した繊維の色は、加熱前の木削片の色に近いため、この繊維から成形した木質繊維ボードの色も、加熱前の木削片の色に近い。このような結果、木材固有の色である白色の木質繊維ボードを製造することができる。
【0016】
ここで、加熱温度が155℃未満である場合には、木削片の解繊される繊維が微細化(微粉化)する傾向にあり、木質繊維ボードの強度が低下するおそれがある。一方、加熱時間が、170℃を超える場合には、木削片が熱により黒色に変色し易く、この木削片を解繊した繊維から木質繊維ボードを成形しても、木質繊維ボードが黒ずんでしまうことがある。
【0017】
また、加熱時間が3分未満である場合には、木削片の解繊される繊維が微細化(微粉化)する傾向にあり、木質繊維ボードの強度が低下するおそれがある。一方、加熱時間が、6分を超える場合には、木削片が熱により黒色に変色し易く、この木削片を解繊した繊維から木質繊維ボードを成形しても、木質繊維ボードが黒ずんでしまうことがある。
【0018】
さらに、木削片を加熱する加熱温度が155℃~170℃の範囲であり、木削片を加熱する加熱時間が3分~6分の範囲であっても、本発明で規定する領域を外れた場合には、木削片への入熱が多いため、この熱により黒色に変色し易い。したがって、この木削片を解繊した繊維から木質繊維ボードを成形しても、木質繊維ボードが黒ずんでしまうことがある。
【0019】
本明細書では、本発明として、木質繊維ボードをも開示する。本発明に係る木質繊維ボードは、針葉樹を原料とする木削片を解繊した繊維から成形された木質繊維ボードであって、前記繊維は、単繊維と、前記単繊維に解繊される前の状態の繊維集合体と、を備えており、前記木質繊維ボードは、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体を、前記解繊した繊維に対して、40質量%~52質量%の範囲で含有し、JIS Z 8781-4で規定されるL、a、およびbから算出される色差を△Eとしたときに、前記原料の針葉樹の色に対する木質繊維ボードの色の色差△Eが5.1以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体が、解繊した繊維に対して、40質量%~52質量%の範囲となる木質繊維ボードは、上述した如く、解繊時において、繊維が黒ずむような変色が抑えられたものであるといえる。このような木質繊維ボードは、原料の針葉樹の色に対する木質繊維ボードの色の色差△Eが5.1以下であることから、針葉樹固有の色である白みのある色の木質繊維ボードである。
【0021】
より好ましい態様としては、前記木質繊維ボードの表面には、前記木質繊維ボードの表面のLよりも高いLを有した化粧材が設けられている。この態様によれば、木質繊維ボードの単繊維および繊維集合体の露出した表面に、L(明度)が高い化粧材を設けた場合であっても、化粧材の木質繊維ボードの表面が映り込むことを抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、解繊前の針葉樹の木削片の色に近い白みを帯びた木質繊維ボードを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る木質繊維ボードの製造方法を説明するためのフロー図である。
図2図1に示す解繊工程に用いるリファイナの模式図である。
図3図2に示すリファイナで解繊された繊維の模式図である。
図4図1に示す解繊工程において木削片の加熱温度と加熱時間の関係を示したグラフである。
図5図1に示す製造方法で製造された木質繊維ボードの表面に化粧材を貼着した状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施形態を説明する。
本実施形態に係る木質繊維ボードの製造方法は、木削片を木質繊維に解繊し、解繊した木質繊維から木質繊維ボードを製造する方法であり、中質繊維板(MDF)などの乾式の木質繊維ボードを製造する方法である。
【0025】
まず、本実施形態に係る木質繊維ボードについて、図1および図2を参照しながら、説明し、この製造方法について説明する。
【0026】
本実施形態における木質繊維ボード1の製造方法は、以下に示す、解繊工程S11、集積工程S12、成形工程S13を少なくとも含む。以下に、各工程について説明する。
【0027】
解繊工程S11について
解繊工程S11を図1図3を参照しながら、以下に説明する。まず、実施形態の木質繊維ボード1の出発材料として、チップ状の木削片を準備する。木削片としては、例えば、スギ、マツ、ヒノキなどの針葉樹を原料とした木削片Tを準備する。
【0028】
次に、このような木削片Tを水分を含む雰囲気下で加熱後、加熱した木削片Tから湿式繊維Fに解繊する。具体的には、材料供給部32を介して木削片Tを、圧力容器33に投入し、蒸気供給部31を介して蒸気sを圧力容器33に供給する。
【0029】
次に、圧力容器33の排出部34から、蒸煮処理した木削片Tを刃型35に送り込む。具体的には、図示しないが、刃型35の内部に、加熱された状態(具体的には温度が保持された状態)の木削片Tが供給され、この木削片Tが、刃型35、36の間に送り込まれる。刃型36には、モータ37の出力軸が連結されている。
