(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】乳清タンパク質濃縮物、当該濃縮物を含む酸性化乳製品およびそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23C 21/00 20060101AFI20240111BHJP
A23C 9/13 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A23C21/00
A23C9/13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020114243
(22)【出願日】2020-07-01
(62)【分割の表示】P 2017533541の分割
【原出願日】2015-12-22
【審査請求日】2020-07-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2014-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】500185416
【氏名又は名称】ヴァリオ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Valio Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】ピア・オッリカイネン
(72)【発明者】
【氏名】リーッタ・パルタネン
(72)【発明者】
【氏名】サーラ・ライホ
【合議体】
【審判長】加藤 友也
【審判官】磯貝 香苗
【審判官】中村 和正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/087054(WO,A1)
【文献】国際公開第97/05784(WO,A1)
【文献】特開平5-64550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造方法であって、以下:
-総タンパク質の70-90%の乳清タンパク質および10-30%のカゼインを含有する理想的な乳清タンパク質溶液を提供すること;
-溶液のpHをpH6.8-7.5に調整すること;
-pH調整した溶液を88-95℃の温度で1-10分間熱処理して理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
-任意に濃縮物を冷却すること;
-任意に4-8℃の温度で濃縮物を保存すること、
ここで理想的な乳清タンパク質溶液は脱脂乳の精密ろ過透過液の限外ろ過保持液である、
工程を含み、カゼイノマクロペプチドおよび熱形成されたκ-カゼインβ-ラクトグロブリン複合体を含まない理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供する、理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造方法。
【請求項2】
熱処理が90-95℃で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱処理が92℃で5分間実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
溶液のpHがpH6.8-7.3または7-7.5に調整される、請求項1-3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
カゼインの50-80%がβ-カゼインである、請求項1-4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
付加的なカルシウム欠乏処理を含有しない、請求項1-5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
スプーナブル酸性化乳製品の総乳タンパク質含量の減少における、総タンパク質の70-90%の乳清タンパク質および10-30%のカゼインおよび6.8-7.5の範囲のpHを有する、請求項1-6のいずれか一項に記載の方法により製造された理想的な乳清タンパク質濃縮物の使用。
【請求項8】
スプーナブル酸性化乳製品の乳清タンパク質含量の増加における、総タンパク質の70-90%の乳清タンパク質および10-30%のカゼインおよび6.8-7.5の範囲のpHを有する、請求項1-6のいずれか一項に記載の方法により製造された理想的な乳清タンパク質濃縮物の使用。
【請求項9】
理想的な乳清タンパク質濃縮物におけるカゼインの50-80%がβ-カゼインである、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
