(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20240111BHJP
B29C 45/02 20060101ALI20240111BHJP
B29C 45/76 20060101ALI20240111BHJP
B29C 45/24 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H01L21/56 T
B29C45/02
B29C45/76
B29C45/24
(21)【出願番号】P 2020145010
(22)【出願日】2020-08-28
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】奥西 祥人
(72)【発明者】
【氏名】小河 冬彦
【審査官】平野 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-018889(JP,A)
【文献】特開平07-094541(JP,A)
【文献】特開2019-034445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/56
B29C 45/02
B29C 45/76
B29C 45/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポットに収容された樹脂材料をプランジャにより押し出してキャビティに注入する樹脂成形装置であって、
前記プランジャを押し出す方向に移動させた時に前記プランジャに加わる第1荷重と、前記プランジャを前記押し出す方向とは反対側に移動させた時に前記プランジャに加わる第2荷重とに基づいて、前記ポットと前記プランジャとの間の摩擦力を演算する演算部を備え
、
前記演算部は、前記第1荷重の最大値と前記第2荷重の最小値とに基づいて、前記摩擦力を演算する、樹脂成形装置。
【請求項2】
ポットに収容された樹脂材料をプランジャにより押し出してキャビティに注入する樹脂成形装置であって、
前記プランジャを押し出す方向に移動させた時に前記プランジャに加わる第1荷重と、前記プランジャを前記押し出す方向とは反対側に移動させた時に前記プランジャに加わる第2荷重とに基づいて、前記ポットと前記プランジャとの間の摩擦力を演算する演算部を備え、
前記演算部は、前記第1荷重の最大値と前記第2荷重の最小値との差分に基づいて、前記摩擦力を演算する、樹脂成形装置。
【請求項3】
前記演算部により得られた摩擦力を用いて、前記プランジャによる前記樹脂材料を押し出す力を調整する調整部を備える、請求項1
又は2に記載の樹脂成形装置。
【請求項4】
前記演算部により得られた摩擦力と予め設定された基準値との比較結果に基づいて、装置運転の可否を判断する判断部を備える、請求項1乃至
3の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項5】
前記ポット内に付着した樹脂を前記プランジャを用いて前記ポットの外部に掻き出すクリーニング動作を行うものであり、
前記演算部は、前記クリーニング動作中において前記第1荷重及び前記第2荷重を取得する、請求項1乃至
4の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項6】
前記クリーニング動作は、前記プランジャを所定の掻き出し位置と、前記樹脂材料を収容するためのロード位置との間で前記プランジャを移動させることにより行われるものであり、
前記演算部は、前記プランジャを前記ロード位置から前記掻き出し位置に移動させる時に前記第1荷重を取得し、前記プランジャを前記掻き出し位置から前記ロード位置に移動させる時に前記第2荷重を取得する、請求項
5に記載の樹脂成形装置。
【請求項7】
前記キャビティが形成された第1型と、
前記第1型に対向し、前記ポット及び前記プランジャを有する樹脂注入部が設けられた第2型と、
前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め機構とを備え、
前記樹脂注入部は、
前記ポットが形成され、弾性部材を介して前記第2型に対して進退可能に設けられ、前記第2型の型面上に張り出した張り出し部を有するポットブロックと、
前記プランジャを有し、前記プランジャを移動させて前記ポットから前記キャビティに前記樹脂材料を注入するトランスファ機構とを備える、請求項1乃至
6の何れか一項に記載の樹脂成形装置。
【請求項8】
前記型締め機構が前記第1型及び前記第2型を型開きする型開き動作中において、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて、前記第2型の型面上の樹脂成形品と前記ポットブロック上の不要樹脂とを分離する、請求項
7に記載の樹脂成形装置。
【請求項9】
樹脂成形後に前記ポットブロック上の不要樹脂を搬出する搬送機構を備え、
前記搬送機構は、前記不要樹脂を吸着するための不要樹脂用吸着部を有しており、
前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部を前記ポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて前記ポットブロックから前記不要樹脂を剥離し、その後、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着して前記不要樹脂を搬出する、請求項
7又は
8に記載の樹脂成形装置。
【請求項10】
請求項1乃至
