(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】補助術野視覚化システム
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A61F9/007 200C
A61F9/007 130G
(21)【出願番号】P 2020569069
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2019055112
(87)【国際公開番号】W WO2019244040
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-03-15
(32)【優先日】2018-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ニールス アレクサンダー アプト
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/195192(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/190113(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/189283(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/105411(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0181625(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0130258(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助術野視覚化システムであって、
二次術野の視野の画像を取得するために構成される補助術野カメラであって、前記二次術野
は、網膜硝子体手術中に様々な外科的操作が行われる、眼内照明を用いて見ることができない眼の外側部分及び周囲領域を含む領域を包含し、手術を受ける眼の外部領域に導入され、外部から見える様々な外科用コンポーネントを含む、補助術野カメラと、
前記補助術野カメラと電子通信するディスプレイであって、前記補助術野カメラから、前記二次術野の前記視野の前記画像を備える信号を受信し、前記信号を受信すると、前記二次術野の前記視野の前記画像を表示するために構成されるディスプレイと、を備
え、
前記補助術野カメラは、赤外線カメラ、低照度カメラ、又は暗視カメラであり、
前記ディスプレイは、更に、硝子体網膜手術を受けている患者の眼の内部ビューを備える一次術野の視野の画像を取得するために構成される一次術野カメラから、前記一次術野の前記視野の前記画像を備える信号を受信し、前記一次術野の前記視野の前記画像を表示し、
前記ディスプレイは、前記二次術野の前記視野及び前記一次術野の前記視野の前記画像を同時に表示するために構成される、補助術野視覚化システム。
【請求項2】
前記眼は眼内照明を用いて照明される、請求項1に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項3】
前記二次術野は2000ルクス未満の光強度を有する、請求項1に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項4】
前記二次術野の前記視野の面積は
1cm
2~36cm
2の間である、請求項1に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項5】
前記画像はリアルタイム画像である、請求項1に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項6】
前記ディスプレイは、標準精細度(SD)ディスプレイ、高精細度(HD)ディスプレイ、陰極線管(CRT)ディスプレイ、投影スクリーンディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、又は3次元(3D)ディスプレイである、請求項1に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項7】
補助術野視覚化システムであって、
プロセッサと;
前記プロセッサによってアクセス可能な非一時的コンピュータ読取可能媒体であって、
前記補助術野カメラから、前記二次術野の前記視野の前記画像を備える信号を受信し、前記信号を受信すると、前記信号を前記ディスプレイに送信するために、前記プロセッサによって実行可能な命令を含む、非一時的コンピュータ読取可能媒体と、を更に備える、
請求項1に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項8】
前記非一時的コンピュータ読取可能媒体は、
硝子体網膜手術を受けている患者の眼の内部ビューを備える一次術野の視野の画像を取得するために構成される一次術野カメラから、前記一次術野の前記視野の前記画像を備える信号を受信し、前記信号を受信すると、前記信号を前記ディスプレイに送信するために、前記プロセッサによって実行可能な命令を更に備える、
請求項7に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項9】
前記補助術野視覚化システムは、1つ以上の二次外科的操作のディスプレイ上での視覚化を可能にし、前記二次外科的操作は、前記眼の外面上又はそれに隣接する部位に向けられる、
請求項7に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項10】
前記二次外科的操作は、トロカールカニューレを通って器具を前記眼に挿入すること、前記眼の外面を縫合すること、トロカールカニューレを載置すること、トロカールカニューレを除去すること、外科用コンポーネントの機能を検査すること、異物を取り出すこと、圧子若しくは筋鈎を載置すること、クリオプローブを用いること、強膜バックル及び包囲バンドを載置すること、並びに直接又は間接型コンタクトレンズを載置することから選択される1つ以上の操作を含む、
請求項9に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項11】
前記補助
術野視覚化システムは、前記二次術野における1つ以上の外科用コンポーネントのディスプレイ上での視覚化を可能にする、
請求項7に記載の補助術野視覚化システム。
【請求項12】
前記二次術野における外科用コンポーネントは、トロカールカニューレ、注入ライン、持針器、圧子、筋鈎、トロカールカニューレを介する挿入前の器具先端、可撓性虹彩牽引子、直接又は間接型コンタクトレンズ、並びに、針及び縫合糸から選択される、
