(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】硫酸を使用するリン酸塩源をエッチングする方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/32 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
C01B25/32 C
C01B25/32 G
(21)【出願番号】P 2020506971
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2018071818
(87)【国際公開番号】W WO2019030403
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-09
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】503402622
【氏名又は名称】プレイヨン テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バブレイユ、アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ルデラー、リビオ
(72)【発明者】
【氏名】ニナーネ、レオン
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第00793801(GB,A)
【文献】特開昭56-009204(JP,A)
【文献】国際公開第2005/087661(WO,A1)
【文献】特公昭42-000382(JP,B1)
【文献】特開昭51-075697(JP,A)
【文献】特開昭59-207818(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸塩系精製化合物の生成のためのカルシウムを含むリン酸塩源の酸攻撃のプロセスであって、
a)第1の固形物と、前記第1の固形物が懸濁している第1の液相とを含む第1の懸濁液の形成を伴う、20~180分の範囲の所定の期間における前記リン酸塩源の硫酸を用いる酸攻撃工程であって、前記第1の固形物が少なくとも硫酸カルシウム及び不純物を含み、前記第1の液相がリン酸及び溶解したリン酸一カルシウムを含み、前記攻撃は、前記硫酸から及びリン酸塩源からの硫酸塩と前記リン酸塩源からのカルシウムとのモル比が0.6~0.8の範囲であり、P
2O
5の含有量が6%未満である投入条件で行われる、酸攻撃工程と、
b)前記第1の液相からの前記第1の固形物の分離を伴う前記第1の懸濁液である第1のスラリーの第1の濾過工程と、
c)精製されたリン酸塩系の化合物の前記第1の液相からの回収工程と
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記酸攻撃が1つ、2つ又はそれ以上の攻撃タンクで起こる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記所定の期間が120分未満である、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記1つ又は複数の攻撃タンク内の前記液相中の前記P
2O
5含有量が5%未満である、請求項2又は3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記攻撃が、90℃以下の前記1つ又は複数の攻撃タンク温度で実行される、請求項2~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記硫酸が、前記1つ又は複数の攻撃タンクに添加される前の希硫酸である、請求項2~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記希硫酸が、13重量%以下のH
2SO
4濃度を特徴とする、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記硫酸から及び前記リン酸塩源からの硫酸塩と前記リン酸塩源に存在する前記カルシウムとのモル比が、0.68~0.78の範囲である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
濾過の前に、塩基を前記第1の懸濁液に添加することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記リン酸塩系精製化合物が前記第1の液相から回収される前記工程の前に、第2の液相中の懸濁液の第2の固形物を含む第2の懸濁液の形成及び前記第2の液相から懸濁液中の前記第2の固形物を分離するための前記第2の懸濁液の濾過を伴う、濾過後の前記第1の液相への塩基の添加をさらに含み、第2のリン酸塩系精製化合物は、それによって前記第2の固形物の含有量が低い前記第1の液相からの前記第2の液相から回収される、請求項
2、4、5及び6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記リン酸塩系精製化合物が前記第1の液相から回収される前記工程の前に、第2の液相中の懸濁液の第2の固形物を含む第2の懸濁液の形成及び前記第2の液相から懸濁液中の前記第2の固形物を分離するための前記第2の懸濁液の濾過を伴う、濾過後の前記第1の液相への塩基の添加をさらに含み、第2のリン酸塩系精製化合物は、それによって前記第2の固形物の含有量が低い前記第1の液相からの前記第2の液相から回収される、請求項1、3、7、8及び9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記第1の液相から分離された前記第1の固形物が、前記第1の懸濁液に導入することによりリサイクルされる、請求項1~
11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記カルシウムを含む前記リン酸塩源が、従来のリン鉱石、低いP
2O
5含有量を有するリン鉱石、灰、廃水処理施設からの汚泥、骨灰、豚糞、鶏糞、廃水処理施設の汚泥からの灰、及びリン酸塩含有量が原料の総重量に対して30重量%未満のP
2O
5のリン酸塩含有量を特徴とする任意の原料からなる群から選択され、
前記従来のリン鉱石が25重量%を超える典型的なP
2O
5含有量を有する、請求項1~
12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記精製されたリン酸塩系化合物が、リン酸一カルシウムMCP、リン酸二カルシウムDCP、又はリン酸である、請求項1~
13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記第2の液相が、前記1つ又は複数の攻撃タンクに導入することによりリサイクルされる、請求項10に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸系精製化合物の生成のために、
-カルシウムを含むリン酸塩源の酸攻撃(acid attack)のプロセスと、
-カルシウムを含まないリン酸塩源の酸攻撃のプロセスと
に関する。
【0002】
「カルシウムを含まないリン酸塩源」とは、リン酸塩源の乾燥物質(105℃乾燥)の総重量に対して、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは1重量%、より好ましくは0.1重量%、さらにより好ましくは0.05重量%以下のリン酸イオン、リン酸水素イオン及び/又はリン酸二水素イオンに結合又は非結合のカルシウム含有量を意味する。
【0003】
結合カルシウムを含まないリン酸塩源には、例えば、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸リチウム、リン酸亜鉛、リン酸マグネシウム又は混合リン酸塩が含まれる。この実施形態では、カルシウムをリン酸塩源に添加して、攻撃タンク(attack tank)で0.6~0.8の範囲のSO4/Caモル比を達成する。
【0004】
カルシウムを含むリン酸塩源の酸攻撃は、最新技術によりよく知られている。
【0005】
