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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】光走査装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/10 20060101AFI20240111BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20240111BHJP
   B41J 2/47 20060101ALI20240111BHJP
   H04N 1/113 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G02B26/10 E
G02B26/12
G02B26/10 B
B41J2/47 101D
H04N1/113
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020004152
(22)【出願日】2020-01-15
(65)【公開番号】P2021110891
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】宮島 悠
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-206673(JP,A)
【文献】特開2014-048313(JP,A)
【文献】特開2016-085433(JP,A)
【文献】特開2007-225948(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0198403(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/10
G02B 26/12
B41J 2/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を偏向して被走査面を走査する偏向器と、
前記偏向器からの光束を前記被走査面に導光する光学面を含む結像光学素子とを備え、
前記結像光学素子は、前記偏向器に隣接して配置されており、
前記偏向器上の第1の偏向点において偏向された後、前記光学面によって反射された軸上光束のうち、前記第1の偏向点を含み前記結像光学素子の光軸に垂直な第1の断面において前記第1の偏向点に近い側の第1のマージナル光線は、前記第1の断面における前記第1の偏向点に対して副走査方向に4mm以上離間した位置に向かって進行し、
前記軸上光束の前記第1の断面における副走査方向の光束幅は、前記軸上光束の前記光学面における副走査方向の光束幅よりも小さいことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記軸上光束の前記第1の断面における副走査方向の光束幅は、前記軸上光束の前記光学面における副走査方向の光束幅の1/2以下であることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記軸上光束の集光点は、前記光学面上の前記軸上光束の主光線の反射点を含み前記光軸に垂直な第2の断面と前記第1の断面との間にないことを特徴とする請求項1または2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記軸上光束を遮光する遮光部材を備え、該遮光部材の遮光面に対する前記軸上光束の主光線の入射角は45°以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記遮光部材は、前記偏向器を保持する保持部材に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光学面上の前記軸上光束の主光線の反射点を含み前記光軸に垂直な第2の断面と前記遮光面を含む第3の断面との間における前記軸上光束の光路上には光学素子が設けられていないことを特徴とする請求項4または5に記載の光走査装置。
【請求項7】
前記遮光面は、主走査断面内において前記第1の偏向点に対して前記結像光学素子とは反対側に配置されることを特徴とする請求項4乃至6の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項8】
光束を偏向して被走査面を走査する偏向器と、
前記偏向器からの光束を前記被走査面に導光する光学面を含む結像光学素子と、
前記偏向器上の第1の偏向点において偏向された後、前記光学面によって反射された軸上光束を遮光する遮光面を含む遮光部材とを備え、
前記軸上光束のうち、前記第1の偏向点を含み前記結像光学素子の光軸に垂直な第1の断面において前記第1の偏向点に近い側の第1のマージナル光線は、前記第1の断面における前記第1の偏向点に対して副走査方向に4mm以上離間した位置に向かって進行し、
前記軸上光束の前記第1の断面における副走査方向の光束幅は、前記軸上光束の前記光学面における副走査方向の光束幅よりも小さく、
前記遮光面は、主走査断面内において前記第1の偏向点に対して前記結像光学素子とは反対側に配置され、
前記遮光面に対する前記軸上光束の主光線の入射角は45°以下であることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
前記光学面は、前記結像光学素子の入射面であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項10】
前記光学面は、副走査断面において前記偏向器に向かって凹形状を有していることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項11】
前記光学面は、前記軸上光束が前記偏向器から離間するように副走査断面内においてチルトしていることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項12】
前記結像光学素子の入射面及び出射面は、副走査断面内において互いに同一の方向にチルトしていることを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項13】
前記結像光学素子の入射面及び出射面は、副走査断面において前記偏向器に向かって凹形状を有していることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項14】
前記第1の偏向点と前記光学面上の前記軸上光束の主光線の反射点との間の前記第1の断面に垂直な第1の方向に沿った距離をX[mm]、前記光学面に入射する際の前記軸上光束が副走査断面内において主走査断面に対してなす角度をα[rad]、前記光学面の前記反射点上における面法線が副走査断面内において主走査断面に対してなす角度をβ[rad]、前記光学面の前記反射点上の副走査断面内における曲率半径を-R[mm]、前記光学面における前記軸上光束の副走査断面での光束幅を2a[mm]としたとき、
【数1】
【数2】
【数3】
なる条件を満たすことを特徴とする請求項1乃至13の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項15】
【数4】
【数5】
【数6】
なる条件を満たすことを特徴とする請求項14に記載の光走査装置。
【請求項16】
前記偏向器上の第2の偏向点において偏向された後、前記光学面によって反射された最軸外光束のうち、前記第2の偏向点を含み前記光軸に垂直な第4の断面上において前記第2の偏向点に近い側の第2のマージナル光線は、前記第4の断面における前記第2の偏向点に対して副走査方向に4mm以上離間した位置に向かって進行することを特徴とする請求項1乃至15の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項17】
前記光学面において、前記偏向器上の第2の偏向点にて偏向された最軸外光束の主光線の反射点上の副走査断面内におけるチルト量は、前記軸上光束の主光線の反射点上の副走査断面内におけるチルト量よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至16の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項18】
前記光学面において、前記偏向器上の第2の偏向点にて偏向された最軸外光束の主光線の反射点の副走査断面内におけるパワーの絶対値は、前記軸上光束の主光線の反射点上の副走査断面内におけるパワーの絶対値よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至17の何れか一項に記載の光走査装置。
