(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】H2O2とNO2-との反応によりその場で形成された消毒剤を使用する消毒方法
(51)【国際特許分類】
A61L 2/18 20060101AFI20240111BHJP
A61L 101/10 20060101ALN20240111BHJP
【FI】
A61L2/18
A61L101:10
(21)【出願番号】P 2020564657
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 EP2019062897
(87)【国際公開番号】W WO2019219959
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/063226
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510038120
【氏名又は名称】ライプニッツ-インスティトゥート フュール プラズマフォルシュング ウント テヒノロギー エー.ファウ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュミット - ブリーカー、アンスガル
(72)【発明者】
【氏名】ビンター、イェルン
(72)【発明者】
【氏名】ベルトマン、クラウス - ディエター
(72)【発明者】
【氏名】ベント、ハンネス
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-171627(JP,A)
【文献】国際公開第2016/035342(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/027542(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも試薬H
2O
2及びNO
2
-を含み、少なくとも以下を含むいくつかのサブステップからなる消毒方法:
-前記試薬を混合して
、pHが2.1~4.5の範囲である活性溶液を得る混合ステップ;
-前記
pHが2.1~4.5の範囲である活性溶液が消毒される表面上に分配される分配ステップ、
前記混合ステップ及び前記分配ステップは、前記試薬が最初に互いに接触する時間t
0で始まり、前記消毒される表面上の各点が活性溶液で濡らされる時間t
1で終了する処理期間Z
Aで行われ、t
0は0に等しく、t
1はt
0より大きい;
及び
-続いて、時間t
1で始まり、期間Z
eの後の時間t
2に終了する曝露期間Z
eにわたって、前記分配された活性溶液が、該活性溶液と接触した前記表面上に作用する曝露ステップ;t
2は、活性溶液と接触した前記表面上の各点が、消毒効果を得るのに十分な時間にわたり活性溶液で濡らされる時間を表し、t
2はt
1よりも大きい、
前記試薬NO
2
-及びH
2O
2の消費が、1:1の比でなされてONOOHが生成され、前記混合ステップの時間t
0での最大NO
2
-濃度[NO
2
-]
0は300mMであり、前記処理期間及び前記曝露期間中の前記試薬[H
2O
2]及び[NO
2
-]の時間依存性濃度は、
【数1】
で与えられ、式中、
【数2】
D=[H
2O
2]
0・(k
1+rk
1)-[NO
2
-]
0・k
1、
【数3】
[H
3O
+]=10
-pH、EA=70kJ/mol
になるように、及び[H
2O
2]
0は前記混合ステップの時間t
0での初期H
2O
2濃度であり、
r=0.11になるように、設定され、
前記曝露期間Z
eにわたる時間積分反応速度Wは下記不等式を満たし、
【数4】
式中、t
2は3分を超えず、
式中、k1はH
2O
2とNO
2
-との間の反応のpH依存性速度定数であり、
式中、活性溶液の、前記表面におけるpHの値及び温度は、時間依存性を有してもよく、
式中、前記消毒される表面と接触する前の前記活性溶液のpHは
2.1~4.5の範囲であり、及び該活性溶液により接触された前記表面上の活性溶液のpHの値は、2.1≦pH<6.8の範囲にある。
【請求項2】
時間t
1で終了する処理期間が、0<t
1≦75秒の範囲から選択され、特に0<t
1≦30秒の範囲から選択され、特に0<t
1≦15秒の範囲から選択され、特に0<t
1≦2秒の範囲から選択される、請求項1に記載の消毒方法。
【請求項3】
時間t
1で始まり、時間t
2で終了する曝露期間が、最大90秒、特に最大50秒、特に最大30秒、特に最大15秒である、請求項1又は2に記載の消毒方法。
【請求項4】
活性溶液と接触する表面上の活性溶液のpHが、2.1≦pH<6.8の範囲、特に2.5≦pH≦5の範囲、特に3.3≦pH≦4.7の範囲にある、請求項1~3のいずれかに記載の消毒方法。
【請求項5】
消毒される表面と接触する前の活性溶液のpHが、2.1~3.6の範囲、特に2.1~3.2の範囲にある、請求項1~3に記載の消毒方法。
【請求項6】
時間t
0におけるNO
2
-の最大初期濃度が、200mM、特に100mMの濃度を超えない、請求項1~5のいずれかに記載の消毒方法。
【請求項7】
効率E=W/W
maxが少なくとも10%、特に少なくとも20%、特に少なくとも30%であり、
W
max=min([H
2O
2]
0、[NO
2
-]
0)(exp(-Gt
1)-exp(-Gt
2))
であり、
【数5】
が、所与の時間t
2及びt
1で達成可能な最大有効性パラメータを示し、min([H
2O
2]
0、[NO
2
-]
0)が、初期濃度[H
2O
2]
0及び[NO
2
-]
0から選択された最小濃度を示す、請求項1~6に記載の消毒方法。
【請求項8】
各試薬の出発物質量が互いに10%未満しか異ならない、特にNO
2
-の出発物質量がH
2O
2の出発物質量より2%~10%高い、請求項1~7に記載の消毒方法。
【請求項9】
各試薬の出発物質量が同一である、請求項1~7のいずれかに記載の消毒方法。
【請求項10】
酸緩衝液及び酸緩衝溶液の形態の添加剤が、それぞれ、試薬及び/又は活性溶液に添加される、請求項1~9のいずれかに記載の消毒方法。
【請求項11】
混合ステップの前に、1つ以上のプラズマ源を使用して、試薬のうちの1つ以上を生成することができる、請求項1~10のいずれかに記載の消毒方法。
【請求項12】
請求項1~11に記載の消毒方法が数回適用される、請求項1~10のいずれかに記載の消毒方法。
【請求項13】
皮膚の消毒及び/又は創傷の消毒のための、請求項1~12のいずれかに記載の消毒方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面を消毒するための、特に身体の一部、特に手を消毒するための、及び/又は特に創傷を消毒するための方法及びデバイスに関する。
【0002】
酸の添加による過酸化水素(H
2O
2)と亜硝酸塩(NO
2
-)との反応生成物の殺生物効果は、すでに文献で知られている。また、ペルオキシ
亜硝酸(ONOOH)及びその酸残留イオンペルオキシナイトライト(ONOO
-)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO
2)、ヒドロキシルラジカル(OH)、及びヒドロペルオキシルラジカル(HO
2)を含む種々の反応種が、この反応(
図1)によって形成されることが文献で知られている。特にペルオキシ
亜硝酸は、強力な殺生物剤であると文献で想定されているが、寿命がわずか0.8秒と非常に短く、これは、十分な数の病原体を死滅するには、最小限の作用期間を観察する必要があるため、消毒剤としてのその使用には問題がある。
H
2O
2+NO
2
-→反応生成物(1)
【0003】
反応(1)の反応速度は、溶液のpHに依存し、様々な研究で調査されてきた(Anbar&Taube,1954;Damschen&Martin,1983;E.Halfpenny,1952;Lee&Lind,1986;Lukesら,2015;Vioneら,2003)。反応(1)の中間段階は、詳細には知られていない。(Vioneら,2003)では、反応
H2O2+H3O+⇔H3O2
++H2O(2)
NO2
-+H3O+⇔HNO2+H2O(3)
H3O2
++HNO2→ONOOH+H3O+(4)
は、ONOOHの可能な形成経路として、反応(1)の中間段階として提案されている。
【0004】
図1は、本発明の過程で作成された化学モデルによれば、H
2O
2とNO
2
-との混合の結果として反応種の形成につながる化学プロセスの選択を示している。
【0005】
しかし同時に、水に溶解した窒素酸化物(NOx)もH2O2とNO2
-との反応によって生成される。NOxは、悪臭のある危険なガスである。NOxは、液体にあまり溶解しないため、液体からガスを放出する可能性があることも知られている。このガス放出は、表面積の大きい液膜に特に関係がある。懸濁液実験での小さな液体表面とは対照的に、ガス放出は、実際の表面を消毒するときに考慮すべき要素であるため、反応(1)を消毒に使用することがより困難になる。
【0006】
NO2
-とH2O2との混合物は、抗菌活性があり、数時間(Jiang&Yuan,2013)又は15分を超えて(Heaselgrave,Andrew,&Kilvington,2010)曝露すると懸濁液中の微生物を大幅に減少させるがことできる。ONOOHは、除染効果の重要な成分であると想定される。NO、NO2、OH、及びHO2などの他の抗菌活性種は、H2O2とNO2
-との反応によって形成される。NO2
-と酸との混合も殺胞子効果をもたらすことも知られている(SZAbo,Adcock,&Rice,2014)。これらの研究から、NO2
-又はH2O2とNO2
-との混合物による除染のための懸濁液の酸性化は、消毒効果に有益な効果があることが知られている。
【0007】
Heaselgrave,Andrew,&Kilvington,2010の研究は、コンタクトレンズを消毒するためのH2O2とNO2
-との組み合わせを提案している。この論文では、著者らは、pH5で171mmolのH2O2及び29mmolのNO2