スプーナブル乳製品がヨーグルトまたはクワルクもしくはクワルク様製品である、請求項7-9のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造方法に関する。本発明はまた、理想的な乳清タンパク質濃縮物および、スプーナブル(spoonable)酸性化乳製品の総乳タンパク質含量を減少させかつ/または乳清タンパク質含量を増加させることにおけるその使用に関する。加えて、本発明は、高乳清タンパク質含量を有するが、減少した総乳タンパク質含量を有するスプーナブル酸性化乳製品の製造方法に関する。本発明はまた、高乳清タンパク質含量を有するが、減少した総乳タンパク質含量を有するスプーナブル酸性化乳製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヨーグルトおよびクワルクなどの、現在商業的に利用可能なスプーナブル酸性化乳製品は、それぞれ乳タンパク質約4%および約7-11%を含有する。加えて、現在商業的に利用可能なスプーナブル酸性化乳製品中の乳清タンパク質の量は、総乳タンパク質含量の約20%であり、牛乳中のカゼインタンパク質と乳清タンパク質の典型的な比に対応する。
【0003】
ヨーグルトは、典型的には、乳の乳酸菌発酵により生産される酸性化乳製品である。ヨーグルトを作るために使用される細菌は、「ヨーグルト培養物(yogurt culture)」として知られる。これらの細菌によるラクトースの発酵は乳酸を生産し、乳タンパク質に作用してヨーグルトにそのテクスチャーおよびその特徴的な風味を与える。
【0004】
クワルクは、乳に酸性化剤を加えることにより低温殺菌された脱脂乳から作られている熟成していないフレッシュチーズである。典型的には、少量のレンネットも加えられる。クワルク中のカゼインタンパク質と乳清タンパク質の比は、約80:20である。クワルクは、滑らかなテクスチャーおよびマイルドな酸味を有する。現在市場にあるクワルク製品は、典型的にはスプーナブルであり、かつテクスチャーはしっかりしている。
【発明の概要】
【0005】
当技術分野で知られた方法を使用して、工業的規模で、親水コロイドの添加無しで約3%以下のタンパク質を含有するスプーナブルヨーグルトなどの減少したタンパク質含量を有するスプーナブル酸性化乳タンパク質製品を製造することは非常に困難であった。
【0006】
特許公報WO2005/041677は、熱処理された乳清タンパク質水溶液が安定剤として使用される、低脂肪スプレッド(spread)を製造するための方法を開示する。
【0007】
かかる酸性化乳製品の商業的需要の増加を実現するために、減少した総乳タンパク質含量と同時に高乳清タンパク質含量を有するスプーナブル酸性化乳タンパク質製品の製造方法が必要とされている。
【0008】
発明の簡単な説明
本発明の対象は、理想的な乳清タンパク質濃縮物を製造するための方法に関する。本発明の別の対象は、理想的な乳清タンパク質濃縮物に関する。
【0009】
本発明の対象は、高乳清タンパク質含量を有するが、減少した総乳タンパク質含量を有するスプーナブル酸性化乳製品を製造するための方法に関する。本発明の別の対象は、高乳清タンパク質含量を有するが、減少した総乳タンパク質含量を有するスプーナブル酸性化乳製品に関する。
【0010】
加えて、本発明の対象は、スプーナブル酸性化乳製品の総タンパク質含量の減少における理想的な乳清タンパク質溶液または理想的な乳清タンパク質濃縮物の使用に関する。本発明は、スプーナブル酸性化乳製品の乳清タンパク質含量の増加における理想的な乳清タンパク質溶液または理想的な乳清タンパク質濃縮物の使用にも関する。
【0011】
本願発明の対象は、独立項に記載されることにより特徴づけられる方法、製品および使用により達成される。本願発明の好ましい実施形態は、従属項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、典型的な商業的に利用可能なクワルクおよびヨーグルト製品並びに実施例3で本発明により生産された対応するものにおける総タンパク質の量および乳清タンパク質の量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明の詳細な説明
当技術分野で知られた方法を使用して、工業的規模で約3%以下のタンパク質を含有するスプーナブルヨーグルト、または約7%未満のタンパク質を含有するクワルク様製品などの減少したタンパク質含量を有するスプーナブル酸性化乳製品を製造することは非常に困難であった。
【0014】
本発明は、総乳タンパク質の約70-90%の乳清タンパク質および約10-30%のカゼインを含有し、かつ6.8-7.5の範囲のpH値を有する理想的な乳清タンパク質溶液が、約88-95℃の温度に約1-10分間加熱され、そしてヨーグルトまたはクワルクなどのスプーナブル酸性化乳製品の通常の/典型的な出発成分と混合された場合、酸性化乳製品の総タンパク質含量は減少した一方で、酸性化乳製品の乳清タンパク質含量は、対応する通常の酸性化乳製品と比較して増加したという知見に基づく。従って、本発明の方法を使用して、現在商業的に利用可能な製品よりも少ないタンパク質を含有するスプーナブル酸性化乳製品が生産され得る。加えて、本発明の方法を使用して、現在商業的に利用可能な製品よりも多い乳清タンパク質を含有するスプーナブル酸性化乳製品が生産され得る。とりわけ、本発明の方法を使用して、製品の総乳タンパク質の少なくとも約30重量%の乳清タンパク質を含有するスプーナブル酸性化乳製品を生産することができる。具体的には、本発明の方法を使用して、最大で約3w-%の乳タンパク質を含有するスプーナブルヨーグルトを生産することができるが、現在商業的に利用可能なヨーグルトは、典型的には少なくとも約4w-%の乳タンパク質を含有する。本発明の方法を使用して、最大で約7w-%の乳タンパク質を含有するクワルクまたはクワルク様製品を生産することができ、現在商業的に利用可能なクワルク製品は典型的には約11-12w-%のタンパク質を含有する。