(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】処理システム、及び処理方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20240111BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
H02J7/00 Q
(21)【出願番号】P 2020182362
(22)【出願日】2020-10-30
(62)【分割の表示】P 2020545741の分割
【原出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】518134356
【氏名又は名称】InsuRTAP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小杉 伸一郎
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-164959(JP,A)
【文献】特開2008-76295(JP,A)
【文献】特開2018-156739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得する取得手段と、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出する項目値算出手段と、
算出された前記項目値に基づき、前記電力貯蔵装置の安全性
が所定条件を満たす状態が維持される期間を推定する安全性判定手段と、
前記電力貯蔵装置は安全であることを認証
し、かつ前記期間を有効期間とする認証情報を出力する認証手段と、
を有する処理システム。
【請求項2】
前記電力貯蔵装置に対応して設置されたディスプレイに、前記認証情報を表示させる表示制御手段をさらに有する請求項1に記載の処理システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証するマークを前記認証情報として表示させる請求項2に記載の処理システム。
【請求項4】
前記認証手段は、前記期間を前記認証情報の有効期間として出力する請求項1から3のいずれか1項に記載の処理システム。
【請求項5】
前記安全性判定手段は、前記項目値の経時変化に基づき、前記期間を推定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の処理システム。
【請求項6】
コンピュータが、
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得し、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出し、
算出された前記項目値に基づき、前記電力貯蔵装置の安全性
が所定条件を満たす状態が維持される期間を推定し、
前記電力貯蔵装置は安全であることを認証
し、かつ前記期間を有効期間とする認証情報を出力する処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理システム、監視装置、処理方法、監視方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、充電時の挙動から電池の健全性を把握し、残存価値の評価が可能になる技術を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】森田朋和、外2名。"内部状態の推定により電池の健全性を可視化する充電曲線解析法"、[online]、[2019年10月8日検索]、インターネット<URL: https://www.toshiba.co.jp/tech/review/2013/10/68_10pdf/f07.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力貯蔵装置は、熱暴走すると激しく火炎を噴出して燃え上がる等の大災害を引き起こし得る。このため、ユーザは、電力貯蔵装置の安全性に配慮しながら使用しなければならない。しかし、一般的なユーザは電力貯蔵装置の構造等を熟知したプロではないため、自身で電力貯蔵装置の安全性を確認等するのは負担が大きい。例えば、電力貯蔵装置の構造等に長けた任意の機関が、電力貯蔵装置が安全であることを認証することにより、ユーザの負担が軽減できる。
【0005】
電力貯蔵装置の安全性の認証としては、型式毎に与えられる型式認証がある。当該型式認証によれば、電力貯蔵装置は安全な設計になっているという安心感が得られる。しかし、電力貯蔵装置の安全性は、使用の仕方や設置場所等、ユーザ毎に変化し得る様々な要因に応じて変化する。各々の使用の仕方や設置場所等を考慮せず設計に基づき与えられる型式認証では、使用後の電力貯蔵装置の安全性に関し十分な安心感を与えることができない。結果、ユーザによる電力貯蔵装置の安全性への配慮の負担は大きいものとなる。
【0006】
