(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】測位システム及び測位方法
(51)【国際特許分類】
G01S 5/06 20060101AFI20240111BHJP
G01S 5/14 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
G01S5/06
G01S5/14
(21)【出願番号】P 2021180682
(22)【出願日】2021-11-04
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】318014809
【氏名又は名称】ALES株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】大澤 定夫
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】大浜 勇作
(72)【発明者】
【氏名】高橋 友樹
(72)【発明者】
【氏名】楊 一凡
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-003047(JP,A)
【文献】特開2019-186941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0075721(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00- 5/14
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位対象の装置と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置とを備え、前記測位対象の装置と前記複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果に基づくアルゴリズムを用いて前記測位対象の装置の位置座標を計算して測位する測位システムであって、
前記複数の基準装置はそれぞれ、
前記無線媒体を介して前記測位対象の装置から、測位管理識別情報を含む測位信号を受信する受信部を有し、
前記測位対象の装置は、
前記測位管理識別情報を記憶する記憶部と、
前記無線媒体を介して前記複数の基準装置のそれぞれに、前記測位管理識別情報を含む測位信号を送信する送信部と、を有
し、
前記測位管理識別情報は、前記測位の目的、前記測位の結果の用途及び前記測位の結果を使用する主体の少なくとも1つを識別可能な情報であり、
前記複数の基準装置はそれぞれ、前記測位対象の装置から受信した測位信号に含まれる前記測位管理識別情報に基づいて、複数の測位信号のうち当該基準装置の測位管理識別情報を含む特定の測位信号のみを受信する、
ことを特徴とする測位システム。
【請求項2】
測位対象の装置と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置とを備え、前記測位対象の装置と前記複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果に基づくアルゴリズムを用いて前記測位対象の装置の位置座標を計算して測位する測位システムであって、
前記複数の基準装置はそれぞれ、
前記無線媒体を介して前記測位対象の装置から、測位管理識別情報を含む測位信号を受信する受信部を有し、
前記測位対象の装置は、
前記測位管理識別情報を記憶する記憶部と、
前記無線媒体を介して前記複数の基準装置のそれぞれに、前記測位管理識別情報を含む測位信号を送信する送信部と、を有し、
前記複数の基準装置はそれぞれ、
前記基準装置に予め設定された測位管理識別情報を記憶する記憶部と、
前記測位管理識別情報を前記測位対象の装置に送信する送信部と、を有し、
前記測位対象の装置は、前記基準装置から前記測位管理識別情報を受信する受信部を有する、ことを特徴とする測位システム。
【請求項3】
請求項2の測位システムにおいて、
前記測位管理識別情報は、前記測位の目的、前記測位の結果の用途及び前記測位の結果を使用する主体の少なくとも1つを識別可能な情報である、
ことを特徴とする測位システム。
【請求項4】
請求項
2又は3の測位システムにおいて、
前記測位管理識別情報は、前記基準装置と前記測位対象の装置との間で近距離無線通信方式の認証を伴うペアリング処理の実行時に、前記基準装置から前記測位対象の装置に送信される、ことを特徴とする測位システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの測位システムにおいて、
前記無線媒体は、UWB(超広帯域)無線の電波である、ことを特徴とする測位システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかの測位システムにおいて、
前記複数の基準装置は、互いの時間同期又は時刻差が管理された4以上の基準装置であり、
前記測位対象の装置の位置座標は、前記測位対象の装置から送信された前記測位信号が前記複数の基準装置のそれぞれに受信された複数の時間差の情報と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報と、に基づいて計算される、ことを特徴とする測位システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの測位システムにおいて、
前記測位対象の装置は無線ICタグである、ことを特徴とする測位システム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの測位システムにおいて、
