(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】体位保持補助具
(51)【国際特許分類】
A61B 6/04 20060101AFI20240111BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240111BHJP
【FI】
A61B6/04 305
A61B6/00 300X
(21)【出願番号】P 2020049871
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390015521
【氏名又は名称】オリオン・ラドセーフメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【氏名又は名称】大窪 克之
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆行
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3191863(JP,U)
【文献】特開2015-013051(JP,A)
【文献】特開2017-086628(JP,A)
【文献】特開2017-006398(JP,A)
【文献】特開2013-180040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の被撮影部をX線検出器によりX線撮影する際に用いられる体位保持補助具であって、
前記被撮影部の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための体位保持部と、
前記X線検出器の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための検出器位置決め部と、
を備え
、
前記検出器位置決め部は、前記体位保持補助具に対する相対位置を単独で保持する検出器保持部からなり、
前記検出器保持部は、鉛直方向上側に開口を有するスリットの形状を有し、平板状の前記X線検出器を前記スリットの内壁で弾接的に保持可能とされることを特徴とする体位保持補助具。
【請求項2】
被検者の被撮影部をX線検出器によりX線撮影する際に用いられる体位保持補助具であって、
前記被撮影部の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための体位保持部と、
前記X線検出器の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための検出器位置決め部と、
を備え、
前記検出器位置決め部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合および前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用位置決め部であり、
前記体位保持部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合および前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用保持部であり、
前記被撮影部は手根管であって、
前記体位保持部は、前腕を保持する前腕保持部と、手首を保持する手首保持部と、前記手首保持部を介して前記前腕保持部に対向配置されて指尖球を保持する指尖球保持部と、を有し、
前記手首保持部を中心として、前記前腕保持部側に前記検出器位置決め部が位置する
ことを特徴とする体位保持補助具。
【請求項3】
前記検出器位置決め部は、前記体位保持補助具に対する相対位置を単独で保持する検出器保持部からなる、
請求項2に記載の体位保持補助具。
【請求項4】
前記検出器保持部は、鉛直方向上側に開口を有するスリットの形状を有し、平板状の前記X線検出器を前記スリットの内壁で弾接的に保持可能とされる、請求項3に記載の体位保持補助具。
【請求項5】
前記前腕保持部は、前記手首保持部からみて鉛直方向上側かつ前記手首保持部から離間する側へと延びる第1傾斜面を有し、前記前腕保持部において前記前腕が接する前腕接触部は前記第1傾斜面に位置する、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の体位保持補助具。
【請求項6】
前記指尖球保持部は、前記手首保持部からみて鉛直方向上側かつ前記手首保持部から離間する側へと延びる第2傾斜面を有し、前記指尖球保持部において前記指尖球が接する指尖球接触部は前記第2傾斜面に位置する、
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の体位保持補助具。
【請求項7】
前記手首保持部からみて前記指尖球保持部よりも遠位に設けられて手指を保持する手指保持部をさらに備える、
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の体位保持補助具。
【請求項8】
前記検出器位置決め部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合に用いる右側位置決め部と、前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合に用いる左側位置決め部とを備え、
前記体位保持部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合および前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用保持部である、請求項1か