【請求項19】
請求項1乃至18の何れか一項に記載の光走査装置と、該光走査装置により前記被走査面に形成される静電潜像をトナー像として現像する現像器と、現像された前記トナー像を被転写材に転写する転写器と、転写された前記トナー像を前記被転写材に定着させる定着器とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
請求項1乃至18の何れか一項に記載の光走査装置と、外部機器から出力された信号を画像データに変換して前記光走査装置に入力するプリンタコントローラとを備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置に関し、特にレーザービームプリンタ(LBP)やデジタル複写機、マルチファンクションプリンタ(MFP)等の画像形成装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光走査装置において結像レンズの光学面に入射した光束の一部が反射されることによって生じる不要光が被走査面に到達することで、印字性能の低下が引き起こされることが知られている。
【0003】
特許文献1は、偏向器に最も近い結像レンズの入射面を副走査断面内において平面、若しくは偏向器側に向かって凸形状の曲面とすることで、被走査面に到達する不要光を低減することができる光走査装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-323665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている光走査装置では、反射光を発散光にするようにレンズ面を設けているため、一部の反射光は依然として不要光となり被走査面に到達する可能性がある。
そこで本発明は、不要光が被走査面に到達することを抑制することができる光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光走査装置は、光束を偏向して被走査面を走査する偏向器と、偏向器からの光束を被走査面に導光する光学面を含む結像光学素子とを備え、結像光学素子は、偏向器に隣接して配置されており、偏向器上の第1の偏向点において偏向された後、光学面によって反射された軸上光束のうち、第1の偏向点を含み結像光学素子の光軸に垂直な第1の断面において第1の偏向点に近い側の第1のマージナル光線は、第1の断面における第1の偏向点に対して副走査方向に4mm以上離間した位置に向かって進行し、軸上光束の第1の断面における副走査方向の光束幅は、軸上光束の光学面における副走査方向の光束幅よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不要光が被走査面に到達することを抑制することができる光走査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る光走査装置の主走査断面内及び副走査断面内における展開図。
図2】本実施形態に係る光走査装置の一部模式的斜視図。
図3】本実施形態に係る光走査装置の一部主走査断面図及び一部副走査断面図。
図4】本実施形態に係る光走査装置の一部主走査断面図及び一部副走査断面図。
図5】偏向器によって偏向された光束の各光線がレンズ面によって反射される様子を示した図。
図6】本実施形態に係る光走査装置の一部主走査断面図及び一部副走査断面図。
図7】本実施形態に係る光走査装置の一部主走査断面図及び一部副走査断面図。
図8】実施形態に係るカラー画像形成装置の要部副走査断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本実施形態に係る光走査装置を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す図面は、本実施形態を容易に理解できるようにするために、実際とは異なる縮尺で描かれている場合がある。
【0010】
なお、以下の説明において、主走査方向とは、偏向器で光束が偏向走査される方向である。副走査方向とは、偏向器の回転軸に平行な方向である。主走査断面とは、副走査方向に垂直な断面である。副走査断面とは、主走査方向に垂直な断面である。
【0011】
図1(a)は、本実施形態に係る光走査装置10の主走査断面内における展開図を示している。また、図1(b)及び(c)はそれぞれ、本実施形態に係る光走査装置10が備える入射光学系及び走査光学系の副走査断面内における展開図を示している。
また、図2は、本実施形態に係る光走査装置10の一部模式的斜視図を示している。
【0012】
なおここで、光走査装置10は、互いに同一の構成であり、偏向器11を挟んで互いに対称に配置される左側走査系10L及び右側走査系10Rを有している。
そして、左側走査系10Lと右側走査系10Rとはそれぞれ、第1及び第2の被走査面1008及び1208と第3及び第4の被走査面1108及び1308とを対向走査している。
従って、以下に示す構成は左側走査系10L及び右側走査系10Rの双方に同様に適用することができるため、以下では説明の簡略化のために、左側走査系10Lのみについて説明を行う。
【0013】
本実施形態に係る光走査装置10は、第1及び第2の光源1001及び1201と、第1及び第2のコリメータレンズ1002及び1202とを備えている。
また、本実施形態に係る光走査装置10は、第1及び第2のシリンドリカルレンズ1003及び1203と、第1及び第2の開口絞り1004及び1204とを備えている。
また、本実施形態に係る光走査装置10は、偏向器11と、第1のfθレンズ1006及び1206(結像光学素子)とを備えている。
【0014】
また、本実施形態に係る光走査装置10は、第2のfθレンズ1007及び1207を備えている。
また、本実施形態に係る光走査装置10は、偏向器11等の光学素子を保持する筐体1401(保持部材)と、カバー部材1402とを備えている。
【0015】
第1及び第2の光源1001及び1201としては、半導体レーザー等が用いられる。なお、第1及び第2の光源1001及び1201から射出される光束LA及びLB(第1及び第2の光束)の偏光は、概ね主走査断面に平行な直線偏光となる。すなわち、偏向器11の偏向面での反射時において、第1及び第2の光源1001及び1201から偏向器11へ入射する光束LA及びLBは、s偏光成分よりp偏光成分の方が多くなる。
第1及び第2のコリメータレンズ1002及び1202は、第1及び第2の光源1001及び1201から出射した光束LA及びLBを平行光束に変換する。なおここで、平行光束とは、厳密な平行光束だけでなく、弱発散光束や弱収束光束等の略平行光束も含むものとする。
【0016】
第1及び第2のシリンドリカルレンズ1003及び1203は、副走査断面内において有限のパワー(屈折力)を有しており、第1及び第2のコリメータレンズ1002及び1202を通過した光束LA及びLBを副走査方向に集光する。
第1及び第2の開口絞り1004及び1204は、第1及び第2のシリンドリカルレンズ1003及び1203を通過した光束LA及びLBの光束径を制限する。
このようにして、第1及び第2の光源1001及び1201から出射した光束LA及びLBは、偏向器11の近傍において副走査方向にのみ集光され、主走査方向に長い線像として結像される。
【0017】
偏向器11は、不図示のモーター等の駆動手段により図中矢印A方向に回転することにより、偏向器11に入射した光束LA及びLBを偏向する。なお、偏向器11は、例えばポリゴンミラー等で構成される。
第1のfθレンズ1006及び第2のfθレンズ1007は、主走査断面内と副走査断面内とで異なるパワーを有するアナモフィック結像レンズである。そして、第1のfθレンズ1006及び第2のfθレンズ1007は、偏向器11によって偏向された光束LAを第1の被走査面1008に集光(導光)する。
【0018】
また、第1のfθレンズ1206及び第2のfθレンズ1207は、主走査断面内と副走査断面内とで異なるパワーを有するアナモフィック結像レンズである。そして、第1のfθレンズ1206及び第2のfθレンズ1207は、偏向器11によって偏向された光束LBを第2の被走査面1208に集光(導光)する。
このとき、偏向器11は図中A方向に回転しているため、偏向走査された光束LA及びLBはそれぞれ、第1及び第2の被走査面1008及び1208を図中B方向に走査する。
【0019】
本実施形態に係る光走査装置10では、第1のコリメータレンズ1002、第1のシリンドリカルレンズ1003及び第1の開口絞り1004によって第1の入射光学系75aが構成される。そして、第2のコリメータレンズ1202、第2のシリンドリカルレンズ1203及び第2の開口絞り1204によって第2の入射光学系75bが構成される。