同様の性質の従来のプロセスは、硫酸カルシウム二水和物又は石膏(CaSO4.2H2O)の結晶化を引き起こす条件で、リン鉱石を硫酸と反応させることにある。次いで、第1の反応器で得られた石膏スラリーは、第2の反応器で、濾過性を高める目的で、形成された硫酸塩グレインのサイズを増大させる熟成プロセスを受けることができる。次いで、熟成スラリーを濾過して、約25~35重量%の遊離P2O5含有量を有するリン酸を得る。
【0006】
また、高い温度及び濃度のP2O5及び/又はSO3で、半水和物(CaSO4.1/2H2O)又は硬石膏の形態の硫酸カルシウムのスラリーを得る硫酸攻撃によるリン酸の生成も既知である。これらのプロセスでは、一般に、濃リン酸及び濾過が容易な硫酸塩が得られるが、これらのプロセスでのP2O5の抽出効率は、従来のプロセスほど高くはない。酸攻撃の後、特定の場合、得られた硫酸カルシウム半水和物は硫酸カルシウム二水和物に変換される(Ullman’s Encyclopaedia of Industrial Chemistry,2008年,8及び9頁)。
【0007】
また、形成された石膏が良好な濾過を提供するグレインサイズを特徴とする第1のスラリーを得るために、リン鉱石が従来のプロセスに従って再び攻撃条件にさらされることも知られている。次いで、この第1のスラリーの一部がサンプリングされ、石膏が半水和物に変換される条件にさらされ、それにより第2のスラリーが形成される。次いで第1のスラリーの残りは第2のスラリーと混合され、得られたスラリーは濾過される(国際公開第2005/118470号を参照)。
【0008】
リン酸の生成に影響を与える主要な問題は、P2O5に富む鉱物堆積物の枯渇にある。これらの堆積物は利用され尽くされている。現在、P2O5含有量が乏しいと考えられる鉱物、例えばリン鉱石に対してP2O5含有量が25重量%以下、特定の場合では20%以下の鉱物に頼らなければならない。
【0009】
これらの鉱物を使用し、高品質の生成リン酸を抽出するプロセスは、国際公開2011/067321号に記載されていた。このプロセスの攻撃条件には、導入された硫酸とリン鉱石に含まれるカルシウムとの間の顕著に化学量論的な反応が含まれるが、結晶化スラリーの遊離P2O5含有量は38~50重量%に高く維持され、温度は70~90℃で維持される。驚くべきことに、これらの条件は非常に純度の高い安定した二水和物結晶を生じさせる。次いで、このスラリーを温度上昇に供し、その間に二水和物グレインが可溶化して非攻撃又は共結晶化P2O5を放出すると同時に、良好な濾過性を備えた硫酸カルシウム半水和物の結晶化及び非常に少ない遊離SO3含有量のリン酸の生成が達成される。P2O5含有量の少ない鉱物は、不純物含有量がますます高くなることが多いことに留意すべきである。不純物含有量は一般に、比(Al2O3+Fe2O3+MgO)/P2O5×100で表され、MER(微量元素比)とも呼ばれる。典型的であると言われているリン酸塩は、約5~8の範囲のMER比によって特徴付けられる。
【0010】
10を超えると、不純物の含有量が非常に重要になるため、硫酸による鉱物の攻撃中に、石膏の形態での硫酸カルシウムの結晶化に悪影響を及ぼし始める。このレベルの不純物含有量では、特に硫酸カルシウム二水和物の結晶化及びその濾過に影響を及ぼす問題のために、リン酸の生成が問題になる。したがって、これは、リン鉱石の攻撃の直後に濾過が行われるすべてのプロセスで重大な欠点である。
【0011】
国際公開2011/067321号に記載されているようなプロセスでは、石膏の結晶化も不純物の影響を受けるが、石膏は濾過されることを意図していないため、これは重要ではない。
【0012】
国際公開2012/163425号は、硫酸を使用した低品質のリン鉱石の攻撃によるリン酸生成プロセスの開発を目的としており、高品質の生成リン酸及び岩石からのP2O5の良好な抽出効率を得ることができる。さらに、このプロセスは、既存及び従来の施設に適用できるはずであり、経済的に正当化することが不可能な費用のかかる変換を必要としないはずである。この文書によれば、このプロセスは、攻撃の過程で、リン鉱石に含まれるP2O5に対して1~5重量%の範囲のF含有量にて第1のスラリーへのフッ素源の添加を含む。攻撃条件は、導入された硫酸と、主に炭酸塩及びリン酸カルシウムの形態で、リン鉱石に含まれるカルシウムとの間に実質的に化学量論的な反応をもたらすようなものである。攻撃の結果生じる第1のスラリーの酸性水相は、遊離硫酸をまったく又はほとんど含まず、遊離P2O5の含有量は比較的高い。
【0013】
以上のように、リン鉱石からリン酸を生成することの難しさは、常に十分な攻撃収率、許容できる品質の酸、及び変化させるのが多かれ少なかれ容易な硫酸カルシウムを有することであり、この文脈では、濃硫酸によるリン鉱石の攻撃は、原料リン酸を生成し、十分及び経済的に利益のあるP2O5の抽出率を確保するために、化学量論的反応として行わなければならないことが一般に受け入れられている。
【0014】
化学量論的反応による硫酸によるリン鉱石の攻撃によるリン酸の生成の場合、反応は次のように記述される、
(I)Ca3(PO4)2+3H2SO4→3CaSO4.2H2O+2H3PO4
ここでモル比SO4/Ca=3/3、つまり=1
【0015】
このように生成されたリン酸を石灰塩基と組み合わせて使用して、食品グレード(人間又は動物用)のリン酸二カルシウム(DCP)を生成するために又はその他の任意の用途に使用できることも知られている。
【0016】
英国特許第938468号には、リン鉱石から又は塩酸を含む天然鉱物からのリン酸一カルシウム(MCP)又はリン酸二カルシウム(DCP)の生成が記載されている。
【0017】
国際公開第2015/082468号には、リン鉱石の塩酸攻撃について記載されている。
【0018】
残念ながら、塩酸攻撃プロセスでは、例えば特定のグレードの技術的なDCPには存在すべきでない塩化物イオンを除去するために、DCP洗浄工程が必要である。塩酸を使用するプロセスでは、原料の不純物の一部が蓄積する残留塩化カルシウムが生成される。この解決策は、実施するために、追加の精製処理が必要である。さらに、攻撃タンクに塩酸が存在すると、温度が60℃以上の場合、施設で腐食の問題が発生する。
【0019】
また、米国特許第3161466号から、硫酸を使用したリン鉱石の攻撃プロセスが既知である。この文書で記載されているプロセスでは、第1の硫酸攻撃が攻撃タンクで行われ、ペースト状のスラリーが得られ、このスラリーは、熟成のために放置され得るか、又は追加の酸攻撃を受ける第2のタンクに移され得る。このプロセスは、連続的なpH制御に基づいており、漸進的にpHを増加させて、液相(液体)に存在する様々な不純物を選択的に沈殿させるのに役立つ。液には、MCP及びリン酸が大量に含まれる。
【0020】
残念ながら、上述の選択的沈殿のために各工程で厳密なpH制御が必要なため、記載されているプロセスは限定的であるだけでなく、関与する多くの工程及びリン鉱石の処理に必要な時間のために経済的に不健全である。
【0021】
最後に、別のプロセスが英国特許第793801号に記載されている。この文書では、記載されたプロセスは、14~62%に濃縮された硫酸によるリン鉱石の準化学量論的攻撃を含む。記載されたプロセスの目的は、リン鉱石に含まれる希土類元素の回収である。その結果、重要な工程の1つは、リン鉱石を完全に溶解して液相を形成し、そこから希土類を抽出できることにある。したがって、このプロセスでは、反応性シリカを添加して希土類を溶液中に維持し、約24時間の攻撃期間を必要とする。文書に開示されているカルシウムに対するP2O5の含有量(P2O5/Ca)は、10/1~4/1の範囲である。
【0022】
以上のように、このプロセスは、相当な市場価値のある希土類の抽出によって利益を上げる可能性が高いという事実のため、リン鉱石の処理に時間がかかり、多大なコストがかかる。ただし、精製されたリン酸塩系の物質を生成することを目的とするアプローチでは、このプロセスの経済的な収益性は疑問視する必要がある。
【0023】
本発明の目的は、エネルギーコスト、生成コスト、生成装置で使用される材料の耐性、及び原料の柔軟性の間の最適なバランスを備えた経済的に利益のあるプロセスを提供することにより、最新技術の欠点を改善することである。
