(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】4軸スワップキャリア
(51)【国際特許分類】
B60P 1/02 20060101AFI20240111BHJP
B60D 1/04 20060101ALI20240111BHJP
B60R 3/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B60P1/02 A
B60D1/04 Z
B60R3/00
(21)【出願番号】P 2020126938
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000229357
【氏名又は名称】日本トレクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 文晃
(72)【発明者】
【氏名】松田 昌万
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-24431(JP,A)
【文献】特開昭61-12413(JP,A)
【文献】米国特許第4850786(US,A)
【文献】実開平6-8165(JP,U)
【文献】特開2011-213383(JP,A)
【文献】実開平2-53510(JP,U)
【文献】特開2006-306338(JP,A)
【文献】特開2004-322698(JP,A)
【文献】米国特許第4875811(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/02
B60D 1/04
B60R 3/00- 3/04
B60R 19/56
B62D 33/00
B62D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席が設けられた本体と、
前記本体から後方に向かって延在し、支持脚によって自立可能なボディが脱着可能に搭載されるシャーシと、
前記ボディが搭載される前記シャーシの上面の地上高を変更可能なエアサスペンションと、
前記シャーシの後端に設けられ、フルトレーラを連結可能な連結器と、
前記シャーシの後端に設けられ、前記シャーシに搭載されている前記ボディに乗り降りするためのステップと、
前記ステップに埋設されている灯火器と、を有し、
前記連結器は、前記シャーシの幅方向中央に配置されており、
前記ステップは、前記連結器の下方において前記シャーシの幅方向に延在しており、
前記ステップの長手方向両端に、前記灯火器がそれぞれ埋設されている、4軸スワップキャリア。
【請求項2】
前記エアサスペンションにより、
前記地上高を950mm以下、かつ、1075mm以上に変更可能である、請求項1に記載の4軸スワップキャリア。
【請求項3】
前記ステップの上面は、前記シャーシの下面と同一または前記シャーシの下面よりも低い位置に配置されている、請求項
1又は請求項2に記載の4軸スワップキャリア。
【請求項4】
前記シャーシの後端に設けられ、電気ケーブルが接続される電気コネクタと、
前記シャーシの後端に設けられ、ブレーキホースが接続されるエアプラグと、をさらに有し、
前記電気コネクタ及び前記エアプラグは、前記シャーシの幅方向において、前記連結器と前記ステップの長手方向一端に埋設されている前記灯火器との間の領域に配置されている、請求項
1~請求項3のいずれかに記載の4軸スワップキャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台を脱着可能な貨物用車両に関し、特に、4軸スワップキャリアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な貨物用車両は、車体(キャリア)と荷台(ボディ)とが固定された一体構造を有している。ところが、近年、キャリアとボディとを分離可能とした貨物用車両が使用されるようになった。そのような貨物用車両の一例として“スワップボディコンテナ車両”と呼ばれる貨物用車両がある。スワップボディコンテナ車両は、キャリア(一般的なキャリアと区別するために「スワップキャリア」と呼ばれることがある。)に装備されているエアサスペンションを利用してキャリアにボディ(コンテナ)を脱着可能とした貨物用車両である。特許文献1には、スワップボディコンテナ車両を構成し得るボディの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャリアとボディとを分離可能な貨物用車両は、荷役分離によるドライバーの負担軽減や物流センターの稼動効率向上等を実現する手段として注目されており、全国的な普及が求められている。かかる要求に応えるためには、ボディが搭載されるキャリアの用途を拡大したり、利便性を向上させたりする必要がある。
【0005】
本発明の目的は、4軸スワップキャリアの用途拡大や利便性向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の4軸スワップキャリアは、運転席が設けられた本体と、前記本体から後方に向かって延在し、支持脚によって自立可能なボディが脱着可能に搭載されるシャーシと、地上高を変更可能なエアサスペンションと、前記シャーシの後端に設けられ、フルトレーラを連結可能な連結器と、を有する。
【0007】
本発明の一態様では、前記エアサスペンションにより、地上高を950mm以下、かつ、1075mm以上に変更可能である。
【0008】
本発明の他の一態様では、前記シャーシに搭載されている前記ボディに乗り降りするためのステップが前記シャーシの後端に設けられ、灯火器が前記ステップに埋設される。