-を含有する消毒溶液を使用している。消毒効果を得るために著者が述べている最短の曝露時間は、18分である。表面消毒、特に衛生的な手の消毒の場合、この曝露時間は、十分ではない。NO2
-及びH2O2の濃度を上げることで、より有効な手順を簡単に達成することができる。しかしながら、本発明は、NO2
-の限定された使用で、同様に非常に限定された時間でエンベロープを持たないウイルス及び細菌胞子の死滅を可能にし、長期的な毒性が与えられない方法を対象とする。
【0008】
この文脈において、方法は、所与の条件下で可能な限り最高の効率を示す資源の使用に関して最適であり、効率は、それぞれの効力及び理論的に達成可能な最大の有効性の商として理解されるべきである。
【0009】
Lukesら2015は、消毒のための過酸化水素及び亜硝酸塩の使用についても説明している。200μMのH2O2及び90μMのNO2
-を用いたpH3.3での実験セットアップについて説明している。ここで、同様に必要な曝露時間は、数時間である。
【0010】
同じことが国際公開第2011/134010号にも当てはまり、1時間~数日の期間にわたる廃水中の酸性化NO2
-の使用について説明している。
【0011】
Ikawaら,2016には、水をプラズマで処理した後、細菌懸濁液を添加する消毒方法が説明されている。消毒効果は、プラズマによって作成された反応種によるものである。研究によると、主にペルオキシ硝酸がここで形成される。Kitanoらの消毒方法は、米国特許第20170172149号において表面についても説明されている。また、過酸化物と亜硝酸塩との混合物の消毒効果に基づいている。しかしながら、ペルオキシ硝酸は、消毒種として形成され、2未満のpH値(pH=0)で生成される。特に酸性範囲(pH=0)は、消毒種の形成にとって非常に重要であるため、pHに敏感な表面を消毒できるようにするために、時には後でpH値を再度上げる(pH=4.8まで)必要がある。消毒剤種であるペルオキシ硝酸の半減期は、室温で約10分と記載されており、他の文書(Lammelら,1990)では、室温で約3分と記載されている。一方、本発明の消毒剤種は、室温ではるかに短い時間(約1秒の半減期)で分解するので、これらが同じ活性物質であることを排除することができる。
【0012】
上記のすべての研究は、より長い曝露時間、特に15分より長い曝露時間を使用する懸濁液中の微生物の減少に言及している。しかしながら、本発明者らの知る限り、H2O2とNO2
-との混合による消毒効果が数分又は数秒以内にすでに発生し、消毒が懸濁液ではなく表面で行われる知られたプロセスはない。
【0013】
したがって、以下に説明する方法は、非常に短時間でのNO2
-とH2O2との混合物による表面の除染を目的とし、活性溶液が、NO2
-とH2O2とを混合することによって形成され、分配ステップで表面上に適用及び/もしくは分配されるか、又は拡散によってそこに広がる。
【0014】
発明の目的
したがって、出発物質H2O2及びNO2
-に基づいて、分配ステップを介して消毒される表面上に適用及び/又は分配され、かつその総処理期間が、H2O2とNO2
-との混合に基づくこれまでに知られているプロセスよりも著しく短い表面消毒のための方法を提供するという問題がある。同時に、この方法は、緩衝効果のある表面を許容し、NOx排出量を健康に有害であると想定される濃度よりもはるかに低く保ち、かつ使用されるNO2
-の一部がNOxとして放射される場合でも依然として確実に機能する必要がある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、表面を消毒するために使用することができる、H2O2とNO2との反応によって活性溶液が生成される消毒方法を提供することである。
【0016】
本発明のさらなる目的は、その場で生成された活性溶液を用いた消毒方法で使用するために必要な試薬を貯蔵し、接触させ、消毒される表面に適用することができるデバイスの提供である。
【0017】
本発明の目的は、独立方法請求項1の主題及び独立デバイス請求項13によって解決される。この方法の有利な実施形態は、副請求項に示されている。これら及びさらなる実施形態を以下に説明する。
【0018】
定義
本発明によれば、活性溶液は、消毒される表面に適用される消毒溶液を含む。ここで、表面とは、平坦な表面又は凹凸及び/もしくは空洞を有する表面を意味する。活性溶液は、その場で形成された消毒剤に加えて添加剤を含有し得る。そのような添加剤には、溶媒、緩衝溶液、塩基、香料、着色剤及び/又は他の消毒剤及び/又はオゾン、ならびに他の反応生成物及びH2O2とNO2
-との間の反応の反応性中間体が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明によれば、希釈ステップは、溶媒及び/又は添加剤による抽出物の希釈を含む。希釈ステップは、混合ステップの前に行われるか、又は混合ステップと同時に行われる。
【0020】
本発明によれば、混合ステップは、活性溶液を得るための抽出物の混合を含む。混合ステップ中に、添加剤を抽出物とさらに混合することもできる。混合ステップは、いくつかのサブステップで構成することができる。混合ステップは、時間t0=0で開始される。
【0021】
本発明によれば、分配ステップは、消毒される表面上の活性溶液の分配を含む。消毒される表面上の各点は、活性溶液で濡らされる。分配ステップは、時間t0の混合ステップと同時に開始することも、又はそれに続くこともできる。
【0022】
本発明によれば、処理期間ZAは、混合及び分配ステップ、つまり、活性溶液を得るために抽出物を混合し、かつ活性溶液で消毒される表面上の各点を濡らすのに必要な時間を含む。処理期間は、抽出物が最初に互いに接触する時間t0=0で始まり、消毒される表面上の各点が活性溶液で濡らされる時間t1で終了する。特に表面との最初の接触の前に混合が起こり、表面がpH及び/又は温度に影響を与える場合、pH及び温度は、処理期間中に変化する可能性がある。このため、pH値及び温度は、プロセス中、時間依存する。
【0023】
本発明の範囲内で、希釈ステップなどの消毒方法に関連するステップは、処理期間の前、つまり、時間t0=0の前に行うこともできる。
【0024】
本発明によれば、曝露ステップは、消毒のために活性溶液で濡らされた表面上での活性溶液の作用を含む。曝露ステップは、曝露期間ZEによって説明される。
【0025】
本発明によれば、曝露期間ZEは、活性溶液による十分な消毒効果を達成するために必要な期間を含む。曝露期間は、消毒される表面上の各点が活性溶液で濡らされる時間t1で始まり、活性溶液で濡らされた表面上の各点が消毒される時間t2で終了する。
【0026】
本発明によれば、NO2
-は、一般式MxNO2を有する亜硝酸塩であり、式中、Mは、アルカリ又はアルカリ土類金属であり、x=1又はx=2である。特に、Mは、ナトリウム又はカリウムであり、x=1である。亜硝酸塩は、溶液中の塩又は固体として存在し得る。ここで、溶液中のNO2
-は、pH値に応じて、陰イオンNO2
-又は酸性HNO2として存在する。
【0027】
本発明によれば、H2O2とNO2
-との反応の反応生成物である活性剤は、その場で形成される。その場とは、必要な場合にのみ活性剤が発生させることを意味する。
【発明の概要】
【0028】
少なくとも抽出物H
2O
2及びNO
2
-を含み、少なくとも
-抽出物を混合して活性溶液を得る混合ステップ;
-活性溶液が消毒される表面上に分配される分配ステップであって、
混合ステップ及び分配ステップが、抽出物が最初に互いに接触する時間t
0で始まり、消毒される表面上の各点が活性溶液で濡らされる時間t
1で終了する処理期間Z
Aで行われ、t
0が0に等しく、t
1がt
0より大きい、分配ステップ;
及び
-続いて、分配された活性溶液が、時間t
1で始まり、時間t
2で期間Z
Eの後に終了する曝露期間Z
Eにわたって活性溶液と接触した表面上に作用する曝露ステップであって、t
2が、活性溶液と接触した表面上の各点が、消毒効果を得るのに十分な時間、活性溶液で濡らされる時間を表し、t
2がt
1よりも大きい、曝露ステップ
を含むいくつかのサブステップからなる本発明の消毒方法において、
混合ステップの時間t
0での最大NO
2
-濃度が、300mMであり、
曝露時間Z
Eにわたる時間積分反応速度Wが、以下の積分
【数1】
で表され、
式中、t
1及びt
2が上記で定義されたとおりであり、
式中、t
2が3分を超えず、
式中、[H
2O
2]及び[NO
2
-]が、曝露期間Z
E中の抽出物の濃度を示し、
式中、k
1がH
2O
2とNO
2
-又はHNO
2との間の反応のpH依存性速度定数であり、
式中、pH及び温度が、時間依存性を有してもよく、
式中、消毒される表面と接触する前の活性溶液のpHが、2.1≦pH<6.8の範囲にあることを特徴とする。
pH依存性速度定数k
1は、以下のように計算することができ、
【数2】
であり、
【数3】
であり、無次元量
[H
3O
+]=10
-ph(10)
であり、有効活性化エネルギーE
A=70kJ/mol及び温度T。k
4は、20℃で120M
-1s
-1である。
【0029】
曝露期間中の抽出物NO
2
-及びH
2O
2の時間依存性濃度は、以下の式を使用して計算することができ:
【数4】
であり、
【数5】
であり、
D=[H
2O
2]
0・(k
1+rk
1)-[NO
2
-]
0・k
1、(15)
であり、k
1、k
4、
【数6】
及び[H
3O
+]は、上記のとおりである。
【0030】
[H2O2]0及び[NO2
-]0は、混合ステップ時の活性溶液中のH2O2及びNO2
-の初期開始濃度である。これらは、抽出物濃度及び混合又は希釈のタイプによって与えられる。例えば、抽出溶液1に200mMのH2O2及び抽出溶液2に200mMのNO2
-の抽出物濃度があり、混合比が1:1の場合、[H2O2]0=[NO2
-]0=100mMの初期濃度が得られる。
【0031】
さらには、
r=0.11、(16)
であり、式中、rは、NO2
-からのNOxの形成を説明するガス放出係数であり、以下でより詳細に説明される。
