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特許7417493訓練システム、中継装置の制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】訓練システム、中継装置の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 9/00 20060101AFI20240111BHJP
   G05B 9/02 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
G09B9/00 A
G05B9/02 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020134063
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022030223
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 順
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-041201(JP,A)
【文献】特開2001-142527(JP,A)
【文献】特開2016-001425(JP,A)
【文献】特開2004-133650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 - 9/56
G09B 17/00 - 19/26
G05B 9/00 - 9/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータを用いて、第1の周期で、外部からの要求信号の受け付け及び当該要求信号に対する応答を行うエミュレータ装置と、
前記エミュレータ装置に対し、前記設備の動作を指示する要求、又は前記設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で送信するとともに、当該要求信号に対する応答として受け付けた前記設備のパラメータをモニタに表示する操作端末と、
前記エミュレータ装置と、前記操作端末との間の通信を中継する中継装置と、
を備え、
前記中継装置は、
前記操作端末から今回受信した第1の要求信号が前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定する判定部と、
前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一でない場合に、前記エミュレータ装置に前記第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答として前記エミュレータ装置から受信したパラメータを前記操作端末に送信する送受信処理部と、
を備える、
訓練システム。
【請求項2】
前記エミュレータ装置から受信したパラメータをメモリに記録する記録処理部を更に備え、
前記送受信処理部は、前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一であった場合に、前記メモリに記録したパラメータを読み出して前記操作端末に送信する、
請求項1に記載の訓練システム。
【請求項3】
前記エミュレータ装置は、前記第の周期で前記設備の状態を示すパラメータを計算し、
前記中継装置の前記記録処理部は、前記エミュレータ装置が前記パラメータを計算する毎に、前記メモリに記録された前記パラメータを更新する、
請求項2に記載の訓練システム。
【請求項4】
模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータを用いて、第1の周期で、外部からの要求信号の受け付け及び当該要求信号に対する応答を行うエミュレータ装置と、
前記エミュレータ装置に対し、前記設備の動作を指示する要求、又は前記設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で送信するとともに、当該要求信号に対する応答として受け付けた前記設備のパラメータをモニタに表示する操作端末と、
前記エミュレータ装置と、前記操作端末との間の通信を中継する中継装置と、
を用いる訓練システムにおける前記中継装置の制御方法であって、前記中継装置に、
前記操作端末から今回受信した第1の要求信号が前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定するステップと、
前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一でない場合に、前記エミュレータ装置に前記第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答として前記エミュレータ装置から受信したパラメータを前記操作端末に送信するステップと、
を実行させる中継装置の制御方法。
【請求項5】
模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータを用いて、第1の周期で、外部からの要求信号の受け付け及び当該要求信号に対する応答を行うエミュレータ装置と、
前記エミュレータ装置に対し、前記設備の動作を指示する要求、又は前記設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で送信するとともに、当該要求信号に対する応答として受け付けた前記設備のパラメータをモニタに表示する操作端末と、
前記エミュレータ装置と、前記操作端末との間の通信を中継する中継装置と、
を用いる訓練システムにおける前記中継装置のプログラムであって、前記中継装置のコンピュータに、
