(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】充放電制御装置、充放電制御システムおよび充放電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20240111BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240111BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240111BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240111BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20240111BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240111BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H02J7/34 G
H02J3/00 130
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J3/38 130
G06Q50/06
H02J7/04 H
(21)【出願番号】P 2020027388
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】星出 純希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 努
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】高尾 周一
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄介
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-220975(JP,A)
【文献】特開2017-229137(JP,A)
【文献】特開2011-083084(JP,A)
【文献】特開2016-046975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 3/38
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置の充放電を制御する充放電制御部と、
1以上の防災気象情報を外部から取得する気象情報取得部と、
前記蓄電装置から負荷へ継続して電力を供給できるようにする保持時間を決定する保持時間決定部と、
決定された保持時間中に予測される電力負荷に基づいて、前記蓄電装置が保持すべき最低保持残量を導出する最低保持残量導出部とを備え、
前記保持時間決定部は、前記防災気象情報の種類または警戒度の少なくとも何れかに応じ
た設定に基づいて前記保持時間を決定し、
前記充放電制御部は、前記防災気象情報が取得された場合、導出された最低保持残量を参照して前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御装置。
【請求項2】
前記保持時間のユーザーによる設定を受付ける操作ユニットをさらに備え、
前記保持時間決定部は、前記操作ユニットが受付けた設定に基づいて保持時間を決定する請求項1に記載の充放電制御装置。
【請求項3】
前記最低保持残量導出部は、前記防災気象情報が取得され、取得された防災気象情報が継続している間、前記保持時間に対応する最低保持残量を導出して更新する、請求項1または2に記載の充放電制御装置。
【請求項4】
前記保持時間決定部は、異なる種類の複数の気象情報を前記気象情報取得部が取得している場合、それぞれの気象情報に応じた保持時間のうち最も長い時間をその場合の保持時間として決定する請求項3に記載の充放電制御装置。
【請求項5】
前記気象情報取得部は、前記防災気象情報よりもさらに警戒度の高い第2防災気象情報をさらに取得し、
前記充放電制御部は、前記第2防災気象情報が取得された場合、前記防災気象情報に基づく充放電制御が行われているか否かにかかわらず、前記蓄電装置を満充電にするように制御する請求項1に記載の充放電制御装置。
【請求項6】
前記気象情報取得部は、保持時間と対応付けられる前記防災気象情報に加えて、所定の最低保持残量と対応付けられる第2防災気象情報をさらに取得し、
前記充放電制御部は、前記第2防災気象情報が取得された場合、前記防災気象情報に基づく充放電制御が行われているか否かにかかわらず、前記第2防災気象情報に対応付けられた最低保持残量に基づいて前記蓄電装置の充放電を制御する請求項1に記載の充放電制御装置。
【請求項7】
前記気象情報取得部は、保持時間と対応付けられる前記防災気象情報に加えて、所定の最低保持残量と対応付けられる第2防災気象情報をさらに取得し、
前記充放電制御部は、前記防災気象情報および前記第2防災気象情報が何れも取得された場合、取得された防災気象情報に基づく最低保持残量および取得された第2防災気象情報に対応付けられた最低保持残量のうち最も大きい最低保持残量に基づいて前記蓄電装置の充放電を制御する請求項1に記載の充放電制御装置。
【請求項8】
外部の機器と通信する通信インターフェース回路をさらに備え、
前記最低保持残量導出部は、履歴を格納した外部の機器と通信して
保持時間中の前記電力負荷に係る予測値を取得するようにし、その予測値が取得できない場合は予め定められた
最低保持残量を適用する請求項1~7の何れか一つに記載の充放電制御装置。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一つに記載の充放電制御装置と、
前記充放電制御装置が制御の対象とする蓄電装置と、
を備える充放電制御システム。
【請求項10】
コンピュータが実行するステップとして、
1種類以上の
防災気象情報を外部から取得するステップと、
前記防災気象情報の種類または警戒度の少なくとも何れかに応じた設定に基づく保持時間であって、蓄電装置が負荷
へ継続して電力を供給できるようにする
保持時間を決定するステップと、
決定された
保持時間中に予測される電力負荷に基づいて、前記蓄電装置が保持しておくべき最低保持残量を導出するステップと、
導出された最低保持残量を参照して前記蓄電装置の充放電を制御するステップと、
を備える充放電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、充放電制御装置、充放電制御システムおよび充放電制御方法に関し、より詳しくは外部から取得した気象情報に基づいて蓄電池の充放電制御を行う充放電制御装置、充放電制御システムおよび充放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自然エネルギーを用いて発電された電力および電力系統から供給される電力を蓄電池に充電させるシステムにおいて、大別すると経済性モード、クリーンモードおよび充電モードの何れかのモードで蓄電池の充放電制御が行われるのが通常である。3つのモードの内容は以下のようなものである。なお、事業者によって各モードの呼び方に多少の差異がある。
経済性モードは、系統電力料金の単価が安い夜間時間帯に蓄電池をできるだけ充電し、料金単価が高い他の時間帯の買電中に蓄電池に蓄えられたエネルギーを放電する。
クリーンモードは太陽光発電の余剰電力で蓄電池の充電を行い買電中に放電することで、系統電力から供給を受ける電力量をなるべく抑制する。
【0003】
充電モードは、災害等による系統電力の停電に備えて蓄電池への充電を優先的に行う。ただし、蓄電池13を満容量まで充電するとは限らず、目標の蓄電池残量に達するまで充電を行う。即ち、充電の目標が必ずしも満容量とは限らない。
充電モードに関して、停電の予兆を示す情報を取得し、その予兆に基づいてどの程度緊急に蓄電池を充電する必要があるかを示す緊急度を計算し、計算された緊急度に応じて蓄電池に対する充電制御および放電許可制御の何れかを制御する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
上述の停電の予兆は、気象災害、地震災害が生じる予兆を含み、さらに気象災害の予兆を示す情報は台風情報、雷雨情報を含み、地震災害の予兆を示す情報は地震情報を含むとされている。
【0004】
