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特許7417524光コヒーレンストモグラフィ撮像におけるセグメント化の改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】光コヒーレンストモグラフィ撮像におけるセグメント化の改善
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20240111BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61B3/10 100
G01N21/17 630
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020528478
(86)(22)【出願日】2018-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 IB2018059307
(87)【国際公開番号】W WO2019106519
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】62/592,497
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】フーカン レン
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-209201(JP,A)
【文献】国際公開第2012/002302(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0062590(US,A1)
【文献】特開2017-131550(JP,A)
【文献】特開2017-127506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像におけるセグメント化を改善するための方法であって、
撮像された組織のOCT画像を取得することと、
前記OCT画像の少なくとも一部のための第1の特徴画像を生成することと、
前記OCT画像基づき、前記OCT画像横切る第1の方向に画像データを積分することによって、前記OCT画像の少なくとも前記一部のための第2の特徴画像を生成することと、
前記第1及び第2の特徴画像の数学的関数として第3の特徴画像を生成することと、
前記第3の特徴画像に基づいて前記OCT画像用の層セグメント化を実行することと、
を含み、
前記OCT画像が、複数のAラインを含み、前記第2の特徴画像を生成することが、各前記Aラインについて、前記OCT画像の底部エッジから反対側エッジの方へ、前記Aラインに沿った方向で前記OCT画像からの画像データを積分することを含む、方法。
【請求項2】
前記OCT画像の少なくとも前記一部のために前記第1の特徴画像を生成することが、前記第1の特徴画像を取得するために、前記OCT画像の行方向か、前記OCT画像の列方向か、又は両方に沿って層の勾配を計算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第3の特徴画像を生成することが、前記第1の特徴画像から前記第2の特徴画像を減算することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記OCT画像の視覚表現を表示することをさらに含み、前記視覚表現が、前記層セグメント化の指標を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像機器であって、
撮像された組織のOCT画像を取得するように構成された通信インターフェースと、
前記通信インターフェースに動作可能に結合された、且つ
前記OCT画像の少なくとも一部のための第1の特徴画像を生成するように、
前記OCT画像基づき、前記OCT画像横切る第1の方向における画像データを積分することによって、前記OCT画像の少なくとも前記一部のための第2の特徴画像を生成するように、
前記第1及び第2の特徴画像の数学的関数として第3の特徴画像を生成するように、且つ
前記第3の特徴画像に基づいて、前記OCT画像用の層セグメント化を実行するように構成された処理回路と、
を含み、
前記OCT画像が、複数のAラインを含み、前記処理回路が、各前記Aラインについて、前記OCT画像の底部エッジから反対側エッジの方へ、前記Aラインに沿った方向で前記OCT画像からの画像データを積分することによって、前記第2の特徴画像を生成するように構成される、OCT撮像機器。
【請求項6】