前記操作端末から今回受信した第1の要求信号が前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定するステップと、
前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一でない場合に、前記エミュレータ装置に前記第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答として前記エミュレータ装置から受信したパラメータを前記操作端末に送信するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、訓練システム、中継装置の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラント等で使用される設備を開発、運用するには、設備がどのように動作するかを詳細に理解する必要がある。また、これらの設備を操作する場合、安全上の理由により設備の一部が遮蔽された状態で操作を行う場合があり、開発者、操作者が設備の動作を目視確認することが困難となることがある。
【0003】
操作者の訓練や、開発者による動作確認を行うための技術として、設備の動作、状態を模擬するシミュレーション技術が考えられている。例えば、特許文献1には、設備の制御装置であるプログラマブルロジックコントローラ(PLC)の動作をエミュレータで模擬して、設備の仮想的な状態に応じたユーザ画面の表示をシミュレートするシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3512705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常時、設備は所定のシーケンスに基づいてPLCによる自動運転が行われる。また、装置の保守、トラブル発生時に、操作者の判断により、専用の操作端末を通じて機器の動作軸等を操作する手動運転を行う場合がある。しかしながら、従来のシミュレーション技術では、このような手動運転の訓練を行うことができなかった。また、従来の操作端末と設備のエミュレータとでは、演算周期が異なっている。このため、従来の操作端末及びエミュレータを用いた場合、これらの間でデータの取りこぼしや、エラー等が生じる可能性があった。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされたものであって、操作端末を通じた手動運転の訓練を行うことが可能な訓練システム、中継装置の制御方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様によれば、訓練システム1は、模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータを用いて、第1の周期で、外部からの要求信号の受け付け及び当該要求信号に対する応答を行うエミュレータ装置2と、前記エミュレータ装置2に対し、前記設備の動作を指示する要求、又は前記設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で送信するとともに、当該要求信号に対する応答として受け付けた前記設備のパラメータをモニタに表示する操作端末4と、前記エミュレータ装置2と、前記操作端末4との間の通信を中継する中継装置3と、を備える。前記中継装置3は、前記操作端末4から今回受信した第1の要求信号が前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定する判定部31と、前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一でない場合に、前記エミュレータ装置に前記第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答として前記エミュレータ装置から受信したパラメータを前記操作端末に送信する送受信処理部32と、を備える。
【0008】
本開示の一態様によれば、模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータを用いて、第1の周期で、外部からの要求信号の受け付け及び当該要求信号に対する応答を行うエミュレータ装置と、前記エミュレータ装置に対し、前記設備の動作を指示する要求、又は前記設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で送信するとともに、当該要求信号に対する応答として受け付けた前記設備のパラメータをモニタに表示する操作端末と、前記エミュレータ装置と、前記操作端末との間の通信を中継する中継装置と、を用いる訓練システムにおける前記中継装置の制御方法は、前記中継装置に、前記操作端末から今回受信した第1の要求信号が前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定するステップと、前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一でない場合に、前記エミュレータ装置に前記第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答として前記エミュレータ装置から受信したパラメータを前記操作端末に送信するステップと、を実行させる。
【0009】
