(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】評価対象の抽出方法、抽出装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/18 20200101AFI20240111BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240111BHJP
G21C 17/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G06F30/18
G05B23/02 T
G21C17/00 110
(21)【出願番号】P 2020094190
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】平井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】中村 孝生
(72)【発明者】
【氏名】大塚 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】森田 克明
(72)【発明者】
【氏名】岡 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】片山 卓
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117318(JP,A)
【文献】特開2009-222132(JP,A)
【文献】特開2011-076210(JP,A)
【文献】国際公開第2018/170101(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0278055(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/18
G05B 23/02
G21C 17/00
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象物の系統図の構成データに基づいて、エッジとノードで構成されたネットワーク図を作成するステップと、
前記ネットワーク図について、解析条件を設定するステップと、
前記解析条件に基づいて、信頼性評価の対象範囲に含まれる前記エッジを抽出するステップと、
抽出した前記エッジに接続された前記ノードを抽出するステップと、
抽出した前記エッジおよび前記ノードを含み、前記系統図の構成の中から前記信頼性評価に必要な構成を抽出して示した簡略系統図を作成するステップと、
を
コンピュータが実行する評価対象の抽出方法。
【請求項2】
前記系統図の構成データは、CADデータであって、前記評価対象物を構成する構成要素と
、ある前記構成要素が他のどの前記構成要素と接続するかを示す接続情報
と、を含む、請求項1に記載の
コンピュータが実行する評価対象の抽出方法。
【請求項3】
前記解析条件は、前記対象範囲の前記エッジおよび前記ノードから構成される系統の運転モードの設定を含み、
前記簡略系統図を作成するステップでは、前記運転モードに対応する簡略系統図を作成する、
請求項1または請求項2に記載の
コンピュータが実行する評価対象の抽出方法。
【請求項4】
前記解析条件は、前記対象範囲の前記エッジおよび前記ノードから構成される系統についての始点または終点の設定を含み、
前記エッジを抽出するステップでは、前記解析条件に基づいて前記系統の主経路を決定し、前記主経路を構成する前記エッジを抽出する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の
コンピュータが実行する評価対象の抽出方法。
【請求項5】
前記エッジを抽出するステップでは、前記主経路を構成する前記エッジに接続する他の前記エッジを副経路として抽出する、
請求項4に記載の
コンピュータが実行する評価対象の抽出方法。
【請求項6】
前記解析条件は、前記対象範囲の前記ノードの状態変化を指定する設定を含み、
前記状態変化において生じ得る異常を特定するステップ、をさらに有する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の
コンピュータが実行する評価対象の抽出方法。
【請求項7】
前記状態変化において生じ得る異常の候補を提示する基事象リストを出力するステップ、をさらに有する請求項6に記載の
コンピュータが実行する評価対象の抽出方法。
【請求項8】
前記簡略系統図では、前記対象範囲の前記エッジおよび前記ノードから構成される系統における主経路と、前記主経路に接続する副経路とが示される、
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の
コンピュータが実行する評価対象の抽出方法。
【請求項9】
評価対象物の系統図の構成データに基づいて、エッジとノードで構成されたネットワーク図を作成するネットワーク図作成部と、
前記ネットワーク図について、解析条件の設定を取得する解析条件設定部と、
前記解析条件に基づいて、信頼性評価の対象範囲に含まれる前記エッジおよび前記エッジに接続された前記ノードを抽出する抽出部と、
