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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240111BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240111BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240111BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H01L29/78 658A
H01L29/78 653C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 658F
H01L29/78 652C
H01L29/78 652T
H01L29/44 Y
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020153997
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047943
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】大麻 浩平
(72)【発明者】
【氏名】冨田 幸太
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0091084(US,A1)
【文献】特開2014-045223(JP,A)
【文献】特開2019-096711(JP,A)
【文献】特開2001-284588(JP,A)
【文献】特開2001-102576(JP,A)
【文献】特開2004-303802(JP,A)
【文献】特開2011-129667(JP,A)
【文献】特開2003-273354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0188756(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0261714(US,A1)
【文献】米国特許第10199466(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の第1半導体層にトレンチを形成する工程と、
前記トレンチ内に第1絶縁膜を埋め込む工程と、
前記第1絶縁膜をエッチングして、前記第1絶縁膜の上面を前記トレンチの開口よりも下方に後退させ、前記トレンチの上部の側壁を前記第1絶縁膜から露出させる工程と、
前記トレンチの前記上部の側壁に第2絶縁膜を形成する工程と、
前記トレンチの前記上部の側壁から前記第1半導体層に第2導電型不純物を注入し、拡散させ、前記第1半導体層における前記トレンチの前記上部に隣接する領域に第2導電型半導体領域を形成する工程と、
前記第2導電型半導体領域を形成した後、前記トレンチの前記上部における前記第1絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、
前記第2導電型半導体領域上に、前記第2絶縁膜に接する第1導電型半導体領域を形成する工程と、
を備え
前記第2導電型半導体領域の下端が前記ゲート電極の下端よりも下方に位置するように、前記第2導電型半導体領域及び前記ゲート電極を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
記第2絶縁膜を通して前記第2導電型不純物を前記第1半導体層に注入する請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記トレンチ内に前記第1絶縁膜を埋め込む前に、前記トレンチ内に導電体を埋め込む工程をさらに備える請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2導電型半導体領域を形成した後、前記ゲート電極を埋め込む前に、前記トレンチ内の前記第1絶縁膜をエッチングして、前記第1絶縁膜の前記上面を前記第2導電型半導体領域の下端よりも下方に後退させる工程をさらに備える請求項1~3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記トレンチは、前記トレンチの深さ方向に直交する第1方向に延びる2つの側壁を有し、
前記2つの側壁のそれぞれから前記第2導電型不純物が前記第1半導体層に注入される請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記トレンチは3以上の側壁を含む角形の孔であり、前記3以上の側壁のそれぞれから前記第2導電型不純物が前記第1半導体層に注入される請求項1~4のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
