(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】印刷可能なリチウム組成物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240111BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240111BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240111BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240111BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240111BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240111BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20240111BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240111BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M10/0562
H01M10/058
H01G11/50
H01G11/86
(21)【出願番号】P 2021500495
(86)(22)【出願日】2019-03-21
(86)【国際出願番号】 US2019023376
(87)【国際公開番号】W WO2019183361
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-05-06
(32)【優先日】2018-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520363317
【氏名又は名称】リベント ユーエスエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤコブレワ、マリナ
(72)【発明者】
【氏名】フィッチ、ケネス ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】グリーター、ジュニア、ウィリアム アーサー
(72)【発明者】
【氏名】シア、ジアン
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-349164(JP,A)
【文献】特表2016-521907(JP,A)
【文献】特表2008-503865(JP,A)
【文献】特開2010-160984(JP,A)
【文献】特開2010-160982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0239917(US,A1)
【文献】中国特許第104332657(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/139
H01M 4/62
H01M 4/38
H01M 4/587
H01M 10/0562
H01M 10/058
H01G 11/50
H01G 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下a)~d)を含むリチウム組成物であって、該リチウム組成物は、アノード導電性材料または担体材料に塗布または堆積することによりアノードを形成するために使用するか、又は固体電池で使用するためのモノリシックリチウム金属アノードを形成するために塗布または堆積されて使用するものであり:
a)安定化されたリチウム金属粉末;
b)ポリマーバインダー、該ポリマーバインダーは前記リチウム金属粉末と共存しえる
、ポリイソブチレン、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン-プロピレンターポリマー、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン及びポリ酢酸ビニルからなる群から選択される;
c)レオロジー改変剤、該レオロジー改変剤は
、前記リチウム金属粉末及びポリマーバインダーと共存しえる;及び
d)非環式炭化水素、環式炭化水素及び芳香族炭化水素からなる群から選択される溶媒、該溶媒は前記リチウム金属粉末及びポリマーバインダーと共存しえる、ただし、前記リチウム組成物は、前記a)~d)を溶液ベースにおいて:
a)5~50パーセントのリチウム金属粉末;
b)0.1~20パーセントのポリマーバインダー;
c)0.1~30パーセントのレオロジー改変剤;及び
d)50~95パーセントの溶媒
で含む。
【請求項2】
リチウム金属粉末が安定化されたリチウム金属粉末である、請求項1に記載のリチウム組成物。
【請求項3】
リチウム金属粉末がアルミニウム、ホウ素、ゲルマニウム、ケイ素、インジウム、及びマグネシウムらなる群から選択される金属により合金化されている、請求項1に記載のリチウム組成物。
【請求項4】
10s
-1せん断における粘度が20 cps~20,000 cpsである、請求項1に記載のリチウム組成物。
【請求項5】
レオロジー改変剤が導電性材料である、請求項1に記載のリチウム組成物。
【請求項6】
導電性材料がカーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びグラファイトからなる群から選択される、請求項5に記載のリチウム組成物。