9の何れか一項に記載の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形装置、及び樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示すように、ポット内の樹脂をプランジャで加圧して金型内のキャビティに注入して樹脂成形する半導体樹脂封止装置において、プランジャの下部にロードセルを設置して、プランジャの上昇時の摺動抵抗力を測定し、予め定められた摺動閾値と比較することにより、装置異常を判定して装置を制御するものが考えられている。
【0003】
なお、特許文献1では、プランジャにかかる力を歪みゲージで検出する場合には、プランジャの上昇時の摺動抵抗力を測定して予め定められた摺動閾値と比較し、及び、プランジャの加工時に摺動抵抗力を測定して予め定められた摺動閾値と比較して、装置異常を判定して装置を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の半導体樹脂封止装置において、プランジャの上昇時及び下降時のそれぞれで検出された摺動抵抗値には、ポットとプランジャとの間の摩擦力だけでなく、プランジャに加わるその他の荷重も含まれている。つまり、上記の半導体樹脂封止装置では、ポットとプランジャとの間の摩擦力を精度良く求めることができない。
【0006】
一方、本願発明者は、ポットに樹脂材料を収容しない状態で、停止させたプランジャの荷重を測定し、それを基準にしてプランジャを上下動させた際のプランジャの荷重を測定して、ポットとプランジャとの間の摩擦力を測定する構成を考えている。
【0007】
ところがこの構成では、プランジャを上昇させた時の荷重から求めた摩擦力と、プランジャを下降させた時の荷重から求めた摩擦力とにばらつきが生じることがわかった。このばらつきは、例えば下降させたプランジャを停止させて基準とした場合、プランジャには、ポットから上向きの摩擦力を受けて停止していることが原因と考えられる。つまり、停止状態のプランジャは摩擦力がゼロの状態ではないので、基準として用いても正確に摩擦力を求めることができないと考えられる。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、ポットとプランジャとの間の摩擦力を精度良く求めることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る樹脂成形装置は、ポットに収容された樹脂材料をプランジャにより押し出してキャビティに注入する樹脂成形装置であって、前記プランジャを押し出す方向に移動させた時に前記プランジャに加わる第1荷重と、前記プランジャを前記押し出す方向とは反対側に移動させた時に前記プランジャに加わる第2荷重とに基づいて、前記ポットと前記プランジャとの間の摩擦力を演算する演算部を備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る樹脂成形品の製造方法は、上記の樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
このように構成した本発明によれば、ポットとプランジャとの間の摩擦力を精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る一実施形態の樹脂成形装置の構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態の成形モジュールの構成を示す模式図である。
【
図3】同実施形態の摩擦力測定機能を実現するための構成を示す模式図である。
【
図4】同実施形態の成形モジュールの基板載置状態及び樹脂材料装填状態を示す模式図である。
【
図5】同実施形態の成形モジュールの型締め状態を示す模式図である。
【
図6】同実施形態の成形モジュールの樹脂注入状態を示す模式図である。
【
図7】同実施形態の成形モジュールの基準位置Xを示す模式図である。
【
図8】同実施形態の成形モジュールの引き剥がし状態を示す模式図である。
【
図9】同実施形態の成形モジュールの型開き動作開始時の状態を示す模式図である。
【
図10】同実施形態の成形モジュールの型開き動作中のゲートブレイク動作を示す模式図である。
【
図11】同実施形態の成形モジュールの型開き動作中のゲートブレイク後の状態を示す模式図である。
【
図12】同実施形態の成形モジュールの型開き状態を示す模式図である。
【
図13】同実施形態のアンローダの各吸着部が樹脂成形品及び不要樹脂に接触した状態を示す模式図である。
【
図14】同実施形態において不要樹脂が上昇して不要樹脂用吸着部が縮んだ状態を示す模式図である。
【
図15】同実施形態のアンローダが樹脂成形品及び不要樹脂を吸着して搬出する状態を示す模式図である。
【
図16】同実施形態の掻き出し動作における(a)掻き出し位置、及び、(b)ロード位置を示す模式図である。
【
図17】同実施形態のクリーニング動作中における第1荷重P1及び第2荷重P2の測定区間を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明について、例を挙げてさらに詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0014】
本発明の樹脂成形装置は、前述のとおり、ポットに収容された樹脂材料をプランジャにより押し出してキャビティに注入する樹脂成形装置であって、前記プランジャを押し出す方向に移動させた時に前記プランジャに加わる第1荷重と、前記プランジャを前記押し出す方向とは反対側に移動させた時に前記プランジャに加わる第2荷重とに基づいて、前記ポットと前記プランジャとの間の摩擦力を演算する演算部を備えることを特徴とする。
この樹脂成形装置であれば、プランジャを押し出す方向に移動させた時にプランジャに加わる第1荷重と、プランジャを押し出す方向とは反対側に移動させた時にプランジャに加わる第2荷重とに基づいて、ポットとプランジャとの間の摩擦力を演算しており、停止状態のプランジャの荷重を基準としていないので、ポットとプランジャとの間の摩擦力を精度良く求めることができる。