【0020】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、第1のfθレンズ1006及び第2のfθレンズ1007によって第1の走査光学系85a(第1の結像光学系)が構成される。そして、第1のfθレンズ1206及び第2のfθレンズ1207によって第2の走査光学系85bが構成される。
【0021】
なお、本実施形態に係る光走査装置10では、第1及び第2の入射光学系75a及び75bの光軸はそれぞれ、副走査断面内において主走査断面に対して-3.0°及び+3.0°の角度をなしている。
【0022】
また、本実施形態では、第1及び第2の被走査面1008及び1208として、第1及び第2の感光ドラム1008及び1208を用いている。
そして、第1及び第2の感光ドラム1008及び1208上における副走査方向の露光分布の作成は、主走査露光毎に、第1及び第2の感光ドラム1008及び1208を副走査方向に回転させることによって達成している。
【0023】
なお、偏向器11と第1及び第2の走査光学系85a及び85bに設けられているfθレンズとの間には、光路を折り返すための不図示のミラー部材が設けられている。
以下の説明では、議論を簡略化するために展開光路のみを用いて説明を行い、ミラー部材の説明は省略する。
【0024】
次に、本実施形態に係る光走査装置10の第1の入射光学系75a及び第1の走査光学系85aの諸特性を以下の表1及び表2に示す。
なお、第2の入射光学系75b及び第2の走査光学系85bについてはそれぞれ、第1の入射光学系75a及び第1の走査光学系85aに対してZ座標及び仰角の符号を変えるだけでよいため、表1及び表2、且つそれらに関する以下の説明では省略する。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
また、表1及び表2では、軸上光束LAonと偏向器11との交点G0(以下、偏向点G0と称する。)を原点とし、主走査方向をY軸、副走査方向をZ軸、そしてY軸及びZ軸に垂直な方向をX軸としている。
また、表2において、「E-x」は、「×10-x」を意味している。
【0028】
本実施形態に係る光走査装置10の第1のfθレンズ1006及び第2のfθレンズ1007の各レンズ面の主走査断面内における非球面形状(母線形状)は、以下の式(1)で表される。
【数1】
ここで、Rは曲率半径、kは離心率、Bi(i=4、6、8、10、12)は非球面係数である。なお、yに関してプラス側とマイナス側とで係数Biが異なる場合は、表2にあるように、プラス側の係数には添字uを付し(すなわち、Biu)、マイナス側の係数には添字lを付している(すなわち、Bil)。
【0029】
また、第1のfθレンズ1006及び第2のfθレンズ1007の各レンズ面の副走査断面内における非球面形状(子線形状)は、以下の式(2)で表される。
【数2】
ここで、Mjk(j=0~12、及びk=1)は非球面係数である。
【0030】
なお、本実施形態における子線チルト量とは、M01を指す。従って、子線チルト面とはM01が0ではない面を指し、子線チルト変化面とはMj1(j=1~12)の少なくとも一つが0ではない面を指す。
【0031】
また、副走査断面内における曲率半径r’は、レンズ面のy座標に従って、以下の式(3)のように連続的に変化する。
【数3】
ここで、rは光軸上における曲率半径、E(j=1~10)は変化係数である。
【0032】
次に、本実施形態に係る光走査装置10の特徴及びそれによる効果について説明する。
上述のように、偏向器に最も近い結像レンズの入射面からの反射光を発散光にするように結像レンズを設けている従来の光走査装置では、一部の反射光は依然として不要光となり被走査面に到達する可能性がある。
【0033】
また、偏向器を挟んで二つの結像光学系が互いに対向して配置されている光走査装置では、一方の結像光学系において発散するように反射された不要光が他方の結像光学系に入射した場合、やはり印字性能の低下を引き起こしてしまう。
そこで本実施形態に係る光走査装置10では、以下の構成を採ることによって、不要光が被走査面に到達することを抑制することができる。
【0034】
図3(a)及び図4(a)はそれぞれ、本実施形態に係る光走査装置10の一部主走査断面図を示している。
また、図3(b)及び図4(b)はそれぞれ、本実施形態に係る光走査装置10の一部副走査断面図を示している。
【0035】
また、図3(a)及び(b)には、第1の光源1001から出射し、偏向器11によって軸上像高に到達するように偏向された軸上光束LAonが第1のfθレンズ1006の入射面1006a(光学面)によって反射される際の光路も示されている。
同様に、図4(a)及び(b)には、第1の光源1001から出射し、軸上光束LAonが第1のfθレンズ1006の出射面1006b(光学面)によって反射される際の光路も示されている。
【0036】
図3(b)に示されているように、第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射された軸上光束LAonは、偏向点G0(第1の偏向点)を含み主走査断面(XY断面)及び副走査断面(XZ断面)に垂直な第1の断面(YZ断面)内において偏向点G0から副走査方向に離間量D1だけ離間した位置P1に到達する。
なお、ここで離間量D1としては、第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射された軸上光束LAonのうち、第1の断面上において偏向点G0に最も近い位置P1に到達する光線で評価する。
【0037】
そして、本実施形態に係る光走査装置10では、この位置P1に到達する軸上光束LAonを遮光するように遮光部1500を設けている。
これにより、第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射された軸上光束LAonを遮光部1500によって遮光することができ、第1のfθレンズ1006の入射面1006aからの不要光の影響を低減している。
【0038】
なお、遮光部1500は、筐体1401に突起部として一体で成形して設けることができるが、これに限らず、筐体1401とは別体の遮光部材として設けてもよい。
また、遮光部1500は、筐体1401に溝を形成することで設けても構わない。
【0039】
また、図4(b)に示されているように、第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射された軸上光束LAonは、第1の断面内において偏向点G0から副走査方向に離間量D2だけ離間した位置P2に到達する。
なお、ここで離間量D2としては、第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射された軸上光束LAonのうち、第1の断面内において偏向点G0に最も近い位置P2に到達する光線で評価する。
【0040】
そして、本実施形態に係る光走査装置10では、この位置P2に到達する軸上光束LAonを遮光するように遮光部1500を設けている。
これにより、第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射された軸上光束LAonを遮光部1500によって遮光することができ、第1のfθレンズ1006の出射面1006bからの不要光の影響を低減している。
【0041】
一般的に、偏向器11の副走査方向における厚みは2mm程度であり、偏向点G0はその中心になるように設計される。
そして、偏向器11の動作に伴う気流や組付け誤差等も考慮して、偏向器11の中心から遮光部1500までの副走査方向におけるクリアランス(偏向点G0から遮光部1500の偏向器11側端部までの副走査方向における距離)D0は、少なくとも4mm必要である。
【0042】
もしクリアランスD0が4mm未満であると、偏向器11の動作に伴う気流が遮光部1500によって跳ね返されることで偏向器11の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。
また、遮光部1500に溜まった汚れが偏向器11に付着したり、組付け時に偏向器11と遮光部1500との干渉を引き起こす可能性がある。
【0043】
そのため、本実施形態に係る光走査装置10では、偏向点G0から副走査方向にクリアランスD0の範囲を含まないように遮光部1500を設けている。