本発明は、ユーザによる電力貯蔵装置の安全性への配慮の負担を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得する取得手段と、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出する項目値算出手段と、
算出された前記項目値に基づき、前記電力貯蔵装置の安全性を判定する安全性判定手段と、
判定された前記安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を出力する認証手段と、
を有する処理システムが提供される。
【0008】
また、本発明によれば、
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得する取得手段と、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出する項目値算出手段と、
算出された前記項目値を外部装置に送信し、前記項目値に基づき判定された前記電力貯蔵装置の安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を前記外部装置から受信する送受信手段と、
前記電力貯蔵装置が備えるディスプレイ、又は、前記電力貯蔵装置の周辺に設けられたディスプレイに、前記認証情報を表示させる表示制御手段と、
を有する監視装置が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
コンピュータが、
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得し、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出し、
算出された前記項目値に基づき、前記電力貯蔵装置の安全性を判定し、
判定された前記安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を出力する処理方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
コンピュータが、
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得し、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出し、
算出された前記項目値を外部装置に送信し、
前記項目値に基づき判定された前記電力貯蔵装置の安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を前記外部装置から受信し、
前記電力貯蔵装置が備えるディスプレイ、又は、前記電力貯蔵装置の周辺に設けられたディスプレイに、前記認証情報を表示させる監視方法が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、
コンピュータを、
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得する取得手段、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出する項目値算出手段、
算出された前記項目値を外部装置に送信し、前記項目値に基づき判定された前記電力貯蔵装置の安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を前記外部装置から受信する送受信手段、
前記電力貯蔵装置が備えるディスプレイ、又は、前記電力貯蔵装置の周辺に設けられたディスプレイに、前記認証情報を表示させる表示制御手段、
として機能させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザによる電力貯蔵装置の安全性への配慮の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、および、その他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、および、それに付随する以下の図面によって、さらに明らかになる。
【0014】
【
図1】本実施形態の処理システムの概要を説明するための図である。
【
図2】本実施形態の処理システムのハードウエア構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態の処理システムの機能ブロック図の一例である。
【
図4】本実施形態の処理システムの処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態の処理システムの処理の一例を説明するための図である。
【
図6】本実施形態の処理システムの処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、
図1を用いて本実施形態の処理システムの概要を説明する。処理システムは、監視装置1と認証装置2とを有する。
【0016】
監視装置1は、ユーザ側に設置されたエッジデバイス6から、電力貯蔵装置5の状態を示す測定データを取得し、監視データベース3に記憶させる。監視データベース3には、測定データ以外の電力貯蔵装置5に関する各種情報が記憶されていてもよい。そして、監視装置1は、測定データ等に基づき、電力貯蔵装置5の安全性に影響する項目値を算出し、算出した項目値を認証装置2に送信する。電力貯蔵装置5は、例えば蓄電池である。