抽出した前記エッジおよび前記ノードを含み、前記系統図の構成の中から前記信頼性評価に必要な構成を抽出して示した簡略系統図を作成する簡略系統図作成部と、
を備える抽出装置。
【請求項10】
コンピュータに、
評価対象物の系統図の構成データに基づいて、エッジとノードで構成されたネットワーク図を作成するステップと、
前記ネットワーク図について、解析条件を設定するステップと、
前記解析条件に基づいて、信頼性評価の対象範囲に含まれる前記エッジを抽出するステップと、
抽出した前記エッジに接続された前記ノードを抽出するステップと、
抽出した前記エッジおよび前記ノードを含み、前記系統図の構成の中から前記信頼性評価に必要な構成を抽出して示した簡略系統図を作成するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、評価対象の抽出方法、抽出装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントのリスク評価に確率論的リスク評価(Probabilistic Risk Assessment:PRA)モデル(以下、PRAモデルと記載する。)が用いられる。PRAモデルを漏れなく作成するために、プラントの系統図からリスク評価の対象範囲を網羅的に抽出し、抽出した範囲に含まれる機器等の故障モードの検討を行って、ET図(イベントツリー)やFT図(フォルトツリー)を作成する。
関連する技術として、特許文献1には、特定の頂上事象および評価対象の情報を与えることにより、原子力発電プラント等の3次元CADデータから関連する情報を抽出し、FT図を作成する技術が開示されている。特許文献1には、評価の対象範囲を抽出する技術に関する開示は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状、プラントの系統図からリスク評価の対象範囲を抽出する作業は手作業で行われており、この作業に多大な労力や時間を費やしている。系統図から系統の機能に対し有意な影響をもたらす評価の対象範囲を特定し、抽出する作業を効率的に行う方法が求められている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる評価対象の抽出方法、抽出装置及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコンピュータが実行する評価対象の抽出方法は、評価対象物の系統図の構成データから、エッジとノードで構成されたネットワーク図を作成するステップと、前記ネットワーク図について、解析条件を設定するステップと、前記解析条件に基づいて、信頼性評価の対象範囲に含まれる前記エッジを抽出するステップと、抽出した前記エッジに接続された前記ノードを抽出するステップと、抽出した前記エッジおよび前記ノードを含み、前記系統図の構成の中から前記信頼性評価に必要な構成を抽出して示した簡略系統図を作成するステップと、を有する。
【0007】
また、本開示の抽出装置は、評価対象物の系統図の構成データから、エッジとノードで構成されたネットワーク図を作成するネットワーク図作成部と、前記ネットワーク図について、解析条件の設定を取得する解析条件設定部と、前記解析条件に基づいて、信頼性評価の対象範囲に含まれる前記エッジおよび前記エッジに接続された前記ノードを抽出する抽出部と、抽出した前記エッジおよび前記ノードを含み、前記系統図の構成の中から前記信頼性評価に必要な構成を抽出して示した簡略系統図を作成する簡略系統図作成部と、を備える。
【0008】
また、本開示のプログラムは、コンピュータに、評価対象物の系統図の構成データから、エッジとノードで構成されたネットワーク図を作成するステップと、前記ネットワーク図について、解析条件を設定するステップと、前記解析条件に基づいて、信頼性評価の対象範囲に含まれる前記エッジを抽出するステップと、抽出した前記エッジに接続された前記ノードを抽出するステップと、抽出した前記エッジおよび前記ノードを含み、前記系統図の構成の中から前記信頼性評価に必要な構成を抽出して示した簡略系統図を作成するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
上述の評価対象の抽出方法、抽出装置及びプログラムによれば、系統図から、系統機能に対し、PRA上、有意な影響をもたらす可能性がある評価対象範囲を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る抽出装置の一例を示す機能ブロック図である。
【
図2A】実施形態に係るCADデータに基づく系統図の一例を示す図である。
【
図2B】実施形態に係る系統図のCADデータの一例を示す第1図である。
【
図2C】実施形態に係る系統図のCADデータの一例を示す第2図である。
【
図3A】実施形態に係るエッジリストの一例を示す図である。
【
図3B】実施形態に係るノードリストの一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係るネットワーク図の一例を示す図である。
【
図5A】実施形態に係る解析条件1の一例を示す図である。
【
図5B】解析条件1に基づく評価対象範囲の抽出結果を示す図である。
