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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/34 20060101AFI20240111BHJP
   B29C 43/18 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B29C43/34
B29C43/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020144746
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039621
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】岡本 良太
(72)【発明者】
【氏名】水間 敬太
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-520(JP,A)
【文献】特開2008-114428(JP,A)
【文献】特開2018-118189(JP,A)
【文献】特開2017-193095(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/34
B29C 43/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給対象物の樹脂供給領域に液状樹脂を吐出するノズルを含む樹脂供給機構と、
前記ノズルから垂れた前記液状樹脂を受け止める樹脂受け部材と、前記ノズルの下に位置する前記樹脂受け部材を前記ノズルの移動に追従させて移動させる移動機構と、を有する樹脂回収ユニットと、
上型と当該上型に対向する下型とを含む成形型と、
前記供給対象物を前記上型と前記下型との間に配置した状態で前記成形型を型締めする型締め機構と、
少なくとも前記樹脂供給機構及び前記樹脂回収ユニットの作動を制御する制御部と、を備え、
前記樹脂供給機構は、前記供給対象物に前記液状樹脂を吐出した後、前記ノズルを上下させることにより液切りを行って前記供給対象物への前記液状樹脂の供給を終了させ、
前記供給対象物への前記液状樹脂の供給が終了した直後に、前記樹脂回収ユニットは、前記樹脂供給領域外から前記樹脂供給領域内の第一位置にある前記ノズルの下に前記樹脂受け部材を移動させて、前記ノズルから前記樹脂供給領域への前記液状樹脂の落下を防止した状態で、前記樹脂受け部材を前記ノズルの移動に追従させて前記樹脂供給領域外の第二位置まで移動させる樹脂成形装置。
【請求項2】
前記樹脂回収ユニットは、前記樹脂受け部材を保持するアームを更に有し、
前記樹脂供給機構はモータを有しており、当該モータの駆動力により前記ノズルを移動させ、
前記移動機構はシリンダを有しており、前記アームが前記シリンダ内に供給される流体の流体圧により移動することにより前記樹脂受け部材を前記第一位置から前記第二位置まで移動させる請求項1に記載の樹脂成形装置。
【請求項3】
前記樹脂回収ユニットは、前記アームを回転させる回転機構を更に有し、
前記移動機構は、前記第一位置と前記第二位置との間で前記樹脂受け部材を直進移動させ、
前記回転機構は、前記アームを回転させて、前記樹脂受け部材を退避位置と前記第一位置又は前記第二位置との間で移動させる請求項2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記樹脂回収ユニットは、前記アームの移動始端及び移動終端に夫々配置された少なくとも2つの位置センサを更に有し、
前記制御部は、夫々の前記位置センサの検出結果に基づいて演算した前記樹脂受け部材の移動速度が前記ノズルの移動速度と等速になるように、前記流体圧を調整する請求項2又は3に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記樹脂回収ユニットは、前記ノズルを検知する検知センサを更に有し、
前記樹脂受け部材の移動中、前記検知センサが前記ノズルを検知する請求項1~4の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
請求項1~5の何れか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、
前記樹脂供給機構を用いて前記供給対象物の樹脂供給領域に前記液状樹脂を吐出した後、前記ノズルを上下させて液切りを行うことにより、前記供給対象物への前記液状樹脂を供給する樹脂供給ステップと、
前記樹脂供給ステップで前記供給対象物に前記液状樹脂を供給した後に、前記樹脂回収ユニットは、前記樹脂供給領域外から前記樹脂供給領域内の前記第一位置に位置する前記ノズルの下に前記樹脂受け部材を移動させ、前記ノズルから垂れた前記液状樹脂を前記樹脂受け部材に回収することにより前記ノズルから前記樹脂供給領域への前記液状樹脂の落下を防止した状態で、前記樹脂受け部材を前記ノズルの移動に追従させて前記樹脂供給領域外の第二位置まで移動させる樹脂回収ステップと、
前記樹脂供給ステップで供給された前記液状樹脂を用いて樹脂成形を行う樹脂成形ステップと、を含む樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップが実装された基板等は、一般的に樹脂封止することにより電子部品として用いられる。従来、基板を樹脂封止する樹脂成形装置として、供給対象物としての基板に液状樹脂を吐出するノズルを有する樹脂供給機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1~2参照)。
【0003】