【請求項7】
レオロジー改変剤が、容量を向上させ、電気化学的に活性なものである、請求項1に記載のリチウム組成物。
【請求項8】
容量を向上させるレオロジー改変剤がシリコンナノチューブ、グラファイト、ハードカーボン、及びグラフェンからなる群から選択される、請求項7に記載のリチウム組成物。
【請求項9】
レオロジー改変剤が、炭素質物質、ケイ素ナノチューブ、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、及び他のIIA族、IIIA族、IVB族、VB族、及びVIA族の元素/化合物ならびにそれらの混合物又は調合物からなる群から選択される、請求項1に記載のリチウム組成物。
【請求項10】
炭素質物質が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、硬質炭素及びグラフェンからなる群から選択される、請求項9に記載のリチウム組成物。
【請求項11】
ケイ素含有材料がシリコンナノチューブ及びヒュームドシリカからなる群から選択される、請求項9に記載のリチウム組成物。
【請求項12】
IVB族酸化物が二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムからなる群から選択される、請求項9に記載のリチウム組成物。
【請求項13】
IIIA族酸化物が酸化アルミニウムである、請求項9に記載のリチウム組成物。
【請求項14】
ポリマーバインダーが、1,000~8,000,000の分子量を有し
、ポリイソブチレン、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、及びエチレン-プロピレンコポリマーからなる群から選択される請求項1に記載のリチウム組成物。
【請求項15】
ポリマーバインダーがイソブチレン、及びスチレンブタジエンゴムからなる群から選択される請求項14に記載のリチウム組成物。
【請求項16】
ポリマーバインダーがエチレンプロピレンジエンモノマー
ゴムである請求項14に記載のリチウム組成物。
【請求項17】
請求項1に記載のリチウム組成物が適用されているアノード。
【請求項18】
請求項1に記載のリチウム組成物が適用されている、固体電池のためのモノリシックアノード。
【請求項19】
カソード、セパレータ、電解質及びアノードを含み、前記アノードには請求項1に記載のリチウム組成物が適用されている、電池。
【請求項20】
カソード、セパレータ、電解質及びアノードを含み、前記カソードには請求項1に記載のリチウム組成物が適用されている、電池。
【請求項21】
カソード、アノード及び固体電解質を含み、前記固体電解質には請求項1に記載のリチウム組成物が適用されている、ソリッドステートバッテリー。
【請求項22】
カソード、アノード及び固体電解質を含み、前記アノードには請求項1に記載のリチウム組成物が適用されている、固体電池。
【請求項23】
以下を含む、請求項1に記載のリチウム組成物を塗布する方法:
リチウム金属粉末、前記リチウム金属粉末と共存しえるポリマーバインダー、及び前記リチウム金属粉末及びポリマーバインダーと共存しえるレオロジー改変剤を含むリチウム組成物を提供すること;及び
基質上に前記リチウム組成物を堆積すること。
【請求項24】
リチウム組成物の堆積が、アノード、カソード、固体電解質、集電体、又は担体材料になされる、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
リチウム組成物の堆積が、10ミクロン~200ミクロンの厚さでなされる、請求項
23に記載の方法。
【請求項26】
リチウム組成物の堆積が、噴霧、押出、コーティング、印刷、塗装、浸漬及びスプレーからなる群から選択される方法によりなされる、請求項
23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
次の出願は、2019年3月20日に提出された米国出願特許第16/359,707号明細書(通常出願)、2019年3月20日に提出された米国出願特許第16/359,725号明細書(通常出願)、2019年3月20日に提出された米国出願特許第16/359,733号明細書(通常出願)、2018年3月22日に提出された米国仮出願特許第62/646,521号明細書、および2018年6月29日に提出された米国仮出願特許第62/691,819号明細書に対して優先権を主張し、参照により開示の全体が組み込まれる。
【0002】
本発明は、電池およびキャパシタを含む多種多様なエネルギー蓄積装置での使用に適した電極の形成に適する、印刷可能なリチウム組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムおよびリチウムイオンの二次電池または充電式電池は、携帯電話、カムコーダ、ラップトップコンピュータなどの特定の用途で使用されており、さらに最近では、電気自動車およびハイブリッド電気自動車などの大電力用途で使用されていることが認められる。これらの用途では、二次電池が可能な限り高い比容量を備えているが、その後の再充電および放電サイクルで高い比容量が維持されるように、やはり安全な動作条件および良好なサイクル性を提供することが好ましい。
【0004】