【
図5C】実施形態に係る解析条件2の一例を示す図である。
【
図5D】解析条件2に基づく評価対象範囲の抽出結果を示す図である。
【
図6A】解析条件1に基づく簡略系統図の一例を示す図である。
【
図6B】解析条件2に基づく簡略系統図の一例を示す図である。
【
図7A】解析条件1に基づく基事象リストの一例を示す図である。
【
図7B】解析条件2に基づく基事象リストの一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る評価対象範囲の抽出処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の評価対象範囲の抽出方法について、
図1~
図9を参照して説明する。
(システム構成)
図1は、実施形態に係る抽出装置の一例を示す機能ブロック図である。
抽出装置10は、原子力プラント等の評価対象物の系統図をネットワーク図に変換し、そのネットワーク図に対して設定された解析条件に基づいて、系統図全体から評価の対象範囲を自動的に抽出する。評価とは、例えば、PRAなどの信頼性評価である。抽出装置10を用いて、抽出した評価の対象範囲の情報は、例えば、PRAモデルの作成に役立てることができる。
【0012】
抽出装置10は、CADデータを取得するCADデータ取得部11と、ネットワーク図を作成し、描画するネットワーク図作成部12と、解析条件の設定を受け付ける解析条件設定部13と、評価対象範囲を抽出する抽出部14と、信頼性評価に必要な構成だけを抽出して示した簡略系統図を作成する簡略系統図作成部15と、評価対象範囲の機器について故障モードを特定し、特定された故障モードを示す基事象リストを作成する基事象リスト作成部16と、ネットワーク図、簡略系統図、基事象リスト等を表示装置や電子ファイルとして出力する出力部17と、CADデータから出力処理に必要なデータを記憶する記憶部18と、を備える。
【0013】
(CADデータ)
CADデータ取得部11は、評価対象物の系統図のCADデータを取得する。ここで、
図2A~
図2Cを参照する。
図2A~
図2Cに、あるプラントαの系統図(一部)のCADデータを示す。
図2Aの系統図において、例えば、バルブVLV-013Bは、配管RCS-011Bと配管050Bとを接続する。また、配管050Bには、バルブVLV-013Bの他にバルブVLV-012Bと、配管653Bが接続されている。一般にプラント系統図を表示するCADデータには、
図2Bに例示する配管構成データ、
図2Cに例示する配管接続データが含まれ、これらのデータに基づいて、
図2Aに例示する系統図が出力される。あるいは、
図2Aの系統図に基づいて、
図2Bの配管構成データ、
図2Cの配管接続データを作成することが可能である。
【0014】
図2Bに例示するように、配管構成データには、配管ごとにその配管に接続されるバルブ等の機器や分岐の情報など設定されている。
図2Aを参照して説明したように、例えば、配管050Bには、バルブVLV-013B、バルブVLV-012B、配管653B(分岐)が接続されている。この構成は、
図2Bの配管構成データでは、1~4行目に設定されている。つまり、配管050Bに対し、バルブVLV-012B、TEE2501-653B(配管653への分岐)、バルブVLV-013BのTYPE(機器の種類)、合流/分岐の区分、サイズ(配管径)、XY座標情報などが設定されている。XY座標情報は、
図2Aの系統図における座標位置を示している。また、配管構成データの構成物は、上から下へ、流体の流れ方向に従って表示されている。
【0015】
図2Cの配管接続データには、配管同士の接続情報が設定されている。例えば、配管050Bは、配管040B-3、配管653B、配管RCS-011Bと接続されている。この接続情報を定義するために、ライン番号の欄に配管050B、FROM欄に配管040B-3、TO欄に配管653B、配管RCS-011Bが設定されている(表の左列3行目)。
CADデータ取得部11は、系統図に関するCADデータ、つまり、配管構成データ(
図2B)と配管接続データ(
図2C)を取得する。
【0016】
(ネットワーク図の作成)
ネットワーク図作成部12は、系統図のCADデータ(配管構成データと配管接続データ)に基づいて、ネットワーク図を作成する。まず、ネットワーク図作成部12は、
図3Aに例示するエッジリストと、
図3Bに例示するノードリストを作成する。
ネットワーク図作成部12は、配管構成データおよび配管接続データに基づいて、エッジリストを作成する。(a)ネットワーク図作成部12は、配管構成データに基づいて、配管を1又は複数のノードに分割する。例えば、1つの配管に機器および分岐又は合流が全部で3以上存在する場合、ネットワーク図作成部12は、その配管を機器および分岐又は合流ごとに分割する。分割された配管部分の各々が1つのエッジである。機器および分岐又は合流の各々はノードである。例えば、配管050B上には、3つの機器と分岐が存在するので、配管050B-1と配管050B-2の2つのノードに分割される。(b)ネットワーク図作成部12は、配管接続データを参照し、配管同士の接続を確認する。(c)ネットワーク図作成部12は、配管構成データを参照し、エッジの接続点のノードを確認する。ネットワーク図作成部12は、(a)~(c)の処理を繰り返し、1つのエッジとその両端に接続されるノードとエッジの配管径を1行のデータとして、