【0032】
図23は、15秒、30秒、50秒、又は90秒から選択された曝露時間Z
Eと、2秒、15秒、30秒、及び75から選択された処理時間Z
Aとのすべての組み合わせについて、[H
2O
2]
0=[NO
2
-]
0の初期濃度が等しい場合の20℃の温度での不等式(5)によって定義される例示的な有効範囲を示している。この図は、専門家が室温でプロセスを設計するために使用することができる。
【0033】
出発物質(NO2
-及びH2O2)が時間の経過とともに変換されると、H2O2とNO2
-との間の反応の有効反応速度は、着実に低下する。反応生成物の半減期が短いため、これらは、蓄積されず、したがって、H2O2とNO2
-との瞬間反応速度が、曝露時間中の所与の時間における活性溶液の有効性にとって決定的である。消毒剤として活性溶液を使用するためには、定義された最小作用期間の間、有効性が与えられる必要がある。したがって、時間積分反応速度Wは、最小値を下回ってはならない。ヒューリスティック式(5)により、H2O2及びNO2
-の適用可能な濃度、ならびに特定のプロセス温度での除染用途に対応するpH値が選択可能になる。
【0034】
栄養細菌とは対照的に、細菌胞子及びエンベロープを持たないウイルスは、アルコールベースの薬剤で、又は不十分な期間後にのみ不活化することはできない。反応速度W≧10mMでは、栄養細菌だけでなく細菌胞子も不活化される。
【0035】
一実施形態では、H2O2とNO2
-との間の反応の時間積分反応速度Wは、17以上である。
【0036】
反応速度W≧17mMでは、栄養細菌及び細菌胞子に加えて、エンベロープを持たないウイルスも不活化される。
【0037】
栄養細菌のみを対象とする実施形態では、W=0.3、特に0.5である。
【0038】
より高い時間積分反応速度Wは、活性溶液と接触した表面への消毒効果を高める。
【0039】
さらに、処理期間及び曝露期間の期間は、消毒方法の有効性に重要な役割を果たす。
【0040】
処理期間ZAは、混合ステップ及び分配ステップを含み、分配ステップは、時間t0=0で混合ステップと同時に始めることができ、又は混合ステップに続くことができる。処理期間は、t0=0で始まる。
【0041】
さらに、関連するステップは、処理期間の前、つまり、時間t0=0、例えば、希釈ステップの前に実行することもできる。しかしながら、これらのステップは、時間積分反応速度の計算に使用される時間間隔には関係がないため、t0=0より前になり得る。
【0042】
本発明の主題は、時間t1で終了する処理期間が、0<t1≦75秒の範囲から選択され、特に0<t1≦30秒の範囲から選択され、特に0<t1≦15秒の範囲から選択され、特に0<t1≦2秒の範囲から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、曝露時間は、2秒後に開始される。
【0044】
いくつかの実施形態では、曝露時間は、15秒後に開始される。
【0045】
いくつかの実施形態では、曝露時間は、30秒後に開始される。
【0046】
いくつかの実施形態では、曝露時間は、75秒後に開始される。
【0047】
いくつかの実施形態では、時間t1で終了するより長い処理期間が必要であり、期間は、15<t1≦75秒の範囲から選択され、特に30<t1≦75秒の範囲から選択され、特に、50<t1≦75秒の範囲から選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、時間t1で終了するより短い処理期間が必要であり、期間は、0<t1≦30秒の範囲から選択され、特に、0<t1≦15秒の範囲から選択され、特に、0<t1≦2秒の範囲から選択される。
【0049】
いくつかの実施形態では、時間t1で終了する処理期間が必要であり、期間は、2<t1≦75秒の範囲から選択され、特に2<t1≦30秒の範囲から選択され、特に、2<t1≦15秒の範囲から選択される。
【0050】
処理期間は、活性溶液で消毒される表面上のあらゆる点を濡らすのに十分な長さである必要がある。しかしながら、同時に、処理期間は、消毒される表面上に活性溶液が分配された後でも、消毒効果を達成するのに十分な反応性活性溶液が存在するように、とても短く選択する必要がある。
【0051】
時間t1で始まり、時間t2で終了する曝露期間は、最大90秒である。特に表面消毒の場合、可能な限り最短の時間で消毒方法を実施することができるようにするためには、短い曝露期間が有利である。
【0052】
さらなる実施形態では、時間t1で始まり、時間t2で終了する曝露期間は、最大50秒、特に最大30秒、特に最大15秒である。この実施形態は、手の消毒などの皮膚消毒に特に好適である。
【0053】
曝露期間は、消毒効果を達成するために十分に長い必要がある。
【0054】
さらに、時間範囲(ZA及びZEの合計)は、必要な消毒効果をさらに適切な範囲で達成するために、特に手の消毒の用途では、十分に短く選ばなければならない。10分を超えるなどの長すぎる期間は、臨床部門であっても、手の消毒には実用的でも合理的にも適用できない。
【0055】
活性溶液を生成するための抽出物H2O2とNO2
-との混合は、消毒される表面と接触する前に、又は消毒される表面上で直接行うことができる。混合ステップは、拡散及び対流による外部の影響を受けずに実行するか、機械的分配によってサポートするか、又は抽出物が消毒される表面上に一緒に噴霧される噴霧プロセスに統合することができる。
【0056】
さらに、pH値は、本発明による消毒方法において決定的な役割を果たす。
【0057】
活性溶液と接触する表面上の活性溶液のpHは、2.1≦pH≦6.8の範囲、特に2.5≦pH≦5の範囲、特に3.3≦pH≦4.7の範囲にある。
【0058】
H2O2とNO2
-との間の反応速度は、(6)に従って溶液のpH値に依存する。pHが低下すると、つまり、H3O+の濃度が上昇すると、反応速度k1が増加する。したがって、低いpH値では、活性溶液の消毒効果は高くなるが、低いpH値では、形成された反応生成物の短い寿命と組み合わせたH2O2とNO2
-との高い反応速度により、処理及び曝露期間を十分に長くすることはできない。より高いpH値では、H2O2とNO2
-との反応速度は、大幅に低下するが、活性溶液の消毒効果も低下する。
【0059】
懸濁液中の除染とは対照的に、酸性化は、表面の除染時に効果の大幅な低下につながる可能性があることが分かった。これは、表面上の液体を分配ステップで表面上に適用及び/又は分配する必要があり、構造化された多孔質の表面の場合、拡散によって表面に浸透する必要があるためである。この間、活性溶液は、その消毒効果を損失してはならないが、低すぎるpHによって達成される。この場合、抽出物は、表面上の任意の点でその抗菌効果を発揮できる前に、あまりに急速に分解する。この問題は、表面消毒剤としての使用が可能なpH範囲を特定することにより、少なくともNO2
-及びH2O2の活性溶液についての本発明によって解決される。
【0060】
皮膚表面などの多くの表面は、それ自体がpH調節特性、特に緩衝効果を有する。したがって、本発明の方法にとって決定的なpHは、活性溶液で濡らされた表面に生じるpHである。そのような緩衝面及びそれらの緩衝効果は、専門家に知られている。この消毒方法における皮膚の緩衝効果のさらなる詳細を
図4に示す。
【0061】
本発明の一実施形態では、消毒方法は、pHを強力に緩衝する表面、特に皮膚、創傷、又は他の有機表面を消毒するために適用されることを意図し、表面上の好適なpHは、消毒される表面と接触する前の活性溶液のpH値が、2.1~4.5の範囲、特に2.1~3.6の範囲、特に2.1~3.2の範囲であるという事実から生じる。
【0062】
このpHは、表面特性に応じて緩衝表面との接触により、0.2~1.7、特に0.2~0.8上昇する。
【0063】
これは、活性溶液のpHが、消毒される表面上の活性溶液のpHよりも低いことを意味する。この特性により、抽出物は、消毒される表面の外側で急速に反応して、環境に蓄積されない。しかしながら、消毒される表面上、特に身体、特に手の表面上では、表面の緩衝効果により、H2O2とNO2
-との反応がやや遅くなり、消毒効果が発揮される。したがって、消毒効果は、意図された表面上で十分に長い間有効であり続け、使用が意図されていない表面上では、抽出物は、急速に分解され、したがって蓄積しない。
【0064】
一実施形態では、特にNOxのガス放出が無視できる場合の用途では、抽出物の初期量は、同一であり、したがって、NO2
-及びH2O2は、完全に変換される。これは、殺生物剤が環境に放出されないことを意味する。
【0065】
一実施形態では、プロセスによって事前に決定される、時間t
1及びt
2での方法の効率E=W/W
maxは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、特に少なくとも30%であり、式中、
W
max=min([H
2O
2]
0、[NO
2
-]
0)(exp(-Gt
1)-(exp(-Gt
2))(17)
であり、
【数7】
は、t
1の達成可能な最大有効性パラメータを示し、min([H
2O
2]
0、[NO
2
-]
0)は、初期濃度[H
2O
2]
0及び[NO
2
-]
0から選択された最小濃度を示す。これにより、選択可能なプロセスパラメータのpH、温度、及び抽出物の初期濃度を合理的に選択することによって、確実に、使用される抽出物が効率的に使用される。異なる効率のプロセスパラメータは、t
1=15秒及びt
2=45秒を伴うプロセスについて
図23に例示的に示されている。初期濃度[H
2O
2]
0及び[NO
2
-]
0、ならびにpHを変えた。
【0066】
一実施形態では、抽出物の初期量は、互いに10%未満だけ異なり、特にNO2
-の初期量は、H2O2の初期量より2%~10%だけ高い。正確な値は、所与の用途、つまり、所与の表面及び液体の量に対して決定する必要がある。この場合、安定した最終生成物として硝酸塩及び水のみが形成され、NO2
-及びH2O2は、完全に変換される。これは、殺生物剤が環境に放出されないことを意味する。したがって、本発明による消毒方法は、特に環境に優しい。