また、充電モードにおける気象情報を考慮した蓄電池の制御に関して、気象情報に応じて蓄電池の充放電制御を行う気象情報対応モードを含み、取得した気象情報に応じた気象情報対応モードで制御が開始された後、予め規定された期間気象情報が取得されない場合に、前記気象情報対応モードでの制御から他のモードでの制御に切り替える制御装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、気象情報と連携するものではないが、蓄電装置(蓄電池)の充放電制御に関連して、予め記憶された最低保持残量の電力を蓄電装置に確保し、最低保持残量の値が蓄電装置の電力の実測残量より多い値に変更されたときに蓄電装置を放電停止状態にする電力供給システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-235541号公報
【文献】特開2016-220334号公報
【文献】特開2014-121153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
激しい気象条件に起因して電力系統に停電が発生した場合に需要者が期待するのは、停電中の全期間に渡って蓄電池が電力負荷(以下、単に負荷という)に電力を供給すること、従って、停電の影響を受けないことである。停電中に蓄電池から負荷に供給すべき電力量は、停電中における負荷の大きさや停電の時間的な長さに依存する。
【0007】
また、例えば気象庁が発表する気象情報には、大雨、大雪、暴風といったように種々の気象条件についての情報があり、各種類の気象情報につき、警戒度に応じて特別警報、警報、注意報が発令される。
この発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、気象情報の種類または警戒を考慮して適切に蓄電池の充放電制御を行う手法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、蓄電装置の充放電を制御する充放電制御部と、1以上の防災気象情報を外部から取得する気象情報取得部と、前記蓄電装置から負荷へ継続して電力を供給できるようにする保持時間を決定する保持時間決定部と、決定された保持時間中に予測される電力負荷に基づいて、前記蓄電装置が保持すべき最低保持残量を導出する最低保持残量導出部とを備え、前記保持時間決定部は、前記防災気象情報の種類または警戒度の少なくとも何れかに応じて前記保持時間を決定し、前記充放電制御部は、前記防災気象情報が取得された場合、導出された最低保持残量を参照して前記蓄電装置の充放電を制御する充放電制御装置を提供する。
【0009】
さらにこの発明は、前記充放電制御装置と、前記充放電制御装置が制御の対象とする蓄電装置と、を備える充放電制御システムを提供する。
【0010】
また、異なる観点からこの発明は、コンピュータが実行するステップとして、1種類以上の気象情報を外部から取得するステップと、蓄電装置が負荷に電力を供給できるようにする最低保持時間を決定するステップと、決定された最低保持時間中に予測される電力負荷に基づいて、前記蓄電装置が保持しておくべき最低保持残量を導出するステップと、導出された最低保持残量を参照して前記蓄電装置の充放電を制御するステップと、を備える充放電制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
この発明による充放電制御装置は、気象情報の種類や警戒度に適した蓄電池の充放電制御を行える。
この発明による充放電制御システムおよび充放電制御方法も同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この実施の形態による充放電制御装置を含む充放電制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す操作ユニットに表示される、充放電制御に係る気象連携設定画面の一例を示す説明図である。
【
図3】
図1に示す充放電制御装置による充放電制御の一例を示す説明図である。
【
図4】
図1に示す充放電制御部が行う充放電制御の状態遷移例を示す説明図である。
【
図5A】
図1に示す充放電制御装置の充放電制御部等が実行する充放電制御の一例を示すフローチャートの第1の部分である。
【
図5B】
図1に示す充放電制御装置の充放電制御部等が実行する充放電制御の一例を示すフローチャートの第2の部分である。
【
図5C】
図1に示す充放電制御装置の充放電制御部等が実行する充放電制御の一例を示すフローチャートの第3の部分である。
【
図5D】
図1に示す充放電制御装置の充放電制御部等が実行する充放電制御の一例を示すフローチャートの第4の部分である。
【
図6】実施の形態6において、個別に充放電制御可能な複数の蓄電池の充放電制御の例を示す説明図である。
【
図7】実施の形態8において、バーチャルプラントとしての蓄電池の充放電制御と雷注意報連兼、気象情報連携との関係を示す状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いてこの発明をさらに詳述する。なお、以下の説明は、すべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
(実施の形態1)
≪充放電制御装置および充放電制御システムの構成≫
この実施の形態による充放電制御装置を含む充放電制御システムの構成について、
図1に基づいて説明する。
図1は、この実施の形態による充放電制御装置16を含む充放電制御システム10の構成を示すブロック図である。なお、
図1は、充放電制御システム10を戸建て住宅に設置した例を示しているが、充放電制御システムの設置場所はこれに限らない。また、
図1では、充放電制御システム10と共に、系統電力網21およびHEMS(Home Energy Management System)サーバー22も図示している。
【0014】
この実施の形態による充放電制御システム10は、自然エネルギーを利用した発電装置と蓄電池を需要家が備えたシステムである。より詳細には、自然エネルギーの一態様である太陽光エネルギーを利用して発電する太陽電池モジュール11、蓄電池13および充放電制御装置16から主として構成される。自然エネルギーを利用した発電装置は太陽電池モジュール11に限るものでない。例えば風力発電やバイオマス発電等であってもよいしそれらを組合せたものであってもよい。充放電制御システム10は、発電および蓄電に関する構成の他、発電状況等を需要家に提示したり、充放電制御システム10の動作に必要な情報を外部から取得したりするための構成を含んでもよい。
【0015】
図1に示す充放電制御システム10は、太陽電池モジュール11、パワーコンディショナー12、蓄電池13、分電盤14、スマートメーター15、充放電制御装置16、通信インターフェース回路17および操作ユニット18を備えている。
太陽電池モジュール11は、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換するモジュールである。
パワーコンディショナー12は、発電された電力を負荷で消費できるように変換する装置である。具体的には、パワーコンディショナー12は、太陽電池モジュール11が出力する直流電流の交流電流への変換等を行う。
【0016】
蓄電池13は、電気エネルギーを蓄える蓄電装置であり、太陽電池モジュール11が生成した電気エネルギーまたは系統電力網21から供給される電気エネルギーを蓄積する。
図1に図示していないが、充放電制御システム10が他の発電装置(例えば燃料ガスを利用して発電する燃料電池等)を含んでもよい。充放電制御装置16が他の発電装置を含む場合、他の発電装置の発電量を例えばセンサで検出して取得することにより他の発電装置の発電量を加味した充放電制御を行うことが可能になる。
【0017】
分電盤14は、系統電力網21からスマートメーター15を介して引き込まれた電力や、太陽電池モジュール11および蓄電池13の電力を集め、集めた電力を屋内の図示しない電気機器に配分する。
スマートメーター15は、需要家(需給契約者)の使用電力量を計測し、発電事業者や系統運用者に送信するデジタルの積算電力計である。
【0018】
充放電制御装置16は、充放電制御システム10の発電に関する電力情報を取得し、その電力情報に応じてパワーコンディショナー12の動作制御を行う。電力情報としては、例えば商用電力の買電の有無を示す情報、太陽電池モジュール11の発電電力を示す情報、および蓄電池13の充電電力または放電電力を示す情報等が挙げられる。
商用電力の買電の有無および買電量は、スマートメーター15と系統電力網21とをつなぐ電力線にセンサを接続することで、そのセンサの出力値から特定できる。また、太陽電池モジュール11の発電電力および蓄電池13の充放電電力を示す情報は、パワーコンディショナー12を介して取得可能である。
さらに、蓄電池13がパワーコンディショナー12に接続されていることから、充放電制御装置16は、パワーコンディショナー12を介して蓄電池13の充放電の切り替え等の制御を行うことができる。
【0019】
