IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 小松精練株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】防風性生地及び衣服
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/24 20060101AFI20240111BHJP
   A41D 31/00 20190101ALI20240111BHJP
   A41D 31/06 20190101ALI20240111BHJP
   D06M 11/46 20060101ALI20240111BHJP
   D06M 15/277 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B32B5/24
A41D31/00 502B
A41D31/00 502C
A41D31/00 502Q
A41D31/06 100
D06M11/46
D06M15/277
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020095200
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021187070
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000184687
【氏名又は名称】小松マテーレ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】浜口 裕香
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-254275(JP,A)
【文献】特開昭61-19883(JP,A)
【文献】特開昭61-282481(JP,A)
【文献】特開2014-234561(JP,A)
【文献】特開昭61-89374(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102861(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
A41D 27/00-31/32
D06M 10/00-23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維生地と、前記繊維生地の一方の面に積層された無孔質の親水性膜とを有し、
前記繊維生地の繊維表面に、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤及び第4族元素化合物が付着している、防風性生地。
【請求項2】
前記第4族元素化合物が、前記防風性生地1mあたり0.1g以上付着している、請求項1に記載の防風性生地。
【請求項3】
JIS L 1096:2010 A法(フラジール形法)に準じて測定した通気度が5cm/cm・s以下である、請求項1又は2に記載の防風性生地。
【請求項4】
JIS L 1099:2012 A-1法(塩化カルシウム法)に準じて測定した透湿度が4000g/m・24hrs以上であり、かつ、JIS L 1099:2012 B-1法(酢酸カリウム法)に準じて測定した透湿度が20000g/m・24hrs以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の防風性生地。
【請求項5】
前記繊維生地の他方の面が露出しており、前記繊維生地の他方の面のJIS L 1092:2009に記載のはっ水度試験(スプレー試験)に準じて測定した撥水度が4級以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の防風性生地。
【請求項6】
経方向及び緯方向の少なくとも一方のJIS L 1096:2010 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定した破断伸度が30%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の防風性生地。
【請求項7】
前記繊維生地が織物であり、カバーファクターが900以上1800未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の防風性生地。
【請求項8】
前記繊維生地が編物であり、繊維太さ(dtex)と2.54cmあたりのゲージ数の積が650以上1800未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の防風性生地。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の防風性生地を用いた、衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風性生地及び衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維生地を衣服として用いる際、体温の損失を予防し、防寒性を向上させることを目的として、繊維生地に樹脂を含浸させたり、繊維生地に合成樹脂からなる樹脂膜を積層させたりした防風性生地が広く使用されている。
例えば特許文献1には、編地の片面に樹脂コーティングが施されている防風性肌着が開示されている。
【0003】
また、着用者の快適性の観点から、繊維生地には、雨などの水分により衣服の表面が湿潤してしまうことを防ぐための撥水性能や、不感蒸泄や発汗などによる衣服内のムレを防ぐための透湿性能が求められている。