請求項11に記載の補助術野視覚化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科手術に関し、より詳細には、眼の硝子体網膜手術中に、眼の外側を含む領域及び周辺領域を取り囲む二次術野のビューを提供するよう構成される補助術野視覚化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科において、眼の手術、即ち眼科手術は、毎年何万人もの患者の視力を救い、改善している。しかし、眼の小さな変化に対する視覚の感度、及び多くの眼の構造の微細で繊細な性質を考えると、眼科手術は行うことが困難であり、軽微若しくはまれな手術ミスの低減又は外科技術の精度の僅かな改善は、手術後の患者の視力に大きな違いをもたらす可能性がある。
【0003】
眼科手術は、眼及び副眼の構造に対して行われる。より詳細には、硝子体網膜手術は、硝子体液及び網膜等の眼の内部部位に関わる様々な繊細な処置を包含する。異なる硝子体網膜外科手術が、数ある中でも、黄斑前膜、糖尿病性網膜症、硝子体出血、黄斑円孔、網膜剥離、及び白内障手術の合併症を含む多くの眼疾患の治療における視覚感覚性能を改善するために、時にはレーザと共に用いられる。硝子体網膜手術中、例えば、眼科医は、通常、外科用顕微鏡を用いて角膜を通して眼底を観察する一方で、強膜を貫通する手術器具を挿入して、任意の様々な異なる処置を行ってもよい。一般に、硝子体網膜手術中、眼底は眼内照明を用いて照明され、ここで、光ファイバ光等の光源が強膜を通って眼の内部部位に挿入され、外科用顕微鏡が眼の瞳孔を通して見ることができる硝子体網膜手術中の眼底及び他の眼の内部構造の高倍率撮像を提供する。
【0004】
硝子体網膜手術中、眼の内部部位は一次術野と見なされてもよい。従って、眼の内部照明された内部部位に向けられる外科用顕微鏡の視野は、一次手術視野と見なされてもよい。硝子体網膜手術中、各種器具の操作、縫合、等を含む、眼の外面上で又は隣接して行われる処置等の、様々な処置が一次手術視野の外側で行われてもよい。加えて、硝子体網膜手術中、注入ライン等のような一次術野外の各種外科用コンポーネントは、外科用コンポーネントが必要に応じて機能していることを確認することができるように、場合によっては目視検査を必要とすることがある。既存の硝子体網膜手術システムでは、手術室内の眼科医及びその他の人が、一次手術視野外側の処置及びコンポーネントを都合良く且つ迅速に見ることができない。しかし、手術室内の眼科医及びその他の人々が一次手術視野外側の処置及びコンポーネントを都合良く且つ迅速に見ることができる眼科手術システムの開発は、依然として困難である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、補助術野カメラを含む補助術野視覚化システムに関する。補助術野カメラは、二次術野の視野の画像を取得するために構成され、ここで二次術野は、硝子体網膜手術を受けている患者の眼の外側を含んでいる。補助術野視覚化システムは、また、補助術野カメラと電子通信するディスプレイも含み、ここでディスプレイは、補助術野カメラから、二次術野の視野の画像を含む信号を受信し、信号を受信すると、二次術野の視野の画像を表示するために構成される。
【0006】
開示される実装のいずれかにおいて、補助術野視覚化システムは、更に、以下の詳細を含んでいてもよく、これらは、明らかに相互に排他的でない限り、上記システムと組み合わせてもよく、任意の組み合わせで互いに組み合わせてもよい。
(i)眼は眼内照明を用いて照明されてもよい。
(ii)二次術野は2000ルクス未満の光強度を有してもよい。
(iii)補助術野カメラは、赤外線カメラ、低照度カメラ、又は暗視カメラであってもよい。
(iv)二次術野の視野の面積は約3cm2~36cm2の間であってもよい。
(v)画像はリアルタイム画像であってもよい。
(vi)ディスプレイは、更に、硝子体網膜手術を受けている患者の眼の内部ビューを含む一次術野の視野の画像を取得するために構成される一次術野カメラから、一次術野の視野の画像を含む信号を受信し、一次術野の視野の画像を表示するよう構成されてもよい。
(vii)ディスプレイは、二次術野の視野及び一次術野の視野の画像を同時に表示するために構成されてもよい。
(viii)ディスプレイは、標準精細度(SD)ディスプレイ、高精細度(HD)ディスプレイ、陰極線管(CRT)ディスプレイ、投影スクリーンディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、又は3次元(3D)ディスプレイであってもよい。
(ix)補助術野視覚化システムは、NGENUITY(登録商標)3D視覚化システムを含んでいてもよい。
(x)補助手術視野視覚化システムは、プロセッサと、プロセッサによってアクセス可能な非一時的コンピュータ読取可能媒体とを含んでいてもよく、ここで非一時的コンピュータ読取可能媒体は、補助術野カメラから、二次術野の視野の画像を含む信号を受信し、信号を受信すると、信号をディスプレイに送信するためのプロセッサによって実行可能な命令を含んでいる。
(xi)非一時的コンピュータ読取可能媒体は、硝子体網膜手術を受けている患者の眼の内部ビューを備える一次術野の視野の画像を取得するために構成される一次術野カメラから、一次術野の視野の画像を含む信号を受信し、信号を受信すると、信号をディスプレイに送信するためにプロセッサによって実行可能な命令を含んでいてもよい。
(xii)補助術野視覚化システムは、1つ以上の二次外科的操作のディスプレイ上での視覚化を可能にしてもよく、ここで二次外科的操作は、眼の外面上又はそれに隣接する部位に向けられる。
(xiii)二次外科的操作は、トロカールカニューレを通って器具を眼に挿入すること、眼の外面を縫合すること、トロカールカニューレを載置すること、トロカールカニューレを除去すること、外科用コンポーネントの機能を検査すること、異物を取り出すこと、圧子若しくは筋鈎を載置すること、クリオプローブを用いること、強膜バックル及び包囲バンドを載置すること、並びに直接又は間接型コンタクトレンズを載置することから選択される1つ以上の操作を含んでいてもよい。
(xiv)補助硝子体網膜手術視覚化システムは、二次術野における1つ以上の外科用コンポーネントのディスプレイ上での視覚化を可能にしてもよい。
(xv)二次術野における外科用コンポーネントは、トロカールカニューレ、注入ライン、持針器、圧子、筋鈎、トロカールカニューレを介する挿入前の器具先端、可撓性虹彩牽引子、直接又は間接型コンタクトレンズ、並びに、針及び縫合糸から選択されてもよい。
