(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】加工機、計測装置及び被加工物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 17/24 20060101AFI20240111BHJP
G05B 19/404 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
B23Q17/24 B
G05B19/404 G
(21)【出願番号】P 2020160428
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】秋山 貴信
(72)【発明者】
【氏名】室伏 勇
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-289608(JP,A)
【文献】特開平06-137842(JP,A)
【文献】特開2004-034259(JP,A)
【文献】特開2018-194416(JP,A)
【文献】特開2017-167704(JP,A)
【文献】特開2013-174549(JP,A)
【文献】特表2016-520807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2001/0017699(US,A1)
【文献】特開2018-051725(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167242(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 17/00-23/00
G02B 7/36
G05B 19/18-19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向においてワークと工具とを相対移動させる第1駆動源と、
前記第1方向に直交する第2方向において前記ワークと前記工具とを相対移動させる第2駆動源と、
前記ワークと前記工具との前記第1方向における相対位置を検出する第1センサと、
前記ワークと前記工具との前記第2方向における相対位置を検出する第2センサと、
前記工具を前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、
前記画像内の前記工具の鮮明度に基づいて前記工具の前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、
前記第1センサの検出値に基づいて前記第1駆動源のフィードバック制御を行うとともに、前記第2センサの検出値に基づいて前記第2駆動源のフィードバック制御を行う制御装置と、
を有しており、
前記カメラは、前記ワークと前記工具との前記第1方向における相対移動に伴って前記工具と前記第1方向において相対移動する位置に配置されており、前記工具との前記第1方向における相対位置が互いに異なる複数の画像を取得し、
前記画像処理装置は、
前記複数の画像と、前記複数の画像を取得したときに前記第1センサによって検出された前記ワークと前記工具との前記第1方向における相対位置とに基づいて、前記工具の鮮明度が最も高くなる前記ワークと前記工具との前記第1方向における第1相対位置を特定し、
特定した前記第1相対位置と、予め取得されている前記カメラのピントが前記工具に合っているときの前記ワークと前記工具との前記第1方向における相対位置との第1ずれ量を特定し、
第1時期に前記カメラによって取得された画像内における前記工具の前記第2方向における位置と、その後の第2時期に前記カメラによって取得された画像内における前記工具の前記第2方向における位置とに基づいて、前記第1時期における前記工具の前記第2方向の位置と、前記第2時期における前記工具の前記第2方向の位置との第2ずれ量を特定し、
前記制御装置は、
前記第1ずれ量に基づいて、前記第1センサの検出値に基づく前記第1駆動源のフィードバック制御を補正し、
前記第2ずれ量に基づいて、前記第2センサの検出値に基づく前記第2駆動源のフィードバック制御を補正する
加工機。
【請求項2】
前記第1方向及び前記第2方向の双方に直交する第3方向において前記ワークと前記工具とを相対移動させる第3駆動源と、
前記ワークと前記工具との前記第3方向における相対位置を検出する第3センサと、を更に有しており、
前記制御装置は、前記第3センサの検出値に基づいて前記第3駆動源のフィードバック制御を行い、
前記画像処理装置は、第3時期に前記カメラによって取得された画像内における前記工具の前記第3方向における位置と、その後の第4時期に前記カメラによって取得された画像内における前記工具の前記第3方向における位置とに基づいて、前記第3時期における前記工具の前記第3方向の位置と、前記第4時期における前記工具の前記第3方向の位置との第3ずれ量を特定し、
前記制御装置は、前記第3ずれ量に基づいて、前記第3センサの検出値に基づく前記第3駆動源のフィードバック制御を補正する
請求項
1に記載の加工機。
【請求項3】
ワークと主軸に保持された工具とを前記主軸の回転軸に直交する第1方向において相対移動させる第1駆動源と、
前記工具を前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、
前記カメラとは反対側から前記工具に光を照射する照射装置
と、
前記画像内の前記工具の鮮明度に基づいて前記工具の前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、
前記画像処理装置によって特定された前記工具の前記第1方向の位置に基づいて前記第1駆動源を制御する制御装置と、
を有してい
る加工機。
【請求項4】
ワークと主軸に保持された工具とを前記主軸の回転軸に直交する第1方向において相対移動させる第1駆動源と、
前記工具を前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、
前記画像内の前記工具の鮮明度に基づいて前記工具の前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、
前記画像処理装置によって特定された前記工具の前記第1方向の位置に基づいて前記第1駆動源を制御する制御装置と、
を有しており、
前記画像処理装置は、画像内の複数のピクセルのそれぞれについて、隣のピクセルとの明度の差を算出し、前記複数のピクセルにおける前記差の絶対値が大きくなるほど大きくなる指標値を算出し、この指標値を、鮮明度が高いほど値が大きくなる指標値として用いて、前記工具の前記第1方向の位置を特定する
加工機。
【請求項5】
前記画像処理装置は、隣り合うピクセル同士の明度の差の2乗を画像内の全てのピクセルについて加算した値を前記指標値として算出する
請求項
4に記載の加工機。
【請求項6】
第1方向においてワークと工具とを相対移動させる第1駆動源と、
前記工具を前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、
前記画像内の前記工具の鮮明度に基づいて前記工具の前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、
前記画像処理装置によって特定された前記工具の前記第1方向の位置に基づいて前記第1駆動源を制御する制御装置と、
を有しており、
前記画像処理装置は、画像内の複数のピクセルから明度の最大値と最小値とを特定し、前記最大値と前記最小値との差を前記最大値と前記最小値との和で割った指標値を算出し、この指標値を、鮮明度が高いほど値が大きくなる指標値として用いて、前記工具の前記第1方向の位置を特定する
加工機。
【請求項7】
第1方向においてワークと工具とを相対移動させる第1駆動源と、
前記工具を前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、
前記画像内の前記工具の鮮明度に基づいて前記工具の前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、
前記画像処理装置によって特定された前記工具の前記第1方向の位置に基づいて前記第1駆動源を制御する制御装置と、
を有しており、
前記画像処理装置は、画像内の複数のピクセルから明度の代表値を特定し、前記複数のピクセルのそれぞれについて、前記代表値との差を算出し、前記複数のピクセルにおける前記差の絶対値が大きくなるほど大きくなる指標値を算出し、この指標値を、鮮明度が高いほど値が大きくなる指標値として用いて、前記工具の前記第1方向の位置を特定する
加工機。
【請求項8】
第1方向においてワークと工具とを相対移動させる第1駆動源と、
前記ワークと前記工具との前記第1方向における相対位置を検出する第1センサと、
前記工具を前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、
前記画像内の前記工具の鮮明度に基づいて前記工具の前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、
前記第1センサの検出値に基づいて前記第1駆動源のフィードバック制御を行う制御装置と、
前記工具が配置される位置と一定の位置関係を有する位置に配置され、前記一定の位置関係を有する位置に配置されることによって、前記第1駆動源による前記ワークとの前記第1方向における相対移動がなされ、この相対移動に伴って前記カメラとの前記第1方向における相対移動がなされ、前記ワークとの前記第1方向における相対移動が前記第1センサによって検出されるタッチセンサと、
を有しており、
前記カメラは、前記ワークと前記工具との前記第1方向における相対移動に伴って前記工具と前記第1方向において相対移動する位置に配置されており、前記工具との前記第1方向における相対位置が互いに異なる複数の画像を取得し、
前記画像処理装置は、
前記複数の画像と、前記複数の画像を取得したときに前記第1センサによって検出された前記ワークと前記工具との前記第1方向における相対位置とに基づいて、前記工具の鮮明度が最も高くなる前記ワークと前記工具との前記第1方向における第1相対位置を特定し、
特定した前記第1相対位置と、予め取得されている前記カメラのピントが前記工具に合っているときの前記ワークと前記工具との前記第1方向における相対位置との第1ずれ量を特定し、
前記制御装置は、前記第1ずれ量に基づいて、前記第1センサの検出値に基づく前記第1駆動源のフィードバック制御を補正し、
前記カメラは、前記タッチセンサを前記第1方向において撮像し、当該カメラと前記タッチセンサとの前記第1方向における相対位置が互いに異なる複数の第2画像を取得し、
前記画像処理装置は、
前記複数の第2画像と、前記複数の第2画像を取得したときに前記第1センサによって検出された前記ワークと前記タッチセンサとの前記第1方向における相対位置とに基づいて、前記タッチセンサの鮮明度が最も高くなる前記ワークと前記タッチセンサとの前記第1方向における第2相対位置を特定し、
特定した前記第2相対位置と、予め取得されている前記カメラのピントが前記タッチセンサに合っているときの前記ワークと前記タッチセンサとの前記第1方向における相対位置との第4ずれ量を特定し、
前記制御装置は、
前記タッチセンサの前記ワークに対する当接が前記タッチセンサによって検出されたときの前記第1センサの検出値に基づいて、前記ワークと前記工具との相対位置と、前記第1センサの検出値との対応関係を特定し、
前記第4ずれ量に基づいて、前記対応関係の情報を補正し、
補正した前記対応関係の情報と、前記第1センサの検出値とに基づいて、前記第1駆動源のフィードバック制御を行う
加工機。
【請求項9】
第1方向においてワークと工具とを相対移動させる第1駆動源と、
前記工具が配置される位置と一定の位置関係を有する位置に配置され、前記一定の位置関係を有する位置に配置されることによって、前記第1駆動源による前記ワークとの前記第1方向における相対移動がなされるタッチセンサと、
前記タッチセンサを前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、
前記画像内の前記タッチセンサの鮮明度に基づいて前記タッチセンサの前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、
前記画像処理装置によって特定された前記タッチセンサの前記第1方向の位置に基づいて前記第1駆動源を制御する制御装置と、
を有している加工機。
【請求項10】
主軸に保持され、前記主軸の回転軸に直交する第1方向において
ワークと相対移動す
る工具の位置を計測する計測装置であって、
前記工具を前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、
前記カメラとは反対側から前記工具に光を照射する照射装置と、
前記画像内の前記工具の鮮明度に基づいて前記工具の前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、
を有して
いる計測装置。
【請求項11】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の加工機を用いて、前記ワークと前記工具とを接触させて前記ワークを被加工物に加工するステップを有する
被加工物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加工機、計測装置及び被加工物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工具によってワークを加工する加工機において、工具を撮像することによって工具の位置を計測するものが知られている(例えば下記特許文献1及び2)。特許文献1は、計測された工具の位置と、予め設定されている工具の位置とのずれ量に応じて、ワークの加工を行うときの工具とワークとの相対移動を補正する技術を開示している。さらに、特許文献1は、加工時における工作機械の状態を監視することよって、工具の位置の計測時期を適切に設定する技術を開示している。特許文献2は、2つの照明装置及び反射鏡を用いることによって、1台のカメラで互いに異なる方向から工具を撮像する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-51725号公報