【0024】
実際、本発明の目的の一つは、低リン酸塩濃度及び二次リン酸塩源を有する岩石と同様に、高リン酸塩濃度を有する岩石の処理を可能にするプロセスを提供することである。
【発明の概要】
【0025】
この問題を解決するために、本発明は、冒頭で述べたような精製されたリン酸塩系の化合物の生成のためのカルシウムを含むリン酸塩源の酸攻撃のプロセスに関し、
a)第1の固形物と、第1の固形物が懸濁している第1の液相とを含む第1の懸濁液の形成を伴う、20~180分の範囲の所定の期間におけるこのリン酸塩源の硫酸による酸攻撃工程であって、この第1の固形物が少なくとも硫酸カルシウム及び不純物を含み、この第1の液相がリン酸及び溶解したリン酸一カルシウムを含み、この攻撃は、硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩とカルシウムとのモル比が0.6~0.8の間で含まれ、P2O5の含有量が6%未満である投入条件で行われる、酸攻撃工程と、
-b)この第1の液相からのこの第1の固形物の分離を伴うこの第1のスラリーの第1の濾過工程と、
-c)精製されたリン酸塩系の化合物のこの第1の液相からの回収工程と
を含む。
【0026】
モル比SO4/Caは、試薬の投入時にCaを含むリン酸塩源の攻撃に必要な酸の量を定義する。
【0027】
有利には、このP2O5含有量は、この第1の液相に溶解したP2O5の含有量である。
【0028】
有利には、この酸攻撃は、1つ、2つ、又はそれ以上の攻撃タンクで行われる。
【0029】
以上のように、本発明によるプロセスは、0.6~0.8の間で含まれる硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩の、リン酸塩源に存在するカルシウムに対するモル比(SO4/Ca)がいくつかの利点を特徴とするので、非常に準化学量論的な条件における攻撃プロセスである。第1に、硫酸の消費が低減され、複数のリン酸塩源が、様々な精製されたリン酸塩系の化合物を生成する目的のために、本発明によるプロセスによって処理できる。実際、本発明によるプロセスは、リン酸及びリン酸一カルシウムを含む液相を得るために使用でき、そこからリン酸二カルシウムも得ることができ、それにより大きな柔軟性を提供する。実際、リン酸二カルシウムは、比較的純粋なリン酸及びその誘導体を生成するために攻撃できる。さらに、攻撃期間は比較的短く、それによりリン酸塩源と複数の得られた生成物に関連する柔軟性の共同作用により生成コストを下げる。反応環境の攻撃性が低下するため、メンテナンスコストも下げることができる。
【0030】
硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩とカルシウムとのモル比に到達するために、カルシウム含有量は主にリン酸塩源のカルシウム含有量に基づくが、必要に応じて常に一部のカルシウムを追加することができる。
【0031】
有利には、本発明によるプロセスは、
-第1の固形物及び第1の液相を含む第1の懸濁液の形成を伴う、20~180分の範囲の所定の期間における、リン酸塩源の硫酸による1つ、2つ又は複数の攻撃タンクでの酸攻撃であって、第1の固形物は懸濁液中にあり、第1の固形物は少なくとも硫酸カルシウム及び不純物を含み、この第1の液相はリン酸及び溶解したリン酸一カルシウムを含み、この攻撃は、硫酸から及び場合により硫酸塩源からの硫酸塩とリン酸塩源中に存在するカルシウムとのモル比は0.6~0.8の間に含まれ、1つ又は複数の攻撃タンクのP2O5含有量は6%未満である投入条件で行われる、攻撃工程と、
-この第1の液相からのこの第1の固形物の分離を伴うこの第1のスラリーの第1の濾過工程と、
-精製されたリン酸塩系の化合物のこの第1の液相からの回収工程と
を含む。
【0032】
モル比SO4/Caは、1つ又は複数の攻撃タンク内の試薬の投入時に、Caを含むリン酸塩源の攻撃に必要な酸の量を定義する。
【0033】
有利には、本発明によるプロセスは、
-第1の固形物及び第1の液相を含む第1の懸濁液の形成を伴う、20~180分の範囲の所定の期間における、リン酸塩源の硫酸による1つ、2つ又は複数の攻撃タンクでの酸攻撃であって、第1の固形物は懸濁液中にあり、第1の固形物は少なくとも硫酸カルシウム及び不純物を含み、この第1の液相はリン酸及び溶解したリン酸一カルシウムを含み、この攻撃は、硫酸から及び場合により硫酸塩源からの硫酸塩とカルシウムとのモル比が0.6~0.8の間に含まれ、攻撃タンクのP2O5含有量は6%未満である投入条件で行われる、攻撃工程と、
-この第1の液相からのこの第1の固形物の分離を伴うこの第1のスラリーの第1の濾過工程と、
-精製されたリン酸塩系化合物のこの第1の液相からの回収工程と
を含む。
【0034】
モル比SO4/Caは、1つ又は複数の攻撃タンク内の試薬の投入時に、Caを含むリン酸塩源の攻撃に必要な酸の量を定義する。
【0035】
有利には、酸攻撃のこの工程a)は、
-1つの攻撃タンクでの酸攻撃、又は
-硫酸の添加を伴う第1の攻撃タンクでの酸攻撃及び第1の攻撃タンクで形成された若しくは形成されている第1の懸濁液の第2の攻撃タンクへの、硫酸の添加を伴わない移動、又は
-2つのタンクにおける硫酸の添加を伴う2つの連続した攻撃タンクでの酸攻撃、又は
-3つの攻撃タンクでの酸攻撃、又は
-硫酸の添加を伴う第1の攻撃タンクでの酸攻撃及び第1の攻撃タンクで形成された若しくは形成されている第1の懸濁液の第2及び第3の攻撃タンクへの、硫酸の添加を伴わない移動、又は
-硫酸の添加を伴う又は伴わない第1の攻撃タンク及び第2の攻撃タンクでの酸攻撃並びに第1の攻撃タンク及び第2の攻撃タンクで形成された若しくは形成されている第1の懸濁液の第3の攻撃タンクへの、硫酸の添加を伴わない移動を含む。
【0036】
本発明の1つの特定の実施形態では、本発明によるプロセスは、
-第1の固形物及び第1の液相を含む第1の懸濁液の形成を伴う、20~180分の範囲の所定の期間における、このリン酸塩源の硫酸による攻撃タンクでの酸攻撃であって、第1の固形物は懸濁液中にあり、第1の固形物は少なくとも硫酸カルシウム及び不純物を含み、この第1の液相はリン酸及び溶解したリン酸一カルシウムを含み、この攻撃は硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩とリン酸塩源中に存在するカルシウムとのモル比は0.6~0.8の間に含まれ、攻撃タンクのP2O5含有量は6%未満である、攻撃工程と、
-この第1の液相からのこの第1の固形物の分離を伴うこの第1のスラリーの第1の濾過工程と、
-精製されたリン酸塩系の化合物のこの第1の液相からの回収工程と
を含む。
【0037】
モル比SO4/Caは、攻撃タンク内の試薬の投入時に、Caを含むリン酸塩源の攻撃に必要な酸の量を定義する。
【0038】
一実施形態では、リン酸塩源はカルシウムを含まない。「カルシウムを含まないリン酸塩源」とは、リン酸塩源の乾燥物質の総重量(105℃乾燥)に対して、10重量%以下、好ましくは5重量%以下、好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらにより好ましくは0.05重量%未満のカルシウム含有量を意味する。
【0039】
カルシウムを含まないリン酸塩源は、鉱物又は有機物起源、例えば有機廃棄物の嫌気性消化灰、例えば有機肥料、廃水処理施設の汚泥、堆肥、糞、金属産業から若しくは化学産業からの残留物(リン酸塩化学、食品化学、廃水施設の汚泥、グアノ、肥料、糞、及び有機廃棄物を含む)であることができる。また、それらは、鉄、アルミニウム、鉛、亜鉛、マグネシウムのリン酸塩の形態で見つけることもできる。この実施形態では、カルシウムをリン酸塩源に添加して、攻撃タンクで0.6~0.8の範囲のSO4/Caモル比を達成する。
【0040】
