(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】アレイ通信装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20240111BHJP
G01R 29/26 20060101ALI20240111BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20240111BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20240111BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240111BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H04B7/06 982
G01R29/26 F
G01R35/00 K
H01Q3/36
H01Q21/06
H04B7/08 982
(21)【出願番号】P 2020519861
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2019019152
(87)【国際公開番号】W WO2019221130
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2020-10-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018095602
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、総務省「CMOSミリ波帯フェーズドアレイ無線機の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】大島 直樹
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】高野 洋
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6320540(US,B1)
【文献】特開2006-94423(JP,A)
【文献】米国特許第6356233(US,B1)
【文献】特開2006-304205(JP,A)
【文献】特開2004-320367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/02-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号処理部へ共通に接続される複数のアレイ部であって、前記アレイ部はそれぞれアンテナ、増幅器、及び移相器を有する複数のアレイ部を含み、
前記アレイ部の前記アンテナと前記増幅器との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第1方向性結合器と、
前記アレイ部の前記移相器と前記信号処理部との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第2方向性結合器と、
前記第1方向性結合器及び前記第2方向性結合器からの信号の少なくとも一つと位相の基準となる信号とが入力されて位相を比較し、位相の校正を行う位相比較手段と、をさらに含み、
前記複数のアレイ部はそれぞれ、
前記第1方向性結合器と前記第2方向性結合器との間に配置され、前記第1方向性結合器から前記位相比較手段への経路と前記第2方向性結合器から前記位相比較手段への経路とを切り替える第1スイッチをさらに含むアレイ通信装置。
【請求項2】
前記第2方向性結合器は、前記アレイ部の前記移相器と前記信号処理部との間の前記アレイ部に配置されて信号を分岐又は合流させる、請求項1に記載のアレイ通信装置。
【請求項3】
前記複数のアレイ部のうち一つのアレイ部の第1方向性結合器と、前記複数のアレイ部のうち他の一つのアレイ部の第1方向性結合器との間に配置された第2スイッチをさらに含む、請求項2に記載のアレイ通信装置。
【請求項4】
前記複数のアレイ部のうち一つのアレイ部の第1方向性結合器と前記アンテナとの間に配置されて信号を分岐又は合流させる第3方向性結合器をさらに含む、請求項2に記載のアレイ通信装置。
【請求項5】
前記位相の基準となる信号を出力する信号発生器をさらに含み、
前記信号発生器から前記アレイ部の前記第3方向性結合器までの経路長さは、前記複数のアレイ部の一つのアレイ部と他の一つのアレイ部とで同一である、請求項4に記載のアレイ通信装置。
【請求項6】
前記位相比較手段は、前記複数のアレイ部のうち一つのアレイ部の、前記位相の基準となる信号が供給されて前記増幅器及び前記移相器を経た、前記第2方向性結合器からの信号と、前記複数のアレイ部のうち他の一つのアレイ部の、前記位相の基準となる信号が供給されて前記増幅器及び前記移相器を経た、前記第2方向性結合器からの信号とを入力して位相を比較する、
請求項1に記載のアレイ通信装置。
【請求項7】
前記位相の基準となる信号を出力する信号発生器をさらに含み、
前記信号発生器から前記アレイ部の前記第1方向性結合器までの経路長さは、前記複数のアレイ部の一つのアレイ部と他の一つのアレイ部とで同一である、
請求項1又は請求項6に記載のアレイ通信装置。
【請求項8】
信号処理部へ共通に接続される複数のアレイ部であって、前記アレイ部はそれぞれアンテナ、増幅器、及び移相器を有する複数のアレイ部と、
前記アレイ部の前記アンテナと前記増幅器との間に配置されて信号を分岐させる第1方向性結合器と、
前記アレイ部の前記移相器と前記信号処理部との間の前記アレイ部に配置され信号の一部を分岐させる第2方向性結合器と、
位相比較手段と、を含み、
前記複数のアレイ部はそれぞれ、
前記第1方向性結合器と前記第2方向性結合器との間に配置され、前記第1方向性結合器から前記位相比較手段への経路と前記第2方向性結合器から前記位相比較手段への経路とを切り替える第1スイッチをさらに含むアレイ通信装置の制御方法であって、