前記処理回路が、前記第1の特徴画像を取得するために、前記OCT画像の行方向か、前記OCT画像の列方向か、又は両方に沿った層の勾配を計算することによって、前記OCT画像の少なくとも前記一部のための前記第1の特徴画像を生成するように構成される、請求項5に記載のOCT撮像機器。
【請求項7】
前記処理回路が、前記第1の特徴画像から前記第2の特徴画像を減算することによって、前記第3の特徴画像を生成するように構成される、請求項5に記載のOCT撮像機器。
【請求項8】
ディスプレイであって、前記処理回路が、前記OCT画像の視覚表現を表示するために前記ディスプレイを用いるように、又は前記OCT画像の視覚表現を前記ディスプレイに表示させるように構成され、前記視覚表現が、前記層セグメント化の指標を含むディスプレイをさらに含む、請求項5に記載のOCT撮像機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される実施形態は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像におけるセグメント化性能を改善するための装置、システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障手術、角膜内インレー、レーザ角膜切削形成術(LASIK)、及びレーザ屈折矯正角膜切除術(PRK)などの現在の眼科屈折手術方法は、最適な屈折補正を処方するために、眼生物測定データに依存する。歴史的には、眼科手術処置は、目における部分を撮像するために、超音波生物測定器具を用いた。幾つかの場合に、これらの生物測定器具は、目のいわゆるAスキャンを生成した。即ち、目の光学軸と平行か又は小さな角度だけを作る、目の光学軸と典型的には整列された撮像軸に沿った全ての界面からの音響エコー信号を生成した。他の器具は、生物測定器具のヘッド又は先端が、走査線に沿って走査されたときに連続的に取られたAスキャンの集まりを実質的に組み立てるいわゆるBスキャンを生成した。この走査線は、典型的には、目の光学軸の側方にある。次に、これらの超音波A又はBスキャンは、眼軸長、目の前部深度、又は角膜曲率半径などの生物測定データを測定し決定するために用いられた。
【0003】
幾つかの手術処置において、第2の別個のケラトメータが、角膜の屈折特性及びデータを測定するために用いられた。次に、超音波測定及び屈折データは、処方される且つ後続の白内障の超音波水晶体乳化吸引術の手術中に挿入される最適な眼内レンズ(IOL)の特性を計算するために、半経験的な処方で組み合わされた。
【0004】
より最近では、超音波生物測定装置は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)の原理に基づいて構築される光学撮像及び生物測定器具に急速に取って代わられた。OCTは、人間の網膜、角膜又は白内障のマイクロメートル規模の高分解能断面撮像を可能にする技法である。OCT技術は、今や臨床診療において一般的に用いられ、かかるOCT器具は、今や全てのIOL処方事例の80~90%で用いられている。数ある理由の中で、OCT器具の成功は、撮像の非接触性及び超音波バイオメータの精度より高い精度ゆえである。
【0005】
目のOCT画像における層境界の正確なセグメント化は、診断及び手術ガイダンス用に使用できる定性測定値に定性画像を変換する重要なステップである。このセグメント化は、手動で行うことができるが、手動プロセスは、時間を消費し、主観的である。従って、自動的な層セグメント化アルゴリズムが開発された。しかしながら、OCTセグメント化は、OT画像におけるスペックル及び幾つかの目における複雑な病理ゆえに困難なままである。例えば、スペックルのために、相異なるタイプの組織間の連続的で薄い境界は、OCT画像においては不連続で、はるかに厚く見える可能性がある。更に、過熟白内障を伴う目などの病的な目において、水晶体内における分散勾配は、他のエッジ、特に後部水晶体(嚢)と硝子体との間の境界のような弱いコントラストのエッジのコントラストをかなり低減する可能性がある。従来のセグメント化方法では、これらの場合の幾つかにとって、セグメント化の精度は、低減されるか又は受け入れがたい。従って、セグメント化技法における更なる改善が必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示されるのは、後部水晶体(嚢)と硝子体との間のエッジなど、特に、弱いコントラストを有するエッジ用にOCTセグメント化性能を改善するための技法及び機器である。これらの技法及び機器の実施形態は、真のエッジの特徴を向上させるために、ノイズ特徴を自動的に最小化するように特徴統合を用いる。結果として、セグメント化性能は改善される。