ら請求項7のいずれか一項に記載の体位保持補助具。
【請求項9】
被検者の被撮影部をX線検出器によりX線撮影する際に用いられる体位保持補助具であって、
前記被撮影部の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための体位保持部と、
前記X線検出器の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための検出器位置決め部と、
を備え、
前記検出器位置決め部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合に用いる右側位置決め部と、前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合に用いる左側位置決め部とを備え、
前記体位保持部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合および前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用保持部であり、
前記被撮影部は肘であって、
上底面側の部分よりも下底面側の部分の方が大きい錐台を概形とし、
前記肘につながる上腕が載置される前記体位保持部は前記錐台の側面の1つである第1側面に位置し、前記第1側面は、前記錐台の高さ方向に垂直な面の面内方向の1つである第1方向の一方側に前記第1側面の前記下底面側が延びる斜面を有し、
前記下底面側には、前記錐台の高さ方向および前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在する段差が設けられ、前記段差によって、前記下底面側には、前記第1方向の一方側に開く段差面が形成され、
前記段差面には、前記第1方向に対する傾き角が互いに反対向きで大きさが等しい第1位置決め部および第2位置決め部が設けられ、
前記第1位置決め部は、前記右側位置決め部であって、基台に載置された板状の前記X線検出器の上に前記体位保持補助具が前記下底面側を前記基台に対向させて配置されるときに、前記X線検出器の側部に前記右側位置決め部が当接して前記X線検出器を前記第1方向から前記第2方向の一方である右側に傾け、
前記第2位置決め部は、前記左側位置決め部であって、前記基台に載置された板状の前記X線検出器の上に前記体位保持補助具が前記下底面側を前記基台に対向させて配置されるときに、前記X線検出器の側部に前記左側位置決め部が当接し前記X線検出器を前記第1方向から前記第2方向の他方である左側に傾ける
ことを特徴とする体位保持補助具。
【請求項10】
前記段差面は前記第1方向の一方側に突出する屈曲部を有し、前記屈曲部によって、前記段差面には、前記第2方向の一方側に位置する第1段差面と前記第2方向の他方側に位置する第2段差面とが形成され、
前記第1段差面が前記第1位置決め部を構成し、前記第2段差面が前記第2位置決め部を構成する、
請求項9に記載の体位保持補助具。
【請求項11】
前記体位保持補助具は、上底面よりも下底面の方が大きい角錐台を概形とし、
前記体位保持部は、前記角錐台の側面の1つである斜面からなり、前記下底面の面内方向であって前記斜面の延びる方向に沿う延在方向に対する、前記右側位置決め部により位置決めされた前記X線検出器の傾き角は、前記左側位置決め部により位置決めされた前記X線検出器の前記延在方向に対する傾き角と、互いに反対向きで大きさが等しい、
請求項10に記載の体位保持補助具。
【請求項12】
前記被撮影部は肘の内側上顆であって、前記第1側面の前記下底面に対する角度が45度である、
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の体位保持補助具。
【請求項13】
X線の照射位置を示す照射指示部を備える、請求項1
から請求項12のいずれか一項に記載の体位保持補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体位保持補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被検者の第1部位のX線検査時に前記被検者を第1姿勢にするためにベッド上に設置される第1補助具と、前記被検者の第2部位のX線検査時に前記被検者を第2姿勢にするために前記ベッド上に設置される第2補助具と、前記第1補助具と前記第2補助具とを結合するための結合部材と、を含み、前記第1部位のX線検査時には、前記第1補助具を単体で使用する第1単体使用方式、又は、前記第1補助具に対して前記第2補助具を付加的に結合することにより構成された第1結合体を使用する第1結合体使用方式、が選択される、ことを特徴とするX線検査用補助具セットが記載されている。
【0003】
非特許文献1には、手根管症候群のX線画像診断のための従来の撮影肢位および補助具を用いた立位撮影について説明がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】安藤英次、「一般撮影技術を見直そう! No.15〈上肢No.3〉1.再現性ある手根管軸位撮影法(reproducibility of axial radiograph of carpal-tunnel view)」、月刊インナービジョン、株式会社インナービジョン、2014年4月、第29巻、第4号、p.58-61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、被検者への負担が少なく、かつ撮影者に高い技能を求めることなく、撮影位置関係の再現性を高めることが可能な体位保持補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために提供される本発明は次のとおりである。