特許文献1には、真空チャンバー内にノズルを配置した状態で基板に液状樹脂を供給し、ノズルを真空チャンバー上方に移動させた後、ノズルの先端から落下する液状樹脂を液垂れ容器にて受け止める技術が開示されている。また、特許文献1には、基板に液状樹脂を再度供給する前に、ノズルから液垂れ容器に液状樹脂を数回吐出して、エアーの混入を防止する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、樹脂供給機構がノズルを含むシリンジを交換可能に構成されており、このシリンジを交換してから使用を開始するまでに、ノズルの下に位置するように回転機構により回転させた捨て打ちカップに、ノズル先端付近の品質の悪い液状樹脂を捨てる技術が開示されている。また、特許文献2には、基板に液状樹脂を供給した後、ノズルを上下動して基板上に液状樹脂を落下させて糸切り動作を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-111862号公報
【文献】特開2012-126075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂成形装置は、基板に液状樹脂を供給した後、ノズルを真空チャンバーから上方に移動させる間に、ノズルから垂れた液状樹脂が落下して基板に付着し、基板の樹脂供給状態にばらつきが発生するおそれがある。特許文献2に記載の樹脂形成装置は、基板に液状樹脂を供給した後、ノズルを上下動してノズルから垂れた液状樹脂を基板上に落下させているため、ノズルからの液垂れ量が設計値と異なる場合には基板の樹脂供給状態にばらつきが発生するおそれがある。
【0007】
そこで、精度よく供給対象物に液状樹脂を供給できる樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る樹脂成形装置の特徴構成は、供給対象物の樹脂供給領域に液状樹脂を吐出するノズルを含む樹脂供給機構と、前記ノズルから垂れた前記液状樹脂を受け止める樹脂受け部材と、前記ノズルの下に位置する前記樹脂受け部材を前記ノズルの移動に追従させて移動させる移動機構と、を有する樹脂回収ユニットと、上型と当該上型に対向する下型とを含む成形型と、前記供給対象物を前記上型と前記下型との間に配置した状態で前記成形型を型締めする型締め機構と、少なくとも前記樹脂供給機構及び前記樹脂回収ユニットの作動を制御する制御部と、を備え、前記樹脂供給機構は、前記供給対象物に前記液状樹脂を吐出した後、前記ノズルを上下させることにより液切りを行って前記供給対象物への前記液状樹脂の供給を終了させ、前記供給対象物への前記液状樹脂の供給が終了した直後に、前記樹脂回収ユニットは、前記樹脂供給領域外から前記樹脂供給領域内の第一位置にある前記ノズルの下に前記樹脂受け部材を移動させて、前記ノズルから前記樹脂供給領域への前記液状樹脂の落下を防止した状態で、前記樹脂受け部材を前記ノズルの移動に追従させて前記樹脂供給領域外の第二位置まで移動させる点にある。
【0009】
本発明に係る樹脂成形品の製造方法の特徴は、上記樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法であって、前記樹脂供給機構を用いて前記供給対象物の樹脂供給領域に前記液状樹脂を吐出した後、前記ノズルを上下させて液切りを行うことにより、前記供給対象物への前記液状樹脂を供給する樹脂供給ステップと、前記樹脂供給ステップで前記供給対象物に前記液状樹脂を供給した後に、前記樹脂回収ユニットは、前記樹脂供給領域外から前記樹脂供給領域内の前記第一位置に位置する前記ノズルの下に前記樹脂受け部材を移動させ、前記ノズルから垂れた前記液状樹脂を前記樹脂受け部材に回収することにより前記ノズルから前記樹脂供給領域への前記液状樹脂の落下を防止した状態で、前記樹脂受け部材を前記ノズルの移動に追従させて前記樹脂供給領域外の第二位置まで移動させる樹脂回収ステップと、前記樹脂供給ステップで供給された前記液状樹脂を用いて樹脂成形を行う樹脂成形ステップと、を含む点にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、精度よく供給対象物に液状樹脂を供給できる樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】樹脂成形装置を示す模式図である。
図2】型締め機構を示す模式図である。
図3】樹脂回収ユニットの概略を示す平面図である。
図4】樹脂回収ユニットの概略を示す側面図である。
図5】ノズルの液切り操作の概略を示す側面図である。
図6】樹脂供給に関する制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、樹脂成形装置の一例として、図1に示すように、樹脂供給モジュール2を備えた樹脂成形装置Dについて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0013】
[装置構成]
半導体チップが実装された基板等は樹脂封止することにより電子部品として用いられる。成形対象物を樹脂封止する技術としては、コンプレッション方式(圧縮成形)やトランスファ方式等が挙げられる。このコンプレッション方式の1つとして、離型フィルムに液状の樹脂を供給した後、成形型の下型に離型フィルムを載置し、離型フィルム上の液状樹脂に成形対象物を浸し入れて樹脂成形する樹脂封止方法が挙げられる。本実施形態における樹脂成形装置Dはコンプレッション方式を採用しており、樹脂供給モジュール2は、成形型や基板(供給対象物の一例)又は離型フィルムF(供給対象物の一例)に液状の樹脂を供給する装置である。以下において、液状の樹脂から成る液状樹脂Rが供給される供給対象物を離型フィルムFとし、半導体チップ(以下、「チップ」と称する場合がある)が搭載された基板Sを成形対象物の一例として、重力方向を下、重力方向とは反対方向を上として説明する。なお、図1に示すZ方向が上下方向である。