加えて、本発明の方法を使用して、製品の総乳タンパク質の少なくとも約30重量%の乳清タンパク質を含有するヨーグルトおよびクワルクまたはクワルク様製品を生産することができるが、現在商業的に利用可能な製品は、典型的には約20重量%のみの乳清タンパク質を含有する。従って、本発明の方法を使用して、現在商業的に利用可能な酸性化乳製品よりも少なくとも25%少ない乳タンパク質を含有するスプーナブル酸性化乳製品が生産され得る。さらに、本発明の方法を使用して、現在商業的に利用可能な酸性化乳製品よりも少なくとも50%多い乳清タンパク質を含有するスプーナブル酸性化乳製品が生産され得る。本発明の製品の栄養価は、本発明の製品の乳清およびカゼインタンパク質の比が母乳の栄養価に対応するため、特に小児にとって有利である。さらに、理想的な乳清タンパク質溶液並びに理想的な乳清タンパク質濃縮物のアミノ酸組成は、母乳のアミノ酸組成に近い。その上、栄養面での観点から、低タンパク質製品は、3歳未満の乳児に推奨される。加えて、本発明の製品の栄養価は、製品中の乳清タンパク質の高い割合のためにアスリートにとって有利である。
【0015】
乳清は、チーズ製造プロセスの副産物であり、かつ乳清タンパク質濃縮物(WPC)および乳清タンパク質単離物(WPI)にさらに加工され得る。それらは、乾燥物質の割合としてそれらのタンパク質濃度、タンパク質含量の観点で記述されており、それは、それぞれ25から85%および>90%の範囲である。WPCおよびWPIは、チーズおよび乳清の産生の間に2回の熱処理プロセス、化学的修飾およびpH制御に曝されている。これらの熱処理、化学的修飾およびpH制御工程の各々は、乳清タンパク質を損傷/変性させる。そして損傷したタンパク質はろ過され、残っているものは、チーズおよび乳清製造プロセスで残存した狭い範囲の「未変性の」タンパク質である。WPCおよびWPIは、副産物としてカゼイノマクロペプチド(総タンパク質の14-17%)および熱形成されたκ-カゼインβ-ラクトグロブリン複合体を含有する。
【0016】
本発明の理想的な乳清タンパク質濃縮物は、脱脂乳を精密ろ過し、かつ得られた精密ろ過透過液を限外ろ過により濃縮することにより製造された理想的な乳清タンパク質溶液に基づく。従って、理想的な乳清タンパク質溶液は、脱脂乳の精密ろ過透過液の限外ろ過保持液である。脱脂乳の精密ろ過は、典型的には、約2℃から約55℃の温度で実施される。一実施形態では、精密ろ過は、20℃以下の温度で行われる。別の実施形態では、精密ろ過は、2℃から20℃の温度範囲で行われる。さらなる実施形態では、精密ろ過の間の温度は、10℃から14℃の範囲である。ある実施形態では、精密ろ過は、約10℃で実施される。限外ろ過は、典型的には、約5℃から約55℃で行われる。一実施形態では、限外ろ過は、20℃以下の温度で行われる。別の実施形態では、限外ろ過は、2℃から20℃の温度範囲で行われる。さらなる実施形態では、限外ろ過の間の温度は、10℃から14℃の範囲である。ある実施形態では、限外ろ過は、約10℃で実施される。理想的な乳清タンパク質溶液は、総乳タンパク質の約70-90%の乳清タンパク質および約10-30%のカゼインを含有する。好ましくは、理想的な乳清タンパク質溶液は、約80-90%の乳清タンパク質を含有する。理想的な乳清タンパク質溶液は、β-カゼインを含有するが、それは、乳よりもより少ない程度の他のカゼイン単量体を含有する。さらに、それは、カゼイノマクロペプチドおよび熱形成されたκ-カゼインβ-ラクトグロブリン複合体を含まない。それは、痕跡量(trace)の脂肪を含有してもよい。理想的な乳清タンパク質溶液のタンパク質含量は、約4%から約25%の範囲であり得る。理想的な乳清タンパク質溶液は、穏やかな熱処理に曝されているだけであり、従って、タンパク質は、本質的にネイティブである。理想的な乳清タンパク質溶液における総乳タンパク質のカゼイン含量は、約10-30%であり、その約50-80%は、β-カゼインである。ある実施形態では、β-カゼインの含量は、総乳タンパク質の約5-30%である。ある実施形態では、理想的な乳清タンパク質溶液のタンパク質含量は、約9%である。一実施形態では、理想的な乳清タンパク質溶液におけるβ-カゼインの含量は、総タンパク質に基づいて約20%である。理想的な乳清タンパク質溶液のラクトース含量は、必要に応じて減少し得る。ラクトース除去は、例えば当技術分野で知られた方法で達成され得る。理想的な乳清タンパク質溶液は、カゼイノマクロペプチド画分が理想的な乳清タンパク質溶液において存在しないため、チーズ乳清から製造されたWPCまたはWPIよりも総乳清タンパク質において、よりα-ラクトアルブミン(α-LA)およびβ-ラクトグロブリン(β-LG)を含有する。加えて、理想的な乳清タンパク質溶液のアミノ酸組成は母乳のアミノ酸組成に似ている。
【0017】