通信ネットワークを介して前記複数の基準装置のそれぞれと通信可能な管理装置を備える、ことを特徴とする測位システム。
【請求項9】
請求項8の測位システムにおいて、
前記複数の基準装置はそれぞれ、前記測位信号を送信した前記測位対象の装置の識別情報と、前記基準装置の識別情報と前記測位管理識別情報と前記測位信号の送受信結果の情報とを前記管理装置に送信する送信部を有し、
前記管理装置は、
前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報を記憶する記憶部と、
前記複数の基準装置のそれぞれから、前記測位対象の装置の識別情報と前記基準装置の識別情報と前記測位管理識別情報と前記測位信号の送受信結果の情報とを受信する受信部と、
前記測位管理識別情報が同じ複数の基準装置について、前記複数の基準装置のそれぞれから受信した前記測位対象の装置の識別情報と前記基準装置の識別情報と前記測位信号の送受信結果の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の位置座標を計算する計算部と、を有する、
ことを特徴とする測位システム。
【請求項10】
請求項8又は9の測位システムにおいて、
前記管理装置は、前記複数の基準装置のそれぞれに前記測位管理識別情報を送信する送信部を有し、
前記複数の基準装置はそれぞれ、
前記管理装置から前記通信ネットワークを介して前記測位管理識別情報を受信する受信部と、
前記管理装置から受信した前記測位管理識別情報に基づいて、前記測位管理識別情報の初期設定又は更新を行う情報処理部と、を有する、
ことを特徴とする測位システム。
【請求項11】
測位対象の装置と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置とを備え、前記測位対象の装置と前記複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果に基づくアルゴリズムを用いて前記測位対象の装置の位置座標を計算して測位する測位システムであって、
通信ネットワークを介して前記複数の基準装置のそれぞれと通信可能な管理装置を備え、
前記複数の基準装置はそれぞれ、
前記無線媒体を介して前記測位対象の装置から、測位管理識別情報を含む測位信号を受信する受信部を有し、
前記測位対象の装置は、
前記測位管理識別情報を記憶する記憶部と、
前記無線媒体を介して前記複数の基準装置のそれぞれに、前記測位管理識別情報を含む測位信号を送信する送信部と、を有し、
前記管理装置は、前記複数の基準装置のそれぞれに前記測位管理識別情報を送信する送信部を有し、
前記複数の基準装置はそれぞれ、
前記管理装置から前記通信ネットワークを介して前記測位管理識別情報を受信する受信部と、
前記管理装置から受信した前記測位管理識別情報に基づいて、前記測位管理識別情報の初期設定又は更新を行う情報処理部と、を有する、
ことを特徴とする測位システム。
【請求項12】
測位対象の装置と互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果に基づくアルゴリズムを用いて前記測位対象の装置の位置座標を計算して測位する測位方法であって、
前記測位対象の装置が、測位管理識別情報を記憶することと、
前記複数の基準装置がそれぞれ、前記無線媒体を介して前記測位対象の装置から、前記測位管理識別情報を含む測位信号を受信することと、
前記測位対象の装置が、前記無線媒体を介して前記複数の基準装置のそれぞれに、前記測位管理識別情報を含む測位信号を送信することと、
前記複数の基準装置がそれぞれ、前記測位対象の装置から受信した測位信号に含まれる前記測位管理識別情報に基づいて、複数の測位信号のうち当該基準装置の測位管理識別情報を含む特定の測位信号のみを受信することと、を含み、
前記測位管理識別情報は、前記測位の目的、前記測位の結果の用途及び前記測位の結果を使用する主体の少なくとも1つを識別可能な情報である、ことを特徴とする測位方法。
【請求項13】
測位対象の装置と互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果に基づくアルゴリズムを用いて前記測位対象の装置の位置座標を計算して測位する測位方法であって、
前記測位対象の装置が、測位管理識別情報を記憶することと、
前記複数の基準装置がそれぞれ、前記無線媒体を介して前記測位対象の装置から、前記測位管理識別情報を含む測位信号を受信することと、
前記測位対象の装置が、前記無線媒体を介して前記複数の基準装置のそれぞれに、前記測位管理識別情報を含む測位信号を送信することと、
前記複数の基準装置がそれぞれ、前記基準装置に予め設定された測位管理識別情報を記憶することと、
前記複数の基準装置がそれぞれ、前記測位管理識別情報を前記測位対象の装置に送信することと、
前記測位対象の装置が、前記基準装置から前記測位管理識別情報を受信することと、