この実施形態における充放電制御装置16は、ハードウェア構成の観点からCPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)およびメモリーを中心に構成される。そして、前記メモリーに格納された処理プログラムを前記CPUあるいはMPU(以下、総称してCPUという)が実行することにより充放電制御に係る機能が実現される。さらに、パワーコンディショナー12、通信インターフェース回路17等を制御するための入出力回路を含む。
また、機能的構成の観点から気象情報取得部16W、最低保持時間決定部16T、最低保持残量導出部16Rおよび充放電制御部16Cを含んで構成される。
【0020】
気象情報取得部16Wは、後述する通信インターフェース回路17を介して接続された外部のサーバーであって気象情報を提供するサーバーから気象情報を取得する。ここで、気象情報は、たとえば気象庁が発表する防災気象情報であって、落雷、大雨、暴風などのカテゴリごとに特別警報、警報、および注意報などの種類が設定されている。ただし、落雷については高精度の予測が難しいために特別警報、警報は提供されず、注意報のみが提供される。気象情報は随時更新される。気象情報取得部16Wは、気象情報を提供するサーバーに逐次アクセスして更新された気象情報を取得する。一例として気象情報取得部16Wは、15分程度の間隔でサーバーにアクセスして気象情報を取得する。
【0021】
保持時間決定部16Tは、特別警報、警報あるいは注意報が発令された場合に、現時点から少なくともどれだけの期間、充放電制御システム10が負荷に電力を供給し続けるかを決定する。
充放電制御部16Cは、上述の特別警報、警報、および注意報などが発令されるような激しい気象条件の場合、系統電力網21からの電力供給が遮断されること、即ち、停電を最悪の事態として想定する。従って、停電が発生しても少なくともN時間(保持時間決定部16Tが決定した時間)は蓄電池13に蓄えたエネルギーから負荷に電力を供給し続けることができるように蓄電池13の充放電を制御し、必要な電力を蓄電池13に貯めておくようにする。ただし、予測される気象条件下において太陽電池モジュール11などの自然エネルギーを利用した発電装置による発電量が見込める場合は、その発電量を差し引いてもよい。一方、特別警報、警報、および注意報が何れも発令されていない穏やかな気象条件であれば、充放電制御部16Cは気象条件に起因する停電が発生する確率は低いものとして節電を優先し、蓄電池13に蓄えられた電力を負荷に供給するように制御する。なお、蓄電池13が負荷に電力を供給できる期間は、その期間における負荷の大きさに依存する。
【0022】
そこで最低保持残量導出部16Rは、特別警報、警報、および注意報などの発令に対応して現時点から最低保持時間が経過するまでに負荷が消費する電力量を予測する。そして、予測される電力量に見合う電力量を蓄電池13に溜めておくべき目標の電力量として導き出す。言い換えれば、最低保持残量導出部16Rには、現在の時刻、停電が発生してから蓄電池13が負荷に電力を供給し続けられる時間に係るNおよび消費電力量を予測が入力され、向うN時間の消費を賄うことができる蓄電池の必要容量が算出される。
充放電制御部16Cは、最低保持残量導出部16Rが導き出した目標の電力量を蓄電池13に溜めておくように蓄電池13の充放電を制御する。
図1の充放電制御システム10において、蓄電池13の充電は、太陽電池モジュール11および系統電力網21の少なくとも何れかから供給される電力による。
【0023】
また、この実施形態において充放電制御装置16は、充放電制御システム10に関する情報管理、および外部との通信に関する処理を行う。具体的には、充放電制御装置16は、取得した電力情報を、発電事業者や系統運用者の図示しない情報管理サーバーに送信する。また、充放電制御装置16は、動作に必要な上述の各情報を発電事業者や系統運用者の情報管理サーバーから取得する。
【0024】
通信インターフェース回路17は、充放電制御装置16をネットワークNWと接続する装置である。さらに、
図1において通信インターフェース回路17は、需要家の宅内のローカルエリアネットワークを構成すると共に、そのローカルエリアネットワークと宅外のネットワークNW(例えばインターネット)とを通信接続する。
図1に図示しないが、宅内のローカルエリアネットワークには、空気調和機(所謂エアコンや空気清浄機等)、テレビ、および調理家電等の電力を消費する負荷として、各種の機器が接続されていてもよい。これにより、宅内のローカルエリアネットワークを介して、各機器の動作状態を需要家に確認させたり、各機器の動作制御を需要家に行わせたりすることも可能になる。また、各機器に供給される電力または電流の検出値、または室温等のセンシング情報を送信するデータ送信機が接続されていてもよい。この場合、宅内の機器の消費電力を需要家に提示することができる。
【0025】
この実施形態において、操作ユニット18は、通信機能と情報出力機能とを備えた携帯通信端末からなっている。充放電制御システム10の需要家は、操作ユニット18を用いて充放電制御システム10の発電状況等を確認したり、最低保持残量の値および要請時最低保持残量の値を設定したりすることができる。
操作ユニット18は、より具体的にはスマートフォンやタブレット端末等からなっていることが好ましいが、それら携帯通信端末に限らず、パーソナルコンピュータ等の据え置き型の端末装置であってもよい。操作ユニット18は、ローカルエリアネットワークや宅外のネットワークNWを介して通信する。携帯通信端末の場合、通信は無線で行われることを前提としているが、据え置き型の端末装置の場合は有線通信であってもよい。
【0026】
図2は、操作ユニット18に表示される気象連携設定画面の一例を示す説明図である。
図2に示す操作ユニット18は、携帯通信端末である。
図2に示す気象連携設定画面19は、現在選択されている気象連携の機能を表示する設定表示域19aが最上部に配置されている。
図2の例では、気象情報連携および雷注意報連携の機能を有効にする選択がされている旨が設定表示域19aに表示されている。気象情報連携および雷注意報連携の各機能は、気象連携設定画面19内の後述する設定項目でユーザーが選択および解除できる。また、設定表示域19aの右端部にはホームアイコンが配置されている。ホームアイコンがタッチされると、
図2に示す気象連携設定画面から図示しないホーム画面へ遷移する。
【0027】
設定表示域19aの下に、地域設定19bが配置されている。地域設定19bは、気象情報取得部16Wが気象情報を取得すべき地域を設定する画面である。充放電制御システム10が設置されている地域を設定する項目である。
図2の例では郵便番号によって地域設定を受付ける。
地域設定19bの下に気象情報連携設定19cが配置されている。気象情報連携設定19cは、警報および特別警報が発令される気象情報の個別の選択を受け付ける。
図2の例では、暴風、暴風雪、大雨、洪水、高潮、大雪、波浪の各種気象情報について個別に選択を受け付ける。また、選択された気象情報の警戒度について、特別警報のみを対象とするか、あるいは特別警報と警報を対象とするかといった警戒度の選択を受け付ける。さらに、個別の気象情報の選択と別に、気象情報連携機能を有効にするか無効にするかの選択を受け付ける。
【0028】
ところで、落雷は系統電力の停電を起こしやすいが、雷に関しては警報や特別警報が発令されない。そこで、気象情報連携設定19cの下に、雷注意報連携設定19dが配置されている。
雷注意報連携設定19dは、上述の気象情報連携機能と別に雷注意報連携機能を有効にするか無効にするかの選択を受け付ける。なお、
図2に示す例では気象情報連携設定19cに係る暴風、暴風雪、大雨、洪水、高潮、大雪、波浪の各気象情報については注意報より警戒度の高い警報、特別警報のみを設定対象としている。変形例として、注意報も選択の対象としてもよい。
【0029】
雷注意報連携設定19dの下に、最低保持時間設定19eが配置されている。最低保持時間設定19eは、雷注意報連携機能が有効かつ雷注意報が発令されている場合、停電が発生しても蓄電池13から負荷へ継続して電力を供給できるようにする保持時間の設定を受け付ける。なお、保持時間は充放電制御を行う上での目標値である。
【0030】
図2に示す例で、保持時間決定部16Tは、保持時間設定19eが受け付けた設定を保持時間として決定するものとする。なお、
図2の例で保持時間の設定は雷注意報連携に係るものである。気象情報連携については、予め定められた保持時間が適用され、ユーザーの設定は受け付けないものとしている。しかし、この態様に限らず保持時間設定19eと同様、気象情報連携設定19cも別途保持時間の設定を受け付けるようにしてもよい。さらに、例えば気象情報の種類や、警報と特別警報の違いに対応して警戒度別に保持時間の設定を受け付けるようにしてもよい。また、気象情報の種類別に最低保持時間の設定を受け付けるようにしてもよく、それらが組み合わされてもよい。
