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特許7417477コンクリート打設装置及びコンクリート打設方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】コンクリート打設装置及びコンクリート打設方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
E21D11/10 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020103161
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021195789
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000158725
【氏名又は名称】岐阜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】松本 修治
(72)【発明者】
【氏名】手塚 康成
(72)【発明者】
【氏名】日野 博之
(72)【発明者】
【氏名】大久保 常秀
(72)【発明者】
【氏名】小谷 拓也
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-024496(JP,A)
【文献】特開2013-108243(JP,A)
【文献】特開昭63-078968(JP,A)
【文献】特開2015-067949(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03872300(EP,A1)
【文献】特開2019-112769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルの内周面とこれに相対するアーチ状の型枠との間の空間にコンクリートを打設するコンクリート打設装置であって、
前記型枠において少なくとも上下方向に間隔をあけて設けられ前記空間へのコンクリートの打設に用いられる複数の打設口と、
前記コンクリートを貯留可能な貯留容器と、
前記貯留容器内の前記コンクリートを吸引して吐出する吐出運転を実行可能なコンクリートポンプと、
前記コンクリートポンプに接続される一端部を有する主コンクリート流通路と、
前記複数の打設口のうちの前記型枠の一方の側壁側に位置する第1打設口群を低位側から高位側に順に経由するように延在する第1コンクリート流通路と、
前記複数の打設口のうちの前記型枠の他方の側壁側に位置する第2打設口群を低位側から高位側に順に経由するように延在する第2コンクリート流通路と、
前記主コンクリート流通路の他端部の接続先を、前記第1コンクリート流通路と前記第2コンクリート流通路との間で選択的に切り替え可能な主切替装置と、
前記第1コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第1切替装置であって、前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より低位の流通路の接続先を、対応する前記打設口と前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より高位の流通路との間で選択的に切り替え可能な前記第1切替装置と、
前記第2コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第2切替装置であって、前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より低位の流通路の接続先を、対応する前記打設口と前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より高位の流通路との間で選択的に切り替え可能な前記第2切替装置と、
前記第1コンクリート流通路の上端部又は前記第2コンクリート流通路の上端部から前記複数の打設口のうちの最も前記型枠の頂部側に設けられる頂部打設口まで延在する頂部コンクリート流通路と、
を含み、
前記第1切替装置及び前記第2切替装置は、対応する前記打設口に当該打設口を閉止可能なシャッター部をそれぞれ有する、コンクリート打設装置。
【請求項2】
前記頂部打設口は、前記型枠における前記トンネルの坑口近傍に位置している、請求項に記載のコンクリート打設装置。
【請求項3】
トンネルの内周面とこれに相対するアーチ状の型枠との間の空間に、前記型枠において少なくとも上下方向に間隔をあけて設けられる複数の打設口を介してコンクリートを打設するコンクリート打設方法において、
前記複数の打設口のうちの前記型枠の一方の側壁側に位置する第1打設口群を低位側から高位側に順に経由する第1コンクリート流通路と、前記複数の打設口のうちの前記型枠の他方の側壁側に位置する第2打設口群を低位側から高位側に順に経由する第2コンクリート流通路と、を敷設する工程と、
前記第1コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第1切替装置を用いて、前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より低位の流通路の接続先を、対応する前記打設口と前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より高位の流通路との間で選択的に切り替える工程と、
前記第2コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第2切替装置を用いて、前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より低位の流通路の接続先を、対応する前記打設口と前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より高位の流通路との間で選択的に切り替える工程と、
前記第1コンクリート流通路の上端部又は前記第2コンクリート流通路の上端部から前記複数の打設口のうちの前記型枠における頂部に設けられる頂部打設口まで延在する頂部コンクリート流通路を敷設する工程と、
コンクリートを、前記第1コンクリート流通路及び前記第2コンクリート流通路のうちの前記頂部コンクリート流通路が延長されている方の流通路と前記頂部コンクリート流通路を経由して、前記空間のうちのトンネル冠部の領域に打設する工程と、
を含み、
前記第1切替装置を用いた前記切り替える工程は、前記第1切替装置に設けられたシャッター部を用いて、前記低位の流通路の前記接続先を前記高位の流通路に切り替えた状態において対応する前記打設口を閉止し、
前記第2切替装置を用いた前記切り替える工程は、前記第2切替装置に設けられたシャッター部を用いて、前記低位の流通路の前記接続先を前記高位の流通路に切り替えた状態において対応する前記打設口を閉止する、
コンクリート打設方法。
【請求項4】
トンネルの内周面とこれに相対するアーチ状の型枠との間の空間にコンクリートを打設するコンクリート打設装置であって、
前記型枠において少なくとも上下方向に間隔をあけて設けられ前記空間へのコンクリートの打設に用いられる複数の打設口と、
前記コンクリートを貯留可能な貯留容器と、
前記貯留容器内の前記コンクリートを吸引して吐出する吐出運転を実行可能なコンクリートポンプと、
前記コンクリートポンプに接続される一端部を有する主コンクリート流通路と、
前記複数の打設口のうちの前記型枠の一方の側壁側に位置する第1打設口群を低位側から高位側に順に経由するように延在する第1コンクリート流通路と、
前記複数の打設口のうちの前記型枠の他方の側壁側に位置する第2打設口群を低位側から高位側に順に経由するように延在する第2コンクリート流通路と、
前記主コンクリート流通路の他端部の接続先を、前記第1コンクリート流通路と前記第2コンクリート流通路との間で選択的に切り替え可能な主切替装置と、
前記第1コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第1切替装置であって、前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より低位の流通路である低位流通路と当該第1切替装置に対応する前記打設口とを接続すると共に、前記低位流通路と前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より高位の流通路である高位流通路との接続を遮断する第1の状態と、前記低位流通路と当該第1切替装置に対応する前記打設口との接続を遮断すると共に前記低位流通路と前記高位流通路とを接続する第2の状態とに、切り替わる前記第1切替装置と、
前記第2コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第2切替装置であって、前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より低位の流通路である低位流通路と当該第2切替装置に対応する前記打設口とを接続すると共に、前記第2コンクリート流通路の前記低位流通路と前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より高位の流通路である高位流通路との接続を遮断する第1の状態と、前記第2コンクリート流通路の前記低位流通路と当該第2切替装置に対応する前記打設口との接続を遮断すると共に前記第2コンクリート流通路の前記低位流通路と前記第2コンクリート流通路の前記高位流通路とを接続する第2の状態とに、切り替わる前記第2切替装置と、
前記型枠の外面において前記複数の打設口のそれぞれの上方且つ近傍に設けられ、圧力又はコンクリートの有無を検知可能なセンサと、
を含み、
前記第1切替装置及び前記第2切替装置は、前記第2の状態において対応する前記打設口を閉止可能なシャッター部をそれぞれ有し、
前記第1切替装置及び前記第2切替装置のそれぞれは、対応する前記打設口の高位の打設口の上方且つ近傍に設けられた前記センサからの出力に基づいて決定されるタイミングで、前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わる、
コンクリート打設装置。
【請求項5】
前記コンクリートポンプは、所定の回数分の往復移動を一単位の打設動作として実行する第1ピストン部及び第2ピストン部を有し、