【0017】
認証装置2は、受信した項目値及び認証データベース4に記憶された評価基準に基づき電力貯蔵装置5の安全性を判定する。そして、認証装置2は、判定された安全性が所定条件を満たす場合、電力貯蔵装置5は安全であることを認証する認証情報を監視装置1に送信(出力)する。
【0018】
監視装置1は、受信した認証情報をユーザ側に設置されたディスプレイ7に表示させる。
【0019】
このように、本実施形態の処理システムは、使用開始後の電力貯蔵装置5の状態に基づき電力貯蔵装置5の安全性を判定し、判定結果に基づき電力貯蔵装置5の安全性を認証することができる。そして、処理システムは、電力貯蔵装置5は安全であることを認証する認証情報を、ユーザ側のディスプレイ7に表示させることができる。ユーザは、ディスプレイ7に表示された認証情報により、電力貯蔵装置5は安全な状態になっているという安心感が得られる。結果、ユーザによる電力貯蔵装置5の安全性への配慮の負担が軽減される。
【0020】
次に、処理システムの構成を詳細に説明する。まず、処理システムのハードウエア構成の一例を説明する。処理システムが備える各機能部は、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、メモリにロードされるプログラム、そのプログラムを格納するハードディスク等の記憶ユニット(あらかじめ装置を出荷する段階から格納されているプログラムのほか、CD(Compact Disc)等の記憶媒体やインターネット上のサーバ等からダウンロードされたプログラムをも格納できる)、ネットワーク接続用インターフェイスを中心にハードウエアとソフトウエアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
【0021】
図2は、処理システムのハードウエア構成を例示するブロック図である。
図2に示すように、処理システムは、プロセッサ1A、メモリ2A、入出力インターフェイス3A、周辺回路4A、バス5Aを有する。周辺回路4Aには、様々なモジュールが含まれる。処理システムは周辺回路4Aを有さなくてもよい。なお、処理システムは物理的及び/又は論理的に分かれた複数の装置で構成されてもよいし、物理的及び/又は論理的に一体となった1つの装置で構成されてもよい。処理システムが物理的及び/又は論理的に分かれた複数の装置で構成される場合、複数の装置各々が上記ハードウエア構成を備えることができる。
【0022】
バス5Aは、プロセッサ1A、メモリ2A、周辺回路4A及び入出力インターフェイス3Aが相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。プロセッサ1Aは、例えばCPU、GPU(Graphics Processing Unit)などの演算処理装置である。メモリ2Aは、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリである。入出力インターフェイス3Aは、入力装置、外部装置、外部サーバ、外部センサー、カメラ等から情報を取得するためのインターフェイスや、出力装置、外部装置、外部サーバ等に情報を出力するためのインターフェイスなどを含む。入力装置は、例えばキーボード、マウス、マイク、物理ボタン、タッチパネル等である。出力装置は、例えばディスプレイ、スピーカ、プリンター、メーラ等である。プロセッサ1Aは、各モジュールに指令を出し、それらの演算結果をもとに演算を行うことができる。
【0023】
次に、処理システム10の機能構成を説明する。
図3に、処理システム10の機能ブロック図の一例を示す。図示するように、処理システム10は、監視装置1と、認証装置2とを有する。
【0024】
監視装置1は、取得部11と、項目値算出部12と、表示制御部15と、送受信部16とを有する。認証装置2は、安全性判定部13と、認証部14と、送受信部17とを有する。
【0025】
取得部11は、電力貯蔵装置5の状態を示す測定データをエッジデバイス6から取得する。取得部11は、電力貯蔵装置5の識別情報をさらに取得してもよい。測定データは、「運転モード」、「SOC(State Of Charge)」、「電流」、「累積充放電量」、「累積充放電電力」、「セル電圧・温度平均値」、「セル電圧・温度最小値/最大値と測定位置」、「複数の特定参照セルのセル電圧、温度、リファレンス電圧測定値」、「BMS(Battery Management System)の自己診断結果」、「絶縁抵抗」及び「装置故障情報」の中の少なくとも1つを含む。なお、測定データはその他のデータを含んでもよい。これらの測定データを測定/取得する手法は特段制限されず、従来のあらゆる技術を採用することができる。
【0026】