【0014】
図1には、樹脂成形装置Dの模式図が示されている。本実施形態における樹脂成形装置Dは、離型フィルム切断モジュール1と樹脂供給モジュール2と複数(本実施形態では2つ)の圧縮成形モジュール3と搬送モジュール4と制御部5と報知部6とを備えている。離型フィルム切断モジュール1と樹脂供給モジュール2と複数の圧縮成形モジュール3と搬送モジュール4とは、夫々独立して装着又は取り外しできる。なお、本実施形態における圧縮成形モジュール3は2つで構成しているが、1つ又は3つ以上の複数で構成しても良い。
【0015】
離型フィルム切断モジュール1は、長尺状のフィルムから平面視円形の離型フィルムFを切断して分離する。離型フィルム切断モジュール1は、ロール状フィルム14と、フィルムグリッパ15と、フィルム載置機構16とを含んでいる。フィルムグリッパ15は、ロール状フィルム14の端部を保持すると共に、ロール状フィルム14を引き出す。フィルム載置機構16は、カッター(不図示)によりロール状フィルム14から平面視円形の離型フィルムFを切断、分離する。
【0016】
樹脂供給モジュール2は、離型フィルムF上における樹脂供給領域に樹脂成形用の液状樹脂Rを供給する樹脂供給機構2Aと、樹脂供給機構2Aにて離型フィルムF上に液状樹脂Rを供給した後、離型フィルムF上に液垂れしないように液状樹脂Rを回収する樹脂回収ユニット2Bと、を含んでいる。ここで、液状樹脂Rとは、常温(室温)で液状の樹脂を意味する。常温で液状となる液状の樹脂は、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良い。熱硬化性樹脂は、常温では液状の樹脂であり、加熱すると粘度が低下し、さらに加熱すると重合して硬化し、硬化樹脂となる。本実施形態における液状樹脂Rは、常温で速やかに流動しない程度の比較的高粘度の熱硬化性の樹脂であることが好ましい。
【0017】
樹脂供給機構2Aは、離型フィルム切断モジュール1から受け渡された離型フィルムFを載置するテーブル20と、液状樹脂Rを離型フィルムF上に吐出する吐出機構21と、重量センサ25と、を含んでいる。離型フィルム切断モジュール1から受け渡された離型フィルムFは、不図示の吸引機構によりテーブル20の上面に吸着保持されている。
【0018】
吐出機構21は、カートリッジ23が取り付けられたディスペンサユニット21aと、カートリッジ23のノズル23bの先端部分を締付けるクランプ機構21bと、を含んでいる。このディスペンサユニット21aは、後述する液状樹脂Rが収容されたシリンジ23a内の液状樹脂Rを押し出すための押圧部材(不図示)を含んでおり、押圧部材を下方向に移動させることによりカートリッジ23を介して離型フィルムF上に定量供給する。カートリッジ23が取り付けられたディスペンサユニット21aは、離型フィルムFの載置面となるXY平面上(水平方向)を任意に移動可能に構成されている。また、ディスペンサユニット21aは、Z方向(上下方向)に移動可能に構成されている。クランプ機構21bは、一対のクランプ部材でノズル23bの先端部分を挟み込んでノズル23bを閉塞する。なお、ディスペンサユニット21aに加えて、又は、ディスペンサユニット21aに代えて、テーブル20がXY平面上を任意に移動可能に構成しても良い。また、ディスペンサユニット21aの駆動源は、特に限定されないが、例えば、サーボモータMо等の電動モータを用いることができ、クランプ機構21bは、シリンダ(不図示)内に供給されるエアー等の流体圧により作動させることができる。
【0019】
カートリッジ23は、液状樹脂Rが収容されたシリンジ23aと、液状樹脂Rを吐出するノズル23bと、を含んでいる。このカートリッジ23は、樹脂収容部11に予め複数(本実施形態では6つ)収容されている。ディスペンサユニット21aは、カートリッジ23に充填されている液状樹脂Rを使い切ったときに、異なるカートリッジ23に自動で交換できるように構成されている。
【0020】
重量センサ25は、離型フィルムF上に供給された液状樹脂Rの重量や後述する樹脂受けカップ26の重量を計測する。この重量センサ25は、樹脂供給後の離型フィルムF又は樹脂回収後の樹脂受けカップ26の重量と樹脂供給前の離型フィルムF又は樹脂回収前の樹脂受けカップ26の重量との差分により供給又は回収された液状樹脂Rを計測する公知の荷重センサである。
【0021】
樹脂ローダ12は、レール上で、離型フィルム切断モジュール1と、樹脂供給モジュール2と、それぞれの圧縮成形モジュール3との間をX方向に移動可能に構成されている。また、樹脂ローダ12は、レール上で樹脂供給モジュール2内及びそれぞれの圧縮成形モジュール3内においてY方向に移動可能に構成されている。樹脂ローダ12は、離型フィルム切断モジュール1でカットされた離型フィルムFを樹脂供給モジュール2まで運び、樹脂供給モジュール2において樹脂供給機構2Aにより液状樹脂Rが供給された離型フィルムFを保持して、圧縮成形モジュール3まで移送することができる。また、樹脂ローダ12には、後処理機構13が付随して設けられている。この後処理機構13は、圧縮成形モジュール3から使用済みの離型フィルムFを除去して、離型フィルム切断モジュール1にある廃棄部(不図示)に使用済みの離型フィルムFを廃棄することができる。
【0022】