前記主切替装置は、前記コンクリートポンプにおける前記一単位の打設動作が完了したタイミングで作動して、前記主コンクリート流通路の他端部の接続先の切り替えを行い、
前記一単位の打設動作が完了する前に、コンクリートが前記一単位の打設動作に応じて想定される打設高さより高い位置に達していることを、前記センサからの出力により検知されたときには、前記主切替装置は、強制的に前記接続先を切り替えるように駆動される、
請求項4に記載のコンクリート打設装置。
【請求項6】
トンネルの内周面とこれに相対するアーチ状の型枠との間の空間に、前記型枠において少なくとも上下方向に間隔をあけて設けられる複数の打設口を介してコンクリートを打設するコンクリート打設方法において、
前記複数の打設口のうちの前記型枠の一方の側壁側に位置する第1打設口群を低位側から高位側に順に経由する第1コンクリート流通路と、前記複数の打設口のうちの前記型枠の他方の側壁側に位置する第2打設口群を低位側から高位側に順に経由する第2コンクリート流通路と、を敷設する工程と、
前記第1コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第1切替装置を、前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より低位の流通路である低位流通路と当該第1切替装置に対応する前記打設口とを接続すると共に、前記低位流通路と前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より高位の流通路である高位流通路との接続を遮断する第1の状態と、前記低位流通路と当該第1切替装置に対応する前記打設口との接続を遮断すると共に前記低位流通路と前記高位流通路とを接続する第2の状態とに、切り替える工程と、
前記第2コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第2切替装置を、前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より低位の流通路である低位流通路と当該第2切替装置に対応する前記打設口とを接続すると共に、前記第2コンクリート流通路の前記低位流通路と前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より高位の流通路である高位流通路との接続を遮断する第1の状態と、前記第2コンクリート流通路の前記低位流通路と当該第2切替装置に対応する前記打設口との接続を遮断すると共に前記第2コンクリート流通路の前記低位流通路と前記第2コンクリート流通路の前記高位流通路とを接続する第2の状態とに、切り替える工程と、
を含み、
前記第1切替装置を切り替える工程は、前記空間のうちの前記一方側の領域内のコンクリートが前記第1切替装置に対応する前記打設口の高位の打設口の開口高さより高い位置まで吹き上げられたタイミングで、前記第1切替装置を前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替える、
コンクリート打設方法。
【請求項7】
トンネルの内周面とこれに相対するアーチ状の型枠との間の空間に、前記型枠において少なくとも上下方向に間隔をあけて設けられる複数の打設口を介してコンクリートを打設するコンクリート打設方法において、
前記複数の打設口のうちの前記型枠の一方の側壁側に位置する第1打設口群を低位側から高位側に順に経由する第1コンクリート流通路と、前記複数の打設口のうちの前記型枠の他方の側壁側に位置する第2打設口群を低位側から高位側に順に経由する第2コンクリート流通路と、を敷設する工程と、
前記第1コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第1切替装置を、前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より低位の流通路である低位流通路と当該第1切替装置に対応する前記打設口とを接続すると共に、前記低位流通路と前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より高位の流通路である高位流通路との接続を遮断する第1の状態と、前記低位流通路と当該第1切替装置に対応する前記打設口との接続を遮断すると共に前記低位流通路と前記高位流通路とを接続する第2の状態とに、切り替える工程と、
前記第2コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第2切替装置を、前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より低位の流通路である低位流通路と当該第2切替装置に対応する前記打設口とを接続すると共に、前記第2コンクリート流通路の前記低位流通路と前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より高位の流通路である高位流通路との接続を遮断する第1の状態と、前記第2コンクリート流通路の前記低位流通路と当該第2切替装置に対応する前記打設口との接続を遮断すると共に前記第2コンクリート流通路の前記低位流通路と前記第2コンクリート流通路の前記高位流通路とを接続する第2の状態とに、切り替える工程と、
を含み、
前記第2切替装置を切り替える工程は、前記空間のうちの前記他方側の領域内のコンクリートが前記第2切替装置に対応する前記打設口の高位の打設口の開口高さより高い位置まで吹き上げられたタイミングで、前記第2切替装置を前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替える、
コンクリート打設方法。
【請求項8】
前記型枠の外面において前記複数の打設口のそれぞれの上方且つ近傍には、圧力又はコンクリートの有無を検知可能なセンサが設けられており、
前記第1切替装置を切り替える工程は、当該第1切替装置に対応する前記打設口の高位の打設口の上方且つ近傍に設けられた前記センサからの出力に基づいて決定されるタイミングで、前記第1切替装置を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える、
請求項6に記載のコンクリート打設方法。
【請求項9】
前記型枠の外面において前記複数の打設口のそれぞれの上方且つ近傍には、圧力又はコンクリートの有無を検知可能なセンサが設けられており、
前記第2切替装置を切り替える工程は、当該第2切替装置に対応する前記打設口の高位の打設口の上方且つ近傍に設けられた前記センサからの出力に基づいて決定されるタイミングで、前記第2切替装置を前記第1の状態から前記第2の状態に切り替える、
請求項7に記載のコンクリート打設方法。
【請求項10】
前記第1コンクリート流通路を経由した前記空間へのコンクリートの打設と前記第2コンクリート流通路を経由した前記空間へのコンクリートの打設とを交互に行う左右打設工程を、
含み、
前記コンクリートは、所定の回数分の往復移動を一単位の打設動作として実行する第1ピストン部及び第2ピストン部を有するコンクリートポンプにより打設され、
前記左右打設工程は、前記コンクリートポンプにおける前記一単位の打設動作が完了したタイミングで、コンクリートの打設先の切り替えを行い、
前記一単位の打設動作が完了する前に、コンクリートが前記一単位の打設動作に応じて想定される打設高さより高い位置に達していることを、前記センサからの出力により検知されたときには、前記左右打設工程は、強制的にコンクリートの打設先を切り替える、
請求項8又は9に記載のコンクリート打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内周面とこの内周面に相対するアーチ状の型枠との間の空間(いわゆる覆工空間)にコンクリートを打設する、コンクリート打設装置、及び、コンクリート打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコンクリート打設装置やコンクリート打設方法としては、特許文献1に開示されているものが知られている。特許文献1に記載された覆工コンクリート打設装置は、型枠とコンクリートポンプとコンクリート分流器と複数の打設管とを有している。型枠には、コンクリートを覆工空間内に打設するための複数の打設口が設けられている。コンクリートポンプはコンクリートを圧送し、コンクリート分流器はコンクリートポンプと複数の打設管の中から選択された一つの打設管とを個別に接続する。複数の打設管はそれぞれコンクリート分流器から対応する打設口まで個別に敷設されている。つまり、打設管は打設口毎にコンクリート分流器から対応する打設口まで敷設されている。そして、コンクリートの打設に用いられる打設管はコンクリート分流器により順に切り替えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-112769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された覆工コンクリート打設装置では、各打設管は対応する打設口用の専用配管として用いられているため、コンクリートの打設に用いる打設管の切り替えの度に、コンクリートの打設の役目を終えた打設管が発生する。その結果、打設の役目を終えた打設管内に残るコンクリート(残留コンクリート)が多量に発生することになる。したがって、打設管の切り替えの度に覆工空間に打設されずに廃棄されてしまうコンクリート(廃棄コンクリート)が多量に発生し得る。
【0005】
