IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バロ セラピューティクス オイの特許一覧

<>
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図1
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図2
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図3
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図4
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図5
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図6
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図7
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図8
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図9
  • 特許-改変腫瘍溶解性アデノウイルス 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】改変腫瘍溶解性アデノウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20240111BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240111BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240111BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20240111BHJP
   C12N 15/28 20060101ALI20240111BHJP
   C12N 15/19 20060101ALI20240111BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240111BHJP
   C12N 15/34 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
C12N7/00
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/761
C12N15/28
C12N15/19
C12N15/62 Z
C12N15/34
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020550115
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056768
(87)【国際公開番号】W WO2019179977
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】1804473.5
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1814867.6
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517199709
【氏名又は名称】バロ セラピューティクス オイ
【氏名又は名称原語表記】VALO THERAPEUTICS OY
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【弁理士】
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ランキ,トゥーリ
(72)【発明者】
【氏名】ペソネン,サリ
(72)【発明者】
【氏名】プリハ,ペトリ
(72)【発明者】
【氏名】イレソマキ,エルコ
(72)【発明者】
【氏名】セルロ,ビンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】マーティンズ,ベアトリス
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522805(JP,A)
【文献】特表2003-501097(JP,A)
【文献】国際公開第2017/118864(WO,A1)
【文献】Cancer Gene Ther.,2008年,Vol. 15,pp.9-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 7/01
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的癌細胞において溶解活性を有する血清型5の改変された複製アデノウイルスであって:
a) 塩基対923~946をコードするヌクレオチドの欠失である、E1A遺伝子欠失;
b) 血清型5 Adのノブが血清型3 Adのノブによって置換されている、アデノウイルス繊維タンパク質のノブの5/3キメラ置換;
c) 14.7k遺伝子欠失であって、前記欠失が野生型アデノウイルスに関して塩基対3044~30460の欠失であり、欠失した配列GGA GGA GAT GAC TGAが、GGA GGA GAC GAC TGAに置換されているもの;
d) gp19k遺伝子欠失および7.1k遺伝子欠失であって、前記欠失が野生型アデノウイルスに関して塩基対28541~29211の欠失であるもの;
を含む、改変された複製アデノウイルス。
【請求項2】
前記アデノウイルスが、OX40Lをコードする分子の挿入によってさらに改変されている、請求項1に記載の改変アデノウイルス。
【請求項3】
前記OX40LがヒトOX40Lである、請求項2に記載の改変アデノウイルス。
【請求項4】
前記OX40LがE3B領域に挿入され、遺伝子14.7K欠失を置換する、請求項2または3に記載の改変アデノウイルス。
【請求項5】
前記アデノウイルスが、CD40Lをコードする分子の挿入によって改変される、請求項1~4のいずれか1に記載の改変アデノウイルス。
【請求項6】
前記CD40LがヒトCD40Lである、請求項5に記載の改変アデノウイルス。
【請求項7】
前記CD40L分子が、2Aプロセッシング部位を用いてOX40Lのすぐ下流に挿入される、請求項5又は6に記載の改変アデノウイルス。
【請求項8】
前記2Aプロセシング部位が2つの導入遺伝子の間に挿入され、前記2Aプロセシング部位の前に切断部位およびSGSGリンカーがあり、前記導入遺伝子の有効な切断を確実にする、請求項7に記載の改変アデノウイルス。
【請求項9】
前記2Aプロセシング部位が、口蹄疫ウイルス2Aプロセシング部位(F2A)または豚テシオウイルス-1 2Aプロセシング部位である、請求項7または8に記載の改変アデノウイルス。
【請求項10】
前記CD40L分子が、ウイルスの後期領域、特に後期領域3(L3)に挿入される、請求項5または6に記載の改変アデノウイルス。
【請求項11】
前記CD40L分子が、ポリアデニル化部位に先行する23K遺伝子から下流に挿入される、請求項10に記載の改変アデノウイルス。
【請求項12】
スプライスアクセプター部位および/またはKozak配列が、前記CD40L分子の上流に提供または挿入される、請求項10または11に記載の改変アデノウイルス。
【請求項13】
OX40LおよびCD40Lの少なくとも1つまたは両方の全cDNAをコードする分子が、前記アデノウイルスに挿入される、請求項2~12のいずれか1に記載の改変アデノウイルス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの改変された複製能力および標的細胞溶解性を有するアデノウイルスと、適切なキャリアとを含む医薬組成物。
【請求項15】
前記組成物が、腫瘍内、筋肉内、動脈内、静脈内、胸膜内、小胞内、皮内、腔内もしくは腹腔内注射、または経口投与のために製剤化されている、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
癌の治療に使用するための、請求項1~13のいずれか1項に記載の少なくとも1つの改変された複製能力および標的細胞溶解性を有するアデノウイルス、または請求項14または15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記癌が、鼻咽頭がん、滑膜がん、肝細胞がん、腎がん、結合組織がん、黒色腫、肺がん、腸がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、脳がん、喉がん、口腔がん、肝がん、骨がん、膵臓癌、絨毛癌、ガストリノーマ、フェオクロモサイトーマ、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォン・ヒッペル・リンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルシノイド、胃腸管の癌腫、線維肉腫、乳癌、パジェット病、頸部癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼がん、頸がん、腎臓がん、ウィルムス腫瘍、肝がん、カポシ肉腫、前立腺がん、精巣がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚がん、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、内分泌膵臓がん、グルカゴノーマ、副甲状腺がん、陰茎がん、下垂体がん、軟組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸がん、胃がん、胸腺がん、甲状腺がん、栄養芽細胞がん、胞状奇胎、子宮がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、聴神経腫、真菌性真菌症、インスリン腫、カルチノイド症候群、体細胞スタチン腫、歯肉がん、心臓がん、唇がん、髄膜がん、口腔がん、神経がん、口蓋がん、耳下腺がん、腹膜がん、咽頭がん、胸膜がん、唾液腺がん、舌がん、扁桃がんを含むまたはそれらよりなる群から選択される、請求項16に記載のアデノウイルス
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改変された複製能力および腫瘍溶解性を有するアデノウイルス;それを含む医薬組成物;およびそれを用いた癌の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌治療における腫瘍溶解性ウイルスの役割の認識は、癌を標的として攻撃するための免疫療法や患者自身の免疫系の刺激が普及することにつれて、過去10年の間に劇的に変化してきた。今世紀初頭、腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍溶解を介して腫瘍細胞を溶解する固有の能力を介してのみ作用し、癌治療において活性物質として認識された。最近、癌ワクチンとしての使用が関心を集めており、免疫系を活性化するための腫瘍崩壊時に癌細胞から腫瘍抗原を放出するそれらの能力は、癌に対する最終的な免疫療法をデザインする際の重要な特徴として認識されている。
【0003】
アデノウイルスは、感染症に対する様々なワクチンアプローチにおいてベクターとしてしばしば使用される免疫原性の高いウイルスである。重要なことに、これらは、免疫応答をプライミングおよびブーストする両方の例外的な能力を有する。さらに、腫瘍内に腫瘍崩壊性アデノウイルスが存在し、それが引き起こす免疫原性細胞死は、インターフェロンγ(IFNγ)のようなTH1型免疫モジュレーターの発現を引き起こすことによって、臨床的に重要な抗腫瘍免疫が生じるためのより感受性の高い状態に向かって、敵対的な腫瘍微小環境を形作る可能性が高い。腫瘍への免疫細胞浸潤は腫瘍溶解性ウイルスによる治療の結果としてしばしば起こるものであり、重要なことに、アデノウイルスは、癌免疫において重要なエフェクター細胞であるCD8+ T細胞による浸潤を誘導する。アデノウイルスは免疫原性癌細胞溶解を引き起こし、その際に、免疫系から以前に隠されているか、または免疫原性状況で提示されていない、固有の患者特異的新抗原を含む腫瘍抗原が、免疫原性環境に放出される。これは、腫瘍溶解性アデノウイルスによって引き起こされる腫瘍特異的免疫応答の基礎である。
【0004】
しかし、腫瘍は体の免疫細胞に対抗するためにいくつかの免疫抑制機構を進化させてきた。免疫細胞は、その活性化およびエフェクター機能を調節する細胞表面分子、特に補助刺激分子および補助阻害分子を発現する。ネガティブフィードバック分子、すなわちチェックポイント分子は通常の生理学的状況下で自己寛容を可能にするが、腫瘍細胞によって重度の免疫抑制を引き起こすためにしばしば利用される。最もよく特徴づけられているチェックポイント経路は、細胞傷害性Tリンパ球蛋白質4(CTLA-4)およびプログラム細胞死蛋白質1経路(PD-1/PD-L1)である。腫瘍内のこれらの強力な免疫抑制機構のために、ウイルス誘導性の抗腫瘍免疫応答は免疫刺激性導入遺伝子の使用によって強化されない限り、弱いことができる。免疫刺激性ヒト導入遺伝子をコードする高度免疫原性腫瘍溶解性アデノウイルスの存在が免疫療法アプローチに対してより感受性である「免疫炎症」表現型に向かって腫瘍微小環境を形作るので、現在のアプローチは、腫瘍部位での免疫抑制の問題に取り組んでいる。重要なことに、現在のアプローチの腫瘍溶解性ウイルスは抗PD1、抗PD-L1または抗CTLA-4分子のようなチェックポイントモジュレーターと組み合わせて利用して、免疫抑制性腫瘍環境に対抗し、強力な抗免疫応答を引き起こすことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Kanerva et al 2003 Mol Ther 12:449-458.