(1)被検者の被撮影部をX線検出器によりX線撮影する際に用いられる体位保持補助具であって、前記被撮影部の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための体位保持部と、前記X線検出器の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための検出器位置決め部と、を備えることを特徴とする体位保持補助具。
【0008】
(2)X線の照射位置を示す照射指示部を備える、上記(1)に記載の体位保持補助具。
【0009】
(3)前記検出器位置決め部は、前記体位保持補助具に対する相対位置を単独で保持する検出器保持部からなる、上記(1)または上記(2)に記載の体位保持補助具。
【0010】
(4)前記検出器保持部は、鉛直方向上側に開口を有するスリットの形状を有し、平板状の前記X線検出器を前記スリットの内壁で弾接的に保持可能とされる、上記(3)に記載の体位保持補助具。
【0011】
(5)前記検出器位置決め部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合に用いる右側位置決め部と、前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合に用いる左側位置決め部とを備え、前記体位保持部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合および前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用保持部である、上記(1)から上記(4)のいずれかに記載の体位保持補助具。
【0012】
(6)前記体位保持部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合に用いる右側保持部と、前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合に用いる左側保持部とを備え、前記検出器位置決め部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合および前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用位置決め部である、上記(1)から上記(4)のいずれかに記載の体位保持補助具。
【0013】
(7)前記検出器位置決め部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合および前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用位置決め部であり、前記体位保持部は、前記被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合および前記被撮影部が前記被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用保持部である、上記(1)から上記(4)のいずれかに記載の体位保持補助具。
【0014】
(8)前記被撮影部は手根管であって、前記体位保持部は、前腕を保持する前腕保持部と、手首を保持する手首保持部と、前記手首保持部を介して前記前腕保持部に対向配置されて指尖球を保持する指尖球保持部と、を有し、前記手首保持部を中心として、前記前腕保持部側に前記検出器位置決め部が位置する、上記(7)に記載の体位保持補助具。
【0015】
(9)前記前腕保持部は、前記手首保持部からみて鉛直方向上側かつ前記手首保持部から離間する側へと延びる第1傾斜面を有し、前記前腕保持部において前記前腕が接する前腕接触部は前記第1傾斜面に位置する、上記(8)に記載の体位保持補助具。
【0016】
(10)前記指尖球保持部は、前記手首保持部からみて鉛直方向上側かつ前記手首保持部から離間する側へと延びる第2傾斜面を有し、前記指尖球保持部において前記指尖球が接する指尖球接触部は前記第2傾斜面に位置する、上記(8)または上記(9)に記載の体位保持補助具。
【0017】
(11)前記手首保持部からみて前記指尖球保持部よりも遠位に設けられて手指を保持する手指保持部をさらに備える、上記(8)から上記(10)のいずれかに記載の体位保持補助具。
【0018】
(12)前記被撮影部は肘であって、上底面側の部分よりも下底面側の部分の方が大きい錐台を概形とし、前記肘につながる上腕が載置される前記体位保持部は前記錐台の側面の1つである第1側面に位置し、前記第1側面は、前記錐台の高さ方向に垂直な面の面内方向の1つである第1方向の一方側に前記第1側面の前記下底面側が延びる斜面を有し、前記下底面側には、前記錐台の高さ方向および前記第1方向に直交する第2方向に沿って延在する段差が設けられ、前記段差によって、前記下底面側には、前記第1方向の一方側に開く段差面が形成され、前記段差面には、前記第1方向に対する傾き角が互いに反対向きで大きさが等しい第1位置決め部および第2位置決め部が設けられ、前記第1位置決め部は、前記右側位置決め部であって、基台に載置された板状の前記X線検出器の上に前記体位保持補助具が前記下底面側を前記基台に対向させて配置されるときに、前記X線検出器の側部に前記右側位置決め部が当接して前記X線検出器を前記第1方向から前記第2方向の一方である右側に傾け、前記第2位置決め部は、前記左側位置決め部であって、前記基台に載置された板状の前記X線検出器の上に前記体位保持補助具が前記下底面側を前記基台に対向させて配置されるときに、前記X線検出器の側部に前記左側位置決め部が当接し前記X線検出器を前記第1方向から前記第2方向の他方である左側に傾ける、上記(5)に記載の体位保持補助具。