驚くべきことに、非常に準化学量論的条件(リン酸塩源を攻撃するための少量の硫酸)と短い攻撃期間との組み合わせを実装して、容易に回収可能で経済的に実行可能なリン酸塩を含む精製化合物を生成する一方で、1つ又は複数の攻撃タンク内のP2O5の濃度は低下するが、工業規模での食品グレードDCPの生成を含むがそれに限定されない後続の生成に関与するのに十分なレベルの純度を依然として特徴とする。したがって、本発明によるプロセスでは、リン酸塩源が高いリン酸塩濃度を有するかどうかに関係なく、多数のリン酸塩源からのP2O5の抽出は最適である。これは、プロセスが生成現場で実施されると、工業者は高リン酸カルシウム濃度を特徴とする従来の岩石だけでなく、低濃度のリン酸カルシウムを有する岩石又はリン酸カルシウムを含む二次生成物を活用できることを意味する。
【0041】
硫酸から場合によってはリン酸塩源からの硫酸塩とリン酸塩源に存在するカルシウムとのモル比を0.6~0.8の範囲で使用することにより、液相に対する固形物の比率が低くなる、つまり、懸濁液密度が低くなる。攻撃タンクに存在する硫酸塩は、主に岩石に由来するが、リン酸塩源から、場合によっては希釈水からも由来し得る。実際、攻撃タンク内の固形物の含有量は通常16%未満、好ましくは4%~15%の範囲であり、それによりスラリーの代わりに懸濁液を提供し、固形物の含有量が少なく、これは通常、攻撃期間が短く、硫酸が希釈され、濾過工程が必要であるようなリン酸塩源の処理プロセスでは直感に反する。
【0042】
本発明によるプロセスでは、反応は準化学量論的であり、反応に従って
Ca3(PO4)2+2H2SO4+H2O→2CaSO4.2H2O+Ca(H2PO4)2であり、理論的なSO4/Caモル比は約0.66である。
【0043】
硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩とリン酸塩源に存在するカルシウムとのモル比を、理論上のSO4/Ca比に可能な限り近い0.6~0.8の範囲で実施することにより、攻撃条件が、主にリン酸塩イオンによるカルシウムの沈殿曲線の下にとどまり、したがって酸性液相に可溶なMCPを生成することが可能になり、P2O5の抽出収率は90%超過と測定された。
【0044】
特定の実施形態では、リン酸塩源がカルシウムを含まない場合、系にカルシウムを添加することにより、0.6~0.8の範囲の、硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩のモル比を得ることができる。
【0045】
「鉱酸、好ましくはリン酸塩源からの硫酸を所定の期間使用する酸攻撃」という用語では、所定の期間は、バッチ攻撃又は以下に説明するように、場合によってはリサイクルフェーズを伴う連続攻撃のために1つ又はいくつかの攻撃タンクで費やされる平均時間であることが理解される。
【0046】
本発明によるプロセスでは、第1の固形物は、非攻撃性リン酸カルシウム及び硫酸カルシウム(硫酸カルシウム半水和物、硬石膏又は石膏)及び不純物を含む。硫酸カルシウムは、主に石膏(硫酸カルシウム二水和物)の形態で存在する。
【0047】
「リン酸一カルシウム」という用語は、いくつかの名前で知られる式Ca(H2PO4)2(MCP)を有する化合物、例えばリン酸一カルシウム、一塩基性リン酸カルシウム、重リン酸カルシウム、リン酸酸性カルシウム、酸性リン酸カルシウム、一塩基性リン酸カルシウム、リン酸二水素カルシウムを記載するために使用される。
【0048】
有利には、所定の期間は、120分未満、好ましくは90分未満、さらにより好ましくは60分未満、特に45分未満、さらにより詳細には約30分である。
【0049】
以上のように、酸攻撃が発生する所定の期間は、60分、特に45分、さらには30分という短い攻撃時間に達するように短縮できる。
【0050】
1つの特定の実施形態では、1つ又は複数の攻撃タンク内のP2O5の含有量は5%未満であり、好ましくはP2O5で0.5~4%の範囲であり、好ましくは1.5~3%の範囲である。
【0051】
実際、本発明によるプロセスでは、攻撃媒体中のP2O5の含有量は比較的低いが、最終的には、リン酸塩系の精製化合物として回収されるのに、予想外に十分に純粋である。
【0052】
本発明によるプロセスの別の好ましい実施形態では、この攻撃は周囲温度で実施される。
【0053】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態において、この攻撃は、90℃以下、好ましくは80℃以下、優先的には75℃以下、よりさらに優先的には60℃以下、好ましくは40℃超過の1つ又は複数の攻撃タンクの温度で行われる。
【0054】
実際、本発明では、確かに40~60℃の範囲の一般的な低温で酸攻撃により岩石を処理することが可能であることが観察されており、これにより入熱の必要がなくなり、さらにエネルギーコストの観点から生成コストを下げながら、希硫酸を使用することにより、精製されたリン酸塩系の化合物の残留SO3を低下させる。
【0055】
有利には、硫酸は、特に攻撃タンクに添加される前に希硫酸であり、これは、高リン酸塩濃度と低リン酸塩濃度との両方の供給源に関してリン酸塩処理コストを下げ、同時に液相のSO3の含有量も低下させる。
【0056】
有利には、本発明によるプロセスにおいて、この希硫酸は、希硫酸の総重量に対して、14重量%未満、好ましくは13%以下、好ましくは10%以下、より詳細には0.5~9重量%の範囲、好ましくは3~7%、さらにより好ましくは約5重量%の範囲のH2SO4の濃度を特徴とする。
【0057】
別の実施形態では、硫酸は濃硫酸であり、特に1つ又は複数の攻撃タンクで希釈されるべきであり、希釈水は飲料水、河川水、海水、リサイクル水又はDCPの生成から生じる水であり得る。
【0058】
前述のように、硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩とリン酸塩源に存在するカルシウムとのモル比は、理論比の最適値に近づき、MCP及びリン酸を液相に維持するのに十分低い0.6~0.8の範囲である。課題は、リン酸カルシウムを沈殿させずに硫酸カルシウムの溶解度を達成することである。その結果、硫酸が有利に希釈され、希硫酸の総重量に対して14%未満、好ましくは10%以下、さらには0.5~9重量%の範囲のH2SO4濃度を特徴とする場合、酸攻撃の所定の短い持続時間とともに、溶液中のリン酸塩イオンでカルシウムを沈殿させるリスクを低減することにより、最適化が達成され、それにより、液相中であり、沈殿形態ではない1つ又は複数の攻撃タンクでのMCP及びリン酸の形成が優位になるが、それは1つ又は複数の攻撃タンク内の反応媒体がリン酸カルシウム塩の沈殿を防ぐように十分に希釈されているためである。硫酸カルシウム、好ましくは石膏だけが、リン酸塩源を攻撃する従来のプロセスの量よりも少ない量で沈殿する。その結果、本発明によるプロセスにおいて、弱い回収又はリサイクルされた酸を使用することが可能である。
【0059】
本発明によるプロセスでは、硫酸は、リン酸塩産業、金属産業、化学産業などの既存のフローからリサイクルされた希硫酸であり得る。例えば、沈殿によるDCPの生成後に回収された液相は、攻撃硫酸溶液を希釈するためにリサイクルできる。好ましくは、攻撃硫酸は貯蔵タンクに貯蔵される。したがって、攻撃硫酸は、他の工程のリサイクルから得られるか、又は例えば98%以下に濃縮された硫酸などの濃酸の希釈によって得られることができ、これは例えば沈殿によるDCPの生成後に回収された水又は液相(第2液相)で希釈できる。好ましくは硫酸の希釈は、1つ又は複数の攻撃タンクの充填中にパイプ内で実行される。
【0060】
より詳細には、本発明によるプロセスでは、硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩とリン酸塩源に存在するカルシウムとのモル比は、投入時に0.68~0.78、好ましくは0.7~0.75の範囲である。
【0061】
より詳細には、本発明によるプロセスでは、硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩とカルシウムとのモル比は、投入時に0.68~0.78、好ましくは0.7~0.75の範囲である。
【0062】
好ましくは、本発明によるプロセスは、濾過の前に、この第1の懸濁液に塩基を添加することを含む。
【0063】