を含む、ことを特徴とする測位方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位システム、管理装置、基準装置、測位対象の装置、測位方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、GNSS人工衛星からの電波が届きにくい屋内などのエリア内において、測位される測位対象の装置(以下「対象装置」ともいう。)と既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間の見通し内環境(LOS環境)で電波、音波、光などの無線媒体を送受信し、その送受信の結果に基づくアルゴリズムを用いて対象装置の座標位置を計算して測位するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記見通し内環境(LOS環境)での電波などの無線媒体の送受信を利用した従来のシステムにおいて、測位の目的、用途などを区別して対象装置の測位を管理したい、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る測位システムは、測位対象の装置と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置とを備え、前記測位対象の装置と前記複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果に基づくアルゴリズムを用いて前記測位対象の装置の位置座標を計算して測位する測位システムである。この測位システムの複数の基準装置はそれぞれ、前記無線媒体を介して前記測位対象の装置から、測位管理識別情報を含む測位信号を受信する受信部を有する。前記測位対象の装置は、前記測位管理識別情報を記憶する記憶部と、前記無線媒体を介して前記複数の基準装置のそれぞれに、前記測位管理識別情報を含む測位信号を送信する送信部と、を有する。
【0006】
本発明の他の態様に係る装置は、前記測位システムに用いることができる基準装置であり、前記無線媒体を介して前記測位対象の装置から、前記測位管理識別情報を含む測位信号を受信する受信部を有する。
【0007】
本発明の更に他の態様に係る装置は、前記測位システムに用いることができる測位対象の装置であり、前記測位管理識別情報を記憶する記憶部と、前記無線媒体を介して前記複数の基準装置のそれぞれに、前記測位管理識別情報を含む測位信号を送信する送信部と、を有する。
【0008】
本発明の更に他の態様に係る装置は、前記測位システムに用いることができる管理装置であり、通信ネットワークを介して前記複数の基準装置のそれぞれと通信可能な管理装置である。
【0009】
本発明の更に他の態様に係る方法は、測位対象の装置と互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置との間で無線媒体による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果に基づくアルゴリズムを用いて前記測位対象の装置の位置座標を計算して測位する測位方法である。この測位方法は、前記複数の基準装置がそれぞれ、前記測位対象の装置が、測位管理識別情報を記憶することと、前記複数の基準装置がそれぞれ、前記無線媒体を介して前記測位対象の装置から、前記測位管理識別情報を含む測位信号を受信することと、前記測位対象の装置が、前記無線媒体を介して前記複数の基準装置のそれぞれに、前記測位管理識別情報を含む測位信号を送信することと、を含む。
【0010】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、前記基準装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記無線媒体を介して前記測位対象の装置から、前記測位管理識別情報を含む測位信号を受信するためのプログラムコードを含む。
【0011】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、前記測位対象の装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記測位管理識別情報を記憶するためのプログラムコードと、前記無線媒体を介して前記複数の基準装置のそれぞれに、前記測位管理識別情報を含む測位信号を送信するためのプログラムコードと、を含む。
【0012】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、前記管理装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、通信ネットワークを介して前記複数の基準装置のそれぞれと通信するためのプログラムコードと、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報を記憶するためのプログラムコードと、前記複数の基準装置のそれぞれから、前記測位対象の装置の識別情報と前記基準装置の識別情報と前記測位管理識別情報と前記測位信号の送受信結果の情報とを受信するためのプログラムコードと、前記測位管理識別情報が同じ複数の基準装置について、前記複数の基準装置のそれぞれから受信した前記測位対象の装置の識別情報と前記基準装置の識別情報と前記測位信号の送受信結果の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の位置座標を計算するためのプログラムコードと、を含む。
【0013】
前記測位システム、前記測位対象の装置、前記基準装置、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記測位管理識別情報は、前記測位の目的、前記測位の結果の用途及び前記測位の結果を使用する主体の少なくとも1つを識別可能な情報であってもよい。
【0014】
前記測位システム、前記測位対象の装置、前記基準装置、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の基準装置はそれぞれ、前記基準装置に予め設定された測位管理識別情報を記憶する記憶部と、前記測位管理識別情報を前記測位対象の装置に送信する送信部と、を有し、前記測位対象の装置は、前記基準装置から前記測位管理識別情報を受信する受信部を有してもよい。ここで、前記測位管理識別情報は、前記基準装置と前記測位対象の装置との間で近距離無線通信方式の認証を伴うペアリング処理の実行時に、前記基準装置から前記測位対象の装置に送信されてもよい。
