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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/18 20060101AFI20240111BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240111BHJP
   B29L 31/34 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
B29C43/18
H01L21/56 T
B29L31:34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020006406
(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公開番号】P2021112864
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智行
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-148621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/18
H01L 21/56
B29L 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と前記上型に対向する下型とを含む成形型と、
前記成形型を型締めする型締め機構と、
離型フィルムを吸着する吸着台であって、外周部よりも中央部が低い上面を有するフィルム吸着台と、
前記離型フィルムに液状樹脂を吐出する樹脂吐出部と、
前記離型フィルムが下面に配置されたチャンバの上面と側面とを構成するチャンバ部と、
を備え
前記チャンバ部は、前記チャンバ部内に気体を供給するための孔部を有する、樹脂成形装置。
【請求項2】
上型と前記上型に対向する下型とを含む成形型と、
前記成形型を型締めする型締め機構と、
離型フィルムを吸着する吸着台であって、外周部よりも中央部が低い上面を有するフィルム吸着台と、
前記離型フィルムに液状樹脂を吐出する樹脂吐出部と、
前記離型フィルムが下面に配置されたチャンバの上面と側面とを構成するチャンバ部と、
前記チャンバ部内に気体を供給して前記チャンバ部内を加圧する加圧部と、
を備える、樹脂成形装置。
【請求項3】
上型と前記上型に対向する下型とを含む成形型と、
前記成形型を型締めする型締め機構と、
離型フィルムを吸着する吸着台であって、外周部よりも中央部が低い上面を有するフィルム吸着台と、
前記離型フィルムに液状樹脂を吐出する樹脂吐出部と、
前記離型フィルムが下面に配置されたチャンバの上面と側面とを構成するチャンバ部と、
を備え、
前記フィルム吸着台は、離型フィルムを吸着する吸着台の上面が外周部から中央部に向かって低くなるように湾曲している、樹脂成形装置。
【請求項4】
前記チャンバ部は、樹脂搬送機構に備えられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記樹脂搬送機構は、前記液状樹脂が供給された前記離型フィルムを前記成形型に搬送する、請求項4に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記離型フィルムを前記チャンバ部の端部下面との間で挟持するクランパをさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載された樹脂成形装置を用いて樹脂成形品を製造する方法であって、
前記チャンバ部内に気体を供給した状態で、前記離型フィルムを成形型へ搬送する樹脂搬送工程と、
前記離型フィルムが搬送された前記成形型を型締めして樹脂成形を行う樹脂成形工程と、