【文献】特開2015-182159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工具の撮像によって計測できる工具の位置は、撮像方向(カメラから工具への方向)に直交する方向(画像に沿う方向)における位置である。逆に言えば、撮像方向における工具の位置を計測することはできない。従って、例えば、3次元座標において工具の位置を計測する場合においては、互いに異なる方向から工具を撮像する2台のカメラが必要になる。その結果、例えば、加工機のコストが増大する。特許文献2は、1台のカメラで互いに異なる方向から工具を撮像する技術を開示している。しかし、複雑な機構が必要である。
【0005】
撮像方向における工具の位置を計測できる加工機、計測装置及び被加工物の製造方法が待たれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る加工機は、第1方向においてワークと工具とを相対移動させる第1駆動源と、前記工具を前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、前記画像内の前記工具の鮮明度に基づいて前記工具の前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、前記画像処理装置によって特定された前記工具の前記第1方向の位置に基づいて前記第1駆動源を制御する制御装置と、を有している。
【0007】
本開示の一態様に係る加工機は、第1方向においてワークと工具とを相対移動させる第1駆動源と、前記工具が配置される位置と一定の位置関係を有する位置に配置され、前記一定の位置関係を有する位置に配置されることによって、前記第1駆動源による前記ワークとの前記第1方向における相対移動がなされるタッチセンサと、前記タッチセンサを前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、前記画像内の前記タッチセンサの鮮明度に基づいて前記タッチセンサの前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、前記画像処理装置によって特定された前記タッチセンサの前記第1方向の位置に基づいて前記第1駆動源を制御する制御装置と、を有している。
【0008】
本開示の一態様に係る計測装置は、ワークと第1方向において相対移動する工具の位置を計測する計測装置であって、前記工具を前記第1方向において撮像して画像を取得するカメラと、前記画像内の前記工具の鮮明度に基づいて前記工具の前記第1方向の位置を特定する画像処理装置と、を有している。
【0009】
本開示の一態様に係る被加工物の製造方法は、上記加工機を用いて、前記ワークと前記工具とを接触させて前記ワークを被加工物に加工するステップを有する。
【発明の効果】
【0010】
上記の構成又は手順によれば、撮像方向における位置計測が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る加工機の構成を示す模式的な斜視図。
【
図2】
図2(a)は
図1の加工機のテーブルを直線移動させる構成の一例を示す斜視図、
図2(b)は
図2(a)のII-II線における断面図。
【
図3】
図1の加工機における撮像部の構成を示す模式図。
【
図4】
図1の加工機における制御系の構成を示すブロック図。
【
図5】
図4のブロック図の一部について詳細を示す図。
【
図6】
図1の加工機が有するカメラによって撮像された画像の例を示す模式図。
【
図8】
図1の加工機の制御ユニットが実行する処理の手順の一例を示すフローチャート。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は第1及び第2の取付態様においてタッチセンサを示す斜視図である。
【
図10】ガイドに関して
図2(b)を参照して説明した構成例とは別の構成例を示す図。
【
図11】
図1の加工機の主軸の軸受の構成の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施形態に係る加工機の構造は、例えば、後述する撮像部の台数が1台のみである点を除いては、公知の構造又は公知の構造を応用したものとされてよい。また、実施形態に係る加工機の制御は、例えば、撮像部が撮像した画像に基づく工具の位置の特定に係る処理を除いては、公知の制御又は公知の制御を応用したものとされてよい。
【0013】
以下では、まず、加工機のうち撮像部を除く部分の構成(主として構造)を例示する。次に、撮像部の構造を例示する。次に、加工機の制御(主として基本構成及び基本動作)について例示する。その後、撮像部が撮像した画像に基づく工具の位置の特定に係る処理の例について述べる。
【0014】
以下の説明では、便宜上、画像と画像データとの厳密な区別をしないことがあり、主として画像の語を用いる。画像の語は、特に断りが無い限り、また、矛盾等が生じない限り、画像データの語に置換されてよい。また、工具の位置の語は、ワークとの相対的な位置を指すことがあり、また、絶対座標系における位置を指すことがある。特に断りが無い限り、また、矛盾等が生じない限り、工具の位置は、相対的な位置及び絶対的な位置のいずれに捉えられてもよい。
【0015】
(加工機の全体構成)
図1は、実施形態に係る加工機1の構成を示す模式的な斜視図である。図には、便宜上、直交座標系XYZを付している。+Z方向は、例えば、鉛直上方である。
【0016】
既述のように、本開示に係る技術は、種々の加工機に適用可能であり、図示されている加工機1は、その一例に過ぎない。ただし、以下の説明では、便宜上、加工機1の構成を前提とした説明をすることがある。
【0017】
加工機1は、例えば、工具101によってワーク103の加工を行う。加工の種類(別の観点では工具の種類)は、適宜なものとされてよい。例えば、加工の種類は、切削、研削又は研磨である。図示の例では、工具101は、エンドミル等の転削工具によって構成されており、Z軸に平行な軸回りに回転される。また、工具101とワーク103とは、X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれにおいて相対移動可能である。そして、回転している工具101がワーク103に当接されることによって、ワーク103の切削、研削又は研磨が行われる。
【0018】
加工機1は、例えば、工具101及びワーク103を保持する機械本体3と、機械本体3を制御する制御ユニット5とを有している。
【0019】
機械本体3は、例えば、上述のように工具101を回転させるとともに、工具101とワーク103とを3つの軸方向において相対移動させる。このような回転及び相対移動を実現する構成は、例えば、公知の種々の構成と同様とされたり、公知の構成を応用したものとされたりしてよい。図示の例では、以下のとおりである。
【0020】
機械本体3は、ベース7と、ベース7に支持されている2本のコラム9と、2本のコラム9に掛け渡されているクロスレール11と、クロスレール11に支持されているサドル13と、サドル13に固定されているY軸ベッド15と、Y軸ベッド15に支持されている主軸頭17と、主軸頭17に支持されている主軸19とを有している。
【0021】
工具101は、主軸19に保持される。主軸19は、主軸頭17によってZ軸に平行な軸回りに回転可能に支持されており、不図示の主軸モータによって回転駆動される。これにより、工具101が回転する。主軸頭17は、Y軸ベッド15(サドル13)に対してZ方向に直線移動可能であり、これにより、工具101がZ方向に駆動される。サドル13は、クロスレール11に対してY方向に直線移動可能であり、これにより、工具101がY方向に駆動される。
【0022】
また、機械本体3は、ベース7に支持されているX軸ベッド21と、X軸ベッド21に支持されているテーブル23とを有している。
【0023】
ワーク103は、テーブル23に保持される。テーブル23は、X軸ベッド21に対してX方向に直線移動可能であり、これにより、ワーク103がX方向に駆動される。
【0024】
サドル13の移動、主軸頭17の移動、テーブル23の移動、及び主軸19の回転を実現するための機構の構成は、公知の構成又は公知の構成を応用したものとされてよい。例えば、駆動源は、電動機、油圧機器又は空圧機器とされてよい。また、電動機は、回転式電動機又はリニアモータとされてよい。サドル13、主軸頭17又はテーブル23を案内する(別の観点では駆動方向以外の方向における移動を規制する)リニアガイドは、可動部と固定部とが摺動するすべり案内であってもよいし、可動部と固定部との間で転動体が転がる転がり案内であってもよいし、可動部と固定部との間に空気又は油を介在させる静圧案内であってもよいし、これらの2以上の組み合わせであってもよい。同様に、主軸19の軸受は、すべり軸受、転がり軸受、静圧軸受又はこれらの2以上の組み合わせとされてよい。
【0025】
制御ユニット5は、例えば、特に図示しないが、コンピュータ及びドライバ(例えばサーボドライバ)を含んで構成されている。コンピュータは、NC(numerical control)装置を構成してよい。コンピュータは、例えば、特に図示しないが、CPU(central processing unit)、ROM(read only memory)、RAM(random access memory)及び外部記憶装置を含んで構成されている。CPUがROM及び/又は外部記憶装置に記憶されているプログラムを実行することによって、制御等を行う各種の機能部が構築される。制御ユニット5は、一定の動作のみを行う論理回路を含んでいてもよい。
【0026】
制御ユニット5は、例えば、主軸19(別の観点では例えば不図示の主軸モータ)の回転数を制御するとともに、サドル13、主軸頭17及びテーブル23の位置及び速度を制御する。位置制御は、いわゆるフルクローズドループ制御とされてよい。すなわち、サドル13、主軸頭17及びテーブル23の検出位置がフィードバックされてよい。ただし、位置制御は、電動機の回転位置がフィードバックされるセミクローズドループ制御とされたり、フィードバックがなされないオープンループ制御とされたりしてもよい。速度制御についても同様に、フルクローズドループ制御、セミクローズドループ制御、又はオープンループ制御とされてよい。
【0027】
上記のようにフルクローズドフィードバック制御がなされる場合において、最終的な制御対象となる部材(13、17及び23)の位置及び/又は速度を検出するセンサの構成は、公知の構成又は公知の構成を応用したものとされてよい。例えば、センサは、リニアエンコーダ又はレーザ測長器とされてよい。また、セミクローズドループ制御が行われる場合において、電動機の回転位置及び/又は回転速度を検出するセンサは、公知の構成又は公知の構成を応用したものとされてよい。例えば、センサは、エンコーダ又はレゾルバとされてよい。
【0028】
加工機1の加工精度は適宜に設定されてよい。例えば、加工機1は、サブミクロンメータオーダーの精度(1μm未満の誤差)、又はナノメータオーダーの精度(10nm未満の誤差)で加工を実現可能なものであってよい。そのような工作機械は、本願出願人によって既に実用化されている(例えばUVMシリーズ、ULGシリーズ及びULCシリーズ。)。より詳細には、例えば、サドル13のY方向における位置決め精度、主軸頭17のZ方向における位置決め精度、及び/又はテーブル23のX方向における位置決め精度は、1μm以下、0.1μm以下、10nm以下又は1nm以下とされてよい。もちろん、加工機1の加工精度は、上記よりも低くてもよい。
【0029】
(移動機構)
既述のように、サドル13、主軸頭17及びテーブル23を直線上で移動させるための構成は、適宜な構成とされてよい。以下に一例を示す。
【0030】
図2(a)は、テーブル23を直線移動させる構成の一例を示す斜視図である。
図2(b)は、
図2(a)のII-II線における断面図である。
【0031】
図示の例では、テーブル23をガイドするガイド25は、V-V転がり案内によって構成されている。例えば、ガイド25は、テーブル23を支持するX軸ベッド21の上面に形成された断面V字状の2本の溝21aと、テーブル23の下面に形成された断面三角形状の2本の突条23aと、溝21aと突条23aとの間に介在している複数のコロ27(転動体)とを有している。溝21a及び突条23aは、X方向に直線状に延びており、突条23aはコロ27を介して溝21aに嵌合している。これにより、テーブル23は、Y方向における移動が規制される。また、コロ27は、溝21aの内面及び突条23aの外面に対して転がり、両者のX方向における相対移動を許容する。これにより、テーブル23は、比較的小さい抵抗でX方向に移動する。テーブル23の+Z側への移動は、例えば、自重によって規制される。テーブル23の-Z側への移動は、例えば、X軸ベッド21からの反力によって規制される。
【0032】
また、図示の例では、テーブル23を駆動するX軸駆動源29Xは、リニアモータによって構成されている。例えば、X軸駆動源29Xは、X軸ベッド21の上面にてX方向に配列されている複数の磁石29cからなる磁石列29aと、テーブル23の下面に固定されており、磁石列29aと対向するコイル29bとを有している。そして、コイル29bに交流電力が供給されることによって、磁石列29aとコイル29bとがX方向に駆動力を生じる。ひいては、テーブル23がX方向に移動する。
【0033】
テーブル23をX方向に直線移動させる構成(換言すれば工具101とワーク103とをX方向に相対移動させる構成)について述べた。上記の説明は、サドル13をY方向に直線移動させる構成(換言すれば工具101とワーク103とをY方向に相対移動させる構成)、及び主軸頭17をZ方向に直線移動させる構成(換言すれば工具101とワーク103とをZ方向に相対移動させる構成)に援用されてよい。例えば、サドル13及び主軸頭17を案内するガイドは、V-V転がり案内とされてよい。突条(23a)の溝(21a)からの離反は、係合部材を設けることなどによって適宜に規制されてよい。また、サドル13を駆動するY軸駆動源29Y(