(xvi)ディスプレイは複数の個人によって見ることができてもよい。
【0007】
本発明並びにその特徴及び利点のより完全な理解のために、縮尺通りではない添付図面と共に取られる以下の説明に対して、ここで参照を行う。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、硝子体網膜外科手術を受けている眼の側面図を示す例示的な略図である。
【
図2】
図2は、硝子体網膜外科手術を受けている眼の上面図を示す例示的な略図である。
【
図3A】
図3Aは、例示的な補助術野視覚化システムを示す略図である。
【
図3B】
図3Bは、例示的な補助術野視覚化システムを示す別の略図である。
【
図3C】
図3Cは、例示的な補助術野視覚化システムを示す更に別の略図である。
【
図3D】
図3Dは、例示的な補助術野視覚化システムを示す更に別の略図である。
【
図4】
図4は、NGENUITY(登録商標)3D視覚化システムの一部として用いられるディスプレイ上に表示されるような、硝子体網膜手術を受けている眼の眼内照明された内側部分のビューの画像と共に表示される、補助術野カメラによって取り込まれる画像のピクチャーインピクチャービューの一例を示す略図である。
【
図5】
図5は、外科用顕微鏡のハウジング上の補助術野カメラの例示的な取り付け位置を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、詳細を、開示する主題の検討を容易にする例として説明する。しかし、開示する実施形態は例示的なものであり、全ての可能性のある実施形態を網羅するものではないことは、当業者には明らかであるはずである。
【0010】
本開示は、眼科手術に関し、より詳細には、硝子体網膜手術中に、眼の外側を含む領域及び周辺領域を取り囲む二次術野のビューを提供するよう構成される補助術野視覚化システムに関する。
【0011】
例えば、
図1は、硝子体網膜外科手術を受けている眼の側面図を示す例示的な略図である。略図に示しているのは、眼の硝子体ゲルを緩やかに制御された方法で除去する硝子体切断装置101を含む、眼に挿入される各種器具である。また、眼内照明と称する、眼の内部の照明を提供するライトパイプ102も示している。また、眼内の流体を生理食塩水で置き換え、適切な眼圧を維持するために用いられる注入カニューレ103も示している。硝子体切断装置101、注入カニューレ102、及びライトパイプ103は、通常、当業者によって理解されるように、トロカールカニューレシステムを用いる処置の後に強膜の切開部に挿入されるそれぞれのトロカールカニューレ104、105、及び106を通って眼内に挿入される。
図1の例示的な略図に示すような硝子体網膜手術中、眼科外科医は、瞳孔108を通して眼の内部を見るように向けられる顕微鏡を用いて、眼底107の照明部分を視覚化する。
【0012】
図2は、
図1の側面図に示した例示的な処置と同様に、例示的な硝子体網膜外科手術を受けている眼の正面を向いた図に対応する、例示的な上からの図を示す略図である。略図に示しているのは、硝子体切断装置201、注入カニューレ202、及びライトパイプ203を含む、トロカールカニューレ208を通って眼に挿入される各種器具である。
図2の例示的な略図に示すような硝子体網膜手術中、眼科外科医は、瞳孔205を通して眼の内部を見るように向けられる顕微鏡を用いて、眼底204の眼内照明部分を視覚化する。
【0013】
一般に、硝子体網膜手術中、眼科外科医は眼の眼内照明部分を高倍率で観察する。従って、高倍率において、眼の眼内照明された内側部分を伴う外科操作中に見える眼の領域は、例えば、
図2の一次術野206の図を示す破線のボックスによって示されるような、眼の正面を向いた図の比較的小さな領域を包含する。
【0014】
また
図2には、二次術野207を示す破線のボックスも示されている。本明細書中で用いられる用語「二次術野」とは、一般に、硝子体網膜手術中に眼の外面及び周囲領域を含む領域を包含する領域を指す。従って、二次術野は、硝子体網膜手術中に様々な外科操作が行われてもよい眼の外側部分及び周辺領域を含む領域を包含し、例えば、瞳孔、虹彩、角膜、強膜、血管、及び、例えば強膜内の切開部位の眼の外部から見える特徴を含んでいてもよいが、これらに限定されず、また、眼瞼、睫毛、眉、鼻、頬等のような眼科手術中に見ることができる可能性のある眼の周囲の顔面構造を含んでいてもよい。二次術野は、また、手術を受ける眼の一般的な外部領域に導入してもよく、眼科手術中に用いてもよい、手術用具、器具、配管、クランプ、注入カニューレ、ライトパイプ、硝子体切断装置、トロカールカニューレ、キューチップ、ドレープ、検鏡、例えばBIOM(登録商標)(Oculus Optikgeraete GmbH,Wetzlar-Dutenhof,Germany)等の視覚化装置、直接又は間接コンタクトレンズ、IOL、注射器、切断装置、持針器、圧子、筋鈎、トロカールカニューレを通して挿入する前の器具先端、可撓性虹彩開創器、針及び縫合糸並びに当業者によって特定可能な他の物体等の外部から見える各種外科用コンポーネントを含んでいてもよい。用語「外部から見える」とは、一般に、眼の外側、又は眼の外面上若しくはその近くにあるもの等の二次術野内で見ることができるものを指す。特に、外部から見えるという用語は、本明細書中に説明する眼の様々な特徴及び周囲の顔の特徴並びに手術器具等の一次術野内で見ることができない可能性があるものを指す。二次術野という用語は、通常、眼内照明を用いて見ることができない眼の外側部分を含む。従って、本明細書中で用いられるような二次術野という用語は、一般に、一次術野に補足的、補助的、又は追加的な術野を指し、一般に、硝子体網膜手術中の、眼の外側部分及び眼の周囲の領域を含むか又は眼に隣接する空間領域を含む。
【0015】
二次術野は、概して、一次術野よりも大きく、例えば
図2に示すように、1cm
2~36cm
2の間又は略その間で、例えば、矩形領域等の他の形状も可能であるが、例えば1cm×1cm、及び例えば6cm
2×6cm
2の間、又は略その間の、略正方形領域を取り囲む領域において、上から下に見た場合に略正面を向いた領域を取り囲んでいてもよいことは、当業者にとって明らかであろう。外部術野の正面を向いた領域の2次元平面の角度は、一次術野の正面を向いた領域の2次元平面の角度と同じであってもよいか、又は異なっていてもよい。
【0016】
一般に、本明細書中に説明する外科手術は、一次外科的操作及び二次外科的操作を含む。用語「一次外科的操作」とは、眼内照明された眼の内部を対象とする操作等の、一次術野において高倍率で見ることができる外科的操作を指す。対照的に、用語「二次外科的操作」とは、より低い倍率で見ることができてもよく、概して眼の外側部分を対象とするか、又は眼の外面上若しくはそれに隣接するか或いは近接して(例えば、約5cm以内)行われていることを見ることができる操作等の、二次術野において実行されてもよい外科的操作を指す。