前記第1方向性結合器及び前記第2方向性結合器からの信号の少なくとも一つと位相の基準となる信号とが入力されて前記位相比較手段が位相を比較し、比較結果に基づいて位相の校正を行うアレイ通信装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ通信装置、及びその制御方法に関し、特にアレイ通信装置内の位相校正方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信の急速な普及に伴い、無線通信に使用される周波数帯の不足が問題となっている。周波数帯を有効に利用する技術の1つとして、ビームフォーミングが挙げられる。ビームフォーミングは、指向性を有する電波を放射することで、所定の通信対象の無線通信を可能にする技術であり、信号の品質を保ちつつ、他の無線システムなどへの干渉を抑えることのできる技術である。
【0003】
ビームフォーミングを実現する代表的な手法として、フェーズドアレイが挙げられる。フェーズドアレイは、送信機において複数のアンテナ素子に給電される無線信号の位相を調整し、各アンテナ素子から放射される電波を空間において合成することによって、所望の方向の信号を強める技術である。送信機において複数のアンテナ素子に給電される無線信号の位相を調整するためには、基板配線等に起因する位相のバラつきを校正する必要があり、送信機内で生じる位相変化や振幅変化を正確にモニタする必要がある。
【0004】
特許文献1、特許文献2には、関連する技術として、フェーズドアレイに関する技術が開示されている。
【0005】
ところで、フェーズドアレイの技術を用いる送受信機の送信機で生じる位相変化や振幅変化をモニタする1つの手段として、ループバックを用いる技術が挙げられる。ループバックを用いる技術とは、送信機の出力信号の一部を、受信機に入力することによって位相変化や振幅変化をモニタする技術である。ループバックの技術を用いる送受信機の送信機で生じる位相変化や振幅変化を正確にモニタするためには、ループバックの技術を用いる送受信機の受信機において、アンテナ素子間の位相差や振幅差を正確に校正する必要がある。特許文献3はフェーズドアレイに関するものではないが、無線装置の高周波信号送信手段が送信した高周波信号を高周波信号受信手段にループバックする技術が、提案されている。
【0006】
一方、フェーズドアレイはアンテナ素子を複数個必要とするため、仮にアンテナ素子1つにつき1組の送受信機を接続する構成である場合、アンテナ素子の個数分だけ送受信機が必要となり、通信装置全体のサイズが大きくなり、また装置コストが高くなるという課題がある。
【0007】
これに対し、送受信で増幅器などを共有するBi-Directional構成が存在する。非特許文献1では、単一の増幅器と4つのスイッチとを組み合わせることにより、送受信で増幅器などを共有したBi-Directional Amplifier(BDA)が提案されている。また非特許文献1が提案するBi-Directional構成の増幅器では、例えば送信機の電力増幅器(PA: Power Amplifier)と受信機の低雑音増幅器(LNA: Low Noise Amplifier)を一体化できるなど、省サイズ化が見込める。
【0008】
図5は、背景技術のアレイ通信装置を説明するためのブロック図であり、背景技術のBi-Directional構成の増幅器を用いたフェーズドアレイを示す。
図5のアレイ通信装置は、第1アレイ部1004、第2アレイ部1008などの複数のアレイ部と、制御部1009を含む。第1アレイ部1004はアンテナ1001、増幅器1002、移相器1003を含み、第2アレイ部1008はアンテナ1005、増幅器1006、移相器1007を含む。制御部1009は、複数のアレイ部の増幅器1002、増幅器1006などの増幅器と、複数のアレイ部の移相器1003、移相器1007などの移相器を制御する。第1アレイ部1004の出力と、第2アレイ部1008の出力とは、図示しない信号処理部へ送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2001-330660号公報
【文献】国際公開第2016/167145号
【文献】国際公開第2015/145993号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Moon-Kyu Cho et al., "A Switchless CMOS Bi-Directional Distributed Gain Amplifier With Multi-Octave Bandwidth", IEEE Microwave and Wireless Components Letters, Vol. 23, No. 11, pp.611-613, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述したアレイ通信装置には以下のような課題がある。Bi-Directional構成のアレイ通信装置では送受信で増幅器などを共有するため、送受信を同時に行うことはできない。すなわち、アレイ通信装置のアレイ間の位相校正にループバックなどを用いることができない。
【0012】
仮に
図5のアレイ通信装置において、第1アレイ部1004を送信側とし、第2アレイ部1008側を受信側としたループバックを行うとする。この場合、第1アレイ部1004と第2アレイ部1008との間というアレイ間の信号経路を追加するか、アンテナ1001とアンテナ1005を介する必要がある点を除いたとしても、増幅器1002から送信された信号を増幅器1006で受信した場合、受信された信号が分配器を通って再び増幅器1002で増幅され、結果として発振が起きてしまう。このため
図5の構成のアレイ通信装置では、アレイ間の位相校正にループバックを用いることができない、という課題がある。
【0013】
本発明の目的は、Bi-Directional構成の増幅器を有する複数のアレイ間で位相校正を可能にするアレイ通信装置、及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明に係るアレイ通信装置は、信号処理部へ共通に接続される複数のアレイ部であって、上記アレイ部はそれぞれアンテナ、増幅器、及び移相器を有する複数のアレイ部を含み、
上記アレイ部の上記アンテナと上記増幅器との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第1方向性結合器と、
上記アレイ部の上記移相器と上記信号処理部との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第2方向性結合器と、
上記第1方向性結合器及び上記第2方向性結合器からの信号の少なくとも一つと位相の基準となる信号とが入力されて位相を比較し、位相の校正を行う位相比較手段と、をさらに含む。