第1導電型の第1半導体層を有する半導体部と、
前記半導体部に形成された第1絶縁膜と、
前記第1絶縁膜上に設けられたゲート電極と、
前記半導体部における前記ゲート電極に隣接する領域の前記第1半導体層上に設けられた第2導電型半導体領域と、
前記ゲート電極と前記第2導電型半導体領域との間に設けられた第2絶縁膜と、
前記第2導電型半導体領域上に設けられ、前記第2絶縁膜に接する第1導電型半導体領域と、
を備え、
前記第2導電型半導体領域は、第1部分と第2部分とを有し、前記第1部分は前記第2絶縁膜と前記第2部分との間に位置して前記第2絶縁膜に接し、前記第1部分の第2導電型不純物濃度は、前記第2部分の第2導電型不純物濃度よりも高く、
前記第2導電型半導体領域の下端は、前記ゲート電極の下端よりも下方に位置する半導体装置。
【請求項8】
前記第1部分と前記第2絶縁膜との境界は、前記第2部分よりも下方に突出している請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2導電型半導体領域の前記第1部分は、1つの前記ゲート電極が有する2つの側面のそれぞれの側において前記第2絶縁膜に接している請求項7または8に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体層の縦方向に電流を導通させるチャネルを、トレンチ内に設けられたゲート電極により制御するデバイスでは、ゲート電極とベース領域との位置関係によって生じるオン抵抗と寄生容量のトレードオフを改善した上でのデバイス設計が求められる。さらに、製造時のばらつきに起因して、実デバイスにおいてもオン抵抗と容量にばらつきが生じる場合があり、これを抑制することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-174989号公報
【文献】特許第3164030号公報
【文献】特許第4970660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、製造時のばらつきに対してデバイス特性の感度を鈍くできる半導体装置の製造方法及び半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、半導体装置の製造方法は、第1導電型の第1半導体層にトレンチを形成する工程と、前記トレンチ内に第1絶縁膜を埋め込む工程と、前記第1絶縁膜をエッチングして、前記第1絶縁膜の上面を前記トレンチの開口よりも下方に後退させ、前記トレンチの上部の側壁を前記第1絶縁膜から露出させる工程と、前記トレンチの前記上部の側壁に第2絶縁膜を形成する工程と、前記トレンチの前記上部の側壁から前記第1半導体層に第2導電型不純物を注入し、拡散させ、前記第1半導体層における前記トレンチの前記上部に隣接する領域に第2導電型半導体領域を形成する工程と、前記第2導電型半導体領域を形成した後、前記トレンチの前記上部における前記第1絶縁膜上にゲート電極を形成する工程と、前記第2導電型半導体領域上に、前記第2絶縁膜に接する第1導電型半導体領域を形成する工程と、を備え、前記第2導電型半導体領域の下端が前記ゲート電極の下端よりも下方に位置するように、前記第2導電型半導体領域及び前記ゲート電極を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図2】第1実施形態の半導体装置の一部の構成の模式平面図である。
図3】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図4】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図5】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図6】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図7】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図8】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式平面図である。
図9】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図10】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図11】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図12】第1実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図13】第1実施形態の半導体装置のRon×Qgd特性のシミュレーション結果を表すグラフである。