【0019】
(13)前記段差面は前記第1方向の一方側に突出する屈曲部を有し、前記屈曲部によって、前記段差面には、前記第2方向の一方側に位置する第1段差面と前記第2方向の他方側に位置する第2段差面とが形成され、前記第1段差面が前記第1位置決め部を構成し、前記第2段差面が前記第2位置決め部を構成する、上記(12)に記載の体位保持補助具。
【0020】
(14)前記体位保持補助具は、上底面よりも下底面の方が大きい角錐台を概形とし、前記体位保持部は、前記角錐台の側面の1つである斜面からなり、水平面内方向であって前記斜面の延びる方向に沿う延在方向に対する、前記右側位置決め部により位置決めされた前記X線検出器の傾き角は、前記右側位置決め部により位置決めされた前記X線検出器の前記延在方向に対する傾き角と、互いに反対向きで大きさが等しい、上記(13)に記載の体位保持補助具。
【0021】
(15)前記被撮影部は肘の内側上顆であって、前記第1側面の前記下底面に対する角度が45度である、上記(12)から上記(14)のいずれかに記載の体位保持補助具。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る体位保持補助具では、被検者の被撮影部を保持するだけでなく、X線検出器を保持するための検出器位置決め部を備えるため、補助具とX線検出器との相対位置を再現性よく設定することができる。それゆえ、補助具を介して、被撮影部とX線検出器との相対位置が再現性よく設定され、撮影位置関係の再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具の説明図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具にX線検出器が保持された状態を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具の使用状態を示す図である。
【
図4】(a)本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具を用いて手根管を撮影する場合のX線の照射状態を説明する図、(b)本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具を用いて手根管を撮影した画像を示す図である。
【
図5】補助具を用いることなく手根管を撮影する方法を説明する図である。
【
図6】(a)従来技術に係る体位保持補助具を用いた場合のX線の照射状態を説明する図であって非特許文献1の
図4であり、(b)従来技術に係る体位保持補助具を用いて撮影した画像の一例を示す図、(c)従来技術に係る体位保持補助具を用いて撮影した画像の他の一例を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る体位保持補助具の説明図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る体位保持補助具を右肘を撮影するために用いた場合を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る体位保持補助具を用いて右肘を撮影した画像を示す図である。
【
図10】
図9(a)で被撮影部となった右肘を本発明の第2実施形態に係る体位保持補助具を用いて約20ヶ月後に撮影した画像を示す図である。
【
図11】
図9(a)で被撮影部となった右肘を第3角度が45度の体位保持補助具を用いて撮影した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具は、被検者の被撮影部をX線検出器によりX線撮影する際に用いられる体位保持補助具である。体位保持補助具は、被撮影部の体位保持補助具に対する相対位置を設定するための体位保持部と、X線検出器の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための検出器位置決め部と、を備える。そして、検出器位置決め部は、被撮影部が被検者の右半身に位置する場合および被撮影部が被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用位置決め部であり、体位保持部は、被撮影部が前記被検者の右半身に位置する場合および被撮影部が被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用保持部である。
【0026】
図1は本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具の説明図である。
図2は、本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具にX線検出器が保持された状態を示す図である。
図3は、本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具の使用状態を示す図である。
【0027】
図1から