【0015】
本発明に係るアレイ通信装置の制御方法は、信号処理部へ共通に接続される複数のアレイ部であって、上記アレイ部はそれぞれアンテナ、増幅器、及び移相器を有する複数のアレイ部と、
上記アレイ部の上記アンテナと上記増幅器との間に配置されて信号を分岐させる第1方向性結合器と、
上記アレイ部の上記移相器と上記信号処理部との間の上記アレイ部に配置され信号の一部を分岐させる第2方向性結合器と、を含むアレイ通信装置の制御方法であって、
上記第1方向性結合器及び上記第2方向性結合器からの信号の少なくとも一つと位相の基準となる信号とが入力されて位相を比較し、比較結果に基づいて位相の校正を行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、Bi-Directional構成の増幅器を有する複数のアレイ部を含むアレイ通信装置において、アレイ間の位相校正を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の上位概念による実施形態のアレイ通信装置の一例を説明するためのブロック図である。
【
図2】第1実施形態のアレイ通信装置を説明するためのブロック図である。
【
図3】第2実施形態のアレイ通信装置を説明するためのブロック図である。
【
図4】第3実施形態のアレイ通信装置を説明するためのブロック図である。
【
図5】背景技術のアレイ通信装置を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。より具体的な実施形態を説明する前に、上位概念による実施形態のアレイ通信装置、及びその制御方法について説明する。
図1は、上位概念による実施形態のアレイ通信装置の一例のブロック図である。
【0019】
(構成の説明)
図1のアレイ通信装置は、信号処理部110へ共通に接続される第1アレイ部104及び第2アレイ部108であって、共にアンテナ、増幅器、移相器を含む第1アレイ部104及び第2アレイ部108を含む。
図1では、第1アレイ部104はアンテナ101、増幅器102、移相器103を含み、第2アレイ部108はアンテナ105、増幅器106、移相器107を含む。
【0020】
さらに
図1のアレイ通信装置は、第1アレイ部104又は第2アレイ部108のアンテナと増幅器との間から分岐した信号と、位相の基準となる信号との位相を比較する第1位相比較器の一例としての位相比較器202を含む。さらに
図1のアレイ通信装置は、第1アレイ部104又は第2アレイ部108のアンテナと増幅器との間から分岐した信号と、第1アレイ部104及び第2アレイ部108と信号処理部110との間から分岐した信号との位相を比較する第2位相比較器の一例として位相比較器204を含む。
【0021】
さらに
図1のアレイ通信装置は、位相比較器202又は位相比較器204へ、上記位相の基準となる信号を出力する信号発生器203を含む。さらに
図1のアレイ通信装置は、第1アレイ部104又は第2アレイ部108のアンテナと増幅器との間から分岐した信号の出力先を、位相比較器202又は位相比較器204へと切り替えるSingle-Pole/Double-Throw Switch(単極双投スイッチ)201を含む。単極双投スイッチを以下では、SPDTスイッチと呼ぶ。
【0022】
さらに
図1のアレイ通信装置は、第1アレイ部104の増幅器102及び移相器103と、第2アレイ部108の増幅器106及び移相器107と、信号発生器203を制御する制御部109と、を含む。制御部109は、第1アレイ部104の増幅器102及び移相器103と、第2アレイ部108の増幅器106及び移相器107と、信号発生器203の動作或いは停止などをそれぞれ制御する。
【0023】
なお
図1のアレイ通信装置が信号発生器203を含むものとして説明しているが、アレイ通信装置が信号発生器を含まずに、位相の基準となる信号がアレイ通信装置の外部から供給されるよう構成されてもよい。
【0024】
(動作の説明)
次に、
図1のアレイ通信装置の動作のうち、位相校正の動作を説明する。
【0025】
まず
図1のアレイ通信装置の送信の位相校正を行う場合を述べる。位相校正時、第1アレイ部104、第2アレイ部108に送信される信号は移相器103、移相器107及び増幅器102、増幅器106を通って、アンテナ101、アンテナ105から送信される。一部の信号、すなわちアンテナ101と増幅器102との間から分岐した信号、又はアンテナ105と増幅器106との間から分岐した信号を、分配/合成器を経由してSPDTスイッチ201に出力する。
【0026】
この送信の位相校正の際、SPDTスイッチ201は入力信号を位相比較器202へ出力する(
図1の下側の接点Bへと出力)。信号発生器203は、位相の基準となる既知の信号を送信する。位相比較器202が、アンテナ101と増幅器102との間から分岐した信号、又はアンテナ105と増幅器106との間から分岐した信号と、信号発生器203からの位相の基準となる信号とを比較することで、各アレイ間の位相差を検出できる。
【0027】
次に
図1のアレイ通信装置の受信の位相校正を行う場合を述べる。位相校正時、信号発生器203からの位相の基準となる既知の信号をSPDTスイッチ201に出力する。この受信の位相校正の際、SPDTスイッチ201は信号発生器203からの上記位相の基準となる信号を、第1アレイ部104及び第2アレイ部108へ送信する(
図1の上側の接点Aに導通させる)。第1アレイ部104、第2アレイ部108で受信された信号は増幅器102、増幅器106及び移相器103、移相器107などを通って、信号処理部110へ出力される。
【0028】
この第1アレイ部104及び第2アレイ部108と信号処理部110との間から分岐した信号と、信号発生器203からの位相の基準となる既知の信号を位相比較器204へ入力することで、信号を比較する。これにより各アレイ間の位相差を検出できる。受信の位相校正には、位相比較器202は用いていないため停止していてもよい。なお信号発生器203の信号がアンテナ101やアンテナ105から送信されないように、アンテナ101、105の前段にスイッチを設けてもよい。
【0029】
(効果の説明)
