(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】眼内流体注入のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240111BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61F9/007 130D
A61F9/007 130H
A61M5/315 510
(21)【出願番号】P 2020555392
(86)(22)【出願日】2019-04-12
(86)【国際出願番号】 US2019027358
(87)【国際公開番号】W WO2019200336
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-02-02
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518224358
【氏名又は名称】ニュー ワールド メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バラン、ビジェイ アール.
(72)【発明者】
【氏名】スラバー ニコ ジェイ.
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-192360(JP,A)
【文献】特表2016-520383(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105832460(CN,A)
【文献】特表2004-500220(JP,A)
【文献】特表2007-501687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61M 5/00-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科処置用の外科用器具であって、
遠位端、近位端、前記近位端から前記遠位端まで延びる長手方向軸線、および前記近位端と前記遠位端との間の側面を有するハンドルと、
前記ハンドルに結合され、物質を保持するように構成された流体コンパートメントと、
前記ハンドルの前記遠位端に結合され、物質を患者の眼内部位に運ぶように構成された管腔を有するツールと、
前記ハンドルの前記長手方向軸線に沿って往復運動して、前記流体コンパートメントから前記物質を引き出し、前記ツールの前記管腔を通して前記物質を排出するように構成された、前記ハンドル内のピストンと、
傾斜面を介して前記ピストンと係合し、前記ハンドルの前記遠位端に向かって前記ピストンの前方ストロークを作動させるように構成される、前記ハンドルの前記側面にある押しボタンと
を備える、外科用器具。
【請求項2】
前記流体コンパートメントはプレ充填チャンバであり、前記外科用器具は、
前記プレ充填チャンバを密閉するように構成された密閉部材と、
流体源に結合するように構成された近位端、前記密閉部材を通って延びるように構成された遠位端、および前記流体源から前記プレ充填チャンバに流体を送出するように構成された充填ポートを有するインターフェース部材と
をさらに備え、
前記密閉部材に対する前記インターフェース部材の回転は、前記密閉部材の動きを促して、前記充填ポートをプレ充填チャンバから隔離するように構成される、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項3】
前記流体コンパートメントはプレ充填チャンバであり、前記外科用器具は、
前記プレ充填チャンバを密閉するように構成された密閉部材であって、前記密閉部材は、前記ハンドルの長手方向軸線に沿って並進可能であり、前記ハンドルに対して回転可能に固定されており、前記密閉部材は、それを通って延びる開口部、および第1のらせん状傾斜路を有する、密閉部材と、
近位端、遠位端、流体源に結合するように構成された前記近位端のコネクタ、前記密閉部材の前記開口部を通って延びる前記遠位端の凸部、前記凸部の側面上の充填ポート、および前記密閉部材の前記第1のらせん状傾斜路と嵌合するように構成された第2のらせん状傾斜路を有するインターフェース部材であって、前記インターフェース部材は、回転の限られた範囲内で前記ハンドルの前記長手方向軸線の周りで回転可能であり、前記ハンドルに対して前記長手方向軸線に沿って並進可能に固定されている、インターフェース部材とをさらに備え、
前記限られた範囲内での前記インターフェース部材の回転は、前記第1および第2のらせん状傾斜路間の係合を介して、前記密閉部材を前記長手方向軸線に沿って遠位方向に駆動して、前記充填ポートを越えて密閉をスライドさせて、前記充填ポートを前記プレ充填チャンバから隔離するように構成される、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項4】
前記押しボタンまたは前記ピストンの一方が前記傾斜面を備え、前記押しボタンまたは前記ピストンの他方がホイールを備
え、前記傾斜面と前記ホイールとの間の転がり係合により前記ピストンの前方ストロークが作動するように構成される、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項5】
前記ピストンに結合された用量調整部材をさらに備え、前記用量調整部材は、前記ピストンの移動距離を修正し、それにより、前記ピストンの前記前方ストローク時に送出される前記物質の量を変更することができるようになっている、請求項1に記載の外科用器具。
【請求項6】
遠位端および近位端を有する細長い管状のハウジングと、
前記ハウジングの前記遠位端に結合されたツール部と、
前記ハウジング内に配置された内部空洞と、
前記内部空洞に配置されたピストンと、
前記ピストンに結合され、前記ハウジングに配置されたボタンであって、前記ボタンは、前記ハウジングを通して流体を圧送するために前記ピストンを作動させるように構成される、ボタンと、
前記ハウジングの前記近位端に配置された流体コネクタと、
前記ピストンの遠位側の前記内部空洞に配置された流体出口チャンバと、
前記ピストンの近位側の前記内部空洞に配置された流体流入チャンバと
を備える、医療器具。
【請求項7】
前記ハウジングは、人間の手にグリップを提供する外側面を有する細長い管状ハウジングであり、前記ボタンは、前記細長い管状ハウジングの側面に配置されている、請求項6に記載の医療器具。
【請求項8】
前記ボタンは第1の傾斜面を含み、前記ピストンは第2の傾斜面を含み、前記第1の傾斜面と前記第2の傾斜面との間の滑り係合が前記ピストンのストロークを作動させるように構成される、請求項6に記載の医療器具。
【請求項9】
前記ボタンまたは前記ピストンの一方が傾斜面を備え、前記ボタンまたは前記ピストンの他方がホイールを備え、前記傾斜面と前記ホイールとの間の係合により前記ピストンのストロークが作動するように構成される、請求項6に記載の医療器具。
【請求項10】
遠位端および近位端を有する細長い管状のハウジングと、
前記ハウジングの前記遠位端に結合されたツール部と、
前記ハウジング内に配置された内部空洞と、
前記内部空洞に配置されたピストンと、
前記ピストンに結合され、前記ハウジングに配置されたボタンであって、前記ボタンは、前記ハウジングを通して流体を圧送するために前記ピストンを作動させるように構成される、ボタンと、
前記ハウジングの前記近位端に配置された流体コネクタと、
前記ピストンの遠位側の前記内部空洞に配置された流体出口チャンバと、
前記ピストンの近位側の前記内部空洞に配置された流体流入チャンバと
、
前記
流体流入チャンバに結合された流体ポートと、
前記流体ポートに配置された第1の弁と、
前記ピストンに配置された第2の弁と
を備える、医療器具。
【請求項11】
前記ピストンの前方ストロークにより、前記
流体出口チャンバの圧縮および前記
流体流入チャンバの膨張が引き起こされるようになっている、請求項10に記載の医療器具。
【請求項12】
前記
流体出口チャンバの前記圧縮により、前記
流体出口チャンバから前記ツール部に流体が排出されるように構成され、
前記
流体流入チャンバの前記膨張により、流体源から前記
流体流入チャンバに流体を引き込むように構成される、請求項11に記載の医療器具。
【請求項13】
前記ピストンを通って延びる流体チャネルであって、前記流体チャネルは複数のサブチャネルに分割され、前記サブチャネルの各々が弁で終端を迎え、前記サブチャネルのうちの第1のサブチャネルを出る流体が、前記サブチャネルのうちの第2のサブチャネルに供給するように構成される、流体チャネルをさらに備える、請求項6または請求項10に記載の医療器具。
【請求項14】
前記ツール部は、遠位端にある眼科用ブレード、および管腔を備え、
前記ハウジングは、粘弾性シリンジに結合するように構成され、
前記ピストンは、粘弾性流体を粘弾性シリンジから前記管腔に送るように構成される、請求項6または請求項10に記載の医療器具。
【請求項15】
前記眼科用ブレードは、小柱網を切開するためのデュアルブレード先端部を備える、請求項14に記載の医療器具。
【請求項16】
医療器具用のハンドルであって、
ツール部のための遠位端および流体源のための近位端を有する細長い管状ハウジングと、
前記細長い管状ハウジング内に配置された内部空洞と、
前記ハウジングの外側面に配置されたボタンと、
前記内部空洞内に配置され、前記細長い管状ハウジングの軸方向に往復運動するように構成されたピストンであって、前記ピストンまたは前記ボタンの一方が、前記ピストンまたは前記ボタンの他方と係合するように構成された傾斜面を備える、ピストンと
を備え、
前記傾斜面を介した前記ボタンと前記ピストンとの間の係合により、前記細長い管状ハウジングの遠位端に向かって前記ピストンの前方ストロークを作動させるように構成され、
前記内部空洞は、前記ピストンの近位側に配置されたチャンバを備え、前記ピストンの前記前方ストロークは、前記ピストンの近位側に配置されたチャンバの膨張を引き起こし、前記ピストンの近位側に配置されたチャンバに前記流体源から流体を引き込むように構成される、ハンドル。
【請求項17】
前記細長い管状ハウジングの前記近位端は、前記流体源に取り付けるように構成されたルアーロックコネクタを備える、請求項16に記載のハンドル。
【請求項18】
前記内部空洞は、前記ピストンの遠位側に配置されたチャンバを備え、前記ピストンの前記前方ストロークは、前記ピストンの遠位側に配置されたチャンバの圧縮を引き起こし、前記ピストンの遠位側に配置されたチャンバから前記ツール部に流体を排出するように構成される、請求項16に記載のハンドル。