【0007】
特に現在開示される技法の実施形態は、OCT撮像におけるセグメント化を改善するための方法を含み、方法は、撮像された組織のOCT画像を取得することと、OCT画像の少なくとも一部のための第1の特徴画像を生成することと、OCT画像又は第1の特徴画像のいずれかに基づき、OCT画像又は第1の特徴画像を横切る第1の方向に画像データを積分することによって、OCT画像の少なくとも一部のための第2の特徴画像を生成することと、を含む。第3の特徴画像が、第1及び第2の特徴画像の数学的関数として生成され、OCT画像用の層セグメント化が、第3の特徴画像に基づいて実行される。
【0008】
また、以下で詳細に説明されるのは、上記で要約された方法又はその変形を実行するように構成されたOCT撮像機器の実施形態である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】幾つかの実施形態と一致する光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムを示す図である。
図2】目の概略図である。
図3】OCT撮像におけるセグメント化を改善するための例示的な方法を示すプロセスフロー図である。
図4】例示的なOCT画像を示す。
図5図4のOCT画像に対して実行された従来のセグメント化方法の結果を示す。
図6図4のOCT画像から生成された第1の特徴を示す。
図7図6の特徴画像から統合によって生成された第2の特徴を示す。
図8図6及び図7の第1及び第2の特徴から生成された第3の特徴を示す。
図9図8の第3の特徴画像に対して実行された層セグメント化の結果を示す。
図10】例示的なOCT走査パターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の記載において、或る実施形態を説明する特定の詳細が明らかにされる。しかしながら、開示される実施形態が、これらの特定の詳細の幾つか又は全てがなくても実施され得ることが、当業者には明らかになろう。提示される特定の実施形態は、限定ではなく実例であるように意図されている。当業者は、本明細書では特に説明されていないが、この開示の範囲及び趣旨内にある他の材料を実現し得る。
【0011】
現在開示される技法及び機器の実施形態は、顕微鏡搭載及び顕微鏡統合両方の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムで用いられてもよい。図1は、顕微鏡統合OCTシステム100の例を示し、且つOCTの基本原理を示すために提示される。本明細書で説明される技法を実行するように構成されたOCT設備が、産業において既に周知の様々な方法で、図1に示されている例から変化し得ることが認識されよう。
【0012】
システム100は、目10における撮像領域の視覚画像を提供するように構成された目の視覚化システム110と、撮像領域のOCT画像を生成するように構成された光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像システム120と、撮像領域の屈折マッピングを生成するように構成された屈折計130と、OCT画像及び屈折マッピングに基づいて、目の屈折特性を決定するように構成された分析器140と、を含む。OCT撮像システム120、屈折計130、及び分析器/コントローラ140が、目の視覚化システム110に統合され得ることが認識されよう。
【0013】
撮像領域は、手術処置の対象など、目10の一部又は領域とすることができる。図2は、目10の特徴を示す断面図である。角膜処置において、撮像領域は、角膜12の一部とすることができる。白内障手術において、撮像領域は、目の嚢及び水晶体(レンズ)14とすることができる。撮像領域はまた、前眼房20、角膜12、水晶体14、及び虹彩18を含んでもよい。代替として、撮像領域は、角膜12、水晶体14、虹彩18、及び網膜16を含む目全体をカバーしてもよい。網膜処置において、撮像領域は、網膜16の領域とすることができる。上記の撮像領域のどんな組み合わせも、同様に撮像領域とすることができる。
【0014】
目の視覚化システム110は、顕微鏡112を含むことができる。幾つかの実施形態において、顕微鏡112は、細隙灯を含むことができる。顕微鏡112は、光学顕微鏡、手術用顕微鏡、ビデオ顕微鏡、又はそれらの組み合わせとすることができる。図1の実施形態において、目の視覚化システム110(太い実線で示されている)は、手術用顕微鏡112を含み、手術用顕微鏡112は、今度は、対物レンズ113、光学部品115、及び双眼鏡又は接眼鏡117を含む。目の視覚化システム110はまた、ビデオ顕微鏡のカメラ118を含むことができる。