理想的な乳清タンパク質濃縮物は、総乳タンパク質の約70-90%の乳清タンパク質および約10-30%のカゼインを含有する。好ましくは、理想的な乳清タンパク質濃縮物は、約80-90%の乳清タンパク質を含有する。理想的な乳清タンパク質濃縮物は、β-カゼインを含有するが、それは、乳よりもより少ない程度他のカゼイン単量体を含有する。さらに、それは、カゼイノマクロペプチドおよび熱形成されたκ-カゼインβ-ラクトグロブリン複合体を含まない。理想的な乳清タンパク質濃縮物は、WPCまたはWPIに基づく濃縮物よりも総乳清タンパク質において、よりα-ラクトアルブミン(α-LA)およびβ-ラクトグロブリン(β-LG)を含有する。理想的な乳清タンパク質濃縮物における総乳タンパク質のカゼイン含量は、約10-30%であり、その約50-80%は、β-カゼインである。ある実施形態では、β-カゼインの含量は、総乳タンパク質の約5-30%である。理想的な乳清タンパク質濃縮物のタンパク質含量は、約4%から約25%の範囲であり得る。一実施形態では、理想的な乳清タンパク質濃縮物は、タンパク質8.5-9.2%であり、その6.4-7.6%は乳清タンパク質であり、かつ1.1-2.7%カゼイン(その約50-80%は、β-カゼインである)、ラクトース2.4-3.0%、灰分0.48-1.14%、乾燥物11.8-12.7%、ナトリウム260-310mg/kg、カリウム1100-300mg/kg、カルシウム500-580mg/kg、マグネシウム90-110mg/kg、塩素320-460mg/kg、リン370-460mg/kgを含有する。一実施形態では、理想的な乳清タンパク質濃縮物は、タンパク質8.8%であり、その6.9%は、乳清タンパク質であり、かつ1.7%カゼイン、ラクトース2.7%、灰分0.54%、乾燥物12.1%、ナトリウム300mg/kg、カリウム1250mg/kg、カルシウム560mg/kg、マグネシウム100mg/kg、塩素410mg/kg、リン430mg/kgを含有する。一実施形態では、理想的な乳清タンパク質濃縮物は、例えばイオン交換などの付加的なカルシウム欠乏処理(additional calcium depletion treatment)に供されない。
【0018】
理想的な乳清タンパク質濃縮物は、粉末形態でまたは液体として本発明の方法において使用され得る。一実施形態では、理想的な乳清タンパク質濃縮物は、液体形態で使用される。乳清タンパク質の機能的な特性は、理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造プロセスにおいて乾燥工程が存在しない場合に、より良好に維持される。
【0019】
従って、本発明は、以下の工程を含む理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造方法に関する:
総タンパク質の約70-90%の乳清タンパク質および約10-30%のカゼインを含有する理想的な乳清タンパク質溶液を提供すること;
溶液のpHをpH6.8-7.5に調整すること;
溶液を88-95℃の温度で1-10分間熱処理して、理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
約4-45℃の温度まで濃縮物を任意に冷却すること;
濃縮物を約4-8℃の温度で任意に保存すること。
【0020】
理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造方法では、pHは、6.8-7.5の範囲に調整される。一実施形態では、理想的な乳清タンパク質濃縮物のpHは、6.8-7.3の範囲に調整される。一実施形態では、理想的な乳清タンパク質濃縮物のpHは、7-7.5の範囲に調整される。本発明では、pHを乳清タンパク質の等電点以上の値に調整して、それらを可溶性に保つことは重要である。
【0021】
本発明の理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造方法では、理想的な乳清タンパク質溶液を熱処理する工程は、88-95℃の温度で1-10分間行われる。一実施形態では、熱処理は、90-95℃の温度で行われる。一実施形態では、熱処理は、約92℃の温度で5分間行われる。理想的な乳清タンパク質溶液を熱処理する工程では、乳清タンパク質は、変性している。熱処理する工程の間の熱/熱負荷が高すぎる場合、乳清タンパク質はまた凝集物を形成する。従って、本発明では、熱処理の結果として、乳清タンパク質が変性するが、凝集物を形成しないことは重要である。
【0022】
理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造方法の一実施形態では、理想的な乳清タンパク質濃縮物を冷却する工程では、濃縮物は、4℃から45℃の温度まで冷却される。一実施形態では、理想的な乳清濃縮物は、4-8℃の温度まで冷却される。
【0023】
理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造方法は、熱処理工程前に理想的な乳清溶液を希釈することなどの付加的なプロセス工程をさらに含んでもよい。一実施形態では、希釈は、水、UF透過液、タンパク質を含まない成分(protein free ingredient)、ラクトース濃縮物、RO保持液および/またはRO透過液で理想的な乳清溶液を混合することにより行われる。理想的な乳清タンパク質濃縮物の製造方法はまた、濃縮物の保存前に溶液のpHを約6.7-6.8のpHに戻すよう調整する付加的な工程を含んでもよい。
【0024】