【0015】
摩擦力の具体的な演算方法としては、前記演算部は、前記第1荷重の最大値と前記第2荷重の最小値とに基づいて、前記摩擦力を演算することが考えられる。
【0016】
より詳細な摩擦力の演算方法としては、前記演算部は、前記第1荷重の最大値と前記第2荷重の最小値との差分に基づいて、前記摩擦力を演算することが考えられる。
【0017】
樹脂材料の注入圧力を精度良く制御するためには、前記演算部により得られた摩擦力を用いて、前記プランジャによる前記樹脂材料を押し出す力を調整する調整部を備えることが望ましい。
【0018】
前記演算部により得られた摩擦力と予め設定された基準値との比較結果に基づいて、装置運転の可否を判断する判断部を備えることが望ましい。
この構成であれば、例えば装置運転が不可と判断された場合には、適切なタイミングで運転を止めてメンテナンスを行うことができる。
【0019】
樹脂成形装置は、樹脂成形後において、前記ポット内に付着した樹脂を前記プランジャを用いて前記ポットの外部に掻き出すクリーニング動作を行うものがある。
この場合、前記演算部は、前記クリーニング動作中において前記第1荷重及び前記第2荷重を取得することが望ましい。
この構成であれば、樹脂成形装置の既存の動作を利用することで、第1荷重及び第2荷重を取得するための動作を別途行う必要がない。
【0020】
具体的に前記クリーニング動作は、前記プランジャを所定の掻き出し位置と、前記樹脂材料を収容するためのロード位置との間で前記プランジャを移動させることにより行われるものである。
このクリーニング動作において、前記演算部は、前記プランジャを前記ロード位置から前記掻き出し位置に移動させる時に前記第1荷重を取得し、前記プランジャを前記掻き出し位置から前記ロード位置に移動させる時に前記第2荷重を取得する。
【0021】
本発明の樹脂成形装置は、エッジゲート型のトランスファ成形を行うものとすることが考えられる。具体的に本発明の樹脂成形装置は、前記キャビティが形成された第1型と、前記第1型に対向し、前記ポット及び前記プランジャを有する樹脂注入部が設けられた第2型と、前記第1型及び前記第2型を型締めする型締め機構とを備え、前記樹脂注入部は、前記ポットが形成され、弾性部材を介して前記第2型に対して進退可能に設けられ、前記第2型の型面上に張り出した張り出し部を有するポットブロックと、前記プランジャを有し、前記プランジャを移動させて前記ポットから前記キャビティに前記樹脂材料を注入するトランスファ機構とを備えることが考えられる。
【0022】
前記型締め機構が前記第1型及び前記第2型を型開きする型開き動作中において、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて、前記第2型の型面上の樹脂成形品と前記ポットブロック上の不要樹脂とを分離することが望ましい。
この構成であれば、ポットブロック上の不要樹脂はプランジャにより第1型に向かって押されるので、ポットブロックを進退させる弾性部材の弾性力を大きくすることなく、樹脂成形品と不要樹脂とを確実に分離することができる。また、弾性部材の弾性力を大きくする必要がないので、弾性部材の大型化を防ぎ、更には成形型の大型化や不要樹脂の大型化を招くこともない。
特に本発明では、ポットとプランジャとの間の摩擦力を精度良く求めることができるので、プランジャにより不要樹脂を押す力を精度良く制御することができ、プランジャを用いて樹脂成形品と不要樹脂とを分離する動作を確実に行うことができる。
【0023】
本発明の樹脂成形装置は、樹脂成形後に前記ポットブロック上の不要樹脂を搬出する搬送機構を備え、前記搬送機構は、前記不要樹脂を吸着するための不要樹脂用吸着部を有しており、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部を前記ポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、前記トランスファ機構が前記プランジャを前記第1型に向かって移動させて前記ポットブロックから前記不要樹脂を剥離し、その後、前記搬送機構が前記不要樹脂用吸着部により前記不要樹脂を吸着して前記不要樹脂を搬出することが望ましい。
この構成であれば、不要樹脂用吸着部をポットブロック上の不要樹脂に接触させた後に、プランジャを第1型に向かって移動させてポットブロックから不要樹脂を剥離し、その後、不要樹脂用吸着部により不要樹脂を吸着するので、ポットブロック上の不要樹脂を安定して回収することができる。
具体的には、不要樹脂用吸着部により不要樹脂を吸着する前に、プランジャによって不要樹脂をポットブロックから剥離しているので、不要樹脂とポットブロックとの接触面積を大きくしたとしても、不要樹脂用吸着部により吸着した不要樹脂をポットブロックから確実に回収することができる。また、プランジャによって不要樹脂をポットブロックから剥離する際に、不要樹脂用吸着部が不要樹脂に接触しているので、不要樹脂がポットブロック上で傾く等により生じる吸着不良を防ぐことができる。以上により、ポットブロック上の不要樹脂を安定して回収することができる。
特に本発明では、ポットとプランジャとの間の摩擦力を精度良く求めることができるので、プランジャにより不要樹脂を押す力を精度良く制御することができ、プランジャを用いてポットブロックから不要樹脂を剥離する動作を確実に行うことができる。
【0024】
また、上述した樹脂成形装置を用いた樹脂成形品の製造方法も本発明の一態様である。
【0025】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0026】