を含む樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板に装着されたLEDなどの光素子のチップを熱硬化性で光を透過する液状樹脂を用いて樹脂封止する技術に関して、ディスペンサのノズルから直接成形型に設けられたキャビティに液状樹脂を供給することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、液状樹脂を用いて基板を樹脂封止する技術に関して、切断された離型フィルムをフィルム固定台載置機構に吸着した状態で、離型フィルム上に液状樹脂を供給した後、樹脂ローダにより液状樹脂が供給された離型フィルムを成形型に搬送することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-193096号公報
【文献】特開2017-196752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、基板の大型化に伴い、樹脂材料の供給に要する時間が長くなっている。特許文献1に記載の樹脂成形装置では、ディスペンサから直接成形型に液状樹脂を供給するため、たとえば、成形対象物が大きくなると、液状樹脂の供給中に液状樹脂の硬化が始まることがあり、樹脂成形品の品質が低下してしまう。また、特許文献2に記載の樹脂成形装置では、液状樹脂を離型フィルム上に吐出した後、離型フィルムを成形型へ搬送するため、液状樹脂の供給中に成形型の熱により液状樹脂が硬化することを抑制できるが、高粘度の液状樹脂を用いた場合しか想定されておらず、低粘度の樹脂を用いた場合の離型フィルムの搬送について、具体的な提案がなされていないのが現状である。
【0006】
そこで、本発明は、低粘度の液状樹脂が供給された離型フィルムを成形型へ搬送することをその主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の樹脂成形装置は、上型と前記上型に対向する下型とを含む成形型と、前記成形型を型締めする型締め機構と、離型フィルムを吸着する吸着台であって、外周部よりも中央部が低い上面を有するフィルム吸着台と、前記離型フィルムに液状樹脂を吐出する樹脂吐出部と、前記離型フィルムが下面に配置されたチャンバの上面と側面とを構成するチャンバ部とを備える。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の樹脂成形品の製造方法は、液状樹脂が供給された離型フィルムが下面に配置されたチャンバの上面と側面とを構成するチャンバ部内に気体を供給した状態で、前記離型フィルムを成形型へ搬送する樹脂搬送工程と、前記離型フィルムが搬送された前記成形型を型締めして樹脂成形を行う樹脂成形工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低粘度の液状樹脂が供給された離型フィルムを成形型へ搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の樹脂成形装置の全体的な構成を示す平面模式図。
図2】樹脂成形モジュールの概略構成を示す要部断面図。
図3】離型フィルム吸着前のフィルム吸着台の様子を示す要部断面図。
図4】離型フィルム吸着後のフィルム吸着台の様子を示す要部断面図。
図5】フィルム吸着台に吸着された離型フィルムに液状樹脂を供給した様子を示す要部断面図。
図6図4の状態のフィルム吸着台上に樹脂搬送機構を配置した様子を示す要部断面図。
図7】樹脂搬送機構により離型フィルムを挟持してチャンバ部内に気体を供給した様子を示す要部断面図。
図8】樹脂搬送機構によりチャンバ部内を加圧した状態で離型フィルムを搬送する様子を示す要部断面図。
図9】離型フィルムを成形型に配置して吸着保持した様子を示す要部断面図。
図10】フィルム吸着台の変形例を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一の符号を付してその説明は繰り返さない。なお、本出願書類においては、液状樹脂の「液状」という用語は常温において液状であって、流動性を有することを意味している。
【0012】
<樹脂成形装置1の全体構成>
本実施形態の樹脂成形装置1の構成について、図1、2を参照して説明する。図1に示される樹脂成形装置1は、圧縮成形法により樹脂成形を行う樹脂成形装置1である。
【0013】