【0067】
H2O2と比較してわずかに高い初期量のNO2
-は、NOxのガス放出による有効なNO2
-の損失を防ぐのに役立つ。
【0068】
表面積が大きいため、NOxのガス放出は、溶液又は懸濁液中での消毒よりも表面消毒で大幅に高くなる。活性溶液が表面にわたって分配されると、薄い液膜のみが形成され、使用されたNO2
-の大部分をガス状窒素酸化物(NOx)として放出することができる。これは、とりわけ、液体に導入されたNO2
-の最大10%がNO(g)又は特にNO2(g)の形態でガス放出されるという結果を有する。ガス放出は、同一に調製された懸濁液中の活性溶液と比較して、表面上のH2O2及びNO2
-の活性溶液中のNO2
-の分解を加速させる。ガス放出は、反応速度に影響を与えるため、健康上の理由から低く保たなければならない。
【0069】
NO
xの放出は、2つの基本的なプロセスによるものである:一方は、酸を使用してpHを調整すると、
図1に示すプロセスのように、NO
xのガス放出が直接生じる可能性がある。
HNO
2+HNO
2→NO+NO
2+H
2O→NO(g)+NO
2(g)+H
2O。(18)
【0070】
プロセス(18)にはH2O2の存在は、必要ない。一方、H2O2の存在を必要とするONOOHの形成は、反応(19)
ONOOH→NO2+OH(19)
によって、後続のNO2のガス放出によるNOx排出量に寄与することができる。
【0071】
NO
xのガス放出を、実験及びコンピューターシミュレーションによって調査した。本発明の一実施形態では、ガス放出は、以下の式によってガス放出速度として表され、
R
degas=R
1×r(20)
これは、反応(1)によるNO
2
-及びH
2O
2の有効破壊率R
1に比例すると想定でき、式に従ってNO
2
-の破壊に寄与する。
【数8】
【0072】
ここで、rは、R1に関連する割合を示し、これはNOxの形態におけるNO2
-のガス放出につながる。この形態は、反応
ONOOH→NO2+OH(22)
が表面除染中のガス放出に本質的に寄与する事実に起因する。懸濁液実験におけるrは、通常無視できるほど小さいが、例えば、r≦0.01の範囲において、表面の除染中は、rがr≦0.01の範囲の値を有することができる。具体的な値は、それぞれの用途、特に液膜の厚さに依存する。したがって、発生するガス放出は、表面消毒の場合のH2O2とNO2
-との反応の反応速度に影響を与え、これは、懸濁液中の消毒の場合は無視できる。
【0073】
NOxをガス放出する量を制限する1つの可能性は、NO2
-の初期濃度を制限することである。
【0074】
本発明による消毒方法では、時間t0でのNO2
-の最大初期濃度は、300mM、特に200mM、特に100mMの濃度を超えてはならない。
【0075】
これにより、ガス放出されたNOxの量が可能な限り低く抑えられるため、消毒方法の有害な副作用が最小限に抑えられる。
【0076】
本発明による消毒方法は、表面を消毒するために使用することができる。本発明による消毒方法は、特に皮膚の消毒及び/又は創傷の消毒に使用することができる。
【0077】
本発明の消毒方法は、医療デバイス、特に内視鏡の管などの熱に不安定な医療デバイス、ならびに容器及び浴槽の除染のためにさらに使用することができる。
【0078】
本発明の消毒方法は、種子、作物、動物製品、食品、包装、ならびに飲料容器又は飲料ラインの除染にさらに使用することができる。
【0079】
本発明による消毒方法の一実施形態では、酸緩衝液又は酸緩衝溶液を、抽出物及び/又は活性溶液に添加することができる。例えば、クエン酸緩衝液、酢酸酢酸緩衝液、リン酸クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、又はクエン酸緩衝液を緩衝液として使用することができる。クエン酸塩を含有する緩衝溶液は、その心地よい匂いのために特に好適である。
【0080】
本発明による消毒方法の一実施形態では、添加剤は、混合ステップの前及び/又はその間に、抽出物に添加することができる。考えられる添加剤には、とりわけ、溶媒、塩基、香料、染料及び/もしくは他の消毒剤、ならびに/又はオゾンが含まれる。
【0081】
さらに、特に脂肪及び界面活性剤を添加することにより、非水溶性物質を含む懸濁液を生成することができる。
【0082】
別の実施形態では、1つ以上のプラズマ源を使用して、1つ以上の抽出物を生成することができる。
【0083】
したがって、電気によって空気及び水からH2O2及びNO2
-の抽出物を生成することが可能である。最先端技術では、専門家が適切なプラズマを選択できるように、プラズマプロセスが十分に開示されている(Lukesら,2015,欧州特許第17150571.2号も参照)。
【0084】
本発明のさらなる実施形態では、プラズマは、さらにオゾンを生成し、これは活性溶液の一部となり得る。
【0085】
本発明の主題である表面を消毒するための方法は、それが殺胞子効果を有することを特徴とする。ドイツには、細菌胞子に対する消毒効果も有する、皮膚を消毒するための承認された消毒剤は存在しない。さらに、本発明による方法は、低臭気であり、皮膚を乾燥させないので、皮膚を消毒するための一般的な消毒方法、例えば、アルコールよりも有利である。
【0086】
本発明のさらなる主題は、(その場で形成された)消毒溶液を提供する、かつ/又は(その場で形成された)消毒溶液を消毒方法に適用するためのデバイスであり、
-少なくとも1つの抽出物が保持される少なくとも1つのリザーバを備える貯蔵領域、
-抽出物を混合し、活性溶液を提供するためのデバイス、
-消毒される表面上への活性溶液の分配デバイス、
又は
-少なくとも1つの抽出物が保持される少なくとも1つのリザーバを備える貯蔵領域、
-消毒される表面上に抽出物を分配するためのデバイスであって、分配デバイスが、活性溶液の抽出物が消毒される表面上又はその前で混合されるように設計されている、デバイス
からなる。
【0087】
貯蔵領域及び混合デバイスならびに分配デバイスは、抽出物が、貯蔵領域から混合デバイスに、かつそこから活性溶液として分配デバイスを介して消毒される表面上に活性化された後、閉鎖可能な開口部を通過することができるように、互いに流体的に接続されている。あるいは、抽出物の混合は、互いに向けられた2つのノズルによって、デバイスの外側で行うこともできる。
【0088】
抽出物(少なくともH2O2、NO2
-、及び酸)は、異なる方法で貯蔵及び混合することができる。本発明の一実施形態では、H2O2、NO2
-、及び酸は、それぞれ別々に、つまり、3つの別々のリザーバに貯蔵される。
【0089】
本発明のさらなる実施形態では、H
2O
2及び酸は、1つのリザーバに一緒に貯蔵され、NO
2
-は、第2の別々のリザーバに貯蔵される。この実施形態では、抽出物を貯蔵するために2つのリザーバのみが必要とされる(
図2)。
【0090】
本発明のさらなる実施形態では、NO2
-は、酸、特に硝酸と一緒に1つのリザーバに貯蔵され、H2O2は、第2のリザーバに貯蔵される。NO2
-を硝酸で酸性化すると、液体の上にNOxガスが生成し、それぞれのリザーバで数バールの圧力が生じる。この圧力は、本発明のさらなる実施形態では、デバイスの駆動デバイスとして使用することができる。
【0091】
本発明のさらなる実施形態では、H2O2及びNO2
-の両方が酸性化されたままである。この実施形態では、圧力を高めるための酸性化、及びH2O2とNO2
-との反応(1)に必要な酸性化は、互いに独立して実行することができる。異なる形態で抽出物を添加することが可能である。
【0092】
本発明の一実施形態では、抽出物は、生成物の有効性に必要な濃度で添加することができる。
【0093】
本発明のさらなる実施形態では、デバイスは、抽出物が溶媒及び/又は添加剤で希釈される希釈領域を含み得る。この実施形態では、抽出物は、濃縮物として添加することができ、これは次にプロセスで希釈される。上記のように、水は、説明されたプロセスのための溶媒として使用することができる。
【0094】
考えられる添加剤には、とりわけ、塩基、緩衝溶液、香料、着色剤、及び/又はオゾンが含まれる。この実施形態では、濃縮物を添加し、次にそれを希釈することにより、1部の濃縮物から3~200部の活性溶液を得ることができる。
【0095】
本発明のさらなる実施形態では、抽出物は、塩として添加することができ、これは、プロセスにおいて溶液にされる。H2O2は、特に塩として、特に過炭酸ナトリウムとして、又は溶液として添加され、NO2
-は、特に塩として、特にナトリウムもしくはカリウム塩として、又は溶液として添加される。抽出物は、異なる形態で提供することができる。
【0096】
より高い濃度、特に0.5%(v/v)以上の濃度で、H2O2を添加することも可能であり、その結果、H2O2自体は、殺菌性及び/又は殺ウイルス性を有するが、殺胞子効果はない。次に、本発明に従って実行される方法の殺胞子効果は、不等式(5)によってさらに説明される。それぞれのデバイスにおいて、添加剤と混合された、又は純粋な形態の抽出物を提供することが可能である。
【0097】
活性化されると、抽出物及び/又は添加剤がリザーバから放出される。抽出物及び/又は添加剤を混合することにより、活性溶液が形成される。
【0098】
さらに、リザーバは、液体を排水及び廃棄することができる出口バルブを有することができる。
【0099】
本発明のさらなる実施形態では、リザーバは、抽出物の最小レベルが下回った場合にデバイスのアクティブ化を防ぐスイッチオフデバイスと組み合わせて、レベルセンサー、特に機械的レベルセンサー又は電気的、特に容量性、誘導性レベルセンサー、光学レベルセンサー又は超音波レベルセンサーが装備される。
【0100】
加えて、交換可能なリザーバには、内容物の一意の識別を可能にし、誤った充填の場合にデバイスのアクティブ化を防ぐデバイスを装備することができる。
【0101】