図4)、及び主軸頭17を駆動するZ軸駆動源29Z(
図4)は、リニアモータによって構成されてよい。なお、以下の説明では、X軸駆動源29X、Y軸駆動源29Y及びZ軸駆動源29Zを区別せずに、駆動源29ということがある。
【0034】
(センサ)
既述のように、サドル13、主軸頭17及びテーブル23の位置を検出するセンサは、適宜な構成とされてよい。
図2(a)は、その一例としてのリニアエンコーダを示す図ともなっている。具体的には、以下のとおりである。
【0035】
加工機1は、テーブル23のX方向における位置を検出するX軸センサ31Xを有している。X軸センサ31Xは、例えば、X方向に延びているスケール部31aと、スケール部31aに対向している検出部31bとを有している。スケール部31aにおいては、例えば、光学的又は磁気的に形成された複数のパターンがX方向に一定のピッチで配列されている。検出部31bは、各パターンとの相対位置に応じた信号を生成する。従って、スケール部31a及び検出部31bの相対移動に伴って生成される信号の計数(すなわちパターンの計数)によって、変位(位置)を検出することができる。
【0036】
スケール部31a及び検出部31bの一方(図示の例ではスケール部31a)は、テーブル23に固定されている。スケール部31a及び検出部31bの他方(図示の例では検出部31b)は、X軸ベッド21に対して直接的に又は間接的に固定されている。従って、テーブル23が移動すると、スケール部31a及び検出部31bは相対移動する。これにより、テーブル23の変位(位置)が検出される。
【0037】
スケール部31a及び検出部31bの具体的な取付位置は適宜に設定されてよい。また、X軸センサ31Xは、スケール部31aのパターンに基づいてスケール部31aに対する検出部31bの位置(絶対位置)を特定可能なアブソリュート式のものであってもよいし、そのような特定ができないインクリメンタル式のものであってもよい。公知のように、インクリメンタル式のスケールであっても、検出部31bをスケール部31aに対して所定位置(例えば移動限)に移動させてキャリブレーションを行うことによって絶対位置を特定することができる。
【0038】
テーブル23のX方向における位置を検出するX軸センサ31Xについて述べた。上記の説明は、サドル13のY方向における位置を検出するY軸センサ31Y(
図4)、主軸頭17のZ方向における位置を検出するZ軸センサ31Z(
図4)に援用されてよい。なお、以下の説明では、X軸センサ31X、Y軸センサ31Y及びZ軸センサ31Zを区別せずに、これらをセンサ31ということがある。
【0039】
X軸センサ31Xは、テーブル23のX方向における位置(絶対位置)を検出する。ただし、X軸センサ31Xは、ワーク103と工具101とのX方向における相対位置を検出していると捉えられてよい。同様に、Y軸センサ31Yは、工具101とワーク103とのY方向における相対位置を検出していると捉えられてよい。Z軸センサ31Zは、工具101とワーク103とのZ方向における相対位置を検出していると捉えられてよい。
【0040】
(撮像部)
図1に示すように、加工機1は、工具101を撮像する撮像部33を有している。撮像部33は、例えば、テーブル23に固定されている。換言すれば、撮像部33は、ワーク103に対して固定的であり、ひいては、工具101とワーク103との相対移動に伴って工具101と相対移動する位置に配置されている。
【0041】
加工機1は、適宜な時期に、センサ31の検出値に基づいて、工具101とワーク103(撮像部33)とを所定の位置関係に位置決めし、撮像部33によって工具101を撮像する。そして、例えば、以前に撮像された画像と、今回撮像された画像とを比較することによって、以前の工具101の位置と、現在の工具101の位置とのずれが検出される。このずれは、例えば、加工機1の温度が上昇して加工機1の各部が変形することによって生じる。加工機1は、検出したずれに基づいて、センサ31に基づく駆動源29の制御を補正する。なお、このような工具の位置のずれの検出は、工具の位置の検出の一種と捉えられてよく、工具の位置のずれに基づく制御は、工具の位置に基づく制御の一種と捉えられてよい。
【0042】
テーブル23に対する撮像部33の具体的な配置位置は、適宜に設定されてよい。例えば、撮像部33は、テーブル23の外周部に位置していてもよいし、テーブル23に固定された不図示の追加テーブルに位置していてもよい。また、撮像部33は、概略矩形状のテーブル23の4辺のうち、+X側、-X側、+Y側及び+Y側の任意の辺に位置してよい。また、撮像部33は、撮像部33が位置する1辺において、当該1辺の端部側(テーブルの角部側)に位置してもよいし、1辺の中央に位置してもよい。
【0043】
【0044】
撮像部33は、例えば、支持部材35と、支持部材35上に固定されているカメラ37と、支持部材35上に固定され、カメラ37と対向している照明装置39とを有している。そして、照明装置39とカメラ37との間に位置決めされた工具101がカメラ37によって撮像される。
【0045】
撮像部33(カメラ37)によって工具101を撮像する方向(撮像方向)は、任意の方向とされてよい。図示の例では、撮像方向がY方向である態様が例示されている。Y方向は、本実施形態では、工具101(別の観点では主軸19)の軸方向に対して直交する方向、工具101とワーク103とが相対移動可能な方向、及び工具101(ワーク103でもよい)がガイドされる方向である。
【0046】
撮像方向は、上記のY方向の説明を同様に適用できるX方向であってもよい。また、撮像方向は、Z方向であっても構わない。ただし、撮像方向がZ方向である場合、本実施形態では、工具101に対してカメラ37の反対側に照明装置39を配置することが難しい。また、撮像方向は、X方向、Y方向及び/又はZ方向に傾斜する方向であっても構わない。ただし、この場合、工具の位置を計測するための種々の制御及び演算が複雑化する。
【0047】
上記のように、撮像方向は、任意の方向とされてよい。ただし、本実施形態の説明では、便宜上、撮像方向がY方向であることを前提とした説明をすることがある。より詳細には、カメラ37が工具101の+Y側から工具101を撮像する態様を前提に説明することがある。
【0048】
支持部材35は、カメラ37及び照明装置39のテーブル23に対する固定に寄与し、また、カメラ37と照明装置39との相対位置を規定することに寄与している。支持部材35の形状、寸法及び材料は適宜に設定されてよい。また、支持部材35は、省略されても構わない。すなわち、カメラ37及び照明装置39は、直接にテーブル23に固定されても構わない。
【0049】
カメラ37は、例えば、レンズ41と、撮像素子43と、これらを収容している筐体(符号省略)とを有している。レンズ41は、単レンズであってもよいし、複合レンズであってもよい。レンズ41の材料としては、ガラス及び樹脂を挙げることができる。撮像素子43は、例えば、固体撮像素子である。固体撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ及びCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサを挙げることができる。撮像素子43は、例えば、可視光に対する感度が高いものである。ただし、撮像素子43は、赤外線、紫外線又はX線等に対する感度が高いものであってもよい。
【0050】
なお、図示の例とは異なり、レンズ41と撮像素子43(カメラ)とは、筐体によって一体化されていなくてもよい。例えば、別個に流通されているレンズと撮像素子とが組み合わされてもよい。特に図示しないが、カメラ37は、撮像素子43を駆動するドライバを有していてもよい。カメラ37の撮像した画像のデータは、カメラ37の外部の機器(例えばパーソナルコンピューター)に出力され、外部の機器によって処理される。ただし、カメラ37は、画像データの処理の少なくとも一部を担う画像処理部を有していてもよい。このような処理部は、例えば、IC(Integrated Circuit)によって実現されてよい。カメラ37は、例えば、グレースケール画像を取得する。ただし、カメラ37は、カラー画像を取得してもよい。換言すれば、カメラ37は、カラーフィルタを有していてもよい。
【0051】
照明装置39は、例えば、カメラ37によって撮像される画像内において、工具101の輪郭を明確にすることに寄与する。具体的には、照明装置39からの光は、一部が工具101によって遮られ、残りが工具101の周囲を通過してカメラ37に入射する。その結果、カメラ37によって撮像された画像内において、工具101の領域の明度に対して、工具101の外側の領域の明度が高くなる。ひいては、工具101の輪郭が明確になる。
【0052】
照明装置39は、特に図示しないが、光を生成する光源を有している。光は、例えば、可視光である。ただし、光は、赤外線、紫外線又はX線等であってもよい。また、光は、指向性が高いもの(例えばレーザ光)であってもよいし、指向性が高くないものであってもよい。光源は、例えば、LED(Light Emitting Diode)、レーザ、蛍光灯又は白熱電球とされてよい。照明装置39は、光源からの光を集束させるレンズを含んでいてもよい。
【0053】
(加工機における制御系の構成)
図4は、加工機1における制御系の構成の概要を示すブロック図である。より詳細には、ここでは、工具101及びワーク103の直交座標系XYZにおける相対移動の制御に係る構成が示されている。すなわち、工具101の回転の制御に係る構成等は図示が省略されている。
【0054】
図4の紙面左端においては、工具101及びワーク103の直交座標系XYZにおける相対移動に係る駆動源29及びセンサ31が模式的に示されているとともに、カメラ37が示されている。また、
図4の残りにおいては、制御ユニット5に構築される種々の機能部を示すブロック図が示されている。
【0055】
制御ユニット5は、例えば、加工機1の機械本体3の制御を行う制御装置45と、カメラ37が撮像した画像に基づく処理を行う画像処理装置47とを有している。
【0056】
制御装置45は、例えば、加工に直接的に関わる制御を行う主制御部49と、主制御部49の制御を補正するための処理を行う補助制御部51とを有している。
【0057】
主制御部49は、例えば、NCプログラムに基づいて機械本体3の動作を制御する。また、別の観点では、主制御部49は、センサ31の検出値に基づいて駆動源29のフィードバック制御を行う。
【0058】
補助制御部51は、例えば、撮像部33によって工具101を撮像するための制御を行う計測部51aと、撮像された画像に基づいて主制御部49の制御を補正する補正部51bとを有している。
【0059】
計測部51aは、例えば、工具101とカメラ37とを所定の位置関係に位置決めするように機械本体3(駆動源29)を制御する。また、計測部51aは、例えば、工具101の撮像がなされるようにカメラ37(撮像素子43)を制御する。なお、図示の例では、計測部51aは、主制御部49を介して駆動源29を制御しているが、直接的に駆動源29を制御してもよい。同様に、図示の例では、計測部51aは、画像処理装置47を介して撮像素子43を制御しているが、直接的に撮像素子43を制御してもよい。
【0060】
補正部51bは、例えば、画像処理装置47から工具101のずれ量を取得し、その取得したずれ量に基づいて主制御部49の制御を補正する。
【0061】
工具101のずれ量は、例えば、以下のようなものである。制御装置45は、例えば、NCプログラムによって指定されている工具101の位置(座標)へ、センサ31の検出値に基づいて工具101を移動させるように駆動源29の制御を行う。この制御は、工具101の位置とセンサ31の検出値との間に一定の対応関係があることが前提とされている。しかし、温度変化等に起因する加工機1の変形によって、工具の位置と位置センサの検出値との対応関係が上記の一定の対応関係からずれることがある。このずれの量を工具101のずれ量と捉えてよい。また、別の観点では、センサ31の検出値が所定の値である状態において、上記の一定の対応関係であるときの工具101の位置を基準位置としたとき、この基準位置と、工具101の実際の位置とのずれ量が工具101のずれ量である。なお、以下の説明では、便宜上、このような正確な表現をしないことがある。
【0062】
画像処理装置47は、例えば、カメラ37(撮像素子43)を制御して工具101の画像(厳密には画像データ)を取得する画像取得部53と、取得された画像に基づいて工具101の位置のずれ量を算出する算出部(55X、55Y及び55Z)とを有している。算出部は、より詳細には、工具101のX軸方向のずれ量を算出するX軸ずれ算出部55Xと、工具101のY軸方向のずれ量を算出するY軸ずれ算出部55Yと、工具101のZ軸方向のずれ量を算出するZ軸ずれ算出部55Zと、を含んでいる。
【0063】
制御ユニット5が含む種々の機能部は、例えば、既述のように、コンピュータがプログラムを実行することによって構築される。種々の機能部は、互いに異なるハードウェアに構築されていてもよいし、互いに同一のハードウェアに構築されていてもよい。例えば、制御装置45と、画像処理装置47とは、別個のコンピュータに構築されて、有線通信又は無線通信を行ってもよいし、同一のコンピュータに構築されてもよい。また、例えば、主制御部49と、補助制御部51の一部(又は全部)とが別個のコンピュータに構築されるとともに、補助制御部51の上記一部(又は全部)及び画像処理装置47が同一のコンピュータに構築されてもよい。また、画像処理装置47の一部の機能部は、カメラ37に内蔵されていてもよい。画像処理装置47は、工具101の位置を特定するだけであってよい。そして、制御装置45は、画像処理装置47が特定した工具101の位置と、基準の位置とを比較することによって、工具101のずれ量を特定してよい。すなわち、ずれ量算出部(55X、55Y及び55Z)は、画像処理装置47と制御装置45とによって構成されてよい。ただし、以下の説明では、便宜上、画像処理装置47がずれ量を特定するかのように表現する。