【0017】
例えば、二次外科的操作は、眼の外側部分又はその近傍で行われる、各種器具の操作、縫合等のような処置を含む。特に、例えば、硝子体網膜手術中、トロカールカニューレを介する器具の挿入は、カニューレハブ及び器具先端が挿入を成功させるために視覚化される必要があるように、眼の外側の挿入位置の視覚化を必要とする。これは、眼の内部の構造を対象とする一次外科的操作を見るために用いられるよりも低い倍率で、又はより広い視野の、及び/又は異なる焦点面での視覚化を必要とする。
【0018】
加えて、硝子体網膜手術中、注入ライン等のような二次術野における各種外科用コンポーネントの一部の目視検査は、外科用コンポーネントが必要に応じて機能していることを確認することができるように、時々必要とする可能性がある。コンポーネントの目視検査は、また、眼の内部の構造を対象とする一次外科的操作を見るために用いられるよりも低い倍率、又はより広い視野、及び/又は異なる焦点面を必要とする可能性もある。
【0019】
加えて、当業者によって理解されるように、眼内照明を用いる場合、眼の外部の顕微鏡光源等の外部顕微鏡照明光源は、通常、オフにされ、その結果、眼内照明された眼の瞳孔を通して見える眼の照明された内側部分は、眼内照明された眼の主に暗い又は比較的照明されていない外側部分と対比される。例えば、硝子体網膜手術を行うために例示的なNGENUITY(登録商標)3D視覚化システムを用いる場合、眼の内部は眼内照明によって視覚化され、外部光源は通常オフにされる。
【0020】
従って、眼内照明を用いる硝子体網膜矯正手術は、通常、暗い手術室で行われるか、又は、一般に、二次術野が比較的暗い場所で行われる。当業者によって理解されるように、硝子体網膜手術中に暗い手術室又は比較的暗い二次術野を有することは、眼内照明画像のコントラストを高め、眼内照明画像からの望ましくないグレア及び輝点を低減させるために有用である。しかし、暗い手術室又はそうでなければ比較的暗い二次術野を有することは、二次術野を適切に視覚化することを困難にし、従って、二次術野の照明がない状態で二次術野における二次外科的操作及びコンポーネントの目視検査を行うことを困難にする。本明細書中で用いられる用語「暗くなる」又は「比較的暗い」とは、2000ルクス未満又は約2000ルクス未満の光レベルを指す。
【0021】
従って、硝子体網膜手術中に二次術野を見るための従前のアプローチは、通常、見るよう二次術野を照明するために、眼の外部の光源をオンすることを伴う。
【0022】
加えて、二次術野を視覚化するための1つの従前のアプローチは、視野をズームアウトすること、及び/又は外科用顕微鏡を用いて二次術野の視覚化を可能にするよう一次術野から外科用顕微鏡の焦点面を調整することを伴う。このアプローチを用いて、外部外科的操作及び/又は外部術野における目視検査を実行した後、外科用顕微鏡は、外科用顕微鏡の視野が一次術野に再度向けられるように、再度ズームインし及び/又は再焦点合わせしなければならず、外部照明はオフしなければならない。この従前のアプローチは、時間及び顕微鏡の再調整を必要とし、手術に必要とされる時間を長くするため、面倒であり、外科手術を中断するので、不利を有することは、当業者には明らかであろう。
【0023】
外科用顕微鏡の視野をズームアウトする代わりに、硝子体網膜手術中に外部の術野を見るための別の従前のアプローチは、眼科外科医に二次術野の概要を提供するよう構成される、ルーペ若しくは拡大鏡等の補助光学レンズ、又は低倍率接眼レンズの補助セットの使用を伴う。例えば、1つの従前のアプローチは、外科用顕微鏡の接眼レンズの近傍の外科用顕微鏡のハウジングに追加で取り付けられる補助拡大鏡又はルーペを用いる。この従前のアプローチにも欠点がある。例えば、かかるアプローチを用いると、かかる補助光学系を介して見ることができる外側視野は、眼科外科医のみが見ることができ、手術室の他の人員が同時に見ることはできない。加えて、補助光学拡大鏡又は補助接眼レンズの使用は、また、通常、外部ライトをオンにして、外側術野を適切に照らして見る必要がある。
【0024】
本明細書中に説明するのは、眼科外科医及び手術室内の他者が二次術野を都合よく見ることを可能にし、それによって二次外科的操作の視覚化及び一次手術視野外側のコンポーネントの目視チェックの実行を都合よく可能にするために、硝子体網膜手術等の眼科手術中に用いられてもよい補助術野視覚化システムである。
【0025】
特に、本開示の読解時、本明細書中に説明する補助術野視覚化システムは、例えば、二次術野における様々な二次外科的操作及び目視チェックを外科用顕微鏡の視野を一次術野から離して再度焦点合わせする必要なしに実施することが可能であるという点で、従前のアプローチに優る様々な利点を有することが、当業者にとって明らかであろう。従って、外科用顕微鏡は、一次術野に焦点を合わせたままにすることができる。加えて、本明細書中に説明する補助術野視覚化システムは、眼科外科医並びに看護師及び技師等の手術室内の外科チーム内の他者が、外側術野を同時に見ることを可能にし、これにより、外科チームが、進行中の外科手術の向上した理解、外科チームのメンバー間の改善されたコミュニケーション及び改善されたワークフローを有することが可能になる。
【0026】
図3Aは、例示的な補助術野視覚化システムの実装を示す略図である。
図3Aに示すのは、それぞれのトロカールカニューレ104、105、及び106を通って眼に挿入された硝子体切断装置101、ライトパイプ102、及び注入カニューレ103を含む、眼に挿入される各種器具を含む、
図1に示したような硝子体網膜外科手術を受けている眼の側面図である。
図3Aにおいて、眼底107の照明部分及び眼の他の内部構造を含む一次術野は、例えば接眼レンズ302を有する外科用顕微鏡301を用いて瞳孔108を通して見られる。破線303は、外科用顕微鏡301によって見られるような一次術野の視野の例示的な境界を示している。補助術野視覚化システムは、補助カメラ304を含む。補助術野カメラは、二次術野の視野の画像を取得するために構成され、ここで二次術野は、硝子体網膜手術を受けている患者の眼の外側を含んでいる。破線305は、二次術野の視野の例示的な境界を示している。補助ディスプレイ306と称するディスプレイは、補助術野カメラ304と電子通信307して、補助術野カメラ304から、二次術野の視野の画像を含む信号を受信し、信号を受信すると、二次術野の視野の画像を表示するために構成される。本明細書中の実線307は、電子又は電気通信を示し、様々な実装において、有線又は無線通信であってもよい。本明細書中の破線303及び305は、一次術野及び二次術野のそれぞれの光学視野の例示的な境界を示している。