本発明のさらなる実施形態では、貯蔵領域での、及び/又は貯蔵領域と分配デバイスとの間のプロセス制御は、1つ以上の気圧計及び/又は1つ以上の流量センサーによって、特に誤動作又は空の貯蔵リザーバのために必要な動作圧力又は動作フローが維持されない場合に、デバイスのアクティブ化を防ぐことができるシャットオフデバイスと組み合わせて行うことができる。
【0102】
本発明のさらなる実施形態では、デバイスは、抽出物又は添加剤の濃度を決定するためのセンサーを備える。センサーは、特に導電率、静電容量、又はpH電極であり得る。さらに、抽出物濃度及び/又はpH値を決定するための紫外線及び可視範囲での吸収分光法の使用は、プロセス制御に有利である。
【0103】
特に、デバイスは、それぞれの使用者に適切に分配される量の液体を投与するのに役立つセンサー又はカメラを備え、分配の制御は、特に消毒される表面のサイズを検出することによって実行することができる。さらに、カメラ及び/又はセンサーは、使用者又は使用法の制御に使用することができる。デバイスは、これらのデータをさらに評価するためのマイクロプロセッサ及び/又は外部データ処理のためのインターフェース、特に無線データインターフェースを備えることができる。さらなる実施形態では、デバイスは、確実に出発液の温度を一定にするため、かつ/又は液体を使用者に快適な温度に抑制するために、1つ以上の温度センサー及び/又は加熱又は冷却要素、特にペルチェ要素を備える。
【0104】
本発明のさらなる実施形態では、デバイスは、少なくとも1つの抽出物を発生する1つ以上のプラズマ源を備え、プラズマ源は、少なくとも1つのリザーバに統合されるか、又は少なくとも1つのリザーバの上流に配置されるか、又は抽出物を混合するためのデバイスの上流に配置されるか、又は抽出物を分配するためのデバイスに統合される。プラズマ源は、H2O2及び/又はNO2
-を生成するためだけではなく、それぞれの液体の十分な酸性化を達成するために使用することができる。特に、高温プラズマ源、特にアーク又はマイクロ波放電は、NO2
-を濃縮するためだけではなく、H2O2濃縮するために、低温プラズマ源、特に誘電体バリア放電、コロナ放電、又は高周波放電を使用することができる。
【0105】
さらに、リザーバは、特に家の接続から水を添加することができる水入口を有することができる。特に、デバイスは、標準的な給水栓又はウォーターディスペンサーの上流に配置することができる。
【0106】
本発明のさらなる実施形態では、抽出物は、混合領域において添加剤でさらに希釈及び/又は濃縮される。本発明の特定の実施形態では、添加剤による抽出物の希釈及び/又は濃縮は、混合領域に先行する希釈領域で行われる。
【0107】
本発明の別の実施形態では、混合領域は、液体が混合される混合チャンバー又は混合ラインであり得る。この場合、混合ラインは、マイクロ流体ミキサーとして設計することができる。
【0108】
本発明のさらなる実施形態では、デバイスは、別のリザーバ又は外部水接続、特に家庭用水ラインから供給される給水ラインを有する。バルブを開くか、又はポンプを動作させることにより、水を添加して活性溶液を所望の濃度に希釈する。ここで、混合領域の供給ラインは、濃縮されたNO2及びH2O2溶液が接触する前に水で希釈されるように設計されることが好ましい。
【0109】
本発明の特定の実施形態では、混合領域と出力領域とは、同一であるため、デバイスを離れるとき、かつ/又は消毒される表面上で、抽出物の混合が行われる。
【0110】
さらに、デバイスは、活性溶液/有効エアロゾルを分配するために使用される圧縮空気供給ラインを有し、圧縮空気は、内部ポンプもしくは圧縮機によって提供されるか、又は外部に提供される。
【0111】
さらに、デバイスは、電源、特に内部バッテリー、アキュムレーター、ソーラー、又は燃料電池を有する。
【0112】
本発明のさらなる実施形態では、デバイスは、液体を混合及び/又は分配するのに役立つアプリケータを装備する。アプリケータは、空気流によって分配されるエアロゾルを発生するエアロゾル発生器からなり得、エアロゾル発生器は、1つ以上の超音波ネブライザ又は1つ以上のジェットネブライザであり得る。
【0113】
本発明のさらなる実施形態では、アプリケータは、液体を運ぶ液体ポンプからなり得、これらは、特に、ハンドポンプ、ピストンポンプ、ダイヤフラムポンプ、蠕動ポンプ、又はベンチュリポンプであり得、アプリケータの出口は、ジェット又は噴霧として液体を排出するノズルとして設計され得る。特に、別の実施形態では、少なくとも2つの液体を単一のポンプで輸送し、ポンプの前後に混合ユニットで混合することができる。
【0114】
本発明の別の実施形態では、ポンプは、すべてのポンプが共通の駆動デバイスによって動作されるように設計されている。駆動デバイスは、蠕動ポンプもしくはピストンポンプの場合は一般的なシャフト、又は空気圧ポンプもしくはベンチュリポンプの場合は一般的な圧縮空気供給であり得る。
【0115】
本発明のさらなる実施形態では、デバイスは、水処理プラント、特に蒸留所、浸透フィルター、又はカーボンフィルターを備え得る。この水処理プラントは、特に家庭用水供給から水を浄化し、かつ定義された、特に低い緩衝能力を達成するために使用することができる。これは、それ以外の場合は、より強力なpH緩衝液を使用することによりプロセスのpH値を調整する必要があるため、プロセスにとって有利である。
【0116】
活性溶液は、エアロゾル、液体ジェット、又は蒸気として消毒される表面に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【
図1】H
2O
2とNO
2
-との間の反応の反応スキーム図である。
【
図2】リザーバ(1、2)からの抽出物を別のリザーバ(3)に貯蔵されている溶媒と混合して、活性溶液を得る消毒方法の概略図である。
【
図3】抽出物がリザーバ(1、2)から吐き出され、混合領域(10)で第3のリザーバ(3)に貯蔵されている溶媒と混合して活性溶液を得る消毒方法の概略図である。空気(18)の供給により、活性溶液は、混合領域から吐き出され、消毒される表面に適用される。
【
図4】3つの異なる活性溶液を用いたEN 1500に準拠した手の消毒前(左)及び手の消毒後(右)、ならびに活性溶液において手の消毒前(中央)の測定されたpH値を示す図である。活性溶液は、出発溶液A(50mMのH
2O
2及び示された量のクエン酸(%(w/v)))ならびに出発溶液B(50mMのNaNO
2)で構成されていた。
【
図5】3つの異なる活性溶液(唯一の活性成分としてイソプロパノール、2%のクエン酸及び10%のクエン酸を含む活性溶液による懸濁液中の大腸菌(E.coli)の不活化を示す図である。xの場合、%単位の消毒剤の割合がプロットされ、yの場合、コロニー形成単位がプロットされる。
【
図6】大腸菌(E.coli)に対する時間積分反応速度Wに対する有効性の依存性を示す図である。xの場合、時間t
0=0でのmmol単位のNO
2
-及びH
2O
2の濃度がプロットされ、yの場合、秒単位の反応時間がプロットされる。W>0.5mMの場合、すべての実験で少なくとも3.2log
10ステップの減少が達成される。W<0.5mMの場合、すべての実験で3.2log
10ステップ未満の減少が達成される。
【
図7】mM単位の一定の有効性パラメータW(xの場合pH値がプロットされ、yの場合同じ初期濃度でのmM単位のH
2O
2又はNO
2
-の初期濃度がプロットされ、t
0=0の値)と、異なるサイズの点で表される、懸濁液中の大腸菌(E.coli)の実験的に決定されたlog10-減少値との有効性曲線を示す図である。
【
図8】NO
xガス放出を考慮した表面消毒(t
1=30秒、t
2=45秒)の有効性曲線を示す図である。矢印は、手の消毒実験の開始及び終了のpH値を示している。H
2O
2及びNO
2
-の初期濃度は、同じになるように選択される(示すように)。x軸:pH値、y軸:時間t
0=0でのH
2O
2又はNO
2
-の初期濃度。A:10%のクエン酸、B:2%のクエン酸、C:0.5%のクエン酸。
【
図9】懸濁液中及び表面上の液体化学に対する異なるガス放出の影響を示す図である。空気供給(18)を用いた実験セットアップ(左)、ならびにpH3及びpH4(右)でそれぞれ150mMのNO
2
-及び150mMのH
2O
2を含む活性溶液で測定された濃度曲線。xの場合、秒単位の時間及びyの場合、1秒あたりに検出されたNO
x分子の数(×10
16)がプロットされる。
【
図10】懸濁液中及び表面上の液体化学に対する異なるガス放出の影響を示す図である。実験のセットアップ(左)及び計算された濃度曲線(右)、x時間は秒単位及びy濃度はmM単位である。
【
図11】2つのリザーバ及び希釈液を備えた本発明によるデバイスの概略図を示す図である。
【
図12】エアロゾルとして活性溶液を提供する、本発明によるデバイスの概略図である。
【
図13】液体噴霧として活性溶液を提供する、本発明によるデバイスの概略図である。
【
図14】活性溶液が給水栓を介して適用される、本発明によるデバイスの概略図である。
【
図15】給水栓につながる送水管に挿入された、本発明によるデバイスの概略図である。
【
図16】抽出物の一部を発生するプラズマ源を含有する、本発明によるデバイスの概略図である。
【
図17】0℃~40℃のpH3でクエン酸-リン酸緩衝液を使用した、抽出物ごとの初期濃度5mMでのNaNO
2とH
2O
2との反応のアレニウスグラフである。
【
図18】5分間の反応時間後の0℃での73.2mMのNaNO
2、58.9mMのH
2O
2、及び100mMのHClの反応からの反応生成物NO
3
-、H
2O
2、NO
2
-、及びHNO
2の測定された吸光度及び対応する適合を示す図である。
【
図19】0℃での73.2mMのNaNO
2、58.9mMのH
2O
2、及び100mMのHClの反応におけるHNO
2/NO
2(HNO
2及びNO
2
-の合計密度)、NO
3
-、ならびにONOOHの密度の時間分解測定を示す図である。
【
図20】0℃での73.2mMのNaNO
2、58.9mMのH
2O
2、及び100mMのHClの反応の時間t=20秒での吸光度及び適合を示す図である。
【