例えば繊維生地に撥水性能を付与するには、撥水剤を用いればよい。
【0004】
近年、環境への関心が高まり、低環境負荷の素材を求められるようになっている。特に撥水剤において、炭素数が8のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤(C8フッ素系撥水剤)などは、環境への悪影響が懸念されるパーフルオロオクタン酸が含まれていると言われている。そこで、炭素数が6のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系撥水剤(C6フッ素系撥水剤)や、フッ素を含まない撥水剤(非フッ素系撥水剤)などへの切り替えが求められている。
例えば特許文献2には、織編物の一方の面にポリウレタン等で形成された透湿防水層(親水性の樹脂膜)を有し、織編物の他方の面に炭素数が1~6のパーフルオロアルキル基を有する撥水剤又は非フッ素系撥水剤が付着した、撥水性及び透湿防水性を有する積層生地が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-234401号公報
【文献】特開2017-217913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、C8フッ素系撥水剤などと比較して、C6フッ素系撥水剤や非フッ素系撥水剤などは撥水性能が低い傾向にある。特に特許文献2に記載の積層生地のように、繊維生地の一方の面に親水性の樹脂膜(親水性膜)が積層され、他方の面に撥水剤が付着している防風性生地では、繊維生地の他方の面に接触した水分が、繊維生地の一方の面に積層された親水性膜の作用によって吸引され、撥水性が低下するという課題がある。
特許文献2に記載の積層生地では、織編物の表面形状やカバーファクターを規定することにより撥水性能を向上させているが、平凡で安価な繊維生地ではなく特殊な織編物に限定されてしまう。そのため、伸縮性を有し頻繁に目開きが発生する繊維生地や、軽量化や風合いのソフト化のために細い糸や密度の低い繊維生地などには適用するのは困難である。
【0007】
本発明は、低環境負荷でありながら、優れた防風性、透湿性及び撥水性を有する防風性生地及び衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 繊維生地と、前記繊維生地の一方の面に積層された無孔質の親水性膜とを有し、前記繊維生地の繊維表面に、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤及び第4族元素化合物が付着している、防風性生地。
[2] 前記第4族元素化合物が、前記防風性生地1mあたり0.1g以上付着している、前記[1]の防風性生地。
[3] JIS L 1096:2010 A法(フラジール形法)に準じて測定した通気度が5cm/cm・s以下である、前記[1]又は[2]の防風性生地。
[4] JIS L 1099:2012 A-1法(塩化カルシウム法)に準じて測定した透湿度が4000g/m・24hrs以上であり、かつ、JIS L 1099:2012 B-1法(酢酸カリウム法)に準じて測定した透湿度が20000g/m・24hrs以上である、前記[1]~[3]のいずれかの防風性生地。
[5] 前記繊維生地の他方の面が露出しており、前記繊維生地の他方の面のJIS L 1092:2009に記載のはっ水度試験(スプレー試験)に準じて測定した撥水度が4級以上である、前記[1]~[4]のいずれかの防風性生地。
[6] 経方向及び緯方向の少なくとも一方のJIS L 1096:2010 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定した破断伸度が30%以上である、前記[1]~[5]のいずれかの防風性生地。
[7] 前記繊維生地が織物であり、カバーファクターが900以上1800未満である、前記[1]~[6]のいずれかの防風性生地。
[8] 前記繊維生地が編物であり、繊維太さ(dtex)と2.54cmあたりのゲージ数の積が650以上1800未満である、前記[1]~[6]のいずれかの防風性生地。
[9] 前記[1]~[8]のいずれかの防風性生地を用いた、衣服。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低環境負荷でありながら、優れた防風性、透湿性及び撥水性を有する防風性生地及び衣服を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための単なる例示であって、本発明をこの実施の形態にのみ限定することは意図されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない限り、様々な態様で実施することが可能である。
【0011】
[防風性生地]
本発明の防風性生地は、繊維生地と、繊維生地の一方の面に積層された無孔質の親水性膜とを有する。
なお、本明細書において、繊維生地の親水性膜が形成されている面(繊維生地の一方の面)を「第1の面」ともいい、繊維生地の第1の面の反対側に位置する面(繊維生地の他方の面)を「第2の面」ともいう。すなわち、繊維生地は第1の面と第2の面とを有する。
【0012】
<繊維生地>
繊維生地を構成する繊維の素材としては特に限定されないが、例えばポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリウレタン、又は、アセテートやキュプラ、ビスコース等のレーヨンなどが挙げられる。また、繊維の素材としては上述した以外にも、例えばポリ乳酸、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイド等の化学繊維、又は綿、麻、絹又は羊毛等の天然繊維、あるいは、これらの素材の混繊、混紡、交織又は交編品を用いることができる。