【0027】
本明細書中で用いられるような用語「カメラ」とは、光センサを含む装置を指す。光センサは、光に反応し、信号処理又はその他の操作のために受信機に送信し、最終的に機器又は観察者によって読み取られるか又は見ることができる電気信号を生成するか又は電気信号に変換する電磁センサである。
【0028】
従って、カメラは、静止画又は一連の動画(映画又はビデオ)のどちらか一方として画像を取り込むために用いられる装置である。カメラは、一般に、一方の端部に光が入るための開口部(アパーチャ)を有する閉じられた中空と、他方の端部に光を取り込むための記録又は表示面とから構成される。記録面は、フィルムのように化学的、又は電子的であってもよい。カメラは、カメラの開口部の前に位置決めされるレンズを有して、入射光を収集し、画像の全部又は一部を記録面に集束させることができる。アパーチャの直径は、多くの場合、絞り機構によって制御されるが、代替として、必要に応じて、カメラは固定サイズのアパーチャを有する。
【0029】
本開示による例示的な電子光センサは、相補型金属酸化物半導体(CMOS)センサ又は電荷結合素子(CCD)センサを含むが、これらに限定されない。どちらのタイプのセンサも、光を捕捉し、それを電気信号に変換する機能を実行する。CCDはアナログ素子である。光がCCDに当たると、小さな電荷として保持される。電荷は、CCDから読み取られる場合に、一度に1ピクセルずつ電圧に変換される。CMOSチップは、CMOS半導体プロセスを用いて作成される能動ピクセルセンサの一種である。一般に各フォトセンサの隣に配置される電子回路は、受光エネルギーを電圧に変換し、追加回路は、次いで、電圧を送信又は記録することができるデジタルデータに変換する。
【0030】
送信されるリアルタイムビデオ信号は、離散時間信号のデジタル表現であるデジタルビデオ信号であってもよい。多くの場合、デジタル信号はアナログ信号から導出される。当業者によって理解されるように、離散時間信号は、データの値が連続的に記録されるのではなく、固定間隔(例えば、マイクロ秒毎)で記録されるアナログ信号のサンプリングされたバージョンである。離散時間信号の個々の時間値が正確に測定されるのではなく(無限の桁数を必要とする)、ある特定の精度に近似される-従って、特定の桁数のみを必要とする-場合、結果として得られるデータストリームは「デジタル」信号と呼ばれる。固定桁数又はビット数内で正確な値に近付けるプロセスは、量子化と呼ばれる。従って、デジタル信号は量子化された離散時間信号であり、ひいてはサンプリングされたアナログ信号である。デジタル信号は2進数で表すことができるため、量子化の精度はビット単位で測定される。
【0031】
本明細書中に説明する補助術野カメラは、幾つかの実装において、二次術野の光学式ビューに対応する画像を取得し、その情報を表示及び見るために記録又は提示することができるリアルタイムビデオ信号として送信するよう構成されるカメラを含むことが、当業者によって理解されるであろう。
【0032】
幾つかの実装において、送信されたデジタルビデオ信号は、少なくとも約1280ライン×720ラインの解像度等の適切な解像度を有する画像を生成することができる。この解像度は、当業者が高精細度即ちHD信号であると見なすであろう典型的な最小解像度に対応する。例えば640ライン×480ライン等の標準的な解像度等の他の適切な解像度も考えられる。
【0033】
本明細書中で用いるような「リアルタイム」とは、一般に、データを受信するのと同じ速度で情報を更新することを指す。更に具体的に言うと、本発明の文脈において、「リアルタイム」は、画像データが、データが表示される場合に、ユーザが気付く激しい振動又は待ち時間なしにオブジェクトがスムーズに動く十分高いデータレート及び十分に低い遅延でフォトセンサから取得、処理、及び送信されることを意味する。通常、これは、新しい画像が少なくとも約30フレーム/秒(fps)のレートで取得、処理、及び送信され、約60fpsで表示される場合、並びにビデオ信号の複合処理が約1/30秒以下の遅延を有する場合に生じる。
【0034】
本明細書中に説明する補助術野視覚化システムにおいて、ビデオ信号は受信され、対応する分解能を有するビデオディスプレイ上に提示される。例示的な視覚ディスプレイは、とりわけ当業者によって識別可能な、陰極線管、投影スクリーン、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、及び発光ダイオードディスプレイを含む。
【0035】
補助カメラは、従来のカメラ又は2つのレンズを有する3Dカメラのどちらか一方であってもよい。本明細書中に説明する補助カメラは、幾つかの実装において、立体3次元画像を提供するよう構成される立体レンズを含んでいてもよい。本明細書中に説明するリアルタイムビデオ信号は、対象物体又は組織の複数のビューを含む場合、ビデオディスプレイは、被写界深度が眼科外科医に提示されるように、3次元(「3D」)を作成することができる。高解像度3Dビデオディスプレイの例示的な種類は、TrueVision Systems,Incによって開発されたもの等の偏光ガラスを用いる立体3Dディスプレイを含む。代替として、異なる画像を各眼に向けるための任意の特別な眼鏡又は他のヘッドギアの使用を必要としない裸眼立体3Dディスプレイを用いることができる。同様に、ホログラフィック3Dディスプレイもまた、本開示の適用範囲内にあるものとして考えられる。
【0036】
補助術野カメラは、外側術野の適切な倍率を提供するよう構成される1つ以上のレンズを有していてもよい。例えば、1倍~10倍の間、又は約それらの間の倍率を提供するよう構成される1つ以上のレンズを、補助術野カメラに用いてもよい。例えば、倍率は、1倍~1.5倍、1.5~2倍、2倍~2.5倍、2.5倍~3倍、3倍~3.5倍、3.5倍~4倍、4倍~4.5倍、4.5倍~5倍、5倍~5.5倍、5.5倍~6倍、6倍~6.5倍、6.5倍~7倍、7倍~7.5倍、7.5倍~8倍、8倍~8.5倍、8.5倍~9倍、9倍~9.5倍、又は9.5倍~10倍の間、又は約それらの間であってもよい。
【0037】
当業者によって理解されるように、補助術野カメラによって通常採用される倍率レベルは、一次術野を見るために外科用顕微鏡によって用いられる高倍率よりも比較的低いであろう。本明細書中で用いる用語「高倍率」とは、当業者によって識別可能な、硝子体網膜手術等の眼科手術中の一次外科的操作の視覚化に通常用いられてもよい任意の値又は倍率の範囲を指していてもよい。例えば、幾つかの実装において、例示的な高倍率とは、当業者によって識別可能な他の範囲の中でも、約2倍~100倍、又は約10倍~40倍、又は約10倍~20倍の範囲内の倍率値を指していてもよい。幾つかの実装において、高倍率とは、約5倍~20倍、10倍~15倍、又は10倍、15倍、若しくは20倍の倍率値を指していてもよい。