【文献】Fueyo et al 2000.。Oncogene 19:2-12.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、標的癌細胞において溶解活性を有する改変された複製アデノウイルスであって:
a) アミノ酸923~946をコードするヌクレオチドの欠失である、E1A遺伝子欠失;
b) 血清型5 Adのノブが血清型3 Adのノブによって置換されている、アデノウイルス繊維タンパク質のノブの5/3キメラ置換;
c) 14.7k遺伝子欠失であって、前記欠失が野生型アデノウイルスに関して塩基対30448~30834の欠失であり、配列GGA GGA GAT GAC TGAが、GGA GAC GAC TGAに置換されるているもの;
d) gp19k遺伝子欠失および7.1k遺伝子欠失であって、前記欠失が野生型アデノウイルスに関して塩基対28541~29211の欠失であるもの;
を含む、改変された複製アデノウイルスが提供される。
【0007】
上記の改変アデノウイルスにおいて、アミノ酸923~946は、野生型(wt)Ad5配列から欠失される。ウイルスE1A蛋白質は網膜芽細胞腫(Rb)分子に結合できず、ウイルス遺伝子転写のためにRbから転写因子E2Fを放出するので、この欠失は安全対策である。したがって、アデノウイルスは宿主細胞中の遊離E2Fの存在に依存しており、遊離E2Fが常に利用可能な分裂正常細胞または癌細胞のいずれかにおいてそのゲノムを複製することができる。したがって、修飾は非分裂細胞を比較的保護し、分裂細胞または癌細胞に対して標的化される。
【0008】
さらに、5/3キメラ置換、すなわち、血清型5アデノウイルス線維ノブ領域を血清型3アデノウイルスノブ領域のものと置換することにより、ウイルスがAd5天然受容体コクサッキー-アデノウイルス受容体(CAR)を回避し、代わりにインターナリゼーションのためにAd3天然受容体デスモグレイン2(DSG2)を使用することを可能にする。DSG2は癌細胞に豊富に存在する。従って、この改変は非分裂細胞を比較的保護し、そして分裂細胞または癌細胞に対して標的化される。
【0009】
アデノウイルス感染は、ウイルス表面上の特殊なタンパク質、すなわちアデノウイルス繊維タンパク質、特にアデノウイルス繊維タンパク質の球状カルボキシ末端ドメイン(カルボキシ末端ノブドメインと呼ばれる)の手段による宿主細胞受容体の認識で始まる。従って、本明細書中において、アデノウイルス繊維タンパク質のノブへは、アデノウイルス繊維タンパク質の球状カルボキシ末端ドメインを意味する。
【0010】
さらに、14.7k遺伝子欠失は、感染細胞がTNFalpha誘導細胞溶解によって死滅するのを防ぎ、したがって欠失は有利である。重要なことは、14.7k遺伝子の始まりと上流のRIDベータ(14.5k)遺伝子には短い重複が見られることから、最後のアミノ酸を削除せずに14.7k遺伝子の改変を行い、RIDベータ遺伝子の停止コドンを取り除くことができるようにすることである。具体的には、ネイティブジャンクション配列が下線配列がRIDベータ遺伝子のC末端であり、残りが14.7k遺伝子のN末端で「GGAGGAGATGACTGATTAGGTA(配列番号3)」として読み取られる。アミノ酸への翻訳は、RIDベータ遺伝子のGG D停止(「GGA GGA GAT GAC TGA:配列番号1」)として読み取られる。従って、RIDベータ遺伝子のORF内のATGを排除して、導入遺伝子が欠失部位内に挿入される場合に誤った読み取りがないようにし、そしてRIDベータのC末端を機能的に維持することを確実にするために、本発明では、RIDベータの配列をわずかに変化させた:GGA GGA GAC GAC TGA(配列番号2)。このように、配列は依然としてG G D D停止として読み取られるが、導入遺伝子発現を妨害し得る任意の不正確な下流リードスルーのためのATGを含まない。
【0011】
最後に、gp19kは感染細胞上のMHCIをダウンレギュレートする遺伝子であり、アデノウイルス複製、パッケージングなどに重複しているため、除去することができる。さらに、アデノウイルスが免疫系から隠すために用いる免疫調節遺伝子であるため、それを欠失させることは有益である。7.1kはTRAIL受容体2の分解に関連する遺伝子であり、小胞体(ER)からのCa2+放出により誘導されるアポトーシスを阻害する。しかし、7.1k遺伝子の終止コドンはgp19kのオープンリーディングフレーム内に存在するので、この欠失部位に導入遺伝子は付加されない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、断片GA-OX40L/F2A/CD40LおよびGA-OX40L/P2A/CD40LのPCR増幅Gibsonアセンブリ反応のアガロース電気泳動分析を示すものである。
図2図2は、フローサイトメトリーにより、ウイルス産生OX40L蛋白質の受容体OX40結合能が確認されたことを示すものである。
図3図3は、受容体OX40に結合可能なOX40Lは、Ad5/3-D24-OX40L-CD40.C1(図中C1)およびAd5/3-D24-OX40L-CD40.C3(図中C3)ダブルトランスジーンウイルスならびにOX40L-トランスジーンのみを発現するウイルス(発現対照として使用)から発現されることを示す。
図4図4は、レポータールシフェラーゼ系を用いてHEK-293細胞を発現するOX40受容体を用いて決定したウイルス発現OX40Lの機能性を示す。
図5図5は、機能的CD40L発現レベルを決定するために、Ramos Blue細胞アッセイを用いて測定した吸光度を示すものである。
図6図6は、ペプチドコーティングなしの腫瘍溶解性ウイルス(VALO-C1)、NYESO-1またはMAGE-A3-ペプチド抗原コーティングを有する腫瘍溶解性ウイルス(PeptiCRAd)またはペプチド単独で処理した場合の、処理および対側の未処理腫瘍におけるT細胞の頻度を示す。
図7図7は、ペプチドコーティングを伴わない腫瘍溶解性ウイルス(VALO-C1)、NYESO-1またはMAGE-A3ペプチド抗原コーティングを伴う腫瘍溶解性ウイルス(PeptiCRAd)またはペプチド単独で処理した場合の、処理および対側の未処理腫瘍におけるすべての免疫細胞(CD45+細胞)の頻度を示す。
図8図8は、VALO-C1およびPeptiCRAd処理が処理された腫瘍におけるすべてのTILからの制御性T細胞の割合を減少させることを示す。
図9図9は、ペプチCRAd(NY-ESO-1およびMAGE-A3タンパク質でコーティングされたOX40LおよびCD40L発現ウイルスを含む)が大きな十分に確立された腫瘍に対して治療を開始しても、ヒト化マウスメラノーマモデルにおいて腫瘍増殖を停止させることができることを示している。
図10図10は、模擬処置動物と比較して、OX40L(単独)-PeptiCRAdが末梢血中のMAGE-A3特異的CD8+ T細胞数を増加させたことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、前記アデノウイルスは、14.7k遺伝子欠失におけるOX40L、理想的にはヒトOX40Lをコードする分子の挿入によってさらに改変される。OX40LはT細胞アクチベーターであり、従って、本発明の機能に有利である。
【0014】
OX40L遺伝子は独自の開始コドン(ATG)を有しており、14.7k遺伝子削除に挿入されると、RIDベータ遺伝子の停止コドンとOX40Lの開始コドンの間にCC塩基ペアを加えて、翻訳を最適化すること(すなわち、Kozak配列ACCATGGを生成すること)が望ましい。
【0015】
最も好ましくは、ヒトOX40LがE3B領域に位置し、遺伝子14.7K欠失を置換する。RIDベータ遺伝子の3’末端と14.7Kの5’末端はwtアデノいウイルスと重複しており、したがって上述したT/C改変は、トランス遺伝子の正確な転写を可能にするためにRIDベータの3’末端に行われた。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施形態では、前記アデノウイルスがCD40L、理想的にはヒトCD40Lの挿入によって、交互に、またはさらに修飾される。ヒトCD40Lはウイルスの後期領域、特に後期領域3(L3)、理想的には23K遺伝子の下流に挿入される。CD40Lは抗原提示細胞(APC)を活性化し、従って、本発明の機能に有利である。