また、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bによって反射された軸上光束LAonが第1の断面内において偏向点G0から副走査方向にクリアランスD0の範囲に到達しないように、第1の走査光学系85aを設計している。
これにより、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bからの不要光の遮光を達成しやすくすることができる。
【0044】
以上のことから、本実施形態に係る光走査装置10では、以下の式(4a)が満たされるように、第1の走査光学系85aを設計している。
D1≧4mm ・・・(4a)
換言すると、本実施形態に係る光走査装置10では、偏向器11上の偏向点G0において偏向された後、第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射された軸上光束LAon(反射軸上光束)のうち、第1の断面上において偏向点G0に近い側のマージナル光線(第1のマージナル光線)は、第1の断面上において偏向点G0に対して副走査方向に4mm以上離間した位置に向かって進行する。
【0045】
そして、本実施形態に係る光走査装置10では、以下の式(4b)及び(4c)が満たされるように、遮光部1500を設けると共に、第1の走査光学系85aを設計することが好ましい。
D0≧4mm ・・・(4b)
D2≧4mm ・・・(4c)
ここで本実施形態に係る光走査装置10では、D0=5.00mm、D1=7.04mm及びD2=15.43mmであるため、式(4a)乃至(4c)を満たしている。
【0046】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、以下の式(5a)及び(5b)を満たすように、遮光部1500を設けると共に、第1の走査光学系85aを設計することが好ましい。
D1≧D0≧4mm ・・・(5a)
D2≧D0≧4mm ・・・(5b)
これにより、遮光部1500の第1のfθレンズ1006側端部、すなわち遮光面1500aで第1のfθレンズ1006によって反射された軸上光束LAonを遮光することができる。
そのため、偏向器11に対して第1の走査光学系85aの反対側、すなわち第3及び第4の被走査面1108及び1308に光束を導光する走査光学系(第2の結像光学系)を含む右側走査系10Rにおいて不要光を発生させないようにする効果が高くなる。
【0047】
次に、第1のfθレンズ1006によって反射される軸上光束LAonの副走査方向における光束径について検討する。
【0048】
まず、第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射される軸上光束LAonの入射面1006a上及び位置P1上における副走査方向の光束幅(以下、副走査光束幅と称する。)Wr1及びWd1はそれぞれ、0.34mm及び0.02mmとなっている。
すなわち、位置P1上における副走査光束幅Wd1は、入射面1006a上における副走査光束幅Wr1より小さくなっているため、遮光部1500の副走査方向におけるサイズを小さくすることができる。
【0049】
また、第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射される軸上光束LAonの出射面1006b上及び位置P2上における副走査光束幅Wr2及びWd2はそれぞれ、0.47mm及び1.59mmとなっている。
すなわち、位置P2上における副走査光束幅Wd2は、出射面1006b上における副走査光束幅Wr2より大きくなっている。
このような構成は、遮光部1500のサイズを小さくするためには不利ではあるが、本実施形態に係る光走査装置10は、離間量D2が十分大きくなるように設計されているため問題とはならない。
【0050】
また、入射面1006a上における副走査光束幅Wr1に対して位置P1上における副走査光束幅Wd1が1/2以下になっていれば、遮光部1500のサイズを小さくすることができる効果を十分に得ることができる。本実施形態に係る光走査装置10は、この条件を満足している。
【0051】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、以下においても示すように、軸上光束LAonの集光点が、入射面1006a上の軸上光束LAonの主光線の反射点(第1の反射点)を含み主走査断面(XY断面)及び副走査断面(XZ断面)に垂直な第2の断面(YZ断面)と第1の断面との間にはない。
すなわち、本実施形態に係る光走査装置10では、入射面1006a上によって反射された軸上光束LAonは、第1の断面に対して第1のfθレンズ1006とは反対側で集光する。
しかしながら、これに限らず、軸上光束LAonの集光点は、第2の断面と第1の断面との間にあってもよい。
【0052】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、遮光部1500はYZ断面に平行な遮光面1500aによって遮光を行うように構成されている。
そして、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bによって反射される軸上光束LAonの主光線の遮光面1500aに対する入射角度(主走査断面に対してなす角度(鋭角))θ1及びθ2はそれぞれ、19.7°及び36.3°となっている。
【0053】
このように本実施形態に係る光走査装置10では、第1のfθレンズ1006によって反射された軸上光束LAonの主光線の遮光面1500aに対する入射角度が45°以下となるように設計することが好ましい。
これにより、遮光部1500が一体に形成される筐体1401の表面が平滑であっても反射率を低減することができ、不要光の遮光効果を高めることができる。
【0054】
上記に示したように、第1のfθレンズ1006によって反射された軸上光束LAonを遮光するための遮光部1500は、筐体1401に一体で形成されている。
一方、第1のfθレンズ1206によって反射された光束LB(不図示)を遮光するための遮光部1500は、カバー部材1402に一体で形成すればよい。
しかしながらこれに限らず、光束LBを遮光するための遮光部1500は、カバー部材1402とは別体の遮光部材として設けることもできる。
また、光束LBを遮光するための遮光部1500は、カバー部材1402に溝を形成することで設けても構わない。
【0055】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、第1のfθレンズ1006によって反射された軸上光束LAonを遮光部1500に到達するまでに屈折若しくは反射させる光学部材を設けていない。
換言すると、本実施形態に係る光走査装置10では、第2の断面と遮光部1500の遮光面1500aを含む第3の断面との間における軸上光束LAonの光路上には光学素子が設けられていない。
本実施形態に係る光走査装置10をこのように構成することで、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bによる軸上光束LAonの反射に伴う不要光の光路を第1のfθレンズ1006の形状のみでコントロールすることができる。それにより、単純な遮光構成を達成することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、主走査断面内において遮光部1500の遮光面1500aを偏向点G0に対して第1のfθレンズ1006の反対側に設けることが好ましい。
本実施形態に係る光走査装置10をこのように構成することで、偏向点G0と第1のfθレンズ1006との間にスペースを設けることができ、容易に組立を行うことができる。
【0057】
しかしながら、これに限らず、主走査断面内において遮光部1500の遮光面1500aを偏向点G0と第1のfθレンズ1006との間に設けても構わない。
このように構成した場合、組立の難度は上昇するが、偏向器11上のスペースを確保することができ、気流の取り回し等において有利となる。
【0058】
次に、本実施形態の原理について説明する。
図5は、偏向器11の偏向点G0において偏向された軸上光束LAonの各光線がレンズ面Sによって反射される様子を示している。
なお、以下で示す角度は、副走査断面内において主走査断面に対してなす角度であり、図5において正の方向は個別に定義する。
【0059】
まず、図5に示されているように、偏向点G0において偏向された軸上光束LAonの主光線Lpは、レンズ面S上の位置Pp1に角度αで入射するとする。ここで位置Pp1は、第1の断面に垂直なX方向(第1の方向、光軸方向)において偏向点G0からXだけ離間しているとする。また、角度αについては偏向面から離間する方向、すなわち、図5において紙面内の反時計回りの方向を正としている。