本発明の理想的な乳清タンパク質濃縮物のpHは、6.8-7.5の範囲であり、ならびに総タンパク質の約70-90%は乳清タンパク質であり、かつ約10-30%は、カゼインタンパク質である。一実施形態では、カゼインの約50-80%は、β-カゼインである。一実施形態では、本発明の理想的な乳清タンパク質濃縮物のpHは、6.8-7.5の範囲である。一実施形態では、本発明の理想的な乳清タンパク質濃縮物のpHは、6.8-7.3の範囲である。一実施形態では、本発明の理想的な乳清タンパク質濃縮物のpHは、7-7.5の範囲である。一実施形態では、総タンパク質の約80-90%は、乳清タンパク質である。一実施形態では、約20-30%は、カゼインタンパク質である。一実施形態では、濃縮物の乳タンパク質含量は、約8-11w-%である。別の実施形態では、濃縮物の乳タンパク質含量は、約9w-%である。
【0025】
本発明は、スプーナブル酸性化乳タンパク質製品の製造方法にも関し、以下の工程を含む:
スプーナブル酸性化乳製品について典型的な出発成分を提供すること;
該成分を熱処理すること;
pH6.8-7.5を有する理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
熱処理された成分および理想的な乳清タンパク質濃縮物を組み合わせ/混合すること、ならびに;
混合物を酸性化して、約4.0から約4.8の範囲のpHを有するスプーナブル酸性化乳製品を提供すること。
【0026】
当該方法はまた、酸性化製品を冷却し、かつ/もしくは製品をパッキングし、またはあるいは酸性化工程および/もしくは製品を冷却する前に混合物をパッキングする、付加的な任意の工程を含んでもよい。
【0027】
加えて、本発明は、以下の工程を含むスプーナブル酸性化乳タンパク質製品の製造方法に関する:
総タンパク質の約70-90%の乳清タンパク質を有する理想的な乳清タンパク質溶液を提供すること;
溶液のpHをpH6.8-7.5に調整すること;
溶液を88-95℃の温度で1-10分間熱処理して、理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
濃縮物を任意に冷却すること;
スプーナブル酸性化乳製品について典型的な出発成分を提供すること;
出発成分を熱処理すること;
理想的な乳清タンパク質濃縮物および熱処理された成分を組み合わせ/混合すること;
混合物を酸性化して、約4.0から約4.8の範囲のpHを有するスプーナブル酸性化乳製品を提供すること;
酸性化製品を任意に冷却すること
製品を任意にパッキングすること。
【0028】
スプーナブル酸性化乳タンパク質製品の製造方法の一実施形態では、理想的な乳清タンパク質濃縮物を冷却する工程では、濃縮物は、4℃から45℃の温度まで冷却される。スプーナブル酸性化乳タンパク質製品の製造方法の一実施形態では、酸性化乳製品を冷却する工程では、製品は、4℃から45℃の温度まで冷却される。
【0029】
本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、約4.0から約4.8の範囲のpH値を有する。一実施形態では、本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、約4.5から約4.8の範囲のpH値を有する。一実施形態では、本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、約4.0から約4.5の範囲のpH値を有する。本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、約300から約12000mPasの範囲で粘性を有する。一実施形態では、本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、約300から約2000mPasの範囲で粘性を有する。一実施形態では、本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、約5000から約12000mPasの範囲で粘性を有する。一実施形態では、粘性は、ずり速度50、1/sで決定される。
【0030】
スプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、例えばヨーグルト、クワルクおよびクワルク様製品から選択され得る。
【0031】
本願発明の一実施形態では、スプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、ヨーグルトである。この実施形態では、本発明は、以下の工程を含むスプーナブルヨーグルトを製造するための方法に関する:
ヨーグルトの出発成分を提供すること;
出発成分を熱処理すること;
pH6.8-7.5を有する理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
理想的な乳清タンパク質濃縮物および熱処理された成分を組み合わせ/混合すること;
混合物を酸性化して、ヨーグルトを提供すること;
ヨーグルトを任意に冷却すること;
ヨーグルトを任意にパッキングすること。
【0032】
この実施形態では、本発明は、以下の工程を含むスプーナブルヨーグルトを製造するための方法にも関する:
総タンパク質の約70-90%の乳清タンパク質を有する理想的な乳清タンパク質溶液を提供すること;
溶液のpHをpH6.8-7.5に調整すること;