【0017】
好ましくは、導入遺伝子CD40Lがそのポリアデニル化部位に先立って、アデノウイルス23K遺伝子のコード領域の直後に位置する。典型的には(これに限定されるものではないが)、遺伝子を収容するための欠失は行われず、したがって、導入遺伝子の発現はアデノウイルス選択的スプライシング機構および導入遺伝子の前のスプライス受容部位(SAS)(例えば、US2006/0292682 A1およびWO2006/012393から適合されたSAS)に依存する。
【0018】
本発明のなお好ましい実施形態において、前記アデノウイルスはCD40Lの転写を補助するために、導入遺伝子CD40Lの上流にスプライスアクセプター部位(SAS)および/またはKozak配列を挿入することによってさらに改変される。
【0019】
あるいは、最も好ましくは、CD40L導入遺伝子がOX40Lのすぐ下流に、以下のいずれかを用いて挿入される:
A) 口蹄疫ウイルス2Aプロセシング部位(F2A) (例えば、図中のAd5/3-D24-OX40L-F2A-CD40L、コンストラクトC1を参照)
B) 豚テシオウイルス1 2Aプロセシング部位(P2A)(例えば、図中のAd5/3-D24-OX40L-P2A-CD40L、コンストラクトC3を参照)。
【0020】
2Aプロセシング部位は2つの導入遺伝子の間に挿入され、理想的には、2Aプロセシング部位の両方が、切断部位(例えば、フリン切断部位: RKRR)およびSGSG-リンカーによって先行されるこれにより、導入遺伝子の有効な切断を確実にできる。
【0021】
当業者は、2Aプロセシング部位がピコルナウイルスにおいて見出される「自己切断」小ペプチドであることを理解するであろう。宿主リボソームは2AペプチドのC末端におけるグリシル-プロリルペプチド結合の合成をスキップし、2Aペプチドとそのすぐ下流のペプチドとの間の切断を導く。結果として、切断された下流ペプチドはそのN末端にプロリンを有し、これは、本明細書に記載されるウイルス構築物から産生されるCD40Lタンパク質がそのN末端にプロリンを有することを意味する。
【0022】
従って、本発明の好ましい実施形態において、前記改変アデノウイルスは、1つ、より好ましくは2つの導入遺伝子:OX40LおよびCD40Lを含む。さらに、典型的には前記CD40L導入遺伝子が前記OX40L導入遺伝子のほぼすぐまたはすぐ下流に、またはその逆に提供されるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
抗原-MHCI/II複合体によるT細胞レセプターの結合が、ナイーブT細胞の活性化の主なシグナルであるシグナル1を構成している。しかし、シグナル1は、エフェクターT細胞の生産的生成および維持を開始するのに十分ではない。CD8+T細胞の完全な活性化には活性化されたAPCまたはヘルパーT細胞上に存在する補助刺激分子によって駆動されるさらなるシグナルが必要であるが、腫瘍上に存在することはまれである。本発明において導入遺伝子として使用するために選択した共刺激分子、すなわちCD40LおよびOX40Lは、リガンドの腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバーである。TNFスーパーファミリーリガンドの大部分は、B細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球およびDCを含む免疫系に関与する細胞上で主に発現される。
【0024】
OX40リガンド(OX40L)とCD40リガンド(CD40L)は、比較的長い細胞外ドメインと短い細胞質領域をもつII型膜貫通タンパク質である。細胞外ドメイン(特に、TNF相同ドメイン)は、リガンドの機能性に不可欠な受容体結合特異性を示す。ほとんどのTNFスーパーファミリーリガンドは、細胞表面上のホモトリマーとして発現され、そして不活性であるか、または可溶性三量体融合タンパク質として不十分に活性である。従って、膜貫通領域を有さない可溶性形態は、本発明者らのアプローチに適用可能ではない。それゆえ、本発明では、各導入遺伝子のcDNA全体を利用する。このようにして、導入遺伝子産物は細胞から産生されるタンパク質中に自然に存在するすべてのドメイン、すなわち、タンパク質を分泌経路に導き、それを細胞膜に保持する膜貫通ドメイン、ならびにプロテイナーゼによる細胞表面からの切断を引き起こす自然に存在する部位を含む。
【0025】
したがって、本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つまたは各導入遺伝子の全体をコードする分子、理想的には少なくとも1つまたは各導入遺伝子の全体をコードするcDNAが前記アデノウイルスに挿入される。
【0026】
主に、抗腫瘍免疫を誘発/増強するための治療剤として補助刺激分子を利用するアプローチは、TNFリガンドのレセプターに特異的なモノクローナルアゴニスト抗体、またはリガンドの可溶性形態のいずれかを使用する。このアプローチは、治療分子の全身送達を必要とする。対照的に、われわれのアプローチは、リガンドが感染がん細胞の細胞機構によって産生される膜係留タンパク質として同族の受容体に提示される、体内の自然な状況に似ている。
【0027】
CD4+T細胞は、持続性ウイルス感染における効果的なCD8+T細胞応答の維持に極めて重要な役割を果たす。共刺激因子導入遺伝子を有する本発明の新規ウイルス構築物は、腫瘍環境内でTh1型抗ウイルス免疫を誘発する。ウイルス表面に腫瘍抗原が存在し、局所的な炎症があると他の腫瘍抗原が放出されるとともに、決定因子が広がることで、抗腫瘍免疫T細胞クローンが形成される。CD8+細胞傷害性T細胞のエフェクター期を維持するために、共刺激分子(すなわち、OX40LおよびCD40L)は、免疫抑制性癌の治療に適用したい独自の特徴を有する。
【0028】
驚くべきことに、我々のデータは免疫刺激遺伝子、ヒトOX40LおよびヒトCD40Lの14.7K座標への追加はバックボーンウイルスAd5/3D24または免疫刺激遺伝子(例えばヒトGM-CSF)を持つウイルスと比較して、本発明のウイルスのがん効能を損なうものではないことを示している。これは削除されたgp19K/7.1K遺伝子に代わるものである。導入遺伝子がウイルス複製に大きく影響するのは、導入遺伝子の大きさと、感染した細胞に対する導入遺伝子の直接的な影響によるの可能性があることから、これは驚くべきことである。さらに、14.7K遺伝子の削除は、gp19K/7.1K遺伝子の削除ほど広範に研究されていないため、特に14.7K削除サイトに遺伝子を組み込む場合、ウイルスの複製機械に予期せぬ結果をもたらす可能性がある。
【0029】
また、本発明のウイルスは14.7K遺伝子軌跡から機能的ヒト導入遺伝子を生産できることも示している。これは、2つの導入遺伝子の間にウイルスの2Aプロセシング部位をもつ転写カセットを用いたため、予想外であった。
【0030】
さらに、本発明者らは、本発明のウイルスがMAGE-A3およびNY-ESO-1特異的免疫応答を誘発することができることも実証した。
【0031】
したがって、さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つの本発明による複製能力および標的細胞溶解性を有するアデノウイルスと、適切なキャリアとを含む医薬組成物に関する。
【0032】
OX40/OX40L