【0038】
特定の補助術野視覚化システム又は外科用顕微鏡の倍率は、当業者によって識別可能な他の要因の中でも、焦点距離等のレンズの因子、及びシステムのズームコンポーネントに設定される拡大係数を考慮に入れることによって計算されてもよい。光学及び/又はデジタルズーム機能を有するコンポーネントを含む方法及びシステムが、本開示において考察されている。
【0039】
カメラの光センサは、電磁スペクトルを形成する光の波長のいずれか又は全てに反応又は検出することができてもよい。代替として、光センサは、より制限された範囲の波長に対して特に敏感であってもよい。特に、本明細書中に説明する幾つかの実装において、硝子体網膜手術は、通常、暗い手術室で行われるため、本明細書中に説明する補助術野カメラは、赤外線画像、低照度画像、又は暗視画像を取り込むのに適した光センサを含んでいてもよい。
【0040】
当業者が理解するように、用語「赤外線カメラ」、そうでなければサーモグラフィカメラ又は熱画像カメラとしても公知のものは、可視光を用いて画像を形成する一般的なカメラと同様に、赤外線を用いて画像を形成する装置である。赤外線の波長は、700ナノメートル(周波数430THz)の可視スペクトルの公称赤色エッジから1ミリメートル(300GHz)まで広がっている。可視光カメラの通常の400~700nm範囲の代わりに、赤外線カメラは、通常、14,000nm(14μm)と同じ波長で動作する可能性がある。赤外線カメラで用いられるレンズは、ガラスが長波赤外線を遮断するため、通常、ガラスではなくゲルマニウム又はサファイア結晶等の材料からできている。赤外線カメラからの画像は、モノクロ又は疑似カラーであってもよい。サーモグラフィカメラは、冷却式赤外線画像検出器を有するもの及び非冷却式検出器を有するものの2種類に大きく分けることができる。冷却式検出器は、通常、真空シールされたケース又はデュワー内に収容され、極低温で冷却される。冷却は、通常、用いられる半導体材料の動作に必要である。冷却式赤外線検出に用いられる材料は、アンチモン化インジウム(3~5μm)、ヒ化インジウム、テルル化水銀カドミウム(MCT)(1~2μm、3~5μm、8~12μm)、硫化鉛、及びセレン化鉛を含む幅広い微小ギャップ半導体に基づく光検出器を含む。赤外線光検出器は、量子井戸赤外線光検出器等の高バンドギャップ半導体の構造により作成することができる。非冷却式温度カメラは、周囲温度で動作するセンサ、又は小型温度制御素子を用いて周囲温度に近い温度で安定化するセンサを用いる。最新の非冷却式検出器は、通常、赤外線によって加熱される場合に、抵抗、電圧、又は電流の変化によって動作するセンサを用いる。これらの変化は、次いで、測定され、センサの動作温度での値と比較される。非冷却式検出器は、主に、焦電及び強誘電体材料又はマイクロボロメータ技術に基づいている。材料は、環境から熱的に絶縁され、電子的に読み取られる、温度依存性の高い特性を持つピクセルを形成するために用いられる。強誘電体検出器は、センサ材料の相転移温度の近くで動作し、ピクセル温度は、温度依存性の高い分極電荷として読み取られる。シリコンマイクロボロメータは、アモルファスシリコンの層、又はシリコンベースの走査型電子機器の上の窒化ケイ素ブリッジに浮遊する薄膜酸化バナジウム感知素子を含む。非冷却式焦点面センサアレイに用いられる材料は、とりわけ当業者によって識別可能な、アモルファスシリコン(a-Si)、酸化バナジウム(V)(VOx)、マンガン酸バリウムランタン(LBMO)、ジルコン酸チタン酸鉛(PZT)、ジルコン酸チタン酸鉛ランタン(PLZT)、タンタル酸鉛スカンジウム(PST)、チタン酸鉛ランタン(PLT)、チタン酸鉛(PT)、亜鉛ニオブ酸鉛(PZN)、チタン酸鉛ストロンチウム(PSrT)、チタン酸バリウムストロンチウム(BST)、チタン酸バリウム(BT)、スルホヨウ化アンチモン(SbSI)、及びフッ化ポリビニリデン(PVDF)を含む。市販の赤外線カメラの例は、とりわけ当業者によって識別可能な、FLIR及びFLUKE等の供給業者から入手可能なサーモグラフィカメラを含む。
【0041】
本明細書中で用いるような用語「低照度カメラ」とは、より多くの光子が光センサに当たることを可能にする大口径レンズ及び/又は感度が向上した光センサを有していてもよいカメラを指す。当業者が理解するように、レンズ口径は、通常、有効口径に対する焦点距離の比であるf値として指定される。レンズは、通常、f値を設定することができる「fストップ」マーク付きのセットを有する。f値が小さいほど、大きい開口部を意味し、これはより多くの光がフィルム又はイメージセンサに到達することを可能にする。写真用語「1fストップ」とは、f値の√2(約1.41)倍の変化を指し、これはひいては光強度の2倍の変化に対応する。例えば、カメラで用いられる絞りの一般的な範囲は、約f/2.8~f/22又はf/2~f/16で、6ストップをカバーしており、これは、例えば、約f/2~f/4、f/4~f/8、及びf/8~f/16、又は(低速レンズに対して)f/2.8~f/5.6、f/5.6~f/11、及びf/11~f/22の2ストップ毎のワイド、ミドル、ナローに分割されてもよい。高感度光センサは、通常、光を集めるための大きな面積を持つように大きなピクセルを有して設計されている。低照度カメラで用いられる光センサは、また、通常、光子を電子に変換するための高い量子効率を有している。高感度センサは、例えば、可視光スペクトル内の光波長の最適な光子変換のためのドープシリコンセンサを含む。一部の低照度カメラは、フレーム転送又はフルフレームセンサを用いるため、集光にフルピクセル領域を用いている。他の低照度カメラは、より大きな領域から光を集め、より小さな集光ピクセル領域に焦点を合わせるよう、全てのピクセルにわたって位置するマイクロレンズを含む。
【0042】