また、
図2に示す例で目安保持時間の設定の単位は時間であるが、それに限るものでない。例えば半時間単位、15分単位あるいは10分単位であってもよい。
【0031】
最低保持時間設定19eの下には、2つの操作ボタン19fが配置されている。「設定する」ボタンの操作を受け付けた場合、充放電制御装置16は、
図2の気象連携設定画面19に示される地域設定19bから最低保持時間設定19eまでの設定内容を確定させて充放電制御を実行する。
一方、「キャンセル」ボタンの操作を受け付けた場合、前記設定内容を確定せずに気象連携設定画面19を現在の設定内容に戻す。
以上が、
図2の気象連携設定画面19についての説明である。
【0032】
このように、この実施の形態において、気象情報に基づく適切な蓄電池の最低保持残量についてユーザーが理解し易い態様で提示しあるいは理解し易い態様で設定を受付けることができる。停電中に蓄電池から負荷に供給すべき電力量は、停電中における負荷の大きさや停電の時間的な長さに依存するところ、将来発生する停電の長さおよび停電中の負荷の大きさを予知することは容易でない。しかし、誤差が許容されるならば履歴に基づいて予測を立てることができる。停電の長さや停電中の負荷の大きさは一般の需要家が通常意識することのないパラメータといえる。それらのパラメータに基づく適切な蓄電池の最低保持残量をユーザーが確認あるいは設定するのは容易でない。この実施の形態では、ユーザーは、最低保持時間設定19eを設定することにより、容易に気象情報に基づく適切な蓄電池の最低保持残量を設定することができる。
【0033】
この実施の形態において、充放電制御システム10は、外部の系統電力網21に接続されている。また、充放電制御システム10は、ネットワークNWを介してHEMSサーバー22に接続されている。
系統電力網21は、電力消費設備に電力を供給する電力網であって、発電事業者や系統運用者等によって提供される。この電力の供給は通常有償(買電)である。逆に、充放電制御システム10で発電した電力を系統電力網21に供給(逆潮流)し、その電力を発電事業者や系統運用者等に買い取ってもらうこと(売電)もできる。
HEMSサーバー22は、充放電制御システム10の電力情報を取得し、管理するサーバーである。需要家は、操作ユニット18でHEMSサーバー22にアクセスして発電状況等を確認することができる。
【0034】
≪気象情報に基づく蓄電池の充放電制御≫
続いて、
図1に示す充放電制御装置16による充放電制御の一例を述べる。
図3は、充放電制御装置16による充放電制御の一例を示す説明図である。なお、
図3の充放電制御は、雷注意報連携が機能しており、気象情報連携機能は機能していない場合を例示している。
図3において、X軸は時間の経過を示している。具体的には朝7時から夜22時までの時間を示している。同日の10時から22時の期間は、雷注意報が発令されている。
図3の曲線は、履歴に基づき予測される7時から22時までの消費電力量の推移を示している。Y軸方向が消費電力量の大きさ(予測値)を示している。また、7時、10時および19時における蓄電池13の残量をイラストで示している。
【0035】
消費電力量の予測値は、過去の実績に基づいて決定される。高い精度の予測値を提供するために、気象条件の類似性や季節に応じた電力消費のパターンが考慮されてもよい。
過去の実績は、充放電制御装置16が保持・管理していてもよいが、通信可能な外部の機器が保持・管理しており、最低保持残量導出部16Rが外部の機器から取得してもよい。この実施形態では、HEMSサーバー22が過去の実績を保持・管理しており、最低保持残量導出部16Rからの要求に応じてHEMSサーバー22が取得消費電力の予測値を提供するものとする。
【0036】
最低保持残量導出部16Rは、例えば現時点から目安保持時間が経過するまでの期間における消費電力量の予測値をHEMSサーバー22に要求する。あるいは、最低保持残量導出部16Rは、目安保持時間よりも長期にわたる予測値を定期的に取得するようにしてもよい。例えば、前日の所定時刻に本日分と翌日分の予測値を取得することを繰り返してもよい。
HEMSサーバー22から消費電力量の予測値を取得すると、最低保持残量導出部16Rは、3時間後までの消費電力量をまかなえるだけの蓄電量を最低保持残量として導出する。
【0037】
7時の時点で、蓄電池13は夜間電力により満充電の状態である。同時刻において、雷注意報は発令されていない。雷注意報が発令されていない場合においても、不意の停電に備えて蓄電池13の残量が予め定められた値を下回らないように、最低保持残量導出部16Rは、最低保持残量を決定する。この場合の最低保持残量は、
図3に示すように蓄電池13の全容量の20%である。一方、その時点における蓄電池13の残量が100%とする。
蓄電池13の残量が最低保持残量の20%を上回っている限り、充放電制御部16Cは、蓄電池13に蓄えられた電力を負荷へ供給する。即ち、充放電制御部16Cは、蓄電池13の残容量が最低保持残量を上回っている限り、経済性モードあるいはクリーンモードと同様に買電中に蓄電池13の放電を行うように制御する。なお、経済性モード、クリーンモードの何れのモードと同様に充放電を行うかについては、図示しない設定画面(
図2の気象連携設定画面19と別の設定画面)で操作ユニット18がユーザーの設定を受け付けるものとする。
【0038】
この実施例において、最低保持残量導出部16Rは、雷注意報が発令され、発令された雷注意報が継続している間、目安保持時間に対応する最低保持残量を逐次導出する。そして、導出された値に基づいて最低保持残量を更新する。導出の時間間隔は、一例として最低保持時間と同じ3時間である。しかし、これに限るものでない。例えば、1時間毎に最低保持残量を導出して更新してもよいし半時間毎であってもよい。また、気象情報取得部16Wは、気象情報を提供するサーバーに逐次アクセスして更新された気象情報を取得する。一例では15分毎である。よって、気象情報が取得される度に最低保持残量を導出し更新してもよい。以下の説明で最低保持残量導出部16Rは、3時間毎に最低保持残量を導出し更新するものとする。
【0039】
7時から3時間後の10時の時点で、最低保持残量導出部16Rは再び最低保持残量を導出する。10時の時点で、丁度雷注意報が発令されている。最低保持残量導出部16Rは、雷注意報の発令に応答して、発令された10時の時点から目安保持時間である3時間後までの期間において、予測消費電力に見合う最低保持残量を求める。求められた10時から3時間後の13時までの消費電力量(予測値)に見合う最低保持残量として蓄電池13の全容量の30%という値を導出する。そして、それまでの最低保持残量の設定を導出された最低保持残量に更新する(
図3参照)。
【0040】
10時の時点における蓄電池13の残量は60%であるとする。蓄電池13の残量が最低保持残量を上回っているので、充放電制御部16Cは、買電中に蓄電池13の放電を行う制御を継続する。充放電制御部16Cは、蓄電池13の残量を逐次検出し、最低保持残量と比較する。一例で、充放電制御部16Cが蓄電池13の残量を検出するのは60秒毎である。蓄電池13の残量が最低保持残量を下回ったら、充放電制御部16Cは、蓄電池13の放電を停止させる。蓄電池13の残量が最低保持残量を下回った場合は充電を行って、最低保持残量を下回わらないようにする。
13時および16時の時点における最低保持残量の導出および更新についても、10時の時点と同様の処理を最低保持残量導出部16Rが行うものとする。
【0041】
次の19時の時点で、最低保持残量導出部16Rは最低保持残量を再び導出する。19時から22時までの消費電力量(予測値)は、16時の時点の消費電力量よりも大きい。よって最低保持残量導出部16Rは、最低保持時間に見合う最低保持残量を蓄電池13の全容量の50%の値に更新する。
19時の時点における蓄電池13の残量は、前回の16時の時点で導出された最低保持残量を下回らないように制御された結果、30%である。蓄電池13の残量は、19時の時点で更新された最低保持残量の50%を下回っている。よって充放電制御部16Cは、蓄電池13への充電を優先する充電モードに充放電制御を切替えて蓄電池13を充電する。
【0042】
蓄電池13の残量が最低保持残量である50%に達したら充放電制御部16Cは蓄電池13への充電を優先する充電モードを停止する。太陽電池モジュール11が発電を行う昼間であれば、充放電制御部16Cはその後、太陽電池モジュール11が発電した余剰電力を蓄電池13に蓄え、残量が最低保持残量を上回っている限り、経済性モードあるいはクリーンモードと同様に買電中に蓄電池13の放電を行うように制御する。ただし、