【0009】
本発明の他の一態様では、前記連結器は、前記シャーシの幅方向中央に配置され、前記ステップは、前記連結器の下方において前記シャーシの幅方向に延在し、前記ステップの長手方向両端に、前記灯火器がそれぞれ埋設される。
【0010】
本発明の他の一態様では、前記ステップの上面は、前記シャーシの下面と同一または前記シャーシの下面よりも低い位置に配置される。
【0011】
本発明の他の一態様では、前記シャーシの後端に設けられ、電気ケーブルが接続される電気コネクタと、前記シャーシの後端に設けられ、ブレーキホースが接続されるエアプラグと、が設けられる。そして、前記電気コネクタ及び前記エアプラグは、前記シャーシの幅方向において、前記連結器と前記ステップの長手方向一端に埋設されている前記灯火器との間に配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、4軸スワップキャリアの用途拡大や利便性向上が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(A)は4軸スワップキャリアの左側面図、(B)は背面図である。
【
図2】ボディ及びボディの下にシャーシが差し入れられた4軸スワップキャリアの左側面図である。
【
図3】4軸スワップキャリア及び当該キャリアに搭載されたボディの左側面図である。
【
図4】(A)はシャーシの後端及びその近傍の左側面図、(B)は背面図、(C)は右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の4軸スワップキャリアの実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態に係る4軸スワップキャリアは、荷室を形成するボディが脱着可能に搭載されるキャリアである。言い換えれば、本実施形態に係る4軸スワップキャリアは、スワップボディコンテナ車両を構成し得るキャリアである。以下の説明では、4軸スワップキャリアを「キャリア」と略称する。
【0015】
図1(A),(B)に示されるように、本実施形態に係るキャリア1は、運転席が設けられた本体10と、本体10から後方に向かって延在するシャーシ20と、を有している。本体10には2本の車軸10a,10bが設けられており、シャーシ20にも2本の車軸20a,20bが設けられている。つまり、キャリア1は4軸車両である。
【0016】
キャリア1のそれぞれの車軸10a,10b,20a,20bは、エアサスペンション(以下、「エアサス」と略称する場合がある。)によって懸架されている。よって、エアサスのエア圧を調整することにより、エアサスのストロークの範囲内でキャリア1の地上高を変更することができる。本実施形態のキャリア1に搭載されているエアサスは120mmのストロークを有しており、キャリア1の地上高は、最下位である955mmと最上位である1075mmとの間の任意の地上高に変更可能である。言い換えれば、本実施形態のキャリア1は、地上高の最下位が955mm以下である所謂「低床キャリア」である。
【0017】
図2,
図3に示されるように、キャリア1には箱形のボディ30が搭載される。ボディ30は、3対(6本)の支持脚31を備えており、自立可能である。それぞれの支持脚31は、ボディ30に回動可能に連結されており、ボディ30の下に収容可能である。具体的には、それぞれの支持脚31の状態は、地面に対して垂直又は略垂直な展開状態(
図2)と、地面に対して平行又は略平行な収納状態(
図3)と、に回動操作によって変更することができる。ボディ30を自立させる必要があるときには、
図2に示されるように、支持脚31を展開状態にする。一方、ボディ30を自立させる必要がないときには、
図3に示されるように、支持脚31を収納状態にする。
【0018】
キャリア1にボディ30を搭載する手順は概ね次のとおりである。まず、展開状態の支持脚31によって自立しているボディ30の前方にキャリア1を移動させる。次に、キャリア1のエアサスのエア圧を減圧し、キャリア1の地上高を下げる。例えば、キャリア1の地上高を最下位まで下げる。その後、キャリア1を後退させ、ボディ30の前方から当該ボディ30の床下にシャーシ20を差し入れる。次いで、キャリア1のエアサスのエア圧を昇圧し、ボディ30の支持脚31が地面から浮き上がるまでキャリア1の地上高を上げる。例えば、キャリア1の地上高を最上位まで上げる。次に、ボディ30の支持脚31を回動させ、収納する。その後、緊締装置によってキャリア1とボディ30とを連結する。尚、キャリア1からボディ30を降ろすときには、上記と逆の手順を踏む。
【0019】
キャリア1には、ボディ30の脱着を安全かつ確実に行うためのガイド部材が設けられている。具体的には、
図1(A),(B)に示されるように、シャーシ20の上面に複数のガイドローラ21が設けられている。より具体的には、シャーシ上面の幅方向両側に、シャーシ20の長手方向に沿って複数のガイドローラ21が設けられている。つまり、シャーシ20の上面に、一対のガイドローラ列が設けられている。
【0020】
一方、
図2,
図3に示されているボディ30の床下には、当該ボディ30の全長又は略全長に亘ってステアリングトンネルが設けられている。ステアリングトンネルは、ボディ30の床下に固定された一対のガイドレールによって形成されている。上記手順によってキャリア1にボディ30を搭載するときには、キャリア1が備えるガイドローラ列が、ボディ30が備えるステアリングトンネルを通過するように、キャリア1を後退させる。言い換えれば、キャリア1に設けられているガイドローラ列をボディ30に設けられている一対のガイドレールの間に通す。尚、キャリア1がボディ30に対して所定位置まで後退すると、キャリア1に設けられているストッパ22(