樹脂回収ユニット2Bは、ノズル23bから垂れた液状樹脂Rを受け止める樹脂受けカップ26(樹脂受け部材の一例)と、樹脂受けカップ26を保持するアーム27と、アーム27をXY平面上で回転させる回転機構28と、ノズル23bの下に位置する樹脂受けカップ26をノズル23bの移動に追従させて移動させる移動機構29(前後移動機構29a)と、を有している。この樹脂回収ユニット2Bは、樹脂供給モジュール2の筐体に支持されている。樹脂回収ユニット2Bの詳細については、後述する。
【0023】
圧縮成形モジュール3は、少なくとも、成形型Mと、成形型Mを型締めする型締め機構35と、を有している。圧縮成形モジュール3の詳細については、後述する。
【0024】
搬送モジュール4は、樹脂封止前のチップが実装された樹脂封止前基板Sa(成形前基板)を搬送すると共に、樹脂封止後の樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)を搬送する。搬送モジュール4は、基板ローダ41と、樹脂封止前基板Saを収納する第1収容部43と、樹脂封止済基板Sbを収納する第2収容部44と、ロボットアーム45とを含んでいる。ロボットアーム45は、搬送モジュール4内において、樹脂封止前基板Saを基板ローダ41に受け渡すことができる。また、ロボットアーム45は、基板ローダ41から搬送された樹脂封止済基板Sbを受け取ることができる。基板ローダ41は、搬送モジュール4及びそれぞれの圧縮成形モジュール3内において、X方向及びY方向に移動する。
【0025】
搬送モジュール4は、さらに検査機構(不図示)を含んでいる。検査機構は、圧縮成形モジュール3における成形対象物である基板S(樹脂封止前基板Sa)におけるチップの存在領域を検査する。検査機構は、レーザ変位計のスキャンにより、検査を予定されたチップの存在領域において、チップが実際に存在するか否かを検査し、チップが存在する場所と存在しない場所とを記憶する。なお、検査機構は、可視光カメラ等で基板Sを撮影し、この撮像画像に基づいて基板Sにおけるチップの存在領域を検査しても良い。
【0026】
制御部5は、樹脂成形装置Dの作動を制御するソフトウェアとして、HDDやメモリ等のハードウェアに記憶されたプログラムで構成されており、コンピュータのCPUにより実行される。報知部6は、樹脂成形装置Dの作動を報知し、搬送モジュール4の前面に設置されたディスプレイや警報ランプ等で構成されている。特に、本実施形態における報知部6は、樹脂回収ユニット2Bの誤作動を報知することができる。本実施形態では、制御部5の制御形態や報知部6の報知形態の一例として、樹脂供給モジュール2の作動に関する場合を後述する。
【0027】
図2に示すように、本実施形態における圧縮成形モジュール3は、下部固定盤31と上部固定盤33とが板状部材32により一体化されたプレスフレームで構成されている。下部固定盤31と上部固定盤33の間には可動プラテン34が設けられている。可動プラテン34は、板状部材32に沿って上下に移動可能である。下部固定盤31の上には、可動プラテン34を上下に移動させる装置であるボールねじ等の型締め機構35が設けられている。型締め機構35は、可動プラテン34を上方に移動させることにより成形型Mの型締めを行ない、可動プラテン34を下方に移動させることにより成形型Mの型開きを行なうことができる。型締め機構35の駆動源は、特に限定されないが、例えば、サーボモータ(不図示)等の電動モータを用いることができる。
【0028】
成形型Mとしての上型UM及び下型LMは、互いに対向して配置されており、何れも金型等で構成されている。上部固定盤33の下面には上部ヒータ37を含む上型ホルダ39が配置され、上型ホルダ39の下に上型UMが取り付けられている。上型UMには、基板Sを配置するための上型基板セット部(不図示)が設けられており、上型UMの下面には、チップ等が実装された基板Sが取り付けられる。可動プラテン34の上面には下部ヒータ36を含む下型ホルダ38が配置され、下型ホルダ38の上に下型LMが設けられている。下型キャビティMCに吸引機構(不図示)により吸引された離型フィルムFがフェースダウンで保持されることにより、樹脂供給機構2Aが離型フィルムF上に塗布した液状樹脂Rが下型キャビティMCに供給される。型締め機構35により成形型Mを型締めすると共に下部ヒータ36で下型LMを加熱することで、下型キャビティMC内の液状樹脂Rが溶融し、硬化する。つまり、供給対象物としての樹脂封止前基板Sa及び離型フィルムFを上型UMと下型LMとの間に配置した状態で、型締め機構35により成形型Mを型締めし、樹脂封止する。これにより、樹脂封止前基板Sa(成形前基板)に実装されたチップ等は、下型キャビティMC内で樹脂封止されて樹脂封止済基板Sb(樹脂成形品)となる。以降、図1に示すY方向の成形型Mの側を前(FRONT)、Y方向の基板ローダ41の側を後(BACK)として説明する。
【0029】
図3図5には、樹脂供給機構2A及び樹脂回収ユニット2Bの概略図が示されている。上述したように、樹脂回収ユニット2Bは、樹脂受けカップ26と、アーム27と、回転機構28と、移動機構29と、を有している。また、樹脂回収ユニット2Bは、移動機構29の作動により樹脂受けカップ26が移動中にノズル23bの有無を検知する検知センサ22と、アーム27の位置を検知する位置センサ30a,30bと、を有している。
【0030】