本開示の一態様によれば、模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータを用いて、第1の周期で、外部からの要求信号の受け付け及び当該要求信号に対する応答を行うエミュレータ装置と、前記エミュレータ装置に対し、前記設備の動作を指示する要求、又は前記設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で送信するとともに、当該要求信号に対する応答として受け付けた前記設備のパラメータをモニタに表示する操作端末と、前記エミュレータ装置と、前記操作端末との間の通信を中継する中継装置と、を用いる訓練システムにおける前記中継装置のプログラムは、前記中継装置のコンピュータに、前記操作端末から今回受信した第1の要求信号が前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定するステップと、前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一でない場合に、前記エミュレータ装置に前記第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答として前記エミュレータ装置から受信したパラメータを前記操作端末に送信するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る訓練システム、中継装置の制御方法、及びプログラムによれば、操作端末を通じた手動運転の訓練を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態に係る訓練システムの全体構成を示す図である。
図2】本開示の一実施形態に係る訓練システムの機能構成を示す図である。
図3】本開示の一実施形態に係る訓練システムの処理の一例を示す第1のフローチャートである。
図4】本開示の一実施形態に係る訓練システムの処理の一例を示す第2のフローチャートである。
図5】本開示の一実施形態に係る訓練システムを構成する各装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態に係る訓練システム1について、図1図5を参照しながら説明する。
【0013】
(訓練システムの全体構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る訓練システムの全体構成を示す図である。
本実施形態に係る訓練システム1は、プラント等に設置された装置又は装置群からなる設備の手動運転を訓練するためのシステムである。図1に示すように、訓練システム1は、エミュレータ装置2と、中継装置3と、操作端末4と、表示装置5とを備えている。
【0014】
エミュレータ装置2は、模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータである。エミュレータ装置2は、第1の周期で、外部からの要求の受け付け及び当該要求に対する応答を行う。
【0015】
中継装置3は、エミュレータ装置2と、操作端末4及び表示装置5との間の通信を中継する。中継装置3の機能構成については、後述する。
【0016】
操作端末4は、設備の手動運転を行う際に、操作者により操作される装置である。操作端末4は、操作者による操作を受け付ける操作受付部41と、設備の状態を示すパラメータを表示するモニタ42とを有している。操作受付部41は、例えばハードウェアボタン、レバー等であってもよいし、タッチパネルで構成されたモニタ42上に表示されたソフトウェアボタンであってもよい。
【0017】
また、操作端末4は、エミュレータ装置2に対し、設備の動作を指示する要求、又は設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、第1の周期よりも短い第2の周期で送信する。また、操作端末4は、要求信号に対する応答として受け付けた設備のパラメータをモニタ42に表示する。
【0018】
表示装置5は、エミュレータ装置2が模擬した設備の動作状態の3D画像(模擬画像)を表示する。表示装置5は、例えば液晶表示装置、有機EL(Electro-Luminescence)表示装置、VRゴーグル等である。
【0019】
(中継装置の機能構成)
図2には、本開示の一実施形態に係る訓練システムの機能構成を示す図である。
図2に示すように、中継装置3は、判定部31と、送受信処理部32と、記録処理部33と、模擬画像生成部34と、メモリ35とを備えている。
【0020】
判定部31は、操作端末4から今回受信した第1の要求信号が、前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定する。
【0021】
送受信処理部32は、第1の要求信号が第2の要求信号と同一でない場合に、エミュレータ装置2に第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答としてエミュレータ装置2から受信したパラメータを操作端末4に送信する。
【0022】
記録処理部33は、エミュレータ装置2から受信したパラメータをメモリ35に記録する。
【0023】
模擬画像生成部34は、エミュレータ装置2から受信したパラメータと、設備の3D CADデータとに基づいて、設備の動作状態を3D画像で表した模擬画像を生成し、表示装置5に出力する。
【0024】
メモリ35には、記録処理部33により記録されたパラメータが記録される。また、メモリ35には、模擬画像生成部34が使用する3D CADデータが格納されていてもよい。
【0025】
(訓練システムの処理フロー)
図3は、本開示の一実施形態に係る訓練システムの処理の一例を示す第1のフローチャートである。
図4は、本開示の一実施形態に係る訓練システムの処理の一例を示す第2のフローチャートである。
以下、図3図4を参照しながら、訓練システム1の処理の流れについて説明する。
【0026】
図3には、操作端末4と中継装置3との間の通信の一例が示されている。例えば、操作端末4は、操作受付部41を通じて受け付けた操作に応じた要求信号(書込要求信号)、又は、設備の状態を示すパラメータを要求する要求信号(読取要求信号)を、第2の周期で中継装置3に送信する(ステップS100)。操作端末4は、例えば1秒間に100回~200回の頻度で要求信号を送信するように第2の周期を設定する。