【0013】
繊維生地を構成する繊維は、長繊維、短繊維のいずれであってもよい。また、この繊維を用いた糸は、生糸、撚糸、および加工糸のいずれであってもよい。加工糸としては特に限定されず、例えば仮撚加工糸(例えばウーリー加工糸、DTY、改良仮撚加工糸等)、押込加工糸、賦型加工糸、擦過加工糸、タスラン加工糸、糸長差引きそろえ加工糸、複合加工糸、毛羽加工糸、交絡集束糸、交絡混繊糸などを用いることができる。
【0014】
繊維生地を構成する繊維の断面形状としては特に限定されず、例えば丸型、三角、星形、扁平、C型、中空、井形、ドックボーンなどが挙げられる。
【0015】
繊維生地の繊維表面には、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤及び第4族元素化合物が付着している。
なお、本発明においては、糸に撥水剤や第4族元素化合物が練り込まれたものは、繊維表面に付着しているとはみなさない。
【0016】
防風性生地の主たる撥水性は、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤が担う。
炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤は、低環境負荷の素材である。このような撥水剤としては、炭素数1~6のパーフルオロアルキル基を有するフッ素化合物からなるフッ素系撥水剤や、フッ素を含まない撥水剤(非フッ素系撥水剤)などが挙げられる。
フッ素系撥水剤としては、パーフルオロヘキサン酸やそれら由来のユニットを側鎖に持つ重合体等のC6フッ素系撥水剤などが挙げられる。
非フッ素系撥水剤としては、炭化水素化合物(例えば脂肪族系炭化水素、脂肪族カルボン酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等)、シリコーン系化合物などが挙げられる。
炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤は、繊維表面に、防風性生地1mあたり0.01~10g付着していることが好ましく、より好ましは0.05~5gであり、さらに好ましくは0.1~3gであり、特に好ましくは0.5~1.5gである。防風性生地1mあたりの付着量が上記下限値以上であれば、撥水性を充分に発現できる。防風性生地1mあたりの付着量が上記上限値以下であれば、充分な引裂強力や縫目強力が得られやすくなる。加えて、チョークマークの発生を抑制できる。
【0018】
第4族元素化合物の性質は完全には解明されていないが、第4族元素化合物は、未反応の化合物の状態では親水性の官能基と高い親和性を有するが、熱処理等が施されることで第4族元素を中心金属とし、親水性官能基を配位子として配位結合し、配位子を介して水に不溶の架橋構造を形成し、水の吸引を抑制するものと考えられる。このような性質を有する第4族元素化合物が撥水剤に対し補助的に作用することにより、第1の面に後述の親水性膜が積層されている繊維生地、特に伸縮性を有し頻繁に目開きが発生する繊維生地や、細い糸や密度の低い繊維生地などであっても、優れた撥水性を発現できる。
なお、繊維生地の艶消しなどを目的として第4族元素化合物を糸に練り込んだ繊維生地が知られているが、糸中に存在する第4族元素化合物では上述した架橋構造が形成されにくい。架橋構造を形成するためには、第4族元素化合物が繊維の表面に付着している必要がある。
【0019】
第4族元素化合物としては、配位子を介して架橋構造を形成するものが挙げられ、具体的には、酢酸ジルコニウム等の塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム等の複塩、塩化ジルコニウム(IV)等のハロゲン化物、酸化チタン(IV)等の酸化物、チタンやジルコニウムを中心金属に持つカルボニル錯体、アミド錯体、メタロセン錯体、アルコキシドやアセチルアセトネートやトリエタノールアミネート等との有機金属化合物などが挙げられる。
なお、第4族元素化合物の中には半導体として光触媒活性を有するものも存在するが、光触媒の作用により親水化や架橋構造の不安定化の原因となることがある。そのため、第4族元素化合物が光触媒活性を有する場合は、結晶構造を変えたり、表面を被覆したりするなどして、光触媒活性を事実上無視できる程度まで低下させておくことが好ましい。
第4族元素化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
第4族元素化合物は、繊維表面に、防風性生地1mあたり0.1g以上付着していることが好ましく、より好ましは0.5g以上であり、さらに好ましくは1g以上である。防風性生地1mあたりの付着量が上記下限値以上であれば、撥水剤に対する補助作用が発現しやすくなり、防風性生地に優れた撥水性を付与しやすい。
第4族元素化合物の付着量の上限値については特に限定されないが、防風性生地1mあたり20gを超えて第4族元素化合物が付着していると、風合いがハードになるおそれがある。よって、第4族元素化合物の付着量は、防風性生地1mあたり20g以下が好ましく、15g以下がより好ましい。
【0021】
繊維生地は、織物(布帛)、編物(ニット)、不織布など、いかなる形態であってもよいが、織物又は編物であることが特に好ましい。また、伸縮性のある弾性糸を用いたり編物としたりして、伸縮性を与えて着用感を改善させた繊維生地を用いてもよい。
【0022】