【0015】
前記測位システム、前記測位対象の装置、前記基準装置、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記無線媒体は、UWB(超広帯域)無線の電波であってもよい。
【0016】
前記測位システム、前記測位対象の装置、前記基準装置、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の基準装置は、互いの時間同期又は時刻差が管理された4以上の基準装置であり、前記測位対象の装置の位置座標は、前記測位対象の装置から送信された前記測位信号が前記複数の基準装置のそれぞれに受信された複数の時間差の情報と、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報と、に基づいて計算されてもよい。
【0017】
前記測位システム、前記測位対象の装置、前記基準装置、前記管理装置、前記測位方法及び前記プログラムにおいて、前記測位対象の装置は無線ICタグであってもよい。
【0018】
前記測位システムにおいて、通信ネットワークを介して前記複数の基準装置のそれぞれと通信可能な管理装置を備えてもよい。
【0019】
前記管理装置を備える測位システムにおいて、前記複数の基準装置はそれぞれ、前記測位信号を送信した前記測位対象の装置の識別情報と前記基準装置の識別情報と前記測位管理識別情報と前記測位信号の送受信結果の情報とを、前記管理装置に送信する送信部を有し、前記管理装置は、前記複数の基準装置のそれぞれの位置座標の情報を記憶する記憶部と、前記複数の基準装置のそれぞれから、前記測位対象の装置の識別情報と前記基準装置の識別情報と前記測位管理識別情報と前記測位信号の送受信結果の情報とを受信する受信部と、前記測位管理識別情報が同じ複数の基準装置について、前記複数の基準装置のそれぞれから受信した前記測位対象の装置の識別情報と前記基準装置の識別情報と前記測位信号の送受信結果の情報とに基づいて、前記測位対象の装置の位置座標を計算する計算部と、を有してもよい。
【0020】
前記管理装置を備える測位システムにおいて、前記管理装置は、前記複数の基準装置のそれぞれに前記測位管理識別情報を送信する送信部を有し、前記複数の基準装置はそれぞれ、前記管理装置から前記通信ネットワークを介して前記測位管理識別情報を受信する受信部と、前記管理装置から受信した前記測位管理識別情報に基づいて、前記測位管理識別情報の初期設定又は更新を行う情報処理部と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数の基準装置と測位対象の装置との間の無線媒体による測位信号の送受信を利用した測位を行う場合に、測位の目的、用途などを区別して測位対象の装置の測位を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す説明図。
【
図2】
図1の測位システムを構成する基準装置、対象装置及び管理装置の主要な構成の一例を示すブロック図。
【
図3】
図1の測位システムにおける測位管理識別情報(PurposeID)の送受信の一例を示す説明図。
【
図4】実施形態に係る測位システムの主要な構成の他の例を示す説明図。
【
図5】
図4の測位システムを構成する基準装置、対象装置及び管理装置の主要な構成の一例を示すブロック図。
【
図6】
図4の測位システムにおける測位管理識別情報(PurposeID)の送受信の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係る測位システムは、タグ(測位対象の装置)と、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数のアンカー(基準装置)との間で、見通し内環境(LOS環境)で超広帯域(UWB)の電波による測位信号の送受信を行い、その送受信の結果に基づくTDoA(到達時間差)方式のアルゴリズムを用いてタグの位置座標を計算するシステムである。
【0024】
本実施形態のTDoA方式の測位システムは、例えばGNSS人工衛星からの電波が届かない又は届きにくい屋内などのエリア内におけるタグの位置座標の測位に適する。本実施形態の測位システムは、タグなどの測位対象の装置の位置をリアルタイムに測位するリアルタイム位置測位システム(RTLS:Real Time Location System)の実現に適する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す説明図である。
図1において、測位システムは、複数の測位可能空間10A,10Bのそれぞれにおいて、互いに異なる既知の位置座標に設置された複数の基準装置(以下「アンカー」ともいう。)20A(1)~20A(4),20B(1)~20B(4)を備える。測位システムは、測位可能空間10A,10Bのそれぞれにおける測位対象の装置(以下「対象装置」という。)30A,30Bを更に備えてもよい。測位システムは、複数の基準装置20A(1)~20A(4),20B(1)~20B(4)のそれぞれと通信可能な管理装置40を更に備えてもよい。管理装置40は、対象装置30A,30Bと通信可能であってもよい。
【0026】
なお、
図1の例は、対象装置30A,30Bの位置をTDoA方式で測位する測位システムを示しているが、ToA(Time of Arrival)方式などの他の測位方式で対象装置30A,30Bの位置を測位してもよい。