<樹脂成形装置の全体構成>
本実施形態の樹脂成形装置100は、電子部品Wxが接続された成形対象物W1を樹脂材料Jを用いたトランスファ成形によって樹脂成形するものである。
【0027】
ここで、成形対象物W1としては、例えば金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミックス製基板、回路基板、半導体製基板、配線基板、リードフレーム等であり、配線の有無は問わない。また、樹脂成形のための樹脂材料Jは例えば熱硬化性樹脂を含む複合材料であり、樹脂材料Jの形態は顆粒状、粉末状、液状、シート状又はタブレット状等である。さらに、成形対象物W1の上面に接続される電子部品Wxとしては、例えばベアチップ又は樹脂封止されたチップである。
【0028】
具体的に樹脂成形装置100は、
図1に示すように、成形前の成形対象物W1及び樹脂材料Jを供給する供給モジュール100Aと、樹脂成形する成形モジュール100Bと、成形後の成形対象物W2(以下、樹脂成形品W2)を収容する収納モジュール100Cとを、それぞれ構成要素として備えている。なお、供給モジュール100Aと、成形モジュール100Bと、収納モジュール100Cとは、それぞれ他の構成要素に対して、互いに着脱されることができ、かつ、交換されることができる。また、成形モジュール100Bを2つ又は3つにするなど、各構成要素を増加させることもできる。
【0029】
供給モジュール100Aには、成形対象物W1を供給する成形対象物供給部11と、樹脂材料Jを供給する樹脂材料供給部12と、成形対象物供給部11から成形対象物W1を受け取り成形モジュール100Bに搬送し、樹脂材料供給部12から樹脂材料Jを受け取り成形モジュール100Bに搬送する搬送装置13(以下、ローダ13)とが設けられている。
【0030】
ローダ13は、供給モジュール100Aと成形モジュール100Bとの間を行き来するものであり、供給モジュール100Aと成形モジュール100Bとに亘って設けられたレール(不図示)に沿って移動する。
【0031】
成形モジュール100Bは、
図2に示すように、樹脂材料Jが注入されるキャビティ2aが形成された成形型の一方である第1型2(以下、上型2)と、上型2に対向して配置され、キャビティ2aに樹脂材料Jを注入する樹脂注入部4が設けられた成形型の他方である第2型3(以下、下型3)と、上型2及び下型3を型締めする型締め機構5とを有する。上型2は、上型ホルダ101に保持されており、当該上型ホルダ101は、上プラテン102に固定されている。また、上型2は、上型ベースプレート103を介して上型ホルダ101に取り付けられている。下型3は、下型ホルダ104に保持されており、当該下型ホルダ104は、型締め機構5により昇降する可動プラテン105に固定されている。また、下型3は、下型ベースプレート106を介して下型ホルダ104に取り付けられている。
【0032】
樹脂注入部4は、樹脂材料Jを収容するポット41aが形成されたポットブロック41と、ポット41a内に設けられたプランジャ421を有するトランスファ機構42とを備えている。なお、ポット41aは、例えば円筒状をなす筒状部材410により形成されている。この筒状部材410は、ポットブロック41に形成された貫通孔に嵌め入れられている。
【0033】
ポットブロック41は、下型3に対して昇降可能となるように弾性部材43により弾性支持されている。つまり、ポットブロック41は、弾性部材43を介して下型3に対して昇降可能に設けられている。なお、弾性部材43は、ポットブロック41の下側に設けられている。
【0034】
また、ポットブロック41の上端部には、下型3の上面である型面上に張り出した張り出し部411が形成されている。さらに、ポットブロック41の上面には、ポット41aから注入された樹脂材料Jをキャビティ2aに導入する樹脂流路となるカル部41b及びゲート部41cが形成されている。また、張り出し部411は、上型2及び下型3を型締めした状態で、その上面が上型2に接触するとともに、その下面が成形対象物W1を下型3の型面との間で挟むことになる。
【0035】
トランスファ機構42は、上型2及び下型3が型締めされた状態でプランジャ421を移動させてポット41aからキャビティ2aに樹脂材料Jを注入するものである。具体的にトランスファ機構42は、ポット41aにおいて加熱されて溶融した樹脂材料Jを圧送するためのプランジャ421と、当該プランジャ421を駆動するプランジャ駆動部422とを有している。
【0036】
上型2には、成形対象物W1の電子部品Wxを収容するとともに溶融した樹脂材料Jが注入されるキャビティ2aが形成されている。また、上型2には、ポットブロック41に対向する部分に凹部2bが形成されるとともに、ポットブロック41のカル部41b及びゲート部41cとキャビティ2aとを接続するランナ部2cが形成されている。なお、図示しないが上型2には、ポットブロック41とは反対側にエアベントが形成されている。また、ランナ部2cを省略し、カル部41bとキャビティ2aとをゲート部41cを介して直接的に接続することもできる。
【0037】
また、上型2には、樹脂成形後の成形対象物W2を上型2から離型させるための複数のエジェクタピン61が設けられている。これらエジェクタピン61は、上型2の所要箇所に貫通して上型2に対して昇降可能に設けられており、上型2の上側に設けられたエジェクタプレート62に固定されている。エジェクタプレート62は、弾性部材63を介して上プラテン102等に設けられており、リターンピン64を有している。型締め時にリターンピン64が下型3における成形対象物W1の載置領域外に接触することにより、エジェクタプレート62を上型2に対して上昇させる。これにより、型締め時においてエジェクタピン61は上型2の型面に引っ込んだ状態となる。一方、型開き時においては下型3が下降するに伴って、エジェクタプレート62は上型2に対して下降し、エジェクタピン61が弾性部材63の弾性力によって樹脂成形品W2を上型2から離型する。
