(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】断熱箱
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20240111BHJP
B63B 25/16 20060101ALI20240111BHJP
F16L 59/02 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
F17C3/04 A
B63B25/16 F
F16L59/02
(21)【出願番号】P 2020528290
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018059200
(87)【国際公開番号】W WO2019108344
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】102017000136505
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ベルトゥチェリ、ルイージ
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105378364(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0022704(US,A1)
【文献】特開昭50-021360(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02987424(FR,A1)
【文献】特開2012-171655(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02777926(EP,A1)
【文献】米国特許第06503584(US,B1)
【文献】特表2014-524547(JP,A)
【文献】特公昭47-3673(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 3/04
B63B 25/16
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスキャリア内の断熱バリアに使用するための断熱箱であって、
前記断熱箱が、
少なくとも1つのボイドを画定している、
底部パネルと上部パネルと外部ピラーとを含む箱構造を備え
ており、
前記少なくとも1つのボイドが、
その中に少なくとも1つの多層断熱板を含み、前記少なくとも1つの多層断熱板の各々が、
鋼および/もしくはアルミニウムの箔のシート、鋼および/もしくはアルミニウムの箔の応力外皮、ガラスフリース、ポリエチレン、ならびに/またはポリプロピレンを含む、少なくとも1つのフェーサー層と、
ASTM D1622に従って、100kg/m
3~2000kg/m
3の第1の密度を有する少なくとも1つの第1のポリウレタン層と、
ASTM 1622に従って、100kg/m
3未満の第2の密度を有する少なくとも1つの第2のポリウレタン層と、
を含む、断熱箱。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第1のポリウレタン層が、前記多層断熱板の総厚の0.5%~50.0%を占める、請求項1に記載の断熱箱。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1のポリウレタン層が、少なくとも第1のイソシアネート成分と、第1のイソシアネート反応性成分とを含む、第1の混合物の反応生成物であり、
前記第1の混合物のイソシアネート指数が、80~600であり、
前記第1の混合物が、付加的に追加されるいかなる物理的発泡剤も含まない、請求項1または請求項2に記載の断熱箱。
【請求項4】
前記第1の混合物が、前記第1の混合物の総重量に基づいて、5重量%~60重量%の量の1つ以上の充填剤をさらに含む、請求項3に記載の断熱箱。
【請求項5】
前記1つ以上の充填剤が、膨張可能なグラファイトを含む、請求項4に記載の断熱箱。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2のポリウレタン層が、少なくとも第2のイソシアネート成分と、第2のイソシアネート反応性成分と、物理的発泡剤と、を含む、第2の混合物の反応生成物であり、
前記第2の混合物のイソシアネート指数が、80~600である、請求項1~5のいずれか1項に記載の断熱箱。
【請求項7】
前記第2のポリウレタン層が、ガラス繊維補強材を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の断熱箱。
【請求項8】
前記断熱箱が、液化天然ガスキャリア内の断熱バリアの一部である、請求項1~7のいずれか1項に記載の断熱箱。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の断熱箱の形成方法であって、前記箱構造を提供することと、前記少なくとも1つの多層断熱板を前記箱構造に載置することと、を含む、断熱箱の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、多層断熱板を含む断熱箱、液化ガスキャリアのための断熱箱における多層断熱板の使用、多層断熱板を製造する方法、多層断熱板で断熱箱を製造する方法、および多層断熱板を備えた断熱箱が含まれる液化ガスキャリアを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定のガスは、液化ガスキャリアでの貯蔵および/または輸送のために液化されることがある。そのような例は、液化天然ガス(LNG)であり、これは、貯蔵および/または輸送を容易にするために液体形態に変換された天然ガスである。例えば、LNGは、約-150℃未満前後の温度に冷却することにより、大気圧近くで液体に凝縮することができる。LNGは、圧縮天然ガスと比較して容積を大幅に低減させることができるため、貯蔵および輸送のコスト効率が向上する可能性がある。しかしながら、LNGは、気体状態で気化した後に可燃性が大幅に増加する可能性があるなど危険な場合がある。したがって、LNGの貯蔵および/または輸送において専用のキャリアを使用することができる。
【0003】