OX40Lは、樹状細胞、B細胞およびマクロファージを含む活性化されたAPC上に発現される。それは、3つのOX40分子に結合することを可能にする三量体として細胞表面上に発現される。T細胞の活性化は、OX40Lの受容体であるOX40のCD8+およびCD4+ T細胞上での発現に必要である。OX40の誘導は24時間以内に起こり、最初のTCR刺激の48~72時間後にピークに達し、典型的には3~4日続く。T細胞上に発現されるOX40受容体の相対的レベルは、CD80またはCD86を発現するプロフェッショナル抗原提示細胞との接触を介して、またはTNFαまたは類似の炎症性サイトカインが豊富な環境を介して、局所環境によって大きく影響される。さらに、OX40Lの発現は、通常、主に炎症部位で認められる。したがって、TCRシグナル伝達を介して活性化されるOX40発現T細胞は、炎症部位においてOX40Lを介して補助刺激を受ける。OX40を介する同時刺激のこの特異性は炎症性環境から受信される危険シグナルに類似しており、それによって、その使用に安全管理層を追加する。さらに、プライミングイベント後のT細胞表面でのOX40の時間的発現は、エフェクターT細胞の後期増殖および生存におけるその重要性を示唆する。OX40刺激T細胞における抗アポトーシス分子BCL-2、BCL-xL、およびスルビビンの活性化は、クローン増殖の増加および記憶T細胞のより大きなプールの原因であることが示唆される。
【0033】
CD40/CD40L
補助刺激シグナルをT細胞に直接提供することに加えて、腫瘍抗原を交差提示する可能性の高いAPCの活性化を促進し、その場で補助刺激リガンド発現の増加を達成することも魅力的である。CD40は、B細胞およびそれを恒常的に発現するDCの機能にとってきわめて重要である。CD40リガンド(CD40L)は、主に活性化されたヘルパーT細胞に発現している。CD40の連結はAPCを免許化し、それらが、部分的にはIL-12分泌の誘導を介して、またB7ファミリーメンバー(CD80、CD86)のアップレギュレーションを介して、エフェクターCTL応答を駆動することを可能にすることが示されている。CD40/CD40L共刺激は効果的な抗腫瘍T細胞応答の誘導に重要であり、腫瘍細胞ベースのワクチンへのCD40Lの取り込みは、マウスにおける免疫原性の低い腫瘍に対する免疫応答を有意に増強することが示されており、抗腫瘍免疫におけるAPCを介した適応免疫に対する間接的効果の重要性を強調している。
【0034】
本発明のなおさらなる好ましい実施形態において、前記アデノウイルスは任意の型および種のアデノウイルスであり得、例えば、ヒトアデノウイルスに限定されないが、最も典型的にはヒトアデノウイルスである。最も好ましいのは、アデノウイルスが腫瘍に対する抗ウイルス免疫応答を転換しながら、癌細胞を複製し、殺傷することができることである。
【0035】
上記から、本発明の改変アデノウイルスは、癌に対する免疫応答、特に腫瘍環境(ここで、典型的には免疫系が癌細胞によって使用される回避メカニズムによって損なわれる)において刺激するように操作されたことになる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、前記ウイルスが前記アデノウイルスベクターによって遺伝的にコードされることなく、ウイルスキャプシド上に共有結合または非共有結合で付着した以下のポリペプチドの少なくとも1つを有する
i) VFGIELMEVDPIGHLYIFAT [配列番号:1];
ii) YLAMPFATPMEAELARRSLA [配列番号:2];
iii) RGPESRLLEFYLAMPFATPM [配列番号:3];または
iv) それらと少なくとも60%同一であるポリペプチド。
【0037】
従って、さらなる態様において、本発明は患者における癌を処置する方法に関し、この方法は、本発明に従う、少なくとも1つの複製能力および標的細胞溶解を有する改変アデノウイルスを含む組成物の有効量を患者に投与する工程を包含する。
【0038】
さらに、または代替的に、本発明は、癌を治療する際に使用するための、本発明による少なくとも1つの複製能力および標的細胞溶解を有する改変アデノウイルスに関する。
【0039】
さらに、または代替的に、本発明は、癌を治療するための、本発明による少なくとも1つの複製能力および標的細胞溶解を有する改変アデノウイルスの使用に関する。
【0040】
さらに、または代替的に、本発明は、癌を治療するための医薬の製造における、本発明による少なくとも1つの複製能力および標的細胞溶解を有する改変アデノウイルスの使用に関する。
【0041】
最も好ましくは、本明細書における癌は、以下の癌のいずれか1つ以上を含む:鼻咽頭がん、滑膜がん、肝細胞がん、腎がん、結合組織がん、黒色腫、肺がん、腸がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、脳がん、喉がん、口腔がん、肝がん、骨がん、膵臓癌、絨毛癌、ガストリノーマ、フェオクロモサイトーマ、プロラクチノーマ、T細胞白血病/リンパ腫、神経腫、フォン・ヒッペル・リンダウ病、ゾリンジャー・エリソン症候群、副腎癌、肛門癌、胆管癌、膀胱癌、尿管癌、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、髄膜腫、脊髄腫瘍、骨軟骨腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、原発部位不明の癌、カルシノイド、胃腸管の癌腫、線維肉腫、乳癌、パジェット病、頸部癌、食道癌、胆嚢癌、頭部癌、眼がん、頸がん、腎臓がん、ウィルムス腫瘍、肝がん、カポシ肉腫、前立腺がん、精巣がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚がん、中皮腫、多発性骨髄腫、卵巣がん、内分泌膵臓がん、グルカゴノーマ、副甲状腺がん、陰茎がん、下垂体がん、軟組織肉腫、網膜芽細胞腫、小腸がん、胃がん、胸腺がん、甲状腺がん、栄養芽細胞がん(trophoblastic cancer)、胞状奇胎(hydatidiform mole)、子宮がん、子宮内膜がん、膣がん、外陰がん、聴神経腫、真菌性真菌症、インスリン腫、カルチノイド症候群、体細胞スタチン腫、歯肉がん、心臓がん、唇がん、髄膜がん、口腔がん、神経がん、口蓋がん、耳下腺がん、腹膜がん、咽頭がん、胸膜がん、唾液腺がん、舌がん、扁桃がん。
【0042】
本発明は、少なくとも1つ、理想的には2つの免疫刺激剤、すなわちOX40LおよびCD40Lを使用する癌治療療法における活性アジュバントとしての、安全性および生存のために最適化された改変アデノウイルスの使用に関することになる。
【0043】
改変されたアデノウイルスは標的ペプチドに対する最適な免疫応答に必要な危険シグナルを提供するが、それが感染してゲノムを複製する癌細胞を腫瘍化する能力も保持するので、活性アジュバントとして作用する。腫瘍溶解性細胞殺傷は本質的に免疫原性であり、これは、ペプチド/腫瘍に対する免疫応答を強化するよう腫瘍微小環境における変化を引き起こす。
【0044】
本願の特許請求の範囲および本発明の前述の説明において、文脈が明示的な言葉または必要な含意のために別途必要とする場合を除いて、単語「含む(comprises)」または「含む(comprises)」もしくは「含む(comprising)」などの変形は包括的な意味で使用される、すなわち、記載された特徴の存在を指定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではない。
【0045】
本明細書に引用された、任意の特許または特許出願を含む全ての参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。いかなる参考文献も先行技術を構成することは許可されない。さらに、先行技術のいずれも、当該技術分野における一般的な知識の一部を構成することを認めるものではない。
【0046】
本発明の各態様の好ましい特徴は、他の態様のいずれかに関連して記載されるとおりであり得る。
【0047】
本発明の他の特徴は、以下の実施例から明らかになるのであろう。一般的に、本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの、または任意の新規な組み合わせに及ぶ。したがって、本発明の特定の態様、実施形態または例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物または化学部分は、本明細書に記載される任意の他の態様、実施形態または例に適合しない限り適用可能であると理解されるべきである。
【0048】