二次電池には様々な構造があるが、それぞれの構造には、正極(またはカソード)、負極(またはアノード)、カソードとアノードを分離するセパレータ、およびカソードとアノードとを電気化学的に連通している電解質が含まれる。二次リチウム電池に関しては、二次電池が放電されている場合、すなわち特定の用途に使用されている場合に、リチウムイオンは、電解質を通ってアノードからカソードに移動する。放電プロセス中に、電子はアノードから収集され、外部回路を介してカソードに送られる。二次電池が充電または再充電されている場合、リチウムイオンは、電解質を通ってカソードからアノードに移動する。
【0005】
歴史的にみると、二次リチウム電池は、TiS2、MoS2、MnO2およびV2O5などの高い比容量を有する脱リチウム化化合物をカソード活性物質として使用して製造されていた。これらのカソード活性物質は、リチウム金属アノードに結合された。二次電池が放電された場合、リチウムイオンは、電解質を通ってリチウム金属アノードからカソードに移動した。サイクルの際に、リチウム金属はデンドライトを発達させてしまい、それにより最終的に電池に危険な状態を引き起こした。その結果、これらのタイプの二次電池の生産は1990年代初頭に停止され、リチウムイオン電池が選択された。
【0006】
リチウムイオン電池は、通常、LiCoO2やLiNiO2などのリチウム金属酸化物を、炭素系材料などの活性アノード物質と結合したカソード活性物質として使用する。酸化ケイ素、ケイ素粒子などに基づく他の種類のアノードがあることが認識されている。炭素に基づくアノードシステムを利用する電池では、アノードでのリチウムデンドライトの形成が実質的に回避され、それにより電池がより安全になる。ただし、リチウムの量は電池の容量を決定し、リチウムはすべてカソードから供給される。活性物質は除去可能なリチウムを含まなければならないため、これはカソード活性物質の選択を制限する。さらに、充電中および過充電中に形成される、LixCoO2、LixNiO2に対応する脱リチウム化された製品は安定していない。特に、これらの脱リチウム化された製品は電解質と反応して熱を発生する傾向があり、安全性が懸念される。
【0007】
新しいリチウムイオンセルまたは電池は、最初は放電した状態である。リチウムイオンセルの最初の充電中に、リチウムはカソード物質からアノード活性物質に移動する。カソードからアノードに移動するリチウムは、グラファイトアノードの表面で電解質材料と反応し、アノード上にパッシベーション膜を形成する。グラファイトアノード上に形成されたパッシベーション膜は、固体電解質界面(SEI)である。その後の放電では、SEIの形成によって消費されたリチウムはカソードに戻されない。これにより、リチウムの一部がSEIの形成によって消費されたため、リチウムイオンセルの容量は初期充電容量と比較して小さくなる。最初のサイクルで利用可能なリチウムが部分的に消費されると、リチウムイオンセルの容量が減少する。この現象は不可逆容量と呼ばれ、リチウムイオン電池の容量の約10%から20%以上を消費することが知られている。したがって、リチウムイオンセルの初期充電後、リチウムイオンセルはその容量の約10%から20%以上を失う。
【0008】
解決策の1つは、安定化されたリチウム金属粉末を使用して、アノードを事前にリチウム化することである。例えば、リチウム粉末は、参照により開示の全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,567,474号明細書、第5,776,369号明細書、および第5,976,403号明細書等に記載されているように、二酸化炭素で金属粉末表面を不動態化することによって安定化させることができる。CO2で不動態化されたリチウム金属粉末は、リチウム金属と空気の反応により、リチウム金属含有量が減少する前の限られた期間、低水分レベルの空気中でのみ使用され得る。別の解決策は、例えば、米国特許第7,588,623号明細書、第8,021,496号明細書、第8,377,236号明細書、および米国特許公開第2017/0149052号明細書に記載されているような、リチウム金属粉末にフッ素、ワックス、リンまたはポリマーなどのコーティングを塗布することである。
【0009】
しかしながら、リチウムイオン電池および他のリチウム金属電池用の電極を提供するために、リチウム金属粉末を様々な基板に塗布するためのプロセスおよび組成物が依然として必要とされている。
【0010】
発明の概要
この目的のために、本発明は、印刷可能なリチウム組成物として電極を形成又は製造するためのもの、とくにアノード(anode)の形成又は製造のためのものを提供する。カソード(cathode)として前記印刷可能なリチウム組成物を含むものは、効率が向上している。前記組成物は安定性も改善され、十分な保存期間として少なくとも6ヵ月を有し、金属リチウム含量の損失に対して安定であり、それはとくに昇温条件下においてである。
【0011】
本発明の印刷可能なリチウム組成物は、リチウム金属粉末、ポリマーバインダーを含み、ポリマーバインダーは、リチウム粉末と相溶可能であり、レオロジー改変剤は、リチウム粉末およびポリマーバインダーと相溶可能である。印刷可能なリチウム組成物に溶媒を含むことができ、溶媒は、リチウム粉末と相溶可能であり、かつポリマーバインダーと相溶可能である(例えば、懸濁液を形成するか、または溶解することができる)。印刷可能なリチウム組成物の最初の調製中に、溶媒を成分として含むことができ、または印刷可能なリチウム組成物が調製された後に添加され得る。
【0012】