【0030】
これにより、刃型36が回転し、刃型35、36間において、木削片Tが解繊され、その回転中心からその外周に向かって、単繊維faおよび繊維集合体fbからなる繊維Fが放出される。本実施形態では、刃型35、36の間隔dをこれまでよりも広くすることにより、解繊工程S11において、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体fbが、解繊した繊維F全体に対して、40質量%~52質量%の範囲となるように、木削片Tを解繊する。
【0031】
ここで、目開きとは、JIS Z 8801-1(2019)に規定された公称目開きのことであり、後述する解繊工程後に、解繊された繊維を分級することにより、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体fbの割合を確認することができる。
【0032】
目開きが150μmの篩を通過しないものは、単繊維faが集合した繊維集合体fbであり、これを通過するものは、単繊維faである。この繊維集合体fbが、解繊した繊維Fに対して、40質量%~52質量%の範囲となるように、木削片Tを解繊することにより、単繊維faおよび繊維集合体fbに加工された直後の加工熱で単繊維faおよび繊維集合体fbが加熱されたとしても、繊維集合体fbに単繊維faの熱が吸熱される。これにより、単繊維faの変色を抑えることができる。
【0033】
解繊工程S11において、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体fbが、解繊した繊維F全体に対して、40質量%未満となるように木削片Tを解繊した場合、単繊維faの量が多いため、単繊維faに加工熱が入熱され易い。この結果、単繊維faの変色を十分に抑えることができない。
【0034】
一方、解繊工程S11において、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体fbが、解繊した繊維F全体に対して、52質量%を超えるように木削片Tを解繊した場合、単繊維faの量が少なくなるため、繊維Fで成形された木質繊維ボード1の強度が低下することがある。
【0035】
解繊工程S11において、圧力容器33内の木削片Tを加熱する加熱温度は155℃~170℃の範囲であることが好ましく、前記木削片を加熱する加熱時間は3分~6分の範囲であることが好ましい。特に、図4に示すように、加熱温度と前記加熱時間とのグラフにおいて、加熱温度170℃、加熱時間3分となる第1の点P1と、加熱温度155℃、加熱時間3分となる第2の点P2と、加熱温度155℃、加熱時間6分となる第3の点P3と、を結んだ線分で囲まれた領域S内の加熱温度および加熱時間で、木削片Tを加熱することが好ましい。
【0036】
後述する発明者らの実験からも明らかなように、解繊工程S11において、第1~第3の点P1~P3を結んだ領域S内の加熱温度および加熱時間で、木削片Tを加熱することにより、木削片Tが熱により黒色に変色することを抑えることができる。これにより、木削片Tを解繊した繊維の色は、加熱前の木削片Tの色に近くなる。
【0037】
ここで、加熱温度が155℃未満である場合には、木削片Tの解繊される繊維Fが微細化(微粉化)する傾向にあり、木質繊維ボードの強度が低下するおそれがある。一方、加熱温度が、170℃を超える場合には、木削片Tが熱により黒色に変色し易く、この木削片Tを解繊した繊維Fから木質繊維ボードを成形しても、木質繊維ボードが黒ずんでしまうことがある。
【0038】
また、加熱時間が3分未満である場合には、木削片Tの解繊される繊維が微細化(微粉化)する傾向にあり、木質繊維ボード1の強度が低下するおそれがある。一方、加熱時間が、6分を超える場合には、木削片Tが熱により黒色に変色し易く、この木削片Tを解繊した繊維から木質繊維ボード1を成形しても、木質繊維ボード1が黒ずんでしまうことがある。
【0039】
さらに、木削片を加熱する加熱温度が155℃~170℃の範囲であり、木削片を加熱する加熱時間が3分~6分の範囲であっても、本発明で規定する領域を外れた場合には、木削片Tへの入熱が多いため、この熱により黒色に変色し易い。したがって、この木削片Tを解繊した繊維から木質繊維ボード1を成形しても、木質繊維ボード1が黒ずんでしまうことがある。
【0040】
集積工程S12について
この工程では、解繊された繊維Fに接着剤を添加後に乾燥させて、マット状に集積する(木質マットを成形する)。接着剤は、熱硬化性樹脂からなる接着剤、熱可塑性樹脂からなる接着剤のいずれであってもよい。熱硬化性樹脂としては、常温硬化型または熱硬化型の熱硬化性樹脂でよく、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、またはアルキド樹脂等を挙げることができる。
【0041】
成形工程S13について
この工程では、成形された木質マットをプレス機に投入して、加圧・加熱(熱圧)することにより、木質繊維ボードを成形する。具体的には、木質マットを、成形装置に投入し、加熱温度を160℃~260℃、加圧条件として、0.2MPa~5MPaで加圧保持時間30秒~5分間で熱圧する。