図3に示される体位保持補助具100は、被撮影部を保持するための体位保持部10と、X線フィルムまたはX線撮像素子からなる撮像部材が入っているX線検出器200を保持するための検出器保持部20とを備える。体位保持部10と検出器保持部20とが一体化していることにより、被検者40への負担が少なく、かつ撮影者の技能に依存することなく、被撮影部とX線検出器200との相対位置を安定的に設定することができる。このように撮影位置関係が安定化するため、撮影画像の再現性が高くなり、例えば左右の被撮影部の比較評価や、被撮影部の経時的な変化の評価の信頼性を高めることができる。以下の説明では、被撮影部が手根管である場合を具体例とする。
【0028】
図1から
図3に示される体位保持補助具100は、具体的には被検者40の手根管を被撮像部とする補助具であって、体位保持部10により前腕41から手指44までの部位を保持する。体位保持部10は、前腕41を保持する前腕保持部11と、手首42を保持する手首保持部12と、指尖球43を保持する指尖球保持部13と、手指44を保持する手指保持部14と、を有する。
【0029】
前腕保持部11は、水平面(X-Y平面)に平行な面からなる手首保持部12からみて、鉛直方向上側(Z1-Z2方向Z1側)かつ手首保持部12から離間する側(X1-X2方向X1側)へと延びる第1傾斜面111を有する。本実施形態において前腕保持部11は第1傾斜面111からなる。前腕保持部11において前腕41が接する前腕接触部はこの第1傾斜面111に位置する。第1傾斜面111で前腕41を保持することにより、前腕41と手首42とのなす角度(第1角度θ1)を被検者40の体躯の大きさにかかわらず一定とすることができる。なお、本実施形態では第1角度θ1は55度に設定されている。また、本実施形態では、前腕保持部11は第1傾斜面111の最下部(Z1-Z2方向Z2側の端部)において、手首保持部12に連設されている。
【0030】
指尖球保持部13は、手首保持部12を介して前腕保持部11に対向配置され、手首保持部12からみて、鉛直方向上側(Z1-Z2方向Z1側)かつ手首保持部12から離間する側(X1-X2方向X2側)へと延びる第2傾斜面131を有する。指尖球保持部13において指尖球43が接する指尖球接触部はこの第2傾斜面131に位置する。第2傾斜面131で指尖球43を保持することにより、指尖球43と手首42とのなす角度(第2角度θ2)を被検者40の手の大きさにかかわらず一定とすることができる。なお、本実施形態では第2角度θ2は35度に設定されている。また、本実施形態では、指尖球保持部13は第2傾斜面131の最下部(Z1-Z2方向Z2側の端部)において、手首保持部12に連設されている。
【0031】
ここで、体位保持補助具100では、
図1から
図3に示されるように、手首保持部12を中心として、前腕保持部11側(X1-X2方向X1側)に検出器保持部20が位置する。具体的には、手首保持部12からみて前腕保持部11よりも遠位に、検出器保持部20は設けられている。また、X線を照射する際の照射中心軸が位置すべき場所を示す照射指示部30が設けられている。具体的には、体位保持補助具100の手指保持部14側(X1-X2方向X2側)の面に十字の印として照射指示部30は設けられている。したがって、撮影の際に、X線は、手首保持部12を中心として、手指保持部14側(X1-X2方向X2側)から前腕保持部11側(X1-X2方向X1側)へと照射される。このように体位保持補助具100に検出器保持部20を設けるとともにX線の照射位置を示すことにより、撮影者の技能に依らず、X線検出器200に対するX線の照射位置および照射の向きを正確に設定することができる。
【0032】
また、上記のように前腕保持部11と手首保持部12と指尖球保持部13とが位置することにより、手首42のみならず、体幹側の前腕41および先端側の指尖球保持部13も、被検者40の筋肉を使うことなく骨支持される。このため、手首42の内部に位置する手根管の体位保持補助具100に対する配置が安定する。このように、体位保持補助具100を介して、手根管の位置、X線検出器200およびX線の照射中心軸との相対位置が一義的に設定されるため、X線検出器200により手根管を再現性よく撮影することが実現される。
【0033】
また、手首42は鉛直方向下側(X1-X2方向X2側)に突出するため、手首42の内部に位置する手根管を、被検者40の他の部位と干渉することなくX線が照射される領域に配置することができる。さらに、被検者40の指尖球保持部13を挟んで前腕41と指尖球43とがなす角度(屈曲角θ)を、被検者40の体躯の大きさにかかわらず一定とすることができる。本実施形態に係る体位保持補助具100を用いた場合には、屈曲角θは90度となる。
【0034】
手指保持部14は水平面(X-Y平面)に平行な面からなり、手指44がこの面に置かれることで手指44を保持する。手指保持部14において手指44が接する手指接触部は、手首保持部12において手首42が接する手首接触部よりも上側(Z1-Z2方向Z1側)に位置する。このように手指44が手指保持部14に保持されることで、手指44も骨支持となり、手指44の配置の不安定さがもたらす手根管の画像の再現性の低下を回避することができる。
【0035】
以上説明したように、撮影の直接的な対象(被撮影部)となる手首42だけでなく、手首42よりも体幹側の前腕41、および手首42よりも先端側の指尖球43および/または手指44が体位保持補助具100と接することにより、前腕41から手指44の全体が骨支持される。このため、手首42の配置が安定化する。なお、体位保持補助具100の幅(Y1-Y2方向長さ)は、成人男子の親指以外の4本の指が各保持部に載値される程度であればよく、10cm程度またはそれ以上であることが好ましい。生産性の高さや取り扱い性の高さを確保する観点から、体位保持補助具100の幅は20cmを上限とすることが好ましい場合がある。