専用のLNGキャリアは、例えば、船の主要構造部を形成する一体型タンク、および/または、例えば、船の船体構造の一体部分を形成しない独立型タンクを含み得る。米国特許第7,597,212号を参照すると、貯蔵タンクは、タンク材料および断熱材料を含み得る。例示的な断熱材料は、(i)250mmの厚さを有する補強ポリウレタン発泡体、または(ii)その中に530mmの厚さを有するパーライトガラスを有する合板箱のいずれかとして記載されている。
【0004】
また、欧州特許出願第EP2739895Al号(および対応する中国特許番号第CN103748401B号)は、フランス出願第FR-A-2867831号を参照して、船の船体を配設するLNG断熱タンクが、並置された木材の平行六面体を使用して箱を形成するモジュール方式で構成された一次断熱バリアと二次断熱バリアを含み得ることを開示している。中国特許第CN103748401B号を参照すると、カバーパネル18(図示せず-例えば、9mmの合板)、底部パネル17(例えば、9mmのメッキ)、外部ベール16(例えば、メッキ-コンス(plated-cons))、内部区画15(例えば、合板)、および固定バタン9(各コーナー)を含むように箱11が開示されている。箱11は、断熱ライニング発泡パーライトまたはエアロゲル材料で満たされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
欧州特許出願第EP2739895A1号は、フランス出願第FR-A-2798902号を参照して、船の船体に配設されたLNGタンクには一次断熱バリアと二次断熱バリアを含めることができ、その各々は、合板スペーサーに接着された33~40kg/m3程度の低密度発泡体の単層充填箱で構成されていることをさらに開示している。図面を参照すると、変更された配置が、少なくとも1つのシーリングバリアと、シーリングバリアと支持構造との間に配設された少なくとも1つの断熱バリアとを含むことが、中国特許第CN103748401B号に開示されている。断熱バリアに関して、一次断熱バリアは、鉱物ウールまたはパーライトからなる断熱材を備えたパックで満たされた箱を含むことが開示されている。二次断熱バリアが、鉱物ウール、有機ウール、低密度ポリマー発泡体、およびエアロゲルからなる群から選択される材料で満たされた箱を含み、その例示的な実施形態が発泡体ブロックを含むことがさらに開示されている。しかしながら、欧州特許出願第EP2739895号で説明されているように、鉱物ウールやエアロゲルなどの材料は、剛性がまったくないか、またはほとんどない。
【0006】
断熱特性および支持特性の両方を有する断熱箱用の材料を提供することに関して、そのような断熱箱において改善が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態は、液化ガスキャリア内に断熱バリアの断熱箱を提供することによって実現され得、断熱箱は、底部パネル、上部パネル、外部ピラー、および任意選択的に少なくとも1つのボイドを画定する少なくとも1つの内部区画を含む箱構造を含む。少なくとも1つのボイドは、少なくとも1つの多層断熱板を含む。少なくとも1つの多層断熱板の各々は、少なくとも1つのフェーサー層と、ASTMD1622に従って、100kg/m3~2000kg/m3の第1の密度を有する少なくとも1つの第1のポリウレタン層と、ASTMD1622に従って、100kg/m3未満の第2の密度を有する少なくとも1つの第2のポリウレタン層と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施形態によれば、液化ガスキャリア(LNG運搬船など)の断熱バリアの一部として使用可能な断熱箱は、少なくとも1つのボイド(例えば、複数のボイド)を画定する箱構造を含む。少なくとも1つのボイド(例えば、存在する全てのボイド)は、その中に少なくとも1つの多層断熱板を含む。単一のボイドは、1つ以上の多層断熱板を含むことができ、例えば、単一のボイドは、1~50(例えば、1~25、1~10、2~10、2~6など)の互いの上部に積層された多層断熱板を含む。多層断熱板を使用して、断熱箱に断熱特性と支持特性の両方を提供する(例えば、剛性および/または耐座屈性を高める)ことが提案されている。多層断熱板は、断熱機能と支持機能の両方を1つの板に組み合わせることに加えて、他の利点を提供し得る。
【0009】
例えば、そのような多層断熱板は、単純化されたプロセスおよび費用効果の高いプロセスで製造され得、例えば、単一の連続プロセスを使用して各多層断熱板が形成され、断熱箱の箱構造内に適合するように所望の形状に効率的に切断され得る。多層断熱板は、断熱箱の箱構造内の断熱材料および支持材料の載置を容易にすることができ、例えば、そのような載置は、断熱箱を作製するプロセス中の初期配置、および既存の断熱箱の取り換えを含む。多層断熱板は、単一の連続プロセスで形成され、所望の形状に切断され得る(例えば、箱構造内の個々のボイドの形状に切断される)ので、断熱箱内でのカスタマイズされた使用を可能にすることができる。多層断熱板は、断熱箱における追加の支持機能(例えば、追加の箱、シーリングバリア、ピラー、または他の支持手段)の必要性を低減することができる。多層断熱板は、例えば、追加の構造を必要とせずに、箱構造に直接固定することができる。
【0010】
多層断熱板には、少なくとも1つのフェーサー層、ASTM D1622に従って100kg/m3~2000kg/m3の第1の密度を有する少なくとも1つの第1のポリウレタン層(高密度ポリウレタン層および補強層とも呼ばれる)、およびASTM D1622に従って100kg/m3未満の第2の密度を有する少なくとも1つの第2のポリウレタン層(低密度ポリウレタン層および断熱層とも呼ばれる)が含まれる。第1のポリウレタン層は、補強層である。第1のポリウレタン層は、発泡体でなくてもよい(例えば、追加の発泡剤を使用せずに調製されてもよい)。第2のポリウレタン層は、断熱層であり、例えば、発泡体層であり得る。本明細書で使用される場合、ポリウレタンは、ポリウレタンおよびポリウレタン/ポリイソシアヌレート材料を包含する。多層断熱板は、断熱箱内での使用目的に応じて厚みを調整することができる。
【0011】