【0064】
図4に例示した種々の機能部は、制御ユニット5の動作を説明するための便宜的かつ概念的なものである。従って、例えば、プログラム上は、各種の機能部が区別されていなくてもよい。また、例えば、1つの動作が2以上の機能部の動作であってもよい。例えば、画像内の工具101の輪郭を取得する処理は、X軸ずれ算出部55X及びZ軸ずれ算出部55Zの双方の動作として捉えられてよい。
【0065】
(各軸における制御系の構成の一例)
図5は、各軸における制御系の構成の一例を示すブロック図である。別の観点では、主制御部49の一部の詳細を示す図である。図中、NCプログラム107、駆動源29及びセンサ31を除いた部分が主制御部49の一部に相当する。
【0066】
NCプログラム107は、各軸の駆動に関する指令の情報を含んでいる。例えば、NCプログラム107は、テーブル23、サドル13及び主軸頭17の移動に関する指令の情報を含んでいる。移動に関する指令の情報は、例えば、移動軌跡上の複数の位置、及び複数の位置間の速度の情報を含んでいる。
【0067】
解釈部57は、NCプログラム107を読み出して解釈する。これにより、例えば、テーブル23、サドル13及び主軸頭17のそれぞれについて、順次に通過する複数の位置と、複数の位置間の速度の情報が取得される。
【0068】
補間部59は、解釈部57が取得した情報に基づいて、所定の制御周期毎の目標位置を算出する。例えば、順次に通過する2つの位置と、その2つの位置の間の速度とに基づいて、制御周期毎に順次に到達すべき複数の目標位置を2つの位置の間に設定する。補間部59は、軸毎に制御周期毎の目標位置を算出し、加算部61に出力する。
【0069】
加算部61以降の構成は、軸毎に設けられている。すなわち、主制御部49は、加算部61から紙面右側に示す構成を合計で3つ有している。また、加算部61以降の構成は、例えば、フィードバック制御に係る公知の構成と同様である。そして、上述した補間部59から加算部61への制御周期毎の目標位置の入力、及び下記に説明する動作は、制御周期で繰り返し行われる。
【0070】
加算部61では、制御周期毎の目標位置と、センサ31によって検出された位置との偏差が算出される。算出された偏差(制御周期毎の目標移動量)は、位置制御部63に入力される。位置制御部63は、入力された偏差に所定のゲインを乗じて制御周期毎の目標速度を算出し、加算部65に出力する。加算部65は、入力された制御周期毎の目標速度と、センサ31の検出位置が微分部73によって微分されて得られた検出速度との偏差を算出し、速度制御部67に出力する。速度制御部67は、入力された偏差に所定のゲインを乗じて制御周期毎の目標電流(目標トルク)を算出し、加算部69に出力する。加算部69は、入力された制御周期毎の目標電流と、不図示の電流検出部からの検出電流との偏差を算出し、電流制御部71に出力する。電流制御部71は、入力された偏差に応じた電力を駆動源29に供給する。
【0071】
上記はあくまで一例であり、適宜に変形されてよい。例えば、特に図示しないが、フィードフォワード制御が付加されてもよい。電流ループに代えて加速度ループが挿入されてもよい。駆動源が回転式の電動機であり、その回転を検出する回転センサ(例えばエンコーダ又はレゾルバ)が設けられている場合においては、その回転センサの検出値に基づいて速度制御がなされてもよい。
【0072】
(画像に基づく工具の位置の特定方法)
以下では、カメラ37によって撮像した工具101の画像に基づく工具101のずれ量の特定方法について説明する。
【0073】
(撮像方向に直交する方向における位置の特定方法)
図6は、撮像方向に直交する方向(本実施形態ではX方向及びZ方向)における工具101の位置のずれ量の計測方法を説明するための図である。この図は、カメラ37によって撮像された画像109の例を模式的に示している。
【0074】
X方向及びZ方向における工具101の位置のずれ量は、公知の方法と同様に特定されてよい。例えば、既に言及したように、工具101とカメラ37とを所定の位置関係に位置決めして工具101を撮像する。撮像は、例えば、基準時期(後述)と、その後の1以上の計測時期(後述)とにおいて行われる。そして、基準時期に撮像された画像内における工具101(
図6において点線で示す)の位置と、計測時期に撮像された画像内における工具101(
図6において実線で示す)の位置とを比較することにより、X方向におけるずれ量dX及びZ方向におけるずれ量dZを特定することができる。そして、ずれ量dX及びdZに基づいて、主制御部49の制御が補正される。
【0075】
撮像のための工具101及びカメラ37の相対位置の位置決めは適宜になされてよい。例えば、計測部51aは、3つのセンサ31の検出値がそれぞれ所定の値になるように3つの駆動源29を制御する。この制御により、工具101は、例えば、その先端が照明装置39とカメラ37との間に位置する。換言すれば、工具101の先端は、カメラ37の視野内に位置する。そして、計測部51aは、撮像素子43を駆動して工具101の画像を取得する。
【0076】
工具101のX方向及びZ方向における位置のずれ量を計測するための撮像が行われるときの工具101とカメラ37との位置関係において、Y軸センサ31Yが検出する位置は、上記の説明とは異なり、厳密に一定でなくてもよい。例えば、後述するように、工具101のY方向における位置のずれ量の計測では、工具101とカメラ37とのY方向の相対位置(別の観点ではY軸センサ31Yの検出位置)が互いに異なる複数の画像が取得される。そして、その複数の画像からピントが合っている画像が選択される。この選択された画像が工具101のX方向及びZ方向における位置のずれ量を計測するための画像として用いられてよい。この場合、用いられる画像が取得されたときのY軸センサ31Yの検出位置は、後述する説明から理解されるように、工具101のY方向におけるずれ量に応じて変動するものであり、一定でない。
【0077】
ずれ量dXを特定するための画像と、ずれ量dZを特定するための画像とは、例えば、同一の画像である。ただし、互いに異なる画像からずれ量dX及びdZが特定されても構わない。
【0078】
撮像時において、工具101は、回転が停止されていてもよいし、回転されていてもよい。また、工具101の回転が停止された状態で撮像を行う態様において、主軸19は、回転方向の位置決めがなされてもよいし、なされなくてもよい。これらの条件は、工具101の振れ及び形状等に応じて適宜に設定されてよい。
【0079】
工具101が、
図6では、工具101は、Z軸に対して傾斜することなく平行移動しており、工具101のいずれの部位においてもずれ量dX及びdZは同じである。ただし、工具101が傾斜する場合においては、工具101のいずれの部位を基準としてずれ量dX及びdZを特定するかによって、ずれ量dX及びdZが異なる。基準となる部位は、工具101の種類等に応じて適宜に設定されてよく、例えば、工具101の先端中央とされてよい。基準となる部位は、基準時期において、概略、カメラ37の視野の中央に位置してもよいし、中央からずれた位置に位置してもよい。
【0080】
ずれ量dX及びdZの特定に際しては、公知の種々の画像処理が行われてよい。例えば、工具101の輪郭の特定に際しては、公知のエッジ検出が行われてよい。ずれ量dX及びdZの検出精度は適宜に設定されてよい。例えば、画像内において、1ピクセル単位で工具101の位置が特定されてよい。すなわち、ずれ量dX及びdZの検出精度は、1ピクセルに相当する長さとされてよい。また、例えば、画像内の工具101の周辺情報から工具101のエッジ位置を推定する処理(サブピクセル処理)を行うことによって、1ピクセルに相当する長さよりも短い長さの検出精度を実現してもよい。例えば、ずれ量dX及びdZの検出精度は、1/1000ピクセル、1/100ピクセル又は1/10ピクセルに相当する長さとされてもよい。
【0081】
1ピクセルと、1ピクセルに相当する実際の長さとの対応関係の情報は、加工機1の製造者によって入力されてもよいし、オペレータによって入力されてもよいし、加工機1が所定の動作を行って取得してもよい。加工機1が取得する場合は、例えば、加工機1は、X軸駆動源29X(及び/又はZ軸駆動源29Z)によって工具101とカメラ37とをX方向(及び/又はZ方向)において相対移動させ、少なくとも2つの撮像位置で画像を取得する。このときのX軸センサ31X(及び/又はZ軸センサ31Z)によって検出される2つの撮像位置間の距離と、2つの画像間における工具101の位置の差(ピクセル数)とを比較することにより、1ピクセルと、実際の長さとの対応関係が特定される。
【0082】
(撮像方向における位置の特定方法)
Y方向のずれ量の計測においては、Y軸駆動源29Yによって工具101とカメラ37とのY方向における距離を変化させながらカメラ37による撮像を行い(複数の画像を取得し)、ピントが合うときのY軸センサ31Yによる検出位置を取得する。このような検出位置の取得を基準時期と計測時期とのそれぞれにおいて行う。一方、ピントが合う距離は一定である。従って、基準時期における検出位置と、計測時期における検出位置とのずれ量を工具101のY方向におけるずれ量とすることができる。
【0083】
上記のように工具101とカメラ37とをY方向に相対移動させて複数の画像を取得する場合、工具101及びカメラ37の相対移動は、例えば、移動と停止とを繰り返す間欠的なものとされてよい。そして、停止時に撮像が行われてよい。この場合、例えば、画像の鮮明度を向上させることができる。ただし、相対移動は、停止を含まない連続的なものとされ、移動中に撮像が行われてもよい。相対移動の速度は任意である。撮像時において、工具101は、回転が停止されていてもよいし、回転されていてもよい。
【0084】
また、工具101及びカメラ37の相対移動は、ピントが合うと予想される距離よりも長い距離で両者が離れた状態から両者が近づいていくものであってもよいし、逆に、ピントが合うと予想される距離よりも短い距離で両者が近づいている状態から両者が離れていくものであってもよいし、双方の移動を含んでいてもよい。相対移動がなされる距離は、工具101のY方向のずれ量についての予想される最大値よりも大きい範囲で適宜に設定されてよい。
【0085】
工具101及びカメラ37を相対移動させながら撮像するときの撮像位置同士の距離を撮像位置のピッチというものとする。被写界深度等を無視できれば、形式上は、このピッチが工具101のずれ量の計測の精度となる。ただし、ピントが合うと判定される撮像位置を2つ選択可能な場合に、その中間位置をピントが合う位置として用いることなどによって、撮像位置のピッチよりも短い距離をずれ量の計測の精度とすることも可能である。
【0086】
後述するように、ピントが合っているか否かは、所定の指標値を算出して判定される。このとき、撮像位置と指標値との相関関係を近似する関数を求め、この関数において指標値がピークとなる撮像位置をピントが合う撮像位置として特定してもよい。この場合、上記とは異なり、ずれ量の精度は、撮像位置のピッチよりも小さくなる(精度が高くなる。)。ただし、以下の説明では、便宜上、主として、そのような処理を行わない態様を例に取る。
【0087】
撮像位置のピッチは、例えば、全ての撮像位置に関して一定とされてよい。ただし、ピッチは、一定でなくてもよい。例えば、ピントが合うと予想される位置からの距離が長い位置において確認的に撮像を行うような場合において、この撮像位置と、隣の撮像位置とのピッチは、他の撮像位置間のピッチよりも長くされてよい。
【0088】
撮像位置のピッチは、状況に応じて変更されてもよい。例えば、最初に、Y方向の第1範囲内に相対的に大きいピッチで設定された複数の撮像位置で撮像を行う。この撮像結果に基づいて、第1範囲内において、ピントが合うと予想される第2範囲を特定する。次に、第2範囲内に相対的に小さいピッチで設定された複数の撮像位置で撮像を行う。この撮像結果に基づいて、ピントが合う位置を確定する。
【0089】
撮像位置のピッチの具体的な大きさは、加工機1に要求される加工精度等に応じて適宜に設定されてよい。例えば、ピッチは、加工機1におけるY方向の位置決め精度に対して、同じであってもよいし、大きくてもよい。また、例えば、ピッチは、1μm以下、0.1μm以下、10nm以下又は1nm以下とされてよい。また、例えば、ピッチは、被写界深度よりも長くてもよいし、同等でもよいし、短くてもよい。
【0090】
工具101とカメラ37との相対移動の態様(移動方向、及び片道又は往復のいずれであるか等)、複数の撮像位置が設定されるY方向の範囲、及び/又は撮像位置のピッチ等の各種の条件は、加工機1の製造者によって設定されてもよいし、オペレータによって設定されてもよい。
【0091】
(ピントが合っているか否かの判定方法)
ピントが合っているか否かは、例えば、画像の鮮明度によって判定することができる。具体的には、以下のとおりである。
【0092】
図7(a)及び
図7(b)は、画像の鮮明度の変化を説明するための図である。これらの図は、
図9の領域VIIの拡大図に相当している。これらの図では、複数のピクセル111が模式的に示されている。ピクセル111に付されたハッチングは、明度を表現しており、ハッチングが濃いほど、画像内の明度が低い。
【0093】
図7(a)は、ピントが合っている場合の画像109(画像109Aとする)の例を示している。
図7(a)において、領域R1は、工具101に対応する領域である。領域R2は、工具101の外側の領域に対応する領域である。領域R1の明度は、領域R2の明度よりも低くなっている。ピントが合っている場合においては、例えば、領域R1から領域R2への明度の変化は急激なものとなる。
図7(a)では、領域R1に含まれる複数のピクセル111が互いに同一の明度を有し、領域R2に含まれる複数のピクセル111が互いに同一の明度を有し、かつ両者の明度が互いに異なっているように複数のピクセル111が描かれることによって、急激な明度の変化が表現されている。