【請求項19】
前記ピストンの近位側に配置されたチャンバは流体入口チャンバであり、
前記内部空洞は、前記ピストンの遠位側に配置された流体出口チャンバを備え、前記ピストンの前記前方ストロークは、前記流体出口チャンバの圧縮を引き起こし、流体を前記チャンバから前記ツール部に排出するように構成される、請求項16に記載のハンドル。
【請求項20】
前記流体入口チャンバの流体入口ポートに配置された第1の逆止弁と、
前記流体出口チャンバの流体出口ポートに配置された第2の逆止弁と、
前記ピストンに配置された第3の逆止弁と
をさらに備える、請求項19に記載のハンドル。
【請求項21】
前記ピストンの後方ストロークは、流体を前記流体入口チャンバから前記流体出口チャンバに送るように構成される、請求項19に記載のハンドル。
【請求項22】
前記ピストンは、前記近位端に向かって付勢され、前記ボタンの解放が、前記近位端に向かって前記ピストンの後方ストロークを引き起こすように構成される、請求項16に記載のハンドル。
【請求項23】
前記ピストンを前方位置にロックするように構成されたロック機構をさらに備える、請求項16に記載のハンドル。
【請求項24】
前記ロック機構は、前記ピストン上の停止部材と、前記停止部材に当接するように構成されたねじれ可能な部材とを備える、請求項23に記載のハンドル。
【請求項25】
前記ロック機構は、前記ボタンを押し下げられた位置に保持するために、前記ハウジング内にスライド可能であるボタン上のタブを備える、請求項23に記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示された実施形態は、概して、医療器具および処置に関するものであり、より具体的には、眼内流体注入のための外科用器具および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、典型的には眼圧(眼内の圧力)の上昇により、眼の視神経に損傷を引き起こす一群の眼の状態を指す。何百万人もの人々が、視力喪失、または極端な場合には不可逆的な失明を含む症状を伴う緑内障に苦しんでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国出願第15/791,204号明細書
【文献】米国出願第15/389,328号明細書
【文献】米国仮出願第62/750,151号明細書
【文献】米国出願第15/847,770号明細書
【発明の概要】
【0004】
主題技術のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、主題技術の態様を図示し、本明細書とともに主題技術の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】いくつかの実施形態に係る、医療器具の一例の様々な図を示す。
図1Aは、結合された流体源を備えた医療器具の側面図である。
【
図1B】
図1Bは、流体源が取り外され、流体コネクタインターフェースが露出された医療器具の等角図である。
【
図1C】
図1Cは、流体コネクタを覆うキャップを備えた医療器具の側面図である。
【
図2A】医療器具を操作するモードの例を示す。
図2Aは、使用者が親指を使用して医療器具のボタンを作動させる操作モードを示す。
【
図2B】
図2Bは、使用者が人差し指を使用して医療器具のボタンを操作する作動させる操作モードを示す。
【
図3】流体輸送機構の一例を示す医療器具の縦断面図を示す。
【
図4A】操作の様々な段階における流体輸送機構を示すために、ハウジングの一部が取り外された医療器具の等角図を示す。
図4Aは、ボタンが上向きで作動されていない位置にある流体輸送機構を示す。
【
図4B】
図4Bは、ボタンが押し下げられて作動された位置にある流体輸送機構を示す。
【
図5A】医療器具のプレ充填コンポーネントの一例の様々な図を示す。
図5Aは、医療器具のハンドルに結合されたプレ充填コンポーネントを示す側面図である。
【
図5B】
図5Bは、ハンドルに結合されたプレ充填コンポーネントを示す縦断面図である。
【
図5C】
図5Cは、操作の第1段階におけるプレ充填コンポーネントの側面図である。
【
図5D】
図5Dは、操作の第2段階におけるプレ充填コンポーネントの側面図である。
【
図5E】
図5Eは、プレ充填コンポーネントの密閉部材およびインターフェース部材の側面図である。
【
図5F】
図5Fは、プレ充填コンポーネントの密閉部材の縦断面図である。
【
図5G】
図5Gは、プレ充填コンポーネントのインターフェース部材の側面図である。
【
図6】医療器具を操作する方法の一例のフローチャートを示す。
【
図7】管腔を有する眼科用ブレードの一例の等角図を示す。
【
図8】管腔を有する眼科用ブレードの一例の側面図を示す。
【
図9】管腔を有する眼科用ブレードの一例の正面図を示す。
【
図10】管腔を有する眼科用ブレードの例の背面図を示す。
【
図11】管腔を有する眼科用ブレードの一例の等角図を示す。
【
図12】管腔を有する眼科用ブレードの一例の底面図を示す。
【
図13】管腔を有する眼科用ブレードの一例の側面図を示す。
【
図14】管腔を有する眼科用ブレードの一例の側面図を示す。
【
図15A】操作方法の一例のプロセスフローを示す。
【
図15B】操作方法の一例のプロセスフローを示す。
【
図15C】操作方法の一例のプロセスフローを示す。
【
図15D】操作方法の一例のプロセスフローを示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下に記載される詳細な説明は、様々な実施形態の説明として意図されており、主題技術が実践され得る唯一の実装形態を表すことを意図されていない。当業者が理解するように、説明される実装形態は、すべて本開示の範囲から逸脱することなく、様々な異なる方法で修正され得る。したがって、図面および説明は、本質的に例示的なものと見なされるべきであり、限定的なものではない。
【0007】
本明細書に開示される実施形態は、例えば、小柱網または他の眼内組織から組織の一部を切断または除去するように構成されたブレードまたは他のツールを有する装置を含む、眼科処置に適した器具または装置として実施することができる。そのような装置のいくつかの例は、2017年10月23日に出願された特許文献1、および2016年12月22日に出願された特許文献2に開示されており、これらの各々の全体は参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に開示される実施形態は、シュレム管または他の眼内部位に物質を注入するように構成されたマイクロカニューレまたはオリフィスを有する装置として実施できる。そのような装置のいくつかの例は、2018年10月28日に出願された特許文献3、および2017年12月19日に出願された特許文献4に開示されており、これらの各々の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
本開示の理解を容易にするために、いくつかの用語を以下に定義する。
【0009】
本明細書で定義される用語は、本開示に関連する分野において当業者によって一般的に理解されるような意味を有する。「a」、「an」、「the」などの用語は、単一のエンティティのみを指すことを意図したものではなく、特定の例を説明に使用できる一般的なクラスを含む。
【0010】
本明細書で使用される場合、「患者」または「対象」という用語は、ヒト、サル、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、またはそれらのトランスジェニック種などの生きている哺乳動物生物を指す。特定の実施形態では、患者または対象は霊長類である。人間の対象の非限定的な例は、成人、若年、乳児、および胎児である。
【0011】
「予防」または「予防すること」には、(1)疾患のリスクがあるおよび/または疾患の素因がある可能性があるが、疾患の病状または症候のいずれかまたはすべてをまだ経験または示していない対象または患者における疾患の発症を阻害すること、および/または(2)疾患のリスクがあるおよび/または疾患の素因がある可能性があるが、疾患の病状または症候のいずれかまたはすべてをまだ経験または示していない対象または患者における疾患の病状または症候の発症を遅らせることを含む。
【0012】
本明細書で使用される場合の「治療有効量」または「薬学的有効量」という用語は、疾患を治療するために対象または患者に投与されたときに、疾患に対するそのような治療に影響を与えるか、または疾患または状態の1つ以上の症状を改善する(例えば、痛みを改善する)のに十分な量を意味する。
【0013】
本明細書で使用される場合、「治療する」および「治療すること」という用語は、対象(例えば、患者)が治癒し、疾患が根絶される場合に限定されない。むしろ、本開示の実施形態はまた、単に症状を軽減し、(ある程度)改善する、および/または疾患の進行を遅らせる治療を考える。本開示の実施形態が、疾患または苦痛が治癒する場合に限定されることは意図されない。症状が軽減されれば十分である。
【0014】
本明細書で使用される場合、「ゴニオトミー」は、主に様々なタイプの緑内障(例えば、原発性開放隅角緑内障)を治療するために使用される外科的処置を指す。
【0015】
本明細書で使用される場合、「線維柱帯」は、角膜の基部の周り、毛様体の近く(強膜棘とシュヴァルベの線の間)に位置する眼の組織の領域を指し、前房(角膜で覆われた眼の前の房)を介して眼から房水を排出する責任がある。組織は海綿状で、小柱細胞が並んでおり、それは、流体がシュレム管と呼ばれる眼の円形のチャネルに流れ込み、最終的には血液系に流れ込むことを可能にする。
【0016】
本明細書で使用される場合、「シュレム管」は、前房から房水を収集し、それをコレクターチャネル(collector channel)および前毛様体静脈を介して血流に送出する眼内の円形チャネルを指す。
【0017】
本明細書で使用される「眼疾患」とは、緑内障-視神経障害、緑内障の疑い-眼圧亢進症、原発性開放隅角緑内障、原発性閉塞隅角緑内障、原発性開放隅角緑内障、正常または低張力緑内障、偽剥離緑内障、色素分散緑内障、閉塞隅角緑内障(急性、亜急性、慢性)、血管新生または炎症性緑内障、眼緑内障、および眼内圧の調節不全に関連する他のタイプの緑内障を含むがこれらに限定されない眼の様々な状態を指す。
【0018】