そこで、本発明は、廃棄コンクリートの量を削減することが可能なコンクリート打設装置及びコンクリート打設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、トンネルの内周面とこれに相対するアーチ状の型枠との間の空間にコンクリートを打設するコンクリート打設装置が提供される。このコンクリート打設装置は、複数の打設口と、前記コンクリートを貯留可能な貯留容器と、コンクリートポンプと、主コンクリート流通路と、第1コンクリート流通路と、第2コンクリート流通路と、主切替装置と、第1切替装置と、第2切替装置と、を含む。前記複数の打設口は、前記型枠において少なくとも上下方向に間隔をあけて設けられ前記空間へのコンクリートの打設に用いられる。前記主コンクリート流通路は、前記コンクリートポンプに接続される一端部を有する。前記第1コンクリート流通路は、前記複数の打設口のうちの前記型枠の一方の側壁側に位置する第1打設口群を低位側から高位側に順に経由するように延在する。前記第2コンクリート流通路は、前記複数の打設口のうちの前記型枠の他方の側壁側に位置する第2打設口群を低位側から高位側に順に経由するように延在する。前記主切替装置は、前記主コンクリート流通路の他端部の接続先を、前記第1コンクリート流通路と前記第2コンクリート流通路との間で選択的に切り替え可能である。前記第1切替装置は、前記第1コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる。そして、前記第1切替装置は、前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より低位の流通路の接続先を、対応する前記打設口と前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より高位の流通路との間で選択的に切り替え可能である。前記第2切替装置は、前記第2コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる。そして、前記第2切替装置は、前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より低位の流通路の接続先を、対応する前記打設口と前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より高位の流通路との間で選択的に切り替え可能である。そして、前記第1切替装置及び前記第2切替装置は、対応する前記打設口に当該打設口を閉止可能なシャッター部をそれぞれ有する。
【0007】
本発明の別の側面によると、トンネルの内周面とこれに相対するアーチ状の型枠との間の空間に、前記型枠において少なくとも上下方向に間隔をあけて設けられる複数の打設口を介してコンクリートを打設するコンクリート打設方法が提供される。このコンクリート打設方法は、前記複数の打設口のうちの前記型枠の一方の側壁側に位置する第1打設口群を低位側から高位側に順に経由する第1コンクリート流通路と、前記複数の打設口のうちの前記型枠の他方の側壁側に位置する第2打設口群を低位側から高位側に順に経由する第2コンクリート流通路と、を敷設する工程と、前記第1コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第1切替装置を用いて、前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より低位の流通路の接続先を、対応する前記打設口と前記第1コンクリート流通路における当該第1切替装置より高位の流通路との間で選択的に切り替える工程と、前記第2コンクリート流通路における前記打設口に対応する部分にそれぞれ設けられる第2切替装置を用いて、前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より低位の流通路の接続先を、対応する前記打設口と前記第2コンクリート流通路における当該第2切替装置より高位の流通路との間で選択的に切り替える工程と、を含む。前記第1切替装置を用いた前記切り替える工程は、前記第1切替装置に設けられたシャッター部を用いて、前記低位の流通路の前記接続先を前記高位の流通路に切り替えた状態において対応する前記打設口を閉止する。前記第2切替装置を用いた前記切り替える工程は、前記第2切替装置に設けられたシャッター部を用いて、前記低位の流通路の前記接続先を前記高位の流通路に切り替えた状態において対応する前記打設口を閉止する。
【発明の効果】
【0008】
前記一側面によるコンクリート打設装置及び前記別の側面によるコンクリート打設方法によると、前記第1コンクリート流通路は前記第1打設口群を低位側から高位側の順で連続的に経由するように延在しており、前記第2コンクリート流通路は前記第2打設口群を低位側から高位側の順で連続的に経由するように延在している。そして、前記第1コンクリート流通路(前記第2コンクリート流通路)において、最低位の前記第1切替装置(前記第2切替装置)から順に、前記低位の流通路の接続先を対応する前記打設口から前記高位の流通路に切り替えると共に対応する前記打設口を前記シャッター部によって閉止することができる。このように最低位の前記第1切替装置(前記第2切替装置)から順に上記切り替えを行うことによって、前記空間へのコンクリートの打設に用いる打設口を、順次高位のものに切り替えることができる。そして、前記第1コンクリート流通路(前記第2コンクリート流通路)において前記空間に連通し且つコンクリートを前記空間に導くことが可能な部分(つまり、実質的にコンクリートの流通路として機能する部分)が、前記打設口の切り替えの度に、上方に向かって徐々に延長されていくことになる。また、前記型枠の一方の側壁側と他方の側壁側のそれぞれにおいて、コンクリートは一系統の流通路(つまり、前記第1コンクリート流通路又は前記第2コンクリート流通路における上記実質的に流通路として機能する部分)を経由して前記空間内に圧入され、前記空間内を吹き上がるように導かれることになる。そして、前記打設口の切り替えが行われたとしても、各第1切替装置(各第2切替装置)に対する前記低位の流通路は、そのまま、高位の前記打設口を介し前記空間に連通し且つコンクリートを前記空間に導く上記実質的な流通路として機能することになる。したがって、前記打設口の切り替えの度に前記低位の流通路内に残るコンクリート(残留コンクリート)は、廃棄されることなく前記空間に導かれて、前記空間へのコンクリートの打設に有効に用いられ得る。
【0009】
このようにして、廃棄コンクリートの量を削減することが可能なコンクリート打設装置、及び、コンクリート打設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート打設装置の概略の断面図である。
図2】前記コンクリート打設装置におけるコンクリートの流通経路を説明するための概念図である。
図3】コンクリートの流通経路を説明するための別の概念図である。
図4】前記コンクリート打設装置の貯留容器、コンクリートポンプ及び主切替装置についての構造を説明するための概念図である。
図5】前記主切替装置及び前記コンクリートポンプの動作を説明するための概念図である。
図6】前記コンクリート打設装置の第1切替装置及び第2切替装置の断面図である。
図7】前記第1切替装置及び前記第2切替装置の状態(第1の状態)を説明するための図である。
図8】前記第1切替装置及び前記第2切替装置の別の状態(第2の状態)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るコンクリート打設装置、及び、コンクリート打設方法の実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリート打設装置100の概略の断面図であると共に、トンネルの切羽に向かって視たトンネルの横断面図でもある。図2及び図3はコンクリート打設装置100のコンクリートの流通経路を説明するための概念図であり、図2はコンクリート打設装置100の概略の側面図を、図3はコンクリート打設装置100の上面図でもある。
【0012】
本実施形態のトンネルは、山岳トンネルである。図1に示すように、掘削機や発破等により掘削されて形成されたトンネルの内周面(換言すると地盤の内周面)1には、一次支保用の吹き付けコンクリート2が吹き付けられている。そして、この内周面1(詳しくは、吹き付けコンクリート2)に相対するようにアーチ状の型枠3が配置され、内周面1とこれに相対する型枠3との間にコンクリート打設用の覆工空間Sが形成されている。コンクリート打設装置100は、この覆工空間Sにコンクリートを打設する装置である。
【0013】
コンクリート打設装置100は、型枠3に設けられる複数の打設口3aと、貯留容器10と、コンクリートポンプ20と、主コンクリート流通路30と、第1コンクリート流通路30Aと、第2コンクリート流通路30Bと、主切替装置40と、第1切替装置50Aと、第2切替装置50Bと、を含む。
【0014】
型枠3は、図2に示すように、トンネル長手方向に所定幅(例えば1.5m)を有する型枠部材を複数(図では7個)連結し、1スパン(例えば10.5m)として構成される。なお、各型枠部材は周方向に複数に分割されているが、図1図3では、図の簡略化のため、型枠3の周方向の分割境界については、図示省略している。また、図2及び図3では、後述するレール6やガントリー車7については図示省略している。1スパンの型枠3は7個の型枠部材3A~3Gにより構成され、覆工空間Sは内周面1と1スパンの型枠3との間に形成される。図1では図示省略したが、型枠3の内側には、トンネル長手方向に伸びる複数の補強部材3cが上下方向に間隔をあけて設けられている(後述の図6図8参照)。
【0015】
型枠3には、その上下方向(換言すると、周方向)及びトンネル長手方向に間隔をあけた複数の箇所に、検査窓等の開口部3bが設けられている。各開口部3b(後述する打設口3aとして用いられる開口部3bは除く)には、開口を塞ぐための着脱自在なパネル(図示省略)がそれぞれ設けられている。図では、各型枠部材3A~3Gにおいて、開口部3bは、トンネル幅方向の片側で5箇所に設けられると共に型枠3の頂部(換言すると、天端部)の1箇所にも設けられている。したがって、開口部3bは、各型枠部材3A~3Gのそれぞれの全周では11箇所に設けられている。また、図2及び図3に示すように、覆工空間Sの坑口側(ラップ側)は先行(既設)の覆工コンクリートCにより塞がれ、覆工空間Sの切羽側端部(妻側)は妻型枠4により塞がれている。型枠3の配置には、トンネル底面5にトンネル長手方向に沿って敷設されたレール6上を移動可能な門型のガントリー車7が用いられる。ガントリー車7は、型枠3を支持すると共に型枠3をトンネル長手方向に移動させるため台車であり、トンネル長手方向に走行可能に構成されている。ガントリー車7には、複数のジャッキ71~74が取付けられている。各型枠部材3A~3Gは、複数のジャッキ71~74を介して、ガントリー車7に連結固定されている。型枠3の各型枠部材3A~3Gは前述したように周方向に複数に分割されている。そして、各型枠部材3A~3Gにおける周方向に隣合う部材同士はヒンジ接合されており、各型枠部材3A~3Gは、複数のジャッキ71~74によって拡径・縮径自在である。
【0016】