図21】有効性パラメータWの関数としての異なるタイプの微生物についての減少係数を示す図である。水平線は、微生物濃度の99%の減少に対応する。
【
図22】20℃の温度ならびに15秒、30秒、50秒、及び90秒(上から下へ)の曝露時間Z
Eでの有効性範囲を示す図である。曲線の上の領域では、W>10mMを、2秒、15秒、30秒、及び75から選択された処理期間Z
Aのそれぞれの所与の期間の間、有効性パラメータに適用する。xの場合、pH値がプロットされ、yの場合、mM単位の初期濃度[H
2O
2]
0=[NO
2
-]
0がプロットされる。
【
図23】温度20℃、処理時間Z
A=15秒、及び曝露時間Z
E=30秒での有効範囲及び有効性を示す図である。W=10mMとマークされた曲線の上の範囲は、W>10mMが適用される範囲を示す。パーセンテージでマークされた曲線はそれぞれ、有効性が少なくとも指定された値を有する領域を定義する。ハッチングされた領域は、W>10mM及びE>45%が有効であるそれらの値を例示的に示している。xの場合、pH値がプロットされ、yの場合、mM単位の初期濃度[H
2O
2]
0=[NO
2
-]
0がプロットされる。
【0118】
図11は、流体を送達するためのピストンポンプ(6、7、8)がクランクシャフト(12)を介して駆動するそれぞれの構造を示している。ピストンが引き上げられ、空になる。最初に、希釈溶液Cは、ピストン(8)を引っ張り上げることによって、リザーバC(3)からピストンにポンプで送られる。クランクシャフトの回転を続けることにより、希釈溶液Cは、混合デバイス(10)に入る。チェックバルブ(5)は、希釈溶液CがリザーバC(3)に逆流するのを防ぐ。クランクシャフト(12)の90°の位相シフトのために、抽出溶液A及びBの混合デバイス(10)への吸引及び後続の噴出は、希釈溶液Cの提供に時間的に遅れる。これは、抽出物AとBとの混合は、希釈条件下で行われることを確実にする。式(5)によるH
2O
2とNO
2
-との反応は、抽出物の濃度に依存し、濃縮された場合は速すぎるため、これは重要である。混合デバイス(10)の体積は、溶液A、B、及びCの個々の体積の合計を受け入れることができるように選択される。活性溶液は、反応物溶液A及びBを希釈溶液Cに添加した後、混合デバイス(10)中に存在する。供給デバイス18を介して空気を吸い込み、それを圧縮して、かつ混合デバイスの方向に、それを噴出する第4のピストン(9)によって、活性溶液は、混合デバイスから分配デバイス(11)(例えば、ノズル)に押し込まれ、次いで、消毒される表面に適用される。
【0119】
クランクシャフトの設計により、抽出物の混合及び後続の活性成分の放出のプロセスを継続的に繰り返すことができる。活性溶液の噴出頻度は、クランクシャフト(12)の回転速度を介して調整することができる。
【0120】
光学センサー(17)によって、消毒される表面が噴霧領域にあるかどうか、及びこの領域がどのくらいのサイズであるかが接触することなく決定される。この情報は、制御ユニット(14)によって評価され、次いでデバイスがアクティブ化される。消毒される表面のサイズに応じて、1つ以上の噴霧パルスが放射される。さらなる実施形態では、光学センサー(17)を使用して、表面及び/又は使用者を識別する。このようにして、後続の評価において、どの表面及び/又はどの使用者がどの量の活性成分をどのくらいの頻度でいつ受容したかを決定することができる。
【0121】
ディスプレイユニット(16)は、システム及び/もしく消毒面ならびに/又は使用者に関する情報を使用者に提供する。これには、リザーバが空である、ピストンが漏れているなどのシステムに重大な障害が発生した場合の警告メッセージが含まれる。リザーバのレベルセンサー(4)により、混合デバイスへのすべての供給ラインで圧力トランスデューサーを使用することにより、そのようなエラーの原因を検出することができる。
【0122】
さらに、消毒プロセスの数が文書化され、ディスプレイユニット(16)を介して出力される。ディスプレイユニット(16)は、デバイスによって貯蔵されたすべてのデータを別のデバイス、好ましくはコンピュータに転送することを可能にするモジュールも装備している。リザーバ(1~3)は、コーディングシステムを装備しており、リザーバ中に含有される液体を明確に割り当てることができる。制御ユニット(14)は、意図された液体がリザーバ中に存在するまで明確に識別されない液体の場合、デバイスの動作を中断する。
【0123】
図12は、活性溶液がエアロゾルとして消毒される表面に適用される分配デバイスの実施形態を示している。エアロゾルは、エアロゾル発生器(30)によって、抽出溶液からリザーバ(1、2)で発生する。この目的のために、ファン(19)は、空気供給(18)によって、抽出溶液の上に循環空気流を発生する。液滴は、気流中に富むため、エアロゾルが抽出溶液の上に形成される。必要に応じて、抽出エアロゾルは、空気流を介して混合デバイス(10)に導かれ、そこで活性溶液がエアロゾルの形態で形成される。次いで、活性溶液が、エアロゾルの形態で消毒される表面に適用される。
【0124】
図13は、液体噴霧の形態の活性溶液が、消毒される表面上にのみ形成される分配デバイスの実施形態を示している。この目的のために、リザーバ(1、2)にはそれぞれポンプ(20)が装備される。それぞれのポンプ(20)を介して、抽出溶液は、必要に応じてノズル(21)を通過し、その結果、噴霧(28)が形成される。この噴霧(28)では、抽出溶液が組み合わされて、消毒される表面上に集められる。
【0125】
図14は、反応時間後に栓を使用して送水管(22)を介して活性溶液が適用されるデバイスを示している。ポンプ(24)を使用して、水流(25)に抽出物を導入し、活性溶液を作成する。フローセンサー(26)は、送水管(22)に統合されており、これはプロセス制御に使用され、水流が検出されると抽出物(29)の流入をアクティブにする。
【0126】
図15は、給水栓(23)によって送水管(25)への抽出物(29)の流入を介して活性溶液が適用されるデバイスのさらなる実施形態を示している。この実施形態では、抽出物は、ベンチュリポンプ(27)によって水流に引き込まれ、水流に混合され、栓(23)を介して消毒される表面に活性溶液として適用される。
【0127】
図16は、抽出物の一部がリザーバ(1又は2)に供給され、抽出物の別の部分が、送達デバイスに統合されたプラズマ源(32)によって発生するデバイスの実施形態を示している。エアロゾル発生器(30)、ファン(18)、及び空気供給によって、エアロゾルが抽出溶液から発生し、次いで、プラズマ源によって、分配デバイス中のさらなる抽出物と反応する。得られた活性溶液は、エアロゾル(33)として、適用領域(34)で消毒される表面に適用される。さらに、デバイスのこの実施形態は、周囲空気から有害な気液及びガス状成分を除去するフィルター(36)を装備した吸引デバイス(35)を有する。
【符号の説明】
【0128】
(1) リザーバ抽出物A
(2) リザーバ抽出物B
(3) リザーバ希釈液C
(4) レベル及びコーディングの電子機器
(5) 逆止め弁
(6) 濃縮液抽出物用ピストンA
(7) 濃縮液抽出物用ピストンB
(8) 希釈液用ピストンC
(9) 圧縮空気を発生するためのピストン
(10) 混合デバイス
(11) ノズルの形態の分配デバイス
(12) クランクシャフト
(13) ドライブユニット
(14) 制御電子機器
(15) 圧力制御センサー
(16) 充填レベル及びシステムステータスのディスプレイユニット
(17) 非接触操作及び手のサイズ認識のための光学センサー
(18) 空気の供給。
(19) ファン
(20) ポンプ
(21) ノズル
(22) 送水管
(23) 栓
(24) 水流用ポンプ
(25) 送水管
(26) フローセンサー
(27) ベンチュリポンプ
(28) 噴霧
(29) 抽出物の流入
(30) エアロゾル発生器
(31) 検出器
(32) プラズマ源
(33) エアロゾル
(34) 適用領域
(35) 吸引デバイス
(36) フィルター
【0129】
実験的研究
殺菌作用
活性溶液の有効性は、懸濁試験で調査した。活性溶液は、2つの出発液AとBとを混合することによって得た。出発液Aは、50mMのH
2O
2及び2%(w/v)又は10%のクエン酸を含有していた。出発液Bは、50mMのNO
2
-を含有していた。効果を評価するために、活性溶液の有効性を、唯一の活性成分として、よく知られていて、かつ広く使用されている消毒剤であるイソプロパノールの有効性と比較した。試験では、0.1mLの細菌溶液(大腸菌(E.coli))を、試験される薬剤とCASO-ブイヨン(Casein Peptone-Soya Flour Peptone Bouillon,Carl Roth GmbH+Co.KG,Germany)との1mLの混合物と混合した。曝露時間は、30秒であった。CASO-ブイヨンは、ここでは希釈に使用され、消毒実験には人工有機物を使用した。これらの実験の結果を
図5に示す。結果は、懸濁液中の消毒剤として使用した場合、より強い酸性化が活性溶液の消毒効果を高めることを明確に示している。H
2O
2とNO
2
-との混合物の酸性化の結果としての微生物の不活化に関するこの増加した有効性は、文献で知られており、(Heaselgraveら,2010)を参照されたい。
【0130】
手の消毒実験
手の消毒剤としての活性溶液の適用性を試験するために、EN 1500規格に準拠して手の消毒実験を実施した。EN 1500規格に準拠した試験では、試験される消毒剤が、その消毒効果に関して活性成分のイソプロパノールと比較してどのように機能するかを検証する。この目的のために、手は最初に細菌(大腸菌(E.coli))CASO-ブイヨンに浸され、次いでプロトコルに準拠して試験されるそれぞれの薬剤で消毒される。
【0131】
この試験は、3つの異なる活性溶液を用いて実行し、出発液Bは、それぞれ同一であり、出発液Aは、それぞれ50mMのH2O2を含有するが、0.5%、2%、又は10%のいずれかのクエン酸を含有する。
【0132】