用語「暗視」とは、大きく、画像強調、アクティブ照明、及び熱画像測定の3つの主要カテゴリに分類することができる。例えば、画像増強装置とは、利用可能な光の強度を増加させて低照度条件下での使用を可能にするため、又は近赤外線又は短波赤外線等の非可視光源を可視に変換するための真空管装置を指してもよい。画像増強装置は、通常、光の光子を電子に変換し、電子を(例えば、マイクロチャネルプレートにより)増幅し、次いで、増幅された電子を光子に変換し直して表示することによって動作する。例えば、画像増強装置は暗視ゴーグル等の装置において用いられる。画像増強装置において、光が帯電した光電陰極板に当たると、電子が真空管を介して放出され、マイクロチャネルプレートに当たることで、画像スクリーンが光電陰極に当たり、人間の眼が見ることができる周波数の光と同じパターンで写真により照明される。アクティブ照明は、画像強調技術を近赤外線(NIR)又は短波赤外線(SWIR)帯域のアクティブ照明源と結合している。かかる技術の例は各種低照度カメラを含む。アクティブ赤外線暗視は、通常、700~1,000nmのスペクトル範囲(人間の眼の可視スペクトルのすぐ下)の赤外線照明をこの光に敏感なCCDカメラと組み合わせている。結果として生じる画像は、通常、モノクロで表示される。レーザ距離ゲーテッドイメージングは、照明及び撮像のために高出力パルス光源を利用するアクティブ暗視の別の形態である。距離ゲーティングは、カメラの検出器のシャッター速度と連動してレーザパルスを制御する技術である。ゲーテッドイメージング技術は、検出器が単一の光パルスから画像を取り込むシングルショットと、検出器が複数のショットからの光パルスを統合して画像を形成するマルチショットに分けることができる。
【0043】
眼科手術中、眼の構造の小さい大きさ及び繊細な性質のため、外科医は、通常、顕微鏡を用いて、手術を受けている患者の眼又は眼の一部の視覚化を拡大する。通常、過去には、眼科手術中、外科医は顕微鏡によって拡大されている眼又はその一部を見るために接眼鏡としても公知の接眼レンズを用いていた。眼科手術において、両眼視のために両眼で同時に見ることができる2つの接眼レンズを有する実体顕微鏡が通常用いられる。一部の眼科手術処置は行うのに数時間かかる可能性があり、従って、従前は、眼科手術中、眼科医は往々にして顕微鏡の双眼接眼レンズを何時間も続けて見る必要があった。
【0044】
ごく最近では、接眼レンズを用いる代わりに、又はそれに加えて、眼科手術中、デジタル顕微鏡法の開発により、顕微鏡によって拡大された眼又はその一部の画像を、外科医及び手術室内の他の人員が見ることができる画面に表示することが可能になった。顕微鏡接眼鏡を用いるのではなく、ディスプレイ画面を用いて眼科手術中に眼の構造を視覚化することの利点の中には、外科医にとって疲労の軽減及び快適さの向上が含まれる。加えて、顕微鏡接眼鏡とは異なり、ディスプレイは一度に複数の人が見ることができるため、ディスプレイの使用は手術室内の人員間での外科手術に関する教育に有用であり、コミュニケーションを向上させる。
【0045】
図3Bは、例示的な補助術野視覚化システムの別の実装を示す略図である。
図3Aのように、補助術野視覚化システムは、二次術野の視野の例示的な境界を示す破線305によって示される、二次術野の視野の画像を取得するために構成される補助カメラ304を含んでいる。補助ディスプレイ306は、補助術野カメラ304と電子通信307して、補助術野カメラ304から、二次術野の視野の画像を備える信号を受信し、信号を受信すると、二次術野の視野の画像を表示するために構成される。
図3Aに示す例示的な実装とは対照的に、
図3Bに示す例示的な実装は、破線303によって示す一次術野の画像を取り込むために構成されるデジタル一次カメラ308と電子通信307するデジタル外科用顕微鏡301を含む。
図3Bにおいて、ディスプレイ309は、一次カメラ308から信号を受信する。従って、
図3Bに示す例示的な補助術野視覚化システムは、一次術野303の拡大画像を表示するために用いられるディスプレイ309に対する別個の補助ディスプレイ306を有する。
【0046】
本明細書中に説明するシステムの様々な実装に適用可能なデジタル顕微鏡及びディスプレイ画面を利用する眼科手術視覚化プラットフォームは、一般に、顕微鏡による拡大下の眼の複数の光学ビューを受信及び取得することができるカメラ又は電荷結合素子(CCD)等の少なくとも1つの高解像度光センサを含む。当業者は、通常の可視光の波長外の波長に加えて可視波長の光を受信することもまた、本開示の適用範囲内であることを正しく理解するであろう。一般に、高解像度光センサは、次いで、結果として得られるリアルタイム高解像度ビデオ信号を送信し、これは直接又は非一時的コンピュータ読取可能媒体に含まれる命令を実行するプロセッサを介するかのどちらか一方で、少なくとも1つの高解像度ビデオディスプレイに送信される。幾つかの構成において、送信され、ディスプレイに表示される複数の高解像度光学ビューのため、視覚化プラットフォームのオペレータ又は他の者は、対象物又は組織のリアルタイム高精細度3次元視覚画像を見ることができる。
【0047】
本明細書中に説明するシステムを実装するのに適した例示的なリアルタイム視覚化プラットフォームは、米国特許第9,168,173号明細書、米国特許第8,339,447号明細書、及び米国特許第8,358,330号明細書に説明されているものを含み、その全てを引用して本明細書に組み込む。
【0048】
本明細書中で用いるような用語「ディスプレイ」とは、静止又はビデオ画像を表示することができる任意の装置を指す。好ましくは、本開示のディスプレイは、外科医に標準精細度(SD)信号よりも高いレベルの詳細を提供する高精細度(HD)静止画像及びビデオ画像又はビデオを表示する。幾つかの実装において、ディスプレイはかかるHD静止画及び画像を3次元(3D)で表示する。例示的なディスプレイは、HDモニタ、陰極線管、投影スクリーン、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオードディスプレイ、プラズマディスプレイパネル、発光ダイオード(LED)又は有機LED(OLED)、それらの3D同等物、等を含む。3DHDホログラフィックディスプレイシステムは、本開示の適用範囲内であると見なされる。
【0049】
眼科手術中の視覚化のためにディスプレイ画面を利用するデジタル顕微鏡のためのシステムの例は、デジタル支援硝子体網膜手術(DAVS)のためのプラットフォームであるAlcon Laboratories NGENUITY(登録商標)3D視覚化システム(Alcon,Inc.Corporation Switzerland,Hunenberg Switzerland)を含む。NGENUITY(登録商標)3D視覚化システムにより、網膜外科医は、外科用顕微鏡の接眼レンズを通して見る代わりに、高精細度3D画面で一次術野を視覚化することが可能になる。
【0050】
幾つかの実装において、本明細書中に説明する補助手術視野視覚化システムは、更に、プロセッサと、プロセッサによってアクセス可能な、本明細書中で「メモリ」とも称する非一時的コンピュータ読取可能媒体とを含んでいてもよく、ここで非一時的コンピュータ読取可能媒体は、補助術野カメラから、二次術野の視野の画像を含む信号を受信し、信号を受信すると、信号をディスプレイに送信するためのプロセッサによって実行可能な命令を含んでいる。
【0051】
