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特許7417440広域監視装置、広域監視システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】広域監視装置、広域監視システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20240111BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20240111BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20240111BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240111BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20240111BHJP
   G06T 7/215 20170101ALI20240111BHJP
   G06T 7/246 20170101ALI20240111BHJP
   G06T 7/62 20170101ALI20240111BHJP
【FI】
G08G1/01 E
G08G1/04 D
H04N7/18 D
G06T7/00 650B
G06T7/60 110
G06T7/215
G06T7/246
G06T7/62
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020033075
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021135876
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-11-10
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発/革新的AIエッジコンピューティング技術の開発/ソフトテンソルプロセッサによる超広範囲センシングAIエッジ技術の研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江下 尚彦
(72)【発明者】
【氏名】森口 拓雄
(72)【発明者】
【氏名】徳梅 慎也
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-026300(JP,A)
【文献】特開2013-235327(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
H04N 7/18
G06T 7/00
G06T 7/60
G06T 7/215
G06T 7/246
G06T 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置で撮影した映像に対して、監視対象物の滞りの判定を行う複数の判定領域を設ける設定手段と、
撮像装置で撮影した映像に基づき、前記複数の判定領域内の監視対象物を検出する検出手段と、
一定時間における前記複数の判定領域をそれぞれ通過する前記監視対象物の数を計数する計数手段と、
前記複数の判定領域に対するそれぞれの前記監視対象物の占有率を抽出する占有率抽出手段と、
前記複数の判定領域それぞれについて通過する前記監視対象物の数が最大値となる時の前記監視対象物の占有率を当該判定領域の臨界占有率として抽出する臨界占有率抽出手段と、
前記複数の判定領域の臨界占有率に基づき、前記複数の判定領域における前記監視対象物の滞りをそれぞれ判定する判定手段と、
を備え
前記占有率抽出手段は、前記判定領域における前記監視対象物の占有率をフレーム毎に算出し、前記監視対象物の数の計測と同一周期で占有率を平均した平均占有率を抽出する、
ことを特徴とする広域監視装置。
【請求項2】
前記臨界占有率抽出手段は、前記監視対象物の数において、最大値を計測した際の平均占有率を臨界占有率とする、
ことを特徴とする請求項に記載の広域監視装置。
【請求項3】
前記判定手段は、フレーム毎に算出された前記判定領域毎前記監視対象物の占有率を前記臨界占有率と比較して前記監視対象物の滞りを判定する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の広域監視装置。
【請求項4】
監視対象物が通過する所定地点を撮影する撮像装置と、
請求項1ないしの何れか一項に記載の広域監視装置と、
を備えることを特徴とする広域監視システム。
【請求項5】
コンピュータを、
撮像装置で撮影した映像に対して、監視対象物の滞りの判定を行う複数の判定領域を設ける設定手段と、
撮像装置で撮影した映像に基づき、前記複数の判定領域内の監視対象物を検出する検出手段と、
一定時間における前記複数の判定領域をそれぞれ通過する前記監視対象物の数を計数する計数手段と、
前記複数の判定領域に対するそれぞれの前記監視対象物の占有率を抽出する占有率抽出手段と、
前記複数の判定領域それぞれについて通過する前記監視対象物の数が最大値となる時の前記監視対象物の占有率を当該判定領域の臨界占有率として抽出する臨界占有率抽出手段と、
