(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】塵芥収集車
(51)【国際特許分類】
B65F 3/00 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
B65F3/00 B
(21)【出願番号】P 2020011168
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-12-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.令和1年11月15日,走行 2.令和1年12月2日,出荷 3.令和1年12月5日,出荷 4.令和2年1月8日,出荷 5.令和2年1月23日,出荷
(73)【特許権者】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼田 貴行
(72)【発明者】
【氏名】近藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】中多 研作
(72)【発明者】
【氏名】山田 大二
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】実公昭52-011289(JP,Y2)
【文献】特開平09-020401(JP,A)
【文献】特開2019-077532(JP,A)
【文献】特開昭62-096202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0155125(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 3/00- 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員室と、
塵芥が投入される投入口を有する投入箱と、
前記乗員室と前記投入箱との間に配置され前記塵芥を収容する収容箱と、
前記収容箱の内部に移動可能に配置され前記塵芥を前記収容箱から排出する排出板と、を備えた塵芥収集車であって、
前記収容箱の
一方の側面
と他方の前記側面に、上端を前記収容箱の上辺の水平方向中央よりも前記投入箱側とし、下端を前記上端及び前記収容箱の下辺の水平方向中央よりも前記乗員室側とする斜め配置補強材を
、1本ずつ有することを特徴とする塵芥収集車。
【請求項2】
前記斜め配置補強材の前記下端が、前記排出板の移動可能範囲のうち前記乗員室側の終端である乗員室側終端に対応した位置にあることを特徴とする請求項1に記載の塵芥収集車。
【請求項3】
前記収容箱の前記側面の下部に下部補強材を有し、前記下部補強材は、前記乗員室側終端に対応した位置のみに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の塵芥収集車。
【請求項4】
前記収容箱の前記側面の前記投入箱との接続部に接続部補強材を有し、前記斜め配置補強材の前記上端が、前記接続部補強材と離して設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の塵芥収集車。
【請求項5】
前記排出板は、前記投入箱側よりも前記乗員室側が高く形成された傾斜により前記塵芥を上方へ導く塵芥案内部を有し、前記斜め配置補強材の傾斜角は、前記塵芥案内部の傾斜角の±10%以内であることを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の塵芥収集車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭や事業所等から出されたゴミを収集する塵芥収集車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、塵芥が投入される投入口を有する投入箱と、投入された塵芥を収容する収容箱と、収容した塵芥を収容箱外へ排出する排出板を備えた塵芥収集車が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-140853号公報
【文献】特開2005-314058号公報
【文献】特開平9-20401号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塵芥収集車の収容箱は、一般に厚み2~4mm程度の薄鋼板で構成されており、収容した塵芥に押されて側面が膨らみ変形する可能性がある。
ここで、特許文献2には、車両前後方向に延在する複数の補強材(ビード及び補強板)をサイドパネルの内側に設けた塵芥収容箱が開示されている。
また、特許文献3の
図5には、車両前後方向に延在する複数の補強材(リブ)を外側面に設けた塵芥収容箱が開示されている。
しかし、特許文献2の塵芥収容箱は、上段ビードと下段ビードとの間に水平な中段ビードを1本しか設けておらず、側面の変形防止としては十分でない。また段落0040には中段ビードを複数本設けてもよい旨が記載されているが、中段ビードの本数が増えると製造コストが上昇してしまう。
また、特許文献3の
図5の塵芥収容箱は、水平なリブを複数設けるものであり、製造コストが高くついてしまう。
【0005】