図3Aに例示するエッジリストを作成する。また、ネットワーク図作成部12は、配管構成データに基づいて、
図3Bに例示するノードリストを作成する。ノードリストは、配管構成データの機器および分岐又は合流に関するデータ(例えば、
図2Bの2~4行目のデータ)から“配管/部品番号”、“TYPE”、“合流/分岐”、“X”、“Y”の各欄の値を抽出することで作成することができる。
【0017】
ネットワーク図作成部12は、エッジリストとノードリストに基づいて
図4に例示するネットワーク図を作成する(なお、エッジ060B-1は
図4ではノードMOV-011Bと接続しているように表示されているが、実際は
図2Aのように、エッジ030B-1と020B-9の中間にあるノードと、ノードMOV-014Bを接続している。)。例えば、ネットワーク図作成部12は、ノードリストのX,Yの座標情報に基づいて、各ノードを座標情報が示す位置に配置し、エッジリストに基づいて、各ノードを接続するエッジを配置する。各ノードを示す四角、丸の記号は、予め定義されている。例えば、分岐や他図面との取り合いは丸、バルブは四角などと定められている。
ネットワーク図作成部12は、各ノードを、エッジリストのサイズ(配管径)に応じた太さの線分で表したエッジで接続することによってネットワーク図を作成する。また、ネットワーク図作成部12は、
図3Aのエッジリストの“Fromノード”と“Toノード”の情報を参照して、配管を流れる流体の流れ方向を決定し(“Fromノード”から“Toノード”へ流れる。)、エッジの線分に、この流れ方向を示す矢印を表示する。ネットワーク図作成部12は、出力部17を介して、作成したネットワーク図を表示装置に出力し描画する。
【0018】
このように、抽出装置10は、プラントαの系統図のCADデータをネットワーク図に変換する。系統図のCADデータには、評価対象物の全ての構成要素が含まれているので、系統図のCADデータを変換したネットワーク図から評価の対象範囲を抽出することで、評価対象機器や配管の抽出漏れを防ぐことができる。また、ネットワーク図に変換することで評価の対象範囲をエッジ単位で抽出することができる。例えば、系統図のCADデータでは、1つの配管に複数の機器が接続されている場合があるが、ネットワーク図に変換することで、配管を機器の接続点ごとに分割して、エッジとノードの組合せによって系統を表現する。その為、PRAに必要としない範囲の配管構成の影響を受けずに、PRAに必要な範囲のエッジだけを主配管、枝管として抽出(後述)することができる。
【0019】
(解析条件の設定)
信頼性評価を行う技術者は、ネットワーク図を参照しながら、解析条件を設定する。例えば、解析条件設定部13は、
図5Aに示す設定画面50を出力する。技術者は、評価の対象範囲とノードの状態を設定する。具体的には、技術者は、評価の対象範囲の設定として、ネットワーク図の中から始点と終点を設定する。
図4に例示するネットワーク図においては、エッジ020B-9の右端が始点と一意に定まっているので、技術者は、設定画面50にて、終点の設定を行う。例えば、技術者は、ノードVLV-013Bを終点と定める(ルート情報“End”)。
【0020】
また、技術者は、評価対象のノードについて、状態変化を設定する。例えば、技術者は、評価対象バルブの初期状態と変化後の状態を設定する。
図5Aの例では、ノードMOV-011Bの初期状態にOpen,変化後の状態にOpenが設定され、ノードMOV-014Bの初期状態にClose,変化後の状態にCloseが設定される。つまり、初期状態から変化後の状態には、初期状態の維持が設定される。技術者は始点、終点の設定と状態変化の設定が完了すると、設定ボタン51を押下する。解析条件(始点、終点の設定と状態変化の設定)の設定は、運転モードの設定ということができる。例えば、プラントαにおいて、MOV-011Bを開、MOV-014Bを閉とし、流体を
図5Bの矢印52,53の方向に流す運転モードで動作させるときの信頼性評価を行う場合に、
図5Aのような設定(解析条件1)を行う。
【0021】
(主配管、枝管、ノードの抽出)
設定ボタン51が押下されると、抽出部14は、設定された運転モードにおける主配管と枝管を抽出し、主配管上および枝管上のノードを抽出する。主配管とは、設定された運転モードにおいて、系統機能の達成のために流体が流れるべき経路を示し、枝管は、主配管と接続する経路を示す。
図5Bに示すネットワーク図において、主配管とは、エッジ020B-9、エッジ030B-1、エッジ040B-1、エッジ040B-2、エッジ040B-3、エッジ050B-2、エッジ050B-1を結ぶ経路である。枝管とは、ノードMOV-011Bにて主配管と接続するエッジ060B-1、エッジ070B-1、エッジ070B-2、エッジ070B-3、エッジRCS-026Bを結ぶ経路である。例えば、枝管のノードMOV-014Bにて異常が生じ、閉とするはずのノードMOV-014Bを流体が通過すると、主配管を流れるべき流体が枝管の方へ流れ、系統機能にも影響が生じる。このような状況が生じた場合を含めて信頼性評価を行うため、抽出部14は、解析条件に基づいて、主配管だけではなく、枝管の抽出を行う。また、抽出部14は、評価の上で有意に作用しないノードやエッジを評価対象から除外する。