これらの試験では、2%のクエン酸を含む活性溶液のみをイソプロパノールよりも有効であると分類した。上記の懸濁液中の消毒実験とは対照的に、出発溶液のより強い酸性化は、改善をもたらさないが、効果の悪化をもたらす。
【0133】
さらに、これらの実験中にpH測定を実施した。3つのタイプのpH測定値を
図5に示す。これらは、手のひらの内側での治療前の試験者のpH値(基本値)、混合活性溶液のpH値、及びEN 1500に準拠した手の消毒後の皮膚のpH値である。後者の2つは、活性溶液B中の0.5%、2%、及び10%のクエン酸濃度で試験した。
【0134】
有効性の用量及び曝露時間への依存性
H2O2及びNO2
-の活性溶液の有効性を予測できるルールを確立するためには、有効性の用量及び曝露時間への依存性を知る必要がある。多くの場合、用量と曝露時間ZEとの積としてのハーバーの法則に従った有効性パラメータWが説明されている。この場合、寿命の異なる多数の反応種が形成されるため、この依存性は、明確ではない。
【0135】
Pは、反応(1)で説明したプロセスの濃度[P]による消毒効果に関連する反応生成物である。ハーバーの法則により、以下のハーバーの有効性パラメータが得られる。
【数9】
【0136】
消毒効果に関連する短命の反応生成物Pの場合、それらは寿命τを有し、確率g(t)で時間tの後にまだ減衰していないと想定することができる。
【数10】
【0137】
したがって、
Q(t)=c1×k1[NO2
-][H2O2](25)
は、消毒効果に関連する反応生成物のソースタームであり、式中、c1は、反応速度に基づく、消毒効果に関連する反応生成物の割合である。
【0138】
濃度[P]は、以下の畳み込みによって計算することができる
[P=Q*g=∫Q(τ)g(t-τ)dτ(26)
【0139】
反応(1)の結果として形成される消毒効果に関連する反応生成物の寿命τが、NO
2
-及びH
2O
2の濃度の変化よりもはるかに短いと想定すると、例えば
【数11】
g(t)は、g(t)=c
2×δ(t)の形式のディラック分布で近似することができ、その結果:
【数12】
は、有効性パラメータWに適用される。式(26)の事前係数c
1×c
2は、スケーリングのみを引き起こす。したがって、簡単にするために、有効性パラメータは、以下のように定義され、
【数13】
これは、本発明に従って製造された消毒剤の有効性のために必要かつ十分な条件を与えるために使用することができる。このように定義された有効性パラメータWの関数としてのNO
2
-とH
2O
2との混合物の有効性を、本発明の基礎となる実験の範囲内で決定した。
【0140】
式(5)の妥当性は、以下の実験によって確認される:
0.22mLのCASO-ブイヨンを体積が0.1mLの細菌溶液に添加する。この細菌溶液は、曝露期間Z
Eの間、H
2O
2、NO
2
-、及びpH緩衝液からなる活性溶液に曝露され、活性溶液の体積は、0.78mLである。
図7には、計算された有効性パラメータが、関係(5)の妥当性を確認する実験結果とともに示されている。
【0141】
H2O2及びNO2
-の濃度は、式(5)~(15)で与えられる。これらの実験は、懸濁液実験であるため、ガス放出を無視したので、(11)及び(12)では、r=0と想定した。
【0142】
本発明の文脈で得られたデータから、大腸菌(E.coli)の不活化のための懸濁液中の有効性パラメータ(5)について、条件
W>0.3mM、理想的にはW>0.5mM
を、消毒効果を達成するために適用する必要がある。細菌胞子及びエンベロープを持たないウイルスに必要な有効性パラメータについては、以下で説明する。
【0143】
分配ステップ及び有効性曲線
表面消毒に活性溶液を使用する場合、消毒される表面上に活性溶液を適用及び/又は分配する分配ステップを常に実行する必要がある。例えば、手の消毒剤として使用される場合、活性溶液は、典型的には、特定の期間、通常は30秒間こすられる。加えて、表面が不均一又は多孔質である場合、活性溶液が拡散によって表面に十分に浸透するのに一定の時間がかかる。有効な表面消毒は、分配ステップの終了後、曝露時間ZEの間、活性溶液が表面上に残っている場合、つまり、消毒される表面が処理期間ZAの後に完全に濡れているとき、及びそれでもこの曝露時間ZEの間十分に効果的である場合にのみ保証される。
【0144】
式(5)によると、これは、大腸菌(E.coli)に対して以下の場合に満たされる。
【数14】
良好には
【0145】
式(5)~(16)に従って計算された有効性パラメータは、
図7のZ
A=30秒及びZ
E=15秒の等値線で表される。この相関関係の妥当性を検証するために、以下の実験を実行した:
2つの出発液A及びBのそれぞれ0.39mLを0.22mLのCASO-ブイヨンと混合した。出発液Aは、50mMのH
2O
2及び緩衝溶液を含有し、出発液Bは、50mMのNO
2
-を含有していた。緩衝溶液は、活性溶液とCASO-ブイヨンとの混合物のpH値を調整するために使用される。30秒後、0.1mLの細菌懸濁液(大腸菌(E.coli))をこの混合物に添加した。15秒の曝露時間後、得られた懸濁液をプレーティングした。
図7は、結果として生じるlog
10細菌の減少を示している。見て分かるように、0.15mM<W<0.3mMが与えられた場合、最大2log
10ステップだけのコロニー形成単位の減少を達成できる。0.3mM<W<0.5mMが与えられた場合、2~5log
10ステップを達成できる。W>0.5mMの場合、最大7log
10ステップが達成される。実験データと(13)で定義された有効性パラメータとの良好な一致は、消毒剤としてNO
2
-及びH
2O
2を使用する場合の式(23)~(28)で説明される用量反応関係の妥当性を強調している。有効性パラメータ0.15mM<W<0.3mMの方法の使用は、例えば給水栓の上流に対応するデバイスを接続することにより、補助的な衛生対策として特に有用であるが、この方法は、衛生的な表面、特に手の消毒の場合、W>0.3mM、良好にはW>0.5mMで使用することができる。殺胞子効果及び殺ウイルス効果の場合、より高い値のWが必要である(以下を参照)。
【0146】
図8では、開始及び終了のpH値も矢印で示されている。これらは、上記の手の消毒実験でのpH測定によって決定した。活性溶液中の抽出物の初期濃度は、[H
2O
2]
0=[NO
2
-]
0=25mMであった。初期値は、手の消毒を開始する前の活性溶液中のpH値であり、最終値は、EN 1500規格に準拠した、手の消毒後の皮膚上の活性溶液のpH値である。手の消毒のようにpH緩衝表面が存在する状況で表面消毒を確実にするために、式(27)を統合できるように、理想的にはpH値の時間的経過を知る必要がある。しかしながら、実際の用途では、この時間依存性を決定できないことがよくある。それでも信頼性の高いプロセスを保証できるようにするには、しかしながら、ここでのように、開始及び終了のpH値を指定できれば十分である。プロセス中にpH値が単調に増加すると想定すると、開始pH値と終了pH値との両方の積分(5)が十分に大きな有効性パラメータをもたらす場合、どのような場合でも十分な消毒効果を保証することができる。
図8に示すように、これは、出発液が2%のクエン酸(W≧0.5)を含有する活性溶液の場合のみである。この活性溶液は、EN 1500規格に合格するために試験された3つの溶液のうちの1つのみであった。
【0147】
ここでの代替物は、初期の溶液Aを非常に強く緩衝して、プロセス中にpHをほぼ一定に保つことができるようにすることである。しかしながら、これは、以下で説明するように、手の消毒に使用する場合は特に不利である。
【0148】
これらの実験では、初期濃度[H2O2]0=[NO2
-]0を選んだ。出発物質H2O2とNO2
-とがほぼ完全に分解されるため、これは有利である。NO3
-のみが健康及び生態毒性の点で問題のない濃度で液体中に残る。表面消毒剤として使用する場合、[H2O2]0は、[NO2
-]0よりも最大10%低く選択することができるので、NO2
-のガス放出により崩壊した活性溶液中に残るH2O2は、可能な限り少なくなる。
【0149】
より高いpH値で十分に大きな有効性パラメータを得るために、H2O2をはるかに高く濃縮することも可能である。これは、pHに敏感な表面に適用する場合に特に有用であり得る。
【0150】
ガス放出
図9(左)は、ガス放出されたNO
2の総量を定量化するための測定セットアップを示している。ペトリ皿に10mLの消毒液を充填し、1slmのガス流が流れる容器に入れた。このようにして決定されたNO
2生成率(
図9右)を統合することにより、この場合、液体中のNO
2
-の最大3%がNO
2としてガス放出されることが決定した。
【0151】
以下の実験が示すように、ガス放出は、液体中の化学反応の進行にも影響を与える。
図10に示すように、H
2O
2及びNO
2
-を、pH2.8のビーカー中でそれぞれ50mMの濃度及び3mLの体積のクエン酸と1秒間混合した。その後すぐに、2mLの混合物をビーカーから直径15cmの平らな容器に添加し、表面消毒と同様の液体の分配を達成した。
【0152】
180秒の反応時間後、H2O2及びNO2
-の濃度を試験ストリップを使用して両方の液体で測定した。ビーカー中のNO2
-及びH2O2の濃度は、300μM未満であるが、平らな容器中のH2O2の濃度は、2.5mMであるが、NO2
-は、検出不可能である。濃度の違いにより、(19)及び(20)における以前の自由パラメータは、この表面適用に対してr=0.11として決定可能であり、これは、導入されたNO2
-の9.9%(0.11/(1+0.11)の結果)がNO2としてガス放出されることを意味する。
【0153】
上記のガス放出に関するデータに基づいて、典型的には、NO2
-の使用量の最大10%がNO2としてガス放出される可能性があると想定される。
【0154】
活性物質の典型的な適用量が3mLで、混合活性溶液中のNO2
-の初期濃度が300mMの場合、1回の適用あたり最大118μmolのNO2
-が放出される。体積が10m3の換気のない部屋では、2回の適用後にMAK値を超えた。
【0155】
変異原性