そこで本発明は、製造コストを抑制しつつ効果的に強度を高めた収容箱を備える塵芥収集車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の塵芥収集車は、乗員室10と、塵芥αが投入される投入口を有する投入箱30と、乗員室10と投入箱30との間に配置され塵芥αを収容する収容箱20と、収容箱20の内部に移動可能に配置され塵芥αを収容箱20から排出する排出板40とを備えた塵芥収集車1であって、収容箱20の一方の側面と他方の側面に、上端を収容箱20の上辺の水平方向中央Cよりも投入箱30側とし、下端を上端及び収容箱20の下辺の水平方向中央Dよりも乗員室10側とする斜め配置補強材23を、1本ずつ有することを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の塵芥収集車1において、斜め配置補強材23の下端が、排出板40の移動可能範囲のうち乗員室10側の終端である乗員室側終端Gに対応した位置にあることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の塵芥収集車1において、収容箱20の側面の下部に下部補強材22を有し、下部補強材22は、乗員室側終端Gに対応した位置のみに設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の本発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の塵芥収集車1において、収容箱20の側面の投入箱30との接続部に接続部補強材24を有し、斜め配置補強材23の上端が、接続部補強材24と離して設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の塵芥収集車1において、排出板40は、投入箱30側よりも乗員室10側が高く形成された傾斜により塵芥αを上方へ導く塵芥案内部41を有し、斜め配置補強材23の傾斜角Xは、塵芥案内部41の傾斜角Yの±10%以内であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施の形態による塵芥収集車は、乗員室と、塵芥が投入される投入口を有する投入箱と、乗員室と投入箱との間に配置され塵芥を収容する収容箱と、収容箱の内部に移動可能に配置され塵芥を収容箱から排出する排出板とを備えた塵芥収集車であって、収容箱の一方の側面と他方の側面に、上端を収容箱の上辺の水平方向中央よりも投入箱側とし、下端を上端及び収容箱の下辺の水平方向中央よりも乗員室側とする斜め配置補強材を、1本ずつ有するものである。
本実施の形態によれば、収容した塵芥によって変形が生じる可能性のある箇所に斜め配置補強材を設けることにより、収容箱の側面の変形を効果的に防止することができる。また、斜め配置補強材を複数設ける場合と比べて製造コストを低減することができる。
【0013】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による塵芥収集車において、斜め配置補強材の下端が、排出板の移動可能範囲のうち乗員室側の終端である乗員室側終端に対応した位置にあるものである。
本実施の形態によれば、より効果的に収容箱の側面の変形を防止することができる。
【0014】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による塵芥収集車において、収容箱の側面の下部に下部補強材を有し、下部補強材は、乗員室側終端に対応した位置のみに設けられているものである。
本実施の形態によれば、より効果的に収容箱の側面の変形を防止することができる。また、下部補強材の長さを短くすることで製造コストを抑制できる。
【0015】
本発明の第4の実施の形態は、第1から第3のいずれか一つの実施の形態による塵芥収集車において、収容箱の側面の投入箱との接続部に接続部補強材を有し、斜め配置補強材の上端が、接続部補強材と離して設けられているものである。
本実施の形態によれば、斜め配置補強材の長さを短くして製造コストを抑制することができる。
【0016】
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4のいずれか一つの実施の形態による塵芥収集車において、排出板は、投入箱側よりも乗員室側が高く形成された傾斜により塵芥を上方へ導く塵芥案内部を有し、斜め配置補強材の傾斜角は、塵芥案内部の傾斜角の±10%以内であるものである。
本実施の形態によれば、排出板の塵芥案内部の傾斜の方向とは逆方向に傾斜させた斜め配置補強材の傾斜角を塵芥案内部の傾斜角の所定範囲内に設定することで、収容箱の側面の変形をより一層防止することができる。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の一実施例による塵芥収集車について説明する。
図1は本実施例による塵芥収集車の外観図であり、
図1(a)は左側面図、
図1(b)は右側面図、
図1(c)は左後方斜視図である。また、
図2は本実施例による塵芥収集車の収容箱と排出板の外観図であり、
図2(a)は収容箱の左側面図、
図2(b)は排出板の左側面図である。また、
図3は本実施例による塵芥収集車の収容箱の内部を示す図であり、
図3(a)は塵芥を収容していない状態、
図3(b)は塵芥を1/3程度収容した状態、
図3(c)は塵芥を2/3程度収容した状態、
図3(d)は塵芥を満杯に収容した状態である。
塵芥収集車1は、車両前方から順に、乗員室10、収容箱20、投入箱30を有する。乗員室10には、作業者が座る運転席や助手席等が設けられている。投入箱30は、作業者が塵芥αを投入する投入口を後面に有する。収容箱20は、投入箱30と連通しており、投入口から投入された塵芥αを収容する。
【0018】
収容箱20は、上辺よりも下辺が長く、投入箱30側の下端は上端よりも後方に突出している。収容箱20の内部には、収容した塵芥αを排出する排出板40が設置されている。
排出板40は、高さが収容箱20の内部の高さよりも若干小さく、幅が収容箱20の内部の幅よりも若干小さい。また排出板40は、投入箱30側の面に塵芥案内部41を有する。塵芥案内部41は、投入箱30側よりも乗員室10側が高く形成された傾斜を有しており、投入された塵芥αは、この傾斜に導かれて上方(収容箱20の天井側)へ移動する。本実施例では、
図2(b)に示すように、下部から中央部までの高さにおける塵芥案内部41の傾斜角Yを40度としている。なお、排出板40の乗員室10側の面は略鉛直である。