【0060】
そして、レンズ面S上の位置Pp1において面法線がなす角度(すなわち、チルト量)をβとしたとき、レンズ面Sによって反射された主光線Lpは、第1の断面上の位置Pp2に角度α+2βで入射する。ここで、偏向点G0と位置Pp2との間の第1の断面内における離間量をDpと定義する。また、角度βについては面法線が偏向面から離間する方向、すなわち、図5において紙面内の時計回りの方向を正としている。
【0061】
このとき離間量Dpは、以下の式(6)のように表される。
Dp=Xtanα+Xtan(α+2β)
=X{tanα+(tanα+tan2β)/(1-tanα・tan2β)}
・・・(6)
【0062】
ここで、角度α及びβは通常小さいため、式(6)は以下の式(7)のように近似することができる。
【数4】
【0063】
次に、図5に示されているように、偏向点G0において偏向された直後に偏向点G0を含む主走査断面に近い側のマージナル光線Lnは、レンズ面S上の位置Pn1に角度α-Δαで入射するとする。ここで、Δαは正の数とする。
そして、レンズ面Sによって反射されたマージナル光線Lnは、第1の断面上の位置Pn2に角度(α-Δα)+2(β+Δβ)で入射する。
ここで、Δβは、レンズ面S上の位置Pp1における面法線がなす角度と位置Pn1における面法線がなす角度との差である。なおΔβは、レンズ面Sが偏向点G0側に凹面の時に正となり、凸面の時に負となる。
また、偏向点G0と位置Pn2との間の第1の断面内における離間量をDnと定義する。
【0064】
同様に、偏向点G0において偏向された直後に偏向点G0を含む主走査断面から遠い側のマージナル光線Lfは、レンズ面S上の位置Pf1に角度α+Δαで入射するとする。
そして、レンズ面Sによって反射されたマージナル光線Lfは、第1の断面上の位置Pf2に角度(α+Δα)+2(β-Δβ)で入射する。
ここで、偏向点G0と位置Pf2との間の第1の断面内における離間量をDfと定義する。
【0065】
このとき、離間量Dn及びDfは、式(7)と同様に以下の式(8a)及び(8b)のように表される。
【数5】
【数6】
【0066】
また、レンズ面S上の主光線Lpとの交点である位置Pp1における副走査断面内における曲率半径を-R、軸上光束LAonの光束径(副走査断面での光束幅)を2aとしたとき、Δα及びΔβは以下の式(9a)及び(9b)のように表される。なお、図5に示されているレンズ面Sは凹面であり、Rが正のときは凹面、負の時は凸面となる。
【数7】
【数8】
【0067】
従って、式(8a)及び(8b)はそれぞれ、式(9a)及び(9b)を用いて、以下の式(10a)及び(10b)のように書き直すことができる。
【数9】
【数10】
【0068】
ここで、α、β、a、X及びRは、以下の式(11a)、(11b)及び(11c)を満たすように設定すればよい。
Dp≧4mm ・・・(11a)
Dn≧4mm ・・・(11b)
Df≧4mm ・・・(11c)
なお通常、式(11b)及び(11c)を満たしていれば、式(11a)は満たされることに注意されたい。
【0069】
ここで、第1の走査光学系85aの光学性能を確保するためには、α、a及びXの設計自由度は通常低くなる。
そのため、実効的にはβ及びRの設計自由度を利用して、式(11a)乃至(11c)を満たすように本実施形態に係る光走査装置10を設計することになる。
【0070】
ここで式(10a)及び(10b)からわかるように、R及びβを正にすると共に、βの値を大きくするほど、離間量Dn及びDfは大きくなる。
一方、βが負になるようにレンズ面Sの向きを変える、すなわち、レンズ面Sの法線方向を反時計回りに回転させると、離間量Dn及びDfは、小さくなってしまう。
また、Rが負になるようにレンズ面Sを凸にすると、離間量Dfは大きくなる一方で離間量Dnは小さくなるため、式(11b)及び(11c)を同時に満たすことが困難となる。
【0071】
従って、βが正になるようにレンズ面Sを傾ける(反射した軸上光束LAonが偏向器11から離間するようにチルトさせる)と共に、Rが正になるようにレンズ面Sを凹面、すなわち凹形状の曲面にすることが、式(11a)乃至(11c)を満たすために有効である。
【0072】
また、上述のようにαは設計自由度が低いため、α=0°の条件下においても、式(11a)乃至(11c)を満たすようにすることで、余裕を持って本実施形態の効果を得ることができる。
【0073】
そのため本実施形態に係る光走査装置10では、式(7)、(10a)及び(10b)にα=0°を代入して得られる以下の式(12a)、(12b)及び(12c)を用いて、式(11a)乃至(11c)を満たすようにβ、a、X及びRを設定すればよい。
【数11】
【数12】
【数13】
【0074】
なお、上記の導出においては角度α及びβの符号を便宜上互いに逆方向にとっているが、角度α及びβの符号を互いに同方向にとり、上記の導出においてαを(-α)若しくはβを(-β)と置き換えても同じ結果が得られる。
【0075】
次に、本実施形態に係る光走査装置10において設けられている第1のfθレンズ1006による軸上光束LAonの反射に対する上記の計算結果を示す。
【0076】
本実施形態に係る光走査装置10では、偏向器11によって偏向された軸上光束LAonが第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射される際には、X=17.156mm、R=17mm、α=3.0°(0.052rad)、β=8.36°(0.146rad)及び2a=0.34mmである。
そのため、式(7)、(10a)及び(10b)から、Dp=6.90mm、Dn=6.89mm及びDf=6.90mmと求めることができる。
【0077】
ここで、Dn<Dfであることは、本実施形態に係る光走査装置10では、軸上光束LAonの集光点が、第2の断面と第1の断面との間にはないことを意味している。
換言すると、Dn<Dfであることは、本実施形態に係る光走査装置10では、軸上光束LAonの主光線及びマージナル光線は、入射面1006a上の軸上光束LAonの主光線の反射点を含むYZ断面と偏向点G0を含むYZ断面との間では交差しないことを意味している。
【0078】
また、表1及び表2に示されている本実施形態に係る光走査装置10における諸元値を用いたシミュレーションからは、Dp=7.05mm、Dn=7.04mm及びDf=7.06mmと求められ、上記の結果と略一致していることがわかる。なおこの際には、離間量Dnが図3(b)に示されている離間量D1に対応する。
【0079】
また、式(12a)、(12b)及び(12c)からは、Dp=5.01mm、Dn=5.00mm及びDf=5.02mmと求めることができる。
従って、本実施形態に係る光走査装置10における第1のfθレンズ1006の入射面1006aによる反射では、余裕を持って式(11a)乃至(11c)を満たしていることがわかる。
【0080】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、偏向器11によって偏向された軸上光束LAonが第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射される際には、X=23.885mm、R=14.556mm、α=-0.96°(-0.017rad)、β=11.73°(0.205rad)及び2a=0.47mmである。
そのため、式(7)、(10a)及び(10b)から、Dp=8.92mm、Dn=9.17mm及びDf=8.66mmと求めることができる。
【0081】
一方、表1及び表2に示されている本実施形態に係る光走査装置10における諸元値を用いたシミュレーションからは、Dp=16.21mm、Dn=15.43mm及びDf=17.02mmと求められ、上記の結果と一致していないことがわかる。
これは、第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射された光線は入射面1006aによって屈折されることが上記の導出では考慮されていないためである。
【0082】
しかしながら定性的には、第1のfθレンズ1006の出射面1006bによる反射においても上記の原理を同様に適用することができる。そのため、出射面1006bにおいてもβが正になるようにチルトさせると共に、Rが正になるように凹面とすることが有効である。
またこの際には、離間量Dnが図4(b)に示されている離間量D2に対応する。
【0083】
なお、本実施形態に係る光走査装置10では、上記のように、第1及び第2のfθレンズ1006及び1007のうち、偏向器11に最も近接して(隣接して)配置されている第1のfθレンズ1006における反射について議論している。