図1に示すように、実施形態の樹脂成形装置1は、同図右側から、離型フィルム切断モジュール10、樹脂供給モジュール20、樹脂成形モジュール30及び搬送モジュール40を備えている。各モジュールは、それぞれ別に分かれているが、隣接するモジュールに対して互いに着脱であり、増減可能である。例えば、樹脂供給モジュール20と搬送モジュール40との間に、樹脂成形モジュール30を2つ又は3つ配置した構成とすることができる。
【0014】
離型フィルム切断モジュール10は、図1に示すように、主に、ロール状離型フィルム11と、フィルム載置台13と、フィルムグリッパ14とを備えている。フィルムグリッパ14によりロール状離型フィルム11から長尺の離型フィルムを引き出し、その一部をフィルム載置台13を覆うようにして配置する。これをカッターにより切断することによって矩形状の離型フィルム12とすることができる。フィルム載置台13は、X、Y、Z方向に移動することができ、離型フィルム切断モジュール10と樹脂供給モジュール20の間を移動することができる。なお、離型フィルム12の形状は、矩形状に特に限定されず、例えば、成形対象物がウエハの場合は、円形状であってもよい。
【0015】
樹脂供給モジュール20は、図1に示すように、主に、樹脂搬送機構21と、フィルム回収機構22と、樹脂吐出部23と、フィルム吸着台24とを備えている。樹脂搬送機構21とフィルム回収機構22とは、一体化されて構成されており、離型フィルム切断モジュール10と後述する樹脂成形モジュール30との間を移動することができる。また、樹脂搬送機構21は、液状樹脂70が供給された離型フィルム12を成形型31に搬送することができる。樹脂吐出部23は、ノズル(不図示)から離型フィルム12上に液状樹脂70を供給することができる。フィルム吸着台24は、切断された離型フィルム12を吸着して保持することができる。また、後述するチャンバ部25は、樹脂搬送機構21に備えられている(図7参照)。また、樹脂成形装置1には、後述するチャンバ60内を加圧するための加圧部50が備えられている。
【0016】
樹脂成形モジュール30は、図1及び2に示すように、主に、成形型31と、型締め機構35とを備えている。成形型31は、上型34と上型34に対向する下型32とを備えている。下型32は、キャビティ33側面を構成する側面部材32aとキャビティ33底面を構成する底面部材32bとから構成されている。側面部材32aと底面部材32bとにより液状樹脂70が収容される凹部状のキャビティ33が形成される。また、側面部材32aと底面部材32bとは、離型フィルム12吸着するための吸着溝322a及び322bを備えている(図8参照)。液状樹脂70が供給された離型フィルム12は、樹脂搬送機構21により成形型31まで搬送され、下型32のキャビティ33上に配置される。樹脂成形モジュール30では、型締め機構35により成形型31を型締めすることで、成形対象物であるチップが搭載された成形前基板5の樹脂成形を行い、成形済基板6を形成することができる。なお、成形対象物は矩形状の基板に特に限定されず、ウエハであってもよい。基板は、例えば、一辺が150mmを超えるものであって、具体的には、一辺が320mm、300mm、250mmなどのサイズが用いられる。ウエハは、例えば、Φ300又はΦ200のサイズが用いられる。
【0017】
搬送モジュール40は、図1に示すように、主に、基板ローダ41と、吸着ハンド42と、吸着ハンド移動機構43と、成形前基板収納部45と、成形済基板収納部46とを備えている。基板ローダ41は、基板を保持して、樹脂成形モジュール30と搬送モジュール40との間を移動することができる。吸着ハンド42は、吸着ハンド移動機構43に備えられており、吸着ハンド移動機構43は、吸着ハンド42をX、Y、Z方向に移動させることと、θ方向に回転させることとができる。回転については、吸着ハンド42を水平方向に回転させることもできるし、鉛直方向に回転させて反転させることもできる。吸着ハンド42は、成形前基板収納部45に収納された成形前基板5を吸着保持し、吸着ハンド移動機構43により基板ローダ41へ搬送することができる。また、吸着ハンド42は、基板ローダ41に保持された成形済基板6を吸着保持し、吸着ハンド移動機構43により成形済基板収納部46に収納することができる。
【0018】
<樹脂搬送機構21及びフィルム吸着台24の構成>
次に、本実施形態の樹脂搬送機構21及びフィルム吸着台24の構成について、図3図5を参照して説明する。