図14】第2実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図15】第3実施形態の半導体装置の模式断面図である。
図16】第3実施形態の半導体装置の製造方法を示す模式断面図である。
図17】第4実施形態の半導体装置の一部の構成の模式平面図である。
図18図17におけるA-A’断面図である。
図19図17におけるB-B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0008】
以下の実施形態では第1導電型をn型、第2導電型をp型として説明するが、第1導電型をp型、第2導電型をn型としてもよい。
【0009】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の半導体装置1の模式断面図である。
図2は、第1実施形態の半導体装置1の一部の構成の模式平面図である。
【0010】
半導体装置1は、半導体部10と、ドレイン電極(第1電極)51と、ソース電極(第2電極)52と、ゲート電極(制御電極)30と、フィールドプレート電極20とを有する。半導体部10の一方の面にドレイン電極51が設けられ、半導体部10の他方の面にソース電極52が設けられている。半導体装置1は、ゲート電極30の制御により、ドレイン電極51とソース電極52とを結ぶ方向(縦方向)に電流が流れる縦型半導体装置である。
【0011】
半導体部10の材料は例えばシリコンである。または、半導体部10の材料は、例えば、炭化シリコン、窒化ガリウムなどであってもよい。
【0012】
半導体部10は、n型のドレイン層(または基板)11と、n型のドリフト層(第1半導体層)12と、p型のベース領域(第2導電型半導体領域)13と、n型のソース領域(第1導電型半導体領域)14とを有する。
【0013】
ドリフト層12はドレイン層11上に設けられている。ドレイン層11のn型不純物濃度およびソース領域14のn型不純物濃度は、ドリフト層12のn型不純物濃度よりも高い。ベース領域13はドリフト層12上に設けられ、ソース領域14はベース領域13上に設けられている。
【0014】
半導体部10には複数のトレンチTが形成されている。トレンチTの側壁は、ソース領域14、ベース領域13、およびドリフト層12に隣接している。トレンチTの底は、ドリフト層12内に位置する。
【0015】
図2に示すように、トレンチT、ゲート電極30、フィールドプレート電極20、ソース領域14、およびベース領域13は、トレンチTの深さ方向に直交する第1方向(図2において縦方向)に延びるストライプ状に形成されている。
【0016】
図1に示すように、ゲート電極30とフィールドプレート電極20は、トレンチT内に設けられている。ゲート電極30は、トレンチT内において、フィールドプレート電極20の上に設けられている。トレンチT内において、ゲート電極30とフィールドプレート電極20との間に、絶縁膜42が設けられている。フィールドプレート電極20とトレンチTの底との間、およびフィールドプレート電極20とトレンチTの側壁との間に、絶縁膜41が設けられている。
【0017】
ゲート電極30は、ソース領域14の一部およびベース領域13の一部に、ゲート絶縁膜43を介して隣接している。ゲート絶縁膜43は、ゲート電極30とソース領域14との間、およびゲート電極30とベース領域13との間に設けられている。
【0018】
ベース領域13は、ゲート絶縁膜43を介して、ゲート電極30の側面に対向している。ゲート電極30にしきい値以上の電圧を与えることで、ベース領域13におけるゲート電極30に対向する部分にn型のチャネル(反転層)を形成することができる。
【0019】
ベース領域13は、第1部分13aと第2部分13bとを有する。第1部分13aは、ゲート絶縁膜43と第2部分13bとの間に位置して、ゲート絶縁膜43に接している。第1部分13aは、ゲート絶縁膜43(トレンチTの側壁)に隣接する部分である。第1部分13aのp型不純物濃度は、第2部分13bのp型不純物濃度よりも高い。
【0020】
第1実施形態においては、第1部分13aとゲート絶縁膜43との境界は、第2部分13bよりも下方に突出している。ベース領域13の最下端は、第1部分13aとゲート絶縁膜43との境界に位置する。そのベース領域13の最下端は、ゲート電極30の最下端よりも下方に位置する。
【0021】
ドレイン層11の裏面にドレイン電極51が設けられている。ドレイン電極51は、ドレイン層11に接し、ドレイン層11と電気的に接続されている。