溶液を88-95℃の温度で1-10分間熱処理して、理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
濃縮物を任意に冷却すること;
ヨーグルトについて典型的な出発成分を提供すること;
出発成分を熱処理すること;
理想的な乳清タンパク質濃縮物および熱処理された成分を組み合わせ/混合すること;
混合物を酸性化して、ヨーグルトを提供すること;
ヨーグルトを任意に冷却すること;
ヨーグルトを任意にパッキングすること。
【0033】
ヨーグルトは、攪拌ヨーグルト(stirred yogurt)またはセット型のヨーグルト(set-type yogurt)であってもよい。従って、他の実施形態では、スプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、セット型のヨーグルトである。この実施形態では、当該方法は、以下の工程を含む:
ヨーグルトについての出発成分を提供すること;
出発成分を熱処理すること;
pH6.8-7.5を有する理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
理想的な乳清タンパク質濃縮物および熱処理された成分を組み合わせ/混合すること;
酸性化剤と混合物をパッキングすること
混合物を酸性化して、パッケージ中でヨーグルトを提供すること;
ヨーグルトを任意に冷却すること。
【0034】
この他の実施形態では、スプーナブルヨーグルトを製造するための方法は、以下の工程を含んでもよい:
総タンパク質の約70-90%の乳清タンパク質を有する理想的な乳清タンパク質溶液を提供すること;
溶液のpHをpH6.8-7.5に調整すること;
溶液を88-95℃の温度で1-10分間熱処理して、理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
濃縮物を任意に冷却すること;
ヨーグルトについて典型的な出発成分を提供すること;
出発成分を熱処理すること;
理想的な乳清タンパク質濃縮物および熱処理された成分を組み合わせ/混合すること;
酸性化剤と混合物をパッキングすること;
混合物を酸性化して、パッケージ中でヨーグルトを提供すること;
ヨーグルトを任意に冷却すること。
【0035】
本願発明の一実施形態では、スプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、クワルクまたはクワルク様製品である。本発明では、“クワルク”という用語はまた、トボログ(tvorog)およびスキール(skyr)も指す。本発明では、クワルク様製品という用語は、クワルクと同じ粘性を有するが、法令上クワルクとして分類されていない酸性化乳タンパク質製品を指す。一実施形態では、本発明は、以下の工程を含むクワルクまたはクワルク様製品を製造するための方法に関する:
クワルクまたはクワルク様製品について典型的な出発成分を提供すること;
出発成分を熱処理すること;
pH6.8-7.5を有する理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
理想的な乳清タンパク質濃縮物および熱処理された成分を組み合わせ/混合すること;
任意にレンネットおよび/またはキモシンで処理すること;
混合物を酸性化して、クワルクまたはクワルク様製品を提供すること;
クワルクまたはクワルク様製品を任意に冷却すること;
クワルクまたはクワルク様製品を任意にパッキングすること。
【0036】
レンネットおよび/またはキモシンで処理する工程では、レンネットおよび/またはキモシンの添加は、酸性化工程の前に、後にまたは同時に行われてもよい。
【0037】
この実施形態では、本発明は、クワルクまたはクワルク様製品を製造するための方法にも関し、以下の工程を含む:
総タンパク質の約70-90%の乳清タンパク質を有する理想的な乳清タンパク質溶液を提供すること;
溶液のpHをpH6.8-7.5に調整すること;
溶液を88-95℃の温度で1-10分間熱処理して、理想的な乳清タンパク質濃縮物を提供すること;
濃縮物を任意に冷却すること;
クワルクまたはクワルク様製品について典型的な出発成分を提供すること;
出発成分を熱処理すること;
乳清タンパク質濃縮物および熱処理された成分を組み合わせ/混合すること;
混合物を酸性化して、クワルクまたはクワルク様製品を提供すること;
クワルクまたはクワルク様製品を任意に冷却すること;
クワルクまたはクワルク様製品を任意にパッキングすること。
【0038】
一実施形態では、スプーナブル酸性化乳製品の製造方法は、例えばゼラチン、デンプン、ローカストビーンガム(locust bean gum)、カラギーナン、グアーガム、ペクチンなどの親水コロイドの添加を含まない。
【0039】
ヨーグルト製造についての通常の、および/または典型的な出発成分は、脱脂乳および任意にクリーム、植物油、水および他の乳ベースの成分を含む。クワルク製造についての通常の、および/または典型的な出発成分は、脱脂乳および任意にクリーム、植物油、水および他の乳ベースの成分を含む。ヨーグルトおよびクワルク製造についての通常の、および/または典型的な出発成分は、当業者に知られている。
【0040】