なお、本明細書において、「取得」とは、ユーザ入力に基づき、又は、プログラムの指示に基づき、「自装置が他の装置や記憶媒体に格納されているデータを取りに行くこと(能動的な取得)」、たとえば、他の装置にリクエストまたは問い合わせして受信すること、他の装置や記憶媒体にアクセスして読み出すこと等、および、ユーザ入力に基づき、又は、プログラムの指示に基づき、「自装置に他の装置から出力されるデータを入力すること(受動的な取得)」、たとえば、配信(または、送信、プッシュ通知等)されるデータを受信すること、また、受信したデータまたは情報の中から選択して取得すること、及び、「データを編集(テキスト化、データの並び替え、一部データの抽出、ファイル形式の変更等)などして新たなデータを生成し、当該新たなデータを取得すること」の少なくともいずれか一方を含む。
【0027】
項目値算出部12は、取得部11により取得された測定データに基づき、電力貯蔵装置5の安全性に影響する項目値を算出する。項目値は、「運転時間」、「故障状態/非認証状態での運転時間」、「累積充放電量」、「低温累積充放電量」、「高温累積充放電量」、「セル平均/リファレンスセルの容量維持率、正極容量、負極容量、脱離Li容量、正・負極使用電圧・SOC範囲、OCVずれ量の値と分散」、「電圧測定誤差」、「BMS自己診断結果」、「絶縁抵抗」及び「装置故障情報」中の少なくとも1つを含む。なお、項目値はその他のデータを含んでもよい。測定データからをこれらの項目値を算出する手法は特段制限されず、従来のあらゆる技術を採用することができる。
【0028】
送受信部16は、項目値算出部12により算出された項目値を認証装置2に送信する。そして、送受信部17は、項目値算出部12により算出された項目値を監視装置1から受信する。なお、送受信部16は、電力貯蔵装置5の識別情報をさらに認証装置2に送信してもよい。そして、送受信部17は、電力貯蔵装置5の識別情報をさらに監視装置1から受信してもよい。
【0029】
安全性判定部13は、算出された項目値に基づき、電力貯蔵装置5の安全性を判定する。
【0030】
例えば、項目毎に、安全と判定できる安全条件(例:項目値が基準値以上/基準値以下)が予め定められていてもよい。そして、安全性判定部13は、所定の項目の項目値が安全条件を満たさない場合に「安全でない」と判定してもよい。
【0031】
また、複数の項目は複数のグループに分類されてもよい。そして、安全性判定部13は、所定のグループに属する項目であって、項目値が安全条件を満たさない項目の数が所定値以上である場合に「安全でない」と判定してもよい。当該所定値は、グループ毎に異なってもよい。
【0032】
そして、安全性判定部13は、「安全でない」と判定する条件を満たさない場合、「安全」と判定してもよい。
【0033】
また、安全性判定部13は、算出された項目値に基づき、安全性が安全条件を満たす状態が維持される期間(以下、「安全維持期間」)を推定してもよい。例えば、安全性判定部13は、各項目値の履歴に基づき項目値の変化のトレンド(変化速度)を算出し、算出したトレンドと現在の項目値とに基づき安全維持期間(例:項目値が基準値以上/基準値以下となっている期間)を推定することができる。すなわち、安全性判定部13は、項目値の経時変化に基づき、安全維持期間を推定することができる。なお、安全維持期間の算出方法は当該例に限定されない。以下で、安全性判定部13による演算処理の具体例を説明する。
【0034】
認証部14は、安全性判定部13により判定された安全性が所定条件(「安全」である)を満たす場合、電力貯蔵装置5は安全であることを認証する認証情報を出力する。認証情報は、テキスト、図、写真、マークの中の少なくとも1つを用いて構成される情報である。
【0035】
なお、認証部14は、安全性判定部13により推定された安全維持期間を、認証情報の有効期間として出力してもよい。
【0036】
送受信部17は、認証情報を監視装置1に送信する。そして、送受信部16は、認証情報を認証装置2から受信する。
【0037】
表示制御部15は、電力貯蔵装置5に対応して設置されたディスプレイ7に認証情報を表示させる。例えば、表示制御部15は、電力貯蔵装置5は安全であることを認証するマークを認証情報としてディスプレイ7に表示させてもよい。また、表示制御部15は、安全維持期間を認証の有効期間としてディスプレイ7に表示させてもよい。
【0038】
なお、電力貯蔵装置5とディスプレイ7との対応関係は、ディスプレイ7に表示された認証情報が電力貯蔵装置5の安全性を示すものであることを認識できる関係であることが好ましい。例えば、電力貯蔵装置5がディスプレイ7を備えてもよし、電力貯蔵装置5の周辺にディスプレイ7が設置されてもよい。
【0039】
次に、
図4のフローチャートを用いて、処理システム10の処理の流れの一例を説明する。
【0040】
まず、取得部11が、電力貯蔵装置5の状態を示す測定データをエッジデバイス6から取得する(S10)。取得部11が測定データを取得するタイミングは様々である。例えば、取得部11は、予め定められた時間間隔(例:1か月おき、1週間おき、1日おき、10時間おき、1時間おき等)で測定データを取得してもよい。また、当該時間間隔は、電力貯蔵装置5の使用開始タイミングからの経過時間に応じて変化してもよい。すなわち、使用開始タイミングからの経過時間が小さいほど上記時間間隔を大きくしてもよい。また、取得部11は、ユーザからの指示入力があったタイミングで測定データを取得してもよい。