【0022】
半導体部10の上面上にソース電極52が設けられている。ソース電極52は、ソース領域14の上面および側面に接し、ソース領域14と電気的に接続されている。また、ソース電極52は、ベース領域13に接し、ベース領域13と電気的に接続されている。ベース領域13においてソース電極52に接する部分のp型不純物濃度は、第1部分13aのp型不純物濃度および第2部分13bのp型不純物濃度よりも高い。
【0023】
ソース電極52とゲート電極30との間には絶縁膜44が設けられている。ゲート電極30は、図示しないゲート配線と電気的に接続されている。フィールドプレート電極20は、例えば、ソース電極52と電気的に接続されている。フィールドプレート電極20は、ゲートオフの状態においてドリフト層12の電界の分布を緩やかにする。
【0024】
次に、図3図11を参照して、第1実施形態の半導体装置1の製造方法について説明する。
【0025】
図3に示すように、ドリフト層12に複数のトレンチTを形成する。トレンチTは、トレンチTの深さ方向に直交する第1方向(図3における紙面を貫く方向)に延びるストライプ状に形成される。トレンチTは、例えば、図示しないマスクを用いたRIE(Reactive Ion Etching)法で形成される。トレンチTの底は、ドレイン層11には達せず、ドリフト層12内に位置する。
【0026】
図4に示すように、トレンチT内に、絶縁膜41を介して、フィールドプレート電極20の材料である導電体を埋め込む。絶縁膜41は、トレンチTの内壁(底および側壁)、およびドリフト層12の上面に沿って形成される。導電体は、トレンチT内の絶縁膜41の内側の空間に埋め込まれた後、例えばエッチバックされる。このエッチバックにより、導電体の上面は、トレンチTの開口よりも下方に後退し、トレンチT内に位置する。絶縁膜41は、例えばシリコン酸化膜である。フィールドプレート電極20は、例えば多結晶シリコンである。
【0027】
トレンチT内におけるフィールドプレート電極20の上方に、絶縁膜41で囲まれた空間が確保される。その空間を埋めるように、図5に示す絶縁膜42が半導体部10上に形成される。絶縁膜42は、例えばシリコン酸化膜である。トレンチT内は、絶縁膜41を介して、フィールドプレート電極20と絶縁膜42によって埋め込まれる。
【0028】
絶縁膜42を形成する際、絶縁膜42の上面はトレンチTの開口よりも上方に位置する。この後、絶縁膜42をエッチングして、絶縁膜42の上面を後退させる。図6に示すように、絶縁膜42の上面をトレンチTの開口よりも下方に後退させる。トレンチTの側壁に形成された絶縁膜41は例えば絶縁膜42と同じシリコン酸化膜であるので、絶縁膜42のエッチング時に絶縁膜41もエッチングされる。これにより、トレンチTの上部の側壁が、絶縁膜41および絶縁膜42から露出する。ドリフト層12の上面に形成されていた絶縁膜41も除去される。トレンチT内に残った絶縁膜42は、フィールドプレート電極20の上面を覆っている。
【0029】
トレンチTの露出した上部の側壁には、図7および図8に示すように、ゲート絶縁膜43が形成される。ゲート絶縁膜43は、例えば熱酸化法で形成されるシリコン酸化膜である。ゲート絶縁膜43は、ドリフト層12の上面にも形成される。トレンチTの上部にはゲート絶縁膜43で囲まれた空間が残される。
【0030】
ゲート絶縁膜43を形成した後、トレンチTの上部の側壁から半導体部10(ドリフト層12)に、イオン注入法によりp型不純物を注入する。p型不純物は、ゲート絶縁膜43を通してドリフト層12に注入される。p型不純物は、例えばボロンである。図7において、p型不純物の注入方向を模式的に矢印aで表す。p型不純物は、半導体部10の表面および厚さ方向に対して傾斜した斜め下方に向けて、トレンチTの上部の側壁からドリフト層12に注入される。または、イオン注入を実施した後に、ゲート絶縁膜43を形成してもよい。
【0031】
図8の平面図に示すようにトレンチTはストライプ状に延び、1つのトレンチTは2つの側壁を有する。1つのトレンチTについて、その上部の2つの側壁のそれぞれからp型不純物がドリフト層12に注入される。図9に、p型不純物が注入された領域13’を模式的に表す。
【0032】
イオン注入の後、図10に示すように、トレンチTの上部における絶縁膜42上に、ゲート電極30を形成する。ゲート電極30の材料となる導電体は、例えば多結晶シリコンである。
【0033】
ゲート電極30の材料となる導電体を、その上面がトレンチTの開口よりも上方に位置するように半導体部10上に形成した後、ゲート電極30の上面をトレンチTの開口よりも下方に後退させる。ゲート電極30の上面は、トレンチTの開口よりも下方のトレンチT内に位置する。