【0036】
図4(a)は、本発明の一実施形態に係る体位保持補助具を用いて手根管を撮影する場合のX線の照射状態を説明する図である。
図4(b)は、本発明の一実施形態に係る体位保持補助具を用いて手根管を撮影した画像を示す図である。
【0037】
図4(a)において太い鎖線で示されるように、手根管は、その全体形状として、指尖球43側(X1-X2方向X2側)から前腕41側(X1-X2方向X1側)へと開くテーパー形状を有する。このため、手根管を構成する複数の骨の隙間(有鈎骨と有頭骨との隙間、有頭骨と船状骨との隙間など)も、指尖球43側(X1-X2方向X2側)から前腕41側(X1-X2方向X1側)へと向けて、互いに離間するように位置する。一方、X線は、
図4(a)の一点鎖線で示されるように、手首保持部12よりも手指保持部14側(X1-X2方向X2側)に位置するX線源から拡散するように放射される。それゆえ、体位保持補助具100を用いることにより、手根管を構成する複数の骨同士の隙間を通るようにX線を照射することができ、結果、
図4(b)に示されるように、手根管を構成する骨のそれぞれが明確に分離した画像が得られる。
【0038】
また、手根管を広く撮影するためには、X線の照射中心軸と手根管のテーパー形状の中心軸とが一致することが好ましく、そのためには、手根骨が位置する手首42を中心として前腕41と指尖球43とがなす角度(屈曲角θ)を適切に設定することが必要である。体位保持補助具100では、この角度を容易に設定できるように、第1角度θ1および第2角度θ2が設定されている。屈曲角θは、(180°-θ1-θ2)により求められるため、第1角度θ1および第2角度θ2を設定することにより、屈曲角θを一義的に設定することができる。上記の実施形態では、第1角度θ1が55度、第2角度θ2が35度であるため、屈曲角θは90度となる。したがって、体位保持補助具100を用いれば、被検者40に負荷をかけることなく、撮影者に高度な技能を求めることなく、屈曲角θが適切に設定された状態を安定的に実現することができる。
【0039】
体位保持補助具100を用いることなく手根管が撮影される場合には、手首42の配置は不安定化しやすい。すなわち、
図5に示されるように、被撮影部となる手根管とつながる前腕41を突っ張り、被撮影部とは反対側の手51を用いて、被撮影部となる手根管の先端側に位置する手指44を反り返らせる。これにより、手根管が位置する手首42を下側(Z1-Z2方向Z2側)に突出させる。この状態でX線を照射して、手根管を撮影する。このような撮影では、前腕41および反対側の手51のいずれもが被検者40の筋肉により支持(筋支持)されるため、手首42を一定の位置に保持することは極めて困難である。また、屈曲角θは反対側の手51による手指44の反り返らせの程度に依存するため、屈曲角θを一定の状態に保つことは現実的に不可能である。非特許文献1の
図1においても、同様に、被撮影部とは反対側の手やタオルで強制的に背屈肢位を作ると、基準がないことが指摘されている。
【0040】
体位保持補助具100の検出器保持部20は、鉛直方向上側(Z1-Z2方向Z1側)に開口を有するスリットの形状を有する。平板状のX線検出器200をこのスリットの内壁で弾接的に保持することができる。具体的には、体位保持補助具100がポリエチレンフォーム、発泡スチロール、硬質ウレタンなどから形成されるため、検出器保持部20のスリットの開口幅は弾性的に広がることができる。そして、スリットの開口幅をX線検出器200の厚さより若干(数mm程度でよい。)狭く構成しておくことにより、X線検出器200をスリットの内壁により弾性的に保持することが実現される。スリットの深さを適切に設定することにより、X線検出器200の撮影中心と照射指示部30と手根管とをX1-X2方向に沿った一直線上に合わせることができる。
【0041】
図3に示されるように、被検者40が前腕41から手指44を体位保持補助具100に載置し、X線検出器200が検出器保持部20にセットされたら、
図3の白抜き矢印のように、照射指示部30を目安にしてX線照射中心軸を設定してX線を照射することにより、手根管を適切に撮影することができる。
【0042】
図6(a)は、従来技術に係る体位保持補助具を用いた場合のX線の照射状態を説明する図であり、非特許文献1の
図4である。
図6(b)は、従来技術に係る体位保持補助具を用いて撮影した画像の一例を示す図である。
図6(c)は、従来技術に係る体位保持補助具を用いて撮影した画像の他の一例を示す図である。
【0043】
図6(a)に示されるように、従来の補助具は、水平方向からみた外形が台形であり、被検者40は、立位で、台形の斜辺の面に手掌面(手首42から手指44)を置くことにより第2角度θ2を所定の角度(
図6(a)では30度)に設定することができる。その一方で、手首42を補助具に押しつけた状態で前腕41を上方に引き上げることにより、第1角度θ1を設定する。このため、第1角度θ1は被検者40の前腕41の上げ具合に依存する。それゆえ、従来の補助具を用いた場合には、屈曲角θを一定に保ち、かつX線の照射方向と手根管との位置関係を適切に設定することは、1回の撮影の間でも容易でない。
【0044】
また、被検者40のそばにX線検出器200があると、被検者40が撮影中にX線検出器200に触れて動かしてしまう危険性があるため、X線検出器200(