【0019】
樹脂搬送機構21は、主に、チャンバ部25と、クランパ26とを備えている。チャンバ部25は、離型フィルム12が下面に配置されたチャンバ60の上面と側面とを構成する。言い換えれば、チャンバ60は、上面及び側面がチャンバ部25により構成され、下面が離型フィルム12により構成される。また、チャンバ部25は、孔部25aと、シール部材25bとを備えている。孔部25aは、加圧部50からチャンバ部25内(チャンバ60)に気体を供給するために形成されている。シール部材25bは、チャンバ部25とクランパ26とにより離型フィルム12を挟持することで形成されるチャンバ60内の空間をより密閉することができる。クランパ26は、離型フィルム12をチャンバ部25の端部下面との間で挟持して保持することができる。
【0020】
フィルム吸着台24は、外周部よりも中央部が低い上面を有している。より詳細には、フィルム吸着台24は、離型フィルム12を吸着する吸着台の上面が外周部から中央部に向かって低くなるように湾曲している。また、フィルム吸着台24は、離型フィルム12を吸着するための吸着孔24aが設けられている。吸着孔24aは、複数設けられることが好ましい。ここで、フィルム吸着台24の湾曲部分の容積は、液状樹脂70の供給量よりも大きくなるように形成される。これにより、液状樹脂70がフィルム吸着台の湾曲部分に収容することができる。
【0021】
樹脂成形装置1を用いた樹脂成形品の製造方法>
本実施形態の樹脂成形装置1を用いた本実施形態の樹脂成形品の製造方法の一例について図1~9を参照して説明する。まず、図1に示すように、成形前基板収納部45に収容されているチップが搭載された成形前基板5の下側に吸着ハンド42を挿入し、成形前基板5を吸着した後、成形前基板収納部45から成形前基板5を取り出す。ここで、基板は、チップの搭載側を上側として成形前基板収納部45から取り出される。
【0022】
次に、吸着ハンド42に吸着された基板を反転させて基板のチップの搭載側を下側とする。そして、吸着ハンド移動機構43によって吸着ハンド42を移動させ、吸着ハンド42に吸着された基板のチップの搭載面を下側として成形前基板5を基板ローダ41上に受け渡す。
【0023】
このとき、離型フィルム切断モジュール10では、離型フィルム12の切断が行われている。フィルムグリッパ14によりロール状離型フィルム11をフィルム載置台13上に引き出し、カッター(不図示)により前記離型フィルムを切断して矩形状の離型フィルム12を形成する。
【0024】
離型フィルム12を吸着保持したフィルム載置台13は、樹脂搬送機構21の前方まで移動する。樹脂搬送機構21がフィルム載置台13上方に移動し、離型フィルム12を受け取り、樹脂供給モジュール20のフィルム吸着台24まで搬送し、図3に示すように、フィルム吸着台24の上方に離型フィルム12が位置する状態とする。フィルム吸着台24は、樹脂搬送機構21から離型フィルム12を受け取った後、図4に示すように、両端(外側)から内側に向かって順に吸着を開始し、離型フィルム12を吸着保持する。このように両端から吸着することで、離型フィルム12にしわができるのを抑制することができる。例えば、最も端に配置された吸着孔24aの吸着を開始した後、それより内側の吸着孔24aの吸着を開始する。図5に示すように、離型フィルム12を外周部よりも中央部を低くした状態で、樹脂吐出部23から離型フィルム12上に液状樹脂70を吐出する(液状樹脂吐出工程)。フィルム吸着台24の上面が外周部よりも中央部が低くなるように形成されているため、低粘度の液状樹脂70を中央部に溜めるようにして離型フィルム12及び液状樹脂70を保持することができる。ここで、「低粘度」の液状樹脂70とは、吐出した形状を維持できない程度の粘度のものをいう。具体的には、粘度が20Pa・s以下のものをいう。
【0025】
次に、低粘度の液状樹脂70が供給された離型フィルム12を成形型へ搬送する方法について図6図9を参照して説明する。まず、フィルム吸着台24が装置の後方に移動し、図5に示すように、樹脂搬送機構21がフィルム吸着台24の上方に移動する。フィルム吸着台24が樹脂搬送機構21に向かって上昇し、図6に示すように、樹脂搬送機構21のチャンバ部25とクランパ26とにより液状樹脂70が供給された離型フィルム12を挟持する。このとき、離型フィルム12が接触するチャンバ部25の端部下面にはシール部材25bが備えられており、チャンバ60内をより密閉させることができる。