断熱箱の箱構造は、当該技術分野で既知のものであってもよく、例えば、中国特許第CN103748401B号に開示されている箱11と同様であってもよい。箱は、天然木および/または設計/製造された木材などの木材ベースの製品で作成されてもよい。例えば、箱は、合板で作製された少なくともいくつかの部分を含むことができ、例えば、箱は、全体が合板で作製され得る。箱構造は、底部パネル、上部パネル、外部ピラー、および任意選択的に少なくとも1つの内部区画を含む。底部パネル、上部パネル、および外部ピラーは、一緒に、1つ以上の多層断熱板を囲み、例えば、本質的に完全に囲み得る。箱構造は、箱構造内に少なくとも1つのボイドを画定する少なくとも1つの内部区画をさらに含む。少なくとも1つの内部区画は、断熱箱の最も外側の構造によって囲まれていてもよい。内部区画とは、例えば実質的に断熱箱内に収容された補強要素を意味する。内部区画は、箱構造の他の構成要素と同じ材料で作製されてもよいし、異なる材料で作製されてもよい。内部区画は、箱構造の幅または高さ全体をカバーしてもよく、および/または箱構造の幅または高さ全体の一部をカバーしてもよい。例えば、内部区画は必ずしも全幅をカバーしているわけではなく、スタンドアロンのピラーの形をしていてもよい。ボイドの形状および構造は、箱構造の形状および少なくとも1つの内部区画の配置によって画定され得る。箱構造の少なくとも1つのボイドは、少なくとも1つの多層断熱板を含む。箱構造は、0.3~3.0m(例えば、0.5~2.0m、0.7~1.5mなど)の高さ寸法、0.3~3.0m(例えば、0.5~2.0m、0.7~1.5mなど)の長さ寸法、および0.1~2.0m(0.1~1.0、0.1~0.5mなど)の幅寸法を有し得る。
【0012】
多層断熱板のフェーサー層は、構造フェーサーなどの断熱板での使用が当該技術分野で既知のものであってよい。例示的なフェーサーには、金属箔のシート(鋼および/またはアルミニウムなど)、金属箔の応力外皮、ガラスフリース、ならびに/またはポリマー(例えば、ポリエチレンおよび/もしくはポリプロピレン)が含まれる。例示的なフェーサーは、ポリマー、紙および/またはアルミニウムの複数のプライラミネートを含み得る複合箔を含む。例えば、複合フェーシングは、アルミニウム/紙ラミネート、アルミニウム/紙/アルミニウムラミネート、および/またはアルミニウム/紙/金属化PET(Walki Groupなどの企業から市販されているものなど)であってもよい。例示的な実施形態では、各フェーサー層は、飽和ガラスフリース、非飽和ガラスフリース、およびアルミニウム箔から選択される。多層断熱板は、2つのフェーサー層を含むことができ、そのようなフェーサー層の各々は、別のフェーサー層と同じでもあっても異なっていてもよい。単一の多層断熱板の1つ以上のフェーサー層は、多層断熱板の総厚の10%未満(例えば、5%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満など)を占めることができる。フェーサー層は、3.0mm未満、2.0未満、1.0未満、0.5未満などの厚さを有し得る。
【0013】
ポリウレタン層
多層断熱板は、高密度を有する少なくとも1つの第1のポリウレタン層と、低密度を有する少なくとも1つの第2のポリウレタン層と、を含む。多層断熱板は、1つ以上のそのような第1のポリウレタン層および/または1つ以上のそのような第2のポリウレタン層を含み得る。第1および/または第2のポリウレタン層は、多層断熱板を横切って、例えば、多層断熱板の長さ、高さ、および/または幅の全体を横切って延在する連続層であってもよい。
【0014】
第1および/または第2のポリウレタン層は、その中に、膨張可能なガラス繊維マットとも呼ばれる膨張可能なガラスウェブなどのガラスウェブ補強材を含むことができる。膨張可能なガラスウェブ/繊維マットは、発泡体形成中に開くことができ、硬化した発泡体内に埋め込まれたままであり得、例えば、ガラスウェブは、ポリウレタン発泡体を形成するための反応混合物をその上に注ぐと、発泡体膨張プロセス中にガラスウェブが開かれ、得られたポリウレタン発泡体に一体的に埋め込まれる。ガラスウェブ/繊維マットは、膨張する発泡体の影響下で、フェーシングシートの平面に実質的に平行な平面で発泡体全体に分配されて分離することがある。適切なガラス繊維マットは、20g/m2~200g/m2、30g/m2~100g/m2、約70g/m2などの単位面積あたりの重量を有することができる。発泡体層の厚さに応じて、1つ以上のガラスウェブ/繊維マットが使用されてもよい。様々な実施形態での使用に好適な1つの市販されているガラス繊維マットは、Schmelzer Industriesから入手可能なFirmat70である。
【0015】
ガラスウェブ補強材は、「A」ガラス表面ベールの不織連続ストランドであってもよい。ガラスウェブ補強材は、断熱コアに埋め込むことができる。ガラスウェブ補強材は、完全に硬化する前に低密度ポリウレタン層上に載置することができる。ガラスウェブ補強材は、多層断熱板の厚さの少なくとも一部にわたって、低密度ポリウレタン層に埋め込まれてしまうことがある。ガラスウェブは、少なくとも低密度ポリウレタン層(すなわち、発泡体コア)の寸法変化を最小化および/または低減するのに役立ち得る。例えば、ガラスウェブ補強材は、25~500g/m2、50~300g/m2、50~200g/m2、100~200g/m2などの1平方メートルあたりの重量を有し得る。ガラスウェブ補強材は、1.5mm未満(例えば、1.0mm未満、0.8mm未満、0.6mm未満など)の平均厚さを有することができる。第1および第2のポリウレタン層の密度は、発泡体形成配合物に基づいており、付加的に追加されるガラスウェブ補強材を包含しない場合がある。
【0016】
第1のポリウレタン層は、高密度ポリウレタン層、例えば、非発泡体層である。第1のポリウレタン層は、物理的発泡剤を添加せずに(および任意選択的に化学的発泡剤を使用せずに)、形成することができる。第1のポリウレタン層は、多層断熱板の総厚の0.5%~90.0%、0.5%~50.0%、および/または1%~90%(例えば、1%~88%、1%~70%、1%~60%、1%~50%、1%~49%、5%~50%、2%~30%、2%~20%、2%~15%、2%~10%など)を占めることができる。第1のポリウレタン層は、0.5mm~25.0mm(例えば、1.0mm~15.0mm、1.0mm~10mmなど)の厚さを有し得る。第1のポリウレタン層は、100kg/m3~2000kg/m3(例えば、100kg/m3~1200kg/m3、150kg/m3~1000kg/m3、200kg/m3~900kg/m3、250kg/m3~800kg/m3、300kg/m3~800kg/m3、320kg/m3~780kg/m3など)の密度を有することができる。第1のポリウレタン層は、1つ以上の充填剤を含み得る。1つ以上の充填剤の量は、第1のポリウレタン層を形成するための組成物の総重量に基づいて、5重量%~60重量%(例えば、5重量%~50重量%、5重量%~40重量%、5重量%~35重量%、10重量%~35重量%、12重量%~35重量%など)であり得る。1つ以上の充填剤は、1つ以上の固体充填剤と1つ以上の火災バリア材料の組み合わせを含むことができる。第1のポリウレタン層は、剛性または半剛性であり得、例えば、脆弱であり得ない。1平方メートル(m2)あたりの第1のポリウレタン層に分配される材料の量は、500g/m2~5,000g/m2(例えば、1,000g/m2~4,000g/m2、1,000g/m2~3,000g/m2など)であり得る。