さらに、特に断らない限り、本明細書に開示される任意の特徴は、同じまたは同様の目的を果たす代替の特徴によって置き換えられてもよい。
【0049】
本明細書の記載および特許請求の範囲を通して、単数形はその状況が他のことを要求していない限り、複数形を含む。特に、不定冠詞が使用される場合は本明細書がその状況が他のことを要求していない限り、単数だけでなく複数も意図していると理解されたい。
【実施例
【0050】
本発明の実施形態は、以下の実施例を参照して説明される。
【0051】
図1は、断片GA-OX40L/F2A/CD40LおよびGA-OX40L/P2A/CD40LのPCR増幅Gibsonアセンブリ反応のアガロース電気泳動分析を示す。レーン1において、アセンブルされたフラグメント1、2および3のPCR増幅は、3974bpのサイズの完全長GA-OX40L/F2A/CD40Lフラグメントを作製する。レーン2において、アセンブルされたフラグメント1、2および3のPCR増幅は、3929bpのサイズの完全長GA-OX40L/P2A/CD40Lフラグメントを作製する。レーン3では、3564bpのサイズの断片を増幅するバックボーンウイルスプラスミドpAd5/3D24のPCR増幅を行った。レーン1および2の両方において、ウイルスバックボーンのいくらかの増幅も見ることができることに注意されたい。
【0052】
図2は、フローサイトメトリーにより、ウイルス産生OX40L蛋白質の受容体OX40結合能が確認されたことを示すものである。OX40受容体抗体(ウサギ)およびAlexa fluor 488で標識したヤギ抗ウサギ抗体を用いて、感染したA549細胞表面上のウイルスから発現したOX40Lタンパク質を結合させた。未染色細胞、未感染染色細胞、および導入遺伝子を含まないウイルスに感染した染色細胞を陰性対照として使用した。データは、A)ヒストグラムまたはB)絶対頻度または比例頻度の平均として提示される。GM = Alexa fluor 488標識陽性細胞の幾何平均;Freq親 = Alexa fluor 488標識陽性細胞の割合;Ctrl-virus = Ad5/3D24、同一の骨格だが導入遺伝子を持たないウイルス;OX40L-virus = OX40Lのみを導入遺伝子とするウイルス;OX40L/CD40L.C1およびOX40L/CD40L.C3 = OX40LおよびCD40Lを導入遺伝子とするウイルス。
【0053】
図3は、受容体OX40に結合可能なOX40Lは、Ad5/3-D24-OX40L-CD40.C1(図中C1)およびAd5/3-D24-OX40L-CD40.C3(図中C3)ダブルトランスジーンウイルスならびにOX40L-トランスジーンのみを発現するウイルス(発現対照として使用)から発現されることを示す。機能的サンドイッチELISAを、ウイルスから感染細胞の上清中に発現されたOX40Lの天然型の検出のために使用した。非感染細胞からの上清を陰性対照として使用した。希釈は、図中の各サンプルについて描かれている。
【0054】
図4は、レポータールシフェラーゼ系を用いてHEK-293細胞を発現するOX40受容体を用いて決定したウイルス発現OX40Lの機能性を示す。導入遺伝子を持たないウイルス(Ctrl‐ウイルス)、導入遺伝子としてOX40Lのみを持つウイルス(OX40L‐ウイルス)、導入遺伝子としてOX40LとCD40Lを持つウイルス(OX40L/CD40L.C1とOX40L/CD40L.C3)について、OX40L/OX40相互作用依存性ルシフェラーゼ活性を誘発する能力を分析した。明確なルシフェラーゼ活性がOX40L発現ウイルスで検出され、ウイルスゲノムから発現されたOX40Lが機能的であることを示した。
【0055】
図5は、機能的CD40L発現レベルを決定するために、Ramos Blue細胞アッセイを用いて測定した吸光度を示すものである。(A)二重導入遺伝子ウイルス(OX40L/CD40L.C1およびOX40L/CD40L.C3)からCD40Lを発現させ、導入遺伝子を持たないウイルス(Ctrlウイルス)または単一導入遺伝子としてのOX40L(OX40Lウイルス)、または非感染細胞(A549)を陰性対照として用いた。(B)組換えヒトCD40Lで処理したRamos Blue細胞の吸光度測定。
【0056】
図6は、ペプチドコーティングなしの腫瘍溶解性ウイルス(VALO-C1)、NYESO-1またはMAGE-A3-ペプチド抗原コーティングを有する腫瘍溶解性ウイルス(PeptiCRAd)またはペプチド単独で処理した場合の、処理および対側の未処理腫瘍におけるT細胞の頻度を示す。CD3+T細胞(A)、CD4+T細胞(B)およびCD8+T細胞(C)の数は、各治療群の腫瘍組織1g当たりの細胞として描出される。処置は、モックと比較して、全ての群においてより高いT細胞頻度をもたらした。最も多かったのはVALO-C1またはPeptiCRAdで治療された腫瘍であった。
【0057】
図7は、ペプチドコーティングを伴わない腫瘍溶解性ウイルス(VALO-C1)、NYESO-1またはMAGE-A3ペプチド抗原コーティングを伴う腫瘍溶解性ウイルス(PeptiCRAd)またはペプチド単独で処理した場合の、処理および対側の未処理腫瘍におけるすべての免疫細胞(CD45+細胞)の頻度を示す。頻度はすべての群で類似しており、偽処置動物ではいくらか低い数であった。
【0058】
図8は、VALO-C1およびPeptiCRAd処理が処理された腫瘍におけるすべてのTILからの制御性T細胞の割合を減少させることを示す。
【0059】
図9は、ペプチCRAd(NY-ESO-1およびMAGE-A3タンパク質でコーティングされたOX40LおよびCD40L発現ウイルスを含む)が大きな十分に確立された腫瘍に対して治療を開始しても、ヒト化マウスメラノーマモデルにおいて腫瘍増殖を停止させることができることを示している。実験計画: 2x106 SK‐MEL‐2細胞をNOD/Shi‐scid/IL‐2Rγ欠損免疫不全マウスの側面に1日目に皮下(1匹当たり1腫瘍)移植した。13日目に、5x106のPBMCを静脈内注射した。16日目に、5x104形質細胞様細胞および骨髄性樹状細胞を腫瘍内に注射した。1×109の用量での腫瘍内ペプチドCRAd処置を、16日目、17日目、18日目(初回投与)、および25日目(追加免疫)に与えた。最初のPeptiCRad投与は、DC注射直後に投与した。腫瘍増殖を追跡した。動物を32日目に屠殺した。PeptiCRAd = Ad5/3‐D24‐OX40L‐CD40L、E1Aにおける24bp欠損を伴うオンコリチックアデノビラス、NY‐ESO‐1およびMAGE‐A3ペプチドで被覆した14.7K軌跡から発現した5/3キメラキャプシドおよびCD40LおよびOX40Lトランスジェン; OX40LペプチCRAd = Ad5/3‐D24‐OX40L、E1Aにおける24bp欠損を伴うオンコリチックアデノビラス、14.7K軌跡から発現した5/3キメラキャプシドおよびOX40Lトランスジェン、NY‐ESO‐1およびMAGE‐A3ペプチドで被覆した。
【0060】
図10は、模擬処置動物と比較して、OX40L(単独)-PeptiCRAdが末梢血中のMAGE-A3特異的CD8+ T細胞数を増加させたことを示している。PeptiCRAdで処理した2匹の動物は、血液中のMAGE‐A3特異的CD8+ T細胞数の増加も示した。抗MAGE-A3 T細胞は、32日目の前述の腫瘍増殖試験の終了時にフローサイトメトリー(五量体分析)により評価した。
【0061】
詳細
<材料および方法>
アミノ酸923-946をコードするヌクレオチドのE1A遺伝子欠失を有する腫瘍溶解性アデノウイルスの作製
24塩基対の欠失を、E1A領域を標的とするシャトルプラスミドを使用することによってAd5バックボーン配列に導入し、このクローニング方法はKanervaらに記載されており、この欠失はFueyoらに最初に記載されている。
【0062】
アデノウイルス繊維蛋白質の5/3キメラ置換を有する腫瘍溶解性アデノウイルスの作製
血清型5ノブを、修飾されたファイバー領域を有するシャトルプラスミドを用いて血清型3ノブと置換し、相同組換えを介してウイルスバックボーンに配列を導入した。特定のクローニング方法は、Kanervaらに記載されている。