これは、偏向点G0に対する間隔が短いレンズほど反射光線の発散が小さく、強度の大きい反射光が偏向器11に到達しやすくなるためである。

【0084】
一方、偏向点G0に対する間隔が大きい第2のfθレンズ1007に対しても、本実施形態の効果を得ることができる。
しかしながら、そのように遠距離に設けられた第2のfθレンズ1007による反射では、光線は発散される。そのため偏向器11に到達する不要光の強度が小さくなると共に、偏向器11に最も近い第1のfθレンズ1006との間で上記とは異なる方法で遮光することができる。
そのため、第2のfθレンズ1007に対しては本実施形態に係る遮光構成の要望は低くなる。
【0085】
また、上記で議論したように、偏向器11に近いレンズ面からの反射光が問題となりやすいため、本実施形態に係る光走査装置10では、第1のfθレンズ1006の入射面1006aからの反射光に対して本実施形態に係る遮光方法が有効である。
【0086】
しかしながら、本実施形態を採用する光走査装置では、偏向器11に近い側のレンズ面である第1のfθレンズ1006の入射面1006aは、第1の走査光学系85aの副走査倍率等の結像性能を確保するように形状が決まってしまう。そのため、第1のfθレンズ1006の入射面1006aを本実施形態のように設計することができない可能性がある。
【0087】
一方、第1のfθレンズ1006の出射面1006bに関しては、一般的に設計自由度が高いため、本実施形態のように設計しやすい。
そのため、本実施形態の効果を得るために、少なくとも第1のfθレンズ1006の出射面1006bに対して本実施形態のように設計することも有効である。
【0088】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bは、互いに同方向にチルトしていると共に、互いに同方向の曲率を有していることが好ましい。
換言すると、本実施形態に係る光走査装置10では、第1のfθレンズ1006はメニスカス形状を有しており、すなわち入射面1006a及び出射面1006bが互いに異符号のパワーを有していることが好ましい。
本実施形態に係る光走査装置10では、第1のfθレンズ1006をこのように設計することで、入射面1006a及び出射面1006b双方からの不要光を低減することができやすくなっている。
【0089】
一方、第1の走査光学系85aの結像性能の観点から、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bのチルト方向が互いに逆であると、マージナル光線の光路間の差が大きくなり、収差が悪化する可能性がある。
同様に、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bがチルトを有した状態で、曲率の方向が互いに逆である、すなわち互いに同符号のパワーを有していると、その分さらにマージナル光線の光路間の差が大きくなる。そのため、収差が悪化する可能性がある。
従って、結像性能の観点においても、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bは、互いに同方向にチルトすると共に、互いに同方向の曲率を有することが好ましい。
【0090】
本実施形態に係る光走査装置10における上記のシミュレーション結果では、わずかながらDn<Dfとなっており、すなわち第1のfθレンズ1006によって反射された軸上光束LAonは、収束光として遮光部1500に入射する。
本実施形態に係る光走査装置10では、第1のfθレンズ1006を上記のように設計することで、遮光部1500の遮光面1500aの副走査方向における幅を、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006b上における光束径よりも小さくすることができる。
加えて、本実施形態に係る光走査装置10では、遮光部1500の位置が配置誤差によって第1の断面に垂直なX方向にずれた場合においても、遮光部1500の遮光面1500a上において光束径が大きく変わりにくくなる効果が得られる。
【0091】
一方、第1のfθレンズ1006によって反射された軸上光束LAonが発散光として遮光部1500に入射する場合には、遮光部1500の遮光面1500aの副走査方向における幅を第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006b上における光束径よりも大きくする必要がある。
【0092】
加えて、軸上光束LAonが、第1のfθレンズ1006によって反射され、遮光部1500に入射する前に一旦集光した後、発散光として遮光部1500に入射する場合には、遮光部1500の位置が配置誤差によってX方向にずれた場合に、遮光部1500の遮光面1500a上において光束径が大きく変わる可能性がある。
以上のことから、第1のfθレンズ1006によって反射された軸上光束LAonを発散光として遮光部1500に入射させることは好ましくない。
【0093】
上記では、軸上光束LAonが第1のfθレンズ1006によって反射された際の不要光について議論してきたが、次に軸外光束が第1のfθレンズ1006によって反射された際の不要光について議論する。
【0094】
軸外光束の反射光については、主走査断面内において副走査断面に対しても角度を有するため、筐体1401の横壁等に当たることで遮光される可能性が高くなる。そのため、軸上光束LAonの反射光と比べて、偏向器11若しくは第2及び第4の被走査面1108及び1308上に到達する可能性が低くなり、問題とはなりにくい。
しかしながら、軸外光束の反射光についても考慮することで、本実施形態の効果をさらに得ることができる。
【0095】
図6(a)及び図7(a)はそれぞれ、本実施形態に係る光走査装置10の一部主走査断面図を示している。
また、図6(b)及び図7(b)はそれぞれ、本実施形態に係る光走査装置10の一部副走査断面図を示している。
【0096】
なお、図6(a)及び(b)には、第1の光源1001から出射し、偏向器11によって偏向された最軸外光束LAoutが第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射される際の光路も示されている。
同様に、図7(a)及び(b)には、第1の光源1001から出射し、偏向器11によって偏向された最軸外光束LAoutが第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射される際の光路も示されている。
【0097】
ここで、最軸外光束LAoutとは、偏向器11を図3(a)及び図4(a)に示されている位置から主走査断面内において22.57°だけ回転した状態で偏向することで、最軸外像高を走査する光束LAである。
なお、図6(b)及び図7(b)では、副走査断面内に投影された光路が示されている。
【0098】
図6(b)に示されているように、第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射された最軸外光束LAoutは、偏向器11による最軸外光束LAoutの偏向点G0out(第2の偏向点)を含み主走査断面(XY断面)及び副走査断面(XZ断面)に垂直な第4の断面(YZ断面)内において偏向点G0outから副走査方向に離間量D1outだけ離間した位置P1outに到達する。
なお、ここで離間量D1outとしては、第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射された最軸外光束LAoutのうち、第4の断面内において偏向点G0outに最も近い位置P1outに到達する光線で評価する。
【0099】
また、図7(b)に示されているように、第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射された最軸外光束LAoutは、第4の断面内において偏向点G0outから副走査方向に離間量D2outだけ離間した位置P2outに到達する。
なお、ここで離間量D2outとしては、第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射された最軸外光束LAoutのうち、第4の断面内において偏向点G0outに最も近い位置P2outに到達する光線で評価する。
【0100】
そして、本実施形態に係る光走査装置10では、この位置P1out及びP2outに到達する最軸外光束LAoutを遮光するように遮光部1500を設けることが好ましい。