繊維生地が織物である場合、カバーファクターについては特に限定されない。軽量化や風合いのソフト化の観点ではカバーファクターは低い方が好ましく、具体的には、カバーファクターは900以上1800未満が好ましく、1100以上1600未満がより好ましい。カバーファクターが上記範囲内であれば、防風性生地を衣服として実用する際の強度を維持しつつ、軽量化や風合いのソフト化を達成できる。
なお、カバーファクターは下記式(i)で算出される、織物の粗密を数値化したものである。
CF=T×(DT)1/2+W×(DW)1/2 ・・・(i)
(式(i)中、「CF」はカバーファクターであり、「T」は織物を構成する経糸の密度(本/2.54cm)であり、「W」は織物を構成する緯糸の密度(本/2.54cm)であり、「DT」は織物を構成する経糸の繊維太さ(dtex)であり、「DW」は織物を構成する緯糸の繊維太さ(dtex)である。)
【0023】
繊維生地が編物である場合、編物を構成する繊維の太さやゲージについては特に限定されない。軽量化や風合いのソフト化の観点では繊維太さやゲージは小さい方が好ましく、具体的には、繊維太さ(dtex)と2.54cmあたりのゲージ数の積は650以上1800未満が好ましく、850以上1600未満がより好ましい。繊維太さ(dtex)と2.54cmあたりのゲージ数の積が上記範囲内であれば、防風性生地を衣服として実用する際の強度を維持しつつ、軽量化や風合いのソフト化を達成できる。
【0024】
繊維生地は、予め着色されていてもよいし、着色されていなくてもよい。繊維生地を予め着色する場合には、分散染料、カチオン染料、酸性染料、直接染料、反応染料、建染染料、硫化染料等の染料、蛍光増白剤、又は顔料などを用いて繊維生地を着色することができる。
また、酸性染料を用いてナイロンを染色する場合に実施される合成タンニン等を用いたフィックス処理など、通常の繊維の着色時に行われている各種処理を行ってもよい。
繊維の着色方法としては特に限定されず、例えば原着、浸染、捺染などの方法が挙げられる。
なお、繊維生地を着色するために用いられる材料としては、上述したものに限定されず、各繊維生地の素材に合わせて適切なものを選択すればよい。
【0025】
繊維生地には、本発明の目的を妨げない範囲で、カレンダー加工、難燃加工、制電加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮蔽加工、耐光向上加工、プラズマ処理などが施されていてもよい。
【0026】
<親水性膜>
親水性膜は繊維生地の第1の面に積層された樹脂膜であり、無孔質である。
繊維生地の第1の面に親水性膜が積層されていることにより、繊維生地に優れた防風性と透湿性を付与することができる。
なお、本発明において「無孔質」とは、異物やピンホールなどによる膜の厚み方向の孔開き、物理的変形による亀裂の発生などによる膜の面方向の孔開き、といった意図しない欠点、及び繊維生地を構成する繊維の凹凸等に起因する膜の不連続部分を除き、本質的に膜に孔開きが存在しないことを意味する。
【0027】
親水性膜の素材としては親水性を有するものであれば特に限定されないが、例えばポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリアルキレンオキサイド鎖を主鎖や側鎖に有するポリウレタン等の樹脂などが挙げられる。これらの中でも、実着時の親水性膜と身体等との擦れによる親水性膜の剥離や欠損に耐性があることや、伸縮性を有する素材を用いて防風性生地全体に伸縮性を付与しやすいことから、ポリウレタンが好ましい。
【0028】
親水性膜には、顔料等の着色剤、ポリアルキレングリコール等の透湿性向上剤、イソシアネート系架橋剤、触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0029】
親水性膜の単位面積当たりの質量(目付)は5~45g/mが好ましく、10~35g/mがより好ましく、10~30g/mがさらに好ましい。親水性膜の目付が上記下限値以上であれば、防風性を充分に発現できる。親水性膜の目付が上記上限値以下であれば、透湿性を充分に発現しつつ、軽量で風合いがソフトな防風性生地を得られやすくなる。特に、繊維生地が織物である場合、充分な引裂強力や縫目強力が得られやすくなる利点も有する。
【0030】
<防風性生地の物性>
(通気度)
一般的に、軽量化や風合いのソフト化のためには、繊維生地に積層する樹脂膜の目付を小さくし、樹脂膜の膜厚みを薄くすればよいが、その場合、意図せずに通気度が高くなる傾向がある。
しかし、上述した実施形態の防風性生地によれば、無孔質の親水性膜が繊維生地の第1の面に積層されているため、繊維生地に積層する親水性膜の目付が小さく、また膜厚みが薄くても、防風性を顕著に向上させることができる。例えば、本発明の防風性生地であれば、JIS L 1096:2010 A法(フラジール形法)に準じて測定した通気度が5cm/cm・s以下になりやすい。通気度は、3cm/cm・s以下がより好ましい。防風性の観点からは通気度が低い方が好ましいが、必要以上に通気度を下げると親水性膜の目付が大きくなり、軽量性が損なわれたり風合いが硬化したりするおそれがある。そのため、通気度は0.05cm/cm・s以上が好ましい。
【0031】
(透湿度)
上述した実施形態の防風性生地によれば、親水性膜が繊維生地の第1の面に積層されているため、親水性膜が無孔質であっても透湿性を顕著に向上させることができる。例えば、本発明の防風性生地であれば、JIS L 1099:2012 A-1法(塩化カルシウム法)に準じて測定した透湿度が4000g/m・24hrs以上になりやすく、また、JIS L 1099:2012 B-1法(酢酸カリウム法)に準じて測定した透湿度が20000g/m・24hrs以上になりやすい。より好ましくはA-1法に準じて測定した透湿度が5000g/m・24hrs以上であり、B-1法に準じて測定した透湿度が30000g/m・24hrs以上である。一方、透湿度が高すぎると汗の蒸発が早すぎて体が冷えてしまうおそれがある。そのため、A-1法に準じて測定した透湿度は20000g/m・24hrs以下が好ましく、B-1法に準じて測定した透湿度は100000g/m・24hrs以下が好ましい。