【0017】
第1のポリウレタン層は、多層断熱板の第1のフェーサー層上(例えば、直接上)にあってもよく、第1のフェーサー層は、箱構造の底部パネル上(例えば、直接上)にあってもよい。第1のポリウレタン層は連続的であってもよく、第1のフェーサー層および第2のポリウレタン層に連続的に結合されてもよい。多層断熱板は、第1のポリウレタン層が第2のポリウレタン層よりも液化ガスキャリアの内部により近くなるように配向されてもよい。例示的な実施形態では、箱構造のパネルの底部は、第1のポリウレタン層が第2のポリウレタン層よりもキャリアの内部に近くなるように、液化ガスキャリアの内部の方向に向いていてもよい。他の例示的な実施形態では、第1のポリウレタン層は、第2のポリウレタン層が第1のポリウレタン層よりもキャリアの内部に近くなるように、液化ガスキャリアの外部に面するように位置決めされ得る。液化ガスキャリアの内部には、液化ガスが収容されている。
【0018】
第2のポリウレタン層は、例えば、1つ以上の物理的発泡剤および/または化学的発泡剤を使用して形成された、発泡された硬質ポリウレタン発泡体などの低密度ポリウレタン層であり得る。第2のポリウレタン層は、多層断熱板の総厚の10%~99%(例えば、10%~98%、30%~99%、35%~98%、40%~99%、45%~98%、50%~99%、55%~98%、60%~99%、65%~98%、70%~99%、75%~98%、80%~99%、85%~98%、90%~98%など)を占めることができる。第2のポリウレタン層は、30mm~300mm(例えば、50mm~200mm、50mm~150mm、50mm~100mm、75mm~100mm、80mm~150mmなど)の厚さを有することができる。第2のポリウレタン層は、100kg/m3未満(例えば、20kg/m3~80kg/m3、30kg/m3~60kg/m3、30kg/m3~50kg/m3など)の密度を有することができる。第2のポリウレタン層を調製するための例示的なプロセスには、当業者に既知のプロセスが含まれる。第2のポリウレタン層は、物理的および/または化学的発泡剤の任意の組み合わせを使用して調製することができる。化学発泡剤の例には水が含まれ、物理的発泡剤の例には、炭化水素、ヒドロクロロフルオロオレフィン、およびヒドロフルオロオレフィンが含まれる。例示的な実施形態では、第2のポリウレタン層は、化学発泡剤として少なくとも水および/または発泡剤としてヒドロクロロフルオロオレフィンを使用して調製することができる。
【0019】
第2のポリウレタン層は、多層断熱板の第2のフェーサー層上(例えば、直接上)にあってもよく、第2のフェーサー層は、箱構造の上部パネル上(例えば、直接上)にあってもよい。第2のポリウレタン層は、第2のフェーサー層に結合されてもよい。第2のポリウレタン層は、第1のポリウレタン層上に(例えば、直接上に)あってもよい。第2のポリウレタン層は、1つ以上の膨張可能なガラスウェブ/ガラス繊維マットを含み得る。
【0020】
第1および第2のポリウレタン層を形成するための系は、一成分系または多成分系であってよく、どちらも、イソシアネート成分から提供されるイソシアネート部分とイソシアネート反応性成分から提供されてポリウレタンポリマーを形成するイソシアネート反応性部分との反応生成物であるポリウレタンポリマーの存在に依存する。特に、ポリウレタン層は、ウレタン部分を含み、イソシアネート成分およびイソシアネート反応性成分を含む出発材料によって作られる。
【0021】
イソシアネート成分は、少なくとも1つのイソシアネート(例えば、ポリイソシアネートおよび/またはイソシアネート末端プレポリマー)を含む。イソシアネート反応性成分は、1つ以上のポリオールを含む少なくともポリオール成分を含む。イソシアネート反応性成分および/またはイソシアネート成分は、各々独立して、各々が少なくとも1つの任意選択的な添加剤(発泡剤、火災バリア材料、充填剤、触媒、硬化剤、鎖延長剤、難燃剤、粘度調整剤、顔料、安定剤、界面活性剤、可塑剤、ゼオライト、水分捕捉剤、および/または得られる最終ポリウレタン製品の特性を変性する他の添加剤など)を含む1つ以上の任意選択的な添加剤成分を含むことができる。
【0022】
例示的な実施形態では、1つ以上のポリイソシアネートおよび/または1つ以上のイソシアネート末端プレポリマーを有するイソシアネート成分。例示的なポリイソシアネートには、当業者に既知のトルエンジイソシアネート(TDI)およびその変形、ならびに当業者に既知のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびその変形が含まれる。ポリウレタン技術で既知の他のイソシアネートを、例えば、当該技術分野で既知のポリウレタンベースのコーティングおよび/または発泡体に使用することができる。例としては、ビウレット、尿素、カルボジイミド、アロホネート、および/またはイソシアヌレート基を含有する誘導体などの変性イソシアネートが挙げられ、また使用され得る。例示的な利用可能なイソシアネートベースの製品には、The Dow Chemical Companyから入手可能な、PAPI(商標)製品、ISONATE(商標)製品およびVORANATE(商標)製品、VORASTAR(商標)製品、ならびに他のイソシアネート製品が含まれる。イソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネートから誘導される。イソシアネート末端プレポリマーは、5重量%~30重量%の遊離NCO(すなわち、イソシアネート部分)含有量を有することができる。
【0023】