コンクリート打設装置100における複数の打設口3aは、型枠3において少なくとも上下方向に間隔をあけて設けられ覆工空間Sへのコンクリートの打設に用いられる。本実施形態では、打設口3aは複数の開口部3bの中から選択される。コンクリートは、高い材料分離抵抗性と充填性を有した流動性の高い中流動コンクリートを用いるとよい。
【0017】
具体的には、型枠3の一方の側壁側用と他方の側壁側用と型枠3の頂部用の打設口3aが、複数の開口部3bの中からに適宜に選択される。つまり、複数の開口部3bの一部が打設口3aとして用いられる。本実施形態では、中央の型枠部材3Dにおける頂部以外に設けられた10箇所の開口部3bと、先行の覆工コンクリートCに隣接する型枠部材3Aにおける頂部の開口部3bとが、打設口3aとして予め選択される。以下において、図2及び図3に示すように、複数の打設口3aのうちの型枠3の一方の側壁側に位置するものを第1打設口群301と呼び、複数の打設口3aのうちの型枠3の他方の側壁側に位置するものを第2打設口群302と呼び、複数の打設口3aのうちの型枠3における頂部に設けられるものを頂部打設口303と呼ぶ。本実施形態では、頂部打設口303は、一つであり、型枠3におけるトンネルの坑口近傍に位置している。なお、本実施形態では、型枠3の一方の側壁側とは、切羽に向かって視た型枠3の右側壁であり、型枠3の他方の側壁側とは、切羽に向かって視た型枠3の左側壁であるものとする。また、頂部打設口303は、複数の打設口3aのうちの最も型枠3の頂部側に設けられていればよく、厳密に型枠3における最も高い部分(つまり頂部)に位置していなくてもよい。
【0018】
貯留容器10は、コンクリートを貯留可能な容器であり、例えば、図2に示すように、上部が開口された箱状に形成されている。貯留容器10の底部には、後述する図4に示すように、コンクリートの出入口としての容器側第1ポート11a及び容器側第2ポート11bが設けられている。
【0019】
コンクリートポンプ20は、貯留容器10内のコンクリートを吸引して吐出する吐出運転を実行可能なポンプである。換言すると、コンクリートポンプ20は、前記吐出運転により、貯留容器10側から後述する主切替装置40側に向かってコンクリートを圧送して導く。本実施形態では、コンクリートポンプ20は、前記吐出運転と吸引運転とを選択的に実行可能に構成されている。コンクリートポンプ20は、前記吸引運転では、前記吐出運転とは逆に、主切替装置40側から貯留容器10側に向かってコンクリートを吸引して導く。なお、コンクリートポンプ20の構造については、後に詳述する。
【0020】
主コンクリート流通路30は、コンクリートの流通路であり、後述する図4に示すように、貯留容器10に接続される一端部31と、主切替装置40に接続される他端部32とを有し、適宜の配管部材を用いて形成されている。特に限定されるものではないが、主コンクリート流通路30におけるコンクリートポンプ20側の部分は、図2及び図3に示すように、貯留容器10とトンネル底面5との間を延びるように敷設されている。
【0021】
第1コンクリート流通路30A及び第2コンクリート流通路30Bは、それぞれ、コンクリートの流通路であり、適宜の配管部材を用いて形成されている。第1コンクリート流通路30Aは、型枠3の一方の側壁側(右側壁側)において型枠3の内面に沿って第1打設口群301を低位側から高位側に順に経由するように延在する。第2コンクリート流通路30Bは、型枠3の他方の側壁側(左側壁側)において型枠3の内面に沿って第2打設口群302を低位側から高位側に順に経由するように延在する。型枠3の内面は型枠3における覆工空間S側の面とは反対側の面であり、型枠3の外面は覆工空間S側の面(換言すると、コンクリートに接する面)である。ここで、コンクリートポンプ20を基準とすると、「低位」は上流側であり、「高位」は下流側である。
【0022】
第1コンクリート流通路30Aの上流側端部である基端部30A1(後述する図4参照)及び第2コンクリート流通路30Bの上流側端部である基端部30B1(後述する図4参照)は、それぞれ主切替装置40に接続されている。以下では、第1打設口群301を構成する各打設口3aや第2打設口群302を構成する各打設口3aのそれぞれを区別する必要がある場合等には、各流通路(30A、30B)における上流側(下方)から5箇所の打設口3aについて、上流側(下)から順に、第1打設口3a1、第2打設口3a2、第3打設口3a3、第4打設口3a4、及び、第5打設口3a5という。また、第1打設口群301を構成する各打設口3aのトンネル底面5からのそれぞれの高さは、第2打設口群302を構成する各打設口3aのトンネル底面5からのそれぞれの高さと一致している。
【0023】
本実施形態では、コンクリート打設装置100は、第1コンクリート流通路30Aの上端部又は第2コンクリート流通路30Bの上端部から頂部打設口303まで延在する頂部コンクリート流通路30Cを更に含む。特に限定されるものではないが、本実施形態では、頂部コンクリート流通路30Cは、第1コンクリート流通路30Aの上端部から延長されている。具体的には、頂部コンクリート流通路30Cは、第1コンクリート流通路30Aの上端部から坑口側に折り返すように屈曲し、第5打設口3a5と頂部打設口303との間を接続している。
【0024】
図4及び図5は主切替装置40及びコンクリートポンプ20についての構造や動作を説明するための概念図である。図5の(a)~(d)では、コンクリートポンプ20の状態の変化の一例が順に示されている。
【0025】
主切替装置40は、主コンクリート流通路30の他端部32の接続先を、第1コンクリート流通路30A(の基端部30A1)と第2コンクリート流通路30B(の基端部30B1)との間で選択的に切り替え可能に構成されている。具体的には、主切替装置40は、例えば、可撓性を有する主切替管41と、図示を省略した保持部とを有する。主切替管41は、主コンクリート流通路30の他端部32に接続された一端部と、第1コンクリート流通路30Aの基端部30A1又は第2コンクリート流通路30Bの基端部30B1に接続可能な他端部と、を有する。主切替装置40の前記保持部は、主切替管41の他端部を第1コンクリート流通路30Aの基端部30A1と第2コンクリート流通路30Bの基端部30B1と間で揺動可能に保持する。
【0026】
コンクリート打設装置100は、図示省略するが、装置全体の動作等を統括して制御する制御部を有している。本実施形態において、主切替装置40は、前記保持部を揺動させる駆動部を更に有している。そして、主切替装置40の前記駆動部の動作は、前記制御部によって制御されている。つまり、主切替装置40は、図4及び図5(a)~図5(d)において実線で示されるように主切替管41の他端部を第1コンクリート流通路30Aの基端部30A1に接続する状態と、図4及び図5(a)~図5(d)において破線で示されるように主切替管41の他端部を第2コンクリート流通路30Bの基端部30B1に接続する状態とに切り替わるように、主切替装置40の前記駆動部の動作が前記制御部によって制御される。
【0027】
本実施形態では、コンクリートポンプ20は、図4に示すように、固定プレート21と、可動プレート22と、コンクリートを吸入すると共に吸入したコンクリートを吐出することが可能なピストンユニット23と、を有する。
【0028】
固定プレート21は、貯留容器10の側壁に相対するように設けられたプレートである。固定プレート21には、長手方向に等間隔のピッチで三つの開口部が形成されている。固定プレート21における貯留容器10側の端面には、前記三つの開口部に対応して、ポンプ側第1ポート21a、ポンプ側第2ポート21b及び中間ポート21cが設けられている。ポンプ側第1ポート21aは容器側第1ポート11aに接続され、ポンプ側第2ポート21bは容器側第2ポート11bに接続され、中間ポート21cは主コンクリート流通路30の一端部(上流側端部)に接続される。中間ポート21cは、ポンプ側第1ポート21aとポンプ側第2ポート21bとの間に位置している。
【0029】
可動プレート22は、固定プレート21における貯留容器10と反対側の端面に沿って長手方向(図4では上下方向)に摺動可能に、固定プレート21に取り付けられたプレートである。可動プレート22の長手方向の(図4では上下方向)長さは、固定プレート21の長手方向の長さより長い。また、可動プレート22には、二つの開口部が固定プレート21の開口部と同じピッチで設けられている。図示を省略するが、コンクリートポンプ20は、可動プレート22を固定プレート21に沿って前記長手方向に摺動させる摺動駆動部を更に有している。そして、コンクリートポンプ20の前記摺動駆動部の動作は、前記制御部によって制御されている。
【0030】
ピストンユニット23は、筒状の第1シリンダー部231と、第1シリンダー部231内を往復移動可能なロッド状の第1ピストン部232と、第1シリンダー部231と並列して設けられる筒状の第2シリンダー部233と、第2シリンダー部233内を往復移動可能なロッド状の第2ピストン部234とを有する。第1シリンダー部231及び第2シリンダー部233は、それぞれ、可動プレート22における固定プレート21と反対側の端面に固定されている。具体的には、第1シリンダー部231の開口端が可動プレート22の一方の開口部に対応する部分に固定され、第2シリンダー部233の開口端が可動プレート22の他方の開口部に対応する部分に固定されている。第1ピストン部232及び第2ピストン部234は、例えば、図示を省略した油圧ユニット(又は圧縮エアユニット)からの油圧(又は圧縮エア)によって、対応するシリンダー(231、233)内を往復移動可能に構成されている。詳しくは、第1ピストン部232の往復移動と第2ピストン部234の往復移動は互いに同期し且つ第1ピストン部232と第2ピストン部234が互いに逆方向に移動するように、油圧ユニット(又は圧縮エアユニット)の動作が前記制御部によって制御されている。
【0031】
次に、コンクリートポンプ20の前記吐出運転と前記吸引運転をそれぞれ詳述する。
【0032】