図3の例では充電が停止するのは19時より遅い夜間である。よって、太陽電池モジュール11の発電は行われず、蓄電池13に余剰電力が蓄えられることもない。
【0043】
≪運転モードの状態遷移≫
図3で述べたように、雷注意報連携機能は、蓄電池13の充放電制御を充電モードに切り換える。しかし、雷注意報連携機能が有効に設定されても、即座に蓄電池13を充電する訳ではない。条件が揃えば充放電制御部16Cは蓄電池13を充電するが、条件が揃わなければ経済性モードあるいはクリーンモードと同様に放電を行う。気象情報連携機能についても同様である。
【0044】
図4は、充放電制御部16Cが行う状態遷移の一例を示す説明図である。
図4に示すように、この実施形態において充放電制御は3つの状態をとる。第1の状態は「気象情報・雷注意報非連携状態」である。以下では略して非連携状態という。第2の状態は「雷注意報連携状態」である。第3の状態は「気象情報連携状態」である。この実施形態では、取得された気象情報の警戒度に応じて3つの状態の何れかに遷移する。状態遷移のイベントは、異なる警戒度を有する気象情報の発令あるいは解除である。
【0045】
非連携状態は警戒度ゼロの状態である。この状態は、
図2に示す気象情報連携設定19cで気象情報連携が無効に設定されているかまたは有効であっても選択された気象情報に係る選択された警報あるいは特別警報が発令されていない状態である。かつ、雷注意報連携設定19dで雷注意報連携が無効に設定されているかあるいは有効であっても雷注意報が発令されていない状態である。非連携状態において、充放電制御部16Cは、経済性モードまたはクリーンモードで蓄電池13の充放電を制御する。
【0046】
雷注意報連携状態は、警戒度が低の状態である。即ち、非連携状態よりは警戒度が高いが、気象情報連携状態よりは警戒度が低い状態である。この状態は、
図2に示す気象情報連携設定19cで気象情報連携が無効に設定されているかまたは有効であっても選択された気象情報に係る選択された警報あるいは特別警報が発令されていない状態である。かつ、雷注意報連携設定19dで雷注意報連携が有効に設定されており雷注意報が発令されている状態である。雷注意報連携状態において、充放電制御部16Cは、蓄電池13の残量が最低保持時間設定19eで設定された最低保持時間に対応する最低保持残量を下回っている場合は蓄電池13の充電を行う。ただし、蓄電池13の残量が前記最低保持残量を上回っている限り、充放電制御部16Cは経済性モードまたはクリーンモードと同様に蓄電池13の充放電制御を行う。
【0047】
気象情報連携状態は、警戒度が高の状態である。即ち、非連携状態および雷注意報連携状態より警戒度が高い状態である。この状態は、
図2に示す気象情報連携設定19cで気象情報連携が有効に設定されかつ選択された気象情報に係る選択された警報あるいは特別警報が発令されている状態である。気象情報連携状態において、充放電制御部16Cは、蓄電池13の残量を気象情報連携状態に対応して予め定められた最低保持時間に対応する最低保持残量と比較する。蓄電池13の残量が、最低保持時間に対応する最低保持残量を下回っている場合は蓄電池13の充電を行う。ただし、蓄電池13の残量が前記最低保持残量を上回っている限り、充放電制御部16Cは経済性モードまたはクリーンモードと同様に蓄電池13の充放電制御を行う。
【0048】
非連携状態において、雷注意報連携が有効かつ雷注意報が発令された場合、充放電制御部16Cは、雷注意報連携状態へ状態を遷移させる。また、非連携状態において、気象情報連携が有効かつ選択された気象情報に係る選択された警報あるいは特別警報が発令された場合、充放電制御部16Cは、気象情報連携状態へ状態を遷移させる。
雷注意報連携状態において、気象情報連携が有効かつ選択された気象情報に係る選択された警報あるいは特別警報が発令された場合、充放電制御部16Cは、気象情報連携状態へ状態を遷移させる。また、雷注意報連携状態において、雷注意報が解除されあるいは雷注意報連携が無効にされた場合、非連携状態へ状態を遷移させる。
【0049】
気象情報連携状態において、選択された警報または特別警報が解除されあるいは気象情報連携が無効にされた場合で、雷注意報連携が有効かつ雷注意報発令中の場合、充放電制御部16Cは、状態を雷注意報連携状態へ遷移させる。気象情報連携状態において、選択された警報または特別警報が解除されあるいは気象情報連携が無効にされた場合で、雷注意報が発令されていないかあるいは雷注意報連携が無効の場合は非連携状態へ遷移させる。
以上が、蓄電池13の充放電制御に係る状態遷移である。
【0050】
このように、この実施形態において、異なる種類の気象情報が同時に、同一または異なる警戒度で発令されている場合、それらの気象情報を考慮して適切に蓄電池の充放電制御を行うことができる。例えば気象庁が発表する気象情報には、大雨、大雪、暴風といったように種々の気象条件についての情報があり、異なる種類の気象情報が同時に発表されることが多い。さらに各種類の気象情報につき、警戒度に応じて特別警報、警報、注意報が発令される。同種の気象条件については特別警報、警報、注意報は択一的に発令されるが、気象条件の種類によっては注意報のみ定められており特別警報や警報が発令されないものや、注意報と警報のみが定められており特別警報が発令されないものもある。この実施形態では、気象情報連携機能および雷注意報連携機能の設定により、異なる種類の気象情報が同時に、同一または異なる警戒度で発令されている場合、それらの気象情報を考慮して適切に蓄電池の充放電制御を行うことができる。
【0051】
≪最低保持残量の遷移≫
図4に示すように、この実施形態において充放電制御の遷移にともない、最低保持残量も遷移する。
非連携状態の最低保持残量は、予め定められた最低保持残量である。この最低保持残量は、ユーザーが定義した値であり、例えば、蓄電池容量の20%である。非連携状態において、充放電制御部16Cは、蓄電池の残量が最低保持残量を下回らないように、蓄電池13の充放電を制御する。
【0052】
雷注意報連携状態の最低保持残量は、予め定められた最低保持時間に対応する最低保持残量である。雷注意報連携状態の最低保持残量は、非連携状態の最低保持残量より大きい。最低保持残量導出部16Rが導出した最低保持残量が、非連携状態の最低保持残量より小さい場合は、雷注意報連携状態の最低保持残量が、非連携状態の最低保持残量を下回らないように設定する。雷注意報連携状態において、充放電制御部16Cは、蓄電池の残量が最低保持残量を下回らないように、蓄電池13の充放電を制御する。雷注意報連携状態において、充放電制御部16Cは、蓄電池13の残量が最低保持残量を下回っている場合は蓄電池13の充電を行う。充電して、蓄電池13の残量が最低保持残量に達したら、買電による充電は行わない。また、蓄電池13の残量が前記最低保持残量を上回っている場合は、蓄電池の残量が最低保持残量を下回らないように、蓄電池13の充放電を制御する。
【0053】
気象情報連携状態の最低保持残量は、予め定められた最低保持時間に対応する最低保持残量である。気象情報連携状態の最低保持残量は、雷注意報連携状態の最低保持残量より大きい。気象情報連携状態において、充放電制御部16Cは、蓄電池の残量が最低保持残量を下回らないように、蓄電池13の充放電を制御する。気象情報連携状態において、充放電制御部16Cは、蓄電池13の残量が最低保持残量を下回っている場合は蓄電池13の充電を行う。充電して、蓄電池13の残量が最低保持残量に達したら、買電による充電は行わない。また、蓄電池13の残量が前記最低保持残量を上回っている場合は、蓄電池の残量が最低保持残量を下回らないように、蓄電池13の充放電を制御する。最低保持残量が満充電の場合は、充放電制御部16Cは、蓄電池13が満充電になったら、充放電せず、待機する。
【0054】
非連携状態において、雷注意報連携が有効かつ雷注意報が発令された場合、充放電制御部16Cは、最低保持残量を雷注意報連携状態の最低保持残量に変更する。また、非連携状態において、気象情報連携が有効かつ選択された気象情報に係る選択された警報あるいは特別警報が発令された場合、充放電制御部16Cは、最低保持残量を気象情報連携状態の最低保持残量に変更する。
雷注意報連携状態において、気象情報連携が有効かつ選択された気象情報に係る選択された警報あるいは特別警報が発令された場合、充放電制御部16Cは、最低保持残量を気象情報連携状態の最低保持残量変更する。また、雷注意報連携状態において、雷注意報が解除されあるいは雷注意報連携が無効にされた場合、非連携状態の最低保持残量に変更する。
【0055】