図3図4に示すように、樹脂受けカップ26は、有底筒状の半透明カップで形成されており、平面視においてカートリッジ23の外径よりも大きい底面積を有する樹脂収容空間が内部に形成されている。アーム27は、長板状部材から成り、一端に回転機構28が備えられており、他端に樹脂受けカップ26が支持されている。アーム27は、樹脂供給機構2Aが離型フィルムF上に液状樹脂Rを供給するときは、離型フィルムFの樹脂供給領域外にあるカップ退避位置Pb(退避位置の一例)にあり、回転機構28を作動させることにより、カップ退避位置Pbとノズル退避位置Pa2とを回転移動可能となっている。アーム27の長さは、後述するように、アーム27が前後移動機構29aにより樹脂供給終了後のノズル23bの移動に追従して樹脂供給領域を移動することができるような長さに設定されている。本実施形態では、樹脂供給領域が平面視円形であり、樹脂供給終了後のノズル23bの移動は、円の中心から円の外へ直線的に行われるため、アーム27の長さは、その他端に支持された樹脂受けカップ26が、前後移動機構29aにより移動することによって、樹脂供給領域の中央に届く長さである。
【0031】
回転機構28は、電動モータ(不図示)等で構成される駆動源により回転軸28aを中心としてアーム27を回転させるように構成されており、回転軸28aとアーム27の一端とが固定されている。検知センサ22は、樹脂受けカップ26近傍のアーム27の他端に設けられており、レーザの照射によりノズル23bを検知する公知のレーザセンサ等で構成されている。つまり、検知センサ22により、樹脂受けカップ26が、ノズル23bの下に位置しているか否かを検知することができる。
【0032】
移動機構29は、シリンダ29cを有しており、前後方向からシリンダ29c内に供給されるエアー(流体の一例)等の流体圧によりアーム27を前後に直進移動させる前後移動機構29aを含んでいる。前後移動機構29aは、ノズル23bの下に位置する樹脂受けカップ26をノズル23bの移動に追従させて移動させる。本実施形態における前後移動機構29aは、樹脂供給を終えたノズル23bの下に樹脂受けカップ26を位置させる中央位置Pa1(樹脂供給領域内の第一位置の一例)と、離型フィルムFの樹脂供給領域外に退避させたノズル23bの下に樹脂受けカップ26を位置させるノズル退避位置Pa2(樹脂供給領域外の第二位置の一例)とに亘って、アーム27をY方向に直進移動させる。つまり、樹脂受けカップ26は、XY平面上において、ノズル退避位置Pa2とカップ退避位置Pb(退避位置)との間を回転移動可能に構成されており、中央位置Pa1とノズル退避位置Pa2との間をノズル23bの移動に追従して直進移動可能に構成されている。位置センサ30a,30bは、アーム27を検知したら信号を送信し、アーム27を検知しなくなれば信号の送信を停止する、公知の光電センサ等で構成されている。本実施形態における位置センサ30a,30bは、樹脂受けカップ26が中央位置Pa1にあるアーム27の移動始端と、樹脂受けカップ26がノズル退避位置Pa2にあるアーム27の移動終端とに夫々設けられている。
【0033】
図4には、樹脂受けカップ26が中央位置Pa1にあるときの、樹脂回収ユニット2Bの概略を示す側面図が示されている。同図に示すように、移動機構29は、エアー等の流体圧によりアーム27を上下移動させる上下移動機構29bを更に含んでいる。
【0034】
図5には、ノズル23bの液切り操作の概略を示す側面図(上段)と上面図(下段)が示されている。同図の中央図上段に示しているように、離型フィルムFの樹脂供給領域に樹脂供給を終えたノズル23bは、その先端部分がクランプ機構21bにより閉塞される。このとき、ノズル23bの先端には、液状樹脂Rが糸引き状態又は塊状態となって残っていることがある。そこで、樹脂供給機構2Aが離型フィルムFに対する液状樹脂Rの供給を終了したとき、回転機構28及び移動機構29により樹脂受けカップ26をノズル23bの下に移動させ、ノズル23bの残液を樹脂受けカップ26内に回収する。ここで、ノズル23bの残液とは、樹脂供給を終えたノズル23bの先端から垂れた不要な液状樹脂Rのことを意味する。
【0035】
次いで、図5の右図に示すように、樹脂供給機構2AのサーボモータMоの駆動力により、ノズル23bを離型フィルムFの樹脂供給領域外に退避させるノズル退避位置Pa2に移動させると共に、前後移動機構29aのシリンダ29c内に供給されたエアーの流体圧により、ノズル23bの下に位置する樹脂受けカップ26をノズル23bの移動に追従させて移動させる。このとき、制御部5は、一方の位置センサ30aにより検知したアーム27の移動始端と、他方の位置センサ30bにより検知したアーム27の移動終端との検知時間の差(アーム27の移動時間)に基づいて、予め演算された樹脂受けカップ26の移動速度とノズル23bの移動速度とが等速になるように、シリンダ29c内に供給するエアーの流体圧を調整する(図3も参照)。つまり、制御部5は、夫々の位置センサ30a,30bの検出結果に基づいて演算したアーム27の移動速度がノズル23bの移動速度と等速になるように、シリンダ29c内に供給するエアーの流体圧を調整する。具体的には、ノズル23bを中央位置Pa1からノズル退避位置Pa2まで移動させるのにかかる時間Tを算出し、この時間Tで、アーム27が中央位置Pa1からノズル退避位置Pa2まで移動するようにエアーを調整する。前述のように、アーム27の中央位置Pa1からノズル退避位置Pa2までの移動は2つのセンサ30a、30bによって感知している。
【0036】
このように、液状樹脂Rを受け止める樹脂受けカップ26を、ノズル23bの下に位置させた状態で、前後移動機構29aによりノズル23bの移動に追従させて移動させる。この前後移動機構29aにより、樹脂供給機構2Aによる樹脂供給を終了した後、ノズル23bの残液を樹脂受けカップ26で受け止めながら、ノズル23bを樹脂供給領域から退避させることができる。その結果、ノズル23bの残液が離型フィルムF上に落下することなく、良好な樹脂供給状態となる。また、クランプ機構21bによるノズル23bの閉塞後に、前後移動機構29aによりノズル23bの残液を樹脂受けカップ26で受け止めながら、ノズル23bを離型フィルムF上の樹脂供給領域から退避させることから、ノズル23bの糸引き状態を解消しつつ、残液も回収されるため、効率的である。さらに、クランプ機構21bに不備があり、液状樹脂Rが流れ出た状態であっても、この液状樹脂Rを樹脂受けカップ26で回収し、樹脂供給領域への落下を防止できる。