【0063】
野生型アデノウイルスに関して塩基対30448~30834の14.7k遺伝子欠失を有し、配列GGA GGA GAT GAC TGA(配列番号:1)がGGA GGAC GAC TGA(配列番号:2)に置換された腫瘍溶解性アデノウイルスの作製、および野生型アデノウイルスに関してgp19k遺伝子欠失および塩基対28541~29211の7.1k遺伝子欠失を有する腫瘍溶解性アデノウイルスの作製。
【0064】
GGA GGA GAC GAC TGA (配列番号2)に対するGGA GGA GAT GAC TGA(配列番号1)の14.7K欠失および置換(14.7Kの代わりに導入遺伝子OX40Lの挿入を伴う)ならびにgp19k/7.1k遺伝子の欠失を、化学合成によってシャトルプラスミド(pShuttle-OX40L)に導入した。Vector NTIプログラムで設計された仮想配列に基づいて、重複オリゴヌクレオチドをGeneArt(Thermo Fisher Scientific)で設計し、これは一緒になって全配列を構成した。固体材料として制御細孔ガラスを適用した固相合成によりオリゴ合成を達成した。次いで、オリゴを液相に放出し、完全に自動化されたアセンブリステーション上でPCRを使用することによってアセンブルした。合成的にクローニングした配列をpMXクローニングベクターに導入し、配列決定によって検証した。
【0065】
pAd5/3-D24-OX40L/F2A/CD40LおよびpAd5/3-D24-OX40L/P2A/CD40Lを得るためのpAD5/3-D24へのOX40LおよびCD40Lのクローニング
OX40LおよびCD40L遺伝子の両方を含み、口蹄疫ウイルス2Aプロセシング部位(F2A)または豚テシオウイルス1-2Aプロセシング部位(P2A)のいずれか一方を導入遺伝子間に挿入して共翻訳プロセシングを行うウイルスを作製するために、各コンストラクトの3断片をPCR法で増幅した。
【0066】
F2A含有構築物については、OX40L配列およびF2Aプロセシング部位の一部を含有するフラグメント1を、プライマーGibson OX40LおよびF2A逆OX40Lを使用してpShuttle-OX40Lから増幅し(表1で使用される全てのプライマーのリストを参照のこと)、F2Aプロセシング部位の一部を含有するフラグメント2を、そしてCD40Lの完全配列を、プライマーF2A順方向CD40LおよびF2A逆方向CD40Lを使用してpShuttle-CD40Lから増幅した。
【0067】
P2A含有構築物については、OX40L配列およびP2Aプロセシング部位の一部を含有する断片1を、プライマーGibson OX40LおよびP2A逆OX40Lを使用してpShuttle-OX40Lから増幅し(表1で使用される全てのプライマーのリストを参照のこと)、P2Aプロセシング部位の一部を含有する断片2を、プライマーP2A順方向CD40LおよびP2A逆方向CD40Lを使用してpShuttle-CD40Lから増幅した。
【0068】
F2AおよびP2A構築物の両方について、CD40Lの3’末端に隣接するアデノウイルスゲノム配列を含むフラグメント3を、プライマーF2AフォワードAdeno末端(挿入有り、無し)およびGibson OX40L REVを使用して、pShuttle-OX40Lから増幅した。全てのPCR反応はPhusion High-Fidelity DNA Polymerase(Thermo Fisher製、F530)を用いて、製造業者の説明書に従って行い、続いてDpnI処理(NEB、R0176)を行った。反応物をNucleoSpin(登録商標)ゲルおよびPCRクリーンアップキット(MACHEREY-NAGEL製、740609.50)で精製した。次いで、精製したフラグメントを一緒に組み立てて、Gibsonアセンブリマスターミックス(NEB、E2611)を用いてGA-OX40L/F2A/CD40LおよびGA-OX40L/P2A/CD40Lを作製し、続いて、プライマーGibson OX40L FWおよびGibson OX40L REVを用いて組み立てたフラグメントのPCR増幅を行った(最終フラグメントのアガロースゲル分析については図1を参照)。
【0069】
GA-OX40L/F2A/CD40LまたはGA-OX40L/P2A/CD40Lをウイルス骨格に導入するために、pAd5/3-D24をSrfI(NEB、R0629L)およびBarI(SibEnzyme(登録商標)、E548)で消化し、続いてエタノール沈殿させた。消化されたウイルス骨格pAd5/3-D24を、Gibsonアセンブリマスターミックス(NEB、E2611)を用いて、GA-OX40L/F2A/CD40LまたはGA-OX40L/P2A/CD40Lフラグメントと組み立て、pAd5/3-D24-OX40L/P2A/CD40LおよびpAd5/3-D24-OX40L/P2A/CD40Lを生成した。Gibsonアセンブリ反応物を、製造業者の説明書に従って、NEB(登録商標)5-α Competent Ecoli(NEB、C2987H)に形質転換した。陽性コロニーをPCRによってスクリーニングし、構築物を配列決定することによって正しい組換え事象をさらに確認した。
【0070】
pAd5/3-D24-CD40L-OX40Lを得るためのpAD5/3-D24へのCD40LおよびOX40Lのクローニング
特異的相同組換え反応(ブランド名Gibson Assembly、New England Biolabs)によってウイルス骨格pAd5/3-D24にクローニングされるCD40L(CD40L-GA)を含むフラグメントを作製するために、3つのPCR産物をまずGibsonアセンブリ組換え反応と一緒にアセンブルした。一緒に融合されたフラグメントは、以下の配列を含んでいた:フラグメントAがpAd5/3-D24プラスミドのヌクレオチド21376~22114に対応する。フラグメントBはpShuttle-CD40Lプラスミドのヌクレオチド999~2623に相当する。フラグメントCは、pAd5/3-D24プラスミドのヌクレオチド22820-27107に対応する(使用したプライマーおよびプライマー配列のリストについては表1b-3bを参照のこと)。PCR反応はPhusion High-Fidelity DNA Polymerase(Thermo Fisher製、F530)を用いて製造者の指示に従って行い、反応物をNucleoSpin(登録商標)GelおよびPCR Clean-upキット(MACHEREY-NAGEL製、740609.50)で精製した。次に、CD40L-GAを作製するために、精製されたPCRフラグメントを、製造業者の説明書(Gibson assembly master mix、NEB E2611)に従って、Gibson Assembly組換え反応によって一緒に組み立てた。相同組換え後、新たに作製されたCD40L-GAフラグメントを、製造業者の説明書に従って、Phusion High-Fidelity DNAポリメラーゼを使用して、プライマーAAおよびDD(プライマー配列については、表1bおよび3bを参照)を使用するPCRによってさらに増幅した。PCR増幅したCD40L-GAを、NucleoSpin(登録商標)GelおよびPCR Clean-upキットを使用してゲル精製した。CD40L-GAをウイルス骨格にクローニングするために、pAd5/3-D24をSpeI(NEB、R0133S)およびAsiSI(NEB、R0630S)で消化し、続いてエタノール沈殿させた。消化されたウイルス骨格pAd5/3-D24を、Gibsonアセンブリマスターミックス(NEB、E2611)を使用して、製造者の指示に従ってCD40L-GAフラグメントとアセンブルして、pAd5/3-D24-CD40Lを生成した。Gibsonアセンブリ反応物を、製造業者の指示に従ってNEB(登録商標)5-αコンピテント大腸菌(NEB、C2987H)に形質転換した。陽性コロニーをPCRによってスクリーニングし、構築物を配列決定することによって正しい組換えをさらに確認した。