前記複数の判定領域の臨界占有率に基づき、前記複数の判定領域における前記監視対象物の滞りをそれぞれ判定する判定手段、
として機能させるためのプログラムであって、
前記占有率抽出手段は、前記判定領域における前記監視対象物の占有率をフレーム毎に算出し、前記監視対象物の数の計測と同一周期で占有率を平均した平均占有率を抽出する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広域監視装置、広域監視システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路などの道路における交通管制では、道路の渋滞状況等の管理を行うために交通流の監視を行っている。
【0003】
特許文献1には、道路毎にカメラおよび画像処理ユニットをそれぞれ設置し、画像処理ユニット毎に道路状況(通過台数、速度など)の計測に必要なパラメータの設定を統括管理することで、交通流の監視を行う交通監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-48295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の交通監視システムによれば、第1に、監視対象物である車両の渋滞判定の閾値を、判定領域毎に手動設定する必要がある、という課題がある。
【0006】
また、第2に、監視対象物である車両が通行する判定領域となる道路の特徴(一般、高速、法定速度、車線数など)に応じて渋滞判定の閾値を設定する必要があるが、従来の交通監視システムによれば、判定領域となる道路の特徴を識別する仕組みがない、という課題がある。
【0007】
さらに、第3に、監視対象物である車両が通行する特徴の異なる道路が複数撮影される場合に、判定領域となる道路毎に渋滞判定の閾値を設定する必要があるが、従来の交通監視システムによれば、撮像装置(または画像処理ユニット)毎に閾値を設定することになるため、判定領域となる道路毎に渋滞判定の閾値を設定することができない、という課題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、撮像装置で撮影した映像に監視対象物にかかる複数の判定領域が設けられた場合にも、判定領域の特徴に応じた判定閾値を設定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、撮像装置で撮影した映像に対して、監視対象物の滞りの判定を行う複数の判定領域を設ける設定手段と、撮像装置で撮影した映像に基づき、前記複数の判定領域内の監視対象物を検出する検出手段と、一定時間における前記複数の判定領域をそれぞれ通過する前記監視対象物の数を計数する計数手段と、前記複数の判定領域に対するそれぞれの前記監視対象物の占有率を抽出する占有率抽出手段と、前記複数の判定領域それぞれについて通過する前記監視対象物の数が最大値となる時の前記監視対象物の占有率を当該判定領域の臨界占有率として抽出する臨界占有率抽出手段と、前記複数の判定領域の臨界占有率に基づき、前記複数の判定領域における前記監視対象物の滞りをそれぞれ判定する判定手段と、を備え、前記占有率抽出手段は、前記判定領域における前記監視対象物の占有率をフレーム毎に算出し、前記監視対象物の数の計測と同一周期で占有率を平均した平均占有率を抽出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像装置で撮影した映像に監視対象物にかかる複数の判定領域が設けられた場合にも、判定領域の特徴に応じた判定閾値を設定することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態にかかる広域監視システムの要部構成を示すブロック図である。
図2図2は、情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、渋滞検知の概要を示す図である。
図4図4は、情報処理装置の渋滞検知処理にかかる機能の一例を示すブロック図である。
図5図5は、渋滞判定閾値を説明するための図である。
図6図6は、渋滞密度閾値設定処理の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、渋滞判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、広域監視装置、広域監視システムおよびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は実施の形態にかかる広域監視システム1の構成を示す図である。本実施形態の広域監視システム1は、高所に設置して広域を撮影する撮像装置2の映像から、広域に亘り、様々なインシデントを検知するシステムである。
【0014】
例えば、本実施形態の広域監視システム1は、高所に設置して広域を撮影する撮像装置2により撮影された画像に基づいて監視対象物の流れが滞った状態になっていることを監視するシステムである。監視対象物としては、自動車などの車両、人、船舶などを適用することが考えられる。本実施形態においては、監視対象物として車両を適用し、各種道路(一般国道、都道府県道、市町村道、高速自動車国道など)での車両の流れにかかる渋滞/停滞(以降、渋滞という)を監視するものとする。