【0037】
[樹脂成形品の製造方法]
主に図6を用いて、樹脂成形品の製造方法について説明する。
【0038】
まず、図1に示すように、第1収容部43からロボットアーム45により受け渡された樹脂封止前基板Saを基板ローダ41に載置する。このとき、検査機構は、成形対象物である基板S(樹脂封止前基板Sa)におけるチップ等の存在領域を検査しておく。制御部5は、少なくとも成形対象物である基板Sのサイズや基板Sにおけるチップ等の存在領域に基づいて、離型フィルムFの樹脂供給領域における液状樹脂Rの目標供給量及び目標供給位置(樹脂供給軌道)を演算(又は設定)する。また、離型フィルム切断モジュール1から受け渡された離型フィルムFを、吸引機構によりテーブル20の上面に吸着保持することにより、供給対象物としての離型フィルムFを樹脂供給機構2Aに供給する(♯61)。次いで、制御部5は、演算された目標供給量及び目標供給位置に基づいて、樹脂供給機構2Aのカートリッジ23が取り付けられたディスペンサユニット21aを移動させ、ノズル23bから離型フィルムF上に液状樹脂Rを供給する(♯62、樹脂供給ステップ)。
【0039】
次いで、制御部5は、ノズル23b(ディスペンサユニット21a)が樹脂供給軌道を最後まで辿った後、ノズル23bを中央位置Pa1の上方に移動させる。その後、クランプ機構21bを作動させて、ノズル23bを閉塞し(図5の左図上段参照)、次いで、ディスペンサユニット21a(ノズル23b)を上下移動させ、液状樹脂Rの液切りを行う。それから、制御部5は、重量センサ25で計測された離型フィルムF上の液状樹脂Rの供給量が目標供給量となっているか否か、つまり樹脂供給を終了するか否かを判定する(♯63)。離型フィルムF上の液状樹脂Rの供給量が目標供給量となっていない場合(♯63Nо)、制御部5は、クランプ機構21bを作動させてノズル23bを開き、樹脂供給機構2Aに、目標供給量と離型フィルムF上の液状樹脂Rの供給量の差分(すなわち樹脂供給量の不足分)の液状樹脂Rを離型フィルムF上の樹脂供給領域の中央部分に供給させる(♯62)。一方、離型フィルムF上の液状樹脂Rの供給量が目標供給量となっている場合(♯63Yes)、制御部5は樹脂供給を終了させる。
【0040】
樹脂供給が終了した直後に、制御部5は、回転機構28を作動させて、樹脂受けカップ26が取り付けられたアーム27をカップ退避位置Pb(退避位置)からノズル退避位置Pa2(第二位置)まで回転移動させ、その後、前後移動機構29aを作動させて、樹脂受けカップ26が取り付けられたアーム27をノズル退避位置Pa2からノズル23bの下となる中央位置Pa1まで直進移動させる(♯64、図5の中央図参照)。このとき、制御部5は、必要に応じてディスペンサユニット21a又は上下移動機構29bを作動させて、樹脂受けカップ26がノズル23bに衝突しないようにノズル23b又はアーム27の高さ調整を行う。報知部6は、検知センサ22がノズル23bを検知した結果、樹脂受けカップ26がノズル23bの下に位置していない場合、樹脂回収ユニット2Bの誤作動を報知する。
【0041】
次いで、制御部5は、前後移動機構29aを作動させて、ノズル23bの下に位置する樹脂受けカップ26が取り付けられたアーム27を、樹脂供給機構2AのサーボモータMоの駆動力によるノズル23bの移動に追従させて、中央位置Pa1(樹脂供給領域内)からノズル退避位置Pa2(樹脂供給領域外)まで直進移動させる(♯65、樹脂回収ステップ、図5の右図参照)。この移動に際し、制御部5は、一方の位置センサ30aにより検知したアーム27の移動始端と、他方の位置センサ30bにより検知したアーム27の移動終端との検知時間の差から、樹脂受けカップ26の移動速度を演算し、この移動速度とノズル23bの移動速度とが等速になるように、シリンダ29c内に供給するエアーの流体圧を予め調整しておき(図3参照)、樹脂受けカップ26をノズル23bの移動に追従して移動させる。これにより、ノズル23bの移動時に、ノズル23bの更なる残液が誤って離型フィルムF上に垂れることが防止される。仮に、前後移動機構29aの作動時に、樹脂受けカップ26の移動速度が所定範囲内にない場合、報知部6は、樹脂回収ユニット2Bの誤作動を報知する。また、報知部6は、検知センサ22の検知結果として、樹脂受けカップ26がノズル23bの下に位置していない場合、樹脂回収ユニット2Bの誤作動を報知する。ノズル23bがノズル退避位置Pa2に到着した後、制御部5は、回転機構28により樹脂受けカップ26が取り付けられたアーム27をカップ退避位置Pbまで回転移動させる(♯66)。具体的には、制御部5は、回転機構28を作動させて、樹脂受けカップ26が取り付けられたアーム27をノズル退避位置Pa2(第二位置)からカップ退避位置Pb(退避位置)まで回転移動させる。
【0042】
次いで、図1図2に示すように、制御部5は、先ず、基板ローダ41により、樹脂封止前基板Saを上型UMに供給させ、その後、樹脂ローダ12に液状樹脂Rが供給された離型フィルムFを保持して圧縮成形モジュール3まで移送させ、下型LMに供給させる。つまり、樹脂封止前基板Saを上型UMに配置し、離型フィルムFを下型LMに配置する。その後、型締め機構35により上型UMと下型LMを型締めして樹脂封止済基板Sbを樹脂成形する(♯67、樹脂成形ステップ)。樹脂成形が完了した後、基板ローダ41により樹脂封止済基板Sbを圧縮成形モジュール3から搬送モジュール4まで搬送し、ロボットアーム45が基板ローダ41から樹脂封止済基板Sbを受け取り、第2収容部44に収納する(図1参照)。制御部5は、離型フィルムF上の液状樹脂Rの供給を継続するか否かを判定し、樹脂供給を継続する場合(♯68Yes)は♯61~♯67までの制御を実行し、樹脂供給を継続しない場合(♯68Nо)は終了する。