【0026】
チャンバ部25とクランパ26により離型フィルム12を挟持した後、加圧部50により、チャンバ部25の孔部25aからチャンバ部25内に気体である圧縮エアが供給され、チャンバ部25内(チャンバ60)が加圧される。圧縮エアは、例えば、工場内の配管から供給される。なお、気体は、圧縮エアに限定されず、窒素等の不活性ガスの高圧ガスを用いてもよい。高圧ガスは、ボンベから供給されてもよい、工場内の配管から供給されてもよい。加圧部50からの圧縮エアの供給が開始されると、フィルム吸着台24は離型フィルム12の吸着を停止する。
【0027】
このようにして、図7に示すように、樹脂搬送機構21bにより液状樹脂70が供給された離型フィルム12が下面に配置されたチャンバ60の上面と側面とを構成するチャンバ部25内に気体を供給した状態で、離型フィルム12を成形型31へ搬送する(樹脂搬送工程)。チャンバ部25内を加圧することで、フィルム吸着台24の形状を維持するように、離型フィルム12の中央部を外周部よりも低くした状態で搬送することができる。言い換えれば、離型フィルム12の上面が外周部から中央部に向かって低くなるように湾曲した状態で搬送することができる。チャンバ部25により離型フィルムの上面(液状樹脂が供給された面)を覆うようにすることで、液状樹脂70がチャンバ部25の外部に零れ出ることを抑制することができる。また、離型フィルム12の中央部を外周部よりも低くした状態で搬送しているため、搬送中に液状樹脂70が離型フィルム12上を移動しても、チャンバ部25やクランパ26に液状樹脂70が付着することを抑制することができる。このような状態で、離型フィルム12は、図8に示めすように、樹脂成形モジュール30の上型34と下型32との間に搬送される。このとき、液状樹脂70は、下型32の側面部材32aの内側面に収まるように離型フィルム12上に供給されている。なお、離型フィルム12を成形型31に配置する前に、成形前基板5を保持した基板ローダ41を上型34と下型32との間に移動させ、チップの搭載側を下側として成形前基板5を上型34に配置する。
【0028】
樹脂搬送機構21により上型34と下型32との間に搬送された離型フィルム12は、図9に示すように、下型32の側面部材32aと底面部材32bとからなるキャビティ33に配置される。キャビティ33に離型フィルム12を配置した後、側面部材32a及び底面部材32bの吸着溝322a、322bにより離型フィルム12を吸着する。このとき、側面部材32aの吸着を開始した後に、底面部材32bの吸着を開始する。両端から内側に向かうように順に吸着することで、離型フィルム12にしわができるのを抑制することができる。
【0029】
図2に示すように、キャビティ33により離型フィルム12を吸着保持した後、離型フィルム12が搬送された成形型31を型締めして樹脂成形を行う(樹脂成形工程)。具体的には、型締め機構35により、下型32を上昇させる。これにより、上型34と下型32とが互いに近づけられて型締めされ、成形前基板5下面に取付けられたチップがキャビティ33内の液状樹脂70に浸漬される。この状態で液状樹脂70が加熱され硬化することで、成形前基板5を樹脂成形することができ、チップが樹脂成形された成形済基板6を製造することができる。樹脂成形後は、型締め機構35により下型32を下降させる。これにより、上型34と下型32とが互いに離されて型開きされる。
【0030】
成形済基板6は、基板ローダ41により上型34から取り出され、チップの搭載側を下側として保持される。その後、基板ローダ41は、樹脂成形モジュール30から搬送モジュール40に移動する。ここで、キャビティ33に残った離型フィルム12は、フィルム回収機構22により回収され、不要フィルムボックス(不図示)に搬送される。
【0031】
基板ローダ41に保持された成形済基板6は、搬送モジュール40に搬送された後、吸着ハンド42によりチップの搭載側を下側として、吸着ハンド42によって吸着保持される。その後、吸着ハンド42に吸着された成形済基板6を反転させて基板6のチップの搭載側を上側とし、吸着ハンド移動機構43によって吸着ハンドを移動させる。そして、吸着ハンド42は、チップの搭載側を上側とした状態で成形済基板6を成形済基板収納部46に収容する。