【0032】
(撥水度)
上述した実施形態の防風性生地によれば、繊維生地の繊維表面に特定の撥水剤及び第4族元素化合物が付着しているため、撥水性を顕著に向上させることができる。特に、繊維生地の第2の面が露出していれば、撥水性をより顕著に向上させることができる。例えば、本発明の防風性生地であれば、露出した繊維生地の第2の面のJIS L 1092:2009に記載のはっ水度試験(スプレー試験)に準じて測定した撥水度が4級以上になりやすい。撥水度は5級がより好ましい。
【0033】
(破断伸度)
上述した実施形態の防風性生地によれば、伸縮性を顕著に向上させることができる。例えば、本発明の防風性生地であれば、経方向及び緯方向の少なくとも一方のJIS L 1096:2010 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて測定した破断伸度が30%以上になりやすい。より好ましくは経方向及び緯方向の破断伸度が30%以上であり、さらに好ましくは経方向及び緯方向の破断伸度が50%以上である。
【0034】
<防風性生地の製造方法>
次に、本発明の防風性生地の製造方法の一例について説明する。なお、本発明は以下に説明する製造方法で得られるものに限定されるものではない。
【0035】
まず、基材となる繊維生地を準備する。繊維生地としては上述したものが用いられ、必要に応じて、湯洗い、精練、リラックス、熱セット等の加工を施す。前記加工は公知の方法で行えばよい。また、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の性能を付与するため、特殊な条件にて前記加工を施してもよい。
さらに、必要に応じ繊維生地に対して、染色加工、捺染加工、カレンダー加工、難燃加工、制電加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮蔽加工、耐光向上加工、プラズマ処理などの加工を施してもよい。
【0036】
次いで、繊維生地に対して、第4族元素化合物による処理、及び撥水加工を施す。
第4族元素化合物による処理では、第4族元素化合物を溶媒に溶解又は分散媒に分散させた処理液(1)を、パディング法やスプレー法等で繊維生地に付与した後、40~180℃にて10~600秒程度乾燥し、必要に応じて130~200℃にて5~300秒程度の熱処理を行う。
一方、撥水加工では、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤を溶媒又は分散媒に溶解又は分散させた処理液(2)を、パディング法やスプレー法等で繊維生地に付与した後、40~140℃にて10~600秒程度乾燥し、必要に応じて130~200℃にて5~300秒程度の熱処理を行う。
なお、第4族元素化合物による処理、及び撥水加工は、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。別々に行う場合には、撥水剤により繊維生地への処理液(1)の浸透が阻害されないようにするため、第4族元素化合物による処理を撥水加工よりも前に行うことが好ましい。
【0037】
処理液(1)中の第4族元素化合物の濃度は、繊維生地によるピックアップ量に応じ、防風性生地1mあたり0.1g以上含まれるよう調節することが好ましい。
処理液(1)に用いられる溶媒又は分散媒としては、例えば水;イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等のその他の非プロトン性極性溶媒などが挙げられる。
【0038】
処理液(2)中の撥水剤の濃度は、使用する撥水剤の種類、目的とする撥水性、得られる防風性生地の風合いなどに応じて適宜設定すればよい。例えば、処理液(2)の総質量に対して、撥水剤の含有量は固形分換算で0.1~10質量%であることが好ましい。
処理液(2)に用いられる溶媒又は分散媒としては、例えば水;イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等のその他の非プロトン性極性溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;石油エーテル、ミネラルターペン等の脂肪族炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0039】
なお、処理液(1)及び処理液(2)には、それぞれ必要に応じて、撥水性を向上させるための疎水性シリカや、洗濯などに対する耐久性を向上させるためのイソシアネート架橋剤、繊維への浸透剤などの添加剤が含まれていてもよい。
【0040】
次いで、第4族元素化合物による処理、及び撥水加工を施した後の繊維生地の第1の面に、無孔質の親水性膜を積層する(積層加工)。親水性膜を積層する手段としては、例えばコーティング法、ラミネート法などが挙げられる。
コーティング法では、粘度を調節した親水性膜の素材(樹脂)をナイフコーター、ブレードコーター、グラビアコーター、リバースコーター、押し出しコーターなどを用いて、繊維生地の第1の面に直接コーティングする。親水性膜の素材の粘度を調節する方法としては、素材に溶媒又は分散媒を添加したり、素材を熱溶融したりする方法が挙げられる。