【0015】
図1に示すように、広域監視システム1は、複数台の超高解像度カメラ(高精細カメラ)である撮像装置2と、情報処理装置3と、を備える。
【0016】
撮像装置2は、監視対象物が通過する各種道路(一般国道、都道府県道、市町村道、高速自動車国道)の所定地点を俯瞰撮影するように、数十mから数百mの高所に配置される。
【0017】
情報処理装置3は、広域監視装置であって、例えば交通管制を行う管制センタに設置される。情報処理装置3は、例えば5G(第5世代移動通信システム)のネットワーク4を介して複数の撮像装置2が接続されている。情報処理装置3は、撮像装置2で得られた画像を、ネットワーク4を介して受信する。なお、情報処理装置3は、1台のサーバであってもよいし、複数のサーバを組み合わせたものであってもよいし、クラウドなどであってもよい。
【0018】
情報処理装置3は、撮像装置2で得られた画像に基づき、各地点での交通流に関する各計測項目(車両の通過台数、車両の速度、所定の範囲における車両の占有率)の計測や、突発事象(火事など)の検出を行う。また、情報処理装置3は、一定時間毎に検出された各地点での計測結果や突発事象のアラームを収集し、集計する。情報処理装置3は、集計データを記憶したり、印字出力したり、表示したりする。
【0019】
また、情報処理装置3は、各計測項目(車両の通過台数、車両の速度、所定の範囲における車両の占有率)の計測や、突発事象(火事など)の検出を行うために必要な各種のパラメータ(後述する渋滞判定領域など)を統括管理する。
【0020】
なお、情報処理装置3は、ネットワーク5を介して関係機関のサーバとも接続されている。
【0021】
次に、情報処理装置3について詳述する。情報処理装置3は、OS(Operating System)等が搭載されたコンピュータにより実現できる。
【0022】
ここで、図2は、情報処理装置3のハードウェア構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施の形態の情報処理装置3は、装置全体を制御するCPU(Central Processing Unit)等の制御部101と、各種データや各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の主記憶部102と、各種データや各種プログラムを記憶するHDD(Hard Disk Drive)やCD(Compact Disc)ドライブ装置等の補助記憶部103と、これらを接続するバス104を備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成により実現可能である。CPUは、現在時刻を計る計時機能を有する。
【0023】
また、制御部101には、情報を表示する表示部105と、ユーザの指示入力を受け付けるキーボードやマウス等の操作入力部106と、撮像装置2とネットワーク4を介した通信を制御する通信I/F(interface)107とがバス104により各々接続される。
【0024】
本実施の形態の情報処理装置3で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0025】
また、本実施の形態の情報処理装置3で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態の情報処理装置3で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、本実施の形態の情報処理装置3で実行されるプログラムを、主記憶部102であるROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0026】
次に、情報処理装置3の制御部101がプログラムに従って実行する各種の演算処理のうち、本実施の形態の特徴的な処理である渋滞検知処理を実現する機能について以下に説明する。
【0027】
まず、本実施の形態の渋滞検知処理について概要を説明する。ここで、図3は渋滞検知の概要を示す図である。
【0028】
道路の渋滞は、車両密度(道路の単位距離あたりに存在する車両台数)が臨界値を超えることで交通流量(単位時間あたりの通過車両台数)が停滞する状態であるが、その状態は道路の特徴(一般国道、高速自動車国道、法定速度、車線数)により道路毎に異なる。
広域を監視する撮像装置2で撮影した映像には複数の道路が撮影されるため、渋滞判定を閾値処理で行う場合、監視対象物である車両が通行する判定領域となる道路の特徴に応じて渋滞判定閾値を設定することが望ましい。しかしながら、従来においては、ユーザが道路毎に特徴を把握して渋滞判定閾値を設定する必要があり、煩雑な作業を伴うものであった。
【0029】
加えて、渋滞判定には、流量が最大値となって交通流量が停滞し始める車両密度の臨界値を必要とする。また、車両密度には実距離計測を必要とする。しかしながら、広域を撮影することで近傍と遠方とで監視対象物のスケールが大きく異なる撮像装置2で撮影した映像では、高い精度で距離を計測するためには、高い計算コストが必要となる。
【0030】