図1(A))がボディ30に設けられているストッパ受けに当接する。
【0021】
以上が本実施形態に係るキャリア1の基本構造である。次に、
図4(A)~(C)を参照しつつ、キャリア1が有するシャーシ20の後端及びその近傍の構造について説明する。
【0022】
図4(A)~(C)に示されるように、シャーシ20の後端には、不図示のフルトレーラを連結可能な連結器(ピントルフック40)が設けられている。
図4(B)に示されるように、ピントルフック40は、シャーシ20の幅方向中央に配置されている。
【0023】
図4(A)~(C)に示されるように、シャーシ20の後端には、ピントルフック40に加えて、ステップ50が設けられている。ステップ50は、シャーシ20の後端に複数本のボルトによって固定されており、シャーシ20に搭載されたボディ30(
図2,
図3)への乗り降りに利用される。例えば、ステップ50の上面51に足を掛けることにより、シャーシ20よりも高い位置にあるボディ30に容易かつ安全に乗り降りすることができる。かかる目的や役割を有するステップ50は、ピントルフック40の下方においてシャーシ20の幅方向に延在している。さらに、ステップ50の上面51は、シャーシ20の下面と同一またはシャーシ20の下面よりも低い位置に配置されている。尚、ステップ50の上面51には、必要に応じて滑り止め用の凹凸を形成したり、ラバーシートを貼り付けたりしてもよい。
【0024】
ステップ50には灯火器が埋設されている。具体的には、
図4(B)に示されるように、ステップ50の長手方向両端にテールランプ52がそれぞれ埋設されている。つまり、ステップ50は、テールランプブラケットを兼ねている。本実施形態におけるテールランプ52は、ブレーキランプ,方向指示灯及び後退灯を含むコンビネーションランプである。もっとも、ステップ50に埋設される灯火器はテールランプに限られない。また、ステップ50に埋設される灯火器がテールランプである場合、そのテールランプは、上記組み合わせのコンビネーションランプに限られない。
【0025】
図4(B)に示されるように、シャーシ20の後端には、ピントルフック40及びステップ50に加えて、複数の電気コネクタ60及びエアプラグ61が設けられている。電気コネクタ60には、ピントルフック40を介して連結されるフルトレーラの灯火器等に電力を供給するための電気ケーブルが接続される。エアプラグ61には、ピントルフック40を介して連結されるフルトレーラの空気ブレーキに圧縮空気を供給するためのブレーキホースが接続される。
【0026】
図4(B)から明らかなように、電気コネクタ60及びエアプラグ61は、シャーシ20の幅方向一側に配置されている。具体的には、電気コネクタ60及びエアプラグ61は、シャーシ20の幅方向において、ピントルフック40とステップ50の長手方向一端(右端)に埋設されているテールランプ52との間の領域に配置されている。一方ピントルフック40を挟んで電気コネクタ60及びエアプラグ61が配置されている領域と反対側の領域には、ライセンスプレート62が装着される。尚、
図4(A)~(C)に示されるように、ステップ50の背後にリアバンパー53が設置されている。
【0027】
以上のように、本実施形態に係るキャリア1は、ボディ30を搭載可能であり、かつ、フルトレーラを連結可能である。よって、必要に応じてフルトレーラを連結して積載量を増やすことができるので、キャリア1の用途が拡大する。一方、フルトレーラを連結可能とするためには、ピントルフック40,電気コネクタ60,エアプラグ61等が必要になる。そこで本実施形態に係るキャリア1では、ボディ30との干渉、特に支持脚31との干渉を回避しつつ、ピントルフック40,電気コネクタ60,エアプラグ61等がレイアウトされている。
【0028】
キャリア1に脱着可能に搭載されたボディ30によって形成される荷室の床面は、キャリアに固定されたボディによって形成される一般的なトラックの荷室の床面よりも高くなる傾向がある。そこで本実施形態に係るキャリア1では、荷室への出入りを容易にするためのステップ50を設け、利便性の向上を図っている。さらに、ステップ50にテールランプ52等の灯火器を埋設することにより、シャーシ後端の限られたスペースにステップ50と灯火器の両方が設置されている。
【0029】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、フルトレーラを連結するための連結器はピントルフック以外の連結器に置換することもできる。上述のキャリア地上高の最下位や最上位は一例である。つまり、キャリア地上高は、最下位950mm以下、最上位1075mm以上という条件を満たす範囲内で適宜変更することができる。また、キャリア地上高の最下位や最上位の変更に応じてエアサスペンションのストロークも変更することができる。もっとも、キャリア地上高の最下位は、搭載を意図するボディの地上高よりも低く、キャリア地上高の最上位は、搭載を意図するボディの地上高よりも高い必要がある。ここで、ボディの地上高とは、ボディが支持脚によって自立しているときの、地面からボディ底面までの距離である。
【符号の説明】
【0030】
1 4軸スワップキャリア
10 本体
20 シャーシ
10a,10b,20a,20b 車軸
21 ガイドローラ
22 ストッパ
30 ボディ
31 支持脚
40 ピントルフック
50 ステップ
51 上面
52 テールランプ
53 リアバンパー
60 電気コネクタ
61 エアプラグ
62 ライセンスプレート