【0032】
以上の通り、本実施形態の樹脂成形装置1は、上型と前記上型に対向する下型32とを含む成形型31と、前記成形型31を型締めする型締め機構と、離型フィルム12を吸着する吸着台であって、外周部よりも中央部が低い上面を有するフィルム吸着台24と、前記離型フィルム12に液状樹脂70を吐出する樹脂吐出部23と、前記離型フィルム12が下面に配置されたチャンバ60の上面と側面とを構成するチャンバ部25とを備える構成である。
【0033】
このように構成することにより、液状樹脂70が供給された離型フィルム12を成形型31へ搬送することができる。また、チャンバ部25により離型フィルムの上面(液状樹脂が供給された面)を覆うようことで、液状樹脂70が低粘度であってもチャンバ部25の外部に零れ出ることを抑制することができる。
【0034】
また、前記チャンバ部25は、チャンバ部25内に気体を供給するための孔部25aをさらに有する。
【0035】
このように構成することにより、チャンバ部25内に気体を供給することができ、低粘度の液状樹脂70が供給された離型フィルム12を成形型31へ搬送することができる。
【0036】
また、本実施形態の樹脂成形装置1は、前記チャンバ部25内に気体を供給して前記チャンバ部25内を加圧する加圧部50をさらに備える。
【0037】
このように構成することにより、チャンバ部25内を加圧して離型フィルム12の形状を外周部よりも中央部が低い形状とすることができるため、チャンバ部25やクランパ26に液状樹脂70が付着することを抑制することができる。
【0038】
また、前記チャンバ部25は、樹脂搬送機構21に備えられている。
【0039】
このように構成することにより、チャンバ部25により離型フィルム12の上面(液状樹脂が供給された面)を覆うことができるため、液状樹脂70が低粘度であってもチャンバ部25の外部に零れ出すことを抑制することができ、離型フィルム12を成形型31へ搬送することができる。
【0040】
また、本実施形態の樹脂成形装置1は、離型フィルム12を前記チャンバ部25の端部下面との間で挟持するクランパ26をさらに備える。
【0041】
このように構成することにより、樹脂搬送機構21により離型フィルム12を挟持することができ、成形型31へ搬送することができる。
【0042】
また、前記フィルム吸着台24は、離型フィルム12を吸着する吸着台の上面が外周部から中央部向かって低くなるように湾曲している。
【0043】
このように構成することにより、液状樹脂70を離型フィルム12の中央部に溜めるように供給することができ、離型フィルム12上から低粘度の液状樹脂70が零れ出ることを抑制することができる。
【0044】
前記樹脂搬送機構21は、前記液状樹脂70が供給された前記離型フィルム12を前記成形型31に搬送する。
【0045】
このように構成することで、液状樹脂70が供給された離型フィルム12を成形型31に搬送することができ、液状樹脂70を用いて樹脂成形品を製造することができる。
【0046】
また、樹脂成形品の製造方法では、液状樹脂70が供給された離型フィルム12が下面に配置されたチャンバ60の上面と側面とを構成するチャンバ部25内に気体を供給した状態で、前記離型フィルムを成形型31へ搬送する樹脂搬送工程と、前記離型フィルム12が搬送された前記成形型31を型締めして樹脂成形を行う樹脂成形工程とを含む。
【0047】
これにより、液状樹脂70が供給された離型フィルム12を成形型31へ搬送し、成形前基板5を樹脂成形することができる。また、チャンバ部25により離型フィルムの上面(液状樹脂が供給された面)を覆うようことで、液状樹脂70が低粘度であってもチャンバ部25の外部に零れ出ることを抑制することができる。さらに、チャンバ部25内に気体を供給することで、離型フィルム12の中央部を外周部よりも低くし、搬送中に液状樹脂70が離型フィルム12上を移動しても、チャンバ部25やクランパ26に液状樹脂70が付着することを抑制することができる。
【0048】