【0015】
システム100は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)撮像システム120を更に含む。OCT撮像システム120は、撮像領域のOCT画像を生成することができる。OCT撮像システムは、撮像領域のAスキャン又はBスキャンを生成するように構成することができる。OCT画像又は画像情報は、目の生物測定又は屈折特性を決定するために、例えば、出力された「屈折出力」信号と組み合わせて、分析器140によって使用できる「OCT出力」信号で出力することができる。
【0016】
OCT撮像システム120は、500~2,000nmの波長範囲で、幾つかの実施形態では900~1,400nmの範囲で動作するOCTレーザを含むことができる。OCT撮像システム120は、時間領域、周波数領域、スペクトル領域、掃引周波数、又はフーリエ領域OCTシステム120とすることができる。
【0017】
様々な実施形態において、OCT撮像システム120の一部は、顕微鏡に統合することができ、OCT撮像システム120の一部は、別個のコンソールに設置することができる。幾つかの実施形態において、顕微鏡に統合されるOCT部分は、OCTレーザなどのOCT光源だけを含むことができる。目から返されたOCTレーザ又は撮像光は、ファイバに供給し、且つOCT撮像システム120の第2の部分、即ち顕微鏡外のOCT干渉計に送ることができる。OCT干渉計は、幾つかの実施形態において、別個のコンソールに位置することができ、別個のコンソールには、適切なエレクトロニクスがまた、OCTの干渉信号を処理するために位置する。
【0018】
OCTレーザは、角膜頂点と水晶体頂点との間の距離など、前眼房の範囲より長いコヒーレンス長を有してもよい。この距離は、ほとんどの患者において約6mmであり、従って、かかる実施形態は、4~10mm範囲におけるコヒーレンス長を有することができる。別の実施形態は、30~50mmなど、眼軸長全体をカバーするコヒーレンス長を有することができる。更に別の実施形態は、10~30mm範囲などの中間コヒーレンス長を有することができ、最後に幾つかの実施形態は、50mmより長いコヒーレンス長を有することができる。幾つかの掃引周波数レーザは、これらのコヒーレンス長範囲に近づいている。幾つかのフーリエドメインモードロッキング(FDML)レーザ、垂直キャビティ面発光レーザ(VCSEL)ベース、ポリゴンベース、又はMEMSベースの掃引レーザは、既に、これらの範囲におけるコヒーレンス長を備えたレーザビームを放出することができる。
【0019】
システム100として示された例は、撮像領域の屈折マッピングを生成するために、屈折計130を更に含む。屈折計130は、レーザ光線トレーサ、シャックハルトマン、タルボモアレ、又は別の屈折計を含む広く用いられるタイプのいずれかであってもよい。屈折計130は、波面分析器、収差検出器、又は収差計を含むことができる。幾つかの参考文献は、これらの用語を実質的に交換可能又は同義的に用いている。屈折計130の動作範囲は、有水晶体眼及び無水晶体眼、即ち生来の水晶体のある目及び生来の水晶体のない目の両方をカバーすることができる。
【0020】
幾つかのシステムにおいて、OCT撮像システム120及び屈折計130は、顕微鏡112又は細隙灯の主な光路への光結合を提供するために、ビームスプリッタ152cを含むことができる顕微鏡インターフェース150を介して統合することができる。ミラー154-1は、屈折計130の光を光路に結合することができ、ミラー154-2は、OCT120の光を光路に結合することができる。顕微鏡インターフェース150、そのビームスプリッタ152c、並びにミラー154-1及び154-2は、OCT撮像システム120及び屈折計130を目の視覚化システム110と統合することができる。
【0021】
OCT撮像システム120が、900~1,400nmの近赤外線(IR)範囲で動作し、且つ屈折計が、700~900nmの範囲で動作する幾つかの実施形態において、ビームスプリッタ152cは、高効率及び低ノイズ動作用に400nm~700nmの可視範囲で100%近くの透過性になり、700~1,400nmの範囲の近IR範囲で100%近くの反射性になることができる。同様に、ミラー154-1が、光を屈折計130に方向転換するシステムにおいて、ミラー154-1は、700~900nmの近IRの範囲で100%近くの反射性になることができ、ミラー154-2は、900~1,400nmの近IRの範囲で100%近くの屈折性になって、OCT撮像システム120に方向転換させることができる。ここで、「100%近く」は、幾つかの実施形態において50~100%の範囲における値を指し、又は別の実施形態において80~100%の範囲における値を指すことができる。幾つかの実施形態において、ビームスプリッタ152cは、700~1,400nmの範囲における波長用に50~100%の範囲における反射率を有し、且つ400~700nmの範囲における波長用に0~50%の範囲における反射率を有することができる。