第1の懸濁液への塩基の添加は、濾過前にフッ化カルシウムを沈殿させることを可能にし(予備中和)、これは、必要な最終化合物及びそれらの意図される用途に応じて有利となり得る。添加された塩基が、生石灰又は消石灰などのカルシウム塩基である場合、粉末形態又は石灰乳として、又は石灰岩としても、濾過前の石膏の形成が促進され、液相の残留SO3含有量が減少する。
【0064】
別の実施形態において、本発明によるプロセスは、このリン酸塩系精製化合物をこの第1の液相から回収するこの工程の前に、第2の液相における懸濁液中の第2の固形物を含む第2の懸濁液の形成及びこの第2の液相から懸濁液中のこの第2の固形物を分離するためのこの第2の懸濁液の濾過を伴う、濾過後のこの第1の液相への塩基の添加を含み、それによってこの第2のリン酸塩系の精製化合物は、主にフッ化カルシウムである第2の固形物の含有量が低い第1の液相からの第2の液相から回収される。
【0065】
この実施形態では、濾過の前に塩基が添加されている場合、フッ化カルシウムは濾過中に除去され、必要なリン酸塩系の精製化合物がDCP又はMCP及びリン酸であるかどうかに関係なく、第1の固形物に存在する。DCPの生成は、MCPへのカルシウム塩基の添加(中和)に依存し、これにより、フッ化カルシウムが事前に除去されていない場合、フッ化カルシウムが沈殿する。
【0066】
第1の懸濁液の濾過の前に塩基が添加されていない場合、この固形物は本質的に硫酸カルシウム(硫酸カルシウム半水和物、硬石膏又は石膏)、不純物及び非攻撃リン酸塩を含むが、フッ素は依然として第1の液相にある。
【0067】
塩基が、実質的に低下した固形物含有量を特徴とする制御された方法で液相に添加されるが、依然としてフッ素を含む場合、フッ化カルシウムを選択的に除去することができる。この場合、異なる工程を後で検討できる。
【0068】
生成される第2の液相からこうして回収されたリン酸塩系の精製化合物がMCP及び/又はリン酸である場合、第2の液相が回収され、その目的のために処理される。
【0069】
このように生成される第2の液相から回収されたリン酸塩系の精製化合物がDCPである場合、第2の液相は、粉末形態又は石灰乳又は石灰としての、カルシウム塩基、例えば生石灰又は消石灰のその後の添加によって処理される。この場合、低フッ化物含有量を特徴とするカルシウム塩基の第2の液相への添加後に第3の懸濁液が形成され、DCPを含む第3の固相を回収するために濾過される。
【0070】
もちろん、DCPがフッ素を含み得る場合、又は使用されるリン酸塩源がフッ素を含まない場合は、第2の懸濁液は、カルシウム塩基、例えば生石灰、消石灰、石灰粉又は石灰乳又はさらには石灰石の第1の液相への添加によって形成され、これは次いで、一方でDCPを含む第2の固形物と、他方で残留水を形成する第2の液相とを分離するために濾過され、1つ又は複数の攻撃タンクの希釈のためにリン酸塩源の酸攻撃用の硫酸溶液を形成するためにリサイクルできる。この場合、フッ化物を選択的に沈殿させるための塩基の制御された添加は必要ない。
【0071】
特定の好ましい実施形態では、第1の固形物の濾過の前に塩基を添加してフッ化物を沈殿させ、硫酸カルシウム及び非攻撃リン酸カルシウムを有する第1の液相から除去する。次いで、第1の液相は、カルシウム塩基、例えば生石灰又は消石灰、粉末形態又は石灰乳の石灰、又はさらには石灰石を添加することによって続いて処理され、第2の固形物として沈殿DCPを含む第2の懸濁液を形成し、これは次いで、濾過、遠心分離、デカンテーション、又はその他の固液分離法によって第2の懸濁液から回収される。
【0072】
DCPが第1の液相から形成されるか第2の液相から形成されるかに関係なく、化学量論量の上記のカルシウム塩基が、例えば中和反応器において第1の液相又は第2の液相に添加され、好ましくは5~6の範囲の値に制御されたpHで、DCPを沈殿させる。
【0073】
DCPを沈殿させる好ましい方法は、第1の液相又は第2の液相に微粉砕石灰石を添加して、MCP及びリン酸を含む液相を中和することである。中和反応とCO2の放出を完了するために、中和は少なくとも30分間実行されることが好ましい。好ましい実施形態では、5~6の範囲のpH値を得るために、石灰乳が添加されてDCPの完全な沈殿を確実にし、それにより残留液体中のすべてのP2O5を抽出する。
【0074】
より詳細には、本発明によるプロセスにおいて、この第1の液相から分離されるこの固形物は、第1の懸濁液の導入により部分的に又は完全にリサイクルされる。
【0075】
実際、攻撃タンク又は濾過装置のいずれかで、第1の懸濁液の固形物含有量を増やし、その濾過を支援する又は第1の固形物に存在する残留リン酸カルシウムを処理できることが有利であり得る。
【0076】
硫酸カルシウム及び場合によりフッ化カルシウムを含む第1の懸濁液は、第1の液相から第1の固形物を分離するために、任意の液体/固体分離方法、例えば濾過装置、出願人が製造した回転フィルタ、遠心分離、デカンテーション、液体サイクロン、又はバンドフィルタにより回収することが好ましい。第1の液相は、例えば0.05~0.6%、好ましくは0.1~0.25%の範囲のわずかに過剰の硫酸塩を含むP2O5の希釈溶液である。
【0077】
濾過中、濾過装置で水による洗浄を実行し、濾過ケーキの間隙水を移動させ、硫酸カルシウムケーキに残っている微量のP2O5を回収することができる。硫酸カルシウムは洗浄され、分離される。ただし、この操作を実行する前に、硫酸カルシウムは1つ又は複数の攻撃タンクでリサイクルされ、リン酸塩源の攻撃条件が改善され、それによって第1の固形物を形成する硫酸カルシウムの沈殿が改善され、濾過が促進される。
【0078】
したがって、洗浄した硫酸カルシウムの一部を1つ又は複数の攻撃タンクに向けてリサイクルし、硫酸カルシウムの懸濁液密度を懸濁液の総重量に対して10重量%を超えて大幅に増加させることにより、リサイクル操作を想定できる。
【0079】
分離の前に第1の懸濁液の増粘剤を導入することでリサイクルを想定することもでき、これにより、増粘した懸濁液の一部をサンプリングし、1つ又は複数の攻撃タンクに戻すことができる。
【0080】
このリサイクルにより、懸濁液又は1つ又は複数の攻撃タンク内の固形物の密度が増加し、媒体及び/又は攻撃タンクからの硫酸カルシウム過剰飽和の除去が促進され、これは、この懸濁液の制御されない発芽を防ぎ、第1の懸濁液で結晶化した硫酸カルシウム粒子を得ることを可能にする。このリサイクルは、硫酸による鉱物の攻撃反応を妨げる反応も防ぐ。
【0081】
本発明による別の実施形態では、この第2の液相から分離されたこの第2の固形物は、この第1の懸濁液及びこの第2の懸濁液に導入することによりリサイクルされる。好ましくは、この第2の固形物がフッ化カルシウムである場合、それはリサイクルされない。
【0082】
この目的のために、特定の場合では、固形物含有量が低いために濾過が複雑な場合、第1の懸濁液又は第2の懸濁液に第2の固形物を導入することによって固形物含有量を増大させること、例えば結晶化シードを添加することが有利であり得る。
【0083】
実際、DCPが生成されると、DCPを含む懸濁液を濾過又は遠心分離して、DCPを液相から分離する。液相は実質的に水であるため、分離されたDCPケーキを洗浄する必要はなく、液相は有利なことには、硫酸タンクに、パイプに、又は1つ又は複数の攻撃タンクに直接、リサイクルすることができる。場合によっては、第1の液相の精製が適切に行われると、不純物量が減少し、DCPの分離後に回収された液相のリサイクルの実施に有利になる。
【0084】
好ましくは、このリン酸塩源は、乾燥物の総重量(乾燥105℃)に対して少なくとも45重量%、好ましくは40%以下、好ましくは30%以下、好ましくは20%以下、好ましくは10%以下のP2O5を含むリン酸塩を含む有機物又は鉱物として定義される。このリン酸塩源では、カルシウムはリン酸塩、リン酸水素及び/又はリン酸二水素イオンに結合してもしなくてもよい。この供給源は、従来のリン鉱石、P2O5の低含有量のリン鉱石、種々の鉱物又は有機物起源の灰、例えば有機廃棄物の嫌気性消化灰、例えば有機肥料、廃水処理施設の汚泥、堆肥、糞、金属産業から若しくは化学産業からの残留物(リン酸化学、食品化学、廃水施設の汚泥、グアノ、骨灰、肥料、糞、及び有機廃棄物を含む)からなる群から選択できる。
【0085】