図5Bの例では、抽出部14は、サイズ(配管径)が小さいエッジ653B、エッジ654B、エッジ655Bを評価の対象範囲として抽出しない。主配管および枝管を抽出すると、抽出部14は、主配管および枝管上に存在するノードを抽出する。具体的には、抽出部14は、主配管に関しノードMOV-011B、ノードSRO-001B、ノードVLV-012B、ノードVLV-013Bを抽出する。抽出部14は、枝管に関しノードMOV-014B、ノードSRO-002B、ノードVLV-015Bを抽出する。どのようなノードを抽出し(例えば、バルブやポンプは抽出する。)、どのようなノードを抽出しないか(例えば、分岐を示すノードは抽出しない。)については、別途、技術者が、設定を行い、記憶部18にその内容が登録されている。抽出部14は、抽出したエッジ、ノードの情報を、ネットワーク図作成部12へ出力する。ネットワーク図作成部12は、抽出されたエッジ、ノードを様々な態様で表示する。例えば、ネットワーク図作成部12は、主配管と枝管の最初の閉止状態のバルブ(ノードMOV-014B)までを緑色、枝管の最初の閉止状態のバルブ以降の経路を青色で表示する。また、ネットワーク図作成部12は、例えば、状態変化の要求がある機器に対応するノードを赤四角で囲んで表示し(
図5Bには無いが、
図5Dに図示する太い実線の四角が赤四角に相当する(後述)。)、状態維持の要求がある機器に対応するノードを赤三角(
図5Bでは太い実線の三角)で囲んで表示する。さらに、状態変化を考慮する必要が無いノード(SRO-001B等)を青四角(
図5Bでは太い破線の四角)で囲んで表示する。
【0022】
他の解析条件の設定例(解析条件2)を
図5Cに示す。
図5Cの例では、終点にノードOPC_RCS-026Bが設定され、ノードMOV-011Bの初期状態にOpen,変化後の状態にCloseが設定され、ノードMOV-014Bの初期状態にClose,変化後の状態にOpenが設定される。つまり、初期状態からの状態変更要求が設定される。
抽出部14は、
図5Cの解析条件に基づいて、主配管として、エッジ020B-9、エッジ060B-1、エッジ070B-1、エッジ070B-2、エッジ070B-3、エッジRCS-026Bを結ぶ経路を抽出する。抽出部14は、枝管として、エッジ030B-1、エッジ040B-1、エッジ040B-2、エッジ040B-3、エッジ050B-1、エッジ050B-2を結ぶ経路を抽出する。抽出部14は、主配管に関し、ノードMOV-014B、ノードSRO-002B、ノードVLV-015Bを抽出する。抽出部14は、枝管に関し、ノードMOV-011B、ノードSRO-001B、ノードVLV-013B、ノードVLV-012Bを抽出する。
図5Dに示すように、ネットワーク図作成部12は、主配管と枝管の最初の閉止状態のバルブ(ノードMOV-011B)までと、枝管の最初の閉止状態のバルブ以降の経路とを異なる色を付して表示し、例えば、状態変化要求があるノードを赤四角(太い実線の四角)で囲んで表示する。
【0023】
(簡略系統図の作成)
簡略系統図作成部15は、抽出部14によって抽出された主配管、枝管、ノードで構成された簡略系統図を作成する。簡略系統図の一例を
図6A、
図6Bに示す。
図6Aに示す簡略系統
図60は、
図5Aに示す解析条件1に基づいて、簡略系統図作成部15が作成した簡略系統図である。簡略系統
図60において、主配管は太線、開となるバルブ(ノードMOV-011B)は白、閉となるバルブ(ノードMOV-014B)は黒で表示されている。
図6Bに示す簡略系統
図60は、
図5Cに示す解析条件2に基づいて、簡略系統図作成部15が作成した簡略系統図である。
記憶部18には、各ノードの種類ごとにバルブ等を示す画像が記録されていて、簡略系統図作成部15は、抽出部14による抽出結果に基づいて、各ノードの種類別の画像を読み出して、簡略系統
図60を作成する。簡略系統図作成部15は、主配管を太線、枝管を細線で表示し、抽出部14によって抽出されなかったエッジやノードについては表示しない。
【0024】
図示するように、簡略系統
図60には、プラントαの系統図のうち、評価の対象範囲だけを抽出したシンプルな系統図が表示され、信頼性評価を行う上で注目する必要のあるノード(バルブ、ポンプ等)だけが表示される。注目する必要のあるノードの種類は、予め登録されていて抽出部14は、これらのノードだけを抽出する。系統図のCADデータには、信頼性評価を行う上で必要のない構成も含め詳細な設計情報が含まれているが、従来、信頼性評価を行う技術者は、
図2に例示する系統図の電子データや、系統図を印刷した紙に対して、手作業で主配管、枝管の色の塗分けを行ったり、評価するノード(状態変化させるノード)に印を付したり等の作業を行っていた。これに対し、本実施形態によれば、系統図のCADデータを抽出装置に入力し、
図5A,
図5Cに例示する解析条件の入力を行うだけで、これまで手作業で作成していた評価対象範囲の系統図と同等の結果を得ることができる。
【0025】