【0042】
木質繊維ボード1について
このようにして得られた木質繊維ボード1は、針葉樹を原料とする木削片Tを解繊した繊維Fから成形された木質繊維ボード1である。図5に示すように、繊維Fは、単繊維faと、単繊維faに解繊される前の状態の繊維集合体fbと、を備えている。木質繊維ボード1は、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体fbを、解繊した繊維Fに対して、40質量%~52質量%の範囲で含有することになる。
【0043】
本発明によれば、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体fbが、解繊した繊維Fに対して、40質量%~52質量%の範囲となる木質繊維ボードは、上述した如く、解繊時において、繊維Fが黒ずむような変色が抑えられたものである。
【0044】
したがって、木削片Tを解繊した繊維Fの色は、加熱前の木削片Tの色に近いため、この繊維から成形した木質繊維ボード1の色も、加熱前の木削片Tの色に近い。このような結果、木材固有の色を有した木質繊維ボード1を製造することができる。
【0045】
具体的には、JIS Z 8781-4(2013)(CIE1976表色系)で規定されるL、a、およびbから算出される色差を△Eとしたときに、解繊前の針葉樹の色に対する木質繊維ボード1の色の色差△Eが5.1以下である。したがって、木質繊維ボード1は、色差△Eが5.1以下である。特に、針葉樹は、広葉樹に比べて白みを帯びているので、本実施形態の如く、針葉樹を原料とする木削片Tを用いれば、白みを帯びた木質繊維ボード1を得ることができる。
【0046】
図5に示すように、木質繊維ボード1の表面に接着剤を介して化粧材50を貼り付けてもよい。ここで接着剤としては、たとえば、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤、ユリア樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、フェノール樹脂接着剤、合成ゴム系接着剤などの溶液系(有機溶媒系も含む)、または水分散系の接着剤、を挙げることができる。接着剤の代わりに、粘着剤を用いてもよく、粘着剤としては、アクリル樹脂系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤など粘着剤を挙げることができる。
【0047】
化粧材50は、木質繊維ボード1の表面のL(明度)よりも低いLを有したものであることが好ましい。通常、このようなL(明度)が高い化粧材50は、白みを帯びているので、木質繊維ボードの表面の黒ずんだ色が映り込み易い。しかしながら、本実施形態では、露出した表面に、L(明度)が高い化粧材50を設けた場合であっても、化粧材の木質繊維ボードの表面が映り込むことを抑えることができる。
【0048】
化粧材50としては、上述した針葉樹からなる突板またはクラフト紙などを挙げることができ、突板である場合には、下地となる木質繊維ボード1の表面が映り込み易い0.2~0.6mm程度の厚さの突板であることが好ましい。
【0049】
以下に、本発明の実施例を説明する。
【0050】
〔実施例1〕
木削片として、図2に示すリファイナを用いて、大きさ数センチの針葉樹チップ(スギ)を、加熱温度(蒸煮温度)160℃にし、加熱時間(蒸煮時間)を3分で蒸煮した後、この針葉樹チップの加熱温度を保持した状態で、針葉樹チップをリファイナで解繊した。刃型の間隔は、従来設定されている間隔の2倍に設定した。解繊した繊維の重量を測定し、JIS Z 8801-1(2019)に準拠して、目開きが150μmの篩で分級し、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体の総質量を測定し、その割合を測定した。この結果を表1に示す。
【0051】
〔実施例2〕
実施例1と同じようにして、針葉樹チップをリファイナで解繊した。実施例1と相違する点は、実施例1に対して、繊維集合体の割合がより多くなるように、刃型の間隔を調整した。そして、実施例1と同様に、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体の総質量を測定し、その割合を測定した。この結果を表1に示す。
【0052】
〔実施例3および4〕
実施例1と同じようにして、針葉樹チップをリファイナで解繊した。実施例3が、実施例1と相違する点は、実施例1に対して、蒸煮温度を165℃にした点である。実施例4が、実施例1と相違する点は、実施例1に対して、蒸煮温度を165℃にした点と、実施例2の刃型の間隔で解繊した点である。そして、実施例1と同様に、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体の総質量を測定し、その割合を測定した。この結果を表1に示す。
【0053】
〔比較例1〕