図1のアレイ通信装置によれば、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の送信動作及び受信動作のそれぞれについて、アレイ間の位相・振幅校正ができる。特に位相比較器202と、位相の基準となる既知の信号を送信する信号発生器203とを用いることにより、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の送信動作の位相校正ができ、位相比較器204と信号発生器203とを用いることにより、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の受信動作の位相校正ができる。
【0030】
このような構成を備えることにより、アレイ間の位相・振幅校正が可能な、Bi-Directional構成のアレイ通信装置について、装置サイズを縮小できる。以下、より具体的な実施形態について説明する。
【0031】
〔第1実施形態〕
次に、第1実施形態によるアレイ通信装置、及びその制御方法について、説明する。
図2は、第1実施形態のアレイ通信装置を説明するためのブロック図である。なお
図1のアレイ通信装置と同様な要素には同じ参照番号を付して、その詳細な説明を省略することとする。
【0032】
(構成の説明)
図2のアレイ通信装置は、信号処理部へ共通に接続される第1アレイ部104及び第2アレイ部108であって、共にアンテナ、増幅器、移相器を含む第1アレイ部104及び第2アレイ部108を含む。
図2では、第1アレイ部104はアンテナ101、増幅器102、移相器103を含み、第2アレイ部108はアンテナ105、増幅器106、移相器107を含む。
【0033】
さらに
図2のアレイ通信装置は、第1アレイ部104又は第2アレイ部108のアンテナと増幅器との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第1方向性結合器の一例としての方向性結合器301、方向性結合器302を含む。さらに
図2のアレイ通信装置は、第1アレイ部104又は第2アレイ部108の移相器と信号処理部との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第2方向性結合器の一例としての方向性結合器303を含む。
【0034】
さらに
図2のアレイ通信装置は、第1位相比較器の一例としての位相比較器202と、第2位相比較器の一例としての位相比較器204と、を含む。位相比較器202及び位相比較器204は、
図2のアレイ通信装置を校正する複数のアレイ部の位相校正に用いられる。さらに
図2のアレイ通信装置は、位相比較器202又は位相比較器204へ、上記位相の基準となる信号を出力する信号発生器203を含む。さらに
図2のアレイ通信装置は、第1アレイ部104の方向性結合器301又は第2アレイ部108の方向性結合器302から分岐した信号の出力先を、位相比較器202又は位相比較器204へと切り替えるSingle-Pole/Double-Throw Switch(SPDTスイッチ)201を含む。
【0035】
さらに
図2のアレイ通信装置は、信号を分岐又は合流させるための具体的な構成を含む。すなわち、
図2のアレイ通信装置は、信号が合流又は分岐する箇所に配置された分配/合成器304、分配/合成器305、分配/合成器306、分配/合成器307、分配/合成器308、及び分配/合成器309を含む。例えば分配/合成器304は、SPDTスイッチ201と、位相比較器202と、信号発生器203と、位相比較器204との間に設置されている。また例えば分配/合成器305はSPDTスイッチ201と第1アレイ部104との間に設置され、分配/合成器306はSPDTスイッチ201と第2アレイ部108との間に設置されている。分配/合成器307は第1アレイ部104及び第2アレイ部108と信号処理部との間に配置され、分配/合成器308は分配/合成器307及び他のアレイ部(図示せず)と信号処理部との間に配置されている。分配/合成器309は分配/合成器308及びさらに他のアレイ部(図示せず)と信号処理部との間に配置されている。
【0036】
さらに
図2のアレイ通信装置は、分配/合成器305と方向性結合器301の結合ポートとの間に配置されたスイッチ310と、分配/合成器306と方向性結合器302の結合ポートとの間に配置されたスイッチ311と、を含む。
【0037】
さらに
図2のアレイ通信装置は
図1のアレイ通信装置と同様に、第1アレイ部104の増幅器102及び移相器103と、第2アレイ部108の増幅器106及び移相器107と、信号発生器203を制御する制御部109と、を含む。なお制御部109は図示しない他のアレイ部の増幅器及び移相器も制御する。制御部109は、第1アレイ部104の増幅器102及び移相器103、第2アレイ部108の増幅器106及び移相器107、図示しない他のアレイ部の増幅器及び移相器、及び信号発生器203の動作或いは停止などをそれぞれ制御する。
【0038】
図2のアレイ通信装置は、送受信で増幅器などを共有するBi-Directional構成である。送受信で増幅器を共有した構成は、例えば非特許文献1の
図1(c)に示されるような単一の増幅器と4つのスイッチとの組合せにより、実現することができる。例えば、制御部109からの制御信号でこれら4つのスイッチのオン又はオフを制御することにより、単一の増幅器を送信に用いたり、受信に用いたり、或いは出力を停止させたりといった制御を行うことができる。
【0039】
(動作の説明)
次に、
図2のアレイ通信装置の動作のうち、位相校正の動作、及びアレイ通信装置の制御方法について説明する。
【0040】
まず
図2のアレイ通信装置の送信の位相校正を行う場合を述べる。位相校正時、第1アレイ部104、第2アレイ部108に送信される信号は移相器103、移相器107及び増幅器102、増幅器106を通って、アンテナ101、アンテナ105から送信される。一部の信号、すなわちアンテナ101と増幅器102との間の方向性結合器301から分岐した信号、又はアンテナ105と増幅器106との間の方向性結合器302から分岐した信号を、SPDTスイッチ201に出力する。
【0041】
この送信の位相校正の際、SPDTスイッチ201は入力信号を位相比較器202へ出力する(
図2の下側の接点Bへと出力)。信号発生器203は、位相の基準となる既知の信号を送信する。位相比較器202が、アンテナ101と増幅器102との間の方向性結合器301から分岐した信号、又はアンテナ105と増幅器106との間の方向性結合器302から分岐した信号と、信号発生器203からの位相の基準となる信号とを比較することで、各アレイ間の位相差を検出できる。
【0042】