【0094】
図7(b)は、ピントが合っていない場合の画像109(画像109Bとする)の例を示している。
図7(b)において、領域R5は、工具101に対応する領域である。領域R6は、工具101と工具101の外側の領域との境界BLを含む領域である。領域R7は、工具101の外側の領域に対応する領域である。ピントが合っていない場合においては、例えば、領域R5から領域R7への明度の変化は緩やかなものとなる。
図7(b)では、領域R6に含まれるピクセル111の明度が、領域R5に含まれるピクセル111の明度と、領域R7に含まれるピクセル111の明度との中間の明度となっているように複数のピクセル111が描かれることによって、緩やかな明度の変化が表現されている。
【0095】
ピントが合っていない場合においては、ピントが合っている場合に比較して、撮像素子43の1つのピクセルに入射する光の出射元(工具101及びその周囲)の面積が広くなる。その結果、上記のように、境界BL付近における明度の変化が緩やかになる。すなわち、境界BL付近における鮮明度が低下する。
【0096】
上記の説明では、工具101とその外側の領域との境界BLにおける明度の変化を例に取った。ただし、工具101に対応する領域の内部、及び/又は工具101の外側の領域の内部においても、ピントが合っていない場合においては、上記と同様に、明度の変化が緩やかになる。すなわち、鮮明度が低下する。
【0097】
また、明度の変化の緩急に着目したが、別の観点では、ピントが合っていない場合、画像全体における明度の最大値が小さくなり、及び/又は画像全体における明度の最小値が大きくなる。これも、鮮明度の低下の一種と捉えられてよい。
【0098】
明度は、別の観点では、ピクセル値である(以下、同様。)。本実施形態の説明において、明度の語と、ピクセル値の語とは、矛盾等が生じない限り、相互に置換されてよい。
【0099】
カメラ37が撮像する画像の明度の段階数は適宜に設定されてよい。例えば、明度の段階数は256階調とされてよい。このとき、明度の最小値は0であり、グレースケール画像では黒に対応する。また、明度の最大値は255であり、グレースケール画像では白に対応する。なお、カラー画像が撮像される場合(1つの上位のピクセルが色相毎の下位のピクセルを複数(通常は3つ)含む場合)において、本実施形態で述べる明度は、いずれか1種の色相における明度の説明と捉えられてもよいし、1つの上位のピクセル内で2以上(例えば全て)の色相の明度を合計した値と捉えられてもよい。
【0100】
(鮮明度の指標値)
鮮明度の高低は、明度に基づく適宜な指標値によって評価されてよい。以下では、3つの指標値を例示する。なお、先に説明される指標値の説明は、矛盾等が生じない限り、その後に説明される指標値に援用されてよい。
【0101】
(第1指標値)
鮮明度が低くなると、隣り合うピクセル111同士の明度の差の絶対値は小さくなる。そこで、この差の絶対値が大きくなるほど値が大きくなる指標値(第1指標値ということがある。)が定義されてよい。より詳細には、例えば、画像109内の複数のピクセル111のそれぞれについて、隣のピクセル111との明度の差を算出する。そして、明度の差の2乗又は絶対値について、複数のピクセル111における代表値を求め、これを指標値とする。指標値の値が大きいほど、鮮明度が高い。
【0102】
代表値は、例えば、平均値(算術平均)、中央値又は最頻値である(以下、同様。)。指標値として、いずれの代表値が用いられてもよく、例えば、平均値が用いられてよい。なお、上記の指標値の算出のために抽出されるピクセル111(鮮明度の評価対象とされるピクセル111)の総数が一定である場合(例えば基準時期の総数と計測時期の総数とが同じである場合)は、合計値の算出は、平均値の算出と同義とみなされてよい。
【0103】
鮮明度の評価対象とされる複数のピクセル111は、カメラ37の視野の広さに相当する広さを有する画像(全体画像ということがある。)が含む全てのピクセル111であってもよいし、全体画像内の一部の領域(一部画像ということがある。)が含むピクセル111のみであってもよい。なお、本実施形態において、特に断りなく単に画像という場合は、矛盾等が生じない限り、全体画像、及び一部画像のいずれであってもよい。
【0104】
上記の一部画像は、適宜に設定されてよい。例えば、全体画像のうちの外周側の領域(別の観点では工具101からの距離が長い領域)は、工具101にピントが合っているか否かの評価に適さない場合がある。そこで、全体画像のうちの中央側の一部の領域(工具101及び工具101からの距離が短い領域)が一部画像とされてよい。また、例えば、工具101の構成及び撮像条件によっては、工具101の輪郭に鮮明度の変化が現れやすい。そこで、工具101の輪郭を含むように当該輪郭に沿って設定された帯状の領域が一部画像とされてよい。一部画像は、全体画像内の1箇所に設定される1つの領域であってもよいし、全体画像内の複数個所に設定される複数の領域であってもよい。
【0105】
各ピクセル111において、明度の差の算出対象とされる隣のピクセル111は、右、左、上及び下(並びに斜め方向)のうちのいずれの方向のピクセル111であってもよい。なお、順次、各ピクセル111について差(絶対値)が算出され、その代表値が指標値とされるから、右及び左のいずれであるかは、基本的に指標値に影響を及ぼさない(右及び左は実質的に同じである。)。上及び下のいずれであるかも同様である。また、各ピクセル111においては、いずれか1つの方向における隣のピクセル111だけでなく、2以上の方向における隣のピクセル111との差が算出されてもよい。例えば、上側の隣のピクセル111との差と、右側の隣のピクセル111との差が算出されてよい。
【0106】
画像(全部画像又は一部画像)の最外周のピクセル111については、他のピクセル111と同様に差を算出することができない場合がある。ただし、そのようなピクセル111の数は、通常、画像に含まれるピクセル111の総数に対して少ない。従って、最外周のピクセル111についての差が指標値(差の代表値)に及ぼす影響は小さい。そこで、最外周のピクセル111における差の演算は適宜に設定されてよい。例えば、右側の隣のピクセル111との差と、上側の隣のピクセル111との差とを算出する場合、最も上側のピクセル111は、右側の隣のピクセル111との差のみが算出されてよく、最も右側のピクセル111は、上側の隣のピクセル111との差のみが算出されてよい。
【0107】
(第2指標値)
鮮明度が低くなると、画像内の明度の最大値Maxは小さくなり、また、画像内の明度の最小値Minは大きくなる。そこで、下記の式によって演算される値を鮮明度の指標値(第2指標値ということがある。)としてよい。指標値の値が大きいほど、鮮明度が高い。
(Max-Min)/(Max+Min)
【0108】
なお、評価対象とされる(第2指標値の算出のために抽出される)複数のピクセル111は、第1指標値において評価対象とされる複数のピクセル111と同様に、全部画像に含まれる全てのピクセル111であってもよいし、1以上の一部画像に含まれるピクセル111のみであってもよい。また、第2指標値の算出においては、評価対象とされる複数のピクセル111は、互いに隣り合っていなくてもよい。例えば、互いに他のピクセル111を挟んで離れている複数のピクセル111を対象として、Max及びMinが算出されてよい。
【0109】
(第3指標値)
鮮明度が低くなると、相対的に大きい明度は小さくなり、相対的に小さい明度は大きくなる。そこで、以下のように鮮明度の指標値(第3指標値ということがある。)を算出してよい。まず、複数のピクセル111の明度から代表値(明度自体の代表値ということがある。)を特定する。そして、この代表値と、複数のピクセル111の明度との差の絶対値が大きくなるほど値が大きくなる指標値が定義されてよい。より詳細には、例えば、明度自体の代表値と、複数のピクセル111それぞれの明度との差の絶対値又は2乗を求める。そして、この差の絶対値又は2乗について、複数のピクセル111における代表値(差の代表値ということがある。)が指標値として算出されてよい。
【0110】
代表値は、既に述べたように、平均値、中央値又は最頻値である。明度自体の代表値として、いずれの値が用いられてもよく、例えば、中央値が用いられてよい。また、差の代表値として、いずれの値が用いられてもよく、例えば、平均値が用いられてよい。既述のように、指標値の算出のために抽出されるピクセル111の総数が一定である場合は、合計値の算出は、平均値の算出と同義とみなされてよい。
【0111】
なお、第3指標値の算出のために抽出される複数のピクセル111は、第1指標値の算出のために抽出される複数のピクセル111と同様に、全部画像に含まれる全てのピクセル111であってもよいし、1以上の一部画像に含まれるピクセル111のみであってもよい。また、第3指標値の算出のために抽出される複数のピクセル111は、第2指標値の算出のために抽出される複数のピクセル111と同様に、互いに隣り合っていなくてもよい。
【0112】
(基準時期及び計測時期)
既述のように、加工機1では、例えば、基準時期における計測値(画像内の工具101の位置又はピントが合っているときのY軸センサ31Yの検出値)と、1以上の計測時期における計測値とが比較され、工具101の位置のずれ量が特定される。そして、ずれ量に基づいて、制御の補正がなされる。計測時期は、別の観点では、制御の補正がなされる時期である(以下、同様。)。基準時期及び計測時期は、適宜に設定されてよい。例えば、以下のとおりである。
【0113】
ワーク103及び工具101は、例えば、センサ31の検出値に基づいてテーブル23、サドル13及び主軸頭17を所定の位置に位置決めしたときに所定の相対位置となる位置関係で加工機1に対して取り付けられる。その後、上記の位置関係が維持されていることを前提として、センサ31の検出値に基づいて工具101とワーク103との相対位置が制御されてワーク103の加工が行われる。
【0114】
従って、例えば、ワーク103及び工具101の取付後、ワーク103の加工開始前に、温度上昇等に起因する加工機1の変形によってワーク103と工具101との位置関係が上記の位置関係からずれると(すなわち工具101の位置がずれると)、加工前のワーク103の形状と、加工によって形成される形状との相対位置が所望の相対位置からずれる。
【0115】
また、例えば、ワーク103の加工開始後にワーク103と工具101との位置関係が上記の位置関係からずれると、加工によって初期に形成された形状と、加工によって後期に形成された形状との相対位置が所望の相対位置からずれる。すなわち、ワーク103の形状が所望の形状からずれる。逆に言えば、加工前のワークの形状と、加工によって形成される形状との相対位置が問題とされない加工であれば、加工開始前に生じるずれは、無視されてよい。
【0116】
上記のような事情を踏まえ、例えば、基準時期は、所定の工具101によるワーク103の加工の開始前の任意の時期とされてよい。また、1以上の計測時期は、例えば、上記工具101によるワーク103の加工中の任意の時期とされてよい。この場合、加工開始後のずれ量に基づいて工具101の制御を補正して、加工によって形成されるワークの形状の精度を向上させることができる。
【0117】
また、例えば、基準時期は、ワーク103及び工具101の取付後、ワーク103の加工前であって、ワーク103と工具101との位置関係にずれが生じていないと想定される時期とされてよい。このような時期としては、例えば、加工機1の稼働前(別の観点では温度上昇前)の時期を挙げることができる。そして、1以上の計測時期は、上記した加工中に代えて、又は加えて、上記工具101によるワーク103の加工前であって、加工機1の暖機運転後の時期を含んでよい。この場合においては、例えば、加工前のワークの形状と、加工によって形成されるワークの形状との相対位置の精度を向上させることができる。
【0118】
加工中における計測時期は、ワーク103を加工する種々の工程に対して、適宜に設定されてよい。例えば、工具101は、ワーク103に対して当接した状態での移動と、その後にワーク103から離れる移動とを繰り返す場合がある。このような場合において、工具101がワーク103から離れる複数の工程のいずれか1つ以上に対して、計測時期が設定されてよい。また、例えば、本来は工具101がワーク103に当接した状態が維持される工程であっても、工具101の移動方向が変更されるタイミングに工具101をワーク103から離す工程を挿入し、この工程に計測時期を設定してもよい。
【0119】
基準時期及び計測時期は、NCプログラムによって規定されてもよいし、所定の計測条件が満たされたときに自動で計測が行われるようにNCプログラムとは別のプログラムによって規定されてもよい。また、基準時期及び計測時期は、そのように予め設定されなくてもよい。例えば、オペレータが加工機1の不図示の操作部に対して所定の操作を行ったことをトリガとして、工具101の位置のずれ量の計測が行われてもよい。すなわち、上記所定の操作を行った時期が基準時期又は計測時期とされてもよい。
【0120】
上記のように所定の計測条件が満たされたときに自動で計測が行われる態様において、上記計測条件は適宜に設定されてよい。例えば、計測条件は、NCプログラムによって規定されている加工が進行して、工具101がワーク103から一時的に離れる工程になったという条件を含んでよい。及び/又は、計測条件は、不図示の温度センサの検出する温度が所定の閾値を超えたという条件を含んでよい。また、例えば、NCプログラムで規定されている複数の工程のうちのいずれか1つ以上が指定され、加工の進行段階が上記指定された工程に至ったことが計測条件とされてもよい。
【0121】
基準時期及び計測時期は、オペレータによって設定されてもよいし、加工機1の製造者によって設定されてもよい。例えば、上述のように、NCプログラムによって基準時期及び計測時期が規定される態様、及び所定の操作が行われた時期が基準時期及び計測時期とされる態様は、オペレータによって基準時期及び計測時期が設定される態様の例である。また、例えば、所定の計測条件が満たされたときに計測が行われる場合において、上記計測条件は、オペレータによって設定されてもよいし、加工機1の製造者によって設定されてもよい。