これにより、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bによって反射された最軸外光束LAoutを遮光部1500によって遮光することができ、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bからの不要光の影響を低減している。
【0101】
そして、本実施形態に係る光走査装置10は、以下の式(13a)及び(13b)を満たすように設計することが好ましい。
D1out≧4mm ・・・(13a)
D2out≧4mm ・・・(13b)
換言すると、本実施形態に係る光走査装置10では、偏向器11上の偏向点G0outにおいて偏向された後、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bによって反射された最軸外光束LAout(反射最軸外光束)のうち、第4の断面上において偏向点G0outに近い側のマージナル光線(第2のマージナル光線)は、第4の断面上において偏向点G0outに対して副走査方向に4mm以上離間した位置に向かって進行することが好ましい。

【0102】
次に、本実施形態に係る光走査装置10において設けられている第1のfθレンズ1006による最軸外光束LAoutの反射に対する計算結果を示す。
【0103】
本実施形態に係る光走査装置10では、偏向器11によって偏向された最軸外光束LAoutが第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射される際には、Xout=15.139mm、Rout=30.67mm、αout=3.0°(0.052rad)、βout=7.38°(0.129rad)及び2aout=0.42mmである。
【0104】
ここで、偏向点G0outにおいて偏向された最軸外光束LAoutの主光線Lpoutは、レンズ面S上の位置Pp1outに角度αoutで入射するとする。ここで位置Pp1outは、第4の断面に垂直なX方向(第1の方向)において偏向点G0outからXoutだけ離間しているとする。
そして、レンズ面S上の位置Pp1outにおいて面法線がなす角度をβoutとしたとき、レンズ面Sによって反射された主光線Lpoutは、第4の断面上の位置Pp2outに角度αout+2βoutで入射する。ここで、偏向点G0outと位置Pp2outとの間の離間量をDpoutと定義する。
【0105】
同様に、偏向点G0outにおいて偏向された直後に偏向点G0outを含む主走査断面に近い側のマージナル光線Lnoutは、レンズ面S上の位置Pn1outに角度αout-Δαoutで入射するとする。
そして、レンズ面Sによって反射されたマージナル光線Lnoutは、第4の断面上の位置Pn2outに角度(αout-Δαout)+2(βout+Δβout)で入射する。
ここで、Δβoutは、レンズ面S上の位置Pp1outにおける面法線がなす角度と位置Pn1outにおける面法線がなす角度との差である。また、偏向点G0outと位置Pn2outとの間の離間量をDnoutと定義する。
【0106】
また、偏向点G0outにおいて偏向された直後に偏向点G0outを含む主走査断面から遠い側のマージナル光線Lfoutは、レンズ面S上の位置Pf1outに角度αout+Δαoutで入射するとする。
そして、レンズ面Sによって反射されたマージナル光線Lfoutは、第4の断面上の位置Pf2outに角度(αout+Δαout)+2(βout-Δβout)で入射する。
ここで、偏向点G0outと位置Pf2outとの間の離間量をDfoutと定義する。
【0107】
また、レンズ面S上の主光線Lpoutとの交点である位置Pp1outにおける副走査断面内における曲率半径を-Rout、最軸外光束LAoutの光束径を2aoutとする。
【0108】
このとき、表1及び表2に示されている本実施形態に係る光走査装置10における諸元値を用いたシミュレーションからは、Dpout=5.41mm、Dnout=5.61mm及びDfout=5.22mmと求められる。なおこの際には、離間量Dfoutが離間量D1outに対応する。
【0109】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、偏向器11によって偏向された最軸外光束LAoutが第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射される際には、Xout=18.901mm、Rout=19.173mm、αout=-0.91°(-0.016rad)、βout=10.17°(0.178rad)及び2aout=0.50mmである。
【0110】
このとき、表1及び表2に示されている本実施形態に係る光走査装置10における諸元値を用いたシミュレーションからは、Dpout=10.17mm、Dnout=9.81mm及びDfout=10.53mmと求められる。なおこの際には、離間量Dnoutが離間量D2outに対応する。
【0111】
従って、本実施形態に係る光走査装置10における第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bによる最軸外光束LAoutの反射では、式(13a)及び(13b)を満たしていることがわかる。
【0112】
また、本実施形態に係る光走査装置10は、以下の式(14a)及び(14b)を満たすように設計されていることが好ましい。
D1out≧D0≧4mm ・・・(14a)
D2out≧D0≧4mm ・・・(14b)
これにより、遮光部1500の第1のfθレンズ1006側端部、すなわち遮光面1500aによって最軸外光束LAoutを遮光することができる。そのため、偏向器11に対して第1の走査光学系85aの反対側、すなわち右側走査系10Rにおいて不要光を発生させないようにする効果が高くなる。
【0113】
以上のように、本実施形態に係る光走査装置10では、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bによって反射された軸上光束LAon及び最軸外光束LAout等の光束を遮光部1500によって十分に遮光することができる。
これにより、偏向器11に対して第1の走査光学系85aの反対側、すなわち右側走査系10Rに対する不要光の影響を大幅に低減した光走査装置10を提供することができる。
【0114】
また、第1のfθレンズ1006の入射面1006aによって反射される最軸外光束LAoutの入射面1006a上及び位置P1out上における副走査光束幅Wr1out及びWd1outはそれぞれ、0.42mm及び0.39mmとなっている。
すなわち、位置P1out上における副走査光束幅Wd1outは、入射面1006a上における副走査光束幅Wr1outより小さくなっているため、この構成により、遮光部1500の副走査方向におけるサイズを小さくすることができる。
【0115】
同様に、第1のfθレンズ1006の出射面1006bによって反射される最軸外光束LAoutの出射面1006b上及び位置P2out上における副走査光束幅Wr2out及びWd2outはそれぞれ、0.50mm及び0.72mmとなっている。
すなわち、位置P2out上における副走査光束幅Wd2outは、出射面1006b上における副走査光束幅Wr2outより大きくなっている。
このような構成は、遮光部1500のサイズを小さくするためには不利ではあるが、本実施形態に係る光走査装置10は、離間量D2outが十分大きくなるように設計されているため問題とはならない。
【0116】
本実施形態に係る光走査装置10では、第1の走査光学系85aによる第1の被走査面1008上の照射位置を主走査方向において一様にするために、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bそれぞれにおける最軸外光束の通過位置でのチルト量は、軸上光束LAonの通過位置でのチルト量よりも小さくなっていることが好ましい。
【0117】
換言すると、本実施形態に係る光走査装置10では、偏向器11上の偏向点G0outにおいて偏向された最軸外光束LAoutの主光線の入射面1006aでの反射点(第2の反射点)上の副走査断面内におけるチルト量は、入射面1006aの軸上光束LAonの主光線の反射点(第1の反射点)上の副走査断面内におけるチルト量より小さくなっていることが好ましい。
すなわち、本実施形態に係る光走査装置10では、角度βoutが角度βに比べて小さくなりやすいため、第1のfθレンズ1006によって反射された軸外光束も十分に遮光することができるように、角度βが大きくなるように設計することが好ましい。
【0118】