(基事象リストの作成)
基事象リスト作成部16は、解析条件に基づいて、系統機能に影響を及ぼす故障モードを特定し、解析条件ごとに機器の故障モードリスト(基事象リスト)を作成する。
図7Aに、
図5Aに示す解析条件に基づくノードMOV-011Bの基事象リストを示し、
図7Bに、
図5Bに示す解析条件に基づくノードMOV-011Bの基事象リストを示す。
例えば、評価対象の機器がバルブの場合、“開失敗”、“閉失敗”、“制御回路の作動失敗”、“閉塞”、“内部リーク”、“誤閉”、“誤開”、“外部リーク”等の想定される故障モードが予め設定されている。基事象リスト作成部16は、解析条件で設定された状態変化において生じ得る故障モードをこれらの中から特定し、特定した内容を基事象リストに出力する。
【0026】
例えば、
図5Aの解析条件1の場合、ノードMOV-011Bは開状態を維持するため、“開失敗”、“閉失敗”、“制御回路の作動失敗”、“内部リーク”、“外部リーク”等は生じない。基事象リスト作成部16は、“閉塞”と“誤閉(誤って閉まる)”を生じ得る故障モードとして特定し、
図7Aに例示する基事象リストを作成する。基事象リスト作成部16は、ノードMOV-014B、ノードSRO-001B等、他のノードについても同様に基事象リストを作成してもよい。
【0027】
また、
図5Bの解析条件2の場合、ノードMOV-011Bは開状態から閉状態へ移行するため、“開失敗”、“閉塞”、“外部リーク”等は生じない。基事象リスト作成部16は、“閉失敗”、“制御回路の作動失敗”、“内部リーク”、“誤開(誤って開く)”を生じ得る故障モードとして特定し、
図7Bに例示する基事象リストを作成する。
従来は、信頼性評価を行う技術者が、系統図から抽出した評価対象範囲のノードについて、1つ1つ手作業で基事象リストを作成していた。これに対し、本実施形態によれば、
系統図のCADデータを抽出装置に入力し、解析条件1などの設定を行うだけで、自動的に基事象リストを作成することができる。
【0028】
次にCADデータの入力から基事象リスト出力までの一連の処理の流れについて説明する。
図8は、実施形態に係る評価の対象範囲の抽出処理の一例を示すフローチャートである。
まず、技術者が、系統図のCADデータ(配管構成データおよび配管接続データ)を抽出装置10に入力する。CADデータ取得部11は、入力されたCADデータを取得し(ステップS1)、記憶部18に記録する。次に技術者が、ネットワーク図の作成を抽出装置10に指示する。ネットワーク図作成部12は、エッジリストとノードリストを作成し(ステップS2)、これらを記憶部18に記録する。次にネットワーク図作成部12は、エッジリストとノードリストからネットワーク図を作成する(ステップS3)。また、解析条件設定部13が、
図5Aに例示する設定画面50を作成する。出力部17は、例えば、ネットワーク図と設定画面50とを、抽出装置10に接続された表示装置に表示する。
【0029】
技術者は、設定画面50に対し、解析条件を入力する。具体的には、技術者は、評価対象範囲の始点、終点、評価対象ノードについての状態変化の設定を行う。始点から終点まで複数の経路が想定される場合には、主配管の決定のために中継点の設定を行ってもよい。始点等の設定により、系統図全体の中から始点、終点で規定される範囲(信頼性評価に必要な範囲)だけを評価対象範囲として抽出することができる。また、例えば、始点と終点が同じでも、途中のバルブ、ポンプなどのノードについて異なる複数の状態が想定できる場合がある。これらが異なる状態であれば、異なる運転モードである。始点、終点に加えて状態変化を設定することにより、運転モードごとに評価対象範囲の抽出を行うことができる。
また、例えば、設定画面50にて、運転モードの識別情報とともに解析条件を設定できるようなインタフェースとし、複数の運転モードごとに解析条件を設定できるようにしてもよい。
【0030】
技術者が解析条件を入力すると、解析条件設定部13は、解析条件の設定を取得する(ステップS4)。解析条件設定部13は、解析条件を記憶部18に記録する。次に抽出部14が、評価の対象範囲を抽出する。まず抽出部14は、エッジについて対象範囲の抽出を行う(ステップS5)。例えば、抽出部14は、始点、終点、ノードの状態設定と、ノードリスト、エッジリストに基づいて、流体が流れる経路を特定し、特定した経路を主配管とする。抽出部14は、主配管を構成するエッジとそのエッジに接続されたノードを抽出する。また、抽出部14は、主配管に接続されるエッジを特定し、そのエッジに接続するノード、そのノードに接続する他のエッジ等を特定し、枝管とする。枝管の範囲は、予め設定されている。例えば、主配管上のノードから1つ目の閉止状態のバルブのノードに到達するまでの経路を第1範囲の枝管、更に1つ目の閉止状態のバルブのノードから次の閉止状態のバルブに対応するまでの経路を第2範囲の枝管として抽出する。また、抽出部14は、系統機能達成に影響しないと考えられる小口径のエッジを対象外として除外するなどの処理も行う。つまり、抽出部14は、前記小口径のエッジを、主配管、枝管として選択しない。
【0031】