本明細書で使用される場合、「低眼圧症」は、眼圧の低下を指す。低眼圧症の統計的定義は、6.5mmHg未満の眼圧(「IOP」)であり、これは平均IOPを、3標準偏差を超えて下回っている。低眼圧症の臨床的定義は、病状(視力喪失)をもたらすのに十分低いIOPである。低IOPによる視力喪失は、角膜浮腫、乱視、嚢胞性黄斑浮腫、黄斑浮腫、またはその他の状態によって引き起こされる可能性がある。低眼圧性黄斑症は、脈絡網膜のひだ、急性期の視神経乳頭浮腫、血管の屈曲などの眼底異常に関連する低IOPを特徴としている。
【0019】
本明細書で使用される場合、「シュヴァルベの線」は、眼の角膜の内面に見られる解剖学的線を指し、角膜内皮層の外側の限界を描く。具体的には、デスメ膜の終端を表す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「デスメ膜」は、間質とも呼ばれる角膜の適切な物質と角膜の内皮層との間にある基底膜を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「強膜棘」は、ヒトの眼内のコラーゲン、前房への強膜の突出から構成される環状構造を指す。それは毛様体筋の縦方向の繊維の起源であり、小柱網の前方に取り付けられている。開放隅角緑内障(OAG)および閉鎖隅角緑内障(CAG)は、ムスカリン受容体作動薬(例、ピロカルピン)によって治療される場合があり、これにより、毛様体筋の急速な縮瞳と収縮が引き起こされ、これにより強膜棘が引っ張られ、小柱網が引き伸ばされて分離される。これにより、体液経路が開き、房水のシュレム管への排出を促進し、最終的に眼圧が低下する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「トラベクトーム(登録商標)」は、成人、若年、および乳児緑内障の外科的管理のための低侵襲性緑内障外科的電気外科または切除ツールを指す。線維柱帯切除術とは異なり、トラベクトーム(登録商標)を使用した手術では、外部の濾過ブレブを作成したり、眼に永久的な穴を残したりする必要はない。その代わりに、トラベクトーム(登録商標)電気外科用ハンドピースは、眼の自然な排水システムへのアクセスを開く。
【0023】
眼の切開および/または眼内液の注入を含む低侵襲の外科的処置は、緑内障および他の眼の状態を治療するために有用である可能性がある。例えば、線維柱帯切除術では、外科医は眼の切開部を通して挿入された眼科用ブレードを使用して線維柱帯の一部を除去し、それによって房水(AH)の流出を改善し、緑内障に寄与する眼圧を緩和する。
【0024】
眼科用ブレードを使用した小柱網の除去中に、軽度の出血が発生するいくつかの症例が観察されている。手術中に出血が発生すると、血液が小柱網およびシュレム管を覆い、視覚障害を引き起こす可能性がある。逆流症に対処する1つの方法は、眼から眼科用ブレードを取り外し、粘弾性シリンジを挿入することを含む。粘弾性シリンジを使用して、血液の逆流をシュレム管に押し戻し、チャネルを収集するか、または小柱網から血液を遠ざけることができる。血液が小柱網から押し出されると、粘弾性シリンジが眼から取り外され、眼科用ブレードが再び挿入されて手術を続行する。
【0025】
本明細書に開示される実施形態は、そのような出血が起こったときに別個の粘弾性シリンジを挿入および除去する必要なしに、眼科処置において使用され得る医療器具および関連する方法を含む。開示された実施形態は、とりわけ、粘弾性流体の眼内注射のための眼科用ブレードおよび統合された流体送出機構を有する外科用器具を含む。本明細書に開示される様々な実施形態および原理は、他の目的のために、または他の医学的または外科的処置のために、追加的または代替的に使用され得ることが理解されるであろう。
【0026】
ここで、図に目を向けると、
図1A~
図1Cは、本開示の原理を使用することができる例示的な医療器具100の様々な図を示す。
図1Aは、取り外し可能なシリンジが取り付けられた構成の器具100の側面図である。
図1Bは、取り外し可能なシリンジがなく、コネクタが露出している構成の器具100の等角図である。
図1Cは、取り外し可能なキャップが取り付けられた構成の器具100の側面図である。
【0027】
図1A~
図1Cを参照すると、器具100は、一般的に、ツール部102およびハンドル104を含む。ハンドル104は、流体源108とインターフェース接続するように構成され、器具100は、一般的に、流体を標的部位に送出するように構成される。特に、器具100は、ハンドル104内の流体輸送機構を作動させると、流体源108から、ハンドル104を介して、およびツール部102を介して患者の標的部位に流体を送出するように構成され得る。追加的または代替的に、器具100は、プランジャ120を押し下げると(例えば、指によってプランジャの近位端に加えられる力を介して)、またはそうでなければ流体源108から流体を排出するときに、ハンドル104のチャネルを通して流体を輸送するように構成され得る。
【0028】
ハンドル104は、流体源108に結合するためのコネクタまたはインターフェースを有するハウジング112を含む。より具体的には、ハウジング112は、シリンジ124および/または所望の液体または物質を保持するための流体コンパートメント(例えば、バレル)を含むプレ充填コンポーネント300(
図5A~
図5G)などの流体源108のコンポーネントに取り外し可能に取り付けるように構成されたルアーロックコネクタ128を含む。必要に応じて、シリンジ124は、ハウジング112とシリンジ124との間の回転またはねじり運動を通じて、ルアーロックコネクタ128を介してハウジング112に取り付けられるか、またはハウジング112から取り外されることができる。いくつかの実施形態では、シリンジ124は、眼科処置に有用なタイプの粘弾性流体または物質を保持するための粘弾性シリンジとして実施される。器具100は、凝集性、分散性、または凝集性および分散性の両方の粘弾性材料を取り扱うように設計することができる。追加的または代替的に、器具100は、様々な眼または他の医療処置に適した他の流体(例えば、生理食塩水、薬用液体など)との適合性があり得る。
【0029】
図1Cに示されるように、器具は、ルアーロックコネクタ128を介してハウジング112に取り付けられる取り外し可能なキャップ132をさらに含むことができ、例えば、輸送中または不使用期間中に器具のコンポーネントを保護または隔離するのに役立つことができる。ルアーロックコネクタ128が示されているが、必要に応じて、流体結合のために、他の様々な標準または非標準コネクタのいずれかが適切に含まれ得ることが理解されるであろう。さらに、流体源108の取り外し可能な取り付けを容易にするコネクタが示されているが、いくつかの実施形態では、ハンドル104またはハウジング112は、追加的または代替的に、所望の流体を保持するための一体型流体コンパートメントを備え得る。より一般的には、様々な実施形態において、ツール部102、ハンドル104、および流体源108は、取り外し可能に取り付けられ得るか、またはこれらのコンポーネントの任意の2つ以上が一体的に形成され、または単一のユニットとして提供され得る。
【0030】
図2A~
図2Bは、器具100を操作する例示的なモードを示す図である。
【0031】
図1A~
図2Bに示されるように、ハンドル104は、流体輸送機構を作動させるために使用され得るボタン136を備えている。特に、ボタン136は、押されると、ハンドル104に採用された流体輸送機構の作動を通じてシリンジ124からある用量の流体を送出するように構成することができる。ハウジング112は、人間の手140による器具の把持を可能にする形状を有することができるか、またはそうでなければ、操作者による手術器具の操作を可能にする。例えば、図示のように、ハウジング112は、器具の把持を可能にする細長い管状または円筒形の部材として構成することができ、これにより、ツール部102で行われる切開の正確な制御または患者の流体注入部位へのツール部102の正確な挿入が容易になる。ハウジング112の外面または側面は、輪郭のあるプロファイルおよび一連のリングのくぼみを含む把持増強構造144をさらに含む。
【0032】
図2A~
図2Bに示されるように、ボタン136は、ハンドル104の側面に配置される。特に、ボタン136は、ハウジング112の側面に配置される。これは、ボタン136を容易に、または正確な制御も容易にするグリップを使用して器具を操作しながら、手140の指を使用して器具100を再配置する必要なしに押すことを容易にすることができる。例えば、
図2Aに示すように、ボタン136は、親指152を使用して作動させるために、使用者の手140に配置することができる。別の一例として、
図2Bに示されるように、ボタン136は、人差し指148を使用して作動させるために、使用者の手140に配置することができる。
【0033】
図3は、流体輸送機構のコンポーネントを詳細に示す器具100の側面断面図である。
図3は、取り外し可能なキャップ132が取り付けられ、ツール部102が取り付けられた器具100のハンドル104を示す。
図3では、ハウジング112は、互いに堅固に固定されたいくつかの部品から構成されるものとして示されているが、他の実施形態では、ハウジング112は、1つの一体部品から構成することができる。ハウジング112は、例えば、プラスチック、金属などの様々な適切な材料のいずれかから作製することができる。
【0034】
図3に示されるように、流体輸送機構は、ハウジング112の内部に配置されたピストン156を含む。ピストン156は、一般的に、ハウジング112に対して移動するように構成され、より具体的には、流体を圧送するまたは他の方法で輸送するためにハウジング内で往復運動するように構成される。
図3に示されるように、ハウジング112は、長手方向軸線160(例えば、円筒軸)を画定する細長い管状ハウジングとして構成され、ピストン156は、ハウジング112の軸方向である長手方向軸線160に沿ってハウジング112の内部空洞内で前後に往復運動するように構成される。
【0035】
ハウジング112の内部空洞は、ピストン156による圧縮および膨張のためのシリンダとして実施され得る1つ以上の密閉されたチャンバ164a、bを含む。より具体的には、ハウジング112の内部空洞は、ピストン156の反対側に配置された流体入口チャンバ164aおよび流体出口チャンバ164bを含む一対の相補的チャンバを含む。チャンバは、一方のチャンバのピストン156の圧縮ストロークが他方のチャンバの膨張ストロークに対応し、逆もまた同様であるように、相補的な方法で構成される。
【0036】