【0041】
次いで、項目値算出部12は、取得部11により取得された測定データに基づき、電力貯蔵装置5の安全性に影響する項目値を算出する(S11)。項目値算出部12が項目値を算出するタイミングは様々である。例えば、項目値算出部12は、取得部11が新たな測定データを取得する毎に、項目値を算出してもよい。また、項目値算出部12は、予め定められた時間間隔(例:1か月おき、1週間おき、1日おき、10時間おき、1時間おき等)で項目値を算出してもよい。また、当該時間間隔は、電力貯蔵装置5の使用開始タイミングからの経過時間に応じて変化してもよい。すなわち、使用開始タイミングからの経過時間が小さいほど上記時間間隔を大きくしてもよい。
【0042】
次いで、監視装置1の送受信部16がS11で算出された項目値を送信し、認証装置2の送受信部17が当該項目値を受信する(S12)。項目値を送受信するタイミングは様々である。例えば、送受信部16及び送受信部17は、項目値算出部12が新たな項目値を算出する毎に、項目値を送受信してもよい。また、送受信部16及び送受信部17は、予め定められた時間間隔(例:1か月おき、1週間おき、1日おき、10時間おき、1時間おき等)で項目値を送受信してもよい。また、当該時間間隔は、電力貯蔵装置5の使用開始タイミングからの経過時間に応じて変化してもよい。すなわち、使用開始タイミングからの経過時間が小さいほど上記時間間隔を大きくしてもよい。
【0043】
次いで、安全性判定部13は、項目値に基づき電力貯蔵装置5の安全性を判定する(S13)。安全性を判定するタイミングは様々である。例えば、安全性判定部13は、新たな項目値が像受信される毎に、安全性を判定信してもよい。また、安全性判定部13は、予め定められた時間間隔(例:1か月おき、1週間おき、1日おき、10時間おき、1時間おき等)で安全性を判定してもよい。また、当該時間間隔は、電力貯蔵装置5の使用開始タイミングからの経過時間に応じて変化してもよい。すなわち、使用開始タイミングからの経過時間が小さいほど上記時間間隔を大きくしてもよい。
【0044】
次いで、S13で判定された安全性が安全条件を満たす場合(S13のYes)、認証部14は、電力貯蔵装置5は安全であることを認証する認証情報を出力する(S15)。すると、認証装置2の送受信部17が当該認証情報を送信し、監視装置1の送受信部16が当該認証情報を受信する。そして、表示制御部15は、電力貯蔵装置5に対応して設置されたディスプレイ7に認証情報を表示させる。
【0045】
なお、S13で判定された安全性が安全条件を満たさない場合(S13のNo)、認証部14は認証情報を出力しない。
【0046】
次に、安全性判定部13による演算処理の一例を説明する。
【0047】
「例1」
電力貯蔵装置5の容量劣化(経年使用による容量減少)の原因として、「正極容量の減少」、「負極容量の減少」、「金属(Li等)の析出等による金属イオンの減少」等が挙げられる。どの原因によって劣化しても本来設計された状態から外れるため、正極、負極の動作電圧範囲が変化し、金属が析出することなどにより電力貯蔵装置5の安全性は損なわれる。
【0048】
そこで、例1では、電力貯蔵装置5の容量維持率に基づき、電力貯蔵装置5の安全性、及び、安全維持期間を推定する。
【0049】
具体的には、定期的に(例:1年毎に)容量維持率(項目値)を算出し、記録しておく。そして、電力貯蔵装置5の容量維持率の安全使用下限がP%である場合、算出された容量維持率がP%以上である場合に「安全」と判定し、算出された容量維持率がP%未満である場合に「安全でない」と判定することができる。
【0050】
また、容量維持率の経時変化に基づき、安全維持期間を推定することができる。すなわち、過去の容量維持率の記録に基づき、経過年数や使用マイルに対して
図5に示すようなグラフが描ける。図示するグラフより、容量維持率の変化のトレンド(変化速度)を算出することができる。そして、当該トレンドと、現在の容量維持率とに基づき、安全維持期間を推定することができる。
【0051】
例えば、電力貯蔵装置5の容量維持率の安全使用下限が70%とする。
図5の例の場合、9年目に測定した時点での容量維持率は73%であり、過去データの年間平均容量劣化が3%であるため、容量維持率が70%となるまでの期間(安全維持期間)は1年と算出される。
【0052】
なお、容量維持率に代えて、出入力時の温度、絶縁抵抗値、電力貯蔵装置5の内部抵抗等を採用し、同様の処理を行うこともできる。
【0053】
「例2」
例1で説明したように、定期的に容量維持率を算出することで、容量維持率の変化のトレンド(変化速度)が求まる。電力貯蔵装置5ごとに当該変化速度を求め、統計的分布を求めることができる(
図6参照)。
【0054】
そして、正常な劣化速度分布から所定レベル以上外れており、極めて早い速度で劣化する電力貯蔵装置5については、安全であることの認証を与えない。一方で、正常な劣化速度分布の範囲内にある電力貯蔵装置5については、例えば例1の手順にしたがって安全性の判定や、安全維持期間の推定を行うことができる。
【0055】