主配管と枝管を抽出すると、次に抽出部14は、対象範囲におけるノードの抽出を行う(ステップS6)。抽出部14は、ステップS5で抽出した主配管および枝管について、主配管上のノードと、枝管上のノードを抽出する。また、これらのノードの情報を評価対象の機器リストとして出力してもよい。
【0032】
ネットワーク図作成部12は、ステップS3で作成したネットワーク図について、抽出部14が抽出した主配管、枝管、ノードについて、例えば、次のような強調表示を行ったネットワーク図に更新してもよい。例えば、主配管と第1範囲の枝管を構成するエッジを緑色の太線で表示、第2範囲の枝管を構成するエッジを青色で表示する。例えば、状態変化が必要なノードに対応する機器は赤四角(
図5Dの例では太い実線の四角)で囲って表示する。状態維持が必要なノードに対応する機器は赤三角(
図5Dの例では太い実線の三角)で囲って表示する。状態変化を考慮する必要がないノードに対応する機器は青四角(
図5B、
図5Dの例では太い破線の四角)で囲って表示する。
【0033】
抽出部14が対象範囲を抽出すると、簡略系統図作成部15が、簡略系統
図60を作成する(ステップS7)。簡略系統図作成部15は、
図6A、
図6Bに例示する簡略系統
図60を作成する。出力部17は、簡略系統
図60を電子ファイルとして出力する。出力部17は、簡略系統
図60を表示装置に表示してもよい。
【0034】
次に基事象リスト作成部16が、故障モードの特定を行う(ステップS8)。基事象リスト作成部16は、評価対象のノードごとに、そのノードに対応する機器について、解析条件で設定した状態変化(状態維持を含む)が生じたときに生じ得る故障モードを特定する。また、状態変化を考慮する必要がない機器についても、考えられる故障モードを特定する。基事象リスト作成部16は、特定した故障モードを基事象リストとして出力する(ステップS9)。
【0035】
全ての評価対象範囲が抽出された場合、対象範囲の抽出処理を終了する。他に抽出すべき評価対象範囲が存在する場合、ステップS4以降の処理を繰り返す。
【0036】
従来は、系統図に対してPRAモデル(FT図など)作成のための範囲抽出を手作業で行っていた。本実施形態では、系統図のCADデータを入力するだけで、ネットワーク図に自動で変換し、技術者に提示する。シンプルなネットワーク図を提示することで、技術者は、抽出範囲の把握、設定が容易になる。また、解析条件の入力により、対象範囲・機器の自動抽出によって、手作業よりも短時間で効率的に信頼性評価のインプットデータ(PRAモデル作成のためのデータ)を作成することができる。また、設計変更に伴いCADデータが更新されたとしても、抽出装置10に新たなCADデータを入力し、解析条件を入力するだけで、設計変更後のプラントに関する簡略系統図や基事象リストを出力することができる。これにより、設計変更に伴う信頼性評価を速やかに確認することが可能となる。
【0037】
上記実施形態では、原子力プラントの信頼性評価のPRAモデル作成のために、原子力プラントの系統図のCADデータに基づいて信頼性評価の対象範囲を抽出することとしたが、抽出装置10の適用分野は、原子力プラントの信頼性評価に限定されない。また、PRAモデルに限らず、他の手法で信頼性評価を行う産業分野にも適用が可能である。また、系統図は、プラントに限らず電気配線の系統図や制御系の系統図であってもよい。
【0038】
図9は、実施形態に係る抽出装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の抽出装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0039】
なお、抽出装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0040】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0041】
<付記>
各実施形態に記載の評価対象の抽出方法、抽出装置及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0042】
(1)第1の態様に係る評価対象の抽出方法は、評価対象物(プラント、システム等)の系統図の構成データ(配管構成データ、配管接続データ)から、エッジとノードで構成されたネットワーク図(
図4)を作成するステップ(
図8のステップS3)と、前記ネットワーク図について、解析条件を取得するステップ(
図8のステップS4)と、前記解析条件に基づいて、信頼性評価の対象範囲に含まれる前記エッジを抽出するステップ(
図8のステップS5)と、抽出した前記エッジに接続された前記ノードを抽出するステップ(
図8のステップS6)と、抽出した前記エッジおよび前記ノードを含み、前記系統図の構成の中から前記信頼性評価に必要な構成を抽出して示した簡略系統図(
図6A、
図6B)を作成するステップ(
図8のステップS7)と、を有する。
これにより、プラント等の系統図の全体から、信頼性評価の対象範囲を抽出し、その対象範囲において、評価に必要な系統(主配管、枝管)や機器の構成のみを表示した簡略系統図を自動的に出力することができ、範囲抽出作業を省力化、効率化することができる。また、信頼性評価の対象範囲を抽出した簡略系統図に基づいて、PRAモデルの作成作業が容易になる。