図示のように、入口チャンバ164aは、ピストン156の外側面と空洞の内面との間に配置されたOリング168aで密閉することができる。第2のチャンバ164bは、ピストン156の外側面と空洞の内面との間に配置されたOリング168bで密閉することができる。より一般的には、様々な実施形態において、チャンバ164a、bのいずれかまたは両方は、様々な他の適切なシールまたは密閉要素のいずれかを使用して密閉され得る。
【0037】
流体輸送機構はまた、概して、一連の弁172a~dと、必要に応じて機構内の流体の圧縮、膨張、および輸送を容易にするためにピストンを通って延びる流体チャネル180とを含む。以下でさらに説明するように、流体輸送機構は、近位端から遠位端へ、順方向に流体を輸送するように設計することができる。
【0038】
図3を参照すると、入口弁172aは、入口チャンバ164aの流体入口ポートに配置される。流体入口ポートは、ルアーロックコネクタ128の位置に配置することができる。
図3に示されるように、入口弁172aは、ハウジング112に固定的に取り付けられ、入口チャンバ164aの近位端に配置され得る。あるいはまた、入口弁172aは、シリンジ124または流体源108(
図3には示されない)の一部として提供され得るか、または流体入口ポートは、入口チャンバ164aに対して別の物理的位置に配置され得る。入口弁172aは、入口チャンバ164aへ入る方向にそれを横切る流体の流れを可能にするが、入口チャンバ164aから出る方向へそれを横切る流体の流れを防止するタイプの逆止弁(または一方向弁)であり得る。
【0039】
出口弁172bは、出口チャンバ164bの流体出口ポートに配置され、これは、ツール部102またはツール部102に結合するように構成されたツールインターフェース116の位置に対応する。ツールインターフェース116は、取り外し可能なツールに結合するためのルアーロックコネクタとして構成され得るか、または固定された締結機構(例えば、溶接、接着剤、ねじなど)を提供することができる。
図3に示されるように、出口弁172bは、ハウジング112に固定的に取り付けられ、出口チャンバ164bの遠位端に配置され得る。あるいはまた、出口弁172bは、ツール部102=の一部として提供され得るか、または流体出口ポートは、出口チャンバ164bに対して別の物理的位置に配置され得る。出口弁172bは、出口チャンバ164bから出る方向にそれを横切る流体の流れを可能にするが、出口チャンバ164bへ入る方向にそれを横切る流体の流れを防止するタイプの逆止弁であり得る。
【0040】
1つ以上のピストン弁172c、dは、ピストン156を通って延びる流体経路においてピストン156上に配置される。特に、ピストン156は、1つ以上のピストン弁172c、dが、ピストンチャネル180に配置された、またはそうでなければ、ピストンチャネル180によって画定される流体経路に配置された状態で、入口チャンバ164aから出口チャンバ164bへ流体を輸送するためにピストン156を通って延びるチャネル180を含む。ピストン弁172c、dの各々は、前方方向に、例えば、遠位側に向かって、または入口チャンバ164aから出口チャンバ164bに延びる方向にそれを横切って流体が流れることを可能にするが、反対方向にそれを横切って流体が流れるのを防止するタイプの逆止弁(または一方向弁)であり得る。
【0041】
ピストンチャネル180は、任意選択で、各々がそれぞれのピストン弁で終端を迎える複数のサブチャネルに分割され得る。例えば、ピストンチャネル180は、第2のピストン弁で終端を迎える第2のサブチャネルに流体を供給する第1のピストン弁で終端を迎える第1のサブチャネルなどを含み得る。その製造を容易にするために、ピストン156自体は、互いに固定的に取り付けられた複数のコンポーネントまたはピースに分割することができ、これは、複数のピストンチャネルを有するピストンの製造を容易にし得る。あるいはまた、ピストン156は、単一の一体構造であり得る。
【0042】
チャンバの有用な測定基準は、ピストンのそのストロークの各々の端部での位置に対応し得る、チャンバのその最大点および最小点での内部容積の比に対応する圧縮比(またはその逆、膨張比)であり得る。様々な実施形態において、チャンバの圧縮比または膨張比は、弁の位置およびチャンバ内のピストンの直径によって決定され得る。チャネルをセグメント化することは、例えば、所与の内部容積またはピストンストロークに対する1つ以上のチャンバの有効な圧縮比および/または膨張比を増加させるまたは調整するために有用であり得る。例えば、
図3を参照すると、入口チャンバ164aの膨張比は、このピストン弁172cが省略された場合と比較して、ピストン弁172dと入口弁172aとの間のピストン弁172cの存在によってより大きくなる。ピストン弁172cと172dとの間のサブチャネルの内部容積は、ピストン156の膨張ストロークの間、本質的に一定に保たれるので、この内部容積は、方程式から効果的に除去される。結果として、入口チャンバ164aにおけるより大きな膨張比、したがって、入口弁172aを横切るより大きな吸引力が、ピストンの所与のストローク長に対して達成され得る。実施例は2つのピストン弁および2つのサブチャネルへの分割を示すが、必要に応じて、より多くのまたはより少ないサブチャネルまたはピストン弁を様々な実施形態で利用できることが理解されるであろう。追加的または代替的に、圧縮比を調整することは、ピストン156の作動時に排出される出口チャンバ164bに保持される流体の体積を変更することによって、機構によって提供される各投薬量の体積を修正することができる。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、用量調整部材139は、ハンドル104に含まれ得る。用量調整部材139は、例えば、圧縮比の調整を許容するように構成された取り外し可能なコンポーネントまたは可動コンポーネント(例えば、スライド可能、ねじれ可能など)であり得る。例えば、用量調整部材139は、ハウジング112の内部空洞内の取り外し可能なコンポーネントとすることができ、これは、使用者によって、または製造中に交換されて、ピストンの移動長を調整して、圧縮比、したがって各々のピストンストロークまたはボタン押下で送出される投与量を調整することができる。別の一例として、用量調整部材139は、用量調整部材139をハウジング112の内部空洞に沿った様々な位置に移動させ、ピストンの移動を制限して、ピストンストロークの長さを2つ以上の異なる使用者定義の投与量に変更するように構成された、ハンドル上のスライダーまたはねじれ機構などの使用者インターフェースコンポーネントに結合することができる。
【0044】
一対の相補的圧縮/膨張チャンバ164a、bおよび対応する弁172a、bが示されているが、様々な実施形態では、必要に応じて、より多くのまたはより少ないチャンバまたは弁が含まれ得ることが理解されるであろう。例えば、入口チャンバ164aまたは出口チャンバ164bの一方または他方を取り除くことによって、装置のコストおよび複雑さを低減することができる。チャンバと弁の数が増えると、流体の流れの制御が向上する可能性がある。
【0045】
再び
図3を参照すると、流体輸送機構は、ボタン136をさらに含むか、さもなければボタン136と協働することができる。ボタン136は、ピストン156に結合され、ピストン156の軸方向運動を生成するように構成される機械式ボタンとして実施される。特に、ボタン136は、ピストン156の対応する係合部材176bに結合された係合部材176aを含む。係合部材176a、176bは、例えば、ボタン136の押下時にピストンの運動を駆動するために互いに係合するように構成された傾斜面および/またはホイールであり得る。例えば、ボタン136の係合部材176aは、ボタン136の内面に配置された傾斜路などの傾斜面であり得るが、ピストンの係合部材176bは、ピストン156の外面に配置された傾斜路などの相補的な傾斜面であり得る。対応する傾斜面間のスライド係合は、ボタンが押下され、ボタンの押下をピストンの遠位運動に変換すると、ピストン156の軸方向運動を生成し得る別の一例として、ボタンまたはピストンの一方は傾斜面を含むことができ、ボタンまたはピストンの他方は、ボタンとピストンとの間の転がり接触によって係合を容易にするホイールを含むことができ、それはボタンの押下時にピストンの運動を駆動する。そのような転がり係合機構は、摩擦を低減して、使用者によるよりスムーズな操作および作動を容易にし得る。
図3に示す例では、ボタン136の係合部材176aは傾斜面を含み、ピストンの係合部材176bはホイールを含む。しかしながら、これらの係合部材は、例えば、ボタンがホイールを含み、ピストンが傾斜面を含むように切り替えることができると考えられる。図示の例では、ボタン136はまた、ヒンジ184を介してハウジング112に枢動可能に取り付けられ、これは、ボタン136がヒンジ184を中心に枢動するときに、対応する係合部材間のスライドまたは転がり係合を可能にし得る。
【0046】
ピストン156は、そのストロークの端部の位置に付勢される。これはまた、ボタン136を上向きまたは解放位置に付勢することができる。特に、ピストン156をハウジング112の近位端に向かって付勢する戻りばね188が含まれる。戻りばね188は、ピストン156のシャフトの周りに配置され、ハウジングの軸方向表面間に結合されたコイルばねとして実施される。このように結合することを可能にするために、ピストン156は、
図3に示されるように、その外面に配置された段差部を含む。戻りばね188が特定の構成で示されているが、戻りばねは、異なるように修正または配置され得るか、または様々な付勢要素(例えば、磁石、ねじりばねなど)のいずれかが、ピストン156を付勢するために使用され得ることが理解されるであろう。単なる一例として、戻りばね188は、ハウジング112およびピストン156の軸方向表面に当接する軸方向コイルばねとして示されているが、同様の効果は、戻りばねをヒンジ184内のねじりばねとして実施することによって達成され得る。いくつかの実施形態では、軸方向ばね188がピストンを近位位置に戻すよりも迅速にねじりばねがボタンを非作動位置に戻し、それによって使用者エクスペリエンスを向上させる場合、軸方向ばね188およびヒンジ184内のねじりばねの両方を使用することができる。このようにボタン136およびピストン156に付勢をかけることにより、各々のボタン押下により、ピストン156の単一のストロークをトリガーすることができ、したがって、流体輸送機構を介して単一用量の流体を分注することができる。
【0047】
図4A~
図4Bは、操作の様々な段階で流体輸送機構の観察を可能にするためにハウジング112の一部が取り外された等角図における器具100を示す。特に、
図4Aは、ピストン156が後方付勢位置にあり、ボタン136が上方付勢位置にある機構を示す。
図4Bは、ピストン156が前方作動位置にあり、ボタン136が作動押下位置にある機構を示す。
図4A~
図4Bはまた、ボタン136とピストン156との間の係合がピストン156の軸方向運動をどのように生成することができるかの一例をより詳細に示す。ボタン136が押下され、
図4Aの位置から
図4Bの位置まで移動されると、ピストンおよびボタンは、ピストンを前方に駆動するために、互いに転がるまたはスライドすることができる。
図4Aに示されるように、ボタン136は、ピストンのシャフト198を収容し、係合部材176a、bがシャフト198の周りに配置されることを可能にすることによって、対応する係合部材176a、b間の良好な接触を容易にするための溝194をさらに含み得る。
図3~
図4Bに示されるように、ピストン156は、ピストンをハウジングに結合する1つ以上のホイール129を含むことができるので、ピストンは、軸方向に並進するときにハウジングに沿って転がり、それにより、ピストンの往復運動中の摩擦を低減する。追加的または代替的に、そのようなホイール129は、ハウジング112の内側に配置され得ることが考えられる。
【0048】
機械式ボタンが様々な実施形態で示されているが、器具100は、例えば、他の機械式アクチュエータ、電子アクチュエータ、タッチセンシティブボタンなどの様々な他のアクチュエータのいずれかを追加的または代替的に使用できることも理解されるであろう。
【0049】
図4A~
図4Bはまた、ボタン136を下にロックするか、またはピストン156を前方位置にロックするように構成されたハウジング112に含まれるか、そうでなければそれと協働することができるロック機構190を示す。図示の例では、ロック機構190は、ボタン136上のタブ189を含み、これは、ハウジング112上の対応するスロット187にスライドして、タブを移動またはスライドするときにボタン136を押下位置に保持することができる。移動タブ189をボタンに配置することは、人間工学的な片手操作を容易にし、使用者がボタンを押下して、1回のシームレスな動きでロック機構を操作することを可能にし得る。しかしながら、ボタンのスロットの有無にかかわらずボタンを下方に保持することができるタブが、その代わりに、ハウジング112に含まれることが考えられる(例えば、ボタンが押下されたときに、タブがボタンの上にスライドして、ボタンスロットの必要性を回避することができる)。他の様々なロック機構が適切に使用され得ることもまた考えられる。例えば、ロック機構190は、ピストン156(例えば、その外面)に配置された停止部材、ロック解除位置または付勢位置にあるときに停止部材を収容するための溝、およびピストン156の軸に対してねじれ可能である、ハンドル上のねじれ可能部材を有することができる。ねじれ可能部材をねじることは、ロック溝を、それが停止部材を収容できる位置から移動させ、停止部材を表面に当接させ、ピストンを前方位置に保持させることができる。
【0050】
図5A~
図5Gは、医療器具100に含まれ得るプレ充填コンポーネント300の一例の様々な図を示す。
図5Aは側面図であり、
図5Aは、器具のハンドルに結合されたプレ充填コンポーネントを示す側面図であり、
図5Bは縦断面図である。
図5C~
図5Dは、操作の様々な段階でのスライディングシールの動きを示すプレ充填コンポーネントの側面図である。
図5E~
図5Gは、組み立てられていない構成でのプレ充填コンポーネント300のサブコンポーネントの様々な図を示す。
【0051】
図に見られるように、プレ充填コンポーネント300は、流体輸送機構が流体を引き込むことができる流体コンパートメントを提供するプレ充填チャンバ330を含むことができる。プレ充填チャンバ330は、処置の前の準備または初期段階の間に、シリンジ124または他の流体源をプレ充填コンポーネントに結合することによって、所望の流体で充填することができる。次に、プレ充填チャンバ330が充填されると、シリンジを取り外すことができる。プレ充填コンポーネント300は、例えば、流体輸送機構が、シリンジまたは他のより大きな流体源が医療処置中に装置に取り付けられ維持される構成よりも小さいサイズまたはより少ない体積の流体コンパートメントから流体を引き出すことを可能にすることによって、器具100の全長を減らすのに有用であり得る。
【0052】
図5A~
図5Bを参照すると、プレ充填コンポーネント300は、ハンドル104に、およびルアーロックコネクタ128などのインターフェースを介して流体輸送機構に結合されるチャンバ本体340を有することができる。例えば、プレ充填コンポーネント300は、(例えば、
図1Aに見られるように)シリンジ124がハンドルに直接結合される実施形態において、シリンジ124がルアーロックコネクタ128に結合され得る方法と同様の方法で、ルアーロックコネクタ128を介してハウジング112に結合される得る。プレ充填チャンバ本体340は、ハンドル104の一体部分であり得るか、さもなければ、ハンドルに固定的に結合され得ることもまた考えられる。
【0053】
プレ充填コンポーネント300はまた、プレ充填コンポーネントを所望の体積の液体で充填するために使用されるシリンジ124または他の流体源に接続するための別のルアーコネクタ350(例えば、その近位端において)を含むことができる。例えば、シリンジ124は、ルアーコネクタ350を介してプレ充填コンポーネント300に取り付けることができ、シリンジのプランジャ120は、最初にプレ充填チャンバ330をある体積の流体で充填するために押し下げることができる。プランジャ120のさらなる押し下げは、(例えば、器具を完全に準備するために)上記のような機構を回避するために使用することができる。
【0054】
プレ充填コンポーネント300は、シリンジの取り外し時にプレ充填チャンバ330内の密閉を維持するための機構を含む。この機構は、例えば、チャンバ内への気泡の潜在的な導入を回避するため、またはシリンジの除去時の他の望ましくない影響を軽減するために有用であり得る。
図5C~
図5Dは、シリンジ124(
図5C~5Dには見えない取り外されたシリンジ)などの流体源の取り外しの前後のプレ充填コンポーネント300の機構の動作を示す。
図5E~
図5Gは、プレ充填チャンバ330を充填および密閉するために使用することができるプレ充填コンポーネント300の様々なサブコンポーネントを示す。これらのサブコンポーネントはまた、
図5A~
図5Dの様々な組み立てられた構成に示される。
【0055】
プレ充填コンポーネント300は、密閉部材320およびインターフェース部材310を含むことができる。密閉部材320は、プレ充填チャンバ330を密閉し、プレ充填チャンバ330がインターフェース部材310の充填ポート360を介して充填されることを可能にするように構成される。インターフェース部材310は、プレ充填チャンバ330と、インターフェース部材310のコネクタ350に取り付けることができるプレ充填チャンバを充填するために使用されるシリンジとの間のインターフェースを提供する。機構は、プレ充填チャンバ330への流体の送出中、
図5C(および
図5B)に示されるように配置することができ、充填ポート360は、プレ充填チャンバ330と流体連絡している。次に、機構は、
図5Dに示すように、シリンジの取り外し時にインターフェース部材310および密閉部材320を互いに離して移動させ、充填ポート360をプレ充填チャンバ330から隔離するように構成することができる。
【0056】
プレ充填コンポーネント300は、充填ポート360の隔離を容易にするように以下のように構成することができる。密閉部材320は、(ハンドルの長手方向軸線160に対応することができる)その長手方向軸線に沿って軸方向に並進できるように、チャンバ本体340内にスライド可能に配置することができる。密閉部材320は、例えば、密閉部材320の外面とチャンバ本体340の内面との間に結合された外側Oリング304を介して、チャンバを密閉するように構成することができる。外側Oリング304は、密閉部材320の外面またはチャンバ本体340の内面に固定することができる。
【0057】
密閉部材320はまた、チャンバ本体340およびハンドルに対して回転可能に固定され得る。例えば、密閉部材320は、密閉部材320から半径方向外向きに突出することができる1つ以上の回転防止タブ363を含むことができる。回転防止タブ363は、長手方向スロットに沿った回転防止タブ363の軸方向の並進を可能にしながら、長手方向スロットに対して長手方向軸線の周りの回転防止タブ363の回転運動を制限するためにチャンバ本体340の長手方向スロットに挿入することができる。回転防止タブ363がチャンバ本体に含まれ、密閉部材320の長手方向スロット内に半径方向内側に突出するように、この構成を逆にすることができることが理解されるであろう。他の様々な機構を使用して、必要に応じて運動を制限することができる。
【0058】
インターフェース部材310は、流体源に結合するためのその近位端にあるコネクタ350と、密閉部材320の開口部を通って延びるその遠位端にある凸部314とを含む。充填ポート360は、凸部314上に配置され、凸部314の最遠位端の末端部に近接して凸部314の側面に配置された側部ポートとして構成される。この構成は、密閉部材320の内面と凸部314の外面との間に配置された内側Oリング308が、密閉部材320とインターフェース部材310との間の相対運動で充填ポート360を通過することを可能にし、それにより、充填ポート360をプレ充填チャンバ330から密閉するか、または充填ポート360が、密閉部材320およびインターフェース部材310の相対位置に応じて、プレ充填チャンバ330と流体連通することを可能にする。充填ポート360は、インターフェース部材310を通って部分的に延びる管腔311を介してルアーコネクタ350に結合することができる。内側Oリングは、例えば、凸部314が貫通して延びることを可能にする、内側Oリング308の遠位側に配置された密閉部材の中空止めねじ322を介して所定の位置に保持することができる。あるいはまた、他の適切な機構を使用して、例えば、密閉部材320の内面に沿った円周方向の溝など、内側のOリングを所定の位置に保持することができる。
【0059】
インターフェース部材310は、保持溝333を介してハンドルおよびチャンバ本体に対して並進可能に固定することができる。止めねじなどのガイド部材343は、保持溝333内に配置することができ、保持溝は、ガイド部材が円周方向溝に沿ってスライドするときにインターフェース部材310の回転を可能にするために、インターフェース部材310の外面上の円周方向溝として構成することができる。保持溝333は、インターフェース部材310の外面の円周の半分に対応する180度などの限定された動作範囲内でのみインターフェース部材310の回転を可能にする、その端部に配置された停止部を有することができる。溝の端部の停止部に当接するガイド部材343上で、その制限された動ma作範囲を超えてインターフェース部材が回転するのを防ぐ。これは、所望の他の制限された回転範囲に調整することができることが理解されるであろう。
【0060】
密閉部材320およびインターフェース部材310のそれぞれは、互いに嵌合するように構成された相補的ならせん状傾斜路390、392を含む。例えば、密閉部材320は、近位方向に面する第1のらせん状傾斜路392を含むことができ、インターフェース部材310は、遠位方向に面する第2のらせん状傾斜路390を含むことができる。嵌合するらせん状傾斜路は、インターフェース部材310および密閉部材320をそれらの間の相対的な回転によって互いから離れるのを促すように構成され、それにより、内側Oリングを充填ポート360上でスライドさせて、充填ポート360をプレ充填チャンバから隔離する。例えば、嵌合したらせん状傾斜路390、392がインターフェース部材310の回転に伴って互いにスライドすると、密閉部材320の回転拘束と結合したインターフェース部材の長手方向並進拘束により、インターフェース部材310のらせん状傾斜路390は、
図5Dに見られるように、密閉部材320を遠位方向に駆動して、それにより内側Oリング308を充填ポート360上にスライドさせる。
【0061】
したがって、プレ充填コンポーネントの動作は、以下の通りであり得る。第1に、使用者は、シリンジを長手方向軸線の周りで第1の方向(例えば、時計回り)に回転させることによって、シリンジをインターフェース部材310のルアーコネクタ350に取り付けることができる。ガイド部材343は、それが第1の方向に回転されるときにシリンジがルアーコネクタ350に対して締め付けられることを可能にするために、円周保持溝333の第1の端部の第1の停止部に当接することができる。
【0062】
次に、使用者は、シリンジのプランジャを押し下げて、ルアーコネクタを介してプレ充填チャンバ330に流体を送出することができる。使用者は、プレ充填チャンバが充填された後、プランジャをさらに押し下げて、プレ充填チャンバの下流の流体輸送機構を準備することができ、プランジャの押し下げは、流体輸送機構の逆止弁を回避する。
【0063】
器具が準備されると、使用者は、シリンジを第1の方向とは反対の第2の方向(例えば、反時計回り)に回転させることによってシリンジを取り外し始めることができる。シリンジを取り外すための回転は、2つのフェーズを有し得る。
【0064】
第1のフェーズの間、ガイド部材が保持溝に沿って第1の停止部から離れて、溝に沿って、第2の停止部に向かってスライドするとき、インターフェース部材310はシリンジと共に回転する。インターフェース部材310がシリンジと共に長手方向軸線の周りを回転すると、インターフェース部材のらせん状傾斜部392は、長手方向軸線に沿って遠位方向に密閉部材320の移動を促し、内側Oリング308が充填ポート360を通過してスライドして、充填ポート360をプレ充填チャンバ330から隔離し、したがって、プレ充填チャンバ330をシリンジから隔離するまで、インターフェース部材310および密閉部材320をそれぞれから分離させる。シリンジがインターフェース部材310と共に回転しているので、シリンジとルアーコネクタ350との間の密閉は無傷のままであり、空気が装置に導入されることはない。
【0065】
内側Oリングが充填ポート360を通過した後、ガイド部材343が第1の停止部から保持溝333の反対側の端部で第2の停止部に当接するとき、インターフェース部材310は、その制限された回転移動の終端に達する。この後、回転の第2フェーズに到達する。この第2フェーズの間、シリンジのさらなる回転は、インターフェース部材が第2の停止部によってさらなる回転から拘束されるので、シリンジをインターフェース部材のルアーコネクタ350から切り離す。ここで充填ポート360がプレ充填チャンバから隔離されているので、シリンジの切断によって導入された空気がプレ充填チャンバに到達するのを防止する。
【0066】
最後に、シリンジが取り外された後、使用者(例えば、外科医または開業医)は、流体輸送機構を操作して、プレ充填チャンバから一定量の流体を送出させることができる。密閉部材320は、この段階でプランジャとして動作することができ、ボタンを作動させることによって引き起こされる流体の各投与量は、密閉部材320を1投与体積単位の量だけ遠位に前方に引き寄せる。
【0067】
ここで
図6を参照すると、操作方法の一例が示されている。
図6は、簡単にするために様々な詳細が省略された、手術器具100のプロセスフローおよび概略図を示す。
図6では、弁172a~dは、各段階中に開いたまたは閉じたものとして概略的に示され、対応する矢印は、適切な場合に、弁を横切る流体の流れの方向を示す。
【0068】
ステップ202において、使用者は、シリンジ124をハウジング112に取り付けることができる。シリンジ124は、上記のように、ルアーロックコネクタまたは他の適切な接続インターフェースを使用して取り付けることができる。この段階では、流体輸送機構は定常状態にあり、流体輸送機構を介して流体は流れていない。
【0069】
ステップ206において、使用者は、器具100を準備することができる。特に、シリンジ124のプランジャ120を押し下げることができるか、またはさもなければ、流体204をシリンジ124から排出することができ、これにより、弁172a~dの各々の亀裂圧力を超過し、流体がバルブ172a~dの各々を通って、そしてハウジング112全体を通って順方向に流れることができる。流体がツールまたは器具の先端部から排出されると、気泡が除去されることができ、器具は、必要に応じて、意図された標的部位への流体送出のために準備することができる。追加的または代替的に、プランジャ120を押し下げる同様のプロセスは、必要に応じて、流体輸送機構を回避し、安定した投与量の流体を送出するために使用することができる。特に、弁172a~dの各々の亀裂圧力は、プランジャ120の押し下げ時に超過されるように構成され得る。図示の例では、シリンジ124は、ピストンポンプ機構によって送出される流体204を供給する処置の残りの間、器具に取り付けられたままである。他の実施形態では、器具100を準備することは、本明細書に記載されるように、プレ充填チャンバを充填することができる。これは、ピストンポンプ機構を介して処置中に送出される流体204が残りのステップでプレ充填チャンバから引き出されることができるので、この段階でシリンジ124を除去することを可能にし得る。
【0070】
ステップ210において、使用者は、ボタンを押すことができるか、またはピストン156の前方ストロークが、そうでなければ作動され得る。
図6に示されるように、ピストン156の前方ストローク中に、入口チャンバ164aが膨張し、その亀裂圧力を超える、入口弁172aを横切る圧力差または吸引力を生成し、流体を流体コンパートメントから入口チャンバ164aに引き込む。同時に、または同じ前方ストローク中に、出口チャンバ164bが圧縮し、出口弁172bの亀裂圧力を超えさせ、流体をチャンバ164bから排出させる。このようにして、粘弾性流体または他の流体の投与量を、ブレードまたは他の外科用ツールに送出するか、そうでなければ標的部位に送出することができる。ピストン弁172c、dは、進入を前進方向のみに制限するので、それらは、前方ストロークの間、閉じたままであり、上記のように、チャンバ164a、bの圧縮および膨張を容易にする。
【0071】
ステップ214で、使用者はボタンを離すことができ、またはピストン156の後方ストロークを他の方法で開始することができる。
図6に示されるように、ピストン156の後方ストローク中に、出口チャンバ164bは膨張し、入口チャンバ164aは圧縮する。同時に、ピストン弁172c、dが開き、それらを横切る順方向の流体の流れを可能にし、したがって、入口弁172aおよび出口弁172bが閉じたままであるときに、流体を入口チャンバ164aから出口チャンバ164bに輸送する。これは、ピストン156を、別の投与量の流体を送出する準備ができているその付勢位置に戻すことができる。
【0072】
本明細書に開示される実施形態は、医学的および外科的処置に有用であり得ることが理解されるであろう。人間または獣医の患者の体から制御された幅の組織のストリップを切断および除去することが望ましい多くの医学的および外科的処置が存在する。例えば、眼、皮膚、粘膜、腫瘍、器官、または他の組織または人間または動物において、制御された幅の切開(例えば、典型的なメス、切断刃、または針によって行われる切開よりも広い切開)を形成することが望ましい場合が時々ある。また、生検標本として使用するため、化学的/生物学的分析のため、DNA同定目的の保持または保管などのために、ヒトまたは動物の体から組織のストリップまたはある量を除去することが望ましい場合が時々ある。また、いくつかの外科的処置は、患者の体内の解剖学的位置から既知の幅の組織のストリップを除去することを必要とする。
【0073】
既知の幅の組織のストリップが患者の体内の解剖学的位置から除去される1つの外科的処置は、緑内障を治療するために使用される眼科的処置である。この眼科的処置は時々、ゴニオトミーと呼ばれる。ゴニオトミー処置では、長さが約2~10mm以上、幅が約50~230μmの組織のストリップを切断または切除するように機能する装置を眼の前房に挿入し、小柱網から全厚みの組織のストリップを除去するために使用される。小柱網は、シュレム管として知られる収集管の上にある、緩く組織化された多孔質の組織ネットワークである。房水として知られる流体は、眼の前房で継続的に生成される。健康な人では、房水は小柱網を通ってシュレム管に流れ込み、コレクターチャネル(collector channels)と呼ばれる一連の管を通って眼から出る。緑内障を患っている患者では、眼からの房水の排出は、小柱網を通る流れ抵抗の上昇によって損なわれ、それによって眼圧の上昇をもたらす可能性がある。ゴニオトミー処置は、小柱網の全厚のストリップを除去することにより、眼からの房水の正常な排出を回復することができ、したがって、小柱網のストリップが除去された開放領域を通して房水を排出することができる。
【0074】
本明細書に開示される実施形態は、外科的医学的介入のために使用することができる。例えば、いくつかの実施形態は、低侵襲外科技術を使用して、緑内障などの眼疾患を含むがこれらに限定されない様々な病状の治療のための顕微手術装置およびその使用方法に関する。いくつかの実施形態では、装置は、眼の小柱網(「TM」)を切断するためのデュアルブレード装置とすることができる。例えば、装置は、そのサイズ(すなわち、例えば、約0.2~0.3mmの間の幅)を介してシュレム管への入口を提供する装置先端部と、入口ブレード先端部が上向きに傾斜して、TMを切断するためのくさびまたは傾斜状動作を提供する構成を有し得る。あるいはまた、微小硝子体網膜(「MVR」)ブレード(米国ニュージャージー州フランクリンレイクスにあるBD社製)などの単一の切開装置先端部またはトラベクトーム(登録商標)装置などの焼灼装置先端部を使用することができる。いくつかの実施形態では、装置のツール部102は、カニューレ、マイクロカニューレ、または流体を送出するための管腔を有するデュアルブレードツールを含むことができ、例えば、2017年10月23日に出願された特許文献1、2016年12月22日に出願された特許文献2、2018年10月28日に出願された特許文献3、または2017年12月19日に出願された特許文献4に記載されているものなどであり、その各々の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
ここで
図7を参照すると、緑内障を治療するための例示的なデュアルブレードツールが示されている。いくつかの実施形態では、ツールは、器具100のツール部102に含まれ得る。特に、ツールは、小柱網(「TM」)を貫通してシュレム管に入るように設計された、デュアル切断ブレード(矢印)ならびに遠位点(アスタリスク)を明らかにするように示されている。シュレム管に入ると、ツールは前進するので、TMは遠位点からデュアル切断ブレードに向かって傾斜路を上に移動し、これにより、提示されたTMがきれいに切開される。デュアルブレード間の距離は、人間の目の範囲全域にわたってTMの幅の距離と厳密に一致するように設計されている。
【0076】
ここで、
図8~
図10を参照すると、装置12が示されている。いくつかの実施形態では、装置12は、上記の器具100のツール部102の遠位端に含まれ得る眼科用ブレードとして実施できる。装置12は、ハンドル104に含まれる流体輸送機構から受け取られた流体の送出または注入のための流体経路を提供する管腔199をさらに含み得る。
図8に示されるように、装置12のプラットフォーム5は、プラットフォーム5の遠位側に先端部6と、プラットフォーム5の遠位側から、プラットフォーム5の遠位側とは反対側のプラットフォーム5の近位側に延びる上面(例えば、傾斜路)13とを含むことができる。例えば、上面13は、先端部6から1つ以上の側方要素10、11まで延びることができる。
【0077】
図8にさらに示されるように、プラットフォーム5は、プラットフォーム5の遠位側の先端部6から、先端部6の反対側のプラットフォーム5の後部7まで延びる底面15を含むことができる。装置12の底面15は、上面13の反対側に配置することができる。底面15は、処置中にシュレム管の外壁に当接するように構成することができる(
図15A~
図15Cを参照)。底面15の少なくとも一部は、平坦および/または平面とすることができる。後部7は、底面15からシャフト4の一部に移行する湾曲面または円形の表面を画定することができる。
【0078】
図9および
図10に示されるように。プラットフォーム5の対向する側面8、9は、上面13から下向きに延びることができる。対向する側面8、9は、平面および/または互いに平行とすることができる。上面13は、移行構造を用いて対向する側面8、9に移行することができる。丸い先端面取りが
図8~
図10に示されているが、移行構造は、湾曲、円形、面取り、隅肉などを含む、1つ以上の他の形状を有することができる。
【0079】
移行構造は、底面15と対向する側面8、9との間に提供することができる。例えば、底面15は、それぞれ移行セクション28、29を用いて対向する側面8、9に移行することができる。面取りは、
図8~
図10の移行セクション28、29に対して示されているが、移行構造は、湾曲、円形、先端面取り、隅肉などを含む1つ以上の他の形状を有することができる。移行構造に沿って、装置12の幅は、対向する側面8、9の間の第1の幅から第1の幅よりも小さい第2の幅へ底面15全域にわたって移行することができる。第1の幅から第2の幅への移行は、漸進的、線形、段階的、または別のタイプの移行とすることができる。
【0080】
ここで、
図10~
図12を参照すると、装置12の底面15は、処置中にシュレム管の外壁との相互作用を強化する表面構造を含むことができる。例えば、底面15は、平面、凸面、凹面、またはそれらの組み合わせであり得る。さらなる例により、
図11および
図12に示されるように、底面15は、少なくとも2つの凸部の間に凹部40を含むことができる。凹部40は、ギャップ、スペース、またはボイドによって画定することができる。第1の凸部38は、プラットフォーム5の第1の側面8および/または第1の移行セクション28の下に配置することができる。第1の凸部38は、少なくとも部分的に、第1の移行セクション28の少なくとも一部によって形成することができる。第2の凸部39は、プラットフォーム5の第2の側面9および/または第2の移行セクション29の下に配置することができる。第2の凸部39は、少なくとも部分的に、第2の移行セクション29の少なくとも一部によって形成することができる。凸部38、39のそれぞれは、プラットフォーム5の後部7から先端部6に向かって延びることができる。凸部38、39は、その間に延びる凹部40によって分離することができる。
図10および
図11に示されるように、凸部38、39と凹部40との間の移行は段階的とすることができ、1つ以上の縁部を形成する。追加的または代替的に、凸部38、39と凹部40との間の移行は、漸進的、湾曲、円形、先端面取り、面取り、線形、または別のタイプの移行であり得る。例えば、凹部40は、凹状の構造を含むことができる。凹部40は、プラットフォーム5の後部7まで延び、それと交差することができる。
【0081】
先端部6に隣接して、底面15は、凹部40によって中断されない連続(例えば、平面)部分16を提供することができる。先端部6は、連続部分16によって凹部40から分離することができる。したがって、底面15は、その長さに沿って平面遠位部分および非平面近位部分を含むことができる。先端部6および先端部6のすぐ近位の領域(例えば、連続部分16)は、凹部40が先端部6と交差しないように連続することができる。凹部40は、後部7から、例えば、対向する側面8、9および/または移行セクション28、29よりも遠くない遠位に延びることができる。
図12に示されるように、凹部40は、その遠位端で、例えば、漸進的、湾曲、円形、先端面取り、面取り、線形、段階的、または別のタイプの移行である移行構造で終端を迎えることができる。
【0082】
平面遠位部分は、先端部6を用いて組織への侵入を容易にするために均一な表面を提供することができる。非平面近位部分(例えば、凸部38、39および凹部40)は、処置中にシュレム管と相互作用することができる。プラットフォーム5が移動されると、組織の少なくとも一部は、凸部38、39の間の凹部40内に受容され得る。凸部38、39は、組織(例えば、シュレム管)への露出のためのより小さな表面積を提供する。したがって、底面15の非平面近位部分は、プラットフォーム5が組織に沿って移動するときに、プラットフォーム5のより大きな操作性を提供する。
【0083】
ここで
図13を参照すると、
図8~
図12に示されるものといくつかの点で類似する装置の断面図が示されている。この装置は、垂直シャフト上に、シャフトの下の管腔199を可能にする角度(例えば、4度)をさらに含む。特に、底面15とプラットフォーム5の背面との間の角度は鈍角であり、背面は、底面の法線に対して約4度離れて配置されている。
【0084】
ここで
図14を参照すると、装置の断面図が示されている。特に、装置は、
図8~
図13を参照して上で説明したものと同様のタイプの眼科用ブレードを含むツールである。装置は、流体送出に使用することができる管腔199をさらに含む。例えば、管腔199は、流体輸送機構から粘弾性流体を受け取り、粘弾性流体を小柱網に送出するか、さもなければ眼管腔に流体を注入するように構成され得る。
【0085】
図15A~
図15Dは、器具100のいくつかの実施形態で使用され得る例示的な装置および操作方法を示す。特に、
図15A~
図15Dは、ツール部102(例えば、
図1を参照)の先端部に統合され、小柱網に適用され得る眼科用ブレードの操作を示す。
図15A~
図15Dはまた、方法中の流体送出に使用され得る管腔199を示す。
【0086】
装置は、眼の明確な角膜切開(例えば、幅0.5~2.8mmの間の切開サイズ)を通して導入され、瞳孔を横切るか、または虹彩の本体を横切って、眼の前房を通って前進されて、前房の反対側にある小柱網(TM)に係合する。前房は房水で満たされ、例として、約0.25ミリリットル(ml)の容積を有し、約3ミリメートル(mm)の深さであり得る。前房は、房水を置換するために粘弾性体で満たされ、処置中に房を安定させることができる。したがって、手術のこの段階で約0.25mlをチャンバに注入することができる。粘弾性体は、シリンジを使用して前房に注入することができる。いくつかの実施形態では、粘弾性体は、プランジャ120を押し下げるか、さもなければ、器具100内の流体輸送機構を回避し(
図1~
図6を参照)、管腔199を通って流体を流すようにシリンジ124から流体を排出することによって注入され得る。追加的または代替的に、(例えば、ボタン136を介した)流体輸送機構の作動を使用することができる。いくつかの実施形態では、各々のボタンの押下は、少量の単回投与量の流体(例えば、各々のボタンの押下で約0.03~0.05mlの粘弾性体)のみを送出するように構成され得る。これらの場合、回避機構は、別個のシリンジを必要とせずに、前房を最初に大量の粘弾性体で充填することができるようにするのに役立つ可能性がある。さらに、これにより、外科医が手術中にグリップを変更する必要なしに、必要に応じてより少ない投与量を送出するために、処置中に後で流体輸送を使用することが可能になり得る。
【0087】
図15Aの例に示されるように、標的組織20(例えば、TM)に到達すると、装置の先端部6は、シュレム管(「SC」)22に入るために使用することができる。いくつかの実施形態によれば、例えば、