なお、容量維持率の劣化速度に代えて、出入力自の温度の上昇速度、絶縁抵抗値の減少速度、電池の内部抵抗の増加速度等の分布を使用することができる。
【0056】
「例3」
電池セル電圧の測定結果からたとえば非特許文献1に開示されている方法等で正極と負極のOCP(Open Circuit Potential)に分解することができる。すると正極・負極が使われている電圧範囲やそれぞれのSOC範囲、不動作Li量等がわかる。電力貯蔵装置5が劣化すると電池の充電電圧が同じでも正極はより高い電圧まで充電されてしまう傾向がある。正極の電圧が高くなると正極は不安定になって、最終的には熱暴走に至ることが知られている。不動作Li量、正極最大電圧、正極・負極の容量を算出し、これらを電力貯蔵装置5の安全性に影響する項目値とすることができる。そして、これら項目値の値が安全条件を満たすか否かにより、安全性を判定することができる。
【0057】
また、これら項目値のトレンド(変化速度)を求め、現在の項目値の値と当該トレンド(変化速度)に基づき、安全維持期間を求めることができる。
【0058】
例えば、電池セル電圧を常時測定し、経過観察を行うリファレンスセルをシステムの中に複数設定するとより正確な判定が期待できる。リファレンスセルそれぞれについて不動作Li量、正極最大電圧、正極・負極の容量の平均値と標準偏差から計算した確率密度を安全指標として使用することができる。たとえばある特定の電池システムにおいて正極最大電圧の平均値が4.2Vで標準偏差が0.05Vであった場合、監視対象システム内では正極最大電圧は+3σすなわち4.35V以内に99%の確率で入っていると計算することができる。安全使用限界の正極最大電圧が4.40Vであった場合、まだ安全性に尤度があると判定することができる。
【0059】
「例4」
電池セル内部の化学反応もアレニウス則で説明できるため、電池の安全性も加速試験によって確認することができる。例えば、電池の場合、75℃、120日間という条件での加速試験は、25℃、10年間の使用に相当する。また、130℃、3日間という条件での加速試験は、25℃、12年間の使用に相当する。加速試験で確認された故障など生じす安全に使用できる時間(加速試験時間)を安全限界時間とすると、例えば下記の式(1)に基づき、室温(25℃:298.15K)環境において安全に使用できる残り時間の目安tsafeを計算することができる。
【0060】
【0061】
なお、各変数の定義は以下の通りである。
tsafe:安全に使用できる残り時間
tt:加速試験時間
Tt:加速試験温度(K)
t:経過時間
Ta:実際の使用温度(K)
Ea: 活性化エネルギ
kb:ボルツマン定数
【0062】
また、安全に使用できる残り充放電電流積算値Ah_safeも同様に計算することができる。例えば、下記の式(2)に基づき算出することができる。
【0063】
【0064】
なお、上述した変数以外の変数の定義は以下の通りである。
Ah_safe:安全に使用できる残り充放電電流積算値(Ah)
Aht:加速試験にて確認された安全に使用できる充放電電流積算値(Ah)
A:電流
【0065】
「例5」
LIB(lithium-ion battery)セルでは直列に接続されたセル間のSOCを均一化するセルバランスと呼ばれる操作が必要になる。自己放電が早いセルはSOCと電圧が他に比べて早く下がり、自己放電が遅いセルはSOCと電圧が高いままなので、セル間の電圧差を検出し、電圧が高いセルを放電させて(あるいは逆に電圧の低いセルを充電して)、SOCと電圧を均一化する。自己放電の早いセルは内部でなんらかの反応、たとえば微小な内部短絡などが起きている可能性がある。セルバランスにより流された電流の時間積算値、もしくは充電または放電を行なった時間を測定し、履歴を記録し、統計を取ると、ユーザが不便を感じることなく使用できていても不安全な状態になっている異常なセルが含まれている電池システムやモジュールを検出することができる。すなわち、異常なセルが含まれている電池システムでは、セルバランスにより消費した電流積算値が統計的異常値を示す(例:所定値以上)か、平均値から大きく外れた値(例:平均値との差が所定位置以上)を示すので、異常値を示した時点で安全認証を取り消すことができる。
【0066】
次に、本実施形態の処理システム10の変形例を説明する。ここまでは、処理システム10は、物理的及び/又は論理的に分かれた複数の装置(監視装置1及び認証装置2)により構成されるものとした。しかし、処理システム10は、物理的及び/又は論理的に1つの装置で構成されてもよい。すなわち、物理的及び/又は論理的に1つの装置が、取得部11、項目値算出部12、安全性判定部13、認証部14及び表示制御部15を有してもよい。なお、この場合、2つの装置間で情報を送受信するための送受信部16及び送受信部17は不要となる。
【0067】
次に、本実施形態の処理システム10の作用効果を説明する。本実施形態の処理システム10は、使用開始後の電力貯蔵装置5の状態に基づき電力貯蔵装置5の安全性を判定し、判定結果に基づき電力貯蔵装置5の安全性を認証することができる。そして、処理システム10は、電力貯蔵装置5は安全であることを認証する認証情報を、ユーザ側のディスプレイ7に表示させることができる。