同様に、本実施形態に係る光走査装置10では、第1の走査光学系85aによる第1の被走査面1008上の副走査方向におけるスポット径を主走査方向において一様にするために、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bそれぞれにおける最軸外光束の通過位置での曲率半径は、軸上光束LAonの通過位置での曲率半径よりも緩く(大きく)なっていることが好ましい。
【0119】
換言すると、本実施形態に係る光走査装置10では、偏向器11上の偏向点G0outにおいて偏向された最軸外光束LAoutの主光線の入射面1006a及び出射面1006bでの反射点上の副走査断面内におけるパワーの絶対値は、入射面1006a及び出射面1006bの軸上光束LAonの主光線の反射点上の副走査断面内におけるパワーの絶対値より小さくなっていることが好ましい。
すなわち、本実施形態に係る光走査装置10では、曲率半径Routが曲率半径Rに比べて大きくなりやすい。そのため、第1のfθレンズ1006によって反射された軸外光束も十分に遮光することができるように、曲率半径Rが小さくなるように設計することが好ましい。
【0120】
しかしながら、曲率半径Rを小さくし過ぎると、第1の断面上において軸上光束LAonが発散光束となるように離間量Dfが小さくなってしまい、遮光部1500では不要光を遮光することができなくなることに注意する必要がある。
【0121】
また、上記に示したように、レンズ面をチルトさせると共に凹面に設計することによって得られる本実施形態の効果は、回折面を用いても得ることができる。
具体的には、レンズ面をチルトさせることによって得られるものと同等の効果は、構造周期が一定である回折面を設けることによっても得ることができる。
ここでいう構造周期が一定である回折面とは、回折面に形成されている回折格子の中心から副走査方向に沿ってk番目の格子部までの距離が、kの一次式で表される回折面を意味する。
【0122】
また、レンズ面を凹面に形成することによって得られるものと同等の効果は、構造周期が二次関数で変化する回折面を設けることによっても得ることができる。
ここでいう構造周期が二次関数で変化する回折面とは、回折面に形成されている回折格子の中心から副走査方向に沿ってk番目の格子部までの距離が、kの二次式で表される回折面を意味する。
従って、レンズ面を回折面と曲面とを組み合わせた形状に設計することによっても、本実施形態の効果を得ることができる。
【0123】
図1(a)に示されているように、本実施形態に係る光走査装置10は、偏向器11を挟んで対向する第1及び第2の被走査面1008及び1208と第3及び第4の被走査面1108及び1308とを走査している。
そして、このような構成においては、左側走査系10L及び右側走査系10Rの一方に設けられているレンズ面による反射光が偏向器11を挟んで反対側の他方に不要光として到達しやすいため、問題となる。
そのため、本実施形態に係る光走査装置10を上記に示したように設計することで、そのような不要光の低減を図ることができる。
【0124】
また、本実施形態に係る光走査装置10では、第1の入射光学系75aの光軸は、副走査断面内において主走査断面に対して3.0°の角度をなしている。すなわち、本実施形態に係る光走査装置10では、第1の入射光学系75aを通過した光束LAは、偏向器11に3.0°の角度で斜入射する。
本実施形態に係る光走査装置10をこのような構成に設計することで、偏向器11によって偏向された光束LAは、3.0°の角度で第1のfθレンズ1006に向かうこととなる。
【0125】
そのため、第1のfθレンズ1006の入射面1006a及び出射面1006bそれぞれにおいて、角度βをα=0°である場合と比べて小さくすることができる。
その結果、本実施形態に係る光走査装置10では、マージナル光線の光路間の差を小さくすることができ、収差の観点から有利となる。
【0126】
また、収差の観点からβが小さくなるように第1のfθレンズ1006を設計すると、Dp等の離間量が小さくなり、不要光の影響が大きくなるため、本実施形態による遮光方法が有効になる。
【0127】
以上に示したように本実施形態に係る光走査装置10を設計することで、一方の走査光学系に設けられているレンズ面によって反射された光が偏向器11及び偏向器11を挟んで反対側の他方の走査光学系に向かわないようにすることができる。
これにより、本実施形態に係る光走査装置10では、そのような不要光の影響を大幅に低減することができる。
【0128】
以上、好ましい実施形態について説明したが、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0129】
[画像形成装置]
図8は、本実施形態に係る光走査装置10が搭載されたカラー画像形成装置90の要部副走査断面図を示している。
【0130】
画像形成装置90は、本実施形態に係る光走査装置10を用いて、像担持体である各感光ドラム面上に画像情報を記録するタンデムタイプのカラー画像形成装置である。
画像形成装置90は、本実施形態に係る光走査装置10、像担持体としての感光ドラム(感光体)23、24、25、26及び現像器15、16、17、18を備えている。また、画像形成装置90は、搬送ベルト91、プリンタコントローラ93及び定着器94を備えている。
【0131】
画像形成装置90には、パーソナルコンピュータ等の外部機器92から出力されたR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色信号(コードデータ)が入力される。
入力された色信号は、画像形成装置90内のプリンタコントローラ93によって、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各画像データ(ドットデータ)に変換される。
変換された各画像データはそれぞれ、光走査装置10の各々に入力される。そして、光走査装置10からはそれぞれ、各画像データに応じて変調された光ビーム19、20、21、22が射出され、これらの光ビームによって感光ドラム23、24、25、26の感光面が露光される。
【0132】
感光ドラム23、24、25、26の表面を一様に帯電せしめる帯電ローラ(不図示)が表面に当接するように設けられている。そして、帯電ローラによって帯電された感光ドラム23、24、25、26の表面に、光走査装置10によって光ビーム19、20、21、22が照射されるようになっている。
上で述べたように、光ビーム19、20、21、22は各色の画像データに基づいて変調されており、光ビーム19、20、21、22を照射することによって感光ドラム23、24、25、26の表面に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、感光ドラム23、24、25、26に当接するように配設された現像器15、16、17、18によってトナー像として現像される。
【0133】
現像器15乃至18によって現像されたトナー像は、感光ドラム23乃至26に対向するように配設された不図示の転写ローラ(転写器)によって搬送ベルト91上を搬送される不図示の用紙(被転写材)上に多重転写され、1枚のフルカラー画像が形成される。
【0134】
以上のようにして、未定着トナー像が転写された用紙は、さらに感光ドラム23、24、25、26の後方(図8において左側)に設けられた定着器94へと搬送される。定着器94は、内部に定着ヒータ(不図示)を有する定着ローラとこの定着ローラに圧接するように配設された加圧ローラとで構成されている。転写部から搬送されてきた用紙は、定着ローラと加圧ローラとの圧接部によって加圧しながら加熱されることにより、用紙上の未定着トナー像が定着される。さらに定着ローラの後方には不図示の排紙ローラが配設されており、排紙ローラは定着された用紙を画像形成装置90の外に排出せしめる。
【0135】
カラー画像形成装置90は、光走査装置10を用いて、C、M、Y、Kの各色に対応して感光ドラム23、24、25、26の感光面上に画像信号(画像情報)を記録し、カラー画像を高速に印字するものである。
外部機器92としては、例えばCCDセンサを備えたカラー画像読取装置が用いられても良い。この場合には、このカラー画像読取装置と、カラー画像形成装置90とで、カラーデジタル複写機が構成される。
【符号の説明】
【0136】
10 光走査装置
11 偏向器
1006、1206 第1のfθレンズ(結像光学素子)
1006a 第1のfθレンズの入射面(光学面)
1006b 第1のfθレンズの出射面(光学面)
1008、1208 被走査面
G0 偏向点(第1の偏向点)
LA、LB 光束
LAon 軸上光束
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8