この送信の位相校正の場合、増幅器102及び増幅器106の出力信号強度は大きいので、位相比較器202への分配は一部のみでいい。そのため方向性結合器301及び方向性結合器302を用いることで、位相比較器へ出力する信号強度の調整及びアンテナ101、105へ送信する信号強度の損失を低減できる。
【0043】
さらに第1アレイ部104のスイッチ310及び第2アレイ部108のスイッチ311のどちらか一方をオンにすることで、複数のアレイ部からSPDTスイッチ201へと出力される信号から一つの信号を選択することができ、位相比較器202では1アレイごとに位相比較することができる。
【0044】
次に
図2のアレイ通信装置の受信の位相校正を行う場合を述べる。受信の位相校正のために、方向性結合器303を用いる。位相校正時、信号発生器203からの位相の基準となる既知の信号をSPDTスイッチ201に出力する。この受信の位相校正の際、SPDTスイッチ201は信号発生器203からの上記位相の基準となる信号を分配/合成器を経由して、第1アレイ部104及び第2アレイ部108へ送信する(
図2の上側の接点Aに導通させる)。第1アレイ部104、第2アレイ部108で受信された信号は増幅器102、増幅器106及び移相器103、移相器107、分配/合成器307などを通って、図示しない信号処理部へ出力される。この際一部の信号を方向性結合器303から位相比較器204へ入力することで、信号発生器203の信号を比較する。これにより各アレイ間の位相差を検出できる。
【0045】
なおアレイ間位相差の検出には、
図2のアレイ通信装置の分配/合成器305から方向性結合器301までの経路長と、分配/合成器305から方向性結合器302までの経路長とを同一にすることが望ましい。
図2では、このような経路長を同一にする主旨の一例として、分配/合成器305とスイッチ310との間の経路長が、分配/合成器306とスイッチ311との間の経路長より長い場合を図示している。このような経路長の設定により、分配/合成器305から第1アレイ部104の方向性結合器301までの経路長と、分配/合成器305から第2アレイ部108の方向性結合器302までの経路長とを同一にすることができる。
【0046】
(効果の説明)
図2のアレイ通信装置によれば、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の送信動作及び受信動作のそれぞれについて、アレイ間の位相・振幅校正ができる。特に位相比較器202と、位相の基準となる既知の信号を送信する信号発生器203とを用いることにより、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の送信動作の位相校正ができ、位相比較器204と信号発生器203とを用いることにより、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の受信動作の位相校正ができる。
【0047】
このような構成を備えることにより、アレイ間の位相・振幅校正が可能な、Bi-Directional構成のアレイ通信装置について、装置サイズを縮小できる。
【0048】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態によるアレイ通信装置、及びその制御方法について、説明する。
図3は、第2実施形態のアレイ通信装置を説明するためのブロック図である。第2実施形態によるアレイ通信装置は第1実施形態によるアレイ通信装置の変形例であり、特に送信の位相校正と受信の位相校正とに共通の位相比較器を用いることができる構成に関するものである。なお実施形態の説明の前提となる、
図2のアレイ通信装置と同様な要素には同じ参照番号を付して、その詳細な説明を省略することとする。
【0049】
なお本実施形態においても、第1アレイ部104の増幅器102及び移相器103、第2アレイ部108の増幅器106及び移相器107、図示しない他のアレイ部の増幅器及び移相器、及び信号発生器203は、図示しない制御部により制御されるが、この制御部の図示や制御部による制御について詳細な説明を省略することとする。
【0050】
(構成の説明)
図3のアレイ通信装置は
図2のアレイ通信装置と同様に、信号処理部へ共通に接続される第1アレイ部104及び第2アレイ部108であって、共にアンテナ、増幅器、移相器を含む第1アレイ部104及び第2アレイ部108を含む。
図3では、第1アレイ部104はアンテナ101、増幅器102、移相器103を含み、第2アレイ部108はアンテナ105、増幅器106、移相器107を含む。
【0051】
さらに
図3のアレイ通信装置は、位相比較手段の一例としての位相比較器407を含む。位相比較器407は送信の位相校正を行う場合には、第1アレイ部104又は第2アレイ部108のアンテナと増幅器との間から分岐した信号と、位相の基準となる信号との位相を比較する。さらに位相比較器407は受信の位相校正を行う場合には、第1アレイ部104又は第2アレイ部108の移相器の出力から分岐した信号と、位相の基準となる信号との位相を比較する。
【0052】
さらに
図3のアレイ通信装置は第1実施形態と同様に、位相の基準となる信号を出力する信号発生器203を含む。
【0053】
さらに
図3のアレイ通信装置は、第1アレイ部104のアンテナ101と増幅器102との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第1方向性結合器の一例としての方向性結合器401と、第2アレイ部108のアンテナ105と増幅器106との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第1方向性結合器の一例としての方向性結合器404と、を含む。
【0054】
さらに
図3のアレイ通信装置は第1実施形態と同様に、信号が合流又は分岐する箇所に配置された分配/合成器305、分配/合成器306、及び分配/合成器307を含む。分配/合成器305は信号発生器203と第1アレイ部104との間に設置され、分配/合成器306は信号発生器203と第2アレイ部108との間に設置されている。分配/合成器307は、第1アレイ部104及び第2アレイ部108と信号処理部との間に配置されている。
【0055】
さらに
図3のアレイ通信装置は、第1アレイ部104の移相器103と分配/合成器307との間の第1アレイ部104に配置されて信号を分岐又は合流させる第2方向性結合器の一例としての方向性結合器402を含む。さらに