別の実施形態では、リン酸塩源はカルシウムを含まない。例えば、この実施形態におけるリン酸塩源のカルシウム含有量は、乾燥物質の総重量(105℃乾燥)に対して5重量%、好ましくは1重量%、さらに好ましくは0.1重量%以下である。これらのリン酸塩源には、リン酸鉄、リン酸アルミニウム又は有機リン酸塩が含まれる。このモードでは、カルシウムを石灰、石灰乳、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、及びおそらくカルシウムを含むリン鉱石として添加できる。硫酸から及び場合によりリン酸塩源からの硫酸塩と添加カルシウムとのモル比は、0.6~0.8の範囲である。
【0086】
一般に、カルシウム欠乏の場合、カルシウムを石灰、石灰乳、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、及び場合によりカルシウムを含むリン鉱石として添加できる。
【0087】
「従来のリン鉱石」という用語は、本発明において、25%を超える典型的なP2O5分析を特徴とし、向上され得る又はされ得ない岩石を説明するために使用される、すなわち岩石の滴定(P2O5)を増加させるためにいくつかの物理化学的処理(粉砕、ふるい、洗浄、浮選)が行われる。
【0088】
本発明では、「P2O5含有量が低いリン鉱石」という用語を使用して、25%未満、好ましくは20%の典型的なP2O5分析を記載する。
【0089】
用語「灰、廃水処理施設からの汚泥、骨灰、肥料、又は原料の総重量に対してP2O5の重量で40重量%以下のリン酸塩含有量を特徴とする任意の原料」は、一般に回収が困難である二次リン酸塩源、例えば廃水処理施設の汚泥からの灰、植物材料(木材、小麦ふすま)、レンダリングプラント(knackery)からの灰、廃棄物又は発電用バイオマスの焼却からの副産物などを記載するために使用される。
【0090】
より具体的には、本発明によるプロセスにおいて、この精製されたリン酸塩系の化合物は、リン酸一カルシウムMCP、リン酸二カルシウムDCP、より具体的には食品グレードのリン酸二カルシウムDCP(ヒト又は動物消費用)、リン酸及びその誘導体、例えばこの第1の液相から直接誘導された酸又はこのDCPから生成されたリン酸である。
【0091】
用語「リン酸二カルシウム(DCP)」は、式CaHPO4の二塩基性リン酸カルシウム又はリン酸二カルシウムを説明するために使用され、無水型(DCPA)又は二水和型(DCPD)であり得る。
【0092】
「食品グレードのリン酸二カルシウム(DCP)」という用語は、動物の消費(特に飼料グレード及びペットフードの観点から)、人間の消費、及び歯科及び口腔ケア業界向けの任意のDCPであると理解される。
【0093】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態において、第2の液相は、攻撃タンクに導入することによりリサイクルされる。
【0094】
本発明によるプロセスの他の実施形態は添付の特許請求の範囲に示されている。
【0095】
本発明はまた、このリン酸二カルシウムの総重量に対して0.025重量%以下の塩化物含有量、及び/又はこのリン酸二カルシウムの総重量に対して2重量%以下のフッ化物含有量、及び/又はこのリン酸二カルシウムの総重量に対して0.15重量%以下のNa2Oの含有量を特徴とする、無水物形態又は二水和物形態のリン酸二カルシウムDCPに関する。
【0096】
より詳細には、本発明は、このリン酸二カルシウムの総重量に対して0.02重量%以下の塩化物含有量、及び/又はこのリン酸二カルシウムの総重量に対して1重量%以下のフッ化物含有量を特徴とする、特に動物飼料のための添加剤として、無水物形態又は二水和物形態のリン酸二カルシウムDCPに関する。
【0097】
代替的には、本発明は、このリン酸二カルシウムの総重量に対して0.02重量%以下の塩化物含有量を特徴とする無水物形態又は二水和物形態の、より詳細には肥料成分として又はリン酸を生成する目的のために攻撃されるリン酸塩源としてのリン酸二カルシウムDCPに関する。
【0098】
本発明によるリン酸二カルシウムの他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に示されている。
【0099】
本発明はまた、このリン酸二カルシウムの総重量に対して0.02重量%以下の塩化物含有量、及びこのリン酸二カルシウムの総重量に対して1重量%以下のフッ化物含有量を特徴とする、動物飼料における、特に飼料グレード(牛、家禽、養殖、養豚)及びペット用の、本発明による、無水物形態又は二水和物形態のリン酸二カルシウムDCPの使用に関する。
【0100】
本発明は、このリン酸二カルシウムの総重量に対して0.02重量%以下の塩化物含有量を特徴とする無水物形態又は二水和物形態の、より詳細には肥料成分として又はリン酸を生成するための、本発明による、リン酸塩源としてのリン酸二カルシウムDCPの使用に関する。
【0101】
本発明はまた、本発明によるプロセスによって得られる、無水形態又は二水和形態のリン酸二カルシウムDCPに関する。
【0102】
有利には、本発明によるプロセスによって得られる無水物形態又は二水和物形態のリン酸二カルシウムDCPは、このリン酸二カルシウムの総重量に対して0.025重量%以下の塩化物含有量、及び/又はこのリン酸二カルシウムの総重量に対して2重量%以下のフッ化物含有量、及び/又はこのリン酸二カルシウムの総重量に対して0.15重量%以下のNa2Oの含有量を特徴とする。
【0103】
より詳細には、本発明によるプロセスにより得られる無水又は二水和形態のリン酸二カルシウムDCPは、このリン酸二カルシウムの総重量に対して0.02重量%以下の塩化物含有量を特徴とする。
【0104】
有利には、本発明によるプロセスにより得られる無水又は二水和形態のリン酸二カルシウムDCPは、このリン酸二カルシウムの総重量に対して1重量%以下のフッ化物含有量を特徴とする。
【0105】
本発明の他の特徴、詳細及び利点は、例を参照して以下に与えられる説明から明らかになるが、それらに限定されない。
【0106】
本発明によるプロセスは、競争力のあるプロセスの実施を可能にする一連の利点を特徴とする。実際、希硫酸又はリサイクルされた硫酸の総重量に対して、例えば14%未満、好ましくは0.5~10%、特に1~7%、より詳細には2~5%、より詳細には3~4重量%の濃度の希硫酸を使用することが可能になり、これにより、原材料のコストが削減される。P2O5の含有量が低い岩石又は二次リン源などの様々なリン酸塩源を攻撃するために使用できる。
【0107】
例えば0.68~0.8の間のSO4/Ca比を有する本発明による準化学量論的条件で作業することにより、H2SO4の20~25%の節約と有利には85%超過、好ましくは90%超過の抽出効率とを達成することが可能である。
【0108】
攻撃時間は比較的短く、90分以下、例えば30~60分である。
【0109】
攻撃温度はまた、従来の攻撃プロセスに対しても比較的低く、例えば75℃~95℃の従来の温度と比較して、40℃~60℃であり、良好なエネルギーの節約を達成することができる。
【0110】
第1の懸濁液中の液相中のP2O5の含有量は、好ましくは、第1の液相の総重量に対して1~5%、特に1.5~3.5%、さらには2~3重量%の範囲である。
【0111】
本発明によるプロセスはさらに、リン酸塩源に含まれるこれらの元素の初期重量に対して50%超過、好ましくは60重量%超過のAs、Al、U、Th、及びNaの精製率を達成するために使用することができる。
【0112】
より詳細には、本発明は、例えば、本発明のプロセスにより得られ、ヒト又は動物が消費する食品への適用に適した塩化物及びフッ化物含有量、すなわちDCPの総重量に対して、0.025%未満の塩化物含有量及びさらには1ppm程度に達する低い含有量並びに2%未満のフッ化物含有量及びさらには0.1重量%に達する低い含有量を特徴とするDCPに関するが、これらに限定されない。
【0113】
好ましくは、DCPは、高度に希釈された硫酸攻撃のために、残留SO3の含有量が低い。Na2O含有量はまた、特定の実施形態ではDCPの総重量に対して0.15重量%未満である。
【0114】