ポリウレタン層を形成するためのイソシアネート反応性成分のポリオール成分は、1つ以上のポリオールを含み得る。ポリオール成分は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、天然油由来のポリオール、および/または単純なポリオール(数平均分子量が500g/モル未満のグリセリン、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコールなど)の群から選択される1つ以上のポリオールを含み得る。例えば、1つ以上のポリオールは、1つ以上のポリエーテルポリオールおよび/または1つ以上のポリエステルポリオールを含み得る。ポリエーテルポリオールは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および/またはブチレンオキシドなどのエポキシドの重合によって調製することができる。1つ以上のポリオールは、50mgKOH/g~550mgKOH/g(例えば、100~550mgKOH/g)のヒドロキシル価を有し得る。
【0024】
例示的なポリエステルポリオールには、芳香族ポリエステルポリオールが含まれる。例えば、ポリエステルポリオールは、少なくとも15重量%~45重量%のテレフタル酸、5重量%~20重量%のジエチレングリコール、および25重量%~70重量%のポリエチレングリコールを含む組成物を使用して作製され得る。脂肪族ポリエステルポリオール、脂肪族または芳香族ポリエーテルカーボネートポリオール、脂肪族または芳香族ポリエーテルエステルポリオール、および植物誘導体から得られるポリオールなどの他の種類のポリオールを使用することができる。例示的な実施形態では、第1および第2のポリウレタン層の両方のポリオール成分は、ポリオール成分の総重量(すなわち、イソシアネート反応性成分中のポリオールの総重量)に基づいて、例えば、40重量%~100重量%(例えば、50重量%~100%、60重量%~100重量%、70重量%~100重量%、75重量%~100重量%など)の量の少なくとも1つの芳香族ポリエステルポリオールを含み得る。
【0025】
高密度ポリウレタン層を形成するために、イソシアネート反応性成分は、70~800(例えば、90~700、80~600、100~600、200~550、250~500、300~450、300~400など)のイソシアネート指数でイソシアネート成分と反応し得る。低密度ポリウレタン層を形成するために、イソシアネート反応性成分は、70~800(例えば、90~700、80~600、100~600、150~550、200~500、250~500など)のイソシアネート指数でイソシアネート成分と反応し得る。イソシアネート指数は、ポリウレタンネットワークを形成するための反応混合物中のイソシアネートの当量を、反応混合物中のイソシアネート反応性水素含有材料の総当量で割って、100を掛けて測定される。別の方法で検討すると、イソシアネート指数は、反応混合物中に存在する理論的なイソシアネート反応性水素原子に対する理論的なイソシアネート基の比率であり、パーセンテージで与えられる。
【0026】
(例えば、イソシアネート反応性成分用の)任意選択的な添加剤成分は、例えば、低密度ポリウレタン層用の1つ以上の発泡剤を含み得る。例示的な発泡剤には、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)、水、およびギ酸などのカルボン酸が含まれる。硬質ポリウレタン発泡体における使用に対して当該技術分野で既知の発泡剤を使用することができる。
【0027】
添加剤成分(例えば、イソシアネート反応性成分用の)は、火災バリア材料などの1つ以上の充填剤を含むことができる。例示的な火災バリア材料には、膨張可能なグラファイト、無機化合物のセラミック化混合物、繊維、多孔質シリカ、および中空ガラス微小球が含まれる。理論に拘束されるつもりはないが、出火の熱にさらされると、火災バリア材料を含むポリウレタン層は、物理的/化学的に変性して、高度に膨張した多孔質炭素質チャーの形成につながることがある。火災バリア材料を含むポリウレタン層が火災側(つまり、火に近い高温側)にある場合、その層は、他のポリウレタン層(発泡コアなど)を吹きつける炎から保護するのに役立ち得る。火災バリア層が低温側(すなわち、火災から遠い側)にある場合、火災バリア層は、他のポリウレタン層の亀裂をシールすることによって助け、熱バリア特性を提供するのに寄与することができる。
【0028】
膨張可能なグラファイト(「剥離グラファイト」とも呼ばれるグラファイトのインターカレーション化合物)は、火災条件下で膨張可能な粒子である。膨張可能なグラファイトは、例えば、天然フレークグラファイトをクロム酸の浴、次いで濃硫酸の浴に浸漬することによって調製することができる。例示的な実施形態によれば、膨張可能なグラファイト粒子は、100μιη~1000μιηの粒径を有する。粒径分布は、最小65%~85%>50メッシュであり得る。膨張可能なグラファイトは、その初期容積の少なくとも200倍(例えば、250~350倍)まで膨張することが可能であり得る。膨張率(最小)は、275cm3/g~400cm3/gであり得る。異なる膨張可能なグラファイトは、異なる膨張温度を有し得る。例示的な実施形態によれば、膨張可能なグラファイトは、160℃~225℃前後でその膨張を開始する。例示的な種類の膨張可能なグラファイトには、QUIMIDROGAグレード250、NORD-MIN(登録商標)KP251(Nordmann Rassmannから市販されている)、およびGHL Px95HE(LUHから市販されている)が含まれる。例示的な実施形態では、高密度ポリウレタン層を形成するためのイソシアネート反応性成分は、5重量%~50重量%(例えば、10重量%~40重量%、15重量%~35重量%など)の膨張可能なグラファイトを含み得る。例えば、ポリウレタン層のポリマーマトリックス内に埋め込まれた膨張可能なグラファイトなどの火災バリア材料は、炎にさらされたときに層材料を膨張させることがある。このような挙動は、特定の火災反応要件を有する液化ガスキャリアにとって望ましい場合がある。
【0029】
無機化合物のセラミック化混合物は、無機化合物のセラミック化混合物の分散液を指す。セラミック化組成物という用語は、火災条件下で分解して化学反応を起こし、多孔性の自己支持性セラミック生成物を形成する組成物を含む。例示的な混合物には、ケイ酸塩鉱物および無機リン酸塩が含まれる。追加の無機充填剤および/または熱膨張性材料が、サーミファイ化混合物中に存在してもよい。セラミック化混合物は、例えば、三水酸化アルミニウム、タルク、およびポリリン酸アンモニウムの一部または全部を含んでもよい。例示的な混合物には、三水酸化アルミニウム(ATH)/タルク/ポリリン酸アンモニウム(APP)およびタルク/APP/ホウ酸亜鉛/膨張可能なグラファイトが含まれる。
【0030】