【0122】
(補正方法)
ずれ量に基づく補正方法は、公知の方法又は公知の方法を応用したものとされてよい。また、
図5を参照して説明した制御ループにおいて、いずれの段階において補正がなされてもよい。以下に、いくつかの補正方法の例を示す。加工機1では、以下に述べる補正が選択的に採用される。
【0123】
加工機1は、加工機1の不動部分(例えばベース7)に対して固定的に定義された機械座標系の情報を保持している。機械座標系は、別の観点では、絶対座標系であり、また、センサ31の検出値と対応付けられている。NCプログラム107は、例えば、この機械座標系の座標を用いて加工機1の動作(例えば工具101の位置)を規定する。従って、加工機1の補正部51bは、ずれ量の絶対値と同じ量でずれ量と同一方向に機械座標系をシフトさせるように機械座標系を補正してよい。又は、補正部51bは、ずれ量の絶対値と同じ量でずれ量とは反対方向にNCプログラム107の座標をシフトさせるようにNCプログラム107を補正してよい。換言すれば、補正部51bは、補正されたNCプログラムを作成してよい。
【0124】
解釈部57は、NCプログラム107を解釈して得られた座標を補間部59に入力する。このとき、補正部51bは、両者の間に介在して、ずれ量の絶対値と同じ量でずれ量とは反対方向に解釈部57からの座標をシフトさせるように解釈部57からの座標を補正して補間部59に入力してよい。
【0125】
補間部59は、入力された座標に基づいて制御周期毎の目標位置を算出し、加算部61に入力する。このとき、補正部51bは、両者の間に介在して、ずれ量の絶対値と同じ量でずれ量とは反対方向に補間部59からの目標位置(座標)をシフトさせるように目標位置を補正して加算部61に入力してよい。
【0126】
加算部61にはセンサ31の検出位置がフィードバックされる。このとき、補正部51bは、両者の間に介在して、ずれ量の絶対値と同じ量でずれ量と同一方向にセンサ31からの検出位置(座標)をシフトさせるように検出位置を補正して加算部61に入力してよい。
【0127】
加算部61は、補間部59からの目標位置とセンサ31からの検出位置との偏差を位置制御部63に入力する。このとき、補正部51bは、加算部61と位置制御部63との間に介在して、ずれ量の絶対値と同じ量でずれ量と反対方向に偏差をシフトさせるように偏差を補正して加算部61に入力してよい。
【0128】
X方向のずれ量に基づく補正、Y方向のずれ量に基づく補正及びZ方向のずれ量に基づく補正は、例えば、上述した種々の補正方法のうちの同一の補正方法によって実現される。ただし、互いに異なる方向において互いに異なる補正方法が利用されても構わない。
【0129】
(撮像方向のずれ量の計測に係るフローチャート)
図8は、上述した撮像方向のずれ量の計測方法を実現するために制御ユニット5が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、計測時期において行われる。
【0130】
ステップST1の前においては、制御ユニット5(計測部51a)は、工具101がカメラ37の視野内に位置するように工具101とカメラ37とを相対的に移動させる。具体的には、本実施形態では、制御ユニット5は、工具101の先端がカメラ37と照明装置39との間に位置するように各種の駆動源29を制御する。
【0131】
ステップST1では、制御ユニット5(計測部51a)は、工具101とカメラ37とをY方向において相対移動させる。より詳細には、本実施形態では、制御ユニット5は、Y軸駆動源29Yによってサドル13をY方向に移動させる。この移動は、一の撮像位置から次の撮像位置への移動である。移動量は、例えば、複数の撮像位置のピッチ(既述)である。このときの位置制御(移動量の制御)は、例えば、Y軸センサ31Yの検出値がフィードバックされるフルクローズドループ制御である。ただし、位置制御は、セミクローズドループ制御又はオープン制御とされてもよい。
【0132】
ステップST2では、制御ユニット5(計測部51a)は、カメラ37によって工具101の画像を取得する。
【0133】
ステップST3では、制御ユニット5(計測部51a)は、現在のY軸センサ31Yの検出位置(座標)と、取得した画像とを対応付けて保存する。
【0134】
ステップST4では、制御ユニット5(計測部51a)は、予定されていた複数の撮像位置の全てにおける撮像が終了したか否か判定する。否定判定の場合は、制御ユニット5は、ステップST1に戻り、撮像を継続する。肯定判定の場合は、制御ユニット5は、ステップST5に進む。
【0135】
ステップST5では、制御ユニット5(Y軸ずれ算出部55Y)は、ステップST1~ST4の繰り返しによって蓄積した複数の画像から1つの画像を読み出す。
【0136】
ステップST6では、制御ユニット5(Y軸ずれ算出部55Y)は、読み出した画像における鮮明度(指標値)を算出する。
【0137】
ステップST7では、制御ユニット5(Y軸ずれ算出部55Y)は、ステップST1~ST4の繰り返しによって蓄積した複数の画像の全てについて、鮮明度の算出が完了したか否か判定する。否定判定の場合は、制御ユニット5は、ステップST5に戻り、鮮明度の算出を継続する。肯定判定の場合は、制御ユニット5は、ステップST8に進む。
【0138】
ステップST8では、制御ユニット5(Y軸ずれ算出部55Y)は、ステップST7の繰り返しによって得られた複数の画像の鮮明度を比較する。そして、制御ユニット5は、最も鮮明度が高い画像を選択し、選択した画像に対してステップST3において対応付けられていたY方向の位置を特定する。すなわち、今回の計測時期における、ピントが合っているときのY方向の位置を特定する。なお、既述のように、このような処理に代えて、複数の画像を取得したときの位置と、複数の画像の鮮明度との相関関係を近似する関数から、鮮明度がピークになる位置が特定されてもよい。
【0139】
ステップST8では、制御ユニット5(Y軸ずれ算出部55Y)は、ステップST8で特定したピントが合っているときのY方向の位置と、予め取得されているピントが合っているときの位置とを比較してずれ量を特定する。予め取得されているピントが合っているときの位置は、例えば、基準時期において、ステップST1~ST8と同様の処理を行って得られた位置である。なお、予め取得されているピントが合っているときの位置は、製造者又はオペレータによって加工機1に入力された値とされてもよい。
【0140】
以上の手順は、あくまで一例であり、適宜に変形されてよい。例えば、以下のように変形されてよい。図示の例では、撮像の繰り返し(ステップST1~ST4)の後に、鮮明度の算出の繰り返し(ステップST5~ST7)が行われている。ただし、1回の撮像と、その撮像によって得られた画像の鮮明度の算出とを行う一連の処理が繰り返されてもよい。また、撮像の繰り返しと、鮮明度の算出の繰り返しとが、ある程度の時間差で、マルチタスクによって並行して行われてもよい。図示の例では、全ての画像について鮮明度を算出した後に、最も鮮明度が高い画像が選択されている。ただし、鮮明度が算出される度に、最も鮮明度が高い画像を更新する必要があるか否かの判定が行われ、肯定判定のときに更新が行われることによって、最も鮮明度が高い画像が選択されてもよい。
【0141】
既述のように、ステップST2の繰り返しによって得られた複数の画像のうちいずれか(例えばステップST8で選択された画像)は、工具101のX方向及びZ方向における位置の特定に用いられてよい。ただし、X方向及びZ方向における位置の特定に用いられる画像は、ステップST2とは別の処理によって得られた画像とされてもよい。
【0142】
なお、加工機1のうち、撮像による工具101の位置の計測に直接に関わる構成は、計測装置2(符号は
図1)として捉えられてよい。例えば、計測装置2は、撮像部33と、画像処理装置47とを含んでよい。
【0143】
以上のとおり、本実施形態では、加工機1は、第1駆動源(Y軸駆動源29Y)と、カメラ37と、画像処理装置47と、制御装置45とを有している。Y軸駆動源29Yは、第1方向(Y方向)においてワーク103と工具101とを相対移動させる。カメラ37は、工具101をY方向において撮像して画像を取得する。画像処理装置47は、画像内の工具101の鮮明度に基づいて工具101のY方向の位置(より詳細にはずれ量)を特定する。制御装置45は、画像処理装置47によって特定された工具101のY方向の位置(ずれ量)に基づいてY軸駆動源29Yを制御する。
【0144】
別の観点では、本実施形態では、計測装置2は、ワーク103と第1方向(Y方向)において相対移動する工具101の位置を計測する。計測装置2は、カメラ37と、画像処理装置47とを有している。カメラ37は、工具101をY方向において撮像して画像を取得する。画像処理装置47は、画像内の工具101の鮮明度に基づいて工具101のY方向の位置を特定する。
【0145】
さらに別の観点では、本実施形態では、被加工物(加工後のワーク103)の製造方法は、上記のような実施形態に係る加工機1を用いて、ワーク103と工具101とを接触させてワーク103を被加工物に加工するステップを有する。
【0146】
従って、例えば、従来は工具101の位置を特定することができなかった撮像方向(本実施形態ではY方向)において工具101の位置を特定することができる。その結果、例えば、以下のような効果が奏される。
【0147】
従来は、工具101の位置の計測は、画像内における工具101の位置に基づいて行われた。従って、Y方向の位置を特定するためには、Y方向以外の方向(例えばX方向)から撮像を行うようにカメラ37を配置しなければならなかった。しかし、本実施形態により、Y方向において撮像を行うようにカメラ37を配置することができる。その結果、例えば、カメラ37の配置の自由度が向上する。
【0148】
また、従来は、工具101の3方向(X、Y及びZ方向)の位置を特定するためには、互いに異なる2方向(例えばX及びY方向)から撮像を行う2台のカメラ37が必要であった。しかし、本実施形態により、1台で3方向の位置を特定できる。その結果、2台以上のカメラ37を配置する必要性が低減される。
【0149】
カメラ37の台数が減らされることによって、例えば、加工機1のコスト削減が図られる。具体的には、例えば、1台の撮像部33の削減によって、100万円~200万円のコスト削減が期待される。また、撮像部33の台数が減らされることによって、例えば、撮像部33が配置される部材(本実施形態はテーブル23)が小型化される。又は、上記部材(テーブル23)上のスペースの有効利用が可能になる。
【0150】
加工機1は、第2駆動源(X軸駆動源29X)と、第3駆動源(Z軸駆動源29Z)とを更に有してよい。X軸駆動源29Xは、第1方向(Y方向)に直交する第2方向(X方向)においてワーク103と工具101とを相対移動させてよい。Z軸駆動源29Zは、Y方向及びX方向の双方に直交する第3方向(Z方向)においてワーク103と工具101とを相対移動させてよい。画像処理装置47は、カメラ37が取得した画像内における工具101の位置に基づいて工具101のX方向及びZ方向の位置を特定してよい。制御装置45は、画像処理装置47によって特定された工具101のX方向の位置に基づいてX軸駆動源29Xを制御してよい。また、制御装置45は、画像処理装置47によって特定された工具101のZ方向の位置に基づいてZ軸駆動源29Zを制御してよい。
【0151】
この場合、既述のように、1台のカメラ37で3方向の位置を特定することができる。その結果、カメラ37の台数を低減することが容易化される。
【0152】
加工機1は、ワーク103と工具101との第1方向(Y方向)における相対位置を検出する第1センサ(Y軸センサ31Y)を更に有してよい。制御装置45は、Y軸センサ31Yの検出値に基づいて第1駆動源(Y軸駆動源29Y)のフィードバック制御を行ってよい(
図5)。カメラ37は、ワーク103と工具101とのY方向における相対移動に伴って工具101とY方向において相対移動する位置(本実施形態ではテーブル23)に配置されてよく、工具101とのY方向における相対位置が互いに異なる複数の画像を取得してよい(ステップST1~ST4)。画像処理装置47は、複数の画像と、複数の画像を取得したときにY軸センサ31Yによって検出されたワーク103と工具101とのY方向における相対位置とに基づいて、工具101の鮮明度が最も高くなる(そのような画像を取得可能な)ワーク103と工具101とのY方向における第1相対位置を特定してよい(ステップST8)。また、画像処理装置47は、その特定した第1相対位置と、予め取得されているカメラ37のピントが工具101に合っているとき(鮮明度が最も高いとき)のワーク103と工具101とのY方向における相対位置との第1ずれ量を特定してよい(ステップST9)。制御装置45は、第1ずれ量に基づいて、Y軸センサ31Yの検出値に基づくY軸駆動源29Yのフィードバック制御を補正してよい。
【0153】
この場合、例えば、単に鮮明度が最も高いときのY軸センサ31Yの検出値を取得するだけで、工具101の位置(ずれ量)を特定できる。すなわち、鮮明度に基づく工具101の位置(より詳細にはずれ量)の計測が容易化である。例えば、鮮明度の変化と、工具101とカメラ37との相対位置との相関関係を特定するような煩雑な作業は不要である。また、例えば、形式上は(被写界深度を考慮しない場合は)、工具101の位置の計測の精度は、Y軸駆動源29Yの位置決め精度と同等とすることができる。すなわち、十分な精度で工具101の位置を計測できる。撮像に利用されるY軸駆動源29Yは、加工に利用されるものであり、撮像に基づいて工具101の位置を特定するためのY軸センサ31Yも、加工に利用されるものである。従って、撮像のためだけに駆動源及びセンサを設ける必要がない。
【0154】