ラミネート法では、離型紙上などに親水性膜の素材(樹脂)をキャストし、必要に応じて接着剤を介して繊維生地の第1の面にラミネートする。
加熱による溶媒や分散媒の除去、活性エネルギー線の照射による重合反応の促進、冷却による樹脂の固化などの製膜処理は、用いた手法に合わせて適宜行えばよい。
【0041】
なお、積層加工は、第4族元素化合物による処理、及び撥水加工の前に行ってもよいし、後に行ってもよいが、コーティング法により親水性膜を繊維生地の第1の面に積層する場合には、繊維生地へ樹脂が含浸しにくくなるとの観点から、第4族元素化合物による処理、及び撥水加工の後に行うことが好ましい。
【0042】
このようにして、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤及び第4族元素化合物が表面に付着した繊維で構成された繊維生地の第1の面に無孔質の親水性膜が積層され、繊維生地の第2の面が露出した防風性生地が得られる。
【0043】
<作用効果>
以上説明した本発明の防風性生地は、繊維生地の第1の面に無孔質の親水性膜が積層しているので、優れた防風性及び透湿性を有する。また、繊維生地の繊維表面には、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤及び第4族元素化合物が付着しているので、低環境負荷であり、かつ親水性膜を有していながも、優れた撥水性を発現できる。
また、本発明の防風性生地は、炭素数7以上のパーフルオロアルキル基を有しない撥水剤と第4族元素化合物とを併用することで撥水性の低下を抑制しているので、平凡で安価な繊維生地はもちろんのこと、伸縮性を有し頻繁に目開きが発生する繊維生地や、軽量化や風合いのソフト化のために細い糸や密度の低い繊維生地などを使用することができる。
【0044】
[衣服]
本発明の衣服は、上述した本発明の防風性生地を用いたものであり、低環境負荷でありながら、優れた防風性、透湿性及び撥水性を有する。
本発明の防風性生地は、衣服の表地として用いてもよいし、裏地として用いてもよいが、表地の少なくとも一部として用いることが好ましい。また、本発明の防風性生地を表地として用いる場合、本発明の防風性生地を裏地としてさらに用いてもよいし、本発明の防風性生地以外の生地を裏地として用いてもよい。また、表地と裏地との間に羽毛や綿などの中綿層を設けてもよい。
衣類としては特に制限されないが、例えばジャケット、シャツ、ワンピース、セーター、カーディガン等の一般衣料、ユニフォーム、ウィンドブレーカー、タイツ、ウォームアップスーツ等のスポーツ用衣料、作業服などが挙げられる。
【実施例
【0045】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではない。なお、以下に記載の「部」は質量部、「%」は質量%である。また、各種物性等は以下の方法にて測定した。
【0046】
[測定方法]
<通気度の測定>
JIS L 1096:2010 A法(フラジール形法)に準じて防風性生地の通気度を測定した。
【0047】
<透湿度の測定>
JIS L 1099:2012 A-1法(塩化カルシウム法)、及びJIS L 1099:2012 B-1法(酢酸カリウム法)に準じて、防風性生地の透湿度を測定した。
なお、接水面は防風性生地の樹脂膜側の表面とし、いずれの透湿度も24時間当りの透湿量に換算した。
【0048】
<撥水度の測定>
JIS L 1092:2009に記載のはっ水度試験(スプレー試験)に準じて試験を行い、防風性生地の撥水度を測定した。
なお、はっ水度試験は繊維生地に樹脂膜(親水性膜又は疎水性膜)を積層する前と、積層した後のそれぞれの段階で行った。樹脂膜を積層した後の防風性生地については、露出した繊維生地の第2の面に対して、はっ水度試験を行った。
【0049】
<破断伸度の測定>
防風性生地の経方向、緯方向それぞれに対して、JIS L 1096:2010 JIS法 A法(ストリップ法)に準じて試験を行い、切断時の伸び率を破断伸度とした。
【0050】
[樹脂組成物の調製]
<樹脂組成物Aの調製>
親水性ポリウレタン(DIC株式会社製、商品名「クリスボン S-525」)100部と、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、商品名「コロネート L」)2部と、メチルエチルケトン50部とを混合し、樹脂組成物Aを調製した。
【0051】
<樹脂組成物Bの調製>
親水性ポリウレタン(第一工業製薬株式会社製、商品名「スーパーフレックス 460」)100部と、ポリオキシアルキレングリコール系透湿性付与剤(三洋化成工業株式会社製、商品名「ニューポール 80-4000」)2部と、イソシアネート系架橋剤(旭化成株式会社製、商品名「デュラネート WB40-100」)1部と、増粘剤(日華化学株式会社製、商品名「ネオステッカー N」)1.5部とを混合し、樹脂組成物Bを調製した。
【0052】
<樹脂組成物Cの調製>
疎水性シリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名「エラストジル LR3003/50 A材」)50部と、疎水性シリコーン樹脂(旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名「エラストジル LR3003/50 B材」)50部とを混合し、樹脂組成物Cを調製した。
【0053】
[実施例1]
繊維生地として、ポリエステル繊維の平織生地(繊維太さ:経糸83dtex、緯糸83dtex、繊維密度:経糸105本/2.54cm、緯糸88本/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した織物を用いた。