【0027】
一方、エミュレータ装置2は、操作端末4の演算処理の周期である第2の周期よりも長い周期である、第1の周期で演算処理を行う場合がある。例えば、エミュレータ装置2は、1秒間に10回の頻度で設備の運転状態が更新されるように第1の周期を設定する。
【0028】
また、操作端末4は、パラメータを要求する要求信号を定期的に送信して、モニタ42への状態表示をリアルタイムで行っている。したがって、操作端末4は、操作受付部41を通じて操作を受け付けていない間も、第2の周期毎に同じパラメータを要求する要求信号を連続して送信する場合がある。このとき、エミュレータ装置2が操作端末4からの要求信号を逐次受信するようにすると、エミュレータ装置2は、設備の状態を更新する演算処理をしている間に、操作端末4から同じパラメータを要求する要求信号を複数回受信してしまう場合がある。そうすると、エミュレータ装置2の演算処理が間に合わず、要求信号の取りこぼしが発生する可能性がある。また、エミュレータ装置2が要求信号を取りこぼしてしまうと、操作端末4が適切に応答信号を受信できなくなるため、操作端末4の演算処理時にエラーが発生する可能性がある。
【0029】
本実施形態では、このような要求信号の取りこぼし、エラーの発生を抑制するため、中継装置3において、エミュレータ装置2に送信する要求信号の間引き処理を行う。具体的には、中継装置3の判定部31は、操作端末4から今回受信した第1の要求信号が、前回受信した第2の要求信号と同じであるか判定する(ステップS101)。
【0030】
判定部31により、第1の要求信号が第2の要求信号と同じであると判定された場合(ステップS101:YES)、送受信処理部32は、第1の要求信号に対応するパラメータをメモリ35から読み出して(ステップS102)、読み出したパラメータを含む応答信号を操作端末4に送信する(ステップS103)。これにより、送受信処理部32は、操作端末4から同じパラメータを要求する要求信号を連続して受信した場合は、この要求信号をエミュレータ装置2に送信しないようにして、エミュレータ装置2に送信する要求信号の頻度を低減させることができる。したがって、エミュレータ装置2が要求信号を取りこぼすことを抑制することができる。また、送受信処理部32は、第1の要求信号に対する応答として、メモリ35に記録されたパラメータを含む応答信号を自動的に操作端末4に送信することにより、操作端末4が応答信号を受信できずにエラーとなる可能性を低減することできる。
【0031】
一方、判定部31により、第1の要求信号が第2の要求信号と同じではないと判定された場合(ステップS101:NO)、送受信処理部32は、エミュレータ装置2に第1の要求信号を送信する(ステップS104)。例えば、第1の要求信号が新たな操作を指示する要求信号であった場合、送受信処理部32は、この第1の要求信号をエミュレータ装置2に送信する(ステップS104)。このとき、送受信処理部32は、受信した要求信号を一旦メモリ35に保存しておき、エミュレータ装置2の演算周期に合わせて、メモリ35から読み出した要求信号をエミュレータ装置2に送信する。このようにすることで、送受信処理部32は、エミュレータ装置2が要求信号を取りこぼしてしまうことを抑制する。
【0032】
また、エミュレータ装置2から第1の要求信号への応答として、設備の状態を示すパラメータ(応答信号)を受信すると(ステップS105)、記録処理部33は、受信したパラメータをメモリ35に記録して更新する(ステップS106)。また、送受信処理部32は、エミュレータ装置2から受信したパラメータを含む応答信号を操作端末4に送信する(ステップS103)。
【0033】
操作端末4は、中継装置3から応答信号を受信すると、応答信号に含まれるパラメータに基づいて、モニタ42の表示を更新する処理を行う(ステップS107)。これにより、操作端末4のモニタ42には、エミュレータ装置2により模擬された設備の最新の状態が逐次、表示される。
【0034】
中継装置3は、操作端末4から要求信号を受け付ける度に、上述の各ステップを繰り返し実行する。このような処理を行うことで、中継装置3は、操作端末4とエミュレータ装置2の演算周期が異なっている場合であっても、エミュレータ装置2に同じ要求信号が何度も連続して送信されることを抑制しつつ、操作端末4の要求信号に対し最新のパラメータを含む応答信号を漏れなく返信することができる。また、図示は略すが、中継装置3の模擬画像生成部34は、エミュレータ装置2から受信したパラメータに基づいて、設備の動作状態を示す模擬画像を生成して、表示装置5に出力処理を並行して実行する。これにより、操作者は、操作に応じた設備の動作状態の変化を、表示装置5を通じて目視確認することができる。なお、操作端末4を操作する操作者と、表示装置5を通じて設備の状態を確認する確認者とは異なっていてもよい。
【0035】
図3の例において、エミュレータ装置2が、中継装置3から要求信号を受信したときに、パラメータを送信する態様について説明した。しかしながら、エミュレータ装置2は、図4に示すように、演算処理を行う毎に、中継装置3に新たなパラメータを通知するようにしてもよい。
【0036】
具体的には、図4に示すように、エミュレータ装置2は、設備の運転状態を演算する処理を実行してパラメータを計算すると(ステップS200)、この新たに計算されたパラメータを中継装置3に通知する(ステップS201)。
【0037】
中継装置3の記録処理部33は、エミュレータ装置2からパラメータを受信すると(ステップS202)、受信したパラメータをメモリ35に記録して更新する(ステップS203)。
【0038】
このようにすることで、中継装置3のメモリには、常に最新のパラメータが記録されることとなる。これにより、中継装置3は、操作端末4からの要求信号に対し、常に最新のパラメータを含む応答信号を送信することができる。
【0039】
(ハードウェア構成)