実施例1と同じようにして、針葉樹チップをリファイナで解繊した。実施例1と相違する点は、実施例1に対して、特許文献1に示した条件で、繊維集合体の割合が少なくなるように、刃型の間隔を狭くし、蒸煮温度、および蒸煮時間を調整した。そして、実施例1と同様に、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体の総質量を測定し、その割合を測定した。この結果を表1に示す。
【0054】
〔比較例2〕
実施例3と同じようにして、針葉樹チップをリファイナで解繊した。実施例3と相違する点は、実施例3に対して、特許文献1に示した条件で、刃型の間隔を従来通りの間隔となるように狭くした。そして、実施例3と同様に、目開きが150μmの篩を通過しない繊維集合体の総質量を測定し、その割合を測定した。この結果を表1に示す。
【0055】
(評価試験)
実施例1~4および比較例1で得られた繊維から、マット成形機を用いて、木質マットに成形した。この木質マットを、プレス機に投入して、加熱条件、すなわち熱圧温度185℃、熱圧時間50秒、厚さ3mmとなるように加圧することにより、木質繊維ボードを得た。なお、比較例1は、市販されている木質繊維ボードに近い状態である。
【0056】
得られた木質繊維ボードの表面に対して、分光色彩計(日本電色、SE7700)を用いて、JIS Z 8781-4(2013)で規定されるL、a、およびbを測定した。さらに、木質繊維ボードの原材料と同じ配合で木削片(辺材+心材)が変色しないように破砕し、この紛体のL、a、およびbを測定した。以下の数1により、解繊前の針葉樹(スギ)の色に対する木質繊維ボードの色の色差△Eを算出した。なお、以下の数1では、基準となるスギ紛体のL、a、およびbが、L、a、およびbであり、木質繊維ボードのL、a、およびbが、L、a、およびbである。この結果を表1に示す。
【0057】
【数1】
【0058】
【表1】
【0059】
実施例1~4の木質繊維ボードでは、木質繊維ボードの色差が△5.1以下であり、針葉樹チップ(スギ)固有の色に近かった。一方、比較例1および2の木質繊維ボードでは、木質繊維ボードの色差が7.0を超えており、針葉樹チップ(スギ)固有の色よりも黒い色になっていることが確認された。
【0060】
実施例1~4は、比較例1、2に比べて、繊維集合体の割合が多い。このことから、単繊維および繊維集合体に加工された直後の加工熱で単繊維および繊維集合体が加熱されたとしても、実施例1~4では、繊維集合体に単繊維および繊維集合体の熱が吸熱されるため、単繊維の変色を抑えることができたと考えられる。この結果、実施例1~4では、針葉樹を原料とする木削片に近い白みを帯びた木質繊維ボードを得ることができたと考えられる。
【0061】
〔実施例5〕
実施例1と同じようにして、針葉樹チップをリファイナで解繊した。実施例1と相違する点は、実施例1に対して、加熱温度170℃、加熱時間3分にした点であり、図3のグラフの第1の点P1に相当する。
【0062】
〔実施例6〕
実施例1と同じようにして、針葉樹チップをリファイナで解繊した。実施例1と相違する点は、実施例1に対して、加熱温度155℃、加熱時間3分にした点であり、図3のグラフの第1の点P2に相当する。
【0063】
〔実施例7〕
実施例1と同じようにして、針葉樹チップをリファイナで解繊した。実施例1と相違する点は、実施例1に対して、加熱温度155℃、加熱時間6分にした点であり、図3のグラフの第1の点P3に相当する。
【0064】
〔比較例3〕
実施例1と同じようにして、針葉樹チップをリファイナで解繊した。実施例1と相違する点は、実施例1に対して、加熱温度160℃、加熱時間7分にした点である。
【0065】
〔比較例4〕
実施例1と同じようにして、針葉樹チップをリファイナで解繊した。実施例1と相違する点は、実施例1に対して、加熱温度165℃、加熱時間7分にした点である。
【0066】
(評価試験)
実施例1と同様に、実施例5~7および比較例3、4で得られた繊維から、マット成形機を用いて、木質マットを成形し、この木質マットを、プレス機に投入して、木質繊維ボードを製造した。実施例1と同様に、得られた木質繊維ボードの表面に対して、L、a、およびbを測定し、解繊前の針葉樹(スギ)の色に対する木質繊維ボードの色の色差△Eを算出した。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例5~7に係る木質繊維ボードでは、木質繊維ボードの色差が4程度、針葉樹チップ(スギ)固有の色に近かった。一方、比較例3および4の木質繊維ボードでは、木質繊維ボードの色差が6程度であり、針葉樹チップ(スギ)固有の色よりも黒い色になっていることが確認された。
【0069】
実施例4~6では、解繊工程において、木削片に加熱された加熱温度および加熱時間からも明らかなように、比較例3、4に比べて、入熱される熱は少ない。このことから、図4に示すグラフの領域Sの範囲内においては、針葉樹を原料とする木削片に近い白みを帯びた木質繊維ボードを得ることができることが想定される。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0071】
1:木質繊維ボード、S11:解繊工程、S13:成形工程、F:繊維、fa:単繊維、fb:繊維集合体、T:木削片、P1:第1の点、P2:第2の点、P3:第3の点
図1
図2
図3
図4
図5