まず、コンクリートポンプ20の前記吐出運転について、図4及び図5(a)~図5(d)を参照して説明する。ここで、図5(a)(及び図5(d))に示す状態では、第1シリンダー部231がポンプ側第1ポート21aに対応する箇所に位置し、第2シリンダー部233が中間ポート21cに対応する箇所に位置している。この状態で、第1シリンダー部231内の空間は可動プレート22の開口部、固定プレート21の開口部、ポンプ側第1ポート21a、及び、容器側第1ポート11aを経由して貯留容器10の内部空間と連通し、第2シリンダー部233内の空間は可動プレート22の開口部、固定プレート21の開口部、中間ポート21cを経由して主コンクリート流通路30に連通している。そして、図5(a)に示すように、第1ピストン部232が可動プレート22から離れる方向に移動すると共に第2ピストン部234が可動プレート22に近づく方向に移動すると、貯留容器10内のコンクリートが第1シリンダー部231内に吸引(吸入)されると共に第2シリンダー部233内のコンクリートが主切替装置40側に吐出されて圧送される。つまり、コンクリートが貯留容器10側から主切替装置40側に向かって導かれている。その後、可動プレート22は、図5(b)に示すように、第1シリンダー部231を中間ポート21cに一致させ且つ第2シリンダー部233をポンプ側第2ポート21bに一致させるところまで、前記摺動駆動部によって移動される。
【0033】
図5(b)(及び図5(c))に示す状態では、第1シリンダー部231が中間ポート21cに対応する箇所に位置し、第2シリンダー部233がポンプ側第2ポート21bに対応する箇所に位置している。この状態で、第1シリンダー部231内の空間は可動プレート22の開口部、固定プレート21の開口部、中間ポート21cを経由して主コンクリート流通路30に連通し、第2シリンダー部233内の空間は可動プレート22の開口部、固定プレート21の開口部、ポンプ側第2ポート21b、及び、容器側第2ポート11bを経由して貯留容器10の内部空間と連通している。換言すると、本実施形態では、主コンクリート流通路30が容器側第1ポート11aを経由して貯留容器10の内部空間に連通する状態(図5(a)及び図5(d)に示す状態)と、容器側第2ポート11bを経由して貯留容器10の内部空間に連通する状態((図5(b)及び図5(c)に示す状態))とに切り替わるように構成されている。
【0034】
そして、図5(b)に示す状態から、第1ピストン部232が可動プレート22に近づく方向に移動すると共に第2ピストン部234が可動プレート22から離れる方向に移動すると、図5(c)に示すように、第1シリンダー部231内のコンクリートが主切替装置40側に吐出されて圧送されると共に貯留容器10内のコンクリートが第2シリンダー部233内に吸引(吸入)される。その後、可動プレート22は、図5(d)に示すように、第1シリンダー部231をポンプ側第1ポート21aに一致させ且つ第2シリンダー部233を中間ポート21cに一致させるところまで、前記摺動駆動部によって移動される。これにより、図5(a)に示す接続状態に戻る。以後、コンクリートポンプ20は、図5(a)~図5(d)に示す前記動作を繰り返すことにより、貯留容器10側から主切替装置40側に向かってコンクリートを導く前記吐出運転を断続的に実行する。
【0035】
次に、コンクリートポンプ20の前記吸引運転について説明する。前記吸引運転と前記吐出運転との相違は、各接続状態における第1ピストン部232及び第2ピストン部234の移動方向が逆になっているだけである。つまり、前記吸引運転では、図5(a)に示す接続状態において、前記吐出運転とは逆に、第1ピストン部232が可動プレート22に近づく方向に移動すると共に、第2ピストン部234が可動プレート22から離れる方向に移動するように、第1ピストン部232及び第2ピストン部234が油圧ユニット(又は圧縮エアユニット)によって駆動されている。このとき、第1シリンダー部231内のコンクリートが貯留容器10側に吐出されると共に、主切替装置40側からのコンクリートが第2シリンダー部233内に吸引(吸入)される。そして、前記吸引運転では、図5(c)に示す接続状態において、前記吐出運転とは逆に、第1ピストン部232が可動プレート22から離れる方向に移動すると共に、第2ピストン部234が可動プレート22に近づく方向に移動するように、第1ピストン部232及び第2ピストン部234が油圧ユニット(又は圧縮エアユニット)によって駆動されている。このとき、主切替装置40側からのコンクリートが第1シリンダー部231内に吸引(吸入)されると共に、第2シリンダー部233内のコンクリートが貯留容器10側に吐出される。コンクリートポンプ20は、前記動作を繰り返すことにより、主切替装置40側から貯留容器10側に向かってコンクリートを導く前記吸引運転を断続的に実行する。
【0036】
図6は、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bの断面図である。つまり、本実施形態では、第1切替装置50Aと第2切替装置50Bは同一の構造を有している。
【0037】
第1切替装置50Aは、第1コンクリート流通路30Aにおける打設口3aに対応する部分(換言すると、第1打設口群301を構成する各打設口3aに対応する部分)にそれぞれ設けられる。第2切替装置50Bは、第2コンクリート流通路30Bにおける打設口3aに対応する部分(換言すると、第2打設口群302を構成する各打設口3aに対応する部分)にそれぞれ設けられる。
【0038】
具体的には、第1切替装置50Aは、第1コンクリート流通路30Aにおける第1打設口3a1から第5打設口3a5にそれぞれ対応する、型枠3の内周面側の位置にて、この第1コンクリート流通路30Aの途上に介装されている。また、本実施形態では、第1切替装置50Aは、頂部コンクリート流通路30Cにおける頂部打設口303に対応する、型枠3の内周面側の部分にも設けられている。そして、第2切替装置50Bは、第2コンクリート流通路30Bにおける第1打設口3a1から第5打設口3a5にそれぞれ対応する、型枠3の内周面側の位置にて、この第2コンクリート流通路30Bの途上に介装されている。
【0039】
各第1切替装置50Aは、第1コンクリート流通路30Aにおける当該第1切替装置50Aより低位(下方)の流通路(以下では、低位流通路30a1という)の接続先を、対応する打設口3aと第1コンクリート流通路30Aにおける当該第1切替装置50Aより高位(上方)の流通路(以下では、高位流通路30a2という)との間で選択的に切り替え可能に構成されている。同様に、各第2切替装置50Bは、第2コンクリート流通路30Bにおける当該第2切替装置50Bより低位(下方)の流通路(以下では、低位流通路30b1という)の接続先を、対応する打設口3aと第2コンクリート流通路30Bにおける当該第2切替装置50Bより高位(上方)の流通路(以下では、高位流通路30b2という)との間で選択的に切り替え可能に構成されている。
【0040】
そして、各第1切替装置50Aは、対応する打設口3aにこの打設口3aを閉止可能なシャッター部60Aをそれぞれ有する。そして、シャッター部60Aは、打設口3aを低位流通路30a1の接続先を高位流通路30a2に切り替えた状態において閉止するようになっている。同様に、各第2切替装置50Bは、低位流通路30b1の接続先を高位流通路30b2に切り替えた状態において対応する打設口3aを閉止可能なシャッター部60Bをそれぞれ有する。そして、シャッター部60Bは、打設口3aを低位流通路30b1の接続先を高位流通路30b2に切り替えた状態において閉止するようになっている。換言すると、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは、それぞれ対応する打設口3aを覆うように設けられ、自身の内部に流入するコンクリートの供給先を切り替える装置であると共に、対応する打設口3aを開閉する機能を有している。本実施形態では、シャッター部60A、60Bは、それぞれ、後述する回動体51により構成されている。
【0041】
図7及び図8は、それぞれ第1切替装置50A及び第2切替装置50Bの状態を説明するための図であり、図7は後述する第1の状態を示し、図8は後述する第2の状態を示す。図7及び図8において、それぞれ左図(図7(A)及び図8(A))がそれぞれの状態における要部断面図を示し、それぞれ右図(図7(B)及び図8(B))がそれぞれの状態における打設口3aの開閉状態を型枠3の外面3dに正対して視た状態が示されている。なお、図6では第1の状態が示されている。
【0042】
第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは、それぞれ、第1の状態と第2の状態とに切り替わることにより、低位流通路30a1、30b1の接続先(換言すると、自身の内部に流入するコンクリートの供給先)を切り替える。
【0043】
具体的には、第1の状態では、第1切替装置50Aは低位流通路30a1と対応する打設口3a(詳しくは、当該第1切替装置50Aが覆う打設口3a)とを接続すると共に低位流通路30a1と高位流通路30a2との接続を遮断し、第2切替装置50Bは低位流通路30b1と対応する打設口3a(詳しくは、当該第2切替装置50Bが覆う打設口3a)とを接続すると共に低位流通路30b1と高位流通路30b2との接続を遮断する。そして、第1の状態において、第1切替装置50Aは対応する打設口3a及び第2切替装置50Bは対応する打設口3aは覆工空間Sに対して開放されている。また、第2の状態では、第1切替装置50Aは低位流通路30a1と対応する打設口3aとの接続を遮断すると共に低位流通路30a1と高位流通路30a2とを接続し、第2切替装置50Bは低位流通路30b1と対応する打設口3aとの接続を遮断すると共に低位流通路30b1と高位流通路30b2とを接続する。そして、第2の状態において、第1切替装置50Aは対応する打設口3aをシャッター部60Aにより閉止し、第2切替装置50Bは対応する打設口3aをシャッター部60Bにより閉止する(前述の第1の状態においては、第1切替装置50Aのシャッター部60Aは対応する打設口3aを開放し、第2切替装置50Bのシャッター部60Bは対応する打設口3aを開放している)。このように、第1切替装置50A、第2切替装置50Bは、低位流通路30a1、30b1の接続先(自身の内部に流入するコンクリートの供給先)を切り替える機能と、自身が覆う打設口3aを開閉する機能を有する。なお、頂部打設口303に対応する第1切替装置50Aの上方には高位流通路30a2が存在せず、第5打設口3a5に対応する第2切替装置50Bの上方には高位流通路30a2が存在しない。そのため、これらの第1切替装置50A及び第2切替装置50Bにおける前記第2の状態では、低位流通路30a1、30b1は型枠3の内側の空間に開放されることになる。