図5は、本開示の一実施形態に係る訓練システムを構成する各装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
以下、図5を参照しながら、本実施形態に係るエミュレータ装置2、中継装置3、操作端末4、及び表示装置5のハードウェア構成について説明する。
【0040】
コンピュータ900は、プロセッサ901、主記憶装置902、補助記憶装置903、インタフェース904を備える。
【0041】
上述のエミュレータ装置2、中継装置3、操作端末4、及び表示装置5は、それぞれ、一つ又は複数のコンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。プロセッサ901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ901は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置902に確保する。プロセッサ901の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0042】
プログラムは、コンピュータ900に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ900は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ901によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0043】
補助記憶装置903の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。補助記憶装置903は、コンピュータ900のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース904または通信回線を介してコンピュータ900に接続される外部記憶装置910であってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、補助記憶装置903は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0044】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、当該プログラムは、前述した機能を補助記憶装置903に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0045】
(作用、効果)
以上のように、本実施形態に係る訓練システム1において、中継装置3は、設備の手動運転に係る操作を受け付ける操作端末4と、設備の動作を模擬するエミュレータ装置2との間の通信を中継する。
このようにすることで、訓練システム1は、実際の設備の手動運転に使用される操作端末4を通じて、操作訓練を行うことが可能となる。これにより、操作者はより現実に近い環境で効果的な訓練を行うことができる。
【0046】
また、中継装置3は、操作端末4から今回受信した第1の要求信号が、前回受信した第2の要求信号と同一ではない場合、エミュレータ装置2に第1の要求信号を送信するとともに、エミュレータ装置2から受信したパラメータを操作端末4に送信する。
上記したように、操作端末4の演算周期が、エミュレータ装置2の演算周期よりも短い周期であった場合、操作端末4からの要求信号を逐次、エミュレータ装置2に送信してしまうと、エミュレータ装置2の処理が間に合わずに要求信号を取りこぼす可能性がある。
しかしながら、本実施形態に係る中継装置3は、前回受信した要求信号と異なる要求信号のみをエミュレータ装置2に送信することにより、エミュレータ装置2へ要求信号が送信される頻度を低下させることができる。したがって、エミュレータ装置2が要求信号を取りこぼす可能性を低減させることができる。
【0047】
また、中継装置3は、操作端末4から今回受信した第1の要求信号が、前回受信した第2の要求信号と同一であった場合、メモリ35に記録されたパラメータを読み出して、操作端末4への応答信号として送信する。
このようにすることで、中継装置3は、エミュレータ装置2に同一の要求信号が高頻度で連続して送信されることを抑制することができる。これにより、エミュレータ装置2が要求信号を取りこぼす可能性を低減させることができる。また、中継装置3は、メモリ35に記録されたパラメータを操作端末4に送信することにより、操作端末4が応答信号を受信できず、エラーとなってしまうことを抑制することができる。
【0048】
また、中継装置3は、エミュレータ装置2がパラメータを計算する毎に、メモリ35に記録されたパラメータを更新する。
このようにすることで、中継装置3は、操作端末4に対し、常に最新のパラメータを送信することができる。
【0049】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、上述の実施形態において、操作端末4が中継装置3と異なるハードウェアとして実装される例について説明したが、これに限られることはない。他の実施形態では、操作端末4は、中継装置3にアプリケーションとして組み込まれていてもよい。この場合、中継装置3が有する入力装置(キーボード、マウス、タッチパネル)及びモニタを通じて、操作者の操作の受け付け、及びパラメータの表示を行ってもよい。
【0050】
<付記>
上述の実施形態に記載の訓練システム、中継装置の制御方法、及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0051】