本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品の製造方法では、理想的な乳清タンパク質溶液を熱処理する工程は、88-95℃の温度で1-10分間行われる。一実施形態では、熱処理は、90-95℃の温度で行われる。一実施形態では、熱処理は、約92℃の温度で5分間行われる。本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品の製造方法では、典型的な出発成分を熱処理する工程は、当技術分野で知られた様式で行われる。本願発明のプロセスに有用な熱処理プロセスの例は、低温殺菌(pasteurization)、高温殺菌(high pasteurization)、十分に長い時間低温殺菌温度よりも低い温度で加熱すること、サーミゼーション(thermisation)、すなわち約57から68℃で少なくとも15秒間加熱すること、UHT、HT、およびESL処理である。UHTでは、原料は、約135から140℃で2から4秒間加熱される。HT(「短UHT処理」)は、公開された特許出願WO2010085957に記載されている。ESLでは、原料は、約127から135℃で2秒未満加熱される。低温殺菌では、原料は、約70から72℃で少なくとも15秒間加熱され、高温殺菌では、原料は、約95℃で少なくとも5分間加熱される。熱処理はまた、種々の技術の組み合わせであってもよい。
【0041】
本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品の製造方法では、酸性化する工程は、レンネット有り無しで、各製品タイプ(例えばバルクスターターまたはダイレクトバットスターター(direct to vat starter)DVI/DVS)に特異的な生物学的なスターター、化学的スターター、または有機酸または無機酸を加えることにより行われてもよい。例えば、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)およびストレプトコッカス・サーモフィラス(Streptococcus thermophiles)株は、ヨーグルト産生において通常使用されている。適した有機酸の例は、グルコノ-デルタ-ラクトン(GDL)、乳酸カルシウム、クエン酸、および乳酸を含む。使用される酸は、好ましくはグルコノ-デルタ-ラクトンである。
【0042】
本願発明のプロセスにより製造された酸性化乳製品は、製品をパッケージする前にタンク内、または消費者または食品事業パッケージにおいてパッケージした直後のいずれかで酸性化され得る。
【0043】
本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品の製造方法は、製造される製品に特異的な均質化、分離、風味付け、冷却、パッケージングおよび/または製品の回収率などの付加的なプロセス工程をさらに含んでもよい。均質化は、通常1または2相ホモジナイザーのいずれかを使用することにより行われ、かつ典型的な均質化条件は、55から80℃、より典型的には65から70℃の温度であり、かつ100から500バール、より典型的には150から200バールの圧力である。
【0044】
本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、現在商業的に利用可能なスプーナブル酸性化製品よりも少ないタンパク質を含有する。本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、現在商業的に利用可能な製品よりも多い乳清タンパク質を含有する。一実施形態では、本発明のスプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、製品中で総乳タンパク質の少なくとも約30重量%の乳清タンパク質を含有する。一実施形態では、スプーナブル酸性化乳タンパク質製品は、製品中で総乳タンパク質の少なくとも約50重量%の乳清タンパク質を含有する。一実施形態では、製品は、製品中で総乳タンパク質の約50-80重量%の乳清タンパク質を含有する。別の実施形態では、製品は、製品中で総乳タンパク質の約65-70重量%の乳清タンパク質を含有する。さらに、本発明のヨーグルトは、最大で約3w-%の乳タンパク質を含有し、かつクワルクまたはクワルク様製品は、最大で約7w-%の乳タンパク質を含有するが、現在商業的に利用可能なヨーグルトおよびクワルク製品は、典型的にはそれぞれ少なくとも約4w-%および約11-12w-%の乳タンパク質を含有する。一実施形態では、本発明のスプーナブル酸性化製品は、現在商業的に利用可能な酸性化乳製品よりも少なくとも25%少ない乳タンパク質を含有する。さらに、本発明の製品は、現在商業的に利用可能な酸性化乳製品よりも少なくとも50%多い乳清タンパク質を含有する。本発明の製品の栄養価は、本発明の製品の乳清およびカゼインタンパク質の比が母乳の栄養価に対応するため、特に小児にとって有利である。さらに、本発明の製品のアミノ酸組成は、母乳のアミノ酸組成に近い。
【0045】
本発明の製品のテクスチャーは、かたく、かつ粘性がある。これは主に、その後の酸性化工程におけるpHの低下の間にゲル様の粘性のあるテクスチャーを形成する別個に熱処理された乳清タンパク質の挙動のためである。
【0046】
一実施形態では、スプーナブル酸性化乳製品は、例えばゼラチン、デンプン、ローカストビーンガム(locust bean gum)、カラギーナン、グアーガム、ペクチンなどの親水コロイドを含まない。