【0044】
図6に戻って、本実施形態では、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは、それぞれ、回動体51と、ハウジング52と、入口ポート53と、第1出口ポート54と、第2出口ポート55とを含んで構成されている。第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは、例えば、型枠3の内側から対応する打設口3aの開口周縁部に当接した状態で、型枠3の内面側の部分に取り付けられる。
【0045】
回動体51は、回動可能に支持されると共に、コンクリートを流通させる内部通路51aを有する部材である。
【0046】
本実施形態では、回動体51は、トンネル長手方向に延びハウジング52の後述する収容室52a内にて回動可能に支持されると共に、当該回動の軸心Oを中心とする円弧状外周面51bを周面の一部に有する。また、本実施形態では、回動体51は、円弧状外周面51bの両端を結ぶ端面51cを有する。内部通路51aの開口両端は、それぞれ円弧状外周面51bにおける軸心Oを中心した各ポート(53、54、55)間の相対角度に合わせた位置にて開口している。回動体51は、両端が閉止されると共に外周の一部に平坦な端面51cとしての切り欠き面を有する概ね円筒状の中空体として形成されている。図示を省略したが、回動体51の両端には、回動軸がそれぞれ突設されており、この回動軸がハウジング52に設けられる軸受け(図示省略)を介して回動可能に支持される。また、前記回動軸は、さらにハウジング52の端面から突出し、電動モータ等の回転駆動部により回動操作される。この回転駆動部は、例えば、前記回動軸の回転方向を正転・逆転方向に切替可能であると共に、前記第1の状態と前記第2の状態についての回転角度位置で停止可能に構成されている。
【0047】
本実施形態では、端面51cは、前記第2の状態(図8参照)において、型枠3における覆工空間S側の面(換言すると、型枠3の外面3d)と一致する位置に形成されている。型枠3の外面3dは、所定の曲率半径を有した曲面として形成されているが、端面51cの対応する狭い角度範囲で視ると概ね平坦な面であるため、端面51cは、平面状に形成されている。なお、これに限らず、端面51cは、型枠3の外面3dの曲率半径に応じた曲率半径を有する曲面状に形成されていてもよい。
【0048】
本実施形態では、端面51cは、打設口3aの開口形状に合わせて形成されている。各開口部3bは、例えば、トンネル長手方向と平行な辺を有する矩形状に開口され、打設口3aとして選択されていない開口部3bには、シャッター部60A、60Bとは異なる図示省略した前記パネルが取り付けられている。そして、打設口3aは、型枠3の外面3dに正対して視ると、矩形状に開口されている。つまり、本実施形態では、端面51cは、端面51cに正対して視ると、矩形状の打設口3aの開口寸法に合わせた縦横寸法を有する矩形状に形成されている。
【0049】
ハウジング52は、回動体51を収容する収容室52aを内部に有する部材である。ハウジング52は、例えば、第1出口ポート54と一体の部材で形成されている。収容室52aは、円弧状外周面51bの曲率半径に概ね合わせた曲率半径を有する円弧状内周面52a1により囲まれた空間として形成されている。収容室52aの円弧状内周面52a1と回動体51の円弧状外周面51bとの間には僅かな隙間が設けられている。図示省略するが、例えば、収容室52aの円弧状内周面52a1における後述する入口ポート53の取付用の貫通孔の開口周縁部や、第1出口ポート54の内面54aにおける打設口3a側の部位には、前記隙間を埋めるためのシール部材が設けられている。
【0050】
入口ポート53は、一端が低位流通路30a1、30b1に接続され、他端が収容室52aに開口されるものである。低位流通路30a1、30b1を流通したコンクリートは、入口ポート53を介して第1切替装置50A、第2切替装置50B内に流入する。入口ポート53は、例えば、ハウジング52と別部材により形成され、ハウジング52に溶接されている。入口ポート53は、円筒部材からなり、その前記一端に低位流通路30a1、30b1との接続用のフランジ部53aを有する。入口ポート53は、例えば、その流路中心軸X1が回動体51の軸心Oを通ると共に下方に向かうほど型枠3から離れるように、延伸している。入口ポート53の前記他端は、収容室52aの円弧状内周面52a1より僅かに収容室52a内側に突出していると共に、回動体51の円弧状外周面51bの曲面に合わせた形状に加工されている。
【0051】
第1出口ポート54は、一端が収容室52aに開口され他端が打設口3aに接続されるものである。第1切替装置50A(又は第2切替装置50B)内に流入したコンクリートは、第1出口ポート54及び打設口3aを介して覆工空間S内に流出可能である。第1出口ポート54は、例えば、ハウジング52と一体に形成されている。第1出口ポート54の内面54aは、収容室52aの円弧状内周面52a1と連続する面となる。第1出口ポート54は、例えば、その流路中心軸X2が回動体51の軸心Oと入口ポート53の流路中心軸X1との交点を通るように延伸している。第1出口ポート54の他端は型枠3の内面における打設口3aの開口周縁部に当接する当接端面54bを有する。この当接端面54bから回動体51の軸心Oまでの距離は、回動体51の円弧状外周面51bの円弧半径よりも短くなるように設定されている。また、第1出口ポート54の当接端面54bから回動体51の軸心Oまでの距離に型枠3の薄板3eの厚みt(図7及び図8参照)を加えて得た距離は、回動体51の端面51cから回動体51の軸心Oまでの距離と一致している。これにより、端面51cが前記第2の状態(図5参照)において型枠3の外面3dと面一になる。
【0052】
そして、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bにおいて、ハウジング52と一体形成された第1出口ポート54の当接端面54bが打設口3aの開口周縁部に当接している。
【0053】
第2出口ポート55は、一端が収容室52aに開口され他端が高位流通路30a2、30b2に接続されるものである。第1切替装置50A、第2切替装置50B内に流入したコンクリートは、第2出口ポート55を介して高位流通路30a2、30b2に流出可能である。第2出口ポート55は、例えば、ハウジング52と別部材により形成され、ハウジング52に溶接されている。第2出口ポート55は、円筒部材からなり、その前記他端に高位流通路30a2、30b2との接続用のフランジ部55aを有する。第2出口ポート55は、例えば、その流路中心軸X3が回動体51の軸心Oを通ると共に上方に向かうほど型枠3から離れるように、延伸している。また、第2出口ポート55の前記一端は、収容室52aの円弧状内周面52a1より僅かに収容室52a内側に突出していると共に、回動体51の円弧状外周面51bの曲面に合わせた形状に加工されている。
【0054】
入口ポート53の流路中心軸X1と、第1出口ポート54の流路中心軸X2と、第2出口ポート55の流路中心軸X3とは、同一の仮想平面上において、相互に120°の角度を有して交差している。また、回動体51の軸心Oと直交すると共に内部通路51aの一端側の開口の中心とを結ぶ直線と、回動体51の軸心Oと直交すると共に内部通路51aの他端側の開口の中心とを結ぶ直線との間の内角は120°になるように設定されている。回動体51は、前記第1の状態において、その円弧状外周面51bが第1出口ポート54の当接端面54b及び打設口3aを超えて覆工空間S内に位置している。つまり、前記第1の状態(図6及び図7参照)において、内部通路51aの一端部が第1出口ポート54に接続されると共に、内部通路51aの一端部の開口端が、第1出口ポート54及び打設口3aを超えて覆工空間Sに位置している。
【0055】
このようにして、回動体51が回動されて、内部通路51aにより入口ポート53と第1出口ポート54とを接続すると共に、入口ポート53と第2出口ポート55との接続を遮断することにより、前記第1の状態(図6及び図7参照)となり、回動体51が回動されて、入口ポート53と第1出口ポート54との接続を遮断すると共に、入口ポート53と第2出口ポート55とを接続することにより、前記第2の状態(図8参照)となる、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bが構成されている。
【0056】
本実施形態では、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは、前記第2の状態において対応する打設口3aを回動体51の端面51cにより閉止している。つまり、本実施形態では、シャッター部60A、60Bは、それぞれ、回動体51により構成されている。そして、シャッター部60A、60B(回動体51)の端面51cは、打設口3aを閉止した状態(図8参照)で、型枠3における覆工空間S側の面(換言すると、型枠3の外面3d又は覆工面)の一部を構成している。そして、各シャッター部60A、60Bを構成する回動体51は打設口3aに設けられており、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは対応する打設口3aに当該打設口3aを閉止可能なシャッター部60A、60Bをそれぞれ有しているといえる。また、本実施形態では、各シャッター部60A、60Bは、換言すると、回動体51と一体に形成されている。
【0057】
次に、コンクリート打設装置100を用いたコンクリート打設方法を説明する。コンクリート打設方法は、コンクリート打設装置100を用いて覆工空間Sに複数の打設口3aを介してコンクリートを打設する方法である。
【0058】
本実施形態では、コンクリート打設方法は、流通路敷設工程Aと、第1切替装置50Aを用いた第1切替工程Bと、第2切替装置50Bを用いた第2切替工程Cと、トンネル幅方向の側部の領域へ交互にコンクリートを打設する左右打設工程Dと、残留コンクリート受入工程Eと、冠部打設工程Fと、を含む。
【0059】
流通路敷設工程Aは、第1コンクリート流通路30Aと第2コンクリート流通路30Bとを敷設する工程である。本実施形態では、流通路敷設工程Aは、第1コンクリート流通路30Aの上端部から頂部打設口303まで延在する頂部コンクリート流通路30Cを敷設する工程を含む。
【0060】