気象情報連携状態において、選択された警報または特別警報が解除されあるいは気象情報連携が無効にされた場合で、雷注意報連携が有効かつ雷注意報発令中の場合、充放電制御部16Cは、最低保持残量を雷注意報連携状態の最低保持残量に変更する。気象情報連携状態において、選択された警報または特別警報が解除されあるいは気象情報連携が無効にされた場合で、雷注意報が発令されていないかあるいは雷注意報連携が無効の場合は非連携状態の最低保持残量に変更する。
【0056】
以上が、蓄電池13の充放電制御に係る最低保持残量の遷移である。
ここで、気象情報連携状態の最低保持残量は、雷注意報連携状態の最低保持残量よりも大きい。充放電制御部16Cは、最低保持残量が気象情報連携状態の最低保持残量より小さく、蓄電池13の残量が、最低保持時間に対応する最低保持残量を上回っていれば蓄電池13の充電を行わない。したがって、雷注意報連携状態は、気象情報連携状態と比較して、充電する頻度や、充電量を抑制することができる。
【0057】
≪フローチャート≫
以下、フローチャートを参照しながら、充放電制御装置16が実行する処理の一例を述べる。
図5A~
図5Dは、
図1に示す充放電制御装置が実行する充放電制御の一例を示すフローチャートである。ここでは、雷注意報連携状態における充放電制御を代表例として述べる。非連携状態および気象情報連携状態における処理は、当業者であれば雷注意報連携状態の処理から容易に類推できるであろう。
図5A~
図5Dの処理は、逐次実行される。
【0058】
図5Aにおいて、充放電制御装置16のCPUは、雷注意報連携モードが有効な設定か否かを調べる。即ち、
図2に示す雷注意報連携設定19dの内容を確認する(ステップS11)。雷注意報連携設定が無効であれば(ステップS11のNo)、雷注意報連携状態をとらない(実行すべき処理がない)と判断して処理を終了する。
雷注意報連携設定が有効であれば(ステップS11のYes)、気象情報連携が無効または有効であっても選択された気象情報に係る選択された警報等の発令がされていない状態か否かを確認する(ステップS13)。気象情報連携が有効かつ選択された気象情報に係る選択された警報等が発令されていれば(ステップS13のNo)、より優先度の高い気象情報連携状態をとるので、雷注意報連携状態として実行すべき処理がないと判断して処理を終了する。
【0059】
気象情報連携が無効または有効であっても選択された気象情報に係る選択された警報等の発令がされていない場合(ステップS13のYes)、気象情報取得部16Wとして気象情報を外部のサーバーから取得する(ステップS15)。そして、雷注意報が発令されているか否かを調べる(ステップS17)。雷注意報が発令されていなければ(ステップS17のNo)充放電制御部16Cとして、非連携状態における運転モードと同様に蓄電池の充放電制御を行うこととして(ステップS19)、処理を終了する。
【0060】
前記ステップS17の判定で、雷注意報が発令されている場合、充放電制御装置16は、状況に応じて、雷注意報連携状態の開始をユーザーに通知してもよい(ステップS21)。通知は操作ユニット18の画面に表示してもよいが、例えば音声の通知であってもよい。通知の一例は、次のようなものである。画面表示の例は、「雷注意報が発令中のため、設定されている目安時間分、蓄電池の残量をキープします。不要な場合はリンクをタップして『雷注意報連携を有効にする』のチェックを外してください。(再度有効に設定するまで、雷注意報が取得されなくなります)」である。併せて、この通知表示の傍に、設定画面へのリンクを表示させる。音声通知は画面表示より単純でユーザーが理解し易いものとする。その例は、「雷注意報が発令中のため、停電に備えて蓄電池の残量をキープします。」である。
そして、系統電力が稼働しているか、即ち停電が発生していないかを調べる(ステップS23)。
停電が発生していなければ(ステップS23のYes)最低保持時間決定部16Tとして充放電制御装置16は、
図2の最低保持時間設定19eで設定された内容に基づいて最低保持時間を取得する(ステップS25)。
【0061】
そして最低保持残量導出部16Rとして充放電制御装置16は、現時点から最低保持時間が経過するまでの期間における消費電力の予測値を取得する(
図5BのステップS27)。消費電力の予測値は、履歴に基づくものであってよい。履歴に係るデータは充放電制御装置16に格納されていてもよい。しかし、通信インターフェース回路17を介した外部の機器(例えばHEMSサーバー22)に履歴のデータが格納されていてもよい。その場合、最低保持残量導出部16Rとして充放電制御装置16は、外部の機器から履歴データを取得する。
履歴は、例えばAI(Artificial Intelligence)の技術を応用して提供されてもよく、また、一つの需要家だけでなく多数の需要家の履歴に基づいて提供されてもよい。
【0062】
さらに、最低保持残量導出部16Rとして充放電制御装置16は、最低保持時間および消費電力の予測値に基づいて蓄電池の最低保持残量を求める(ステップS29)。そして充放電制御部16Cとして充放電制御装置16は、求めた最低保持残量を目標残量として確保しておくように、蓄電池13の充放電制御を行う(ステップS31)。このステップにおける充放電制御の詳細については後述する。
【0063】
続いて充放電制御装置16は、雷注意報連携を有効とする設定がまだ継続しているかを確認する(ステップS33)。雷注意報連携が無効にされている場合は(ステップS33のNo)、雷注意報連携状態を解除し、他の状態に遷移させるようにする(ステップS35)。このとき、雷注意報連携が解除された旨をユーザーに通知してもよい。通知は操作ユニット18の画面に表示してもよいが、例えば音声の通知であってもよい。通知の一例は、画面表示、音声通知ともに次のようなものである。「蓄電池を雷注意報が発令される前の動作モードに戻しました。」
【0064】
一方、前記ステップS33の判定で、雷注意報連携を有効とする設定が継続している場合(ステップS33のYes)、続いて充放電制御装置16は気象情報連携が無効あるいは有効であっても選択された気象情報の選択された警報等が発令されていない状態か否かを調べる(ステップS37)。なお、先の気象情報を取得してから所定の期間が経過している場合はここで改めて気象情報を取得する。気象情報連携が有効かつ選択された気象情報の選択された警報等が発令されている場合は(ステップS37のNo)、雷注意報連携状態を解除し、他の状態に遷移させるようにする(ステップS35)。上述のように、雷注意報連携が解除された旨をユーザーに通知してもよい。
【0065】
気象情報連携が無効あるいは有効であっても選択された気象情報の選択された警報等が発令されていない状態であれば(ステップS37のYes)、続いて充放電制御装置16は、雷注意報がまだ発令中か否かを調べる(ステップS39)。
雷注意報が解除されている場合(ステップS39のNo)、雷注意報連携状態を解除し、他の状態に遷移させるようにする(ステップS35)。上述のように、雷注意報連携が解除された旨をユーザーに通知してもよい。
【0066】
雷注意報が継続している場合(ステップS39のYes)、充放電制御装置16は、系統電力が稼働しているか、即ち停電が発生していないかを調べる(ステップS41)。
停電が発生していなければ(ステップS41のYes)、続いて充放電制御装置16は、先のステップS29で最低保持残量を求めてから予め定められた期間(この実施形態では3時間としている)が経過し、最低保持残量を更新すべき時期が来ているか否かを調べる(ステップS43)。
【0067】
その時期が未だ来ていないと判断した場合は(ステップS43のNo)、充放電制御装置16は前述のステップS31へ処理を戻し、充放電制御部16Cとして蓄電池13の充放電制御を繰り返す。さらに、ステップ31に続く上述の処理を繰り返す。
一方、最低保持残量を更新すべき時期がきたと判断した場合(ステップS43のYes)、充放電制御装置16は前述のステップS25(
図5A参照)へ処理を戻して、最低保持時間および消費電力の予測値に基づいて更新された最低保持残量を求める処理を上述した手順で繰り返す。
【0068】
図5AのステップS23および
図5BのステップS41の何れかにおいて、系統電力が稼働していない、即ち停電が発生していると判断した場合、充放電制御装置16は、処理を
図5Cに示すステップS51へ進め、システムの自立運転を開始する。
状況に応じて自立運転の開始をユーザーに通知してもよい(ステップS53)。通知は操作ユニット18の画面に表示してもよいが、例えば音声の通知であってもよい。通知の一例は、画面表示、音声通知ともに次のようなものである。「蓄電池システムが自立運転に切り替わりました。停電の可能性があります。ご自宅の状況を確認してください。」
【0069】
自立運転中に充放電制御部16Cとして充放電制御装置16は、系統電力の停電が復旧したかどうかを調べる(ステップS57)。停電が復旧していなければ(ステップS57のNo)、充放電制御部16Cとして充放電制御装置16は自立運転を継続する(ステップS59)。そして、処理をステップS57へ戻し、停電復旧の監視を続ける。