図3のアレイ通信装置は、第2アレイ部108の移相器107と分配/合成器307との間の第2アレイ部108に配置されて信号を分岐又は合流させる第2方向性結合器の一例としての方向性結合器405を含む。
【0056】
さらに
図3のアレイ通信装置は、第1アレイ部104の方向性結合器401とアンテナ101との間に設置されて信号を分岐又は合流させる第3方向性結合器の一例としての方向性結合器301と、第2アレイ部108の方向性結合器404とアンテナ105の間に設置されて信号を分岐又は合流させる第3方向性結合器の一例としての方向性結合器302と、を含む。
【0057】
さらに
図3のアレイ通信装置は、第1アレイ部104の方向性結合器401及び方向性結合器402と位相比較器407との間に配置されたSingle-Pole/Double-Throw Switch(SPDTスイッチ)403を含む。さらに
図3のアレイ通信装置は、第2アレイ部108の方向性結合器404及び方向性結合器405と位相比較器407との間に配置されたSingle-Pole/Double-Throw Switch(SPDTスイッチ)406を含む。
【0058】
なお
図4では図示を省略しているが、第2アレイ部108の隣に第3アレイ部が配置される場合、第2アレイ部108の方向性結合器404及び方向性結合器405との間に別のSPDTスイッチが配置されて、このSPDTスイッチの切り替えによって第2アレイ部108の方向性結合器404からの信号と方向性結合器405からの信号のいずれか一つが位相比較器に入力されて、位相が比較される。
【0059】
(動作の説明)
送信及び受信の両方の位相校正に対応するため、
図3のアレイ通信装置は、方向性結合器301、方向性結合器302及び方向性結合器401、方向性結合器404を設けている。SPDTスイッチ403とSPDTスイッチ406はそれぞれ、送信の位相校正では方向性結合器401と方向性結合器404と導通する(
図3の接点Aに導通させる)。そしてSPDTスイッチ403とSPDTスイッチ406はそれぞれ、受信の位相校正では方向性結合器402と方向性結合器405と導通する(
図3の接点Bに導通させる)。
【0060】
受信の位相校正では、信号発生器203からの位相の基準となる既知の信号を分配/合成器305、分配/合成器306を経由して第1アレイ部104及び第2アレイ部108へ送信する。第1アレイ部104、第2アレイ部108で受信された信号は増幅器102、増幅器106及び移相器103、移相器107、分配/合成器307などを通って、図示しない信号処理部へ出力される。この際一部の信号を方向性結合器402、方向性結合器405及びSPDTスイッチ403、SPDTスイッチ406を経由して位相比較器407へ入力することで、信号発生器203の信号を比較する。これにより各アレイ間の位相差を検出できる。
【0061】
(効果の説明)
図3のアレイ通信装置によれば、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の送信動作及び受信動作のそれぞれについて、アレイ間の位相・振幅校正ができる。特に位相比較器407を用いることにより、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の送信動作の位相校正と受信動作の位相校正とをそれぞれ行うことができる。
【0062】
このような構成を備えることにより、アレイ間の位相・振幅校正が可能な、Bi-Directional構成のアレイ通信装置について、装置サイズを縮小できる。
【0063】
さらに
図3のアレイ通信装置によれば、送信及び受信の両方に対し、第1アレイ部104と第2アレイ部108との間のようなアレイ間の位相差を位相比較器407で比較し、送信及び受信の両方についてそれぞれ位相校正を行うことができる。これにより第1アレイ部104と第2アレイ部108との間、第2アレイ部108と図示しない第3アレイ部との間といった隣接アレイ間の位相差を検出して、送信及び受信の両方に対し位相校正を行うことができる。
【0064】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態によるアレイ通信装置、及びその制御方法について、説明する。
図4は、第3実施形態のアレイ通信装置を説明するためのブロック図である。第3実施形態によるアレイ通信装置は第2実施形態によるアレイ通信装置の変形例であり、Bi-Directional構成におけるアレイ間のループバックを行う構成に関するものである。なお実施形態の説明の前提となる、
図3のアレイ通信装置と同様な要素には同じ参照番号を付して、その詳細な説明を省略することとする。
【0065】
なお本実施形態においても、第1アレイ部104の増幅器102及び移相器103、第2アレイ部108の増幅器106及び移相器107、図示しない他のアレイ部の増幅器及び移相器、及び信号発生器203は、図示しない制御部により制御されるが、この制御部の図示や制御部による制御については詳細な説明を省略することとする。
【0066】
(構成の説明)
図4のアレイ通信装置は
図3のアレイ通信装置と同様に、信号処理部へ共通に接続される第1アレイ部104及び第2アレイ部108であって、共にアンテナ、増幅器、移相器を含む第1アレイ部104及び第2アレイ部108を含む。
図4では、第1アレイ部104はアンテナ101、増幅器102、移相器103を含み、第2アレイ部108はアンテナ105、増幅器106、移相器107を含む。
【0067】
さらに
図4のアレイ通信装置は
図3のアレイ通信装置と同様に、位相比較手段の一例としての位相比較器407を含む。位相比較器407は送信の位相校正を行う場合には、第1アレイ部104又は第2アレイ部108のアンテナと増幅器との間から分岐した信号と、位相の基準となる信号との位相を比較する。さらに位相比較器407は受信の位相校正を行う場合には、第1アレイ部104又は第2アレイ部108の移相器の出力から分岐した信号と、位相の基準となる信号との位相を比較する。
【0068】
さらに
図4のアレイ通信装置は、第1アレイ部104のアンテナ101と増幅器102との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第1方向性結合器の一例としての方向性結合器401と、第2アレイ部108のアンテナ105と増幅器106との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第1方向性結合器の一例としての方向性結合器402と、を含む。