【0047】
本発明はまた、スプーナブル酸性化乳製品の総タンパク質含量の減少における理想的な乳清タンパク質溶液または理想的な乳清タンパク質濃縮物の使用に関する。本発明はまた、スプーナブル酸性化乳製品の乳清タンパク質含量の増加における理想的な乳清タンパク質溶液または理想的な乳清タンパク質濃縮物の使用に関する。
【実施例】
【0048】
以下の実施例は、本願発明をそれに対して限定するものではないが、本願発明をさらに説明するために与えられる。
【実施例1】
【0049】
実施例1-理想的な乳清タンパク質溶液の製造
脱脂乳は、10℃で800kDaのポリマー(polymeric)精密ろ過膜(Synder FR-3A-6338)で精密ろ過された。精密ろ過は、精密ろ過保持液として理想的なカゼイン溶液を提供するために16.5の濃縮係数で行われた。精密ろ過より得られた精密ろ過透過液は、限外ろ過保持液として理想的な乳清溶液を提供するために、10kDaの限外ろ過膜(Koch HFK-131 6438-VYT)でかつ10℃で36の濃縮係数で、限外ろ過により濃縮された。理想的な乳清溶液のタンパク質含量は9%であった。β-カゼイン含量は、総タンパク質に基づいて約20%である。
【実施例2】
【0050】
実施例2-乳児用ヨーグルトの製造
乳児用ヨーグルトは、ヨーグルト乳と理想的な乳清タンパク質溶液の別個の低温殺菌により作製された。最終的な組成は、以下に示される:
【表1】
【0051】
理想的な乳清タンパク質溶液は水と混合され、92℃で5分間の低温殺菌前にpHは20%KOHでpH7.3に調整された。全ての他の成分は、配合1で混合され、Ystralミキサーで予め均質化され、60℃に予め加熱され、400バールで均質化されかつ92℃で5分間低温殺菌された。低温殺菌された乳清タンパク質濃縮物は、ヨーグルト乳と混合し、pHが4.55になるまで42℃で約5時間発酵させた。ヨーグルトは手で混合され、その後冷却された。全ての成分が共に混合され、低温殺菌された参照試料が作られた。
【0052】
ヨーグルトの粘性および乳清オフ挙動(wheying off behavior)が決定された。本願発明の方法によりを生産されたものは、攪拌ヨーグルトに典型的な構造を有するが、一方で参照ヨーグルトは非常に流動的であった。本願発明の方法により生産されたヨーグルトの総タンパク質含量は3.3%であり、その50%は乳清タンパク質であった。
【表2】
【実施例3】
【0053】
実施例3 クリーム状のヨーグルトの製造
クリーム状のヨーグルトは、ヨーグルト乳と理想的な乳清タンパク質溶液の別個の低温殺菌により作製された。乳清タンパク質濃縮物のない参照が作られた:
【表3】
【0054】
理想的な乳清タンパク質溶液は水と混合され、および9℃で5分間の低温殺菌前にpHは20%KOHでpH7.3に調整された。全ての他の成分は混合され、60℃に予め加熱され、400バールで均質化され、かつ92℃で5分間低温殺菌された。低温殺菌された乳清タンパク質濃縮物は、ヨーグルト乳と混合し、pHが4.6になるまで42℃で約5時間発酵させた。ヨーグルトは手で混合され、その後冷却された。全ての成分が共に混合され、低温殺菌された参照試料が作られた。
【0055】
ヨーグルトの粘性および乳清オフ挙動が決定された。本願発明の方法により生産されたヨーグルトは、非常に粘性があり、参照と比較して少ない滴定酸を含有していた。本願発明の方法により生産されたヨーグルトの総タンパク質含量は5%であり、その30%は乳清タンパク質であった。
【表4】
実施例4-クワルク様製品
【0056】
正常なクワルクよりも低いタンパク質含量を有するが、良好な乳清タンパク質のより高いシェアを有し、活発に運動する人に適しているクワルク様製品は、以下の通り製造された。
【0057】
少なくとも8%の総タンパク質濃度を有する理想的な乳清タンパク質溶液は、90℃で5分間熱処理された。熱処理後、乳清を低温殺菌された乳(f.ex.0-3.5%脂肪)と混合して約30-35%カゼインおよび65-70%乳清タンパク質の混合物を得た。総タンパク質含量は約6.7%であった。
【0058】
混合物を42℃まで加熱し、pH4.55-4.6に達するまで4.5-5時間発酵させた。
【0059】
ゲル化した製品は手により、またはキッチンミキサー(Pamix)を使用して混合され、周囲温度まで冷却された。混合された製品は80バールで均質化され、11700mPasの粘性を有する滑らかなベルベット様のテクスチャーが得られた。
【0060】
製品は、製品に適したジャムまたはフルーツ/ベリー調製物を混合することにより風味付けされた。加えられた量は約12-15%であった。
【0061】
カゼインおよび乳清タンパク質の割合は、正常なカゼイン/乳清タンパク質比(80/20)の通常の乳でできている市販の高タンパク質ヨーグルト(総タンパク質7%)および高タンパク質クワルク(総タンパク質11%)のものと比較された。結果は、
図1に示される。
【0062】
この型の製品は、多くのタンパク質を必要とするが、少ないカロリーを必要とする運動する人に理想的である。
【0063】
技術が進歩するにつれて、本願発明の概念が様々な方法で実施され得ることは当業者に明らかであろう。本願発明およびその実施形態は上述された例に限定されないが、特許請求の範囲内で変化し得る。