エームス試験を実行して、消毒製品の変異原性を調査した。この試験は、点突然変異が大腸菌(E.coli)株から所与の培地で増殖する能力を奪うという事実に基づいている。変異原物質を添加することにより、培地上で増殖できる復帰突然変異体が形成される。変異原物質を添加しなくても、自発的な変異によっていくつかの復帰突然変異体(自然の変異原性)が形成される。
【0156】
変異原性試験は、2%のクエン酸で酸性化した50mMのNO2
-及び50mMのH2O2の2つの溶液を用いて実行した。これらの最初の試験では、製品についての変異原性(変異原性レベルは、ほぼ自然の変異原性に対応する)は示されなかった。
【0157】
pH及び温度依存性
プロセス中にpH及び/又は温度が変化する場合、例えば、液体を緩衝及び/又は加熱された表面に適用することにより、これは、密度(式(11)及び(12))、したがって積分(5)を評価するときに、時間依存性pH値pH(t)又は時間依存性温度T(t)で考慮する必要がある。特に、積分(5)は、連続するプロセスステップで対応する温度及びpH値に対して段階的に計算することができる。UV分光法は、懸濁液中のpHの変化の測定に特に好適である。この目的のために、pH値は、液体中のNO2
-対HNO2の比率から決定することができる。一般的なpHプローブも適用できる。表面に適用された液体のpH測定は、適切なpHプローブを使用して実現することもできる。pH表面測定では、Mettler-Toledo International Inc.製のpH表面電極(pH電極InLab Surface)を、この仕様に記載されている手の消毒実験に使用した。温度測定には多種多様の方法が利用可能である。この仕様に示される温度値は、応答時間が速く、かつ熱容量が小さい光ファイバー温度センサー(Weidmann Technologies Deutschland GmbH製のFOTEMP1-OEM)を使用して決定した。
【0158】
反応係数k
1の温度依存性は、UV吸収分光法によって決定した。反応物NaNO
2及びH
2O
2は、クエン酸-リン酸緩衝液を使用して、0℃~40℃の温度で反応した。反応速度は、NO
2
-及びHNO
2の密度の時間分解定量化によって決定した。それぞれ5mMのH
2O
2及びNO
2
-の初期濃度を使用して、反応速度を決定した。
図17は、対応するアレニウスグラフを示している。温度依存性反応係数は、
【数15】
以下であり、有効活性化エネルギーE
A=70kJ/molである。
【0159】
ペルオキシナイトラートの形成なし
以下に記載の実験は、本発明による消毒方法が実行される場合、ペルオキシナイトラートが生成されないことを示している。
【0160】
氷浴中で、73.2mMのNaNO
2、58.9mMのH
2O
2、及び100mMのHClの反応溶液を0℃に冷却した。各1mLの反応溶液を反応容器(これも氷浴)で混合した。塩酸を使用して、混合物の初期pH値を2.1に下げた。氷浴中で5分後、反応生成物をUV分光法によって定量化した。測定された吸光度Aexp=-ln(I/I0)を
図18に示す。I0及びIは、試験媒体を通過する前後に測定された強度を表す。反応生成物を定量化するために、250nm≦λ≦420nmの波長範囲における種i∈{NO
2
-、HNO
2、NO
3
-、H
2O
2}の濃度[i]波長依存性有効断面積σ
i(λ)を、モデル関数(「適合」)A=Σ
i[i]σ
iLを使用した最小二乗法を使用して変えて、これによりモデル関数Aと実験的に決定された吸光度A
expとの間に最適な適合が得られた。したがって、5分間の反応時間後、19mMのNO
2
-及び4.8mMのHNO
2を混合物中で決定する。H
2O
2及びNO
2
-は、検出されなかった。230~280nmの範囲で吸収するペルオキシナイトラートが形成されたことも排除することができる(Loegager&Sehested 2005)。結果は、反応(2)~(4)で説明されている反応メカニズムと化学量論的に一致する。
【0161】
別の実験では、上記と同じ出発溶液(NaNO
2、H
2O
2、HCl)を使用し、これも氷浴で0℃の温度にした。しかしながら、この実験では、反応を時間分解で追跡できるように、これらをキュベット中で直接反応させた。この目的のために、NaNO
2及びHCl溶液をキュベットに入れ、HClを添加することによって反応を開始した。この測定結果を
図19に示す。加えて、
図20は、NO
3
-、ONOOH、及びHNO
2/NO
2
-種の寄与による測定及び適応モデル関数を示している。HNO
2/NO
2
-は、HNO
2及びNO
2
-の合計密度である。酸又は共役塩基の有効断面積は、pH2.1で事前に計算した。ONOOHに使用される有効断面積は、本発明者らたち自身の予備作業で決定し、Loegager&Sehested(1993)で公開された有効断面積と一致している。したがって、ONOOHの形成は、本発明に従って実行された方法の限界範囲(0℃、pH2.1)でも証明された。
【0162】
異なる微生物についての有効性パラメータ
異なるタイプの微生物の生物学的構造は、異なる。これは、すべての微生物が消毒方法と同じように反応するわけではないことを示唆している。微生物の異なるカテゴリーに対する有効性パラメータの妥当性を試験するために、本発明による方法の効果を、栄養細菌及び胞子形成細菌、ならびにエンベロープを持たないウイルスに対して試験した。栄養細菌とは対照的に、細菌胞子及びエンベロープを持たないウイルスは、アルコールベースの薬剤で、又は不十分な期間後にのみ不活化することはできない。この耐性は、
図21に示す試験結果にも示されている。すでに0.3mMの有効性パラメータで、懸濁液中の大腸菌(Escherichia coli)の99%(2ログステップ)が死滅する。緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)及び黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などの「栄養細菌」カテゴリーの他の種は、それぞれ1.5mM及び1.7mMのわずかに高い有効性パラメータを必要とするが、これらの値は、依然として細菌胞子に必要な有効性パラメータを大幅に下回っている。ここでは、99%の不活化のために、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)胞子に10mMの有効性パラメータが必要である。クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)胞子は、院内及び抗生物質関連下痢の最も一般的な病原体であるため、特に関連性がある(Lubbertら.2014)。枯草菌(Bacillus atrophaeus)のようなより耐性のある胞子は、30mMの有効性パラメータを必要とする。第3のカテゴリー「エンベロープを持たないウイルス」については、99%の不活化のために17.2mMの有効性パラメータを必要とするポリオウイルスで消毒性能を試験した。概要については、それぞれの値を以下の表1に示す。
【表1】
【0163】
異なる微生物についての有効性パラメータ
Heaselgrave 2010では、様々な微生物に対して、以下のパラメータ:pH=5、[H
2O
2]
0=171mM、及び[NO
2
-]
0=29mMで微生物学的不活化実験を実行した。以下の表2は、これらのパラメータから計算された有効性パラメータW及び対応する曝露時間を示している。
【表2】
【0164】
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)又は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などの栄養微生物については、Heaselgraveらは、4logレベルの減少係数を達成するには、4.6mMの有効性パラメータが必要である。はるかに耐性のある細菌胞子の場合、必要な有効性パラメータは、大幅に高くなる。Heaselgraveら(2010)の実験パラメータによると、枯草菌(Bacillus subtilis)の内生胞子の有効性パラメータは、対応して14.2mMと計算される。本発明による消毒方法とは対照的に、4.6mM及び14.2mMの有効性パラメータを達成するためには、はるかに長い期間(それぞれ15分及び60分)が必要とされる。
【0165】
この表は、Heaselgraveら(2010)が処理時間ZA=2秒及び曝露時間ZE=90秒で使用したパラメータ(pH、CH2O2、CNaNO2)から生じる有効性パラメータも示している。パラメータは、すべての実験で同じであったため、示されているすべての微生物で0.51mMの同一の有効性パラメータが得られる。これは、4logステップの減少に必要な場合の栄養微生物については9分の1であり、内生胞子については28分の1である。Heaselgraveらが使用したNaNO2及びH2O2濃度は、本発明で使用される濃度と比較して、すでに非常に高いにもかかわらず、92秒以内の関連微生物の不活化は、Heaselgraveらが選んだパラメータでは完全に絶望的である。処理時間及び曝露時間とHeaselgraveらによる初期濃度との他のすべての組み合わせは、さらに低い有効性パラメータを提供し、したがって、十分な有効性パラメータを達成するために必要な係数を増加させる。
【0166】
さらに、Heaselgraveらによるプロセスの効率E=1.9%は、考慮された92秒の期間の間は非常に低い。これは、考慮された処理時間及び曝露時間(ZA=2秒、ZE=90秒)については、Heaselgraveらによって達成された有効性パラメータが、pHならびにH2O2及びNO2
-の初期濃度を都合よく選ぶことで理論的に達成できる有効性パラメータのわずか1.9%に相当することを意味する。したがって、より良好な有効性に加えて、原材料の効率的な使用を背景として、本発明による方法は、効率に関してHeaselgraveらの方法よりも好ましい。
【0167】
参考文献一覧:
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