【0034】
ゲート電極30を形成した後、半導体部10の上面からn型不純物を半導体部10に注入する。n型不純物は、半導体部10の上面に対してほぼ垂直な方向に注入される。n型不純物は、例えば、リンまたはヒ素である。
【0035】
この後、熱処理により、半導体部10に注入されたp型不純物およびn型不純物を拡散させる。これにより、図11に示すように、半導体部10におけるトレンチTの上部の側壁に隣接する領域にp型のベース領域13が形成され、ベース領域13上にn型のソース領域14が形成される。
【0036】
ゲート電極30上のトレンチT内には絶縁膜44が埋め込まれる。絶縁膜44は半導体部10の上面を覆うように形成され、その後、半導体部10の上面(ソース領域14の上面)上の絶縁膜44は除去される。このとき、ソース領域14の上面に形成されていたゲート絶縁膜43も除去され、ソース領域14の上面が露出する。
【0037】
露出したソース領域14の上面からベース領域13に達するコンタクト用のトレンチを形成した後、そのコンタクト用のトレンチ内、および半導体部10上にソース電極52を形成する。ドレイン層11の裏面にはドレイン電極51が形成される。
【0038】
図12(a)及び(b)は、第1実施形態の半導体装置1におけるゲート電極30とベース領域13とが隣り合う部分の模式断面図である。
【0039】
図12(a)のゲート電極30は、図12(b)のゲート電極30よりも厚さが薄く、図12(a)のゲート電極30の下端(絶縁膜42の上面)は、図12(b)のゲート電極30の下端(絶縁膜42の上面)よりも上方に位置する。ゲート電極30の厚さは、トレンチTの深さ方向に沿った厚さである。図12(a)のゲート電極30の上面と、図12(b)のゲート電極30の上面とは同じ位置(高さ)に位置する。
【0040】
実施形態によれば、トレンチTの上部の空間にゲート電極30を埋め込む前に、トレンチTの上部の側壁からドリフト層12にp型不純物を注入する(図7の工程)。これにより、ゲート電極30の下端の位置を決める絶縁膜42の上面の位置が、絶縁膜42をエッチングするときにばらついても、絶縁膜42の上面の位置、すなわちゲート電極30の下端の位置に追従してベース領域13の下端の位置も変化する。
【0041】
図12(a)及び(b)に示すように、ゲート電極30の下端の位置がばらついても、ゲート電極30の下端とベース領域13の下端との縦方向(電流経路方向)の距離dをほぼ一定にすることができる。したがって、製造時のばらつきに対してデバイス特性の感度が鈍いロバストな構造を実現できる。
【0042】
また、図7に示すようにトレンチTの上部の側壁から斜め方向にp型不純物を注入することで、図9に示すようにp型不純物の注入領域13’は、トレンチTの側壁に近い部分ほど深い位置まで形成される。そのため、熱拡散の後には、図10および図1に示すように、ベース領域13のゲート絶縁膜43(トレンチTの側壁)に隣接する第1部分13aが、第1部分13aよりもゲート絶縁膜43(トレンチTの側壁)から遠い位置にある第2部分13bよりも下方に突出する。これは、ゲート電極30とドリフト層12との間の寄生容量(ゲートドレイン間容量)Cgdの低減を可能にする。
【0043】
図13は、第1実施形態の半導体装置1のRon×Qgd特性のシミュレーション結果を表すグラフである。Ronは、オン抵抗である。Qgdは、スイッチング性能の指標として重要視されるゲートドレイン間電荷量である。横軸は、ゲート電極30の厚さである。ゲート電極30の上面の位置は固定し、下端の位置を変動させることで、ゲート電極30の厚さを変動させている。
【0044】
実線は、ベース領域13の下面における最も浅い部分に対する、最も深い部分(トレンチTの側壁に隣接する部分)の突出量を0.100μmとした場合の特性を表す。
破線は、上記ベース領域13の突出量を0.050μmとした場合の特性を表す。
点線は、上記ベース領域13の突出量を0.020μmとした場合の特性を表す。
1点鎖線は、上記ベース領域13の突出量を0.010μmとした場合の特性を表す。
2点鎖線は、上記ベース領域13の突出量を0.001μmとした場合の特性を表す。
これら5つのケースにおいて、ベース領域13の下面における最も浅い部分の位置は同じとしている。
【0045】
図13のシミュレーション結果より、ゲート電極30の厚さが一定の範囲であれば、ベース領域13のトレンチTの側壁に隣接する部分の突出量が大きくなるほど、Ron×Qgdが低減可能であることがわかる。
【0046】
トレンチTの側壁からドリフト層12に注入するp型不純物の注入角度、加速度などのイオン注入条件の制御により、ベース領域13におけるトレンチTの側壁に隣接する部分の突出量の調整が可能である。また、角度や速度を変えつつ複数回にわたってp型不純物を注入することでも、ベース領域13におけるトレンチTの側壁に隣接する部分の突出量の調整が可能である。