【0019】
排出板40は、移動可能に設けられており、乗員室10側と投入箱30側との間を往復動する。投入口から投入された塵芥αは、排出板40との間に挟まれ圧縮される。
図3に示すように、排出板40は塵芥αが増加するにつれ乗員室10側へ移動する。
図3(a)では排出板40が移動可能範囲のうち投入箱30側の終端である投入箱側終端Fにあり、
図3(d)では排出板40が移動可能範囲のうち乗員室10側の終端である乗員室側終端Gにある。
収容箱20の外板は厚みが2~4mm程度の鋼板で構成されているため、特に塵芥αが満杯となった状態では、収容箱20のうち塵芥αが収容されている箇所(排出板40の投入箱30側の面よりも投入箱30側)の側面は内部から押されて最大数cm程度膨らんで変形してしまう可能性がある。また、それに伴い、収容箱20のうち塵芥αが収容されていない箇所(排出板40の投入箱30側の面よりも乗員室10側)の側面は凹んで変形してしまう可能性がある。そのため、収容箱20の側面には補強材(リブ)が設けられている。
【0020】
本実施例では、
図1及び
図2に示すように、収容箱20の一方の外側面(左外側面)及び他方の外側面(右外側面)に、補強材として、上部補強材21と、下部補強材22と、斜め配置補強材23と、接続部補強材24が設けられている。上部補強材21、下部補強材22、斜め配置補強材23、接続部補強材24は、いずれも収容箱20の外側面よりも外側に突出した凸形状の鋼板である。
上部補強材21は、直線状であり、収容箱20の外側面上部において、乗員室10側の端部から投入箱30側の端部にかけて水平に設けられている。上部補強材21の長さAは、収容箱20の上辺の長さと略等しい。
下部補強材22は、直線状であり、収容箱20の外側面下部において、乗員室10側の端部から所定範囲のみに水平に設けられている。
接続部補強材24は、投入箱30との接続部において、収容箱20の形状に沿って上端を下端よりも乗員室10側として斜めに設けられている。
【0021】
斜め配置補強材23は、直線状であり、上端が下端よりも投入箱30側に位置し、上部補強材21と下部補強材22との間において、斜めに架け渡すように設けられている。斜め配置補強材23の上端は、収容箱20の上辺の水平方向中央Cよりも投入箱30側において上部補強材21に接続している。また斜め配置補強材23の下端は、収容箱20の下辺の水平方向中央Dよりも乗員室10側において下部補強材22に接続している。
収容した塵芥αによって膨らみ及び凹みが生じる可能性のある箇所に、斜め配置補強材23を設けることにより、収容箱20の強度を増して側面の変形を効果的に防止することができる。また、斜め配置補強材23はその配置により1本でも収容箱20の側面の変形を十分に防止できるため、製造コストを抑制することができる。
【0022】
また、斜め配置補強材23は、下端が、排出板40の移動可能範囲のうち乗員室側終端Gに対応した位置(側面視で少なくとも一部が重なる位置)にあることが好ましい。上述のように、収容箱20の側面の変形、すなわち排出板40周辺を境とした膨らみと凹みは、特に塵芥αが満杯状態のときに生じやすいが、この状態において排出板40は乗員室側終端Gにあるため、乗員室側終端Gに対応した位置に斜め配置補強材23を設けることで、より効果的に収容箱20の側面の変形を防止することができる。
【0023】
また、斜め配置補強材23の上端は、接続部補強材24と離して設けられることが好ましい。収容箱20のうち投入箱30側の端部は接続部補強材24によって補強されているため、さらに斜め配置補強材23によって補強する必要性は小さい。そこで斜め配置補強材23を接続部補強材24から離して設けることで、斜め配置補強材23の長さを短くして製造コストを抑制することができる。
【0024】
また、下部補強材22は、排出板40の移動可能範囲のうち乗員室側終端Gに対応した位置(側面視で少なくとも一部が重なる位置)のみに設けることが好ましい。乗員室側終端Gに対応した位置に下部補強材22を設けることで、排出板40周辺を境とした膨らみと凹みをより一層防止できる。また、下部補強材22を設ける位置を限定して長さBを短くすることで製造コストを抑制できる。本実施例では、下部補強材22の長さBは、収容箱20の下辺の長さの約20%としている。
【0025】
また、斜め配置補強材23は、収容箱20の一方の外側面(左外側面)と他方の外側面(右外側面)に、1本ずつ設けることが好ましい。斜め配置補強材23は、膨らみが生じる可能性のある箇所と凹みが生じる可能性のある箇所を1本でカバーして補強できるため、斜め配置補強材23を片側面に複数設ける場合と比べて製造コストを低減することができる。
【0026】
また、斜め配置補強材23の水平方向の幅Eは、上部補強材21、下部補強材22、及び接続部補強材24の幅よりも大きいことが好ましい。斜め配置補強材23の幅Eを大きくすることで、収容箱20の強度を増して側面の変形をより一層防止することができる。
【0027】
また、斜め配置補強材23の傾斜角Xは、排出板40の塵芥案内部41の傾斜角Yの±10%以内であることが好ましい。上述のように収容された塵芥αは塵芥案内部41の傾斜に沿って上方へ移動するため、塵芥案内部41の傾斜の方向とは逆方向に傾斜させた斜め配置補強材23の傾斜角Xを塵芥案内部41の傾斜角Yの所定範囲内に設定することで、収容箱20の側面の変形をより一層防止することができる。
本実施例では、
図2に示すように、塵芥案内部41の傾斜角Yを40度、斜め配置補強材23の傾斜角Xを38度としている。
【符号の説明】
【0028】
1 塵芥収集車
10 乗員室
20 収容箱
22 下部補強材
23 斜め配置補強材
24 接続部補強材
30 投入箱
40 排出板
41 塵芥案内部
C 上辺の水平方向中央
D 下辺の水平方向中央
G 乗員室側終端
X 斜め配置補強材の傾斜角
Y 塵芥案内部の傾斜角
α 塵芥