最終構築物、すなわち、CD40LおよびOX40L遺伝子の両方を含むウイルスを作製するために、OX40L(OX40L-GA)を含むフラグメントを、以下のプライマーを使用して増幅した:Gibson OX40L FWおよびGibson OX40L REV(ヌクレオチド11~3287に対応するpShuttle-OX40L中の領域を増幅する)プライマー配列については、表4bを参照のこと。PCR反応はPhusion High-Fidelity DNA Polymerase(Thermo Fisher、F530)を用いて、製造者の説明書に従って行い、反応物をNucleoSpin(登録商標)GelおよびPCR Clean-upキット(MACHEREY-NAGEL製、740609.50)で精製した。OX40L-GAをウイルス骨格にクローニングするために、pAd5/3-D24-CD40LをSrfI(NEB、R0629L)およびBarI(SibEnzyme(登録商標)、E548)で消化し、続いてエタノール沈殿させた。消化されたウイルス骨格pAd5/3-D24-CD40Lを、Gibsonアセンブリマスターミックス(NEB、E2611)を使用して、製造者の指示に従ってOX40L-GAフラグメントと組み立て、pAd5/3-D24-CD40L-OX40Lを生成した。Gibsonアセンブリ反応物を、製造業者の指示に従ってNEB(登録商標)5-αコンピテント大腸菌(NEB、C2987H)に形質転換した。陽性コロニーをPCRによってスクリーニングし、構築物を配列決定することによって正しい組換えをさらに確認した。
【0071】
1つの導入遺伝子または2つの導入遺伝子を有する改変されたアデノウイルスのインビトロ試験のための方法
OX40L/OX40相互作用を測定するためのフローサイトメトリー分析
フローサイトメトリー分析を行って、ウイルスから発現されたOX40Lがその天然受容体OX40に結合できることを確認した(図2)。ヒトA549細胞を6ウェルプレート上に平板培養し、ダブルトランスジーンウイルス(Ad5/3-D24-OX40L-CD40L.C1およびAd5/3-D24-OX40L-CD40L-CD40L.C3、OX40L/CD40L.C1およびOX40L/CD40L.C3と呼ばれる)、OX40Lのみを有するウイルス(図ではOX40L-ウイルスと呼ばれるAd5/3-D24-OX40L)または導入遺伝子を持たないウイルス(Ad5/3-D24、ctrl-ウイルスと呼ばれる、細胞あたり10ウイルス)を感染多重度10で感染させた。
【0072】
感染後72時間後、細胞を採取しカウントし、3x10OBセルを96の井戸プレート・複製物上で井戸あたりに塗布した。プレートを400gで5分間遠心分離し、PBSに再懸濁した。この工程を2回繰り返し、次いで、細胞を、OX40受容体抗体およびヤギ抗ウサギAlexa fluor 488抗体の混合物中に懸濁し、30分間インキュベートし、3回洗浄し、次いで、BD Accuriフローサイトメーター中で泳動して、OX40L/OX40複合体細胞の幾何平均を検出した。データをFlowJoソフトウェアで分析した。
【0073】
OX40L/OX40相互作用を検証するためのサンドイッチELISA
ウイルスから発現されたOX40Lがその天然受容体であるOX40に結合することができることをさらに検証するために、機能的サンドイッチELISAを行った(図3)。96ウェルプレートを、その天然形態の2 ug/mlのOX40受容体で一晩コーティングし、続いてPBS中の0.05% Tween20v/vで3回洗浄した。ウイルス感染A549細胞からの上清をウェルに添加し、プレートを37℃で1時間インキュベートし、続いて再び3回洗浄した。ウェルをマウス抗ヒトOX40L抗体(PBS中1:1000希釈)と共に1時間インキュベートし、3回洗浄し、抗マウス-HRPコンジュゲート(PBS中1:1000希釈)と共に1時間インキュベートした。プレートを3回洗浄した後、90μlのTMB基質を添加し、プレートを暗所で室温で10分間インキュベートした。抗マウス抗体に結合したHRPは基質TMBと比色的に反応し、色の強度を450nmで分光光度的に測定した。
【0074】
OX40/NF-kB-HEK293組換え細胞株を用いた機能性アッセイ
ウイルスが産生するOX40L(単一導入遺伝子ウイルスまたは二重導入遺伝子ウイルスのいずれか)が機能的であり、その受容体に結合すると下流シグナルを活性化できることを検証するため、OX40を恒常的に発現するヒト胚性腎細胞株293(HEK-293)を用いた機能性アッセイを実施した(図4)。
【0075】
OX40L遺伝子を発現するウイルスに感染させたA549細胞培養の培地でOX40L産物を産生する。培地を回収し、OX40受容体を構成的に発現するOX40/NF-κBレポーター-HEK293細胞の培養物に添加する。OX40LのOX40受容体への結合は、NF-κB活性化を介してホタルLuciferaseレポーター遺伝子の発現を導く細胞内シグナル伝達経路を誘発する。ルシフェラーゼ活性を、ONEステップルシフェラーゼアッセイシステムおよびルミノメーターを用いて測定し、既知濃度のOX40L標準の相対生物発光を決定する。次いで、ウイルスサンプルのOX40L濃度を、ルミネセンス読み取り値および標準曲線に基づいて分析することができる。OX40L濃度を決定する前に、既知濃度の組換えヒトOX40Lを用いてOX40Lの標準曲線を定義した。
【0076】
簡潔に述べると、1,5x10OBA549細胞を、10% DMEM中の96ウェルプレート上にプレーティングした。翌日、A549細胞を10ウイルス、すなわち細胞当たり10ウイルスの多重感染に感染させ、2% DMEM中の単一導入遺伝子ウイルス(図中ではOX40Lウイルスと呼ばれるAd5/3-D24-OX40L)、二重導入遺伝子ウイルス(Ad5/3-D24-OX40L-CD40L.C1およびAd5/3-D24-OX40L-CD40L.C3、OX40L/CD40L.C1およびOX40L/CD40L.C3と呼ばれる)または導入遺伝子を持たないウイルス(Ad5/3-D24、ctrlウイルスと呼ばれる)のいずれかを用いた。
【0077】
いくつかのウェルは、ネガティブコントロールとして使用するために感染させないままにした。感染の72時間後、細胞を500gで5分間遠心分離し、培地を廃棄し、100ulの10% MEM中の2×10OBOX40/NF-kB-HEK293細胞をA549細胞の上に添加した。400gで1分間遠心分離した後、細胞を37oCで6時間インキュベートした後、溶解緩衝液で溶解し、透明な96ウェルプレートウェル上に20 ulのそれぞれの溶解物を添加した。基質として100 ulのルシフェラーゼ試薬を添加した後、ルミノメーターで直ちに発光を読み取った。
【0078】
CD40L導入遺伝子産物の機能性アッセイ
ダブルトランスジーンウイルスから発現されたCD40Lタンパク質がその天然受容体CD40と結合し、CD40発現細胞上の下流シグナルを活性化できることを検証するために、Ramos Blue細胞に基づく機能性アッセイを実施した(図5)。
【0079】
Ramos Blueは、NF-κB誘導性SEAP(分泌型胚性アルカリホスファターゼ)レポーター遺伝子を安定発現するBリンパ球細胞株である。CD40L産物は、CD40L遺伝子を発現するPeptiCRAdウイルスに感染させた細胞培養の培地中で産生される。培地を回収し、CD40受容体を構成的に発現するRamos Blue細胞の培養物に添加する。CD40LのCD40への結合はSEAPの分泌を導く細胞内シグナル伝達経路を誘発し、これは基質を青色に変え、620~655nmで分光光度的に測定することができる。機能性CD40Lの相対濃度は、組換えヒトCD40Lの標準曲線を用いて決定する。
【0080】
簡潔に述べると、ヒトA549細胞を6ウェルプレート上に平板培養し、ダブルトランスジーンウイルス(OX40L/CD40L.C1またはOX40L/CD40L.C3)、導入遺伝子としてOX40Lのみを有するウイルス(OX40L-ウイルス)または導入遺伝子を持たないウイルス(Ctrl-ウイルス)に感染させ、感染の多重度は10であった。72時間後に上清を回収し、500gで5分間遠心分離することにより、細胞および細胞破片を除去した。2倍希釈系列を、100 ug/mlの出発濃度で、上清および組換えCD40Lタンパク質から調製した。100μlの各上清を96ウェルプレート(100μlにプレーティング)中の4×10OBRamos Blue細胞に添加し、プレートを37OOCoODCで18時間インキュベートした。インキュベーション後、400gで5分間遠心分離することによって細胞をペレット化し、上清40μlを新しい96ウェルプレートに添加した。160 μlのQUANTI-Blue基質を添加し、プレートを1時間インキュベートし、SEAPレベルを分光光度的に測定した。