本開示の第1の態様によれば、訓練システムは、模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータを用いて、第1の周期で、外部からの要求信号の受け付け及び当該要求信号に対する応答を行うエミュレータ装置と、前記エミュレータ装置に対し、前記設備の動作を指示する要求、又は前記設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で送信するとともに、当該要求信号に対する応答として受け付けた前記設備のパラメータをモニタに表示する操作端末と、前記エミュレータ装置と、前記操作端末との間の通信を中継する中継装置と、を備える。前記中継装置は、前記操作端末から今回受信した第1の要求信号が前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定する判定部と、前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一でない場合に、前記エミュレータ装置に前記第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答として前記エミュレータ装置から受信したパラメータを前記操作端末に送信する送受信処理部と、を備える。
【0052】
このようにすることで、訓練システムは、実際の設備の手動運転に使用される操作端末を通じて、操作訓練を行うことが可能となる。これにより、操作者は、より現実に近い環境で効果的に訓練を行うことができる。また、中継装置は、前回受信した要求信号と異なる要求信号のみをエミュレータ装置2に送信することにより、エミュレータ装置へ要求信号が送信される頻度を低下させることができる。したがって、エミュレータ装置が要求信号を取りこぼす可能性を低減させることができる。
【0053】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様に係る訓練システムは、前記エミュレータ装置から受信したパラメータをメモリに記録する記録処理部を更に備える。前記送受信処理部は、前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一であった場合に、前記メモリに記録したパラメータを読み出して前記操作端末に送信する。
【0054】
このようにすることで、中継装置は、エミュレータ装置に同一の要求信号が高頻度で連続して送信されることを抑制することができる。これにより、エミュレータ装置が要求信号を取りこぼす可能性を低減させることができる。また、中継装置は、メモリに記録されたパラメータを操作端末に送信することにより、操作端末が応答信号を受信できず、エラーとなってしまうことを抑制することができる。
【0055】
本開示の第3の態様によれば、第2の態様に係る訓練システムにおいて、前記エミュレータ装置は、前記第の周期で前記設備の状態を示すパラメータを計算する。前記中継装置の前記記録処理部は、前記エミュレータ装置が前記パラメータを計算する毎に、前記メモリに記録された前記パラメータを更新する。
【0056】
このようにすることで、中継装置は、操作端末に対し、常に最新のパラメータを送信することができる。
【0057】
本開示の第4の態様によれば、模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータを用いて、第1の周期で、外部からの要求信号の受け付け及び当該要求信号に対する応答を行うエミュレータ装置と、前記エミュレータ装置に対し、前記設備の動作を指示する要求、又は前記設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で送信するとともに、当該要求信号に対する応答として受け付けた前記設備のパラメータをモニタに表示する操作端末と、前記エミュレータ装置と、前記操作端末との間の通信を中継する中継装置と、を用いる訓練システムにおける前記中継装置の制御方法は、前記中継装置に、前記操作端末から今回受信した第1の要求信号が前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定するステップと、前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一でない場合に、前記エミュレータ装置に前記第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答として前記エミュレータ装置から受信したパラメータを前記操作端末に送信するステップと、を実行させる。
【0058】
本開示の第5の態様によれば、模擬対象となる設備の動作を仮想的に再現するエミュレータを用いて、第1の周期で、外部からの要求信号の受け付け及び当該要求信号に対する応答を行うエミュレータ装置と、前記エミュレータ装置に対し、前記設備の動作を指示する要求、又は前記設備の状態を示すパラメータの取得要求を含む要求信号を、前記第1の周期よりも短い第2の周期で送信するとともに、当該要求信号に対する応答として受け付けた前記設備のパラメータをモニタに表示する操作端末と、前記エミュレータ装置と、前記操作端末との間の通信を中継する中継装置と、を用いる訓練システムにおける前記中継装置のプログラムは、前記中継装置のコンピュータに、前記操作端末から今回受信した第1の要求信号が前回受信した第2の要求信号と同一か否かを判定するステップと、前記第1の要求信号が前記第2の要求信号と同一でない場合に、前記エミュレータ装置に前記第1の要求信号を送信し、当該第1の要求信号への応答として前記エミュレータ装置から受信したパラメータを前記操作端末に送信するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0059】
1 訓練システム
2 エミュレータ装置
3 中継装置
31 判定部
32 送受信処理部
33 記録処理部
34 模擬画像生成部
35 メモリ
4 操作端末
41 操作受付部
42 モニタ
5 表示装置
900 コンピュータ
図1
図2
図3
図4
図5