例えば、
図3Cは、二次術野の視野の例示的な境界を示す破線305によって示される、二次術野の視野の画像を取得するために構成される補助カメラ304を含む、補助術野視覚化システムの別の例示的な実装を示す略図である。補助術野視覚化システムの例示的な実装は、プロセッサ310と、プロセッサ310によってアクセス可能なメモリ311とを含み、ここでメモリ311は、補助術野カメラ304から、二次術野305の視野の画像を含む信号を受信し、信号を受信すると、信号を補助ディスプレイ306に送信するためのプロセッサ310によって実行可能な命令を含んでいる。
【0052】
例えば、プロセッサ310は、UNIX(登録商標)又はUNIX(登録商標)ライクなオペレーティングシステム、ウィンドウズ(登録商標)ファミリーオペレーティングシステム、又は別の適切なオペレーティングシステム等のオペレーティングシステムを有する任意の適切なコンピュータを含んでいてもよい。非一時的コンピュータ読取可能媒体又はメモリ311は、とりわけ、当業者によって識別可能な、持続型及び揮発性媒体、固定及び取り外し可能媒体、並びに磁気及び半導体媒体を包含してもよい。加えて、当業者によって識別可能な任意の適切な通信インターフェースは、本明細書中に説明する補助術野視覚化システムのコンポーネント間の電子通信信号の送信及び受信のための手段として用いることができる。
【0053】
図3Dは、補助術野視覚化システムの更に別の例示的な実装を示す略図である。
図3Dは、二次術野の視野の例示的な境界を示す破線305によって示される、二次術野の視野の画像を取得するために構成される補助カメラ304を示している。補助術野視覚化システムの例示的な実装は、プロセッサ310と、プロセッサ310によってアクセス可能なメモリ311とを含み、ここでメモリ311は、補助術野カメラ304から、二次術野305の視野の画像を含む信号を受信し、信号を受信すると、信号をディスプレイ309に送信するためのプロセッサ310によって実行可能な命令を含んでいる。
図3Dに示す例示的な実装において、メモリ311は、また、硝子体網膜手術を受けている患者の眼の内部ビューを含む破線303によって示される一次術野の視野の画像を取得するために構成される一次術野カメラ308から、一次術野の視野の画像を含む信号を受信し、信号を受信すると、信号をディスプレイ309に送信するためのプロセッサ310によって実行可能な命令を含んでいる。従って、様々な実施において、二次術野の画像は、
図3A、
図3B、又は
図3Cに示すような補助ディスプレイ306に表示されてもよいか、又は代替として、例えば、2Dディスプレイ、又はNGENUITY(登録商標)システムで用いられるもの等の3Dディスプレイのどちらか一方の、一次術野画像と同じディスプレイ309に表示されてもよい。従って、
図3Dに示す例示的な補助術野視覚化システムは、幾つかの実装において、二次術野及び/又は一次術野の画像を表示するために構成される。幾つかの実装において、補助術野視覚化システムは、二次術野の視野及び一次術野の視野の画像を同時に表示するために構成される。
【0054】
幾つかの実装において、プロセッサ310及びメモリ311は、ディスプレイ309が、一次カメラ308から、一次術野の画像を含む信号を直接的又は間接的のどちらか一方で受信し、補助カメラ304から、二次術野の画像を含む信号を直接的又は間接的に受信するよう構成されてもよいという点で、任意であってもよい。
【0055】
幾つかの実装において、本明細書中に説明する補助術野視覚化システムは、更に、外科医又は外科チーム内の他の人等のユーザに対してアクセス可能な制御パネル又は他の適切なユーザインターフェースを含んでいてもよく、ここで制御パネルは、補助術野視覚化システムと電子通信し、ユーザがディスプレイ上に表示するべき一次手術視野及び/又は二次手術視野の画像の間で選択することを可能にするよう構成される。
【0056】
図4の例示的な略図に示すように、幾つかの実装において、一次手術視野401の画像及び二次手術視野402の画像は、「ピクチャーインピクチャー」編成としてディスプレイ403上に同時に表示されてもよい。例えば、ピクチャーインピクチャー編成は、NGENUITY(登録商標)システムにおいて用いられるようなディスプレイ上に表示されてもよい。当業者によって理解されるように、本明細書中で用いられるような用語「ピクチャーインピクチャー」とは、1つの画像が別の画像の挿入図として表示される編成を指す。様々な実装において、二次術野の画像は、一次術野の画像への挿入図として表示されてもよいか、又はその逆であってもよい。他の実装において、一次術野及び二次術野の同時に表示される画像は、単一のディスプレイ上で並べて又は他の適切な編成で表示されてもよい。様々な実装において、一次術野画像は、二次術野画像と略同じ大きさ、又はより大きいか若しくはより小さく表示されてもよい。
【0057】
図5は、本明細書中に説明するような補助術野視覚化システムに含まれる補助カメラの例示的な位置を示す略図である。
図5は、患者502を手術している眼科外科医501を示している。補助カメラ503は、外科用顕微鏡504のハウジング上に搭載されるか、又は取り付けられて示されている。パネルAは、外科用顕微鏡504を通して見るような一次術野505の視野の例示的な光路を示し、パネルBは、補助カメラ503を通して見るような二次術野506の視野の例示的な光路を示している。補助カメラ503は、
図5に示すものとは異なる位置に位置してもよい。補助カメラが二次術野の画像を取り込むことを可能にする他の適切な位置は、本開示の読解時に当業者によって識別可能である。
【0058】
上で開示した主題は、例示的であり、限定的ではなく見なされるべきであり、添付特許請求の範囲は、本開示の真の精神及び適用範囲内に入る全てのかかる修正、強化、及び他の実装を網羅することを目的としている。従って、法により許可される最大限の範囲で、本開示の適用範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の最も広範に許容される解釈によって特定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限又は限定すべきではない。
【0059】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は内容で明確に規定しない限り、複数の指示対象を含んでいる。用語「複数」とは、内容が明確に別段の指示をしない限り、2つ以上の指示対象を含む。別に定義しない限り、本明細書中で用いる全ての技術及び科学用語は、開示が関係する当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。