【0027】
また、
図1の例では、測位可能空間10A,10Bの数が2の場合について示されているが、測位可能空間の数は単数であってもよいし、3以上であってもよい。また、各測位可能空間10A,10Bにおける基準装置20A(1)~20A(4),20B(1)~20B(4)の数はそれぞれ4であるが、測位可能空間における基準装置の数は5以上であってもよい。た、各測位可能空間10A,10Bにおける対象装置30A,30Bの数は1であるが、測位可能空間における対象装置の数は2以上であってもよい。
【0028】
また、以下の説明において、各測位可能空間10A,10Bに共通する事項について説明するときは測位可能空間10と記載する。また、各基準装置20A(1)~20A(4),20B(1)~20B(4)に共通する事項について説明するときは基準装置20と記載する。また、各対象装置30A,30Bについて記載するときときは対象装置30と記載する。
【0029】
複数の基準装置20は、建物などの内部の2次元又は3次元の測位可能空間10の互いに異なる複数の位置に設置される。複数の基準装置20の設置位置は、水平方向の位置及び高さの少なくとも1つが互いに異なる。設置位置は、測位可能空間10内のできるだけ離れた位置が好ましい。
【0030】
基準装置20の数は、例えば測位方式のアルゴリズムに応じて設定される。例えば、TDoA方式で3次元空間における対象装置30の位置を測位する場合、基準装置20の数は例えば4以上である。なお、2次元のエリアで対象装置30の位置を測位する場合は、基準装置20の数は3以上であってもよい。また、基準装置20の数は、測位方式によっては2以上であってもよい。
【0031】
複数の基準装置20はそれぞれ、互いの時間同期又は時刻差が管理されている基準装置である。例えば、複数の基準装置20は、装置間に適用可能な任意の同期方法により、互いに時間同期されている。複数の基準装置20はそれぞれ、時間同期された内部クロックを備える。
【0032】
複数の基準装置20のそれぞれが設置された既知の位置座標は、例えば測位可能空間10内のある点を基準にして基準装置20間で予め測定された相対的な位置座標である。複数の基準装置20の位置座標は、いずれか1つの基準装置20の位置を原点として予め測定された相対的な位置座標であってもよい。また、基準装置20がGNSSの人工衛星からの電波を受信できるエリアに配置されている場合は、基準装置20の既知の位置座標はGNSS受信機で測定された位置座標であってもよい。この場合の位置座標は、例えば、既知の緯度、経度及び高度であってもよいし、ある基準点を定義されたECEF(Earth-Centered Earth-Fixed)座標系における座標位置(X,Y,Z)であってもよい。
【0033】
対象装置30は、例えばIC無線タグ(以下「タグ」ともいう。)である。対象装置30は、タグのほか、台車、フォークリフト、各種の部品、又は、各種の製品であってもよい。対象装置30は、移動中の装置若しくは一時停止中の装置であってもよいし、又は、固定配置された装置であってもよい。
【0034】
対象装置30は、
図1中の実線の矢印で示すように、複数の基準装置20のそれぞれに対して所定の無線媒体による測位信号の送信を行う。測位信号の送受信に用いる無線媒体は、電波、音波、光などの無線媒体である。本実施形態では、無線媒体としてUWB(超広帯域)無線の電波を用いる。UWBは、広帯域(例えば、数GHz帯中の任意の周波数を中心とした数百MHzの帯域幅)の微弱電波での通信技術であり、IEEE802.15.4で定義されている。
【0035】
対象装置30は、複数の基準装置20のそれぞれとの間で所定の近距離無線通信方式により測位管理識別情報(例えば、PurposeID)などの情報を送受信することができるように構成してもよい。対象装置30と基準装置20との間の近距離無線通信方式としては、各種通信方式を用いることができ、例えばBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信方式を用いてもよい。
【0036】
管理装置40は、例えば、インターネットなどの通信ネットワーク45に構築されたクラウドコンピュータシステム(以下「クラウドシステム」ともいう。)である。管理装置40は、単一又は複数のコンピュータ装置で構成したサーバであってもよい。管理装置40と複数の基準装置20との間の通信は、例えば有線又は無線の通信回線を介して行うことができる。通信回線は公衆回線であってもよいし専用回線であってもよい。
【0037】
図2は、
図1の測位システムを構成する基準装置(アンカー)20、対象装置(タグ)30及び管理装置40の主要な構成の一例を示すブロック図である。
図2において、基準装置20は、測位信号の受信部としても機能するUWB受信部210と、記憶部230と、情報の送信部としても機能するNW通信部240とを備える。
【0038】
UWB受信部210は、例えばUWB無線通信モジュールで構成され、対象装置30からUWBの電波で送信(発信)された測位信号を、アンテナ211を介して受信する。また、UWB受信部210は、対象装置30から受信した測位信号に含まれる情報と、測位信号の受信時刻情報(Timestamp)とを出力する。
【0039】
対象装置30から送信される測位信号の送信フォーマットは、例えば、フレーム制御情報(Frame Control)、送信連続番号(Sequence Number)、対象装置30を識別可能な対象装置識別情報(TAG ID)、メッセージ識別情報(Message ID)、測位管理識別情報(Purpose ID)及びデータエラー修復用情報(CRC)を含む。