【0038】
そして、型締め機構5により上型2及び下型3を型締めすると、カル部41b、ゲート部41c、凹部2b及びランナ部2cからなる樹脂流路が、ポット41aとキャビティ2aとを連通する(
図4参照)。また、上型2及び下型3を型締めすると、ポットブロック41の張り出し部411の下面と下型3の型面との間に成形対象物W1のポット側端部が挟まれることになる。この状態でプランジャ421により溶融した樹脂材料Jをキャビティ2aに注入すると、成形対象物W1の電子部品Wxが樹脂封止される。
【0039】
収納モジュール100Cには、
図1に示すように、樹脂成形品W2を収納する収納部14と、成形モジュール100Bから樹脂成形品W2を受け取り、収納部14に搬送する搬送装置15(以下、アンローダ15)とが設けられている。
【0040】
アンローダ15は、成形モジュール100Bと収納モジュール100Cとの間を行き来するものであり、成形モジュール100Bと収納モジュール100Cとに亘って設けられたレール(不図示)に沿って移動する。
【0041】
<ポット41aとプランジャ421との間の摩擦力測定機能>
そして、本実施形態の樹脂成形装置100は、ポット41aとプランジャ421との間に発生する摩擦力(摺動抵抗値)を測定する機能を有している。なお、この摩擦力演算測定機能は、例えば供給モジュール100Aに設けられた制御部COMにより発揮される。
【0042】
具体的に樹脂成形装置100では、
図3に示すように、プランジャ421に加わる荷重を測定する力センサPSが設けられており、当該力センサPSにより得られる荷重を用いて、ポット41aとプランジャ421との間の摩擦力Fを演算する。
【0043】
本実施形態では、プランジャ421とプランジャ駆動部422との間に力センサPSが設けられており、力センサとして例えば引張圧縮型ロードセルを用いることが考えられる。その他、力センサPSとしては、重量センサ、荷重センサ等を用いることもできる。
【0044】
また、制御部COMは、ポット41a内に樹脂材料Jが収容されていない状態で、ポット41aとプランジャ421との間の摩擦力Fを演算する演算部71を有している。
【0045】
この演算部71は、プランジャ421を押し出す方向に移動させた時(プランジャ421の上昇時)にプランジャ421に加わる第1荷重P1と、プランジャ421を押し出す方向とは反対側に移動させた時(プランジャ421の下降時)にプランジャ421に加わる第2荷重P2とを力センサPSから取得し、取得した第1荷重P1及び第2荷重P2に基づいて、ポット41aとプランジャ421との間の摩擦力Fを演算する。
【0046】
具体的に演算部71は、第1荷重P1の最大値P1maxと第2荷重P2の最小値P2minとに基づいて、摩擦力Fを演算する。
【0047】
ここで、第1荷重P1の最大値P1maxは、摩擦力(F)と、摩擦力以外の荷重(L)とから求まる(P1max=F+L)。ここでは、プランジャ421を上昇させるので摩擦力はプラスの値である。
【0048】
また、第2荷重P2の最小値P2minは、摩擦力(-F)と、摩擦力以外の荷重(L)とから求まる(P2min=-F+L)。ここでは、プランジャ421を下降させるので摩擦力はマイナスの値である。
【0049】
そして、演算部71は、以下の式[1]により、第1荷重P1の最大値P1maxと第2荷重P2の最小値P2minとの差分(P1max-P2min)に基づいて、摩擦力Fを演算する。
P1max-P2min=(F+L)-(-F+L)=2F
F=(P1max-P2min)/2 [1]
以上により、摩擦力Fを求めることができる。なお、第1荷重P1及び第2荷重P2を取得するタイミング、及び摩擦力Fを求めるタイミングについては後述する。
【0050】
そして、制御部COMは、演算部71により得られた摩擦力Fを用いて、プランジャ421による樹脂材料Jを押し出す力を調整する調整部72を備えている。
【0051】
この調整部72は、演算部71により得られた摩擦力Fを用いて、予め設定された注入圧力となるようにプランジャ駆動部422を制御する。これにより、摩擦力Fに関わらず、樹脂材料Jの注入圧力を所望の値に制御することができる。例えば、注入圧力の設定値をPsetとした場合に、摩擦力Fの影響を受けて、実際の注入圧力は、Pset-Fとなる。このため、調整部72は、プランジャ駆動部422を制御することにより、摩擦力Fを考慮して、プランジャ421が押し出す力がPset+Fとなるようにする。
【0052】
また、制御部COMは、演算部71により得られた摩擦力Fと予め設定された基準値との比較結果に基づいて、装置運転の可否を判断する判断部73を備えている。
【0053】
この判断部73は、演算部71により得られた摩擦力Fと予め設定された基準値とを比較して、摩擦力Fが基準値以上であれば、例えばメンテナンスを促すためのアラームを出したり、樹脂成形装置100を停止したりする。
【0054】
<樹脂成形装置100の動作>
この樹脂成形装置100の動作について、
図4~
図15を参照して簡単に説明する。なお、
図4~
図15は、ポットブロック41の一方側(左側)のみを示し、他方側(右側)を省略しているが、各図において他方側の状態は一方側の状態と同じである。また、
図4~
図16では、力センサPSの図示を省略している。以下の動作は、例えば供給モジュール100Aに設けられた制御部COMが各部を制御することにより行われる。
【0055】