【0068】
このような処理システム10によれば、ユーザは、ディスプレイ7に表示された認証情報により、電力貯蔵装置5は安全な状態になっているという安心感が得られる。結果、ユーザによる電力貯蔵装置5の安全性への配慮の負担が軽減される。
【0069】
また、処理システム10によれば、安全性が維持される期間(安全維持期間)を推定し、安全維持期間を認証の有効期間としてディスプレイ7に表示させることができる。このような処理システム10によれば、ユーザは、ディスプレイ7に表示された有効期間により、安全な状態が維持される期間の推定結果を認識することができる。結果、ユーザによる電力貯蔵装置5の安全性への配慮の負担が軽減される。
【0070】
以上、実施形態(及び実施例)を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態(及び実施例)に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0071】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限定されない。
1. 電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得する取得手段と、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出する項目値算出手段と、
算出された前記項目値に基づき、前記電力貯蔵装置の安全性を判定する安全性判定手段と、
判定された前記安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を出力する認証手段と、
を有する処理システム。
2. 前記電力貯蔵装置に対応して設置されたディスプレイに、前記認証情報を表示させる表示制御手段をさらに有する1に記載の処理システム。
3. 前記表示制御手段は、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証するマークを前記認証情報として表示させる2に記載の処理システム。
4. 前記安全性判定手段は、算出された前記項目値に基づき、前記安全性が前記所定条件を満たす状態が維持される期間を推定し、
前記認証手段は、前記期間を前記認証情報の有効期間として出力する1から3のいずれかに記載の処理システム。
5. 前記安全性判定手段は、前記項目値の経時変化に基づき、前記期間を推定する4に記載の処理システム。
6. 電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得する取得手段と、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出する項目値算出手段と、
算出された前記項目値を外部装置に送信し、前記項目値に基づき判定された前記電力貯蔵装置の安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を前記外部装置から受信する送受信手段と、
前記電力貯蔵装置が備えるディスプレイ、又は、前記電力貯蔵装置の周辺に設けられたディスプレイに、前記認証情報を表示させる表示制御手段と、
を有する監視装置。
7. コンピュータが、
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得し、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出し、
算出された前記項目値に基づき、前記電力貯蔵装置の安全性を判定し、
判定された前記安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を出力する処理方法。
8. コンピュータが、
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得し、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出し、
算出された前記項目値を外部装置に送信し、
前記項目値に基づき判定された前記電力貯蔵装置の安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を前記外部装置から受信し、
前記電力貯蔵装置が備えるディスプレイ、又は、前記電力貯蔵装置の周辺に設けられたディスプレイに、前記認証情報を表示させる監視方法。
9. コンピュータを、
電力貯蔵装置の状態を示す測定データを取得する取得手段、
前記測定データに基づき、前記電力貯蔵装置の安全性に影響する項目値を算出する項目値算出手段、
算出された前記項目値を外部装置に送信し、前記項目値に基づき判定された前記電力貯蔵装置の安全性が所定条件を満たす場合、前記電力貯蔵装置は安全であることを認証する認証情報を前記外部装置から受信する送受信手段、
前記電力貯蔵装置が備えるディスプレイ、又は、前記電力貯蔵装置の周辺に設けられたディスプレイに、前記認証情報を表示させる表示制御手段、
として機能させるプログラム。