繊維は、ガラス繊維、岩石繊維、玄武岩繊維、および炭素繊維などの支持繊維を指す。例えば、長さ5mm~75mmの細断ガラス繊維を使用することができる。
【0031】
多孔質シリカの例示的な形態は、ナノ多孔質シリカ、特にシリカエアロゲルである。ポリマーマトリックス中のナノ多孔質シリカの例示的な予め形成された分散液は、「エアロゲルブランケット」として市販されている。これらは、例えば、ポリエチレンおよび/またはポリエステルの不織ポリマー繊維に分散されたシリカエアロゲルの顆粒を含み得る。ポリマーマトリックス中のナノ多孔質シリカの分散液は、市販されているシリカエアロゲル粉末を使用してその場で形成することができる。
【0032】
中空ガラス微小球は、中空ガラスベースの材料を指す。例示的な材料は、国際公開第WO2010/065724号で議論されている。例示的な材料は市販されている(例えば、3MのS35Glass Bubbles(商標))。中空ガラス微小球は、10μιη~120μιηの範囲の平均直径を有し得る。
【0033】
添加剤成分は、ポリウレタン層で使用するために当該技術分野で既知の1つ以上の固体充填剤などの他の充填剤を含むことができる。例示的な固体充填剤としては、例えば、フライアッシュ、ボトムアッシュ、細砂、セラミック繊維/粒子、鉱物繊維/粒子、ガラス繊維/粒子、炭素繊維、カーボンブラック、グラファイト、木質繊維/粒子、タルク、粘土、シリカ、酸化物(酸化亜鉛や酸化アルミニウムなど)、水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、炭酸カルシウム、プラスチック粉末(プロピレンベースの粉末やアクリロニトリルブタジエンスチレン-ABSベースの粉末など)、リン酸、および/またはポリアミドが含まれる。例示的な実施形態では、高密度ポリウレタン層を形成するためのイソシアネート反応性成分は、5重量%~50重量%(例えば、10重量%~45重量%、20重量%~40重量%、25重量%~35重量%など)の固体充填剤を含み得る。例えば、高密度ポリウレタン層を形成するためのイソシアネート反応性成分は、酸化物、水酸化物、および炭酸カルシウムの群から選択される少なくとも1つを含み得る。さらに、無機充填剤は、剛性に寄与し得、多層断熱板の温度変動による寸法変化を低減し得る。
【0034】
添加剤成分は、1つ以上の触媒を含み得る。例えば、添加剤成分は、スズおよび/またはアミンベースの触媒を含み得る。例えば、触媒成分は、イソシアネート反応性成分の総重量の5.0重量%未満を占め得る。例示的な触媒には、イソシアネートとそれ自体との反応を促進する三量化触媒が含まれる。触媒の例には、トリス(ジアルキルアミノアルキル)-s-ヘキサヒドロトリアジン(1,3,5-トリス(N、N-ジメチルアミノプロピル)-s-ヘキサヒドロトリアジンなど)、DABCO(商標)TMR30、DABCO(商標)TMR31、DABCO(商標)K-2097(酢酸カリウム)、DABCO(商標)K15(オクタン酸カリウム)、POLYCAT(商標)41、POLYCAT(商標)43、POLYCAT(商標)46、DABCO(商標)TMR、水酸化テトラアルキルアンモニウム(水酸化テトラメチルアンモニウムなど)、アルカリ金属水酸化物(水酸化ナトリウムなど)、アルカリ金属アルコキシド(ナトリウムメトキシドやカリウムイソプロポキシドなど)、および10~20個の炭素原子(およびいくつかの実施形態では、ペンダントヒドロキシル基)を有する長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩が含まれる。
【0035】
添加剤成分は、1つ以上の硬化剤、例えば、二官能性ジアミン化合物または三官能性ジアミン化合物を含む硬化剤を含み得る。任意選択的な鎖延長剤成分は、例えば、1分子あたり2つのイソシアネート反応性基を有し、400未満のイソシアネート反応性基あたりの当量を有し得る鎖延長剤を含み得る。任意選択的な架橋剤成分は、1分子あたり3つ以上のイソシアネート反応性基、および400未満のイソシアネート反応性基あたりの当量を有する少なくとも1つの架橋剤を含み得る。
【0036】
添加剤成分は、1つ以上の水分捕捉剤を含み得る。例示的な水分捕捉剤は、例えば、油を含む懸濁液中のゼオライト粉末を含む。水分捕捉剤は、イソシアネート反応性成分の総重量に基づいて、5重量%未満、3重量%未満、1重量%未満、および/または0.1重量%超の量で存在し得る。
【0037】
様々な他の添加剤、例えば、当業者に既知のものが、任意選択的な添加剤成分に含まれてもよい。例えば、着色剤、水結合剤、界面活性物質、延長剤および/または可塑剤を使用することができる。染料および/または顔料(二酸化チタンおよび/またはカーボンブラックなど)は、ポリウレタン材料に色特性を付与するために任意選択的な添加剤成分に含めることができる 顔料は、固体の形態であり得るか、または固体を予めポリオール担体に分散させることもできる。他の添加剤としては、例えば、UV安定剤、抗酸化剤、空気放出剤、および接着促進剤が挙げられ、これらは、ポリウレタン材料の所望の特性に依存して、独立して使用され得る。
【0038】
ポリウレタン層は、ベース基材および/または表面(例えば、フェーサー層)上にポリウレタン系を塗布する噴霧および/または注入塗布によって形成することができる。噴霧および/または注入塗布は、例えば、連続的な方法で、コンベヤデバイス上で行われ得る。例えば、噴霧および/または注入は、パネル空洞の内部で行われ得る。多層断熱板は、それらを断熱箱の箱構造内に配置する前に作製することができ、および/または断熱箱の箱構造内に直接作製することができる。
【0039】
断熱箱
断熱箱は、断熱箱の最も外側の構造およびその中の少なくとも1つのボイドを画定する箱構造を含む。多層断熱板は、少なくともフェーサー層、高密度ポリウレタン層、および低密度ポリウレタン層を含む。多層断熱板は、ボックス構造内の対応するボイドの寸法に合うように適切な寸法に切断することができる。多層断熱板は、別個の接着剤層を使用して箱構造に結合することができる。しかしながら、板は断熱と支持の両方の特性を備えているため、箱構造内に多層断熱板を効果的に配置するために、特殊な構造は必要ない場合がある。多層断熱板の層のパイルアップ(例えば、高さ300mmの箱用の厚さ100mmの多層断熱板の3つの層)は、断熱と耐衝撃圧力への寄与の両方を提供し得る。多層断熱板の厚さは、補強層の間に所望の距離を提供するように選択することができる。例えば、高さ300mmの箱には、3つの100mm厚の板または5つの60mm厚の板を充填することができる。
【0040】