【0040】
測位管理識別情報(Purpose ID)は、例えば、測位の目的、測位の結果の用途及び測位の結果を使用する主体の少なくとも1つを識別可能な情報である。
【0041】
UWB受信部210は、例えば、複数の対象装置30からの測位信号を受信した場合、測位信号に含まれる測位管理識別情報(Purpose ID)に基づいて、複数の測位信号のうち自装置20の測位管理識別情報(Purpose ID)を含む特定の測位信号のみを受信し、その特定の測位信号のみ出力してもよい。
【0042】
前記測位管理識別情報(Purpose ID)は、対象装置30が様々な場所(例えば測位可能空間10)で使用される場合に、測位の目的、測位の結果の用途、測位の結果を使用する主体など識別する重要な情報である。例えば、対象装置30が移動する場合、その移動先の場所によって異なる測位管理識別情報(Purpose ID)に対応することが必要になることがある。
【0043】
ここで、例えば、基準装置20と対象装置30の所有者が法人企業などの同一の主体である場合、前記測位管理識別情報(Purpose ID)は当該主体によって基準装置(自装置)20に予め設定される。
【0044】
なお、対象装置30は通常、測位管理識別情報(Purpose ID)を含む測位信号をUWBで発信するだけであるが、その対象装置30で用いる測位管理識別情報(Purpose ID)を場所に応じて自動設定したり自動変更したりするができるようにしてもよい。例えば、後述のように、基準装置20と対象装置30との間で実行されるBLE無線通信のペアリング処理を利用して、対象装置30で使用する測位管理識別情報(Purpose ID)を場所に応じて自動設定及び自動変更してもよい。
【0045】
記憶部230は、UWB受信部210から出力された測位信号に含まれる各種情報と、測位信号の送受信結果の情報である測位信号の受信時刻情報(Timestamp)とを互いに関連付けて記憶する。
【0046】
NW通信部240は、有線又は無線の通信回線を介して管理装置40と通信する。NW通信部240は、記憶部230に記憶されている対象装置30の測位に関する測位関連情報を管理装置40に送信する。管理装置40に送信される測位関連情報の送信フォーマットは、例えば、対象装置識別情報(TAG ID)、基準装置(自装置)20を識別可能な基準装置識別情報(Anchor ID)、対象装置カウント情報(TAG Counter)、測位管理識別情報(Purpose ID)、対象装置30からの測位信号の受信時刻情報(Timestamp)及び電波強度及び絶対時刻情報(Epoch Time)を含む。
【0047】
図2において、対象装置30は、測位信号の送信部としても機能するUWB送信部310と、記憶部330とを備える。
【0048】
UWB送信部310は、例えばUWB無線通信モジュールで構成され、前述の測位管理識別情報(Purpose ID)を含む送信フォーマットを有する測位信号を、アンテナ311を介して送信(発信)する。測位信号は、例えば、パルス状の信号であり、所定の時間間隔で周期的に発信される。
【0049】
記憶部330は、UWB送信部310から送信する測位信号に含める情報を記憶する。また、記憶部330は、基準装置20に予め設定されている測位管理識別情報(Purpose ID)を記憶する。
【0050】
図2において、管理装置40は、送受信結果の情報の受信部としても機能するNW通信部410と、位置座標の計算部としても機能する測位計算部420と、記憶部430とを備える。
【0051】
NW通信部410は、有線又は無線の通信回線を介して複数の基準装置20と通信する。NW通信部410は、対象装置30の測位に関する測位関連情報を各基準装置20から受信する。測位関連情報の送信フォーマットは、例えば、対象装置識別情報(TAG ID)、基準装置(自装置)20を識別可能な基準装置識別情報(Anchor ID)、対象装置カウント情報(TAG Counter)、測位管理識別情報(Purpose ID)、対象装置30からの測位信号の受信時刻情報(Timestamp)及び電波強度及び絶対時刻情報(Epoch Time)を含む。
【0052】
測位計算部420は、各基準装置20から受信した測位関連情報に基づいて、測位管理識別情報(Purpose ID)毎に、且つ、対象装置30毎に、対象装置30の現在位置を計算して測位する。
【0053】
本実施形態のTDoA方式の測位システムにおいて、対象装置30の現在位置は、例えば次のアルゴリズムにより計算することができる。ここで、前述の
図1の測位可能空間10Aにおいて、対象装置30Aから送信された測位信号が4箇所の基準装置20A(1)、20A(2)、20A(3)、20A(4)に到達した受信時刻(Timestamp)をT1、T2、T3、T4とし、測位信号の伝搬速度をv[m/s]とし、対象装置30と基準装置20A(1)、20A(2)、20A(3)、20A(4)のそれぞれとの距離をD1、D2、D3、D4とし、基準装置間の測位信号の受信時間差をΔT12=T1-T2、ΔT13=T1-T3、ΔT14=T1-T4、ΔT23=T2-T3、ΔT24=T2-T4、ΔT34=T3-T4とすると、次の(1)~(6)の関係式が成立する。
【数1】
【0054】
上記関係式(1)~(6)を用いて未知の変数である距離D1、D2、D3、D4を求めることができる。この求めた距離D1、D2、D3、D4それぞれを半径とし、基準装置20A(1)、20A(2)、20A(3)、20A(4)の既知の位置座標を原点とした4つの球面の交点を求める任意のアルゴリズムにより、3次元の測位可能空間10Aにおける対象装置30の現在位置を数センチメール(例えば3~10cm)の精度で計算することができる。