そこで、本実施の形態の渋滞検知処理においては、広域監視システム1が渋滞判定閾値を撮像装置2で撮影した映像より推定することで、システムのユーザビリティ向上を図るようにしたものである。概略的には、交通流量、車両密度と同義ながら実距離計測を必要としない指標「車両台数」、「平均車両占有率」を設け、臨界値を「渋滞判定閾値」として推定するようにしたものである。
【0031】
図4は、情報処理装置3の渋滞検知処理にかかる機能の一例を示すブロック図である。図4に示すように、情報処理装置3は、設定手段である判定領域設定部31と、検出手段である車両検出部32と、計数手段である車両計数部33と、占有率抽出手段である車両占有率蓄積部34と、臨界占有率抽出手段である臨界車両占有率抽出部35と、渋滞密度閾値設定部36と、判定手段である渋滞判定部37と、を備える。
【0032】
判定領域設定部31は、撮像装置2で撮影した映像に対して、渋滞判定を行いたい道路の一部に渋滞判定領域(監視対象物である車両が通行する判定領域)を予め設定する。例えば、判定領域設定部31は、撮像装置2で撮影した映像から車両を検出することで道路を判別し、道路の所定地点を渋滞判定領域としてもよい。また、判定領域設定部31は、渋滞判定領域を移動方向別に設定する。なお、渋滞判定領域は、随時更新可能である。
【0033】
車両検出部32は、撮像装置2で撮影した映像のフレーム毎に、既存の物体認識技術を用いた画像処理や機械学習等によって、画像内の車両情報(座標、サイズ等)を検出し、座標情報を記憶部(主記憶部102あるいは補助記憶部103)に蓄積する。
【0034】
車両計数部33は、検出車両をトラッキングし、渋滞判定領域内を一定時間(フレーム群)あたりに通過した「車両台数」を計数し、計数した「車両台数」を記憶部(主記憶部102あるいは補助記憶部103)に時系列に蓄積する。
【0035】
車両占有率蓄積部34は、検出車両の座標情報を参照し、「車両台数」の蓄積周期に同期して、その蓄積周期における渋滞判定領域に内包される車両領域が渋滞判定領域を占める割合を平均化した通過する車両の平均密度を「平均車両占有率」としてフレーム毎に算出して、記憶部(主記憶部102あるいは補助記憶部103)に蓄積する。
【0036】
臨界車両占有率抽出部35は、記憶部(主記憶部102あるいは補助記憶部103)に同一周期(同一時間)で蓄積された「車両台数」および「平均車両占有率」から、「車両台数」が最大となる際の「平均車両占有率」を「臨界車両占有率」として抽出する。
【0037】
渋滞密度閾値設定部36は、「臨界車両占有率」を「渋滞判定閾値」として設定する。以下において、渋滞判定閾値の設定について詳述する。
【0038】
図5は、渋滞判定閾値を説明するための図である。図5に示すAは、平均車両占有率が低く、通過する車両台数が少なく、滞りなく走行できる状態を示している。また、図5に示すBは、平均車両占有率が高くなり、通過する車両台数も増えたが、まだ滞りなく走行できる状態を示している。また、図5に示すCは、さらに平均車両占有率が高くなり、車両台数が増えたが、通過する車両台数が減少し、車間を保つために速度を落とさざるを得ない状態を示している。また、図5に示すDは、平均車両占有率がさらに高くなり車間が詰まり、通過する車両台数はゼロとなり、車両はほぼ停滞している状態を示している。
【0039】
図5に示すEは、通過する車両台数が最大となり、渋滞判定領域を通過する車両台数が減少(≒交通の停滞)し始める際の平均車両占有率であって、臨界車両占有率とされている。
【0040】
したがって、渋滞密度閾値設定部36は、観測した車両占有率≧臨界車両占有率の状態となる「臨界車両占有率」を、渋滞として検知するための「渋滞判定閾値」として設定する。
【0041】
渋滞判定部37は、渋滞判定領域の「車両占有率」が判定領域の特徴(一般道路、高速自動車国道等)毎に設けた「臨界車両占有率」を一定時間超えた際に、その渋滞判定領域の道路は「渋滞状態」、超えていない場合を「定常(非渋滞)状態」と判定する。
【0042】
次に、情報処理装置3が実行する渋滞検知処理のうちの渋滞密度閾値設定処理の流れについて説明する。
【0043】
ここで、図6は渋滞密度閾値設定処理の流れを示すフローチャートである。図6に示すように、情報処理装置3は、まず、車両検出処理を実行する。
【0044】
なお、判定領域設定部31は、撮像装置2で撮影した映像に対して、渋滞判定を行いたい道路の一部に渋滞判定領域を予め設定している。
【0045】
車両検出処理としては、まず、車両検出部32は、撮像装置2で撮影した映像のフレーム毎に、画像処理や機械学習等によって、画像内の車両情報(座標、サイズ等)を検出し、座標情報を記憶部(主記憶部102あるいは補助記憶部103)に蓄積する(ステップS1)。
【0046】
次に、車両計数部33は、検出車両をトラッキングし、一定時間(フレーム群)における渋滞判定領域内の「車両台数」を計数し、通過する「車両台数」を記憶部(主記憶部102あるいは補助記憶部103)に時系列に蓄積する(ステップS2)。
【0047】
次に、車両計数部33は、単位時間が経過すると、所望の車両位置、移動方向に対応する渋滞判定領域を選択し、車両占有率蓄積部34に渡す(ステップS3)。なお、車両計数部33は、対応する渋滞判定領域の選択に際して、移動方向別に渋滞判定領域を選択する。