また、前記樹脂搬送工程の前に、切断された前記離型フィルム12を外周部よりも中央部を低くした状態で、前記液状樹脂70を吐出する液状樹脂吐出工程をさらに含む。
【0049】
これにより、液状樹脂70を離型フィルム12の中央部に溜めるように供給することができ、離型フィルム12上から液状樹脂70が零れ出ることを抑制することができる。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の技術的思想の範囲内で適宜の変更が可能である。
【0051】
本実施形態では、フィルム載置台13及びフィルム吸着台24を備える構成としたが、
フィルム載置台13とフィルム吸着台24を共通化して、フィルム吸着台24のみとする構成としてもよい。この場合、フィルム吸着台24は、X、Y、Z方向に移動することができ、離型フィルム切断モジュール10と樹脂供給モジュール20の間を移動することができる。離型フィルム12が配置されたフィルム吸着台24を、樹脂供給モジュール20の樹脂吐出部下方まで移動させ、この状態で、離型フィルム11上に低粘度の液状樹脂70を吐出する。
【0052】
本実施形態では、ロール状離型フィルム11をカッターで切断して形成した矩形状の離型フィルム12を用いたが、成形対象物がウエハの場合は、円形状の離型フィルムを形成する構成とする。この場合、円形の離型フィルム12を切断して分離した残りの離型フィルム(廃材)を処理するための廃材処理機構(不図示)が離型フィルム切断モジュール10に備えられる。
【0053】
本実施形態では、フィルム吸着台24による離型フィルム12の吸着を両端(外側)から内側に向かって順に開始したが、離型フィルム12の吸着は、同時に行ってもよいし、内側から行ってもよい。ただし、両端(外側)の吸着孔24aで吸着動作させてから、それより内側の吸着孔24aで吸着動作をさせた方が離型フィルム12にしわが発生し難く好ましい。
【0054】
本実施形態では、キャビティ33に離型フィルム12を配置し、側面部材32aの吸着を開始した後に底面部材32bの吸着を開始したが、離型フィルム12の吸着は、同時に行ってもよいし、底面部材32bの吸着を開始した後、側面部材32aの吸着を開始してもよい。ただし、側面部材32aの吸着溝322aで吸着動作させてから、底面部材32bの吸着溝322bの吸着動作をさせた方が底面部材32bの吸着を行った方が離型フィルム12にしわが発生し難く好ましい。
【0055】
本実施形態では、フィルム吸着台24が外周部よりも中央部が低い上面を有する構成とし、より詳細には、離型フィルム12を吸着する吸着台の上面が外周部から中央部に向かって低くなるように湾曲している構成とした。しかしながら、フィルム吸着台24は、図10に示すように、底面を水平な平面とし、その周囲を外側に向かって上方に傾斜する平面としてもよい。離型フィルム12を搬送するときは、図8に示すように、液状樹脂70が供給された離型フィルム12の上面が外周部から中央部に向かって低くなるように湾曲した状態となる。
【0056】
本実施形態では、チャンバ部24の内面形状を水平面と鉛直面とにより構成される形状としたが、チャンバ部の全体が湾曲したような形状、又は、一部が湾曲したような形状としてもよい。具体的には、半球状のような形状としてもよい。
【0057】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
樹脂成形装置
5 成形前基板
6 成形済基板
10 離型フィルム切断モジュール
11 ロール状離型フィルム
12 離型フィルム
13 フィルム載置台
14 フィルムグリッパ
20 樹脂供給モジュール
21 樹脂搬送機構
22 フィルム回収機構
23 樹脂吐出部
24 フィルム吸着台
24a 吸着孔
25 チャンバ部
25a 孔部
25b シール部材
31 成形型
32 下型
32a 側面部材
32b 底面部材
322a 吸着溝
322b 吸着溝
33 キャビティ
34 上型
35 型締め機構
40 搬送モジュール
41 基板ローダ
42 吸着ハンド移動機構
43 吸着ハンド
45 成形前基板収納部
46 成形済基板収納部
50 加圧部
60 チャンバ
70 液状樹脂
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10