加工機1は、第2センサ(X軸センサ31X)と、第3センサ(Z軸センサ31Z)とを更に有してよい。X軸センサ31Xは、ワーク103と工具101との第2方向(X方向)における相対位置を検出してよい。Z軸センサ31Zは、ワーク103と工具101との第3方向(Z方向)における相対位置を検出してよい。制御装置45は、X軸センサ31Xの検出値に基づいて第2駆動源(X軸駆動源29X)のフィードバック制御を行ってよい。また、制御装置45は、Z軸センサ31Zの検出値に基づいて第3駆動源(Z軸駆動源29Z)のフィードバック制御を行ってよい。画像処理装置47は、第1時期(基準時期)に取得された画像内における工具101のX方向における位置と、その後の第2時期(計測時期)に取得された画像内における工具101のX方向における位置とに基づいて、基準時期における工具101のX方向の位置と、計測時期における工具101のX方向の位置との第2ずれ量(
図6のずれ量dX)を特定してよい。同様に、画像処理装置47は、第3時期(基準時期)に取得された画像内における工具101のZ方向における位置と、その後の第4時期(計測時期)に取得された画像内における工具101のZ方向における位置とに基づいて、基準時期における工具101のZ方向の位置と、計測時期における工具101のZ方向の位置との第3ずれ量(
図6のずれ量dZ)を特定してよい。制御装置45は、ずれ量dXに基づいて、第2センサ(X軸センサ31X)の検出値に基づく第2駆動源(X軸駆動源29X)のフィードバック制御を補正してよい。同様に、制御装置45は、ずれ量dZに基づいて、第3センサ(Z軸センサ31Z)の検出値に基づく第3駆動源(Z軸駆動源29Z)のフィードバック制御を補正してよい。
【0155】
この場合、例えば、Y方向においては、鮮明度に基づいて工具101のずれ量が特定され、X方向及びZ方向においては、画像内の工具101の位置に基づいて工具101のずれ量が特定される。すなわち、互いに異なる計測方法によって、方向毎に適切に工具101のずれ量が特定される。一方で、いずれの方向においても、ずれ量に基づく制御の補正が行われる。その結果、全体として簡素な制御系によって、加工精度を向上させることができる。
【0156】
画像処理装置47は、画像内の複数のピクセル111のそれぞれについて、隣のピクセル111との明度の差を算出してよく、複数のピクセル111における上記差の絶対値が大きくなるほど大きくなる指標値(第1指標値)を算出してよい。そして、画像処理装置47は、第1指標値を、鮮明度が高いほど値が大きくなる指標値として用いて、工具101の第1方向(Y方向)の位置(ずれ量)を特定してよい。
【0157】
本願発明者の実験では、第1指標値は、第2指標値及び第3指標値に比較して、工具101及びワーク103のY方向における相対位置の変化に対する変化が大きい。従って、例えば、第1指標値を用いることによって、工具101のY方向の位置の検出精度が向上する。
【0158】
より詳細には、画像処理装置47は、隣り合うピクセル111同士の明度の差の2乗を画像(既述のように全部画像又は1以上の一部画像)内の全てのピクセルについて加算した値を指標値(第1指標値)として算出してよい。
【0159】
この場合、例えば、差の絶対値を加算する態様(当該態様も本開示に係る技術に含まれてよい。)に比較して、統計学における分散と同様に、明度の差を適切に評価することができる。その結果、工具101の計測の精度が向上する。
【0160】
第1指標値とは異なる第2指標値が用いられてもよい。具体的には、画像処理装置47は、画像内の複数のピクセルから明度の最大値と最小値とを特定してよく、最大値と最小値との差を最大値と最小値との和で割った指標値(第2指標値)を算出してよい。そして、画像処理装置47は、第2指標値を、鮮明度が高いほど値が大きくなる指標値として用いて、工具101の第1方向(Y方向)の位置(ずれ量)を特定してよい。
【0161】
この場合、例えば、第1指標値を用いる態様に比較して、演算の負担が少ない。従って、例えば、移動と撮像との繰り返し(ステップST1~ST4)の合間に指標値の算出(ステップST6)を行うような態様の実現が容易化される。
【0162】
第1及び第2指標値とは異なる第3指標値が用いられてもよい。具体的には、画像処理装置47は、画像内の複数のピクセル111から明度の代表値(例えば中央値)を特定してよく、画像内の複数のピクセル111のそれぞれについて、代表値との差を算出してよく、複数のピクセル111における上記差の絶対値が大きくなるほど大きくなる指標値(第3指標値)を算出してよい。そして、画像処理装置47は、第3指標値を、鮮明度が高いほど値が大きくなる指標値として用いて、工具101の第1方向(Y方向)の位置(ずれ量)を特定してよい。
【0163】
この場合、例えば、第1指標値を用いる態様に比較して、演算の負担が少ない。また、第2指標値を用いる態様に比較して、画像内の複数のピクセル111の明度が指標値に反映されやすいことから、鮮明度の評価の精度が向上する。
【0164】
(変形例)
以下では、実施形態の変形例について説明する。以下の説明では、基本的に、実施形態との相違部分についてのみ述べる。特に言及が無い事項は、実施形態と同様とされたり、実施形態から類推されたりしてよい。以下の説明では、実施形態の構成に対応する構成に対して、便宜上、実施形態と差異があっても実施形態の符号を付すことがある。
【0165】
(タッチセンサの利用)
加工機1は、タッチセンサを有していてもよい。タッチセンサは、適宜な用途に利用されてよい。例えば、タッチセンサは、ワーク103と工具101との相対位置と、センサ31の検出位置(別の観点では加工機1の機械座標系)との対応関係との特定に利用されてよい。また、例えば、タッチセンサは、ワーク103の形状特定に利用されてよい。タッチセンサの構成、及びタッチセンサを利用するときの加工機1の動作は、公知のものとされたり、公知のものを応用したものとされたりしてよい。以下に、タッチセンサの構成及び加工機1の動作の例を示す。
【0166】
図9(a)は、第1の取付態様においてタッチセンサ113を示す斜視図である。
図9(b)は、第2の取付態様においてタッチセンサ113を示す斜視図である。
【0167】
タッチセンサ113は、例えば、ワーク103に接触するスタイラス115と、スタイラス115を保持しているセンサ本体117とを有している。スタイラス115は、例えば、概略棒状の形状を有している。その先端は、球状にされることなどによって、他の部分よりも径が大きくなっていてよい。センサ本体117は、例えば、スタイラス115がワーク103に接触すると、タッチ信号を制御ユニット5へ出力する。
【0168】
タッチセンサ113による接触の検出原理は、適宜なものとされてよい。検出原理としては、例えば、ワーク103から受ける力によってスタイラス115がセンサ本体117に対して移動し、その結果、可動接点と固定接点とが接触するものが挙げられる。また、例えば、スタイラス115の上記のような移動を光学センサで検出するものが挙げられる。また、例えば、ワーク103からスタイラス115が受ける力を圧力センサによって検出するものが挙げられる。また、例えば、導電性を有するワーク103にスタイラス115が接触することによってワーク103及びスタイラス115を含む閉回路が構成されるものが挙げられる。
【0169】
図9(a)に示す取付態様においては、タッチセンサ113は、工具101に代えて主軸19に保持されている。
図9(b)に示す取付態様においては、タッチセンサ113は、主軸19から離れた位置にて、主軸19を移動可能に保持している部材(本実施形態では主軸頭17)に対して固定されている。
図9(b)の態様において、タッチセンサ113を保持しているセンサ保持部18は、例えば、主軸頭17に対して移動不可能にタッチセンサ113を保持してよい。ただし、センサ保持部18は、タッチセンサ113が使用されないときの位置と、タッチセンサ113が使用されるときの位置(例えば前者の位置よりも-Z側の位置)との間で移動可能にタッチセンサ113を保持していてもよい。
【0170】
図9(a)及び
図9(b)のいずれにおいても、タッチセンサ113は、主軸19と共に移動可能である。従って、タッチセンサ113は、工具101と同様に、ワーク103と相対移動可能であり、この相対移動に伴ってカメラ37と相対移動可能であり、また、相対移動はセンサ31によって検出される。
【0171】
別の観点では、
図9(a)及び
図9(b)のいずれにおいても、タッチセンサ113は、工具101が配置される位置と一定の位置関係を有する位置に配置される。一定の位置関係は、
図9(a)では、2つの位置が同一の位置となる関係である。
図9(b)では、一定の位置関係は、2つの位置が所定方向において所定距離で離れている関係である。
【0172】
加工機1(制御装置45)は、例えば、3方向(X、Y及びZ方向)の少なくとも1方向においてタッチセンサ113とワーク103とを相対移動させるように3軸の駆動源29を制御する。そして、加工機1は、タッチセンサ113によってワーク103への接触が検出されると、相対移動を停止するとともに、そのときの上記少なくとも1方向におけるセンサ31の検出値を取得する。
【0173】
上記動作により、例えば、上記少なくとも1方向において、ワーク103とタッチセンサ113との相対位置と、上記少なくとも1方向におけるセンサ31の検出値(別の観点では機械座標系の座標)との対応関係が特定される。また、例えば、上記動作を他の方向においても行うことにより、全ての方向において、対応関係が特定される。また、例えば、上記の動作を種々の方向及び位置において行うことにより、ワーク103の形状が特定される。
【0174】
ここで、既述のように、タッチセンサ113と工具101とは一定の位置関係にある。従って、上記のように、ワーク103とタッチセンサ113との相対位置と、機械座標系との対応関係が特定されると、実質的にワーク103と工具101との相対位置と、機械座標系との対応関係が特定される。タッチセンサ113と工具101との位置関係は、加工機1の製造者によって加工機1に記憶されてもよいし、オペレータによって加工機1に記憶されてもよい。
【0175】
ワーク103と工具101との相対位置と、機械座標系(センサ31の検出値)との対応関係の情報は、例えば、以下のように、ずれの低減に利用されてよい。
【0176】
実施形態に係る加工機1においては、例えば、ワーク103がテーブル23に対して所定の位置に固定されていることが想定されている。そして、NCプログラムでは、その想定の下に、機械座標系における座標によって、ワーク103に所望の形状を形成するための動作が規定されている。従って、例えば、ワーク103のテーブル23に対する位置が上記所定の位置からずれると、加工前のワーク103の形状の位置に対する加工によって形成される形状の位置がずれる。ワーク103のテーブル23に対する位置について述べたが、工具101の主軸19に対する位置についても同様のことが言える。
【0177】
そこで、加工前又は加工中において、加工機1(制御装置45)は、ワーク103とタッチセンサ113(別の観点では工具101)との相対位置と、機械座標系との対応関係を計測する。当該対応関係は、例えば、タッチセンサ113がワーク103に接触したときのセンサ31による検出位置とされてよい。一方、加工機1(制御装置45)は、例えば、ワーク103とタッチセンサ113(工具101)との相対位置と、機械座標系との想定されている対応関係の情報を予め保持している。そして、計測された対応関係と、想定されている対応関係とを比較することによって、両者のずれ量(以下、タッチセンサ113によって特定されたずれ量ということがある。)が特定される。上記ずれ量は、より詳細には、ワーク103のずれ量と、工具101のずれ量とを含んでいる。
【0178】
加工機1は、上記のタッチセンサ113によって特定されたずれ量(別の観点では計測された対応関係)に基づいて、主制御部49が行う制御を補正する。その補正方法は、概略、既述の撮像によって特定されたずれ量に基づく補正方法と同様とされてよい。例えば、補正は、機械座標系の補正、NCプログラム107の補正、解釈部57からの座標の補正、補間部59からの目標位置の補正、センサ31からの検出位置の補正、又は加算部61からの偏差の補正とされてよい。撮像によって特定されたずれ量に基づく補正方法の説明は、タッチセンサ113によって特定されたずれ量に基づく補正方法に援用されてよい。
【0179】
(タッチセンサとカメラとの併用)
上記の説明においては、工具101とタッチセンサ113との位置関係が不変であることを前提とした。ただし、温度変化等に起因して加工機1が変形して工具101の位置がずれると、工具101とタッチセンサ113との位置関係は、想定されている位置関係からずれる。その結果、ワーク103と工具101との位置関係と、機械座標系との対応関係の計測値(別の観点では、計測された対応関係と、想定されている対応関係とのずれ量)も誤差を含んだものとなる。ひいては、上述したタッチセンサ113によって特定されたずれ量に基づく補正の精度が低下する。
【0180】
そこで、タッチセンサ113によって特定されたずれ量(別の観点ではワーク103と工具101との位置関係と、機械座標系との対応関係の計測値)を、撮像によって特定された工具101のずれ量に基づいて補正してよい。その具体的な方法は、適宜なものとされてよい。
【0181】
例えば、実施形態の説明において述べた撮像によって特定されたずれ量に基づく補正と、上記のタッチセンサ113によって特定されたずれ量に基づく補正とが単に組み合わされてよい。換言すれば、それぞれの補正が上述のとおりに(改変されずに)併用されてよい。工具101とタッチセンサ113との位置関係の、想定されている位置関係からのずれは、工具101の位置のずれを含む。従って、上記のように2つの補正を併用すると、実質的に、撮像によって特定されたずれ量に基づく補正によって、工具101とタッチセンサ113との位置関係(別の観点では、ワーク103と工具101との位置関係と、機械座標系との対応関係の計測値)が補正された状態で、タッチセンサ113によって特定されたずれ量(別の観点では対応関係の計測値)に基づく補正が行われることになる。なお、このような態様において、撮像によって特定されたずれ量に基づく補正と、タッチセンサ113によって特定されたずれ量に基づく補正とは、いずれの段階での補正(機械座標系の補正、NCプログラム107の補正、解釈部57からの座標の補正等)であるかに関して、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0182】