【0048】
情報処理装置3は、渋滞判定領域が選択されると、判定領域処理を実行する。
【0049】
車両占有率蓄積部34は、検出車両の座標情報を参照し、「車両台数」の蓄積周期に同期して、その蓄積周期における渋滞判定領域に内包される車両領域が渋滞判定領域を占める割合(通過する車両の平均密度)を「平均車両占有率」としてフレーム毎に算出して(ステップS4)、記憶部(主記憶部102あるいは補助記憶部103)に蓄積する(ステップS5)。
【0050】
すなわち、車両占有率蓄積部34は、単位時間毎の通過車両の「車両台数」と「平均車両占有率」とを対応付けて一定時間蓄積する。
【0051】
情報処理装置3は、「車両台数」と「平均車両占有率」が一定時間蓄積されると、判定閾値設定処理を実行する。
【0052】
臨界車両占有率抽出部35は、記憶部(主記憶部102あるいは補助記憶部103)に同一周期(同一時間)で蓄積された「車両台数」および「平均車両占有率」に基づいて、渋滞判定曲線の近似式を求める(ステップS6)。
【0053】
そして、臨界車両占有率抽出部35は、渋滞判定曲線の近似式から、「車両台数」が最大(極値)となる際の「平均車両占有率」を渋滞密度(臨界点)である「臨界車両占有率」として抽出する(ステップS7)。
【0054】
最後に、渋滞密度閾値設定部36は、「臨界車両占有率」を「渋滞判定閾値」として設定する(ステップS8)。
【0055】
次に、情報処理装置3が実行する渋滞検知処理のうちの渋滞判定処理の流れについて説明する。
【0056】
ここで、図7は渋滞判定処理の流れを示すフローチャートである。図7に示すように、情報処理装置3は、車両検出処理を実行する。なお、渋滞判定領域の設定および車両検出は、渋滞密度閾値設定処理から継続して実行中であるとする。したがって、車両検出処理のステップS11~S13については、渋滞密度閾値設定処理で説明したステップS1~S3と何ら変わりはないので、ここでの説明は省略する。
【0057】
次いで、車両占有率蓄積部34は、検出車両の座標情報を参照し、単位時間における渋滞判定領域に内包される車両領域が渋滞判定領域を占める割合(通過する車両の平均密度)を「平均車両占有率」としてフレーム毎に算出して、記憶部(主記憶部102あるいは補助記憶部103)に蓄積する(ステップS14)。
【0058】
次いで、渋滞判定部37は、通過する車両の平均密度である「平均車両占有率」と渋滞判定閾値である「臨界車両占有率」とを比較する(ステップS15)。渋滞判定部37は、「平均車両占有率」が「臨界車両占有率」を超えた場合、渋滞判定領域を設けた道路を渋滞検知状態とみなす。一方、渋滞判定部37は、渋滞検知状態の道路(渋滞判定領域)の「平均車両占有率」が「臨界車両占有率」を下回った場合は、該当道路を渋滞解消(非渋滞)状態とみなす。
【0059】
渋滞判定部37は、判定結果を出力する(ステップS16)。
【0060】
このように本実施形態によれば、撮像装置2で撮影した映像に複数の渋滞判定領域が設けられた場合にも、判定領域毎に道路の特徴(一般国道、高速自動車国道、法定速度、車線数)に応じた渋滞の判定閾値を設定することが可能となる。
【0061】
本実施形態によれば、ユーザが撮影されている道路の特徴(一般道路、高速道路、法定速度、車線数)を把握していなくても渋滞判定が可能である。
【0062】
本実施形態によれば、複数の道路が撮影される際(高所から広域に亘り撮影することを想定)に、ユーザが道路毎に渋滞判定閾値を設定しなければならない煩雑さが解消される。
【0063】
本実施形態によれば、道路の特徴(一般道路、高速道路、法定速度、車線数)を踏まえた渋滞判定閾値(臨界車両占有率)が設定されるため、従来の渋滞判定より精度高く検知できることが期待できる。
【0064】
本実施形態によれば、渋滞判定領域毎に渋滞判定閾値を設定可能なため、同一画像内に特徴の異なる道路が複数撮影されている撮像装置2で撮影した映像に対しても、道路毎に特徴を踏まえた渋滞判定が実現可能である。
【0065】
また、本実施形態の広域監視システム1によれば、数十mから数百mの高さから俯瞰する超高解像度カメラ(高精細カメラ)の映像からの監視対象の一つとして道路の渋滞を適用しており、道路の一部がイベントや事故、災害等で渋滞に陥った際の目的地までの迂回路探索にも応用することが可能である。
【0066】
なお、「臨界車両占有率」を抽出するまでに時間を要するような場合においては、「臨界車両占有率」に初期値を設けておき、当初は渋滞密度閾値設定処理と渋滞判定処理とを並行して実施するようにしてもよい。そして、一定期間を経て、該当道路の固有の「臨界車両占有率」を抽出した時点で、初期値から「臨界車両占有率」に切り替えて渋滞判定処理を継続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 広域監視システム
2 撮像装置
3 広域監視装置
31 設定手段
32 検出手段
33 計数手段
34 占有率抽出手段
35 臨界占有率抽出手段
37 判定手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7