有利なDCP生成物では、MgO含有量はまたDCPの総重量に対して1重量%未満である。
【0115】
より詳細には、本発明による有利なDCPは、DCPに関して、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、より詳細には10ppm未満、より詳細には1ppm未満のSr含有量を特徴とする。
【0116】
本発明によるDCPはさらに、DCPに対して典型的には5ppm未満のTh含有量を特徴とする。
【0117】
同様に、本発明によるDCP中のMn含有量は、DCPに対して10ppm未満である。
【0118】
典型的には、本発明によるDCPのMo含有量は、DCPに対して2ppm未満である。
【0119】
最後に、本発明によるDCPは、好ましくは、32ppm未満のU3O8含有量を特徴とする。
【0120】
本発明の別の目的は、
a)リン酸二カルシウムの総重量に対して40重量%以上のCaO含有量、
b)リン酸二カルシウムの総重量に対して0.020重量%以下の塩化物含有量、
c)リン酸二カルシウムの総重量に対して2重量%以下のフッ化物含有量、
d)リン酸二カルシウムの総重量に対して0.15重量%以下のNa2O含有量
を含むリン酸二カルシウムDCP組成物を作成することである。
【0121】
以上のように、本発明によるDCPは、人間及び動物の食料品、及び技術的用途で使用されるために必要な品質を特徴とする。
【実施例】
【0122】
[例1]<実験室規模でのリン酸塩源の攻撃>
リン酸塩源の重量に対して、30.5gのP2O5、49.5重量%のCaO当量、3.95重量%のフッ素、0.308重量%のFe2O3当量、0.547重量%のAl2O3当量、及び0.303重量%のMgO(当量)を含むリン酸塩源(リン鉱石)100gを、30分の攻撃期間の間、60℃の攻撃温度にて、0.8のSO4/Caモル比で2%の濃度に希釈した硫酸と接触させる。SO4/Caモル比は、攻撃タンクの入口でCaを含むリン酸塩源の攻撃に必要な酸の量を定義する。
【0123】
添加剤を添加したら、組成物を半時間撹拌してから濾過する。
【0124】
次いで、懸濁液をブフナー漏斗で真空濾過する。このようにして得られた様々な量を記録し、リン酸カルシウム及び液相生成物を分析する。
【0125】
実験室のプロトコルでは、これは洗浄のないバッチプロセスである。しかし、洗浄が外挿され、濾過ケーキの含浸液中のP2O5の量が計算された。
【0126】
攻撃収率は、次の計算で計算される、(濾液中のP2O5の質量+濾過ケーキの含浸液中のP2O5の質量)/(リン酸塩源中のP2O5の総質量)。含浸液のP2O5含有量は、工業プロセスでケーキを洗浄することで回収できるP2O5に相当する。
【0127】
添加された希硫酸の量は、70.2gのSO4含有量に対して3499gである。リン酸塩源のカルシウム含有量のため、SO4/Ca比は0.8である。
【0128】
回収された液相は、3125gの重量に対して3.09リットルの体積及び2.1のpHを有する。液相中のP2O5含有量は0.83%であり、SO3含有量は液相の総重量に対して0.16重量%である。含浸液中のP2O5の質量は1.2gである。
【0129】
第1の溶液中のCaO/P2O5モル比は0.58であり、一方、液相中の残留CaO含有量は、液相の重量に対して0.19重量%である。
【0130】
P2O5の攻撃の収率は89%である。以上のように、2%の低濃度の硫酸を使用し、総攻撃時間はわずか30分である準化学量論的攻撃条件にもかかわらず、P2O5の攻撃収率は非常に高い。
【0131】
[例2]<実験室規模でのリン酸塩源の攻撃>
リン酸塩源の重量に対して、15.8gのP2O5、27.6重量%のCaO当量、2.2重量%のフッ素、2.37重量%のFe2O3当量、2.88重量%のAl2O3当量、及び0.416重量%のMgO(当量)を含むリン酸塩源(リン鉱石)150gを、例1のプロトコルに従って、30分の攻撃期間の間、40℃の攻撃温度にて、0.8のSO4/Caモル比で5%の濃度に希釈した硫酸と接触させる。
【0132】
添加された希硫酸の量は、61.0gのSO4含有量に対して1131gである。リン酸塩源のカルシウム含有量のため、SO4/Ca比は0.8である。
【0133】
回収された液相は、重量976gに関して0.955リットルの体積及び1.8のpHを有する。液相のP2O5含有量は1.97%であり、SO3含有量は液相の総重量に対して0.27重量%である。含浸液中のP2O5の質量は3.24gである。
【0134】
第1の溶液中のCaO/P2O5モル比は0.43であり、一方、液相中の残留CaO含有量は、液相の重量に対して0.33重量%である。
【0135】
P2O5での攻撃の収率は95%である。以上のように、5%の低濃度の硫酸及び非常に低いリン酸塩含有量を有するリン酸塩源を使用し、総攻撃時間はわずか30分である準化学量論的攻撃条件にもかかわらず、P2O5の攻撃収率は非常に高い。
【0136】
[例3]<実験室規模でのリン酸塩源の攻撃>
リン酸塩源の重量に対して、30.5gのP2O5、49.5重量%のCaO当量、3.95重量%のフッ素、0.308重量%のFe2O3当量、0.547重量%のAl2O3当量、及び0.303重量%のMgO(当量)を含むリン酸塩源(リン鉱石)100gを、例1のプロトコルに従って、30分の攻撃期間の間、60℃の攻撃温度にて、0.8のSO4/Caモル比で5%の濃度に希釈した硫酸と接触させる。
【0137】
添加された希硫酸の量は、70.1gのSO4含有量に対して1398gである。リン酸塩源のカルシウム含有量のため、SO4/Ca比は0.8である。
【0138】
回収された液相は、重量1161gに関して1.13リットルの体積及び2.2のpHを有する。液相のP2O5含有量は2%であり、SO3含有量は液相の総重量に対して0.20重量%である。含浸液中のP2O5の質量は2.6gである。
【0139】
第1の溶液中のCaO/P2O5モル比は0.38であり、一方、液相中の残留CaO含有量は、液相の重量に対して0.30重量%である。
【0140】
P2O5での攻撃の収率は85%である。以上のように、5%の低濃度の硫酸を使用し、総攻撃時間はわずか30分である準化学量論的攻撃条件にもかかわらず、P2O5の攻撃収率は非常に高い。
【0141】
[比較例1]<実験室規模でのリン酸塩源の攻撃>
リン酸塩源の重量に対して、30.5gのP2O5、49.5重量%のCaO当量、3.95重量%のフッ素、0.308重量%のFe2O3当量、0.547重量%のAl2O3当量、及び0.303重量%のMgO(当量)を含むリン酸塩源(リン鉱石)100gを、例1のプロトコルに従って、30分の攻撃期間の間、60℃の攻撃温度にて、ただしこの場合は1のSO4/Caモル比で5%の濃度に希釈した硫酸と接触させる。
【0142】
添加された希硫酸の量は、87.2gのSO4含有量に対して1747gである。リン酸塩源のカルシウム含有量のため、SO4/Ca比は1である。
【0143】
回収された液相は、重量1429gに関して1.4リットルの体積及び2.1のpHを特徴とする。液相のP2O5含有量は1.63%であり、SO3含有量は液相の総重量に対して0.61重量%である。含浸液中のP2O5の質量は3.5gである。
【0144】
第1の溶液中のCaO/P2O5モル比は0.26であり、一方、液相中の残留CaO含有量は、液相の重量に対して0.17重量%である。
【0145】
P2O5での攻撃の収率は88%である。化学量論的条件下での比較例に見られるように、硫酸の比消費量は、攻撃収率が同様のレベルの場合に大きくなる。中和に必要なカルシウム源の消費もより重要である。
【0146】
[例4]<パイロットプロジェクトの規模でのリン鉱石の準化学量論的攻撃>
パイロットプロジェクトは、油で加熱された二重シェルで温度調節された3つの撹拌タンクで構成される。タンクは連続したオーバーフロータンクであり、最初の2つのタンクの容量は20リットルであり、3番目のタンクの容量は30リットルであり、濾過前のバッファとしてのみ機能する。
【0147】
10リットルの水が第1のタンクに注がれ、作用温度に加熱される。リン酸塩源及び希硫酸は、必要な攻撃条件(SO4/CaO比、リン酸塩源の攻撃のための攻撃期間H2SO4濃度、攻撃タンク内のP2O5含有量)に対応するフローで第1の反応器に添加される。