また、例えば、実施形態において説明した撮像によって特定されたずれ量に基づく補正を行わず、タッチセンサ113によって特定されたずれ量に基づく補正のみを行ってもよい。この場合、タッチセンサ113によって計測した、ワーク103と工具101との位置関係の、想定されている位置関係からのずれ量を、撮像によって得られた工具101のずれ量によって補正する。具体的には、両者が加算されて補正に用いられてよい。これは、上述した2つの補正を併用する態様において、2つの補正が同一の段階の補正とされる場合と実質的に同じである。また、この補正方法は、結局は、実施形態と同様に、撮像によって特定されたずれ量に基づいて補正がなされていると言ってよい。
【0183】
なお、上記の説明から理解されるように、ワーク103と工具101との位置関係と、機械座標系(別の観点ではセンサ31の検出位置)との対応関係の計測値を補正するという場合、実際に対応関係の計測値を補正する処理だけでなく、これと等価な処理も指す。
【0184】
(タッチセンサの撮像)
上記の説明においては、工具101の位置がずれる場合についてのみ言及した。ただし、タッチセンサ113についても、工具101と同様に、位置がずれることがある。この場合、工具101の位置がずれた場合と同様に、工具101とタッチセンサ113との位置関係が不変であるという前提が崩れ、ひいては、タッチセンサ113によって特定されたずれ量に基づく補正の精度が低下する。
【0185】
そこで、工具101と同様に、タッチセンサ113の位置のずれ量が撮像によって特定されてよい。そして、タッチセンサ113によって特定されたずれ量に基づく補正に対して、撮像によって特定された工具101のずれ量に基づく補正を組み合わせることに加えて(又は代えて)、撮像によって特定されたタッチセンサ113のずれ量に基づく補正が組み合わされてよい。
【0186】
撮像によるタッチセンサ113の位置のずれ量の計測は、基本的に、撮像による工具101の位置のずれ量の計測と同様とされてよい。従って、実施形態における工具101のずれ量の計測に係る説明は、矛盾等が生じない限り、工具101の語をタッチセンサ113の語に置換して、タッチセンサ113のずれ量の計測に援用されてよい。
【0187】
また、タッチセンサ113によって特定されたずれ量に基づく補正に対して撮像によって特定されたタッチセンサ113のずれ量に基づく補正を組み合わせる方法は、タッチセンサ113によって特定されたずれ量に基づく補正に対して撮像によって特定された工具101のずれ量に基づく補正を組み合わせる方法(既述)と同様とされてよい。
【0188】
以上のとおり、加工機1は、タッチセンサ113を更に有してよい。タッチセンサ113は、工具101が配置される位置(本実施形態では主軸19)と一定の位置関係を有する位置(主軸19又はタッチセンサ保持部18)に配置されてよい。タッチセンサ113は、上記一定の位置関係を有する位置に配置されることによって、第1駆動源(Y軸駆動源29Y)によるワーク103との第1方向(Y方向)における相対移動がなされ、この相対移動に伴ってカメラ37とのY方向における相対移動がなされ、ワーク103とのY方向における相対移動が第1センサ(Y軸センサ31Y)によって検出される。カメラ37は、タッチセンサ113をY方向において撮像し、カメラ37とタッチセンサ113とのY方向における相対位置が互いに異なる複数の第2画像を取得してよい。画像処理装置47は、複数の第2画像と、複数の第2画像を取得したときにY軸センサ31Yによって検出されたワーク103とタッチセンサ113とのY方向における第2相対位置とに基づいて、タッチセンサ113の鮮明度が最も高くなる(そのような第2画像を取得可能な)ワーク103とタッチセンサ113とのY方向における第2相対位置を特定してよい。また、画像処理装置47は、その特定した第2相対位置と、予め取得されているカメラ37のピントがタッチセンサ113に合っているときのY軸センサ31Yの検出値との第4ずれ量を特定してよい。制御装置45は、タッチセンサ113のワーク103に対する当接がタッチセンサ113によって検出されたときのY軸センサ31Yの検出値に基づいて、ワーク103と工具101との相対位置と、Y軸センサ31Yの検出値との対応関係を特定してよい。また、制御装置45は、上記第4ずれ量に基づいて、上記対応関係の情報を補正し、補正した対応関係の情報と、Y軸センサ31Yの検出値とに基づいて、第1駆動源(Y軸駆動源29Y)のフィードバック制御を行ってよい。
【0189】
この場合、例えば、タッチセンサ113によって特定されるずれ量、撮像によって特定される工具101のずれ量、及び撮像によって特定されるタッチセンサ113によって特定されるずれ量に基づいて制御の補正が行われる。その結果、加工精度が向上する。
【0190】
タッチセンサ113を撮像する変形例に係る加工機1は、工具101の撮像を前提とせずに概念されてもよい。この場合、加工機1は、第1駆動源(Y軸駆動源29Y)と、タッチセンサ113と、カメラ37と、画像処理装置47と、制御装置45とを有している。Y軸駆動源29Yは、第1方向(Y方向)においてワーク103と工具101とを相対移動させる。タッチセンサ113は、工具101が配置される位置と一定の位置関係を有する位置に配置される。カメラ37は、タッチセンサ113をY方向において撮像して画像を取得する。画像処理装置は、画像内のタッチセンサ113の鮮明度に基づいてタッチセンサ113のY方向の位置を特定する。制御装置45は、画像処理装置47によって特定されたタッチセンサ113のY方向の位置に基づいてY軸駆動源29Yを制御する。
【0191】
この場合、例えば、工具101の撮像と同様に、従来は位置を特定できなかった撮像方向(Y方向)においてタッチセンサ113の位置を特定できる。その結果、撮像方向に関する自由度が向上する。ひいては、加工機1の設計の自由度が向上する。
【0192】
(ガイドの構成の他の例)
図10は、テーブル23、サドル13又は主軸頭17を案内するガイドに関して、
図2(b)を参照して説明した構成例とは別の構成例を示す図である。この図は、
図2(b)に相当する断面図となっている。説明の便宜上、ガイドに案内される部材としてテーブル23を例に取る。
【0193】
図10に示すガイド25Aは、いわゆる静圧案内によって構成されている。具体的には、テーブル23の被案内面とベッド21の案内面との間には隙間が構成されている。当該隙間にはポンプ75等によって所定の圧力で流体が供給される。流体は、気体(例えば空気)であってもよいし、液体(例えば油)であってもよい。
【0194】
このようにガイド25Aが静圧案内によって構成されている場合、例えば、NCプログラム107に従ってテーブル23をその移動方向に移動させるときの摩擦抵抗が小さいから、移動方向の位置決めを高精度に行うことができる。このような構成により、高い加工精度を実現することができる。その結果、撮像によって特定されるずれ量に基づく補正の有用性が高くなる。
【0195】
(駆動機構の他の例)
上記の
図10は、駆動機構の構成としてリニアモータ以外の構成例を示す図ともなっている。具体的には、
図10では、ねじ軸77と、ねじ軸77と螺合しているナット79とが図示されている。すなわち、ねじ機構(例えばボールねじ機構又はすべりねじ機構)が図示されている。ねじ軸77及びナット79の一方(図示の例ではナット79)の回転が規制されている状態で、ねじ軸77及びナット79の他方(図示の例ではねじ軸77)が回転されることによって、両者は軸方向に相対移動する。ねじ軸77及びナット79の一方(図示の例ではねじ軸77)はベッド21に支持されており、ねじ軸77及びナット79の他方(図示の例ではナット79)はテーブル23に支持されている。ねじ軸77(又はナット79)を回転させる駆動力は、例えば、回転式の電動機(不図示)によって生成される。
【0196】
(主軸の軸受の構成例)
図11は、主軸19の軸受の構成の一例を示す断面図である。
【0197】
実施形態の説明で述べたように、主軸19の軸受は、すべり軸受、転がり軸受、静圧軸受又はこれらの2以上の組み合わせとされてよい。
図11では、静圧軸受が例示されている。具体的には、主軸19の外周面と、主軸頭17の内周面との間には隙間が構成されている。当該隙間にはポンプ75等によって所定の圧力で流体が供給される。流体は、気体(例えば空気)であってもよいし、液体(例えば油)であってもよい。
【0198】
このように主軸19が静圧軸受によって支持されている場合、例えば、NCプログラム107に従って主軸19を軸回りに回転させるときの摩擦抵抗が小さいから、主軸19の回転数を高精度に制御することができ、ひいては、高い加工精度を実現することができる。その結果、撮像によって特定されるずれ量に基づく補正の有用性が高くなる。
【0199】
なお、以上の実施形態及び変形例において、Y方向は第1方向の一例である。X方向は第2方向の一例である。Z方向は第3方向の一例である。Y軸駆動源29Yは第1駆動源の一例である。X軸駆動源29Xは第2駆動源の一例である。Z軸駆動源29Zは第3駆動源の一例である。Y軸センサ31Yは第1センサの一例である。X軸センサ31Xは第2センサの一例である。Z軸センサ31Zは第3センサの一例である。
【0200】
本開示に係る技術は、以上の実施形態及び変形例に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0201】
実施形態の説明でも述べたように、加工機は、
図1に例示した構成のものに限定されない。例えば、加工機は、一般的な工作機械に限定されず、超精密非球面加工機のような特殊なものであってもよい。また、加工機は、工作機械に限定されず、例えば、ロボットであってもよい。別の観点では、移動に関する指令の情報を含むプログラムは、NCプログラムに限定されず、ティーチングによって生成されたものであってもよい。また、例えば、加工機は、半導体製造装置であってもよい。
【0202】
また、加工機は、切削、研削及び/又は研磨を行うものに限定されず、例えば、放電加工を行うものであってもよい。加工は、実施形態のように回転していないワークに回転している工具を接触させるもの(例えば転削)であってもよいし、実施形態とは異なり、回転しているワークに回転していない工具を接触させるもの(例えば旋削)であってもよいし、ワーク及び工具のいずれも回転しているもの(例えば研削及び/又は研磨)であってもよいし、ワーク及び工具のいずれも回転していないものであってもよい。
【0203】
加工機は、ワーク及び/又は工具を平行移動させる軸として、少なくとも第1方向(撮像方向)に平行な1つの軸を有している。換言すれば、加工機は、平行移動に関して3つの軸を有していなくてもよい。例えば、加工機は、1つの軸又は2つの軸のみを有していてもよいし、逆に、4つ以上の軸を有していてもよい。また、加工機は、回転方向にワークと工具とを位置決め可能な構成を含んでいてもよい。
【0204】
鮮明度に基づく工具(又はタッチセンサ。以下、同様。)の撮像方向における位置の特定は、実施形態で例示した方法に限定されない。例えば、鮮明度を示す既述の指標値と、カメラから工具までの距離との相関関係を調べ、前者から後者を算出する演算式又はマップを求め、当該演算式又はマップに基づいて工具の位置が特定されてよい。また、例えば、AI(artificial intelligence)技術が利用されてもよい。例えば、鮮明度を示す既述の指標値又は画像自体を入力とし、カメラから工具までの距離を出力とした教師データによって学習済みモデルが作成され、この学習モデルが利用されて工具の位置が特定されてよい。
【0205】
撮像によって計測された工具の位置に基づく制御は、ずれ量に基づいて制御を補正する概念で捉えられるものに限定されない。例えば、光源とカメラとの距離を長くしたり、適宜な位置に反射鏡を配置したりすることによって、加工中(ワークに接触している状態も含む)の工具を撮像可能に撮像部を構成する。そして、撮像によって計測された位置を、センサ(実施形態ではY軸センサ31Y等)によって得られた位置と同様に利用してよい。
【0206】
ワークを保持する部材(実施形態ではテーブル23)が絶対座標系において移動する態様において、カメラ(撮像部)は、ワークを保持する部材に固定されず、絶対座標系に対して固定的であってもよい。例えば、実施形態において、カメラは、ベース7、ベッド21及びコラム9のいずれかに配置されていてよい。この場合であっても、例えば、カメラが設けられている部材に対する工具のずれ量が特定され、当該ずれ量に基づく補正がなされる。ただし、ワーク(テーブル)のずれ量については考慮されないことになる。また、カメラは、工具と共に移動する部材に固定されていてもよい。ただし、この場合は、ずれ量に含まれる変形量は更に限定的となる。
【0207】
上記に関連して、カメラと工具とは第1方向において相対移動可能でなくてもよい。例えば、実施形態において、ベッド21に固定された撮像部33によって、X方向において工具101が撮像されてもよい。この場合であっても、例えば、既述のように、鮮明度と、工具の位置との相関関係から工具の位置を特定する方法が利用可能である。また、第2方向及び第3方向においても、カメラと工具とは相対移動可能でなくてよい。
【0208】
本開示に係る技術は、1台のカメラで互いに直交する3方向における位置を計測することを可能とする。ただし、1台のカメラが1方向又は2方向のみの位置の計測に用いられたり、2台以上のカメラが設けられたりしても構わない。
【符号の説明】
【0209】
1…加工機、37…カメラ、29Y…Y軸駆動源(第1駆動源)、45…制御装置、47…画像処理装置、101…工具、103…ワーク。