一方、停電が復旧した場合(ステップS57のYes)、充放電制御装置16はシステムの自立運転を解除する(ステップS61)。状況に応じて自立運転の解除をユーザーに通知してもよい。通知は操作ユニット18の画面に表示してもよいが、例えば音声の通知であってもよい。通知の一例は、画面表示、音声通知ともに次のようなものである。「停電から復旧しました。蓄電池システムの自立運転を解除しました。」
充放電制御装置16は、処理をステップ
図5AのS11に戻し、以降の処理を実行する。
【0070】
最後に、ステップS31(
図5B参照)の充放電制御の詳細について述べる。
ステップS31で、充放電制御部16Cとして充放電制御装置16は、蓄電池13の現時点の残量を取得する(
図5DのステップS71)。そして、取得した残量を目標とする最低保持残量と比較する(ステップS73)。
蓄電池13の残量が目標の最低保持残量未満の場合(ステップS73のYes)、充放電制御部16Cとして充放電制御装置16は、蓄電池13を充電する運転を行い(ステップS75)、ステップS31の処理を終了する。
一方、蓄電池13の残量が目標の最低保持残量以上の場合(ステップS73のNo)、充放電制御装置16は、非連携状態の運転モード(経済性モードまたはクリーンモード)と同様に、蓄電池の充放電制御を行い(ステップS77)、ステップS31の処理を終了する。
以上が、雷注意報連携状態において充放電制御装置16が実行する処理である。
【0071】
(実施の形態2)
実施の形態1では、警戒度が注意報レベルの雷注意報連携状態と、警戒度がより高い警報および特別警報レベルの気象情報連携状態と、警戒度がゼロの非連携状態との間の状態遷移について述べた。
異なる警戒度を有する複数の状態がある場合、高い警戒度の状態を優先するように状態を遷移させる処理は実施の形態1に限るものでない。
【0072】
例えば、雷注意報以外の気象情報、例えば大雨や暴風等についても、注意報レベルと警報レベルで異なる充放電制御を行ってもよい。さらに、注意報レベル、警報レベル、特別警報レベルの3段階で異なる充放電制御を行ってもよい。
例えば、警戒度が高くなるほど長い最低保持時間を適用して充放電制御を行うようにしてもよい。また、異なる警戒度に対してユーザーが個別の最低保持時間を設定できるようにしてもよい。
【0073】
異なる種類の気象情報に対して異なる最低保持時間を設定してもよく、それぞれの最低保持時間について個別にユーザーが最低保持時間を設定できるようにしてもよい。
異なる種類の気象情報に係る注意報、警報あるいは特別警報が並行して発令される事態が起こりえる。例えば、暴風について特別警報が発令されると同時に大雨について警報が発令されることがあり得る。さらに並行して、洪水について注意報が発令されることがあり得る。
【0074】
そのように、異なる種類の気象情報に係る異なる警戒度を有する情報が発令された場合、充放電制御装置16はそれぞれに対応した最低保持時間を決定したうえで、最も長い最低保持時間を採用して蓄電池13の充放電制御を行うようにすればよい。
さらに、異なる気象条件で消費電力の予測値が異なる場合が考えられる。その場合、充放電制御装置16は、それぞれに対応した最低保持残量を求めたうえで、最も大きな最低保持残量を採用して蓄電池13の充放電制御を行うようにすればよい。
【0075】
(実施の形態3)
実施の形態1において、最低保持残量導出部16Rは、履歴に基づいて消費電力の予測値を取得する。
しかし、履歴を取得するにあたって、近似した条件における過去のデータが十分に蓄積されていない場合も考えられる。あるいは、通信障害等によって外部から予測値が取得できないことも考えられる。
そのような場合、最低保持残量導出部16Rは、消費電力の予測値を取得する通常の処理に代えて、予め定められた最低保持残量を適用してもよい。そして、充放電制御部16Cは、その最低保持残量を用いて充放電制御を行うようにしてもよい。
この場合、異なる種類の気象情報に係る異なる警戒度を有する情報が発令された場合、充放電制御装置16はそれぞれに対応した最低保持残量を決定したうえで、最も多い最低保持残量を採用して蓄電池13の充放電制御を行うようにすればよい。
【0076】
(実施の形態4)
実施の形態1において、気象情報連携状態の最低保持残量は、目安保持時間に対応する最低保持残量である。
しかし、気象情報連携状態の最低保持残量を導出する処理に代えて、予め定められた最低保持残量を適用してもよい。この場合、例えば気象情報の種類や、警報と特別警報の違いに対応して警戒度別に最低保持残量の設定を受け付けるようにしてもよい。また、気象情報の種類別に最低保持残量の設定を受け付けるようにしてもよく、それらが組み合わされてもよい。
【0077】
例えば、気象情報連携状態の最低保持残量を満充電とする。気象情報連携状態において、充放電制御部16Cは、蓄電池13が満充電でなければ、充電を開始する。そして、蓄電池13が満充電となったら、放電せず、待機する。
雷注意報連携状態において、充放電制御部16Cは、最低保持残量が気象情報連携状態の最低保持残量より小さく、雷蓄電池13の残量が、最低保持時間に対応する最低保持残量を上回っていれば蓄電池13の充電を行わない。したがって、雷注意報連携状態は、気象情報連携状態と比較して、充電する頻度や、充電量を抑制することができる。
【0078】
(実施の形態5)
実施の形態1において、気象情報取得部16Wは、逐次外部から提供される気象情報を取得する。しかし、通信障害等のために外部から気象情報を取得できない状況に陥ることも考えられる。
そこで、予め定められた期間継続して外部から気象情報が取得できない場合、充放電制御部16Cは気象情報がなくても運転できる非連携状態に充放電制御を遷移させるようにしてもよい。
【0079】
(実施の形態6)
この実施形態では、蓄電池13が、独立して充放電可能な2台以上の蓄電池(例えば、蓄電池13Aおよび13Bで構成される場合について述べる。その場合、蓄電池の最低保持残量を蓄電池毎に設定すればよい。最低保持残量は、すべての蓄電池の最低保持残量を同じ値に設定してもよく、それぞれに異なる値を設定してもよい。
雷注意報連携状態において、充放電制御部16Cは、残量が最低保持残量より少ない蓄電池があれば、充電する。(以下、この充電制御を補充電と呼ぶ。)また、補充電中は、残量が最低保持残量より多い蓄電池があれば、放電せず、待機とする。したがって、蓄電池毎に、充電または待機のいずれかの制御を行う。すべての蓄電池の残量が最低保持残量より多くなれば、補充電を終了する。
【0080】
処理例を
図6に示す。
図6において、蓄電池13Aについて導出された最低保持残量が50%であるとする。雷注意報が発令された時点において、蓄電池13Aの残量が最低保持残量を下回っていると、充放電制御部16Cは、雷注意報が発令されて以降、蓄電池13Aの充電を開始する。雷注意報発令中に気象警報が発令されると、最低保持残量導出部16Rは最低保持残量を100%(満充電)に変更し、気象警報が解除されると、最低保持残量を50%に戻すが、その間の残量が50%を下回っているので最低保持残量がいずれの場合も充電を続ける。気象警報が解除された後に残量が50%に達したところで、充電を終了する。そして、雷注意報が解除されるまで残量50%で待機しているように制御する。一方、雷注意報が発令された時点において、蓄電池13Bについて導出された最低保持残量が40%であるとする。充放電制御部16Cは、雷注意報が発令されて以降充電を開始し、残量が40%に達したところで充電を終了する。そして、雷注意報が解除されるまで残量40%で待機している。
【0081】
雷注意報発令中に気象警報が発令されると、充放電制御部16Cは、最低保持残量を100%に変更し満充電を目指して13Bの充電を開始する。その後、気象警報が解除された時点で、蓄電池13Bは、残量が55%の状態になっており、更新された最低保持残量の40%を上回っている。このとき、蓄電池13Aは残量が最低保持残量の50%未満の状態で補充電処理中である。
充放電制御部16Cは、蓄電池13Bの残量が最低保持残量の40%を上回る55%の状態であっても、蓄電池13Aの補充電が終わるまで蓄電池13Bの放電を行わずに待機させる。その後、蓄電池13Aが最低保持残量の50%まで充電されて補充電処理が完了すると、充放電制御部16Cは、蓄電池13Bを最低保持残量の40%まで放電させる。
【0082】
(実施の形態7)