【0069】
さらに
図4のアレイ通信装置は第2の実施形態と同様に、第1アレイ部104の移相器103と分配/合成器307との間の第1アレイ部104に配置されて信号を分岐又は合流させる第2方向性結合器の一例としての方向性結合器402を含む。さらに
図4のアレイ通信装置は、第2アレイ部108の移相器107と分配/合成器307との間の第2アレイ部108に配置されて信号を分岐又は合流させる第2方向性結合器の一例としての方向性結合器405を含む。
【0070】
さらに
図4のアレイ通信装置は、方向性結合器402と分配/合成器307との間に挿入されたスイッチ501と、方向性結合器405と分配/合成器307との間に挿入されたスイッチ505と、を含む。
【0071】
さらに
図4のアレイ通信装置は、信号が合流又は分岐する箇所に配置された分配/合成器307、分配/合成器502、及び分配/合成器504を含む。分配/合成器307は、第1アレイ部104及び第2アレイ部108と信号処理部との間に配置されている。
【0072】
さらに
図4のアレイ通信装置は、第1アレイ部104の方向性結合器401及び方向性結合器402と位相比較器407との間に配置されたSingle-Pole/Double-Throw Switch(SPDTスイッチ)403を含む。さらに
図4のアレイ通信装置は、第2アレイ部108の方向性結合器404及び方向性結合器405と位相比較器407との間に配置されたSingle-Pole/Double-Throw Switch(SPDTスイッチ)406を含む。
【0073】
さらに
図4のアレイ通信装置では、第1アレイ部104の方向性結合器401の結合ポートと、第2アレイ部108の方向性結合器404の結合ポートとの間に挿入されたスイッチ503を含む。
【0074】
なお
図4では図示を省略しているが、第2アレイ部108の隣に第3アレイ部が配置される場合、分配/合成器を経由した第2アレイ部108の方向性結合器404と方向性結合器405との間に別のSPDTスイッチが配置されて、このSPDTスイッチの切り替えによって第2アレイ部108の方向性結合器404からの信号と方向性結合器405からの信号のいずれか一つが位相比較器に入力されて、位相が比較される。
【0075】
(動作の説明)
上述した実施形態では、受信の位相校正に基準となる参照信号を信号発生器から発生させるか、もしくは外部から送信することとしている。これに対し、本実施形態はBi-Directional構成におけるアレイ間のループバックを行う構成である。
【0076】
まず
図4のアレイ通信装置の送信の位相校正を行う場合を述べる。送信の位相校正を行う場合、スイッチ501、505をオンにし、スイッチ503をオフにする。さらにSPDTスイッチ403を分配/合成器502に、SPDTスイッチ406を分配/合成器504に導通する。
【0077】
第1アレイ部104については、図示しない信号処理部からの分配/合成器307で分配された送信信号は、スイッチ501、方向性結合器402、移相器103、増幅器102、方向性結合器401を通って、分配/合成器502から位相比較器407へ入力される。第2アレイ部108については、図示しない信号処理部からの分配/合成器307で分配された送信信号は、スイッチ505、方向性結合器405、移相器107、増幅器106、方向性結合器404を通って、分配/合成器504から位相比較器407へ入力される。これにより、第1アレイ部104と第2アレイ部108との間といった、アレイ間の位相差が検出できる。
【0078】
次に
図4のアレイ通信装置の受信の位相校正を行う場合を述べる。仮に第1アレイ部104の送信の位相を基準に第2アレイ部108の受信の位相を校正する場合、スイッチ501及びスイッチ503をオンにし、スイッチ505をオフにする。SPDTスイッチ403は分配/合成器502と導通させ、SPDTスイッチ406は方向性結合器405と導通させる。
【0079】
図示しない信号処理部からの送信信号は分配/合成器307を通ってスイッチ501と505に分配されるが、スイッチ505はオフになっているので信号が伝達されることはない。一方、スイッチ501を通った信号は、方向性結合器402、移相器103、増幅器102及び方向性結合器401を通って分配/合成器502へ入力される。
【0080】
ここで分配/合成器502の出力は、SPDTスイッチ403を通って位相比較器407へ入力する経路と、スイッチ503、分配/合成器504、方向性結合器404を通り、さらに増幅器106、移相器107、方向性結合器405、SPDTスイッチ406を通って位相比較器407に入力する経路に分けられる。このとき位相比較器407では、第1アレイ部104の送信の位相と、第2アレイ部108の受信の位相を比較することができる。
【0081】
動作を第1アレイ部104と第2アレイ部108で逆にすると、第1アレイ部104の受信の位相を第2アレイ部108の送信の位相で校正することができる。すなわち第2アレイ部108の送信の位相を基準に第1アレイ部104の受信の位相を校正する場合には、スイッチ505及びスイッチ503をオンにし、スイッチ501をオフにする。
【0082】
複数のアレイ間の送信の位相校正は別途できているとすると、アレイ間の送信の位相を基準に受信の位相を校正できる。なお受信アレイの校正時に位相比較器407に入力される第2アレイ部108と第1アレイ部104の信号強度を調整するため、電力検出器と可変利得増幅器を設けてもよい。またスイッチ501やスイッチ505のように主信号経路に設置されたスイッチは高周波では損失が大きいため、オンオフ制御可能な双方向の増幅器で代用してもよい。
【0083】
(効果の説明)
図4のアレイ通信装置によれば、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の送信動作及び受信動作のそれぞれについて、アレイ間の位相・振幅校正ができる。特に第2実施形態と同様に位相比較器407を用いることにより、Bi-Directional構成のアレイ通信装置の送信動作の位相校正と受信動作の位相校正とをそれぞれ行うことができる。
【0084】
このような構成を備えることにより、アレイ間の位相・振幅校正が可能な、Bi-Directional構成のアレイ通信装置について、装置サイズを縮小できる。
【0085】
さらに