図4に示すように、上型2及び下型3が型開きされた状態で、ローダ13により成形前の成形対象物W1が搬送されて下型3に渡されて載置される。この際、上型2及び下型3は、樹脂材料Jを溶融し、硬化させることができる温度に昇温されている。その後、ローダ13により樹脂材料Jが搬送されてポットブロック41のポット41a内に収容される。
【0056】
この状態で、型締め機構5により下型3を上昇させると、
図5に示すように、ポットブロック41が上型2に当たり下型3に対して下降して、張り出し部411の下面が成形対象物W1のポット側端部に接触する。また、張り出し部411が接触しない成形対象物W1の外周部に、上型2の下面が接触する。これにより上型2及び下型3が型締めされる。この型締め後にトランスファ機構42がプランジャ駆動部422によってプランジャ421を上昇させると、
図6に示すように、ポット41a内の溶融した樹脂材料Jが樹脂通路を通ってキャビティ2a内に注入される。そして、所定の成形時間が経過し、キャビティ2a内で樹脂材料Jが硬化した後に、型締め機構5が上型2及び下型3を型開きする。
【0057】
ここで、本実施形態の樹脂成形装置100は、型締め機構5が上型2及び下型3を型開きする型開き動作中に、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離する動作(ゲートブレイク動作)を行う。なお、不要樹脂Kは、ポットブロック41上に残留して硬化した樹脂である。
【0058】
例えば上記の成形時間が経過する直前(型開き動作の開始前)に、トランスファ機構42は、
図7に示すように、プランジャ421が不要樹脂Kを押す力を所定値の力(例えばプランジャ421と不要樹脂Kとが剥離することなく接触状態を維持できる程度の比較的小さな値の力)に低下させる。ここで、上記の演算部71によりポット41aとプランジャ421との間の摩擦力Fが精度良く求められていることから、プランジャ421が不要樹脂Kを押す力の制御を精度良く行うことができる。なお、プランジャ421が押す力は、力センサPSにより測定される。
【0059】
そして、制御部COMは、上記所定値の力となったときのプランジャ421の位置を基準位置Xとして記憶する(
図7参照)。この基準位置Xは、後述するゲートブレイク動作及び不要樹脂Kの離型・回収の基準となる位置である。なお、基準位置Xは、プランジャ421の位置に限られず、当該プランジャ421に接続されたプランジャ駆動部422の駆動軸(トランスファ軸)等のその他の部材の位置としても良い。
【0060】
そして、型開き動作の開始前に、トランスファ機構42は、
図8に示すように、プランジャ421を上型2とは反対側に下降させて、所定の引き剥がし位置Yまで下降させる。プランジャ421を引き剥がし位置Yまで下降させることによって、プランジャ421の上面と不要樹脂Kの下面とが剥離する。この引き剥がし動作後に、トランスファ機構42は、プランジャ421を上述した基準位置Xまで上昇させる。このとき、プランジャ421の上面は、不要樹脂Kの下面に接触する(
図7の状態)。
【0061】
次に、
図9に示すように、型締め機構5が下型3の下降を開始することにより、型開き動作を開始する。型締め機構5が型開き動作を開始してクランプ力が所定値(上述したトランスファ機構42での所定値とは異なる)まで低下したタイミングで、
図10に示すように、トランスファ機構42は、プランジャ421を上型2に向かって上昇させる。これにより、ポットブロック41上の不要樹脂Kがプランジャ421によって上型2に向かって押される。なお、クランプ力は、型締め機構5のクランプ軸等に設けられた図示しないロードセル等の力センサ(重量センサ、荷重センサ等を含む)により測定される。
【0062】
また、トランスファ機構42がプランジャ421を上型2に向かって上昇させる際には、ポットブロック41は、
図10に示すように、圧縮した弾性部材43の復元力である弾性力を受けて下型3から上型2に向かって上昇する。つまり、型開き動作中において、弾性部材43の弾性力を受けてポットブロック41が下型3から上型2に向かって上昇するのと同時に、トランスファ機構42はプランジャ421を下型3から上型2に向かって上昇させることになる。
【0063】
なお、型開き動作中において、弾性部材43の弾性力を受けてポットブロック41が下型3から上型2に向かって上昇を開始するタイミングと、トランスファ機構42によってプランジャ421を下型3から上型2に向かって上昇を開始するタイミングとは一致していても良いし、異なっていても良い。
【0064】
上記のトランスファ機構42によるプランジャ421の上昇及び弾性部材43の弾性力によるポットブロック41の上昇によって、
図11に示すように、下型3の型面上の樹脂成形品W2とポットブロック41上の不要樹脂Kとが分離される(ゲートブレイク)。
【0065】
このとき、下型3上の樹脂成形品W2は、上型2に設けられたエジェクタピン61によって下型3の型面に向かって押圧されており、樹脂成形品W2の下面は、下型3の型面に密着した状態である(
図10参照)。このエジェクタピン61は、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離する際に樹脂成形品W2を下型3の型面に押圧する押圧部材として機能する。このように押圧部材により樹脂成形品W2を下型3の型面に押圧しているので、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとの間にせん断応力が加わりやすく、ゲートブレイクしやすくなる。
【0066】
ここで、押圧部材であるエジェクタピン61は、少なくとも樹脂成形品W2と不要樹脂Kとが分離されるまでの間、樹脂成形品W2を下型3の型面に向かって押圧する。言い換えれば、型開き動作中において、エジェクタピン61が樹脂成形品W2を押圧している間に、上述したポットブロック41の上昇及びプランジャ421の上昇によって、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとの分離が完了する。