【0047】
[第2実施形態]
図14は、第2実施形態の半導体装置2の模式断面図である。
【0048】
例えば、p型不純物の加速度を上げることで、図14に示すように、ベース領域13におけるトレンチTの側壁に隣接する部分を下方に突出させずに、ベース領域13の下面をほぼ平坦にすることが可能である。この場合でも、絶縁膜42の上面を後退させた後、ゲート電極30を形成する前に、トレンチTの上部の側壁からp型不純物を注入するため、ゲート電極30の下端の位置を決める絶縁膜42の上面の位置がばらついても、ゲート電極30の下端とベース領域13の下端との距離をほぼ一定にすることができる。
【0049】
[第3実施形態]
図15は、第3実施形態の半導体装置3の模式断面図である。
【0050】
図15に示すように、ゲート電極30の下端は、ベース領域13におけるトレンチTの側壁に隣接する第1部分13aの下端よりも下方に位置する構造であってもよい。この半導体装置3では、ベース領域13の下端がゲート電極30の下端よりも下方に突出した構造に比べて、ゲート電極30に対向するベース領域13の面積が増えるため、オン抵抗を低減することができる。
【0051】
この構造は、前述したようにトレンチTの上部の側壁からp型不純物を注入してベース領域13を形成した後、トレンチT内の絶縁膜42上にゲート電極30を埋め込む前に、絶縁膜42を追加エッチングして、図16に示すように絶縁膜42の上面をベース領域13の下端よりも下方に後退させる。絶縁膜42の追加エッチング時にエッチング量(絶縁膜42の上面の後退量)のばらつきが発生し得るが、この追加エッチング量は、絶縁膜42の1回目のエッチング量に比べてわずかであり、追加エッチングによるゲート電極30の下端の位置のばらつきは小さく、デバイス特性に影響するほどにはならない。
【0052】
[第4実施形態]
図17は、第4実施形態の半導体装置4の一部の構成の模式平面図である。
図18は、図17におけるA-A’断面図である。
図19は、図17におけるB-B’断面図である。
【0053】
ゲート電極30を内部に含むトレンチTはストライプ状に限らず、3以上の側壁を含む角形の孔であってもよい。図17には、例えば、6角形の孔としてトレンチTが形成された例を示す。1つのトレンチTは6つの側壁を有する。そして、6つの側壁のそれぞれから前述した図7に示す工程と同様にp型不純物がドリフト層12に注入され、p型のベース領域13が形成される。
【0054】
この場合でも、ゲート電極30の下端の位置がばらついても、ゲート電極30の下端とベース領域13の下端との縦方向(電流経路方向)の距離をほぼ一定にすることができ、製造時のばらつきに対してデバイス特性の感度が鈍いロバストな構造を実現できる。
【0055】
フィールドプレート電極20は、トレンチTの中心位置で、トレンチTの中心軸方向に沿って設けられている。ゲート電極30は、トレンチTの上部においてフィールドプレート電極20の上部のまわりを囲むように設けられている。フィールドプレート電極20とゲート電極30との間には絶縁膜45が設けられている。
【0056】
トレンチT内におけるフィールドプレート電極20上およびゲート電極30上には絶縁膜44が設けられている。半導体部10上および絶縁膜44上には、絶縁膜46が設けられている。絶縁膜46上に、ソース電極52が設けられている。
【0057】
フィールドプレート電極20は、絶縁膜46および絶縁膜44を貫通するメタルプラグ61を介して、ソース電極52と接続されている。
【0058】
図19に示すように、絶縁膜46中にゲート配線70が設けられている。ゲート配線70は、ゲート配線70の下面から絶縁膜46内および絶縁膜44内をゲート電極30に向けて延びるメタルプラグ71を介して、ゲート電極30と接続されている。
【0059】
図18に示すように、ソース領域14およびベース領域13は、絶縁膜46を貫通するメタルプラグ62を介して、ソース電極52と接続されている。図17に示すように、メタルプラグ62は、6角形のトレンチTのまわりを囲んでいる。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1~4…半導体装置、10…半導体部、11…ドレイン層、12…ドリフト層、13…ベース領域、13a…第1部分、13b…第2部分、14…ソース領域、20…フィールドプレート電極、30…ゲート電極、51…ドレイン電極、52…ソース電極、T…トレンチ
図1
図2
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