図6(a)では「カセッテ」)は被検者40から遠位に配置されることが一般的であった。このため、従来の手根管撮影では、前腕41側から手指44側(X1-X2方向X1側)へとX線が照射されていた。この場合には、手根管のテーパー形状の内面にX線を直接照射することができず、主根骨を分離して撮影することができなかった(
図6(b)、
図6(c)参照)。
【0045】
(第2実施形態)
本発明の第1実施形態に係る体位保持補助具は、被検者の被撮影部をX線検出器によりX線撮影する際に用いられる体位保持補助具である。体位保持補助具は、被撮影部の体位保持補助具に対する相対位置を設定するための体位保持部と、X線検出器の前記体位保持補助具に対する相対位置を設定するための検出器位置決め部と、を備える。そして、検出器位置決め部は、被撮影部が被検者の右半身に位置する場合に用いる右側位置決め部と、被撮影部が被検者の左半身に位置する場合に用いる左側位置決め部とを備え、体位保持部は、被撮影部が被検者の右半身に位置する場合および被撮影部が被検者の左半身に位置する場合の双方に用いられる両用保持部である。
【0046】
図7は、本発明の第2実施形態に係る体位保持補助具の説明図である。
図8は、本発明の第2実施形態に係る体位保持補助具を右肘を撮影するために用いた場合を示す図である。
図9は、本発明の第2実施形態に係る体位保持補助具を用いて右肘を撮影した画像を示す図である。
【0047】
図7には、野球肘のための体位保持補助具の一例(体位保持補助具300)が示されている。体位保持補助具300は、左右の肘の関節、特に腕橈関節を撮影するための補助具である。すなわち、体位保持補助具300は左右両用である。
【0048】
図7に示されるように、体位保持補助具300の全体形状(概形)は、高さ方向がZ1-Z2方向に沿う錐台であって、概略、上底面310(Z1-Z2方向Z1側の面)よりも下底面320(Z1-Z2方向Z2側の面)の方が大きい四角錐台である。
【0049】
体位保持補助具300の上底面310は、鉛直方向(Z1-Z2方向)に沿った法線を有する長方形であり、第1方向(X1-X2方向)を短軸とし、第1方向に直交する第2方向(Y1-Y2方向)を長軸とする。
【0050】
体位保持補助具300の下底面320は、鉛直方向(Z1-Z2方向)からみた形状が長方形である。下底面320は第2方向(Y1-Y2方向)に延びる段差320Sを有し、下底面320の第1方向の一方側(X1-X2方向X1側)が上方側(Z1-Z2方向Z1側)に凹欠して第1下方面321が形成されている。換言すれば、下底面320における段差320Sの第1方向の他方側(X1-X2方向X1側)には下方側(Z1-Z2方向Z2側)に第2下方面322が突出し、結果、第2下方面322は第1下方面321よりも下側(Z1-Z2方向Z2側)に位置する。
【0051】
体位保持補助具300において第2方向(Y1-Y2方向)に延びる段差320Sによって、下底面320には、第1方向の一方側(X1-X2方向X1側)に開く段差面320Aが形成される。この段差面320Aは、第1方向の一方側(X1-X2方向X1側)に突出する屈曲部320Bを有する。段差面320Aには、屈曲部320Bによって、屈曲部320Bよりも第2方向の一方側(Y1-Y2方向Y1側)に位置する第1段差面3201と、屈曲部320Bよりも第2方向の他方側(Y1-Y2方向Y2側)に位置する第2段差面3202とが形成される。上下方向(Z1-Z2方向)からみて、第1段差面3201は、第2方向(Y1-Y2方向)に対して第1傾角φ1傾き、第2段差面3202は、第2方向(Y1-Y2方向)に対して第2傾角φ2傾いている。第1傾角φ1と第2傾角φ2とは大きさが等しく、第2方向(Y1-Y2方向)を基準として反対向きである。
【0052】
体位保持補助具300の側面の1つである第1側面331は、第1方向の一方側(X1-X2方向X1側)に延びる斜面からなり、この第1側面331に被検者40の上腕401が載置される。すなわち、第1側面331が体位保持補助具300における体位保持部となっている。したがって、下底面320の面内方向(XY平面の面内方向)であって斜面(第1側面331)の延びる方向に沿う延在方向はX1-X2方向となる。この延在方向(X1-X2方向)に対する右側位置決め部(第1位置決め部)となる第1段差面3201により位置決めされたX線検出器200の傾き角(第1傾角φ1)は、左側位置決め部(第2位置決め部)である第2段差面3202により位置決めされたX線検出器200の延在方向(X1-X2方向)に対する傾き角(第2傾角φ2)と、互いに反対向きで大きさが等しい。
【0053】
第1側面331の下底面320に対する角度である第3角度θ3は、30度から75度の範囲であることが好ましく、内側の肘関節の剥離骨折を確認することが容易になる観点から、第3角度θ3は40度から55度の範囲であることがより好ましく、加工性もさらに考慮すると、第3角度θ3は45度であることが特に好ましい。
【0054】
第1側面331と辺を共有する2つの側面である第2側面332および第3側面333は概略形状が、上方側(Z1-Z2方向Z1側)を短辺とし、下方側(Z1-Z2方向Z2側)を長辺とする台形である。下底面320の段差320Sに対応して、下方の長辺はクランク部を有する。
【0055】
第1側面331に対向配置され、第2側面332および第3側面333のそれぞれと一辺を共有する第4側面334は、その面内方向が鉛直方向(Z1-Z2方向)から第1方向の一方側(X1-X2方向X1側)に傾いている。換言すれば、第2側面332に沿った面と第3側面333に沿った面とを2つの下底面とし、上底面310に沿った面を側面の1つとする三角柱からなる面取り部340(