処理液(1)として酸化チタン(IV)(大連保税区愛利化学有限公司製、商品名「TITANPESTE #72」、固形分35%)の5%水分散液をパディング法にて織物に付与し、170℃で2分乾燥し、第4族元素化合物による処理を行った。ピックアップ量より繊維表面に付着した酸化チタン(IV)の量は1.2%であった。
次いで、処理液(2)としてC6フッ素系撥水剤(AGC株式会社製、商品名「アサヒガ-ド AG-E081」、固形分30%)の3%水分散液を、酸化チタン(IV)を付着させた織物に付与し、120℃にて30秒乾燥し、続いて150℃にて30秒熱処理を行い(撥水加工)、撥水加工した織物を得た。この段階(樹脂膜の積層前)での撥水度を表1に記した。なお、実施例1で用いたC6フッ素系撥水剤は、パーフルオロヘキサン酸由来のユニットを側鎖に持つ重合体である。
次いで、コーティング法により樹脂組成物Aを撥水加工した織物の第1の面にナイフコーターを用いて塗布した後、150℃で90秒熱処理して(積層加工)、織物の第1の面に樹脂膜として無孔質の親水性膜が積層され、織物の第2の面が露出した防風性生地を得た。樹脂膜の目付は13g/mであった。
得られた防風性生地について、通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表1に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量を表1に示す。
【0054】
[実施例2]
樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表1に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表1に示す。
【0055】
[実施例3]
繊維生地として、ナイロン/ポリウレタン=80/20(質量比)繊維の平織生地(繊維太さ:経糸33dtex、緯糸33dtex、繊維密度:経糸157本/2.54cm、緯糸114本/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した織物を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表1に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表1に示す。
【0056】
[実施例4]
繊維生地として、ポリエステル繊維のスムース編物(繊維太さ:22dtex、40ゲージ/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した編物を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表1に示す。また、編物の繊維太さ(dtex)と2.54cmあたりのゲージ数の積と、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表1に示す。
【0057】
[実施例5]
繊維生地として、ポリエステル繊維のスムース編物(繊維太さ:33dtex、40ゲージ/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した編物を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表1に示す。また、編物の繊維太さ(dtex)と2.54cmあたりのゲージ数の積と、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表1に示す。
【0058】
[実施例6]
繊維生地として、ナイロン/ポリウレタン=80/20(質量比)繊維の平織生地(繊維太さ:経糸33dtex、緯糸33dtex、繊維密度:経糸157本/2.54cm、緯糸114本/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した織物を用い、処理液(1)として炭酸ジルコニウムアンモニウム(日本軽金属株式会社製、商品名「ベイコート20」、固形分20%)の20%水分散液を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表1に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表1に示す。
【0059】
[実施例7]
繊維生地として、ナイロン/ポリウレタン=80/20(質量比)繊維の平織生地(繊維太さ:経糸33dtex、緯糸33dtex、繊維密度:経糸157本/2.54cm、緯糸114本/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した織物を用い、処理液(1)としてチタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)(マツモトファインケミカル株式会社社製、商品名「オルガチックス TC-400」、固形分79%)の25%水分散液を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表1に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表1に示す。
【0060】
[比較例1]