【0043】
(2)第2の態様に係る評価対象の抽出方法は、(1)の評価対象の抽出方法であって、前記系統図の構成データは、系統図のCADデータであって、前記評価対象物を構成する構成要素とそれらの接続情報を含む。
評価対象物の系統図のCADデータを利用することができるので、設計データに準じた簡略系統図を得ることができ、また、設計変更にも容易に対応することができる。
【0044】
(3)第3の態様に係る評価対象の抽出方法は、(1)~(2)の評価対象の抽出方法であって、前記解析条件は、前記対象範囲の前記エッジおよび前記ノードから構成される系統の運転モードの設定(
図5A、
図5C)を含み、前記簡略系統図を作成するステップでは、前記運転モードに対応する簡略系統図を作成する。
信頼性を評価したい運転モードの設定を行うことで、その運転モードごとの簡略系統図を作成することができる。運転モードごとに簡略系統図を作成することで、運転モードごとのPRAモデル作成が容易になる。
【0045】
(4)第4の態様に係る評価対象の抽出方法は、(1)~(3)の評価対象の抽出方法であって、前記解析条件は、前記対象範囲の前記エッジおよび前記ノードから構成される系統についての始点または終点の設定を含み、前記エッジを抽出するステップでは、前記解析条件に基づいて前記系統の主経路(主配管)を決定し、前記主経路を構成する前記エッジを抽出する。
始点、終点の設定により評価の対象範囲を指定し、対象範囲に含まれる様々な系統の中から主経路を決定することができる。
【0046】
(5)第5の態様に係る評価対象の抽出方法は、(4)の評価対象の抽出方法であって、前記エッジを抽出するステップでは、前記主経路(主配管)を構成する前記エッジに接続する他の前記エッジを副経路(枝管)として抽出する。
これにより、主経路に影響を及ぼし得る副経路を評価の対象範囲として抽出することができる。
【0047】
(6)第6の態様に係る評価対象の抽出方法は、(1)~(5)の評価対象の抽出方法であって、前記解析条件は、前記対象範囲の前記ノードの状態変化を指定する設定を含み、前記状態変化において生じ得る異常(故障モード)を特定するステップ(
図8のステップS8)、をさらに有する。
これにより、評価の対象範囲に含まれるノードに状態変化が生じたときのリスク(どのような異常が生じ得るか)を特定することができる。
【0048】
(7)第7の態様に係る評価対象の抽出方法は、(6)の評価対象の抽出方法であって、前記状態変化において生じ得る異常の候補を提示する基事象リスト(
図7A、
図7B)を出力するステップ(
図8のステップS9)、をさらに有する。
これにより、評価の対象範囲に含まれるノードに状態変化が生じたときのリスクを把握することができる。
【0049】
(8)第8の態様に係る評価対象の抽出方法は、(1)~(7)の評価対象の抽出方法であって、前記簡略系統図では、前記対象範囲の前記エッジおよび前記ノードから構成される系統における主経路と、前記主経路に接続する副経路とが示される。
これにより、抽出された対象範囲のエッジ、ノードのうち、どれが主配管(系統の機能を発揮するために作動している経路)を構成するエッジ、ノードで、どの経路が主配管に影響を及ぼし得る枝管を構成するエッジ、ノードであるかを把握することができる。
【0050】
(9)第9の態様に係る抽出装置10は、評価対象物の系統図の構成データから、エッジとノードで構成されたネットワーク図を作成するネットワーク図作成部12と、前記ネットワーク図について、解析条件の設定を取得する解析条件設定部13と、前記解析条件に基づいて、信頼性評価の対象範囲に含まれる前記エッジおよび前記エッジに接続された前記ノードを抽出する抽出部14と、抽出した前記エッジおよび前記ノードを含み、前記系統図の構成の中から前記信頼性評価に必要な構成を抽出して示した簡略系統図を作成する簡略系統図作成部15と、を備える。
【0051】
(10)第10の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、評価対象物の系統図の構成データから、エッジとノードで構成されたネットワーク図を作成するステップと、前記ネットワーク図について、解析条件を設定するステップと、前記解析条件に基づいて、信頼性評価の対象範囲に含まれる前記エッジを抽出するステップと、抽出した前記エッジに接続された前記ノードを抽出するステップと、抽出した前記エッジおよび前記ノードを含み、前記系統図の構成の中から前記信頼性評価に必要な構成を抽出して示した簡略系統図を作成するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0052】
10・・・抽出装置
11・・・CADデータ取得部
12・・・ネットワーク図作成部
13・・・解析条件設定部
14・・・抽出部
15・・・簡略系統図作成部
16・・・基事象リスト作成部
17・・・出力部
18・・・記憶部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU、
902・・・主記憶装置、
903・・・補助記憶装置、
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース