(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】生体内血液濾過膜およびデバイス
(51)【国際特許分類】
A61M 1/22 20060101AFI20240111BHJP
A61M 1/34 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61M1/22 500
A61M1/22 505
A61M1/22 523
A61M1/34 100
(21)【出願番号】P 2020564552
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 US2019032919
(87)【国際公開番号】W WO2019222661
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-20
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,シューボ
(72)【発明者】
【氏名】チュイ,ベンジャミン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ライト,ネイサン
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0183946(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0289881(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0007119(US,A1)
【文献】米国特許第03370710(US,A)
【文献】特表2003-514677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14-1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液の生体内濾過のための膜を生成するための方法であって、
基板の第1の表面上に格子パターンで溝を形成すること、
前記溝内および前記基板の第1の表面上に膜材料を堆積させ、実質的に平面の表面および前記溝に対応するリブを備える非平面の裏面を備える膜層を形成すること、
前記基板の一部を除去することによって前記基板の第2の表面に空洞を形成すること、ただし、前記第2の表面は前記第1の表面の反対側にあり、前記空洞が前記膜の裏面を露出させる、および、
前記膜層に複数の孔を形成することにより、平面の表面、複数の孔、およびリブを備える非平面の裏面を備える膜を生成すること、を含む方法。
【請求項2】
前記格子パターンが矩形の配列を含み、前記リブが複数の矩形を画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記格子パターンが正方形の配列を含み、前記リブが複数の正方形を画定する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記リブが、実質的に均一な厚さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記リブが、縮径形状を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記リブが、1μm~10μmの範囲の高さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記リブが、2μm~8μmの範囲の高さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記リブが、2.5μm~5μmの範囲の高さを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リブが、0.5μm~5μmの幅を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記リブが、1μm~2.5μmの幅を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記空洞が、実質的に矩形である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法が、格子パターンで複数の空洞を形成することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記空洞が、250μm~1000μmの範囲の長さおよび25μm~100μmの幅を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記空洞が、500μm~1000μmの範囲の長さおよび25μm~100μmの幅を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記リブによって画定される前記矩形が、25μm~50μmの長さおよび10μm~25μmの幅を有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記空洞によって露出される膜の裏面の面積が、10,000~50,000μm
2の範囲内である、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記空洞によって露出される膜の裏面が実質的に矩形であり、約500μm~1000μmの長さおよび約25μm~100μmの幅を有する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記空洞によって露出される膜の裏面が、約10~30個の矩形リブを備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記リブが、露出される膜の長さに沿って25μm~50μmの距離ごとに1個の周期で配列される、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記リブが、露出される膜の幅に沿って10μm~25μmの距離ごとに1個の周期で配列される、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
矩形リブの長辺が、空洞の長辺に実質的に平行である、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
リブ間の領域における膜の厚さが500nm~1μmの範囲内である、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
リブ間の領域における膜の前記厚さが0.75μm~1μmの範囲内である、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の孔がスリット形状孔である、請求項1から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記スリット形状孔が、最大3μmの長さおよび最大0.1μmの幅を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記スリット形状孔が、最大2μmの長さおよび最大50nmの幅を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記スリット形状孔が、1μm~3μmの長さおよび10nm~100nmの幅を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記孔の長辺が、前記リブの長辺に垂直である、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記孔の長辺が、前記リブの長辺に平行である、請求項1から28のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月18日に出願された米国仮特許出願第62/673,645号、2018年10月26日に出願された米国仮特許出願第62/751,363号、および2018年12月19日に出願された米国仮特許出願第62/781,909号の利益を主張し、それらの出願の開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究に関する陳述
本発明は、国立衛生研究所により授与された助成金番号U01 EB021214およびU01 EB025136の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
序文
移植可能な濾過デバイスは、透析などの生体外(ex vivo)血液濾過を排除することを目的とした治療のための目標である。このようなデバイスの個々の構成要素の開発に大きな努力が加えられているが、濾過速度の改善および/または濾過膜デバイスの機械的安定性の増加などの改善の余地がある。
【発明の概要】
【0004】
向上した機械的安定性を持ち、圧力に対する耐性が向上した濾過膜が提供される。この濾過膜は、人工腎臓などの生体内(in vivo)移植可能濾過デバイスのために有用である。臨床スケール濾過デバイスおよびそれを作製するための方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】平坦膜(a)およびリブ付き膜(b)ならびに(c)裏側リブ直交ネットワークの3次元(3D)描画の概念図である。
【
図2】リブ付きナノ多孔性ポリシリコン膜のための製造プロセスを描く図である。
【
図3】(a)リブ付き膜の光学画像、(b)上面SEM(挿入図は、ナノポアスリットの詳細を示す)、および(c)底面SEM(挿入図は、リブの詳細を示す)。
【
図4】300mmHg圧力についてシミュレートされたリブ高さhに対する膜撓みおよびピーク応力を示す。対数カラースケールは、5つのすべてのケースの全範囲に使用される。グラフは、膜撓み(実線)およびピーク応力(点線)の両方がhとともに急速に減少する(すなわち、膜強度が急速に増加する)ことを示す。
【
図5】リブ付き膜対平坦膜について測定された累積クレアチニンクリアランスを示すグラフである。前者のクリアランスがより低いのは、膜の裏側にリブが存在することにより孔面積が13%減少したことに部分的に起因する。
【
図6】灌流圧力血液濾過のために使用可能な平行シリコンナノポア膜を有する血液濾過デバイス。
【
図7】
図7Aは、血液濾過のための平行シリコンナノポア膜を有する血液濾過デバイスであり、血流路を明らかにするための切断断面がある。
図7Bは、積層膜フィルタ構成における血流路である。
【
図8】本明細書に提供される血液濾過デバイスを外科的に移植されたブタ対象における血液透析を示す。
【
図9】移植された濾過デバイスによるブタ対象における分泌分子のクリアランスを示すグラフである。
【
図10】平行シリコンナノポア膜間で作製された限外濾過液および血液のための流路を示す分解図である。
【
図11】表示された結合層壁幅に対する破壊圧力を示す。
【
図12】積層シリコンナノ膜(SNM)の対および積層SNMカセットから構築される血液濾過器を示す。
【
図13】単一のSNMカセットから構築される血液濾過器を示す。
【
図14】血流路および限外濾過液流路の交互平行配置を示す側面図である。
【
図15】上部支持板の分解図を含む試作品アセンブリの描画である。
【
図16】スケールダウンモデル(4チャネル血液濾過器デバイス)および臨床スケールデバイス(20チャネル血液濾過器デバイス)の機械的応答の比較。
【
図17】4チャネル血液濾過器デバイスのモデル幾何形状である。
図17aの矢印はポリカーボネートハウジングを指す。
図17bの矢印はSNMチップを指す。
図17cの矢印はシリコン結合層を指す。SNMチップの長辺縁部に沿って配置された厚いシリコン結合層は、SNMチップ間の血流路を形成し、SNMチップの長辺縁部および短辺縁部に沿って不連続に配置された、ならびにSNMチップの内面上に配置された薄いシリコン結合層(
図10も参照されたい)は、限外濾過液のための流路を形成する。
図17dの矢印はSNMチップをハウジングに取り付けるエポキシを指す。
【
図18】臨床スケールの、20チャネル血液濾過器デバイスのモデル幾何形状である。
図18aの矢印はポリカーボネートハウジングを指す。
図18bの矢印はSNMチップを指す。
図18cの矢印はシリコン結合層を指す。SNMチップの長辺縁部に沿って配置された厚いシリコン結合層は、SNMチップ間の血流路を形成し、SNMチップの長辺縁部および短辺縁部に沿って不連続に配置された、ならびにSNMチップの内面上に配置された薄いシリコン結合層(
図10も参照されたい)は、限外濾過液のための流路を形成する。
図18dの矢印はSNMチップをハウジングに取り付けるエポキシを指す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
本明細書に引用される全ての刊行物、特許および特許出願は、上記または下記にかかわらず、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0007】
本発明を記載することにおいて、以下の用語が用いられ、以下に示すように画定されることが意図される。
【0008】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a(一つの)」、「an(一つの)」、および「the(その)」は、内容が明確にそうでないことを示さない限り、複数への参照を含むことが留意されなければならない。このように、例えば、「膜」への言及は、複数の2つ以上のそのような膜などを含む。特許請求の範囲は、いかなる任意の要素も除外するように立案されることができることに更に留意されたい。したがって、この記述は、特許請求の要素の列挙に関連して「専ら」、「唯一の」などのような排他的な用語の使用または「否定的な」制限の使用のための先行基準としての役割を果たすことを意図している。
【0009】
「対象」または「個体」とは、ヒト、ならびにチンパンジーならびに他の類人猿ならびにサル種などの非ヒト霊長類を含む他の霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマなどの農場動物、イヌおよびネコなどの飼育哺乳類、鳥類、ならびにマウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯類を含む実験動物などを含むがこれらに限定されない、脊索動物亜門の任意のメンバーを意味する。この用語は、特定の年齢を示すものではない。このように、成体および新生個体の両方は、対象となることが意図される。
【0010】
物理量、時間的時間期間などの測定可能な値を指すときに、本明細書で使用される「約」という用語は、そのような変動が、開示されたデバイスを特徴付ける測定の典型であるか、または開示された方法を実行するのに適切であるように、指定された値から±20%、±10%など、±5%など、±1%、±0.1%を含む、変量を包含することを意味する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「実質的に」は、関連する基本機能の変化をもたらすことなく許容範囲内で変動する可能性のある定量的表現を修正するために適用され得る。例えば、実質的に平行は、互いにわずかに非平行である構造を包含し得る。
【0012】
「複数」には、少なくとも2つのメンバーが含まれる。特定の場合において、複数は、少なくとも10、少なくとも100、少なくとも1000、少なくとも10,000、少なくとも100,000、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、または少なくとも109、またはそれ以上のメンバーを有し得る。
【0013】
本明細書で使用される「生体適合性」は、重大な毒性または重大な損傷を引き起こすことなく、対象における組織との長期の接触を可能にする、材料の特性を指す。
【0014】
本明細書で使用される「平面」は、任意の物体の3次元形状を記載するのに適用され得、ここで、互いに実質的に垂直である2つの寸法の長さスケール(例えば、長さと幅)は、他の2つの寸法の両方に実質的に垂直である第3の寸法(例えば、厚さ)の長さスケールよりも長い。2つのより長い寸法のうちの一方の長さスケールは、もう一方のより長い寸法のものと同様であるかまたは異なっていてよい。平面は、表面の文脈で使用される場合、突起を含む表面とは対照的に平坦表面を指す。本明細書で提供される膜層は、実質的に平坦である、すなわち、長さおよび幅が、有意な突起または凹みを含まないため滑らかな平面表面を画定する第1の表面と、例えば、突起またはリブが実質的に滑らかな表面によって分離される第2の表面から延在する突起またはリブを有する、非平面であり得る第1の表面の反対側の第2の表面とを含み得る。膜層から形成される膜の第1の表面は、突起が存在する領域からナノポアが存在しない、第1の表面と第2の表面との間に延在する複数のナノポアを有する。
【0015】
本明細書で使用される「ナノポア」は、一方から他方へ膜を貫通する孔を指し、孔は、ナノメートル範囲、例えば、1.0nm~1,000nmの範囲にある、少なくとも1つの横方向寸法(例えば、幅および/または長さであるが、基板を横切る孔の高さ/厚さは含まない)である。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ポリシリコン」という用語は、薄膜として堆積される、シリコンの多結晶形態を指す。それはトランジスタおよび配線のためのマイクロエレクトロニクスで使用される。MEMSにおいて、ポリシリコンは通常、デバイスのための構造材料として使用される。
【0017】
血液回路に関して使用される「ポンプレス」とは、個体の循環系を通って血流を駆動するポンプ機構(例えば、心臓)以外のポンプ機構がないこと指すことを意味することを意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「濾過」という用語は、微粒子を通過させない培地を通して流体キャリアを通過することによって、液体のような、流体から粒子状物質を流体から分離するプロセスを指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「個体」という用語は、イヌ、ネコ、家畜(例えば、ブタ)、非ヒト霊長類、およびヒトを含む哺乳類などの任意の動物を指す。個体は、腎臓機能が低下している、および/または透析が必要な、心機能が低下している、および/または肝機能が低下している患者であり得る。
【0020】
本明細書で使用される「透析」という用語は、濾過の形態、または膜を通って選択的拡散のプロセスを指し、通常、膜を通って拡散する低分子量溶質を、拡散しないコロイドおよび高分子量溶質から分離するために使用される。いくつかの実施形態において、流体の供給物は、半透膜を通過し、透析液の供給物は、その膜の反対側を通過し、膜は、片方または両方の液体で湿り、流体間の溶質の拡散輸送がある。一方の流体である透析液の組成を使用して、他方の流体であるいくつかの分子または複数の分子の供給流体の組成を枯渇させ得る。
【0021】
本明細書で使用される場合、「限外濾過」という用語は、加圧下で流体を濾過することを指し、濾過される材料は、非常に小さく、典型的には、流体には、コロイド状の、溶解溶質、または非常に微細な固体材料を含まれ、フィルタは、微小多孔性、ナノ多孔性、または半透性の媒体である。典型的な媒体は、膜である。濾過される流体は、「供給流体」と称される。限外濾過中、供給流体は、フィルタを通して濾過された「透過液」または「濾過液」または「限外濾過液」と、媒体を通って濾過されなかった供給流体の一部、または膜内に保持されている「保持物」に分離される。限外濾過では、膜の反対側に透析液を通過させる必要はない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「透析液」という用語は、低分子量溶質が最初にこれらの溶質を含む別の流体(典型的には、供給流体)から膜を通して拡散する流体を指すために使用される。
【0023】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は、特定の材料またはプロセスパラメータに限定されず、当然のことながら変え得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態を記載するためのものであるにすぎず、限定的を意図しないこともまた理解されたい。
【0024】
本明細書に記載されるものと同様または同等のいくつかの方法および材料を、本発明の実施において使用することができるが、好ましい材料および方法を本明細書に記載する。
【0025】
詳細な説明
本開示は、膜が膜の裏側から延在する突起またはリブを含む、生体内濾過のための膜を製造するための方法を提供する。突起またはリブは、膜がより厚くなっている膜の一部であり、したがって均一な厚さの膜と比較して、機械的により頑丈である。
【0026】
血液の生体内濾過のための膜を生成するための方法が開示される。方法は、基板の第1の表面上に格子パターンで溝を形成すること、溝内および基板の第1の表面上に膜材料を堆積させることによって、実質的に平面の表面および溝に対応するリブを備える非平面の裏面を備える膜層を形成すること、基板の一部を除去することによって基板の第2の表面に空洞を形成することであって、第2の表面は第1の表面の反対側にあり、空洞が膜の裏面を露出させること、及び、膜層に複数の孔を形成することによって、平面の表面、複数の孔、およびリブを備える非平面の裏面を備える膜を生成すること、を含む。
【0027】
特定の実施形態において、基板の第1の表面上に格子パターンで溝を形成することは、基板の前側から基板の一部を除去するようにエッチングすることを含む得る。特定の実施形態において、エッチングは、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウム、緩衝フッ化水素酸、EDPなどの、湿式エッチング剤を使用した湿式エッチングでよい。エッチングプロセスをいつ停止するかの決定は、溝の所望の深さに基づく。湿式エッチングは、等方性または配向選択的、すなわち、異方性であり得る。エッチングは、真っ直ぐな側面または傾斜した側面に溝を生成し得る。他の実施形態において、エッチング剤は、より異方性であり、溝壁の傾斜を殆どまたは全く生成しないで使用され得る。あるいは、反応性イオンエッチングを実行してもよい。
【0028】
基板は、膜のための支持部材として機能し得る。例えば、膜の第2の表面は、基板における空洞において露出されてもよく、空洞の境界を画定する基板の残りが、膜に機械的支持を提供する。しかしながら、米国特許出願公開第2015/0090661(A1)号に開示されている膜および関連するデバイスとは異なり、基板における空洞において露出された膜は、空洞における膜の下に残っている基板の一部によって支持されない。むしろ、各空洞における膜の露出された領域は、膜の下部表面における突起またはリブの存在によって支持され、突起またはリブは、膜と同じ材料から作製される。
【0029】
基板は、膜を横切って濾過される限外濾過液などの水性流体に曝露されたときに詰まらない任意の不活性材料で作製され得る。場合によっては、シリコンウェハなどの半導体材料は、基板を形成するために使用され得る。シリコンウェハは、ミラー指数によって列挙されるように、[100]平面配向を含む様々な結晶配向を有し得る。他の場合において、基板は、ゲルマニウム、周期表のIV族元素、ヒ素化ガリウムを含むIII-V化合物、亜鉛テルリウムを含むII-IV化合物、pおよびnドープ化合物等であり得る。
【0030】
基板は、実質的に平面であり得、円形または直線縁部を有し得る。基板は、矩形片または円形片に切断され得る。基板の厚さは、約400μm未満、約600μm、約700μm、約900μmなど、またはそれ以上であり得る。
【0031】
特定の実施形態において、格子パターンが矩形の配列を備え、リブが矩形の配列の周囲を画定する。特定の実施形態において、格子パターンが正方形の配列を備え、リブが正方形の配列の周囲を画定する。
【0032】
特定の実施形態において、リブが、実質的に均一な厚さを有する。特定の実施形態において、リブが、縮径(テーパー状)形状を有する。特定の実施形態において、リブが、1μm~10μm、例えば、2μm~8μmまたは2.5μm~5μmの範囲の高さを有する。特定の実施形態において、リブが、0.5μm~5μm、例えば、1μm~2.5μmの幅を有する。
【0033】
特定の実施形態において、溝内および基板の第1の表面上に膜材料を堆積させるように、実質的に平面の表面および溝に対応するリブを備える非平面の裏面を備える膜層を形成する前に、中間層が基板上に形成され得る。中間層は、誘電体層などの保護層であり得る。場合によっては、中間層は、基板上に酸化物または窒化物層を堆積させることによって形成され得るか、または基板上で成長され得る。中間層は、低圧CVD(LPCVD)および血漿強化CVD(PECVD)を含む化学蒸着(CVD)によって、またはいくつかの他の堆積手段によって堆積され得る。場合によっては、中間層は、熱酸化などの熱プロセスで成長され得る。中間層は、窒化シリコン、酸化シリコン、酸窒化シリコン、炭化シリコン、または他の誘電体材料および組み合わせを含むいくつかの他の材料層を含み得る。中間層の厚さは、約2μm以下、例えば、2μm~0.1μm、1μm~0.2μm、1μm~0.5μm、または0.8μm~0.5μmであり得る。
【0034】
膜は、マイクロまたはナノ厚スケールで堆積または成長されることができる、任意の数の材料で形成され得る。例えば、膜は、シリコン、ポリシリコン、炭化シリコン、超ナノ結晶性ダイヤモンド、ダイヤモンド様カルボン、二酸化シリコン、SU-8、チタン、窒化シリコン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、シリコン、または様々な他の材料などの膜材料から作製され得る。膜材料は、同じまたは異なる堆積手段によって堆積され得て、一例では、LPCVDを含み得る。膜層の厚さは、5μm未満、例えば、5μm~0.5μm、4μm~0.5μm、3μm~0.5μm、2μm~0.5μm、1μm~0.5μm、または0.8μm~0.4μmであり得る。
【0035】
基板の裏側における空洞を形成する前に、複数のナノポアは、膜層の前面(表面)をパターン化およびエッチングすることによって、膜層内に形成され得る。場合によっては、孔構造は、後に除去されて膜層を通して孔を形成し得る犠牲材料で形成され得る。孔構造は、エッチングプロセス、または他のリソグラフィープロセスで形成され得る。膜層は、電子ビーム、深部紫外線リソグラフィ、または本明細書に記載の構造を作製するためのパターン化を形成することができる別のパターン化技術を介して実行され得る、フォトレジストでパターン化され得る。レジストパターンは、反応性イオンエッチング、または湿式エッチングプロセスを介して、膜層上に転写され得る。パターン化に続いて、材料の犠牲層は、パターン化膜層上またはその内部に形成され得る。犠牲層は、厚さが20nm未満であり得る、熱酸化を介して成長した酸化物であり得る。あるいは、層は、約15nm、10nm、7nm、5nm、3nm、1nm、5オングストロームなど以下の厚さを有し得る。材料の層は、成長時に共形であり得、このように、フィルムは、高密度プラズマCVD(HDPCVD)、またはいくつかの他の共形堆積プロセスを含む、より共形なプロセスを介して形成され得る。層は、酸化シリコン、またはその後膜層から除去して孔を有する膜を作製されることができる、任意の他の材料であり得る。
【0036】
犠牲材料の層は、後続のフォトレジストパターン化およびエッチングで、特定の面積において選択的に除去され得る。これは、後続の堆積中に第2の膜層を第1の膜層に固定するための領域を提供し得る。フォトレジストを除去した後、第2の膜材料は、アンカー空洞、ならびに第1の膜材料において形成された溝の中およびその周りの犠牲層の周囲の領域に充填することによって堆積され得る。この材料は、前述と同じまたは異なる膜材料であり得る。例えば、第2の膜材料はまた、ポリシリコンであり得る。第2の膜材料層は、犠牲材料が少なくとも露出されるレベルまで平面化され、それによって孔構造を形成する。平面化は、任意の研磨またはエッチング技術で生じ得、一例において反応性イオンエッチングを含むことができる。更に別の例において、アンカーは、第2の膜材料を堆積させ、平面化を実行した後に形成され、充填され得る。あるいは、プロセスは、追加のリソグラフィステップ、続いて直接エッチング、例えば反応性イオンエッチング、続いてアンカー材料の特定の堆積を実行することによって、実行され得る。
【0037】
孔はまた、一連のパターン化および堆積プロセスを実行することによって、より密度の高いパターン化がされ得る。例えば、膜材料の初期堆積に続いて、上述のものと同様の二次パターン化ステップが、実行され得る。二次パターン化が実行されると、追加の保護層は、前述の方法で堆積され得る。追加の保護層の形成に続いて、後続の膜材料層は、必要な孔空間度を提供するように、形成され得る。反復処理は、線および空間パターンを20%以上減少させ得る。あるいは、反復処理は、線および空間パターンを約30%以上、約40%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%など、またはそれ以上減少させることができる。製造中に孔内の保護材料を維持することによって、孔の完全性は、最終放出が実行されるまで維持され得る。
【0038】
第2の保護層は、基板の裏側エッチングの前に膜材料の上に適用され得、空洞を形成し、膜をむき出しにする。第2の保護層は、その後実行されたエッチング技術に応じて、酸化物、窒化物、または別の化合物を含み得る。例えば、窒化物層は、水酸化カリウムエッチングが実行された場合、堆積され得、酸化物層は、後続のエッチングが水酸化テトラメチルアンモニウムなどの、窒素に対して選択的な化学物質を含む場合、堆積され得る。
【0039】
いくつかの実施形態において、空洞は実質的に矩形である。いくつかの実施形態において、格子パターンにおける複数の空洞が形成される。いくつかの実施形態において、空洞は250μm~1000μmの範囲の長さおよび25μm~100μmの幅、例えば、500μm~1000μmの長さおよび25μm~100μmの幅、または25μm~50μmの長さおよび10μm~25μmの幅を有する。空洞によって露出される膜の裏側の面積が、10,000~50,000μm2の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、空洞によって露出される膜の裏側が実質的に矩形であり、約500μm~1000μmの長さおよび約25μm~100μmの幅を有する。いくつかの実施形態において、空洞によって露出される膜の裏側が、約10~30個の矩形リブを備える。いくつかの実施形態において、リブが、露出される膜の長さに沿って25μm~50μmの距離ごとに1個のリブの周期で配列される。いくつかの実施形態において、リブが、露出される膜の幅に沿って10μm~25μmの距離ごとに1個のリブの周期で配列される。いくつかの実施形態において、矩形リブの長い方の長さが、空洞の長い方の長さに実質的に平行である。いくつかの実施形態において、リブ間の領域における膜の厚さが、500nm~1μmの範囲内である。いくつかの実施形態において、リブ間の領域における膜の厚さが、0.75μm~1μmの範囲内である。
【0040】
複数の孔が、スリット形状孔であり得る。いくつかの実施形態において、スリット形状孔が、最大3μmの長さおよび最大0.1μmの幅、例えば、最大2μmの長さおよび最大50nmの幅、または1μm~3μmの長さおよび10nm~100nmの幅を有する。いくつかの実施形態において、孔のより長い辺が、リブのより長い辺に垂直である。いくつかの実施形態において、孔のより長い辺が、リブのより長い辺に平行である。
【0041】
濾過膜を備える濾過デバイスも、本明細書に提供される。特定の態様において、濾過膜は、濾過デバイスを通って流れる血液のための流路を形成する、濾過膜と連動して、組み立て式の部分チャネルを含むハウジングに統合され得る。濾過膜は、組み立て式の部分チャネルを個別に備えるハウジングに挿入され得る。あるいは、間隔を空けた方法において濾過膜を結合することによって形成された濾過膜カセットは、部分チャネルの開口部に取り付けられた、ハウジングおよびカセットに挿入され得る。
【0042】
図10に描かれる実施形態において、濾過膜は、積層構成で一緒に結合される。本明細書に記載されるように、膜は、ハウジングに一度に1つずつ挿入されて、結合され得、またはそれらは、部分チャネルを備えるハウジングに挿入される前に、濾過膜カセットを生成するように予め結合され得る。
図10は、限外濾過液または透析液の流れのための濾過膜間に提供される流路と交互に血液の流れのための濾過膜間に提供される流路を描く。血液のための流路を形成するために、濾過膜は、膜の長辺縁部に沿って配置されたスペーサを使用して間隔を空けた方法において配置され得る。血流のためのチャネルの高さを画定するスペーサの高さは、0.5mm~5mm、例えば、0.8mm~4mm、0.8mm~2.5mm、1mm~2.5mm、または1.5mm~2.5mmの範囲であり得る。スペーサは、2つの膜間の接着が300mmHgより高い血圧に耐えるのに十分であるように、2つの膜を接着するための表面を提供する幅を有し得る。特定の態様において、スペーサの幅は、2mm~5mm、例えば、2.25mm~3.75mm、2.25mm~3.5mm、2.25mm~3.25mm、2.25mm~3mm、または2.5mm~3mmの範囲であり得る。スペーサは、スペーサと膜との間に画定される流路の幅を最大にするように、膜の縁部で、またはその近くで膜上に位置決めされ得る。特定の態様において、スペーサは、20mm~100mm、例えば、20mm~80mm、20mm~70mm、20mm~50mm、20mm~40mm、または20mm~30mmの幅によって間隔が空けられ得る。
【0043】
限外濾過液または透析液のための流路を形成するために、濾過膜は、膜の周辺に沿って不連続に配置されたスペーサを使用して間隔を空けた方法において配置され得る。任意選択で、膜の内面間に配置された追加のスペーサが存在し得る。特定の態様において、膜の内面に沿って2つの膜の間に配置された1~4つの追加のスペーサが存在し得る。特定の態様において、膜間の長辺縁部に沿って位置決めされたスペーサは、限外濾過液のための出口、または透析液のための入口もしくは出口を画定する長辺縁部で開口部を提供するように、短辺縁部に延在し得ない。
図10は、そのような構成を描く。特定の態様において、膜間の短辺縁部に沿って位置決めされたスペーサは、限外濾過液のための出口、または透析液のための入口もしくは出口を画定する短辺縁部に沿って開口部を提供するように、長辺縁部に延在し得ない。限外濾過液のための流路は、膜を横切る濾過から生成された限外濾過液の出口のための少なくとも1つの開口部を含み得る。特定の態様において、限外濾過液のための流路は、膜を横切る濾過から生成された限外濾過液の出口のための少なくとも2つ、3つ、または4つの開口部を含み得る。特定の態様において、限外濾過液のための流路は、膜を横切る濾過から生成された限外濾過液の出口のための2つの開口部を含み得る。濾過膜間の縁部に沿って位置決めされたスペーサは、所望の数の開口部を提供するように構成され得る。限外濾過液または透析液の流れのためのチャネルの高さを画定する、スペーサの高さは、0.1mm~1mm、例えば、0.25mm~1mm、0.5mm~1mm、または0.5mm~0.75mmの範囲であり得る。スペーサは、2つの膜を接着するために十分な表面を提供する、幅を有し得る。特定の態様において、スペーサの幅は、2.25mm~4mm、例えば、2.25mm~3.75mm、2.25mm~3.5mm、2.25mm~3.25mm、2.25mm~3mm、または2.5mm~3mmの範囲であり得る。特定の態様において、2つの膜間の内部において位置決めされたスペーサは、膜の周辺に沿って位置決めされたスペーサの縁部から、互いに5mm~10mmの幅で間隔を空けられ得る。
【0044】
スペーサは、任意の好適な材料、例えば、シリコン、ポリシロキサン、ポリグルカプロン、ポリジオキサノン、ポリグラクチン、カプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリエチレングリコール、ポリテレフタレート、チロシン、ポリ(エステルアミド)、ポリイソブチレン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ビスフェノール-α-グリシジルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ-p-クロロキシリレン、フェノール樹脂などの生体適合性ポリマー材料から作製され得るが、これらに限定されない。スペーサは、任意の好適な非毒性接着剤を使用して膜の表面に接着され得る。特定の態様において、スペーサは、流路の2つの側壁を画定し得、流路が、流路における血液の出入りのための出入口に接続される。濾過のために使用される膜は、透析および/または限外濾過の分野で使用される生体適合性膜、例えば、シリコン膜、シリコンナノポア膜(SNM)、窒化シリコン、シリカ、微小薄膜(atomically thin membrane)、例えば、グラフェン、シリコン、シリセン、二硫化モリブデン(MoS2)など、またはそれらの組み合わせ、またはポリマーであり得る。
【0045】
特定の実施形態において、膜は、それぞれ、1nm~500nm、例えば、1nm~90nm、2nm~50nm、3nm~40nm、4nm~50nm、4nm~40nm、5nm~50nm、5nm~20nm、4nm~20nm、7nm~100nm、12nm~20nm、または5nm~10nmの直径または幅がある、円形またはスリット形状開口部を有する複数のナノポアを含み得る。特定の実施形態において、膜は、それぞれ、0.1μm~5μm、例えば、0.1μm~3μm、0.1μm~0.5μm、0.5μm~1μm、1μm~1.5μm、1.5μm~2μm、0.1μm~1μm、0.1μm~0.8μm、0.2μm~0.7μm、0.2μm~0.6μm、0.2μm~0.5μmの範囲の直径または幅がある、円形またはスリット形状開口部を有する複数のマイクロポアを備える。特定の実施形態において、複数の孔は、スリット形状であり、本明細書に列挙される幅を有し、1μm~10μm、例えば、2μm~3μm、3μm~4μm、4μm~5μm、5μm~6μm、6μm~7μm、7μm~8μm、8μm~9μm、または9μm~10μmの範囲の長さを有する。特定の場合において、スリット形状は、100~1000nmの深さ、3nm~50nmの幅、および1ミクロン~5ミクロンの長さ、例えば、5nm~50nm×1ミクロン~2ミクロン×200nm~500nmの幅×長さ×深さを有する。孔の深さは、0.1ミクロン~1000ミクロンの範囲であり得る、膜の厚さによって画定され得る。
【0046】
図10は、血液および限外濾過液のための流路を作製するための濾過膜の積層を示す。2つの膜間の縁部に沿って配置されるL字形状スペーサは、2つの膜間に不連続な密封を提供し、それによって、膜およびスペーサによって画定されるチャネルの長辺縁部に沿って2つの開口部を画定する。2つの追加スペーサは、画定されたチャネルの内部において、含まれる。このように、限外濾過液/透析液チャネルは、第1の膜の第2の表面と、第1の膜および第2の膜がスペーサによって間隔を空けた方法において位置決めされる第2の膜の第1の表面との間に画定される。開口部は、ハウジングにおいてチャネルに接続され、チャネルは、積層膜の間に画定される流路の各々から限外濾過液を収集するように構成される。チャネルは、第1と第2の膜との間に画定された第1の限外濾過液流路から、膜の積層構成における最終から2番目と最終の膜との間に画定された最後の限外濾過液流路まで延在する、円形または矩形チャネルであり得る。第2の膜の第2の表面および第3の膜の第1の表面は、第2の膜の第2の表面と第3の膜の第1の表面との間の長辺縁部に沿って配置されたスペーサによって間隔を空けた方法において位置決めされる。これらのスペーサは、1つの短辺縁部から膜の反対側の短辺縁部に延在する。
【0047】
積層膜は、国際出願第PCT/US17/30597号に記載されるように、蛇行血液導管の切片の周りを回るように接続する濾過領域を形成し得、これは、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書中に記載されるように、蛇行血管は、個体の血管に接続するように構成された円形入口と、入口の内腔が円形断面を有する状態から実質的に矩形断面を有する状態に移行する移行部分と、矩形断面が膜カセットの積層膜対に接続され、積層膜対が血流路を画定し、血流路が蛇行導管の第2の領域に接続され、第2の領域がU字形状ターンを含み、続いて膜カセットの別の積層膜対に接続される移行部分とを含み得る。特定の態様において、血液濾過法デバイスの濾過領域における複数の流路は、実質的に矩形であり(例えば、幅よりも長い長さを有する)、平行構成において積層されている。特定の態様において、蛇行導管は、個体の血管に接続するために構成された円形出口を含み、導管は、矩形断面から円形断面に移行して、円形出口を形成する。
【0048】
特定の態様において、円形入口、U字形状ターンを含む領域、および円形出口は、血液濾過器のハウジングにおいて予め形成され得て、膜カセットに接続されて複数の血流路を提供し得る。特定の態様において、ハウジングはまた、血流路と交互に限外濾過液/透析液流路に接続するように構成された1つ以上の予め形成されたチャネルを含み得る。
【0049】
特定の態様において、濾過領域における複数の血流路の各々は、10mm~200mm、例えば、40mm~100mmの長さを有する。特定の実施形態において、濾過領域における複数の血流路の各々は、5mm~100mm、例えば、10mm~40mmの幅を有する。特定の実施形態において、濾過領域における複数の血流路の各々は、0.5mm~2.5mmの高さを有する。
【0050】
図11は、シリコンスペーサの様々な幅によって提供される結合強度の試験の結果を示す。圧力破壊は指数曲線に従う。
【0051】
図12は、積層された対の膜または積層膜のカセットを挿入することによる濾過デバイスの製造を示す。
【0052】
特定の態様において、バイオ人工腎臓などの生体内浸透デバイスは、対象の体腔において適合するように寸法決めされる。生体内浸透デバイスは、形状において矩形または円筒形であり得る。特定の場合において、生体内浸透デバイスは、10~30cm2、10~25cm2、15~25cm2、20~25cm2、15~30cm2などの、50cm2以下の表面積を有し得る。特定の場合において、生体人工腎臓は、矩形であり得、3cm~10cmの長さ、1cm~6cmの幅、および0.3cm~2cmの高さ、例えば、3cm×1cm×0.5cm~6cm×4cm×1cmの寸法(長さx幅x高さ)、例えば、3cm×1cm×0.5cm、5cm×2cm×1cm、または6cm×4cm×1cmを有する。特定の実施形態において、血液濾過器、特に血液濾過器の濾過部分、例えば、本明細書で提供される図に描かれるものの全体寸法は、それぞれ、45mm~100mmの高さ、80~150mmの長さ、および10~30mmの幅、例えば、45~80mmx90~130mmx10~30mmの高さx長さx幅の範囲であり得る。
【0053】
任意の材料適合ハウジング材料は、本明細書で提供される血液濾過器を形成するように、使用され得る。いくつかの実施形態において、ハウジングは、部分的に、医療グレードのプラスチック、チタン、ステンレス鋼などの金属から製造され得る。
【実施例】
【0054】
以下は、本発明を実施するための具体的な実施形態の実施例である。実施例は、例示的な目的のみのために提供され、本発明の範囲をいかなる方法でも限定することを意図しない。
【0055】
使用された数字(例えば、量、温度など)に対する精度を確保する努力がなされたが、ある程度の実験誤差および偏差は、許容されるべきである。
【0056】
実施例1:可変厚膜
移植可能バイオ人工腎臓(iBAK)のための堅牢性および性能を向上させたナノ多孔性膜が、設計、製造、および試験された。より厚い「リブ」のネットワークを薄膜に重ね合わせることによって、機械的に頑丈な膜および高い濾過速度を同時に達成することが可能であることを示した。
【0057】
「移植可能バイオ人工腎臓」は、米国だけにおいて治療費が年間350億ドルを超える、65万人以上の患者に影響を与える末期腎臓病(すなわち、腎不全)のための透析または腎臓移植のための必要性を排除することを目的とした、UCSFでの長期プロジェクト[1]である。
【0058】
iBAKの重要なMEMSコンポーネントの1つは、フィルターユニットであり、ナノスケールのスリット孔があるポリシリコン膜を使用して、血液からクレアチニンおよび他の有害物質を抽出することにおいて、腎臓の濾過機能を模倣する[1]。孔幅(典型的には、5~30nm幅)は、両側の間の圧力差に起因して、「有用な」コンポーネント(例えば、赤血球/白血球)が血液中に残り、「不要な」コンポーネントが限外濾過液中に通過するように設定される。
【0059】
このような膜を非常に均一で正確に調整可能な孔サイズで製造するための信頼性の高いプロセスを以前に開発した[2]。しかしながら、透析の質量転送スループットに一致するために、別の桁違いの改善は、例えば、(i)システムレベルで並列性を実装すること(例えば、複数のチップ)、(ii)そのチップレベルで孔密度を増加すること(高度なリソグラフィ、またはナノ印刷)、および、(iii)孔の流路抵抗を低減すること(例えば、薄い膜)、によって要求される。本開示は、機械的完全性を犠牲にすることなく膜を薄くするという選択肢(iii)を記載する。
【0060】
膜を薄くすることは、流路抵抗を最小限に抑えるために望ましいが、最終的に膜は、典型的な血圧に耐えることができないほど脆弱になる。これは、長期的な信頼性が最重要である、移植可能医療デバイスにおいて、明らかに許容されない。したがって、膜表面の裏側を横切る「厚い」リブの足場によって支持される「薄い」活性多孔質面積を含む、可変膜厚を設計し、それに余分な剛性を与える(
図1を参照)。
【0061】
理想的には、補強要素は、あまりアクティブなフィルタ面積を占有するべきではない。追加して、リブの突起は、血流を妨げないように、チップの背面(濾過液)側にあるべきである。これは、リブ材料が既に形成された膜層の上部に堆積される「添加剤」プロセスを排除する。
【0062】
したがって、本研究において、1.5μm幅の溝(「リブ成形体」)の格子をSi基板(
図2a)の表面の深部に2.5~5.0μmエッチングする、新しい製造アプローチを開発した。0.5μmの熱酸化、それに続く0.8μmのポリシリコン堆積は、溝を効果的に満たし(最終的なリブを形成する)、表面を再平面化する。その後、[3]において詳述されている元のプロセスに戻る(
図2c~
図2f)。最終のデバイスが、
図3において示される。
【0063】
堅牢性と製造しやすさを兼ね備えたリブ設計を求めるため、膜たわみと最大応力対リブ高さhの有限要素モデリングが実行された。hにおける僅かな増加でも、膜強度が急速に増加することが分かった(
図4)。したがって、0μm(すなわち、平坦)、2.5μm、および5μm高のリブがあるナノ多孔性膜を作製し、それらの油圧破裂閾値を測定した。表1は、リブ付き膜がそれらの平坦部分よりも50~85%良好に実行され、活性孔面積においてわずかな損失(13%)に見合ったことを示す。両方のタイプの膜もまた、バイオ濾過試験を受けた。
図5は、それらのクレアチニンクリアランス性能を比較する。
【0064】
【0065】
結論から言うと、デバイスの堅牢性を維持しながら、顕著に薄いナノ多孔性膜を可能にする新しい設計および製造方法を実証し、完全な移植可能バイオ人工腎臓-「シリコン腎臓」の最終目標に向かって濾過効率を向上させた。
【0066】
実施例2:シリコンナノポア膜ベースの移植可能血液透析器
4つの濾過部分のある、平行な積層膜構成を備える血液濾過デバイスが、ブタ対象に移植された。デバイスの概略図が、
図6に示される。血液および透析液の流れは、膜を介した血液の濾過を強化するように反対方向にある。
【0067】
図7Aには、血流路を明らかにするように、血液濾過デバイスの切り開きが描かれている。
図7Bは、積層膜フィルタ構成における血流路を描く。血流路は、延長入口導管と、単一蛇行濾過チャネルと、出口導管とによって画定され、延長入口導管が、入口、第1の移行領域、第1の方向転換部分、第2の移行領域、第2の方向転換部分を備え、第1の移行領域において、入口が、個体の血管に接続するように構成された円形断面から実質的に矩形断面に移行し、第1の移行領域の終端で矩形断面が、第1の方向転換部分の矩形断面と一致し、第2の移行領域において、第1の方向転換部分の幅が拡大して、第2の移行領域の終端にある矩形断面が第2の方向転換部分の矩形断面と一致し、第2の方向転換部分の矩形断面が、蛇行濾過チャネルの矩形断面と一致し、蛇行濾過チャネルが、間隔を空けて積層構成で配置された複数の濾過部分を備え、濾過部分が、方向転換部分を介して接続され、出口が、矩形断面を有する第1の領域と、矩形断面から円形断面に移行し、対象の血管に接続するように構成された円形出口で終わる第2の領域と、を備える。複数の濾過部分は各々、上面、底面、および上面と底面とを接続する側壁によって囲まれた矩形内腔を画定する。上面は、チャネル内腔において血液を濾過するための膜を含み、底面は、チャネル内腔において血液を濾過するための膜を含む。ブタ対象において移植された濾過デバイスにおいて、複数の濾過部分は、4つの濾過部分を含む。
【0068】
3匹のブタ対象は、濾過デバイスで移植された。
図8を参照。濾過デバイスは、3つ全ての対象において3日間連続して溶質をクリアすることに成功した。
図9を参照。
【0069】
参考文献:
[1]W.H.Fissell,S.Roy.“The Implantable Artificial Kidney,”Semin.Dial.2009;22(6):665-70.
[2]S.Kim,B.Feinberg,R.Kant,B.W.Chui,K.Goldman,J.Park,W.Moses,C.Blaha,Z.Iqbal,C.Chow,N.Wright,W.H.Fissell,A.Zydney,S.Roy.“Diffusive Silicon Nanopore Membranes for Hemodialysis Applications,”PLoS One.2016;11(7):e0l59526.
[3]S.Roy,A.Dubnisheva,A.Eldrige,A.J.Fleischman,K.G.Goldman,H.D.Humes,A.L.Zydney,W.H.Fissell,”Silicon Nanopore Membrane Technology for an Implantable Artificial Kidney.”Proceedings of Transducers 2009,Denver,CO,USA,2009.
【0070】
本発明の好ましい実施形態は、ある程度詳細に記載されているが、明らかな変形は、本明細書に画定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行うことができることが理解される。