【0055】
測位計算部420から出力される対象装置30の現在位置の測位結果は、例えば、管理装置40において、又は各種サーバや基準装置などにおいて、測位管理識別情報(Purpose ID)の各種サービスに利用することできる。
【0056】
記憶部430は、測位計算部420での計算に用いる測位関連情報、測位計算部420で測位管理識別情報(Purpose ID)毎に且つ対象装置30毎に計算された測位結果を記憶する。また、記憶部430は、複数の基準装置20のそれぞれに予め設定した測位管理識別情報(Purpose ID)を記憶する。
【0057】
図3は、
図1の測位システムにおける測位管理識別情報(PurposeID)の送受信の一例を示す説明図である。
図3の測位システムは、複数の基準装置20としてのアンカーA,B,C、Dと、対象装置30としてのタグαと、管理装置40としてのクラウドシステムとを備える。
【0058】
図3において、タグαには、PurposeIDとして8888が予め設定され、その設定情報が保存されている。このPurposeIDを用いてタグαの測位の目的、用途などを区別してタグαの測位を管理することができる。アンカーA,B,C,Dが設置されている測位可能空間にタグαが移動すると、所定のタイミングでUWBにより、PurposeID:8888を含む測位信号が発信されると、その測位信号がアンカーA,B,C,Dで受信される。アンカーA,B,C,Dはそれぞれ、タグαのTAG IDと各アンカーA,B,C,DのAnchor IDとPurposeID:8888とを含む測位関連情報を、クラウドシステムに送信する。クラウドシステムは、アンカーA,B,C,Dのそれぞれから受信した測位関連情報に基づいて、PurposeID:8888に対応する測位関連情報だけでタグαの測位を行う。
【0059】
図1~
図3の測位システムによれば、複数のアンカーA,B,C,Dとタグαとの間のUWBの電波による測位信号の送受信を利用した測位を行うことができ、その測位の目的、用途などを区別してタグαの測位を管理することができる。
【0060】
なお、本実施形態の測位システムにおいて、次の
図4~
図6に示すように、測位可能空間におけるUWB通信方式での測位信号の送受信に先だって、その測位信号で用いられる測位管理識別情報であるPurposeIDを基準装置(アンカー)20から対象装置(タグ)30に送信して設定してもよい。
【0061】
図4は、本発明の他の実施形態に係る測位システムの主要な構成の一例を示す説明図である。本実施形態では、
図4中の実線で示すUWB通信方式での測位信号の送受信に先だって、
図4中の破線で示すように、基準装置(アンカー)20と対象装置(タグ)30との間の近距離無線通信方式であるBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信方式の認証を伴うペアリング処理を実行している。このペアリング処理の実行時に、基準装置20から対象装置30にPurposeIDを送信し、そのPurposeIDを対象装置30に自動設定している。
【0062】
図5は、
図4の測位システムを構成する基準装置(アンカー)20、対象装置(タグ)30及び管理装置40の主要な構成の一例を示すブロック図である。なお、
図5において、前述の
図2と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0063】
図5において、基準装置20は、UWB受信部210、記憶部230及びNW通信部240のほか、測位管理識別情報(PurposeID)の送信部として機能するBLE通信部220を更に備える。
【0064】
BLE通信部220は、例えばBLE無線通信モジュールで構成され、アンテナ221を介して対象装置30と無線通信を行い、対象装置30との間で認証処理を含むBLE無線通信のペアリング処理を行う。また、BLE通信部220は、BLE無線通信のペアリング処理の際に又はペアリング処理の後に、基準装置(自装置)20に予め設定されている測位管理識別情報(Purpose ID)を対象装置30に送信する。
【0065】
また、
図5において、NW通信部240は、情報の受信部としても機能し、管理装置40が基準装置(自装置)20に設定した測位管理識別情報(Purpose ID)を、管理装置40から受信する。管理装置40から受信した測位管理識別情報(Purpose ID)は、初期設定として記憶部230に保存してもよいし、記憶部230に既に保存されている測位管理識別情報(Purpose ID)の更新に用いてもよい。
【0066】
また、記憶部230は、測位管理識別情報(Purpose ID)の記憶部としても機能し、基準装置(自装置)20に予め設定されている測位管理識別情報(Purpose ID)を記憶する。
【0067】
図5において、対象装置30は、UWB送信部310及び記憶部330のほか、測位管理識別情報(Purpose ID)の受信部としても機能するBLE通信部220を備える。
【0068】
BLE通信部320は、例えばBLE無線通信モジュールで構成され、アンテナ321を介して基準装置20と無線通信を行い、基準装置20との間で認証処理を含むBLE無線通信のペアリング処理を行う。また、BLE通信部320は、BLE無線通信のペアリング処理の際に又はペアリング処理の後に、基準装置20に予め設定されている測位管理識別情報(Purpose ID)を基準装置20から受信する。対象装置30は、基準装置20から受信した測位管理識別情報(Purpose ID)により、対象装置(自装置)30の位置が測位される空間である測位可能空間10を検知することができる。