多層断熱板が箱構造の下部パネルと平行に敷設されている場合、高密度の層は、元の位置を維持するのに役立ち、ならびに/または断熱箱の箱構造を強化するために使用されるパネル、ピラー、および/もしくは内部区画の座屈の可能性を低減させる(もしくは防止する)ことができる。箱構造の底面に平行に敷設された多層断熱板のパイルアップも、断熱に利点をもたらすことができる。例えば、高密度の層は、冷却時の板の収縮を低減させ、それによって断熱材と箱の間に形成される可能性のあるギャップ(ひいてはサーマルブリッジ)を低減させることに役立つ。箱構造内部の多層断熱板の異なる配向、例えば、箱構造の底部パネルに直交に配向することも可能であり得る。異なる配向は、厚さ方向に多少の追加の耐性を提供するのに役立ち得る。
【0041】
多層断熱板を生成するための方法は、以下の段階を含む(例えば、本質的にそれからなる)連続プロセスを含み得る:1)最下層としてフェーサー層を提供すること、2)第1の発泡体層を形成するために、最下層としてのフェーシングに第1の反応混合物を(例えば、高密度ポリウレタン層を形成するために)分配すること、3)任意選択的に、膨張可能なガラスウェブ/ガラス繊維マット(任意選択的)などのガラス繊維補強材を提供すること、4)第2の反応混合物を(例えば、低密度ポリウレタン層を形成するために)第1の発泡体層上に分配すること、5)任意選択的に、膨張可能なガラスウェブ/ガラス繊維マット(任意選択的)などのガラス繊維補強材を提供すること、6)任意選択的に、2番目のフェーシングを最上層として提供すること、7)間隔を置いて配置された2つの対向する成形コンベヤの拘束された上昇下で、成形複合材サンドイッチパネルを硬化させること。任意選択的に、接着剤層を、フェーシングと高密度ポリウレタン層との間、および/またはフェーシングと低密度ポリウレタン層との間に使用することができる。第1および第2の反応混合物の混合の可能性を低減および/または防止するために、第1の形成層の反応性は、第2の層の注入の時に少なくともある程度の硬化を得るように調整されてもよい。上記のプロセスにより、非対称の複合パネルが得られる。必要に応じて、反応混合物を塗布して、最上フェーフィングの内面に高密度層を形成する追加のステップで、対称パネルを作成することもできる。
【0042】
全ての部およびパーセンテージは、特に示されない限り、重量による。特に示されない限り、全ての分子量情報は、数平均分子量に基づく。
【実施例】
【0043】
様々な実施例、比較例、ならびに実施例および比較例で使用される材料に関して、およその特性、特徴、パラメータなどを以下に提供する。
【0044】
【0045】
多層断熱板のサンプルは、表1に示す2つの断熱発泡体配合の1つと表2に示す3つの補強層配合の1つを使用して調製する。
【0046】
実施例および比較例の場合、断熱層(低密度ポリウレタン層)は、以下の2つの断熱層配合の1つを使用して、以下で説明する方法に従って調製される。
【表2】
【0047】
特に、断熱層を形成するための反応混合物を形成するために、配合システム1と上記表1に示される添加剤とを混合して、予備混合のために、イソシアネート反応性成分が形成される。次に、予備混合物とイソシアネート(VORANATE(商標)M600)が混合分配機(例えば、高圧ポリウレタン機)の混合ヘッドに送られ、そこで予備混合物とイソシアネートが高圧衝突により混合されて発泡体層を形成する。
【0048】
実施例の場合、多層断熱板の補強層(高密度ポリウレタン層)は、以下の補強層配合の1つを使用して、以下で説明する方法に従って調製される。
【表3】
【0049】
特に、補強層を形成するための反応混合物を形成するために、配合システム2と上記表2に示される添加剤とを混合して、予備混合のために、イソシアネート反応性成分が形成される。次に、予備混合物とイソシアネート(VORANATE(商標)M220)が混合分配機の混合ヘッドに送られる。
【0050】
フェーサー層は、以下から1つが選択される:
(1)FL1:エンボス加工されたアルミ箔、厚さ50ミクロン
(2)FL2:飽和ガラスフリース、単位面積あたりの質量が280~320g/m2のSilcartからSTONEGLASS300として入手可能。
【0051】
ガラス繊維補強材は、Schmelzer IndustriesからFirmat70g/m2として入手可能な膨張可能なガラスウェブである。
【0052】
表1の断熱層、表2の補強層、および/または上記に列挙した他の材料を使用して、以下の表3に従って、実施例1~8および比較例AおよびBを形成する。
【表4】
【0053】
実施例1、5、および6の補強層は、5重量部の水分捕捉剤を含み、実施例7および8は、2重量部の水分捕捉剤を含む。
【0054】
実施例1~8および比較例AおよびBを調製するために、18メートルの二重コンベヤを備えたSAIP(商標)連続ラインを使用することができる。実施例1~8を形成するためのプロセスは、以下の段階を含む:(i)表3に指定されているように下部フェーシングにフィードすること、(ii)表3で指定された補強層配合物を混合分配機から分配し、組成物が少なくとも部分的に硬化するまで待つこと、(iii)SAIP高圧(HP)混合分配機で発泡体層配合物を分配すること、(iv)表3に指定されているように上部フェーシングをフィードすること、(v)加熱された二重コンベヤの拘束された上昇下で、発泡体コアを上昇させて、硬化させること。コンベヤから出るパネルは、所望のサンプルサイズに切断される。実施例6はさらに、(iii)の後で(iv)の前に、膨張可能なガラスウェブ層である膨張可能なガラスウェブを敷設する追加の段階を含む。比較例AおよびBは、補強層配合物を分配する段階が除かれていること以外は、同様のプロセスを使用して形成することができる。
【0055】
実施例1~8ならびに比較例AおよびBは、おおよそ60℃の二重コンベヤ温度、約4m/分のライン速度、22℃の温度の断熱層および補強層の化学前駆体、ならびに室温のフェーシング層を有する連続プロセスで調製される。実施例1~8ならびに比較例AおよびBの場合、発泡体コア形成組成物の分配は、42mmを中心とする穴を有する2つの固定プラスチックパイプに高圧混合ヘッドを接続することによって行われる。2本のパイプは、ラインの幅全体に並んで位置決めされている。実施例1~8に関して、補強層を形成するための組成物の分配は、混合ヘッドを、分配チャンバおよび幅全体にわたって棒に固定された複数のプラスチックホースからなる排出装置に接続することによって行われ、当該ホースは、25mmの距離の中心にある、