第1切替工程Bは、第1切替装置50Aを用いて低位流通路30a1の接続先を対応する打設口3aと高位流通路30a2との間で選択的に切り替える工程である。つまり、第1切替工程Bでは、第1切替装置50Aを前記第1の状態(図6及び図7に示す状態)と前記第2の状態(図8に示す状態)とに選択的に切り替える。そして、第1切替工程Bは、シャッター部60Aを用いて、低位流通路30a1の接続先を高位流通路30a2に切り替えた状態(前記第2の状態)において対応する打設口3aを閉止する。
【0061】
第2切替工程Cは、第2切替装置50Bを用いて低位流通路30b1の接続先を対応する打設口3aと高位流通路30b2との間で選択的に切り替える工程である。つまり、第2切替工程Cでは、第2切替装置50Bを前記第1の状態と前記第2の状態とに選択的に切り替える。そして、第2切替工程Cは、シャッター部60Bを用いて、低位流通路30b1の接続先を高位流通路30b2に切り替えた状態(前記第2の状態)において対応する打設口3aを閉止する。
【0062】
各第1切替装置50A及び各第2切替装置50Bは、初期状態において、例えば、全て前記第1の状態(図6及び図7参照)になっている。そして、左右打設工程Dにおいて、最低位の第1切替装置50Aから順に、第1切替装置50Aが前記第1の状態から前記第2の状態(図8参照)に切り替わることによって対応する打設口3aをシャッター部60Aによって閉止し、同様に、最低位の第2切替装置50Bから順に、第2切替装置50Bが前記第1の状態から前記第2の状態に切り替わることによって対応する打設口3aをシャッター部60Bによって閉止する。このように最低位の第1切替装置50Aから順に前記切り替えを行うと共に最低位の第2切替装置50Bから順に前記切り替えを行うことによって、型枠3の両側のそれぞれにおいて、覆工空間Sへのコンクリートの打設に用いる打設口3aが順次高位のものに切り替えられる。そして、第1コンクリート流通路30A及び第2コンクリート流通路30Bのそれぞれにおいて、覆工空間Sに連通し且つコンクリートを覆工空間Sに導くことが可能な部分(つまり、実質的にコンクリートの流通路として機能する部分)が、打設口3aの切り替えの度に、上方に向かって徐々に延長されていくことになる。なお、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bにおける切り替え動作のタイミングについては、後に詳述する。
【0063】
左右打設工程Dは、第1コンクリート流通路30Aを経由した覆工空間Sへのコンクリートの打設と第2コンクリート流通路30Bを経由した覆工空間Sへのコンクリートの打設とを交互に行う工程である。つまり、左右打設工程Dは、第1コンクリート流通路30Aを経由した右打設工程と第2コンクリート流通路30Bを経由した左打設工程とを交互に繰り返し行う。この覆工空間Sへのコンクリートの打設の大半は、この左右打設工程Dにより行われ、残りの部分(トンネル冠部の領域)へのコンクリートの打設は冠部打設工程Fにより行われる。
【0064】
具体的には、左右打設工程Dにおいて、コンクリートポンプ20は前記吐出運転を実行し、コンクリートの打設先の切り替えは主切替装置40を用いて行われる。つまり、右打設工程では、主切替装置40によって主コンクリート流通路30の他端部32を第1コンクリート流通路30Aの基端部30A1に接続し、左打設工程では、主切替装置40によって主コンクリート流通路30の他端部32を第2コンクリート流通路30Bの基端部30B1に接続する。そして、右打設工程において、コンクリートは、一系統の流通路(つまり、第1コンクリート流通路30Aにおける前記実質的に流通路として機能する部分)を経由して覆工空間S内に圧入され、覆工空間S内を吹き上がるように導かれる。左打設工程においても、コンクリートは、一系統の流通路(つまり、第2コンクリート流通路30Bにおける前記実質的に流通路として機能する部分)を経由して覆工空間S内に圧入され、覆工空間S内を吹き上がるように導かれる。
【0065】
本実施形態では、左打設工程及び右打設工程のそれぞれでは、予め定めた所定の回数分の第1ピストン部232及び第2ピストン部234の往復移動を一単位の打設動作として実行する。原則として、コンクリートポンプ20における前記一単位の打設動作が完了したタイミングで、主切替装置40が作動して、コンクリートの打設先の切り替えが行われる。この切り替えのタイミングは、前記制御部により決定される。これにより、左打設工程における前記一単位の打設動作と右打設工程における前記一単位の打設動作とが交互に繰り返し行われる。なお、図示を省略するが、例えば、型枠3の外面3d等の周方向に間隔をあけた複数の箇所に、圧力を検知可能なセンサ又はコンクリートの有無を検知可能なセンサが設けられている。そして、本実施形態では、前記制御部は、例えば、前記一単位の打設動作が完了する前に、コンクリートが前記一単位の打設動作に応じて想定される打設高さより高い位置に達していることを、前記センサからの出力により検知したときには、強制的にコンクリートの打設先を切り替えるように主切替装置40を駆動させるように構成されている。
【0066】
特に限定されるものではないが、本実施形態では、右打設工程が先に開始される。右打設工程において、コンクリートポンプ20は前記吐出運転を実行すると、主コンクリート流通路30、第1コンクリート流通路30Aを経由して、コンクリートが第1打設口3a1に向かって圧送される。そして、圧送されたコンクリートは、最低位の第1切替装置50Aの入口ポート53、内部通路51a、第1出口ポート54及び第1打設口3a1を介して、覆工空間Sのうちの右側の領域内に打設され始める。そして、例えば、右打設工程における前記一単位の打設動作が完了すると、主切替装置40が作動して、右打設工程から左打設工程に切り替わる。
【0067】
最初の左打設工程において、コンクリートポンプ20が前記吐出運転を実行すると、主コンクリート流通路30、第2コンクリート流通路30Bを経由して、コンクリートが第1打設口3a1に向かって圧送される。そして、圧送されたコンクリートは、最低位の第2切替装置50Bの入口ポート53、内部通路51a、第1出口ポート54及び第1打設口3a1を介して、覆工空間Sのうちの右側の領域内に打設され始める。そして、例えば、左打設工程における前記一単位の打設動作が完了すると、主切替装置40が作動して、左打設工程から右打設工程に切り替わる。これを繰り返すことによって、覆工空間S内におけるコンクリートの上面の高さ(打設高さ)が徐々に上昇する。
【0068】
より詳しくは、コンクリートの上昇過程において、例えば、覆工空間Sのうちの右側の領域内のコンクリートが、覆工空間Sのうちの左側の領域内のコンクリートよりも先に、第2打設口3a2に到達する。この第2打設口3a2に対応する第1切替装置50Aは、初期状態のまま、つまり、前記第1の状態であるため、コンクリートは、開放されている第2打設口3a2を経由して第1コンクリート流通路30Aにおける第1打設口3a1と第2打設口3a2との間の部分に流入する。そして、コンクリートが第1コンクリート流通路30Aにおける第1打設口3a1と第2打設口3a2との間の部分の全体に充満すると、その後、覆工空間Sのうちの右側の領域内のコンクリートの上面は第2打設口3a2の開口高さより高い位置まで上昇する。そして、覆工空間Sのうちの右側の領域内のコンクリートが第2打設口3a2の開口高さより高い位置まで打設されたタイミングで、第1打設口3a1に対応する第1切替装置50Aが前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替わる。この切り替えのタイミングは、前記制御部が第2打設口3a2の上方で且つ第2打設口3a2の近傍に設けられた前記センサからの出力に基づいて決定する。その後、例えば、主切替装置40が作動して、右打設工程から左打設工程に切り替わる。
【0069】
そして、左打設工程においても、同様に、コンクリートが第2コンクリート流通路30Bにおける第1打設口3a1と第2打設口3a2との間の部分の全体に充満した後、覆工空間Sのうちの左側の領域内のコンクリートの上面が第2打設口3a2の開口高さより高い位置まで上昇する。そして、覆工空間Sのうちの左側の領域内のコンクリートが第2打設口3a2の開口高さより高い位置まで打設されたタイミングで、第1打設口3a1に対応する第2切替装置50Bが前記制御部によって前記第1の状態から前記第2の状態へ切り替えられる。その後、例えば、主切替装置40が作動して、左打設工程から右打設工程に切り替わる。以後、第2打設口3a2に対応する第1切替装置50A、第2打設口3a2に対応する第2切替装置50B、第3打設口3a3に対応する第1切替装置50A、第3打設口3a3に対応する第2切替装置50B、第4打設口3a4に対応する第1切替装置50A、第4打設口3a4に対応する第2切替装置50B、第5打設口3a5に対応する第1切替装置50A、第5打設口3a5に対応する第2切替装置50Bにおいて、同様にして、前記第1の状態から前記第2の状態に切り替えられる。これにより、覆工空間Sの左右の両側の領域内において、コンクリートが第5打設口3a5よりも高い任意の位置まで到達し、左右打設工程Dが完了する。
【0070】
残留コンクリート受入工程Eは、左右打設工程Dによるコンクリートの打設が完了した状態において、頂部コンクリート流通路30Cが延長されていない第2コンクリート流通路30B内に残留しているコンクリート(残留コンクリート)を逆流させて貯留容器10に受け入れる工程である。つまり、残留コンクリート受入工程Eは、第1コンクリート流通路30A及び第2コンクリート流通路30Bのうちの頂部コンクリート流通路30Cが延長されていない方の流通路(本実施形態では第2コンクリート流通路30B)を経由した覆工空間Sへのコンクリートの最後の打設後に、この流通路(第2コンクリート流通路30B)内の残留コンクリートを逆流させて貯留容器10に受け入れる工程である。
【0071】
残留コンクリート受入工程Eにおいて、主切替装置40は主コンクリート流通路30の他端部32を第2コンクリート流通路30Bの基端部30B1に接続し、全ての第2切替装置50Bは前記第2の状態になっている。この状態で、コンクリートポンプ20が前記吸引運転を実行することにより、第2コンクリート流通路30B内の残留コンクリートが、第2コンクリート流通路30B内を貯留容器10側に向かって逆流して貯留容器10内に受け入れられる。
【0072】