警戒度が高い状態ないしは低い状態(雷注意報連携モードや気象警報連携モード)から、雷注意報や気象警報が解除されて警戒度ゼロの状態(雷注意報連携モードや気象警報連携モードになる前の自動運転モード)に戻る場合において、最低保持残量導出部16Rは設定された最低保持残量(雷注意報連携モードや気象警報連携モードでの最低保持残量)から警報や注意報が発令される前に設定されていた最低保持残量(雷注意報連携モードや気象警報連携モードになる前の自動運転モードでの最低保持残量)に戻す処理をしてもよい。前に設定されていた最低保持残量に戻す処理を行うために、最低保持残量導出部16Rは、警報や注意報が発令された段階において設定されていた最低保持残量を充放電制御装置16の図示しないメモリーに記憶しておけばよい。なお、停電などが発生した場合においても消去されないように不揮発性の記憶領域に最低保持残量を記憶しておくことが好ましい。
【0083】
(実施の形態8)
蓄電池13が、バーチャルパワープラント(VPP)の制御機器として、外部の電力事業者によって制御される場合などにおいて、気象警報や雷注意報が発令された場合は、雷注意報連携状態や気象情報連携状態が優先される。気象警報や雷注意報が発令されたときの状態遷移を
図7に示す。
図7を
図4と比較すると、
図4における気象情報・雷注意報非連携状態と
図7のVPP制御可能状態とが対応している。即ち、VPP制御可能状態において雷注意報または気象警報が発令された場合の状態遷移は
図4と同様である。また、発令されていた雷注意報または気象警報が解除された場合の状態遷移も
図4と同様である。
図7において、VPP制御可能状態において外部の電力事業者からデマンドレスポンス(DR)の要請を受けた場合等において、充放電制御部16Cは、VPP制御可能状態をVPP制御状態へ移行させて、要請に応じた蓄電池13の充放電制御を行う。
【0084】
VPP制御状態において雷注意報または気象警報が発令された場合、充放電制御部16Cは、雷注意報連携状態または気象情報連携状態に状態を遷移させる。状態の遷移先は、VPP制御可能状態において雷注意報または気象警報が発令された場合と同様である。即ち、VPPとしての充放電制御よりも、雷注意報連携や気象情報連携の充放電制御を優先する。
なお、VPP制御状態から雷注意報連携状態または気象情報連携状態へ遷移した場合であっても、雷注意報および気象警報が解除された場合の遷移先はVPP制御状態でなくVPP制御可能状態である。
【0085】
以上に述べたように、
(i)この発明による充放電制御装置は、蓄電装置の充放電を制御する充放電制御部と、1以上の防災気象情報を外部から取得する気象情報取得部と、前記蓄電装置から負荷へ継続して電力を供給できるようにする保持時間を決定する保持時間決定部と、決定された保持時間中に予測される電力負荷に基づいて、前記蓄電装置が保持すべき最低保持残量を導出する最低保持残量導出部とを備え、前記保持時間決定部は、前記防災気象情報の種類または警戒度の少なくとも何れかに応じて前記保持時間を決定し、前記充放電制御部は、前記防災気象情報が取得された場合、導出された最低保持残量を参照して前記蓄電装置の充放電を制御することを特徴とする。
【0086】
この発明において、気象情報は、気象条件についての情報であり、例えば大雨、大雪、暴風といったような種々の気象条件、特に系統電力の停電を発生させる可能性がある激しい気象条件についての情報である。このような気象情報を防災気象情報という。その具体的な態様として、例えば、暴風、暴風雪、大雨、洪水、高潮、大雪、波浪の特別警報、警報、注意報および雷注意報が挙げられる。気象の激しさは、災害に結び付くような激しい現象、言い換えれば警戒度の高さを意味し、注意報、警報、特別警報は警戒度の高さの段階に対応する。前述の実施形態における雷注意報は、この発明の気象情報に相当する。気象情報は、例えば気象庁が発表する上述の注意報、警報、特別警報であってもよいがこれに限定するものでなく、気象情報の提供サービスを行っている事業者や他の者が提供する情報であってもよい。
【0087】
また、蓄電装置は、エネルギーを蓄え、蓄えたエネルギーを電力として供給するものである。その具体的な態様は、例えば、蓄電池である。蓄電池の方式、構成は問わない。前述の実施形態における蓄電池は、この発明の蓄電装置に相当する。
さらにまた、電力負荷の予測は、例えば履歴に基づいて行われてもよく、履歴は一つの需要家に限らず多数の需要家の履歴であってもよい。それらの履歴は、充放電制御装置が保持していてもよいが、通信を介して接続された外部の機器から取得してもよい。
【0088】
蓄電池の充電は、系統電力から供給される電力を用いてもよいが、自然エネルギーを利用した1種類以上の発電装置を用いてもよい。自然エネルギーを利用した発電装置の具体的な態様として、太陽電池モジュールが挙げられるが、これに限るものでなく、風力発電や他の発電装置が適用されてもよい。前述の実施形態における太陽電池モジュールは、この発明に係る蓄電池の充電を行うものに含まれる。
また、充放電制御部は、蓄電池の充放電の制御を行うものである。その具体的な態様は、例えば、CPUおよびメモリーを中心としたハードウェア構成を有し、前記メモリーに格納された制御プログラムをCPUが実行することによって充放電制御の機能が実現されるものが挙げられる。
【0089】
さらに、この発明の好ましい態様について説明する。
(ii)前記最低保持時間のユーザーによる設定を受付ける操作ユニットをさらに備え、前記最低保持時間決定部は、前記操作ユニットが受付けた設定に基づいて最低保持時間を決定してもよい。
このようにすれば、ユーザーが操作ユニットを用いて最低保持時間を設定し更新できる。また、最低保持時間はその名の通り時間を尺度とするので、ユーザーが日常で意識せず馴染みのない電力量あるいは蓄電池容量に比べるとユーザーが直感的に把握し易い。
【0090】
(iii)前記気象情報取得部は、予測される気象の激しさの度合いに応じた警戒度を有する複数種類の気象情報を取得し、前記最低保持時間決定部は、前記気象情報の種類または警戒度の少なくとも何れかに応じて最低保持時間を決定してもよい。
このようにすれば、予測される気象の種類や激しさの度合い、即ち警戒度の高さに応じて適切な最低保持時間を決定できる。
ここで警戒度は、警戒を要する度合いをいう。危険の度合いともいえる。
【0091】
(iv)前記最低保持時間決定部は、異なる種類の複数の気象情報を前記気象情報取得部が取得している場合、それぞれの気象情報に応じた最低保持時間のうち最も長い時間をその場合の最低保持時間として決定してもよい。
このようにすれば、異なる種類の複数の気象情報が同時に得られた場合に、最も安全な側に最低保持時間が決定される。
【0092】
(v)外部の機器と通信する通信インターフェース回路をさらに備え、前記最低保持残量導出部は、履歴を格納した外部の機器と通信して最低保持時間中の前記電力負荷に係る予測値を取得するようにし、その予測値が取得できない場合は予め定められた値を取得すべき予測値に代えて使用してもよい。
このようにすれば、例えば、履歴のデータが十分に蓄積されていない場合や、激しい気象に起因する通信障害によって外部から履歴データが取得できない場合などにおいても予め定められた値を用いて最低保持残量を導出できる。
【0093】
(vi)さらに、この発明の好ましい態様は前述の充放電制御装置と、前記充放電制御装置が制御の対象とする蓄電装置と、を備える充放電制御システムを含む。
(vii)また、この発明の好ましい態様はコンピュータが実行するステップとして、1種類以上の気象情報を外部から取得するステップと、蓄電装置が負荷に電力を供給できるようにする最低保持時間を決定するステップと、決定された最低保持時間中に予測される電力負荷に基づいて、前記蓄電装置が保持しておくべき最低保持残量を導出するステップと、導出された最低保持残量を参照して前記蓄電装置の充放電を制御するステップと、を備える充放電制御方法を含む。
【0094】
この発明の好ましい態様には、上述した複数の態様のうちの何れかを組み合わせたものも含まれる。
前述した実施の形態の他にも、この発明について種々の変形例があり得る。それらの変形例は、この発明の範囲に属さないと解されるべきものではない。この発明には、請求の範囲と均等の意味および前記範囲内でのすべての変形とが含まれるべきである。
【符号の説明】
【0095】
10:充放電制御システム、 11:太陽電池モジュール、 12:パワーコンディショナー、 13,13A,13B:蓄電池、 14:分電盤、 15:スマートメーター、 16:充放電制御装置、 16C:充放電制御部、 16R:最低保持残量導出部、 16T:最低保持時間決定部、 16W:気象情報取得部、 17:通信インターフェース回路、 18:操作ユニット、 19:気象連携設定画面、 19a:設定表示域、 19b:地域設定、 19c:気象情報連携設定、 19d:雷注意報連携設定、 19e:最低保持時間設定、 19f:操作ボタン、 21:系統電力網、 22:HEMSサーバー
NW:ネットワーク