【0067】
上記のゲートブレイク中において、不要樹脂Kは、弾性部材43の弾性力によって上側に押されるポットブロック41の上面と上型2の下面との間に挟まれた状態である(
図10及び
図11参照)。つまり、ポットブロック41は、型開き動作の開始から所定期間において、弾性部材43の弾性力によって上型2との間で不要樹脂Kを挟んだ状態となる。なお、所定期間とは、少なくともゲートブレイクが完了するまでを含む期間であり、弾性部材43が復元した初期状態(上型2に押されて圧縮される前の状態)となるように下型3が下降するまでの期間である。
【0068】
そして、所定期間経過後、つまり、型締め機構5がさらに下型3を下降させることによって、
図12に示すように、ポットブロック41は、不要樹脂Kを保持しつつ不要樹脂Kを上型2から剥離させる。ここで、ポットブロック41にカル部41b及びゲート部41cが形成されており、ポットブロック41と不要樹脂Kとの接触面積が、上型2と不要樹脂Kとの接触面積よりも大きいことから、不要樹脂Kはポットブロック41から剥離することなく上型2から剥離する。これにより、不要樹脂Kに接触して当該不要樹脂Kを上型2から剥離するためのエジェクタピンを不要にすることができる。
【0069】
また、トランスファ機構42がプランジャ421を上型2に向かって上昇させるのに伴い、ポットブロック41の張り出し部411が、下型3の型面との間で樹脂成形品W2を挟んだ状態から、樹脂成形品W2とは非接触の状態となる。
【0070】
なお、上記のゲートブレイクとは別に、トランスファ機構42は、ポットブロック41の下側の弾性部材43が復元した型締め前の初期状態になるまで、プランジャ421を上型2に向かって上昇させる(
図12参照)。これにより、次の樹脂成形において、張り出し部411の下側に成形対象物W1を載置する際に張り出し部411が邪魔にならない。
【0071】
以上のような型開き動作を行い、樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを分離した後に、アンローダ15によって樹脂成形品W2と不要樹脂Kとを搬出する。
【0072】
アンローダ15は、
図13に示すように、成形品用吸着部15aと不要樹脂用吸着部15bとを有している。成形品用吸着部15a及び不要樹脂用吸着部15bはともに樹脂製の吸着パッドにより構成されており、特に不要樹脂用吸着部15bは、例えばベローズ型のものであり、成形品用吸着部15aよりも伸縮性に優れたものである。また、成形品用吸着部15a及び不要樹脂用吸着部15bは、ベース部材151に設けられており、図示しない吸引源に接続されている。さらに、少なくとも成形品用吸着部15aは、ベース部材151に対して左右方向及び上下方向に移動可能に構成されている。その上、アンローダ15には、成形品用吸着部15aにより吸着された樹脂成形品W2を保持するための保持爪152が設けられている。
【0073】
上述した型開き動作終了後に、アンローダ15を上型2と下型3との間に進入させる。そして、
図13に示すように、成形品用吸着部15aを樹脂成形品W2の上面に接触させるとともに、不要樹脂用吸着部15bを不要樹脂Kの上面に接触させる。
【0074】
この状態で、トランスファ機構42は、
図14に示すように、プランジャ421を上昇させて不要樹脂Kをポットブロック41から持ち上げる。ここで、不要樹脂Kがポット41a内に残った残り部K1を有する場合には、当該残り部K1が不要樹脂Kの回収の妨げにならない程度に上昇させる。これにより、不要樹脂Kはポットブロック41から離型されるとともに、不要樹脂用吸着部15bに密着する。このとき不要樹脂用吸着部15bは弾性変形して縮んだ状態である。ここで、上記の演算部71によりポット41aとプランジャ421との間の摩擦力Fが精度良く求められていることから、プランジャ421により不要樹脂Kを押す力を精度良く制御することができる。
【0075】
不要樹脂用吸着部15bが縮んだ状態とした後に、不要樹脂用吸着部15bの吸着を開始して、不要樹脂用吸着部15bに不要樹脂Kを吸着させる。また、成形品用吸着部15aの吸着を開始して、成形品用吸着部15aに樹脂成形品W2を吸着させる。
【0076】
そして、
図15に示すように、樹脂成形品W2を吸着した成形品用吸着部15aをポットブロック41から離れる方向に移動させて、樹脂成形品W2を張り出し部411の外に移動させる。その後、アンローダ15を上昇させた後に、上型2及び下型3から退出する。これにより、アンローダ15によって樹脂成形品W2及び不要樹脂Kの搬出が行われる。
【0077】
ここで、アンローダ15には、上型2及び下型3をクリーニングするための清掃機構(不図示)を有するものがある。なお、清掃機構としては、回転ブラシ及び塵埃を吸引して排出する吸引部を有するものが考えられる。
【0078】
この場合には、樹脂成形品W2及び不要樹脂Kを吸着したアンローダ15は、上型2及び下型3の間に留まり、クリーニング動作を行う。また、このクリーニング動作中に、制御部COMは摩擦力演算機能を発揮する。
【0079】
ここで、まずトランスファ機構42は、ポット41a内に付着した樹脂を掻き出す動作を行う。つまり、トランスファ機構42は、
図16に示すように、プランジャ421を所定の掻き出し位置まで上昇させる。ここで、所定の掻き出し位置は、例えば、プランジャ421の上面がポット41aの開口位置よりも上側となる位置である。
【0080】
そして、トランスファ機構42は、所定の掻き出し位置から樹脂材料Jを収容するためのロード位置まで下降させる。