【0022】
図1は、システム100が、ビームスプリッタ152cに加えて、第2のビームスプリッタ152bを含み得ることを示す。ビームスプリッタ152cは、対物レンズ113と、統合されたOCT120/屈折計130集合との間で光を導く。ビームスプリッタ152bは、ディスプレイ160と双眼鏡117との間で光を導くことができる。第3のビームスプリッタ152aは、カメラ118に光を導くことができる。
【0023】
分析器又はコントローラ140は、受信されたOCT及び屈折情報に基づいて、統合生物測定分析を実行することができる。分析は、光線追跡ソフトウェア及びコンピュータ支援設計(CAD)ソフトウェアを含む、種々様々な周知の光学ソフトウェアシステム及び製品を使用することができる。統合生物測定の結果は、(1)目の部分における光パワーの値、及び適切なIOL用の対応する提案又は処方されたジオプトリと、(2)角膜の乱視の値及び方位、並びにこの乱視を補償するトーリックIOLの提案又は処方されたトーリックパラメータと、(3)とりわけ、この乱視を補正する1つ又は複数の減張切開の提案又は処方された位置及び長さと、にすることができる。
【0024】
分析器140は、この統合生物測定の結果をディスプレイ160に出力することができ、その結果、ディスプレイ160は、これらの結果を外科医用に表示することができる。ディスプレイ160は、目の視覚化システム110に関連する電子ビデオディスプレイ又はコンピュータ化されたディスプレイとすることができる。別の実施形態において、ディスプレイ160は、顕微鏡112の外側に装着されるなど、顕微鏡112のすぐ近くのディスプレイとすることができる。最後に、幾つかの実施形態において、ディスプレイ160は、顕微鏡112の光路に表示光を投影するマイクロディスプレイ又はヘッドアップディスプレイとすることができる。投影は、ミラー157を介して主な光路に結合することができる。別の実施形態において、全ヘッドアップディスプレイ160は、顕微鏡112内に位置するか、又は顕微鏡112のポートと統合することができる。
【0025】
解剖学的に、虹彩18は、水晶体又は眼内レンズ(嚢)14に接しているか又はそのすぐ近くに存在し、そのことは、水晶体(又はレンズ)情報だけがユーザにとって興味深い場合に、難題をもたらす可能性がある。例えば、カスタマイズされた目のモデルを作る場合に、前部水晶体の形状を含むことは、非常に重要である。しかしながら、虹彩18が、水晶体表面と密に接触している状態では、前部虹彩及び前部水晶体の混合物が、前部水晶体として誤って解釈される可能性があり、次に、それは、目のモデルの能力を害する可能性がある。従って、虹彩の検出は、水晶体情報を正確に抽出するために、非常に重要である。
【0026】
上記で簡単に説明されたように、OCTセグメント化は、主としてスペックル及び複雑な病理ゆえに難しい。例えば、スペックルゆえに、相異なるタイプの組織間の連続的な薄い境界は、不連続で、はるかに厚くなる。更に、過熟白内障などの病的な目において、水晶体内における分散勾配は、他のエッジの、特に後部水晶体(嚢)と硝子体との間の境界のような弱いコントラストエッジのコントラストをかなり低減する可能性がある。従来のセグメント化方法を用いると、精度は、これらの場合には大きく低減されるか、又はセグメント化することは不可能になる。
【0027】
真のエッジの特徴を向上させるために、ノイズ特徴を自動的に最小化するように特徴統合を用いる技術及び機器が、本明細書で説明される。結果として、セグメント化性能は、改善される。
【0028】
図3は、OCT撮像におけるセグメント化を改善するための例示的な方法を示す流れ図である。ブロック310に示されているように、方法は、最初にOCT画像を取得することを含む。ブロック320に示されているように、第1の特徴画像が、OCT画像の少なくとも一部のために画像セグメント化用に生成される。これは、例えば、行方向か、列方向か、又は両方に沿って勾配を生成することを含んでもよい。この第1の特徴を生成するために、ニューラルネットから学習された畳み込みカーネルなどの他の畳み込みカーネルを用いることもまた可能である。
【0029】