繊維生地として、糸中に酸化チタン(IV)が3.5%練り込まれているポリエステル繊維の平織生地(繊維太さ:経糸83dtex、緯糸83dtex、繊維密度:経糸105本/2.54cm、緯糸88本/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した織物を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用い、かつ第4族元素化合物による処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表2に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表2に示す。
【0061】
[比較例2]
繊維生地として、ナイロン/ポリウレタン=80/20(質量比)繊維の平織生地(繊維太さ:経糸33dtex、緯糸33dtex、繊維密度:経糸157本/2.54cm、緯糸114本/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した織物を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用い、かつ第4族元素化合物による処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表2に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表2に示す。
【0062】
[比較例3]
繊維生地として、ポリエステル繊維のスムース編物(繊維太さ:33dtex、40ゲージ/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した編物を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用い、かつ第4族元素化合物による処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表2に示す。また、編物の繊維太さ(dtex)と2.54cmあたりのゲージ数の積と、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表2に示す。
【0063】
[比較例4]
繊維生地として、ナイロン/ポリウレタン=80/20(質量比)繊維の平織生地(繊維太さ:経糸33dtex、緯糸33dtex、繊維密度:経糸157本/2.54cm、緯糸114本/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した織物を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Bを用い、かつ撥水加工を行わなかった以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表2に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表2に示す。
【0064】
[比較例5]
繊維生地として、ナイロン/ポリウレタン=80/20(質量比)繊維の平織生地(繊維太さ:経糸33dtex、緯糸33dtex、繊維密度:経糸157本/2.54cm、緯糸114本/2.54cm)を分散染料でベージュ色に染色した織物を用い、樹脂組成物Aの代わりに樹脂組成物Cを用いて織物の第1の面に無孔質の疎水性膜を積層した以外は、実施例1と同様にして防風性生地を得た。
樹脂膜の積層前の撥水度と、得られた防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表2に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表2に示す。
【0065】
[比較例6]
比較例5で得られた防風性生地に対し、さらにパンチ密度60回/cmでニードルパンチを施し、無孔質の疎水性膜を多孔質の疎水性膜とした。
樹脂膜の積層前の撥水度と、ニードルパンチを施した後の防風性生地の通気度、透湿度、撥水度及び破断伸度を測定した。これらの結果を表2に示す。また、織物のカバーファクターと、防風性生地1mあたりの繊維表面への第4族元素化合物及び撥水剤の付着量と、樹脂膜の目付を表2に示す。なお、JIS L 1099:2012 B-1法(酢酸カリウム法)に準じた透湿度は、漏水が発生したため測定できなかった。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
表1から明らかなように、各実施例で得られた防風性生地は、低環境負荷でありながら、優れた防風性、透湿性及び撥水性を有していた。また、各実施例で得られた防風性生地は、経方向及び緯方向の少なくとも一方の破断伸度が30%以上であり、伸縮性にも優れていた。
一方、表2から明らかなように、第4族元素化合物による処理を行わなかった比較例1~3の防風性生地は、繊維表面に第4族元素化合物が付着していないため、樹脂膜を積層する前の撥水性は良好であったが、樹脂膜を積層すると撥水性は低下した。
撥水加工を行わなかった比較例4の防風性生地は、撥水性に劣っていた。
繊維生地の第1の面に無孔質の疎水性膜を積層した比較例5の防風性生地は、透湿度に劣っていた。
比較例5の防風性生地に対してニードルパンチを施した比較例6の防風性生地は、疎水性膜が多孔質となったためJIS L 1099:2012 A-1法(塩化カルシウム法)に準じた透湿度は改善されたが、防風性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の防風性生地は、低環境負荷でありながら、優れた防風性、透湿性及び撥水性を有し、特にジャケット、シャツ、ワンピース、セーター、カーディガン等の一般衣料、ユニフォーム、ウィンドブレーカー、タイツ、ウォームアップスーツ等のスポーツ用衣料、作業服などに好適に用いることができる。