【0056】
実施例を参照すると、断熱箱用の高密度補強層を有する多層板の使用の利用可能な特徴には、以下が含まれる。
(1)水平に置かれた板のパイルアップ(補強層が断熱箱の主要寸法に平行な状態)は:(a)低温での小さな寸法変化に基づいてサーマルブリッジ(ギャップの低減)を低減させることができ、(b)任意の局所的な応力をより広い領域に消散させるのに役立つ補強層と、複数の補強を提供して木製の補強材の座屈の可能性を低減させる補強層との組み合わせに基づいて、耐荷重挙動を向上させることができる。
(2)垂直に置かれた板のパイルアップ(補強層が断熱箱の主要寸法に垂直な状態)は:(a)補強層の補強効果に基づいて、耐荷重挙動を向上させることができる。
(3)平行および直交方向のパイルアップ結合層は:(a)設計の多様性により、断熱に大きな影響を与えることなく機械的強度を向上させることができる(例えば、U値を参照のこと)。例えば、補強層なしのポリウレタン発泡体断熱板の使用を比較すると、U値の悪化は15%以下に制限される可能性がある。
【0057】
加えて、製造の観点から、このプロセスは、密度、厚さ、および組成に作用する所望の剛性の補強層を得るために多様性を可能にする。また、連続プロセスは、費用対効果の高い大量生産に好適である。
【0058】
断熱層および補強層の密度は、ASTM D1622(塗布密度)に従って測定される。
【0059】
10℃でのU値(W/m2・K)-層に平行、はR値の逆数として計算される。一方、多層板のR値は、層の厚さを熱伝導率の値で除算したときに得られる個々の層の寄与として計算される。熱伝導率の値は、次のように決定される。
【0060】
10℃の断熱層の熱伝導率は、200×200mm×25mm(厚さ)の寸法の試験片を使用して、LaserComp熱式流量計で測定される。同じ装置を使用して、高密度ポリウレタン層を含む試験片の熱伝導率と、低密度ポリウレタン発泡体層の厚さの一部を測定する。低密度ポリウレタン発泡体層および複合材料の熱伝導率の熱伝導率の測定から、高密度ポリウレタン層の熱伝導率を推定することが可能である。検証目的で、高密度層の4つのサンプルを次の密度で調製する:192、297、393、および422kg/m3。全ての結果は一緒にプロットされ、調査された範囲の熱伝導率と密度の線形近似を示している(密度200kg/m3で0.055、密度300kg/m3で0.083、400℃で0.110)。次に、低密度ポリウレタン層の熱伝導率の測定値と高密度ポリウレタン層について上記のように推定された値を利用して、層に直交し、層に平行な熱流の両方の方向における複合材料のU値を計算する。
【0061】
圧痕は、次の条件を使用して測定される:50mm/分の移動速度、10kNの荷重セル、直径19mmの半球の圧子(PV3960で指定)を使用して、層に直角に加えられた荷重、ならびに寸法200×200mm×全厚の試験片は、底部が200mm(長さ)×200mm(幅)および40mmの壁の長方形の金属製の箱にはめ込んだ状態で試験される。金属製の箱は、試験中に試験片を所定の位置に保持するのに役立つ。実施例のパネルサンプルは、高密度層に隣接する表面で試験された
【0062】
層に平行な荷重による圧縮は、以下に従って測定される:全厚(100mm)の試験片は、寸法200×100mmに切断された。上記の寸法の2つの試験片を並べて配設し、反対側の外側に高密度層を向けて(対称性の理由で)、寸法が200mm(長さ)、200mm(幅)および40mmの壁の長方形の金属製の箱に底部をはめ込んだ(アセンブリを所定の位置に保持し、摺動して離れないようにするため)。荷重は、ダイナモメーターの円形プレート(直径15cm)から、合板(厚さ18mm)またはアルミニウム(厚さ10mm)で作られた剛性の四角いプレートに移された。最終用途の代表として選択された合板は、実施例のパネルサンプルの試験条件下でわずかに曲がっていることが指摘されている。圧縮試験は、30kNのロードセルと1mm/分の移動速度を使用して行われた。
本出願は例えば以下の発明を提供する。
[1] 液化ガスキャリア内の断熱バリアの断熱箱であって、
底部パネルと、上部パネルと、外部ピラーと、少なくとも1つのボイドを画定する、任意選択的な少なくとも1つの内部区画と、を含む、箱構造を備え、
前記少なくとも1つのボイドが、少なくとも1つの多層断熱板を含み、前記少なくとも1つの多層断熱板の各々が、少なくとも1つのフェーサー層と、ASTM D1622に従って、100kg/m
3
~2000kg/m
3
の第1の密度を有する少なくとも1つの第1のポリウレタン層と、ASTM 1622に従って、100kg/m
3
未満の第2の密度を有する少なくとも1つの第2のポリウレタン層と、を含む、断熱箱。
[2] 前記少なくとも1つの第1のポリウレタン層が、前記多層断熱板の総厚の0.5%~50.0%を占める、上記[1]に記載の断熱箱。
[3] 前記少なくとも1つの第1のポリウレタン層が、少なくとも第1のイソシアネート成分と、第1のイソシアネート反応性成分と、任意選択的に1つ以上の充填剤と、を含む、第1の混合物の反応生成物であり、
前記第1の混合物のイソシアネート指数が、80~600であり、
前記第1の混合物が、付加的に追加されるいかなる物理的発泡剤も含まない、上記[1]または[2]に記載の断熱箱。
[4] 前記第1のイソシアネート反応性成分が、前記第1の混合物の総重量に基づいて、5重量%~60重量%の量の前記1つ以上の充填剤を含む、上記[3]に記載の断熱箱。
[5] 前記1つ以上の充填剤が、膨張可能なグラファイトを含む、上記[4]に記載の断熱箱。
[6] 前記少なくとも1つの第2のポリウレタン層が、少なくとも第2のイソシアネート成分と、第2のイソシアネート反応性成分と、物理的発泡剤と、を含む、第2の混合物の反応生成物であり、
前記第2の混合物のイソシアネート指数が、80~600である、上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の断熱箱。
[7] 前記第2のポリウレタン層が、ガラス繊維補強材を含む、上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の断熱箱。
[8] 前記断熱箱が、液化天然ガスキャリア内の断熱バリアの一部である、上記[1]~[7]のいずれか1項に記載の断熱箱。
[9] 上記[1]~[8]のいずれかに記載の断熱箱の形成方法であって、前記箱構造を提供することと、前記少なくとも1つの多層断熱板を前記箱構造に載置することと、を含む、断熱箱の形成方法。