図15Aに示されるように、傾斜路13は、TM20をシュレム管22の外壁から離れるように上昇させるために使用され得る。いくつかの実施形態によれば、例えば、
図15Bに示されるように、プラットフォーム5の前進は、傾斜路13上にあるTM20のストリップ20aを引き裂くことなく、傾斜路13を上って移動するときにTM20を伸ばすことができる。例えば、第1の側面8および第2の側面9は、(例えば、第1および第2の側方ブレード10、11に対して遠位の)傾斜路13上のTM20が、傾斜路13によって上昇されていないTM20に接続されたままであることを可能にし得る。TM20が上昇すると、それは、SC22から上昇していないときのTM20の張力よりも大きい張力下にある。傾斜路13の前進は、TM20の第1および第2の側方ブレード10、11への提示を容易にする。いくつかの実施形態では、例えば、
図15Cに示されるように、TM20は、TM20が上昇している(例えば、伸ばされているおよび/または張力下にある)間、第1および第2の側方ブレード10、11に接触する。この構成では、第1および第2の側方ブレード10、11は、第1および第2の切開をTM20に切開して、TM20のストリップ20aを形成する。切開は、TM20の上昇により、より容易かつ正確に行われる。プラットフォーム5の前進の間、ストリップ20aの少なくとも一部を、第1および第2の側方ブレード10、11の間のギャップ14内に受け入れることができる。ストリップ20aは、ギャップ14を横切る距離Dに対応する幅Wを有することができる。幅Wは、X軸に沿って、例えば、第1および第2の切開を横切って、かつ装置12の前進方向に対して側方に(例えば、直交して)測定され、ストリップ20aを形成することができる。距離Dは、X軸に沿って、例えば、第1および第2の側方ブレード10、11を横切って、かつ装置12の前進方向に対して側方に(例えば、直交して)測定され、ストリップ20aを形成することができる。いくつかの実施形態によれば、例えば、
図15Dに示されるように、TM20の残りの部分から分離されたストリップ20aは、装置30(例えば、鉗子)または吸引によって除去することができる。
【0088】
いくつかの場合において、TM20の除去中、または
図15B~
図15Cに示されるステップ中に、出血が起こる可能性がある。これが起こると、外科医は、流体輸送機構を作動させて(例えば、ボタン136を押す、
図1~
図6を参照)、粘弾性体の投与量を送出することができる。これにより、血液をSC22に押し戻すか、またはさもなければTM20から血液を遠ざけることができ、外科医は、別の粘弾性シリンジを挿入するために前房から装置を取り外す必要なしに処置を続行できる。
【0089】
プラットフォーム5および傾斜路13の前進は、装置が時計回りまたは反時計回りに前進するときに進行することができる。遠位切断部分は、デュアルブレードが最適な切断位置に配置されるように角度付けされている。この角度は、切断先端部が曲がってシュヴァルベの線と強膜棘(SS)の間の領域(SCを含む領域)に一致するようにすることができる。SCは角膜の近くで狭く、SSの近くでより広いので、傾斜した先端部は、組織20をTMの2つの縁部に提示するのに最適である。切断先端部の傾斜路13は、先端部が円周方向のパターンで前進するときに組織20が常にブレードに向かって上昇するように角度付けできる。切断先端部と第1および第2の側方ブレード10、11との間で、傾斜路13は、組織の切断を回避するように形作られ、シュレム管22の外壁から離れて上昇したTM20は、傾斜路13に沿って前進するときに無傷のままである。例えば、傾斜路13は、TM20を切断するのに十分に鋭くない凸状または先端面取りされた縁部を含むことができる。内視鏡的視覚化はまた、切断をガイドするために使用され得る。いくつかの実施形態では、本開示の装置は、内視鏡の端部に配置することができ、治療中のゴニオレンズの必要性を排除する。いくつかの実施形態では、本開示の装置は、内視鏡の端部に配置することができ、TMは、内視鏡カメラの直接の視覚化の下で係合され得る。
【0090】
単数形の要素への言及は、特に明記されていない限り、1つだけを意味することを意図しておらず、むしろ1つ以上を意味する。例えば、「a」モジュールは1つ以上のモジュールを指すことができる。「a」、「an」、「the」、または「said」で始まる要素は、さらなる制約なしに、追加の同じ要素の存在を排除しない。
【0091】
見出しおよび小見出しは、もしも存在するならば、便宜上使用されているだけであり、本発明を限定するものではない。例示的な単語は、例または図示として役立つことを意味するために使用される。「含む(include)」、「有する(have)」などの用語が使用される限り、そのような用語は、「含む(comprise)」が請求項で移行単語として使用されるときに解釈されるような「含む(comprise)」という用語と同様の方法で包括的であることを意図している。第1および第2などの関係用語は、エンティティまたは動作間の実際のそのような関係または順序を必ずしも必要とせず、または示唆することなく、1つのエンティティまたは動作を別のものから区別するために使用され得る。
【0092】
一態様、態様、別の一態様、いくつかの態様、1つ以上の態様、一実施形態、実施形態、別の一実施形態、いくつかの実施形態、1つ以上の実施形態、一実施形態、実施形態、別の一実施形態、いくつかの実施形態、1つ以上の実施形態、一構成、構成、別の一構成、いくつかの構成、1つ以上の構成、主題技術、開示、本開示、それらの他の変形などの語句は、便宜上のものであり、そのような語句に関連する開示が主題技術に不可欠である、またはそのような開示が主題技術のすべての構成に適用されることを示唆するものではない。そのような語句に関連する開示は、すべての構成、または1つ以上の構成に適用することができる。そのような語句に関連する開示は、1つ以上の例を提供することができる。一態様またはいくつかの態様などの語句は、1つ以上の態様を指すことができ、逆もまた同様であり、これは、他の前述の語句に同様に適用される。
【0093】
一連の項目の前にある「少なくとも1つの」という語句は、項目のいずれかを分離するために「および」または「または」という用語と共に、リストの各一員ではなく、全体としてリストを変更する。「少なくとも1つの」という語句は、少なくとも1つの項目の選択を必要せず、むしろ、この語句は、項目のうちの任意の1つ、および/または項目の任意の組み合わせのうちの少なくとも1つ、および/または項目のそれぞれのうちの少なくとも1つを含む意味を許容する。例として、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」または「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」という語句のそれぞれは、Aのみ、Bのみ、またはCのみ、A、B、およびCの任意の組み合わせ、および/またはA、B、およびCのそれぞれの少なくとも1つを指す。
【0094】
開示されたステップ、操作、またはプロセスの特定の順序または階層は、例示的なアプローチの実例であることが理解される。特に明記しない限り、または文脈で明確に指示されていない限り、ステップ、操作、またはプロセスの特定の順序または階層は、異なる順序で実行され得ることが理解される。ステップ、操作、またはプロセスのうちのいくつかは、同時に実行することができる。添付の方法請求項は、もし存在するならば、サンプルの順序で様々なステップ、操作、またはプロセスの要素を提示し、提示された特定の順序または階層に限定されることを意味しない。
【0095】
一態様では、結合されるなどの用語は、直接結合されることを指すことができる。別の一態様では、結合されるなどの用語は、間接的に結合されることを指すことができる。
【0096】
頂部、底部、前部、後部、側部、水平、垂直などの用語は、通常の重力基準系ではなく、任意の基準系を指す。したがって、そのような用語は、重力基準系で上向き、下向き、斜め、または水平に拡張することができる。
【0097】
本開示は、当業者が本明細書で説明されている様々な態様を実施できるようにするために提供されている。いくつかの事例では、主題技術の概念を不明瞭にすることを避けるために、よく知られている構造および部品がブロック図の形で示されている。本開示は、主題技術の様々な例を提供し、主題技術はこれらの例に限定されない。これらの態様に対する様々な修正は、当業者には容易に明白であり、本明細書で説明される原理は、他の態様に適用することができる。
【0098】
当業者に知られている、または後に当業者に知られるようになる、本開示全体を通して説明される様々な態様の要素に対する構造的および機能的均等物はすべて、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、請求項に含まれることを意図している。さらに、本明細書に開示されているものは、そのような開示が請求項に明示的に記載されているかどうかに関係なく、公に捧げることを意図したものではない。要素が「のための手段」の語句を使用して明示的に記載されていない限り、または方法請求項の場合、要素が「のためのステップ」の語句を使用して記載されていない限り、請求項の要素は、35 U.S.C.§112の第6段落の規定の下で解釈されるべきではない。
【0099】
発明の名称、背景技術、図面の簡単な説明、要約、および図面は、これにより本開示に組み込まれ、限定的な説明としてではなく、本開示の例示的な例として提供される。それらは請求項の範囲または意味を制限するために使用されないことを理解して提出される。また、発明を実施するための形態では、説明は例示的な例を提供し、様々な構成が、本開示を簡素化する目的で様々な実施形態に共にグループ化されていることが分かる。本開示の方法は、特許請求された主題が各請求項で明示的に列挙されているよりも多くの構成を必要とするという意図を反映するものとして解釈されるべきではない。むしろ、請求項が反映するように、発明の主題は、単一の開示された構成または操作のすべての構成未満にある。請求項は、これにより発明を実施するための形態に組み込まれ、各請求項は、別個に請求される主題としてそれ自体で成立する。
【0100】
請求項は、本明細書に記載された態様に限定されることを意図するものではなく、請求項の文言と一致する全範囲を与えられ、すべての法的等価物を包含するものである。それにもかかわらず、いずれの請求項も、適用され得る特許法の要件を満たさない主題を包含することを意図しておらず、そのように解釈されるべきではない。