図4のアレイ通信装置では第2実施形態と同様に、送信及び受信の両方に対し、第1アレイ部104と第2アレイ部108との間のようなアレイ間の位相差を位相比較器407で比較し、送信及び受信の両方についてそれぞれ位相校正を行うことができる。これにより第1アレイ部104と第2アレイ部108との間、第2アレイ部108と図示しない第3アレイ部との間といった隣接アレイ間の位相差を検出して、送信及び受信の両方に対し位相校正を行うことができる。
【0086】
さらに
図4のアレイ通信装置では、スイッチ503、分配/合成器502や分配/合成器504のような、アレイ間のループバック経路を設けることにより、第1アレイ部104の送信の位相を基準に第2アレイ部108の受信の位相を校正したり、第2アレイ部108の送信の位相を基準に第1アレイ部104の受信の位相を校正したりできる。これにより、アレイ通信装置の位相校正に用いる
図2や
図3の信号発生器203を不要とすることができ、また位相校正のために外部から送信すべき基準となる参照信号を不要とすることができる。
【0087】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【0088】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)信号処理部へ共通に接続される複数のアレイ部であって、前記アレイ部はそれぞれアンテナ、増幅器、及び移相器を有する複数のアレイ部を含み、
前記アレイ部の前記アンテナと前記増幅器との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第1方向性結合器と、
前記アレイ部の前記移相器と前記信号処理部との間に配置されて信号を分岐又は合流させる第2方向性結合器と、
前記第1方向性結合器及び前記第2方向性結合器からの信号の少なくとも一つと位相の基準となる信号とが入力されて位相を比較し、位相の校正を行う位相比較手段と、をさらに含むアレイ通信装置。
(付記2)前記第2方向性結合器は、前記アレイ部の前記移相器と前記信号処理部との間の前記アレイ部に配置されて信号を分岐又は合流させる、付記1に記載のアレイ通信装置。
(付記3)前記複数のアレイ部はそれぞれ、
前記第1方向性結合器と前記第2方向性結合器との間に配置され、前記第1方向性結合器から前記位相比較手段への経路と前記第2方向性結合器から前記位相比較手段への経路とを切り替える第1スイッチをさらに含む、付記2に記載のアレイ通信装置。
(付記4)前記複数のアレイ部のうち一つのアレイ部の第1方向性結合器と、前記複数のアレイ部のうち他の一つのアレイ部の第1方向性結合器との間に配置された第2スイッチをさらに含む、付記3に記載のアレイ通信装置。
(付記5)前記複数のアレイ部のうち一つのアレイ部の第1方向性結合器と前記アンテナとの間に配置されて信号を分岐又は合流させる第3方向性結合器をさらに含む、付記3に記載のアレイ通信装置。
(付記6)前記位相の基準となる信号を出力する信号発生器をさらに含み、
前記信号発生器から前記アレイ部の前記第3方向性結合器までの経路長さは、前記複数のアレイ部の一つのアレイ部と他の一つのアレイ部とで同一である、付記5に記載のアレイ通信装置。
(付記7)前記位相比較手段は、第1位相比較器と第2位相比較器とを含み、
前記第1位相比較器は、前記位相の基準となる信号と、前記複数のアレイ部のうちの一つのアレイ部の前記第1方向性結合器からの信号とを入力して位相を比較し、
前記第2位相比較器は、前記位相の基準となる信号と、前記複数のアレイ部のうちの一つのアレイ部の前記第2方向性結合器からの信号とを入力して位相を比較する、付記1に記載のアレイ通信装置。
(付記8)前記位相比較手段は、前記複数のアレイ部のうち一つのアレイ部の、前記位相の基準となる信号が供給されて前記増幅器及び前記移相器を経た、前記第2方向性結合器からの信号と、前記複数のアレイ部のうち他の一つのアレイ部の、前記位相の基準となる信号が供給されて前記増幅器及び前記移相器を経た、前記第2方向性結合器からの信号とを入力して位相を比較する、付記1又は付記7に記載のアレイ通信装置。
(付記9)前記位相の基準となる信号を出力する信号発生器をさらに含み、
前記信号発生器から前記アレイ部の前記第1方向性結合器までの経路長さは、前記複数のアレイ部の一つのアレイ部と他の一つのアレイ部とで同一である、付記1、付記7又は付記8に記載のアレイ通信装置。
(付記10)信号処理部へ共通に接続される複数のアレイ部であって、前記アレイ部はそれぞれアンテナ、増幅器、及び移相器を有する複数のアレイ部と、
前記アレイ部の前記アンテナと前記増幅器との間に配置されて信号を分岐させる第1方向性結合器と、
前記アレイ部の前記移相器と前記信号処理部との間の前記アレイ部に配置され信号の一部を分岐させる第2方向性結合器と、を含むアレイ通信装置の制御方法であって、
前記第1方向性結合器及び前記第2方向性結合器からの信号の少なくとも一つと位相の基準となる信号とが入力されて位相を比較し、比較結果に基づいて位相の校正を行うアレイ通信装置の制御方法。
(付記11)前記アレイ通信装置が、前記複数のアレイ部のうち一つのアレイ部の第1方向性結合器と、前記複数のアレイ部のうち他の一つのアレイ部の第1方向性結合器との間に配置されたスイッチをさらに含み、
前記スイッチを経由し、前記複数のアレイ部のうち一つのアレイ部から前記複数のアレイ部のうち他の一つのアレイ部へ供給された信号を使用して、アレイ部間の位相校正を行う、付記10に記載のアレイ通信装置の制御方法。
(付記12)前記第1方向性結合器又は前記第2方向性結合器からの信号と、位相の基準となる信号とが入力されて位相を比較し、比較結果に基づいて位相の校正を行う、付記10に記載のアレイ通信装置の制御方法。
【0089】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【0090】
この出願は、2018年5月17日に出願された日本出願特願2018-95602号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0091】
101、105 アンテナ
102、106 増幅器
103、107 移相器
104 第1アレイ部
108 第2アレイ部
109 制御部
110 信号処理部
201、403、406 SPDTスイッチ
202、204、407 位相比較器
203 信号発生器
301、302、303、401、402、404、405 方向性結合器
304、305、306、307、308、309、502、504 分配/合成器
310、311、501、503、505 スイッチ