ブロック330に示されているように、画像データの統合は、第2の特徴画像を生成するために、関心のあるエッジを斜めに横切る方向に沿って実行される。この角度は、0.1度~179.9度の任意の数とすることができる。統合は、幾つかの実施形態において、ブロック320に示されているステップで生成された特徴に基づくことができる。統合が、オリジナルOCT強度など、ブロック320に示されているステップで生成された特徴と相異なる特徴に基づくこともまた可能である。
【0030】
ブロック340に示されているように、数学的演算が、第3の特徴画像を生成するために、第1及び第2の特徴画像に適用される。幾つかの実施形態において、例えば、数学的演算は、単純な減算とすることができる。この場合に、新しい特徴画像は、ブロック320に示されているステップに従って生成されるような第1の特徴画像から、ブロック330に示されているステップに従って生成されるような第2の特徴画像の全て又は一部を減算することによって導き出される。
【0031】
最後に、ブロック350に示されているように、OCT画像用の層セグメント化は、第3の特徴画像に基づいて実行される。統合プロセスゆえに、セグメント化コントラストは向上され、セグメント化精度は改善される。
【0032】
上記で提案されたように、OCT画像の少なくとも一部のために第1の特徴画像を生成することは、第1の特徴画像を取得するために、OCT画像の行方向か、OCT画像の列方向か、又は両方に沿って勾配を計算することを含む。幾つかの実施形態において、OCT画像は、複数のAラインを含み、第2の特徴画像を生成することは、OCT画像又は第1の特徴画像の底部エッジから反対側エッジの方へ、Aラインに沿った方向でOCT画像又は第1の特徴画像からの画像データを統合することをAラインのそれぞれのために含む。幾つかの実施形態において、上記で言及したように、第3の特徴画像を生成することは、第1の特徴画像から第2の特徴画像を減算することを含む。ひとたび層セグメント化が、OCT画像用に実行されると、OCT画像の視覚表現が表示されてもよく、視覚表現は、層セグメント化の指標を含む。
【0033】
図4~9は、図3に示された、且つ上記で論じられた方法の例示的な使用を示す。図4は、左から右に指し示された多くのAラインを含む例示的なOCT画像を示し、Aラインは、画像の上端から底部に延びる。ライン走査、ラスタ走査、円形走査、螺旋走査、リサージュ走査、フラワースキャンなど、いずれかのOCT走査パターンに関して本明細書で説明される技法は、注目に値する。図10は、図4のOCT画像を取得するために用いられる走査パターンを示す。走査は、走査パターンの一ポイントで開始し、且つ同じポイントに戻るまで、パターンの各花弁を通過する。図4において、OCT走査は、一般に、(上端から底部に)角膜、虹彩及び水晶体を描写する。
【0034】
図4において、破線ボックスで強調された関心のあるエッジは、貧弱なコントラストを示す。このエッジは、この例における改善された層セグメント化の焦点である。
【0035】
図5は、従来のセグメント化アプローチの結果を示す。水晶体内の強い分散勾配ゆえに、後部水晶体(嚢)と硝子体との間のセグメント化されたエッジは、破線円で強調されているように、OCT画像の幾つかの場所で、水晶体内に不正確に配置された。
【0036】
図6~9は、図3に関連して上記で説明された技術の性能を示す。例えば図4に示されているように、ひとたびOCT画像が取得されると、セグメント化用の第1の特徴画像が生成される。図6において、セクション(a)は、図4において破線ボックスで強調された領域の勾配特徴画像を示す。図6において、セクション(b)及び(c)は、それぞれ、勾配特徴のズームインビューを表示する。セクション(b)及び(c)で見ることができるように、オリジナルOCT画像におけるスペックルは、エッジにおけるかなりの不連続性及び不均一性を生成する。更に、水晶体内の強い勾配特徴は、後部水晶体(嚢)と硝子体との間のエッジのコントラストを低減する。
【0037】
図7は、この場合に図6のセクション(a)において生成され表示された特徴に基づいて、第2の統合特徴の画像結果を示す。しかしながら、統合特徴がまた、オリジナルOCT画像に基づいて生成され得ることが注目に値する。この例において、統合は、画像の底部から、且つ各Aラインに沿って開始された。例えば、図7における各画素は、画像の底部からそのAラインに沿ったその画素への累積された強度値を示す。
【0038】
この第2の統合特徴画像が生成された後で、1つ又は複数の数学的演算が、図8のセクション(a)に示されているような第3の特徴画像を生成するために、第1及び第2の特徴画像に適用され得る。図8のセクション(b)及び図8のセクション(c)は、図6のセクション(a)及び図6のセクション(c)にそれぞれ示されている同じ領域に対応する2つの領域の拡大図を示す。水晶体内のノイズ特徴が、大きく低減されることが分かる。