【0148】
生成された懸濁液は、第2の反応器にオーバーフローする。第2の反応器は、濾過の前に中和を実行するように構成される。濾過前の中和は体系的に実行されない。
【0149】
懸濁液は最終的に、濾過ユニットに供給する第3の反応器にオーバーフローする。
【0150】
懸濁液の量は30分ごとに濾過される。2種類の濾過が交互に実行される。
<攻撃反応器でのリサイクル目的の濾過>:
濾過ケーキは洗浄されず、第1の(攻撃)反応器でリサイクルされ、反応媒体中の固体の割合が増加する。液相(濾液)をバットに注ぎ、中和及びDCP生成工程のために保管される。この濾過工程は、確かに工業規模では必要ではない。当然、実行できるが、必須ではない。パイロットプロジェクト規模では、攻撃反応器内の固形物含有量を増やすことが好ましいため、この工程を有利に実行できる。
【0151】
<硫酸カルシウムの生成のための濾過>:
この場合、硫酸カルシウムのケーキを所定量の水で洗浄して、含浸液に含まれるP2O5を回収する。液相及び洗浄濾液を濾液回収バットに注ぐ。硫酸カルシウムは、排出のためにアンロードされる。
【0152】
設備は安定した状態にあり、硫酸カルシウム及び液相(濾液)のサンプルが分析のために収集され、様々な生成物も分析される。
【0153】
収率は次のように計算される:液相のP2O5の質量(g/h)/リン酸塩源のP2O5の質量(g/h)。
【0154】
リン酸塩源の重量に対して、30.3重量%のP2O5、47.6重量%のCaO当量、3.68重量%のフッ素、0.144重量%のFe2O3当量、0.18重量%のAl2O3当量、及び0.542重量%のMgO(当量)を含む岩石の形態のリン酸塩源を、希釈酸の重量に対して10重量%に希釈した硫酸の存在下、0.8のSO4/Caモル比で攻撃タンクに添加する。攻撃温度は60℃で、攻撃時間は約1時間である。攻撃タンクのpHは2.04である。岩石のフローは2.67kg/hで、酸のフローは17.5リットル/hである。攻撃懸濁液のP2O5含有量は、懸濁液の総重量に対して4.5重量%である。
【0155】
濾過中、回収された液相のフローは16.13kg/hである。
【0156】
攻撃収率は93%である。
【0157】
以上のように、実験室試験はパイロットプロジェクトによって確認されており、希硫酸の存在下で、攻撃タンク内の低P2O5含有量(<6%)及び短時間の攻撃期間の条件でのリン鉱石の攻撃収率は、準化学量論的条件が実施されている場合に特に高い。
【0158】
[例5]<パイロットプロジェクトの規模でのリン鉱石の準化学量論的攻撃>
使用されるパイロットは例4と同じであり、例4と同じプロセスが実施される。
【0159】
例4と同じリン酸塩源を、希釈酸の重量に対して5重量%に希釈された硫酸の存在下、0.7のSO4/Caモル比で、リン酸塩源のカルシウム含有量のために、攻撃タンクに添加する。攻撃温度は60℃で、攻撃時間は約1時間である。攻撃タンクのpHは2.5である。岩石のフローは3kg/hであり、酸フローは35.6リットル/hである。攻撃懸濁液のP2O5含有量は、懸濁液の総重量に対して2,32重量%である。
【0160】
濾過中、回収された液相のフローは35.44kg/hである。
【0161】
攻撃収率は94%である。
【0162】
以上のように、例4に関しては、2倍に希釈した硫酸の存在にもかかわらず、P2O5の収率はさらに高い。
【0163】
[例6]<パイロットプロジェクトの規模でのリン鉱石の準化学量論的攻撃>
例4と同じパイロットが使用され、例4と同じプロセスが実施されるが、ただし、第2の反応器、つまり濾過前の中和反応器では、Ca(OH)2石灰乳を添加することによってpH2.48に調整されている。
【0164】
リン酸塩源の重量に対して、34.9重量%のP2O5、49.8重量%のCaO当量、3.78重量%のフッ素、0.136重量%のFe2O3当量、0.386重量%のAl2O3当量、及び0.156重量%のMgO(当量)を含む岩石の形態のリン酸塩源を、希釈酸の重量に対して5重量%に希釈した硫酸の存在下、リン酸塩源のカルシウム含有量により0.8のSO4/Caモル比で、攻撃タンクに添加する。攻撃温度は60℃で、攻撃時間は約1時間である。攻撃タンクのpHは2である。岩石のフローは2.6kg/hであり、酸フローは35.7リットル/hである。攻撃懸濁液のP2O5含有量は、懸濁液の総重量に対して2.10重量%である。
【0165】
濾過中、回収された液相のフローは38.22kg/hである。
【0166】
攻撃収率は92%である。
【0167】
[例7]<パイロットプロジェクトの規模でのリン鉱石の準化学量論的攻撃>
使用されるパイロットは例4と同じであり、例4と同じプロセスが実施される。
【0168】
リン酸塩源の重量に対して、24.90重量%のP2O5、40.5重量%のCaO当量、2.54重量%のフッ素、3.97重量%のFe2O3当量、1.13重量%のAl2O3当量、及び1.88%のMgO(当量)を含む岩石の形態のリン酸塩源を、希釈酸の重量に対して5重量%に希釈した硫酸の存在下、リン酸塩源のカルシウム含有量により0.8のSO4/Caモル比で、攻撃タンクに添加する。攻撃温度は60℃で、攻撃時間は約1時間である。攻撃タンクのpHは1.95である。岩石のフローは3.19kg/hであり、酸フローは34.5リットル/hである。攻撃懸濁液中のP2O5含有量は、懸濁液の総重量に対して1.82重量%である。
【0169】
濾過中、回収された液相のフローは37.91kg/hである。
【0170】
攻撃収率は90%である。
【0171】
[例8]<パイロットプロジェクトの規模でのリン鉱石からのDCPの生成>
DCPの生成では、岩石の攻撃を実行するために実装されたパイロットが、第1の攻撃で切り離された方法で使用される。したがって、機器のアイテムは順次使用される。
【0172】
使用されるパイロットは、例4と同じである。この例では、例7の濾過から回収された液相を処理して、次の方法で中和することによりDCPを沈殿する、
例7から回収された液相も導入される反応器の名目上のフローに生石灰(又は石灰石)が添加され、pHが定期的に制御される。
【0173】
pHが5.5/6になったら、濾液供給ポンプを起動させる。pHは定期的に制御され、石灰石又は生石灰の供給フローはpHを5.5~6に維持するように適合される。
【0174】
濾過は、バッファタンクから30分ごとに行われる。2回ごとに、硫酸カルシウムを含む濾過ケーキが第1の攻撃反応器でリサイクルされ、反応媒体中の固形物の割合が増加する。
【0175】
沈殿したDCPを含む生成ケーキを回収し、母液をタンクに保管する。生成物サンプル(DCP及び母液)は分析のために収集される。
【0176】
中和温度は60℃で、第1のタンクのpHは4.4であるが、第2のタンクでは5.55に達する。生石灰のフローは1.05kg/hである。
【0177】
DCPの沈殿収率は式(MCP溶液及び酸に最初に存在するDCP/P2O5でのP2O5含有量)で計算され、操作のP2O5バランスは92%である。
【0178】
[比較例2]<パイロットプロジェクトの規模でのリン鉱石の準化学量論的攻撃>
使用されるパイロットは例4と同じであり、例4と同じプロセスが実施される。
【0179】
例4と同じリン酸塩源を、酸の重量に対して20重量%の硫酸の存在下、リン酸塩源のカルシウムのために0.8のSO4/Caモル比で、攻撃タンクに添加する。攻撃温度は60℃で、攻撃時間は約1時間である。攻撃タンクのpHは1.73である。岩石のフローは5kg/hであり、酸フローは15.6リットル/hである。攻撃懸濁液中のP2O5含有量は、懸濁液の総重量に対して7.10重量%である。
【0180】
濾過中、回収された液相のフローは13.3kg/hである。
【0181】
攻撃収率は65%である。
【0182】
以上のように、例4に関して、高濃度の硫酸及び6%を超えるP2O5含有量が存在すると、収率が65%に低下する。
【0183】
本発明は、上述の実施形態に決して限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの修正を行うことができることが理解される。