図7において2点鎖線で示した。)が、概略四角錐台の形状に対して設けられている。この面取り部340を構成する三角柱の側面の1つであって、面取り部340の切断面が、体位保持補助具300の第4側面334に対応する。
【0056】
使用の際に、X線検出器200は、第1下方面321と第1段差面3201とにより位置決めされる場合と、第1下方面321と第2段差面3202とにより位置決めされる場合とがある。
図8では、第1下方面321と第1段差面3201とにより位置決めされる場合が示されている。
【0057】
図8に示されるように、基台BPに載置された板状のX線検出器200の上に体位保持補助具300が下底面320側を基台BPに対向させて配置されている。このとき、X線検出器200のX1-X2方向X2側の側部201に右側位置決め部である第1側面331が当接して、X線検出器200を第1方向(X1-X2方向)から前記第2方向の一方である右側(Y1-Y2方向Y1側)に傾けている。このため、体位保持補助具300の体位保持部である第1側面331に被検者40の上腕401が載置されると、XY平面への投影で、上腕401はX1-X2方向X1側へと延在するが、上腕401先端に位置する肘402がX線検出器200の上面(Z1-Z2方向Z1側の面)に載置されると、X線検出器200の上面(Z1-Z2方向Z1側の面)で肘402から先端側に位置する前腕403は、XY平面への投影で、上腕401に対して右側(Y1-Y2方向Y1側)に傾いて延在する。前腕403のX1-X2方向に対する傾き角度は、第1段差面3201のXY平面への投影でのY1-Y2方向への傾きである第1傾角φ1に等しい。
【0058】
このように上腕401が前腕403に対して開いて配置されるため、野球肘の際に特に影響を受けやすい肘402の内側がX線により観察しやすくなる。そして、体位保持補助具300を用いることにより、上腕401の前腕403に対するXY平面への投影での開き角は常に第1傾角φ1となるため、時系列でX線画像を対比しやすい。
図9は本発明の第2実施形態に係る体位保持補助具を用いて右肘を撮影した画像を示す図である。
図10は、
図9(a)で被撮影部となった右肘を本発明の第2実施形態に係る体位保持補助具を用いて約20ヶ月後に撮影した画像を示す図である。
図11は、
図9で被撮影部となった右肘を第3角度θ3が60度の体位保持補助具を用いて撮影した画像を示す図である。
【0059】
図9に示されるように、第3角度θ3が45度の体位保持補助具300を用いて肘402を撮影した場合には、肘402の内側に位置する内側上顆402Aに剥離骨折が生じていることを明確に確認することができた。これに対し、
図11に示されるように、第3角度θ3が60度の場合には、内側上顆402Aの剥離骨折を観察しにくかった。
図9を撮影してから20ヶ月後に、第3角度θ3が45度の体位保持補助具300を用いて肘402を撮影した場合(
図11)には、
図9の場合と同様に、内側上顆402Aを適切に観察することが可能であり、内側上顆402Aの剥離骨折が治癒していることが容易に確認された。
【0060】
図8では、被撮影部は被検者40の右側の肘402であるが、被撮影部が左側の肘である場合には、X線検出器200のX1-X2方向X2側の側部201に体位保持補助具300の第2段差面3202が当接するように体位保持補助具300を配置することにより、右側の肘402の場合と同様に再現性よく測定することができる。なお、第2段差面3202を用いる場合には、上腕401の前腕403に対するXY平面への投影での開き角を第2傾角φ2とすることが再現性よく実現される。
【0061】
上記に本実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の構成例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。例えば、第1実施形態において、被撮影部は被検者40の左手の手根管であるが、体位保持補助具100はX-Y面に対して対称な形状であるから、右手の手根管の撮影のためにも用いることができる。
【0062】
第1実施形態では、位置決め部(検出器保持部20)および保持部(体位保持部10)は、いずれも左右両用であり、第2実施形態では、位置決め部(第1段差面3201、第2段差面3202)は左右別々に設けられるが、保持部(第1側面331)は左右両用である。本発明に係る体位保持補助具は、これらの形態に限定されず、位置決め部が左右両用であって保持部が左右別々も受けられて(すなわち、右側保持部と左側保持部とから構成されて)いてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 :体位保持部
11 :前腕保持部
12 :手首保持部
13 :指尖球保持部
14 :手指保持部
20 :検出器保持部
30 :照射指示部
40 :被検者
41 :前腕
42 :手首
43 :指尖球
44 :手指
51 :手
100 :体位保持補助具
111 :第1傾斜面
131 :第2傾斜面
200 :X線検出器
201 :側部
300 :体位保持補助具
310 :上底面
320 :下底面
320A :段差面
320B :屈曲部
320S :段差
321 :第1下方面
322 :第2下方面
331 :第1側面
332 :第2側面
333 :第3側面
334 :第4側面
340 :面取り部
401 :上腕
402 :肘
402A :内側上顆
403 :前腕
3201 :第1段差面
3202 :第2段差面
BP :基台
θ :屈曲角
θ1 :第1角度
θ2 :第2角度
θ3 :第3角度
φ1 :第1傾角
φ2 :第2傾角