【0081】
ペプチド抗原コーティングの有無において、改変アデノウイルスをインビボで試験する方法
NOD/Shi‐scid/IL‐2Rγnull免疫不全マウスを、ヒト臍帯血から単離した造血幹細胞(CD34+,HLA‐B35+)を用いてヒト化した。A375ヒト黒色腫腫瘍を皮下に移植し(100 ul当たり2×106細胞)、動物をヒト化速度および腫瘍の大きさに基づいて群に無作為化した。動物を、ペプチドコーティングなしの腫瘍溶解ウイルス(VALO-C1)またはペプチド抗原コーティングありのnclolyticウイルス(PeptiCRAd)(両方の群についてウイルス用量1×108;1×107の準最適用量もまた、PeptiCRAdについて試験した)で処置した。ペプチドワクチン(0.12または30ug)をアジュバントとしてPoly-ICを皮内投与した。
【0082】
処理は、シクロホスファミドのボーラス投与(1mg/マウスi.v.)による無作為化(D0)の25日後に開始した。治療は、1、2、3および12日目に腫瘍内(模擬、ウイルスおよびPeptiCRAd)または皮内(ペプチド対照)に行った。二次腫瘍は、3回目の治療(5日目)の2日後に対側側腹部に移植した。二次性腫瘍に対する治療は行われなかった。
【0083】
末梢血単核細胞(PBMC)および腫瘍浸潤CD8+リンパ球(TIL)を、ペプチド抗原NY‐ESO‐1およびMAGE特異的CD8+T細胞について、デキストラマー分析によるフローサイトメトリーにより分析した。PBMCとTILの間の異なる免疫細胞サブセットを評価した。フローサイトメトリー分析は、Attune NxT Flow Cytometer(Life Technologies製)で行った。
【0084】
PBMCマウスモデル免疫化
35匹の8週齢のNOD-Prkdcem26Cd52/IL-2Rγ 26em Cd22/NjuCrl免疫不全マウス(NCG)に、2.106のSKMEL-2腫瘍細胞(HLA-B35+)を右側腹部に移植した(0日目)。13日目に、2人の異なったドナーからの5×106のHLA-B35+ヒト末梢血単核細胞を静脈内注射した。NYESO-1およびMAGE-A3 -複合体化5/3カプシドを用い、OX40L発現ウイルス(「OX40L PeptiCRAd」)またはNYESO-1およびMAGE-A3 -複合体化5/3カプシド含有OX40LおよびCD40L発現ウイルス(「PeptiCRAd」)を含む腫瘍内処置を、それぞれのペプチドと複合体化した1x 10 9 VPのウイルス投与量で16日目に開始した。最初のPeptiCRAd処理と同時に、50’000自家形質細胞様および骨髄系樹状細胞を腫瘍内に注入した。17日目、18日目(初回治療でプライム)および25日目(ブースト)に、腫瘍内PeptiCRAd注射により、樹状細胞の添加なしに腫瘍を処置した。治療スキーマを図10に示し、腫瘍の増殖を追跡した。動物を32日目に屠殺した。OX40L-PeptiCRadとPeptiCRAdは、14.7K軌跡と5/3キメリック繊維から表現されるヒトOX40Lトランスジーンである削除gp19k/7.1K領域、E1Aに24bpの削除を含んでいる。
【0085】
結果:
ウイルスから発現されるOX40Lの機能性
フローサイトメトリー分析ならびにサンドイッチELISAはウイルスから感染細胞の細胞表面上に発現されたOX40L導入遺伝子産物が細胞表面からある程度脱落するとともに、その受容体OX40に結合することができることを示している(それぞれ図2および3)。最も重要なことは、ウイルスから発現したOX40Lの機能性を解析すると、安定してOX40受容体を発現しているHEK-293細胞を利用すると、明らかな下流遺伝子の活性化が見られたことである(図4)。OX40LのOX40への結合はこれらの細胞における細胞内シグナル伝達経路を誘発し、NF-κB活性化を介してホタルLuciferaseレポーター遺伝子の発現を導く。OX40L発現ウイルスに感染させたA549細胞を用いて得られた生物ルミネセンスのレベルは導入遺伝子または陰性細胞対照を用いないウイルスを用いて得られた生物ルミネセンスレベルと比較した場合、OX40Lタンパク質が機能的であり、OX40に結合すると下流のシグナル伝達を活性化することを明確に示す。
【0086】
OX40L/CD40L発現ウイルスから発現されるCD40Lの機能性
CD40受容体を安定発現するRamos Blue細胞を利用してCD40L機能性を解析したところ、明らかな下流遺伝子活性化が見られた(Figure 5)。CD40LがCD40に結合すると、これらの細胞で細胞内シグナル伝達経路が引き起こされ、NF-κBの活性化を介してSEAP遺伝子の発現が引き起こされる。CD40L発現ウイルスに感染させたA549細胞を用いた場合に得られた吸光度レベルは導入遺伝子または陰性細胞対照としてCD40Lを含まないウイルスを用いて得られた吸光度レベルと比較した場合、CD40Lタンパク質が機能しており、CD40に結合すると下流のシグナル伝達を活性化することを明確に示している。
【0087】
ヒト化マウスモデルにおいて、ペプチド表面抗原の有無にかかわらず、改変腫瘍溶解ウイルスはペプチド特異的免疫応答を誘発する
全ての活性処理(ペプチド単独、ペプチドを含まないウイルス[VALO-C1]、およびペプチドを含むウイルス[PeptiCRAd])は、模擬処理動物と比較して、原発腫瘍における免疫細胞数を増加させた。VALO-C1およびPeptiCRAd-1処置動物の両方は処置後にペプチドワクチンまたは模擬処置動物と比較して、原発腫瘍においてより多くのT細胞(CD3、CD4、CD8)を示したが、全体的な浸潤免疫細胞(CD45)の数はすべての群で類似していた(それぞれ、図6および7)。
【0088】
さらに、T調節細胞(CD3+/CD4+/FoxP3+)の数は、ペプチドワクチンまたは模擬処置動物由来の原発腫瘍と比較して、VALO-C1およびPeptiCRAd-1処置原発腫瘍で少なかった(図8)。このことは、腫瘍内に投与された免疫原性アデノウイルス(裸のウイルスVALO-C1またはPeptiCRAd-1のいずれか)が局所の免疫抑制を低下させることによって腫瘍微小環境を調節することを示唆している。
【0089】
全身性腫瘍標的CD8+ T細胞応答および未治療の遠隔腫瘍へのCD8+ TILの浸潤を誘発する上で、腫瘍溶解性アデノウイルス(PeptiCRAd)またはペプチド抗原非存在下(VALO-C1)は、スーパーまたは標準的ペプチドワクチン接種に対するものである。このデータは、PeptiCRAdが標準的な腫瘍崩壊性ウイルスの腫瘍標的特異性を改善することを示唆している。
【0090】
ペプチCRAdはPBMCマウスモデルにおいてペプチド特異的免疫応答を誘発する
NY-ESO-1-およびMAGE-A3-複合体化ペプチCRAdによる治療は、大きな十分に確立された腫瘍に対して治療を開始した場合でも、ヒト化マウスメラノーマモデルにおいて腫瘍増殖停止をもたらした(図9)。OX40L-PeptiCRAdで処理したマウスは、模擬処理マウスよりもPBMCの全CD8+ T細胞の中でMAGE-A3特異的CD8+ T細胞が有意に多く、PeptiCRAd処理がヒト化マウスにおいてペプチド特異的応答を誘発できることを示した(図10)。
【0091】
参考文献
Kanerva et al 2003 Mol Ther 12:449-458.。
【0092】
Fueyo et al 2000.。Oncogene 19:2-12.。
【0093】

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【配列表】
0007417533000001.app