【0043】
[別実施形態]
以下、上述した実施形態と同様の部材については、理解を容易にするため、同一の用語、符号を用いて説明する。
<1>上述した実施形態では、樹脂受け部材を有底筒状の樹脂受けカップ26で構成したが、ノズル23bの残液を受け止める部材であれば、板状部材等で構成しても良く、特に限定されない。また、糸切り状態となっているノズル23bの残液が樹脂受けカップ26の側面に付着しないように、樹脂受けカップ26を傾けた姿勢としても良いし、樹脂受けカップ26の下部に液垂れ防止フランジ等を設けても良い。
【0044】
<2>上述した実施形態では、樹脂供給機構2Aと樹脂回収ユニット2Bとを別駆動で構成したが、例えば1つの電動モータの駆動力により両者を一体駆動させても良い。この場合、装置のコンパクト化の観点から、吐出機構21に樹脂受けカップ26を隣接して配置すると好適である。
【0045】
<3>上述した実施形態では、カップ退避位置Pbにある樹脂受けカップ26を後側、且つ、回転軸28aを前側に配置したが、カップ退避位置Pbにある樹脂受けカップ26を前側、且つ、回転軸28aを後側に配置しても良い。この場合、回転機構28を作動させることによって、樹脂受けカップ26をカップ退避位置Pb(退避位置)から中央位置Pa1(第一位置)まで一度に移動させることが可能となり、アーム27の移動操作を簡素化できる。
【0046】
<4>上述した実施形態では、樹脂供給を終了した後に樹脂受けカップ26をノズル23bの下に配置し、前後移動機構29aは、樹脂供給を終えたノズル23bの移動に追従して、樹脂受けカップ26が取り付けられたアーム27をY方向に直進移動させたが、樹脂供給途中に樹脂切りをしたいタイミングで樹脂受けカップ26をノズル23bの下に配置し、ノズル23bに追従させて樹脂受けカップ26を移動させても良い。例えば、離型フィルムF上に不連続で樹脂供給する場合、ディスペンサユニット21a(ノズル23b)が次の樹脂供給位置に移動する際、ノズル23bの移動に追従して樹脂受けカップ26が取り付けられたアーム27を移動させても良い。また、複数の塗布ラインが平行して離型フィルムF上に存在する場合、前後移動機構29aは、1つの塗布ラインの終点から次の塗布ラインの始点へと樹脂受けカップ26が取り付けられたアーム27をY方向に直進移動させても良い。
【0047】
<5>本実施形態における上下移動機構29bは、ディスペンサユニット21a(ノズル23b)の上下移動に追従して、つまりノズル23bと樹脂受けカップ26との離隔を一定にした状態で、樹脂受けカップ26が取り付けられたアーム27を上下移動させても良い。上下移動機構29bによりノズル23bと樹脂受けカップ26との離隔を一定に維持すれば、ノズル23bを上下移動させて液切りする際、樹脂受けカップ26の外側に液状樹脂Rが飛び散って離型フィルムF上に液垂れするといった不都合を確実に防止することができる。
【0048】
<6>上述した実施形態では、樹脂供給機構2Aの吐出機構21が縦向き(Z方向)であったが、樹脂供給機構2Aの吐出機構21を横向き(Y方向)としても良い。
【0049】
<7>上述した実施形態における移動機構(前後移動機構29a)は、図3に示すように、樹脂供給領域内の第一位置(中央位置Pa1)と樹脂供給領域外の第二位置(ノズル退避位置Pa2)との間で樹脂受け部材(樹脂受けカップ26)を直進移動させた。しかしながら、第一位置は樹脂供給領域内であればどの位置であっても良く、同様に第二位置は樹脂供給領域外であればどの位置であっても良い。また、前後移動機構29aは、直進移動に代えてノズル23bに追従させた円弧移動又は蛇行移動等であっても良い。
【0050】
<8>上述した実施形態では、離型フィルム切断モジュール1と樹脂供給モジュール2とを別々に設け、2モジュール構成としたが、樹脂供給モジュール2の内部に離型フィルム切断機構を設けて、1モジュール構成としても良い。
【0051】
<9>上述した実施形態における基板Sは、円形状、矩形状等どの様な形状であっても良い。基板Sのサイズも特に限定されないが、液状樹脂Rの供給範囲が広く、樹脂供給機構2Aの吐出機構21の移動距離が大きくなる大判基板(例えば、直径300mm、300mm角などの基板)がより好ましい。
【0052】
<10>上述した実施形態では、ダイダウンのコンプレッション方式で説明したが、ダイアップのコンプレッション方式として、基板等の成形対象物を、樹脂供給機構2Aにおいて樹脂を供給する供給対象物としても良い。また、離型フィルムFを省略して成形型Mを、樹脂供給機構2Aにおいて樹脂を供給する供給対象物としても良い。
【0053】
[上記実施形態の概要]
以下、上述の実施形態において説明した樹脂成形装置D、樹脂成形品の製造方法及び樹脂材料供給方法の概要について説明する。
【0054】
(1)樹脂成形装置Dの特徴構成は、供給対象物(離型フィルムF)に液状樹脂Rを吐出するノズル23bを含む樹脂供給機構2Aと、ノズル23bから垂れた液状樹脂Rを受け止める樹脂受け部材(樹脂受けカップ26)と、ノズル23bの下に位置する樹脂受け部材をノズル23bの移動に追従させて移動させる移動機構29(前後移動機構29a)と、を有する樹脂回収ユニット2Bと、上型UMと上型UMに対向する下型LMとを含む成形型Mと、供給対象物を上型UMと下型LMとの間に配置した状態で成形型Mを型締めする型締め機構35と、少なくとも樹脂供給機構2A及び樹脂回収ユニット2Bの作動を制御する制御部5と、を備えた点にある。