【0069】
図5において、記憶部330は、BLE通信部320で受信した基準装置20に予め設定されている測位管理識別情報(Purpose ID)を記憶する。
【0070】
図5において、管理装置40のNW通信部410は、複数の基準装置20のそれぞれについて、任意の基準又は外部からの制御又は指示の情報に基づいて基準装置20に設定した測位管理識別情報(Purpose ID)を、対応する基準装置20に送信する。
【0071】
図6は、
図4の測位システムにおける測位管理識別情報(PurposeID)の送受信の一例を示す説明図である。
図6の測位システムは、複数の基準装置20としてのアンカーA,B,C、Dと、他の複数の基準装置20としてのアンカーW,X,Y,Zと、対象装置30としてのタグαと、管理装置40としてのクラウドシステムとを備える。なお、
図6の例において、複数の基準装置20であるアンカーA,B,C,Dと、他の複数の基準装置20であるアンカーW,X,Y,Zは、同一の測位可能空間に設置されていてもよいし、異なる測位可能空間に設置されていてもよい。
【0072】
図6において、アンカーA,B,C,Dが設置されている測位可能空間にタグαが移動すると、アンカーA,B,Cとタグαとの間でBLEペアリング処理が実行され、タグαにPurposeIDとして8888が自動設定される。その自動設定の後、所定のタイミングでUWBにより、PurposeID:8888を含む測位信号が発信されると、その測位信号がアンカーA,B,C,Dで受信される。アンカーA,B,C,Dはそれぞれ、タグαのTAG IDと各アンカーA,B,C,DのAnchor IDとPurposeID:8888とを含む測位関連情報を、クラウドシステムに送信する。クラウドシステムは、アンカーA,B,C,Dのそれぞれから受信した測位関連情報に基づいて、PurposeID:8888に対応する測位関連情報だけでタグαの測位を行う。
【0073】
その後、アンカーW,X,Y,Zが設置されている測位可能空間にタグαが移動すると、アンカーW,X,Y,Zとタグαとの間でBLEペアリング処理が実行され、タグαにPurposeIDとして7777が自動設定(自動変更)される。その自動設定の後、所定のタイミングでUWBにより、PurposeID:7777を含む測位信号が発信されると、その測位信号がアンカーW,X,Y,Zで受信される。アンカーW,X,Y,Zはそれぞれ、タグαのTAG IDと各アンカーW,X,Y,ZのAnchor IDとPurposeID:7777とを含む測位関連情報を、クラウドシステムに送信する。クラウドシステムは、アンカーW,X,Y,Zのそれぞれから受信した測位関連情報に基づいて、PurposeID:7777に対応する測位関連情報だけでタグαの測位を行う。
【0074】
図4~
図6の測位システムによれば、第1の用途などに対応したPurposeID:8888を用いる複数のアンカーA,B,C,Dが設置されているエリアではアンカーA,B,C,Dとタグαとの間のUWBの電波による測位信号の送受信を利用した測位を行うことができ、第1の用途などとは異なる第2の用途などに対応したPurposeID:7777を用いる複数のアンカーW,X,Y,Zが設置されているエリアではアンカーW,X,Y,Zとタグαとの間のUWBの電波による測位信号の送受信を利用した測位を行うことができる。このようにPurposeIDに基づいてタグαが位置するエリアでの測位の目的、用途などを区別してタグαの測位を管理することができる。
【0075】
例えば、
図4~
図6の測位システムによれば、公共目的などでスマートシティ側でPurposeIDを設定しているところが複数ある場合に、一般市民などのタグ所有者がそれぞれにPurposeIDを一致させて使っていくときに、BLEペアリングを使ってPurpose IDを交換して所定の目的、用途などに対応した測位が可能になる。
【0076】
以上、本実施形態によれば、複数の基準装置20と対象装置30との間のUWBの電波による測位信号の送受信を利用した測位を行う場合に、測位の目的、用途などを区別して対象装置30の測位を管理することができる。
【0077】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに測位システムの構成要素(例えば、基準装置、対象装置、管理装置)は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0078】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、通信モジュール、Node B、Node G、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0079】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0080】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0081】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0082】
10 :測位可能空間
20 :基準装置
30 :対象装置(測位対象の装置)
40 :管理装置
45 :通信ネットワーク
210 :UWB受信部
211 :アンテナ
220 :BLE通信部
221 :アンテナ
230 :記憶部
240 :NW通信部
310 :UWB送信部
311 :アンテナ
320 :BLE通信部
321 :アンテナ
330 :記憶部
410 :NW通信部
420 :測位計算部
430 :記憶部