図17に示すように、このプランジャ421を掻き出し位置からロード位置に下降させる下降動作(区間a)において、演算部71は、ロードセル等の力センサPSから第2荷重P2を取得する。
【0081】
その後、トランスファ機構42は、再び、プランジャ421を所定の掻き出し位置まで上昇させる。これにより、ポット内に付着した樹脂をポット41a外に掻き出す。
図17に示すように、このプランジャ421をロード位置から掻き出し位置から上昇させる上昇動作(区間b)において、演算部71は、ロードセル等の力センサPSから第1荷重P1を取得する。
【0082】
その後、アンローダ15に設けた清掃機構により、上型2、下型3、ポットブロック41及びプランジャ421をクリーニングする。また、演算部71は、区間aで取得した第2荷重P2の最小値P2minと区間bで取得した第1荷重の最大値P1maxとを用いて、上述した式[1]により摩擦力Fを演算する。
【0083】
なお、クリーニング動作において、上記の掻き出し位置からロード位置に下降させる下降動作及びロード位置から掻き出し位置に上昇させる上昇動作はそれぞれ複数回行っても良い。
【0084】
また、プランジャ421の下降動作及び上昇動作をそれぞれ複数回行う場合には、下降動作中(区間a)それぞれにおいて第2荷重P2を取得し、上昇動作中(区間b)それぞれにおいて第1荷重P1を取得しても良い。この場合、取得した複数の第2荷重P2の最小値P2minを平均化し、取得した複数の第1荷重P1の最大値P1maxを平均化して、上述した式[1]により摩擦力Fを演算することが考えられる。また、1つの第2荷重P2の最小値P2minと1つの第1荷重P1の最大値P1maxとを用いて、上述した式[1]により摩擦力Fを演算し、これにより得られた複数の摩擦力Fを平均化しても良い。その他、1回の上下動で得られた摩擦力Fが所定の値以上の場合に、さらにプランジャ421を上下動させるか否かを判断するようにして構成しても良い。
【0085】
上記のクリーニング動作が終了した後に、アンローダ15は、上型2及び下型3から退出して、樹脂成形品W2及び不要樹脂Kの搬出が行われる。
【0086】
また、クリーニング動作において演算部71が演算した摩擦力Fは調整部72に送信される。そして、調整部72は、次回の樹脂成形において、演算された摩擦力Fを用いて、樹脂材料Jの注入圧力が予め定められた設定値となるようにプランジャ駆動部422を制御する。
【0087】
さらに、クリーニング動作において演算部71が演算した摩擦力Fは判断部73に送信される。そして、判断部73は、演算された摩擦力Fと予め設定された基準値とを比較して、摩擦力が基準値以上であれば、例えばメンテナンスを促すためのアラームを出したり、樹脂成形装置100を停止したりする。
【0088】
<本実施形態の効果>
本実施形態の樹脂成形装置100によれば、プランジャ421の上昇時にプランジャ421に加わる第1荷重P1と、プランジャ421の下降時にプランジャ421に加わる第2荷重P2とに基づいて、ポット41aとプランジャ412と間の摩擦力Fを演算しており、停止状態のプランジャの荷重を基準としていないので、ポット41aとプランジャ421との間の摩擦力Fを精度良く求めることができる。
【0089】
また、樹脂成形後のクリーニング動作中に第1荷重P1及び第2荷重P2を取得しているので、樹脂成形装置100の既存の動作を利用することができ、第1荷重P1及び第2荷重P2を取得するための動作を別途行う必要がない。
【0090】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0091】
前記実施形態では、クリーニング動作中に第1荷重P1及び第2荷重P2を取得して摩擦力Fを演算する構成であったが、クリーニング動作以外のタイミングで第1荷重P1及び第2荷重P2を取得して摩擦力Fを演算する構成としても良い。例えば、ポット41aに樹脂材料Jが収容される前に、プランジャ421を昇降して第1荷重P1及び第2荷重P2を取得して摩擦力Fを演算しても良い。
【0092】
また、プランジャ421を昇降させる範囲は、前記実施形態のように掻き出し位置とロード位置との間に限られず、例えば樹脂材料Jの注入が完了する注入完了位置とロード位置との間など、適宜設定可能である。
【0093】
さらに、前記実施形態の演算部71は、第1荷重P1の最大値P1maxと第2荷重P2の最小値P2minとを用いて摩擦力Fを求めているが、第1荷重P1における最大値P1max以外の値と、第2荷重P2における最小値P2min以外の値とを用いて摩擦力Fを求めても良い。また、第1荷重P1の区間aの平均値と、第2荷重P2の区間bの平均値とを用いて摩擦力Fを求めても良い。
【0094】
前記実施形態の樹脂成形装置は、ポットブロック41が張り出し部411を有することによりエッジゲート型のトランスファ成形を行うものであったが、サイドゲート型のトランスファ成形を行うものであっても良い。
【0095】
本発明の樹脂成形装置は、通常のトランスファ成形に限られず、トランスファ機構を備えた構成であれば良い。
【0096】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0097】
100・・・樹脂成形装置
W1 ・・・成形対象物
J ・・・樹脂材料
W2 ・・・樹脂成形品
K ・・・不要樹脂
2 ・・・第1型(上型)
2a ・・・キャビティ
3 ・・・第2型(下型)
4 ・・・樹脂注入部
41 ・・・ポットブロック
41a・・・ポット
411・・・張り出し部
42 ・・・トランスファ機構
421・・・プランジャ
43 ・・・弾性部材
5 ・・・型締め機構
15 ・・・搬送機構
15b・・・不要樹脂用吸着部
71 ・・・演算部
72 ・・・調整部
73 ・・・判断部