【0055】
液状樹脂Rの粘性が高いほど、樹脂供給機構2Aにより樹脂供給を停止した後、ノズル23bの糸引き状態が長く続くため、ノズル23bの残液が離型フィルムFに落下して、離型フィルムFへの樹脂供給状態(樹脂供給量及び樹脂供給位置)にバラツキが発生する。本構成では、液状樹脂Rを受け止める樹脂受けカップ26を、ノズル23bの下に位置させた状態で、前後移動機構29aによりノズル23bの移動に追従させて移動させる。この前後移動機構29aにより、樹脂供給機構2Aが樹脂供給を停止した後、ノズル23bの残液を樹脂受けカップ26で受け止めながら、ノズル23bを樹脂供給領域から退避させることができる。その結果、ノズル23bの残液が離型フィルムF上に落下することなく、良好な樹脂供給状態となる。このように、精度よく供給対象物に液状樹脂Rを供給できる樹脂成形装置Dを提供できた。
【0056】
(2)樹脂回収ユニット2Bは、樹脂受け部材(樹脂受けカップ26)を保持するアーム27を更に有し、樹脂供給機構2Aはモータ(サーボモータMо)を有しており、モータの駆動力によりノズル23bを移動させ、移動機構(前後移動機構29a)はシリンダ29cを有しており、アーム27がシリンダ29c内に供給される流体の流体圧で移動することにより樹脂受け部材を移動させても良い。
【0057】
本構成のように、樹脂受けカップ26を保持するアーム27をシリンダ29c内に供給される流体圧により移動させれば、樹脂供給機構2AのサーボモータMоとは別駆動となるため、樹脂回収ユニット2Bを後付けすることが可能となる。また、流体圧による駆動形態であれば、樹脂回収ユニット2Bを安価に構成することができる。
【0058】
(3)樹脂回収ユニット2Bは、アーム27を回転させる回転機構28を更に有し、移動機構(前後移動機構29a)は、樹脂供給領域内の第一位置(中央位置Pa1)と樹脂供給領域外の第二位置(ノズル退避位置Pa2)との間で樹脂受け部材(樹脂受けカップ26)を直進移動させ、回転機構28は、アーム27を回転させて、樹脂受け部材を退避位置(カップ退避位置Pb)と第一位置又は第二位置との間で移動させても良い。
【0059】
本構成のように、回転機構28や前後移動機構29aを作動させることにより樹脂受けカップ26を中央位置Pa1,ノズル退避位置Pa2又はカップ退避位置Pbに移動させる構成であれば、樹脂供給機構2Aにより樹脂供給を終了した後、カップ退避位置Pbにある樹脂受けカップ26を樹脂供給領域内にあるノズル23bの下(中央位置Pa1)に迅速に位置させることが可能となる。その結果、ノズル23bの残液を確実に回収できる。
【0060】
(4)樹脂回収ユニット2Bは、アーム27の移動始端及び移動終端に夫々配置された少なくとも2つの位置センサ30a,30bを更に有し、制御部5は、夫々の位置センサ30a,30bの検出結果に基づいて演算した樹脂受け部材(樹脂受けカップ26)の移動速度がノズル23bの移動速度と等速になるように、流体圧を調整しても良い。
【0061】
ノズル23bの樹脂供給領域外への退避速度が一定である場合に、本構成のように位置センサ30a,30bの検出結果に基づいて演算した樹脂受けカップ26の移動速度がノズル23bの移動速度と等速となるように流体圧を調整すれば、簡便な制御形態でありながら、ノズル23bの下に樹脂受けカップ26が存在する状態を良好に維持できる。
【0062】
(5)樹脂回収ユニット2Bは、ノズル23bを検知する検知センサ22を更に有し、樹脂受け部材(樹脂受けカップ26)の移動中、検知センサ22がノズル23bを検知しても良い。
【0063】
本構成のように、前後移動機構29aの作動中に検知センサ22がノズル23bを検知すれば、樹脂受けカップ26がノズル23bの残液を確実に受け止めることができる。
【0064】
(6)上記樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法の特徴は、樹脂供給機構2Aを用いて供給対象物(離型フィルムF)に液状樹脂Rを供給する樹脂供給ステップと、樹脂供給ステップで供給対象物に液状樹脂Rを供給した後に、樹脂回収ユニット2Bを用いてノズル23bから垂れた液状樹脂Rを回収する樹脂回収ステップと、樹脂供給ステップで供給された液状樹脂Rを用いて樹脂成形を行う樹脂成形ステップと、を含む点にある。
【0065】
本方法では、樹脂回収ステップによりノズル23bの残液を回収するため、ノズル23bの残液が離型フィルムF上に落下することなく、離型フィルムFへの樹脂供給状態(樹脂供給量及び樹脂供給位置)が良好なものとなる。このように、精度よく供給対象物に液状樹脂Rを供給できる樹脂成形品の製造方法を提供できた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、樹脂成形装置及び樹脂成形品の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
2A :樹脂供給機構
2B :樹脂回収ユニット
5 :制御部
22 :検知センサ
23b :ノズル
26 :樹脂受けカップ(樹脂受け部材)
27 :アーム
28 :回転機構
29 :移動機構
29a :前後移動機構
29c :シリンダ
30 :位置センサ
35 :型締め機構
D :樹脂成形装置
F :離型フィルム(供給対象物)
LM :下型
M :成形型
Mо :サーボモータ(モータ)
Pa1 :中央位置(第一位置)
Pa2 :ノズル退避位置(第二位置)
Pb :カップ退避位置(退避位置)
R :液状樹脂
UM :上型
図1
図2
図3
図4
図5
図6