【0039】
図9のセクション(a)は、図6に示されている新しい特徴に基づいたセグメント化結果を示す。層セグメント化を実行するために、様々なセグメント化アルゴリズムのいずれが、第3の特徴画像に適用されてもよいことに留意されたい。図9のセクション(a)の破線ボックスにおいて、セグメント化されたエッジは、後部水晶体(嚢)と硝子体との間の境界の真の位置を反映する。直接比較は、図9のセクション(b)(オリジナルのセグメント化を示す)を図9のセクション(a)と比較することによって視覚化することができ、図9のセクション(a)は、図8の特徴画像に対して実行されるような(同じセグメント化アルゴリズムを用いる)セグメント化を示す。
【0040】
本明細書で説明される技法は、OCT撮像機器から、例えば図1に示されているような機器から取得されたOCT画像を用いて実行されてもよい。これらの技法は、本明細書で説明されるOCT撮像及び虹彩検出技法を統合する撮像システムを生成するために、OCT撮像機器自体に統合されてもよい。
【0041】
従って、本発明の幾つかの実施形態は、OCT画像処理機器を含み、OCT画像処理機器は、目の走査から取得される、画像組織のOCT画像を取得するための通信インターフェースと、通信インターフェースに動作可能に結合された、且つ本明細書で説明される技法の1つ又は複数を実行するように構成された処理回路と、を含む。このOCT画像処理機器は、幾つかの実施形態において、図1に描写された分析器/コントローラ140に対応してもよい。
【0042】
これらの様々な実施形態において、OCT画像処理機器によって取得されたOCTデータは、複数のAラインを含み、Aラインの幾つかは、目の虹彩及び水晶体を通過し、Aラインの幾つかは、水晶体を通過するが虹彩は通過しない。処理回路は、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどと、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどによる実行用のプログラムコード(プログラムコードは、本明細書で説明される全て又は技法を実行するためのコンピュータプログラム命令を含む)を格納する関連メモリと、を含んでもよく、且つ同様に又は代わりに、本明細書で説明される技法のいずれかにおける全て又は部分を実行するように構成された他のデジタル論理を含んでもよい。それによって、処理回路は、OCT画像の少なくとも一部のための第1の特徴画像を生成するように、OCT画像又は第1の特徴画像のいずれかに基づき、OCT画像又は第1の特徴画像を横切る第1の方向における画像データを統合することによって、OCT画像の少なくとも一部のための第2の特徴画像を生成するように、且つ第1及び第2の特徴画像の数学的関数として第3の特徴画像を生成するように構成される。処理回路は、第3の特徴画像に基づいて、OCT画像用の層セグメント化を実行するように更に構成される。
【0043】
幾つかの実施形態において、OCT画像処理機器は、ビデオディスプレイ、例えば図1に示されたディスプレイ160を更に含むか、又はそれと関連付けられ、処理回路は、OCT画像の視覚表現を表示するためにディスプレイを用いるように、又はOCT画像の視覚表現をディスプレイに表示させるように更に構成され、視覚表現は、層セグメント化の指標を含む。
【0044】
上記で説明されたOCT画像処理機器は、様々な実施形態において、上記で説明された技法の変形の1つ又は幾つかを実行するように構成されてもよい。従って、OCT画像処理機器の幾つかの実施形態において、処理回路は、第1の特徴画像を取得するために、OCT画像の行方向か、OCT画像の列方向か、又は両方に沿った勾配を計算することによって、OCT画像の少なくとも一部のための第1の特徴画像を生成するように構成される。幾つかの実施形態において、処理回路は、OCT画像又は第1の特徴画像の底部エッジから反対側エッジの方へ、Aラインに沿った方向でOCT画像又は第1の特徴画像からの画像データを統合することによって、Aラインのそれぞれのために第2の特徴画像を生成するように構成される。幾つかの実施形態において、処理回路は、第1の特徴画像から第2の特徴画像を減算することによって、第3の特徴画像を生成するように構成される。
【0045】
上記で説明された特定の実施形態は、本発明を例示するが、制限はしない。上記で説明され且つ以下で請求されるように、本発明の原理に従って、多数の修正及び変形が可能であることもまた理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10