冠部打設工程Fは、第2コンクリート流通路30B内の残留コンクリートを含むコンクリートを覆工空間Sのうちのトンネル冠部の領域へコンクリートを打設する工程である。つまり、冠部打設工程Fは、貯留容器10に受け入れた第2コンクリート流通路30B内の残留コンクリートを含むコンクリートを、第1コンクリート流通路30A及び第2コンクリート流通路30Bのうちの頂部コンクリート流通路30Cが延長されている方の流通路(本実施形態では第1コンクリート流通路30A)と頂部コンクリート流通路30Cを経由して、覆工空間Sのうちのトンネル冠部の領域に打設する工程である。
【0073】
冠部打設工程Fにおいて、主切替装置40は主コンクリート流通路30の他端部32を第1コンクリート流通路30Aの基端部30A1に接続し、頂部打設口303に対応する最高位の第1切替装置50Aは前記第1の状態になっており、第1打設口群301に対応する第1切替装置50Aは前記第2の状態になっている。この状態で、コンクリートポンプ20が前記吐出運転を実行することにより、貯留容器10内に受け入れている前記残留コンクリートを含むコンクリートが主コンクリート流通路30、第1コンクリート流通路30A、頂部コンクリート流通路30C、及び、頂部打設口303を経由してトンネル冠部の領域に打設される。頂部打設口303からのコンクリートはトンネル冠部の領域を坑口側(先行の覆工コンクリートC側)から切羽側に向って一方向に流れ、トンネル冠部の領域内のエアは妻型枠4と吹き付けコンクリート2との間の僅かな隙間から抜ける。これにより、1スパンの覆工空間S全体のコンクリートの打設が完了する。その後、型枠3はガントリー車7によって切羽側に移動され、次の1スパンの覆工空間Sが形成される。
【0074】
なお、冠部打設工程Fの完了後に、頂部打設口303に対応する第1切替装置50Aを前記第2の状態に切り替え、この状態で、コンクリートポンプ20の前記吸引運転を行うことにより、第1コンクリート流通路30A、頂部コンクリート流通路30C及び主コンクリート流通路30に残っている残留コンクリートを貯留容器10に回収することができる。そして、貯留容器10に回収した残留コンクリートは、例えば、同時に進行している他の施工等のコンクリートの打設に有効に利用され得る。
【0075】
かかる本実施形態によるコンクリート打設装置100、及び、コンクリート打設方法によれば、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bにより打設口3aの切り替えが行われたとしても、各第1切替装置50A、各第2切替装置50Bに対する低位流通路30a1、30b1は、そのまま、高位の打設口3aを介し覆工空間Sに連通し且つコンクリートを覆工空間Sに導く前記実質的な流通路として機能することになる。したがって、打設口3aの切り替えの度に低位流通路30a1、30b1内に残るコンクリート(残留コンクリート)は、廃棄されることなく覆工空間Sに導かれて、覆工空間Sへのコンクリートの打設に有効に用いられ得る。
【0076】
このようにして、廃棄コンクリートの量を削減することが可能なコンクリート打設装置100、及び、コンクリート打設方法を提供することができる。
【0077】
また、本実施形態によるコンクリート打設装置100、及び、コンクリート打設方法によれば、打設口3aの切り替えの度に、第1コンクリート流通路30Aや第2コンクリート流通路30B内の清掃作業を行う必要もない。そのため、コンクリートの打設中における作業者の作業負荷は従来よりも低減される。また、清掃作業により中断されることなく、コンクリートを連続的にして打設することができるため、覆工コンクリートの品質を向上させることができる。また、覆工空間Sに下方から上方に向かって順にコンクリートを打設することができるため、コンクリート内へのエアの混入を抑制又は防止することができる。したがって、上方からコンクリートを打設する場合と比較すると、覆工コンクリートの品質をさらに向上させることができる。
【0078】
本実施形態では、コンクリートポンプ20は前記吸引運転を実行可能に構成されている。これにより、頂部コンクリート流通路30Cが延長されていない方の流通路(本実施形態では、第2コンクリート流通路30B)を経由した覆工空間Sへのコンクリートの最後の打設後に、この流通路内の残留コンクリートを、コンクリートポンプ20の前記吸引運転によって、貯留容器10に容易に回収することができる。
【0079】
本実施形態では、頂部コンクリート流通路30Cが第1コンクリート流通路30Aの上端部から頂部打設口303まで延在している。これにより、覆工空間Sのうちのトンネル冠部の領域内へコンクリートを効率的に打設することができる。
【0080】
本実施形態では、頂部打設口303は、型枠3におけるトンネルの坑口近傍に位置している。これにより、トンネル冠部の領域において、坑口側から切羽側に向かうコンクリートの流れを形成することができ、その結果、トンネル冠部の領域内のエアを妻型枠4と吹き付けコンクリート2との間の僅かな隙間から効果的に抜くことができる。
【0081】
本実施形態では、貯留容器10に回収した残留コンクリートを、コンクリートポンプ20の前記吐出運転によって、主コンクリート流通路30、頂部コンクリート流通路30Cが延長されている方の流通路(本実施形態では、第1コンクリート流通路30A)、及び、頂部コンクリート流通路30Cを経由して、覆工空間Sのうちのトンネル冠部の領域に打設することができる。これにより、廃棄コンクリートの量をより効果的に削減することができる。また、本実施形態のように、冠部打設工程Fの完了後に貯留容器10に回収した第1コンクリート流通路30A、頂部コンクリート流通路30C及び主コンクリート流通路30内の残留コンクリートを同時に進行している他の施工等のコンクリートの打設に用いることにより、廃棄コンクリートが概ね無くなる。
【0082】
本実施形態において、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは、前記第1の状態において、内部通路51aの一端部が第1出口ポート54に接続されると共に、内部通路51aの一端部の開口端が、第1出口ポート54及び打設口3aを超えて覆工空間Sに位置している。これにより、コンクリートの覆工空間S内への流れ込みがより確実になされる。また、回動体51における端面51cは、前記第2の状態において、型枠3の外面3d(型枠3における覆工空間S側の面)と一致する位置に形成されている。これにより、覆工コンクリートにおける型枠3の外面3d側の表面の仕上がりを、さらに向上させることができる。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態についてそれぞれ説明したが、本発明は上記各実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形及び変更が可能である。
【0084】
例えば、本実施形態では、頂部コンクリート流通路30Cは、第1コンクリート流通路30Aの上端部から延長しているものとしたが、これに限らず、第2コンクリート流通路30Bの上端部から延長していてもよい。また、第1コンクリート流通路30Aと第2コンクリート流通路30Bのそれぞれの上端部から頂部コンクリート流通路30Cを延長させてもよい。この場合、頂部打設口303を第1コンクリート流通路30A用と第2コンクリート流通路30B用に並列して設けると共に、第2コンクリート流通路30B用の頂部打設口303にも第2切替装置50Bを設ける。これにより、前述した残留コンクリート受入工程E及び冠部打設工程Fを、第1コンクリート流通路30Aと第2コンクリート流通路30Bのいずれの流通路を経由しても実行することができるようになる。つまり、第2コンクリート流通路30B側にも、頂部コンクリート流通路30Cと頂部打設口303とこの頂部打設口303用の第2切替装置50Bとを設ければ、本実施形態とは逆に、第1コンクリート流通路30Aを経由して残留コンクリート受入工程Eを実行し、第2コンクリート流通路30Bを経由して冠部打設工程Fを実行することもできるようになる。
【0085】
また、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは、シャッター部60A、60Bとしての回動体51と、ハウジング52と、入口ポート53と、第1出口ポート54と、第2出口ポート55とを含んで構成されるものとしたが、これに限らない。第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは、前記第1の状態と前記第2の状態とに切り替わり、前記第2の状態において、対応する打設口3aに打設口3aを閉止可能なシャッター部60A、60Bをそれぞれ有していればよい。また、本実施形態では、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bの各シャッター部60A、60Bは、回動体51と一体に形成されているものとしたが、これに限らず、回動体51と別体で形成されていてもよい(つまり、第1切替装置50A及び第2切替装置50Bは、回動体51とは別にシャッター部60A、60Bを有してもよい)。
【0086】
また、第1コンクリート流通路30A及び第2コンクリート流通路30Bはトンネル長手方向の中央の一断面に設けられているが、これに限らず、複数の箇所(例えば断面)で設けられてもよい。第1打設口群301及び第2打設口群302を構成する打設口3aの個数は、5個に限らず、適宜の個数に定めることができる。
【符号の説明】
【0087】
1…トンネルの内周面、3…型枠、3a…打設口、10…貯留容器、20…コンクリートポンプ、30…主コンクリート流通路、31…主コンクリート流通路の一端部、32…主コンクリート流通路の他端部、30A…第1コンクリート流通路、30a1…低位流通路(低位の流通路)、30a2…高位流通路(高位の流通路)、30B…第2コンクリート流通路、30b1…低位流通路(低位の流通路)、30b2…高位流通路(高位の流通路)、30C…頂部コンクリート流通路、40…主切替装置、50A…第1切替装置、50B…第2切替装置、60A…シャッター部、60B…シャッター部、301…第1打設口群、302…第2打設口群、303…頂部打設口、100…コンクリート打設装置、S…覆工空間(空間)
図1
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図8