本発明はまた、アノードとして、前記印刷可能なリチウム組成物を極活性物質と組み合わせるために堆積又は塗布して形成されるもの、及びそのようなアノードを含む電池も提供する。
【0013】
本発明はまた、アノードとして、前記印刷可能なリチウム組成物を前記アノード又は基板に塗布又は適用して予備リチオ化されたもの、及びそのようなアノードを含む電池も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、温度及び圧力プロファイルを、SLMP/スチレンブタジエン/トルエンリチウム組成物の反応試験について示したものである。
【0015】
【
図2】
図2は、サイクルパフォーマンスとして、パウチ電池として印刷可能なリチウム由来のリチウム薄フィルムをアノードに用いたものとリチウム薄フィルムについてのものを示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の前述および他の態様は、ここで、本明細書に提供される説明および方法論に関してより詳細に説明される。本発明は異なる形態で実施することができ、本明細書に記載された実施形態に限定し解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、これらの実施形態は、この開示を徹底的、本発明の範囲を当業者に十分に理解させるものとして提供される。
【0017】
本明細書の本発明の説明で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の実施形態の説明および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形も含むことを意図する。また、本明細書で使用される場合、「および/または」は、関連する列挙されたアイテムの1つまたは複数のありとあらゆる可能な組み合わせを指し、包含する。
【0018】
化合物の量、用量、時間、温度などの測定可能な値に言及する場合、本明細書で使用される「約」という用語は、指定された量の20%、10%、5%、1%、0.5%、または0.1%の変動を包含することを意味する。本説明で使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、特段の記載がない限り、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の機能、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0020】
本明細書で使用される場合、本発明の組成物および方法に適用される用語「から本質的になる」(およびその文法的変形)は、追加の構成要素が、組成物/方法を物質的に変化させない限り、組成物/方法は、追加の構成要素を含み得ることを意味する。組成物/方法に適用される用語「物質的に変化させる」は、少なくとも約20%以上の組成物/方法の有効性の増加または減少に言及する。
【0021】
本明細書で言及されるすべての特許、特許出願、および出版物は、参照により全体が組み込まれる。用語に矛盾がある場合は、本明細書が優先される。
【0022】
本発明によれば、電極を形成するための印刷可能なリチウム組成物が提供される。一実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、電気化学的に活性であり、印刷可能なリチウム組成物をアノード導電性材料または担体材料(例えば、銅またはポリマーまたはセラミックフィルム)に塗布または堆積することによりアノードを形成するために使用され得る。
【0023】
別の実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、アノードまたはカソードを事前にリチウム化するために塗布または堆積され得る。事前にリチウム化されたアノードまたはカソードは、キャパシタまたは電池などのエネルギー蓄積装置に組み込み可能である。電池は、液体電解質から構成され得る。別の実施形態では、電池は、固体電解質から構成されて、固体電池を形成することができる。別の実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、固体電池で使用するためのモノリシックリチウム金属アノードを形成するために塗布または堆積されて使用され得る。
【0024】
さらに別の実施形態では、印刷可能リチウム組成物は、固体電池用の固体電解質を形成するように塗布または堆積されることができ、印刷可能リチウム組成物をポリマーまたはセラミック材料と結合して固体電解質を形成することを含む。
【0025】
本印刷可能なリチウム組成物は、リチウム金属粉末、1つまたは複数のポリマーバインダー、1つまたは複数のレオロジー改変剤を含み、さらに、溶媒または共溶媒を含むことができる。ポリマーバインダーは、リチウム金属粉末と相溶可能であり得る。レオロジー改変剤は、リチウム金属粉末およびポリマーバインダーと相溶性があり得る。溶媒は、リチウム金属粉末およびポリマーバインダーと相溶可能であり得る。
【0026】
リチウム金属粉末は、細かく分割された粉末の形態であり得る。リチウム金属粉末は、通常、約80ミクロン未満、しばしば約40ミクロン未満、時には約20ミクロン未満の平均粒子サイズを有する。リチウム金属粉末は、FMCから手に入れることができる自然発火性が低い安定化リチウム金属粉末(SLMP(登録商標))であり得る。リチウム金属粉末は、フッ素、ワックス、リンまたはポリマーまたはそれらの組み合わせである実質的に連続した層またはコーティングも含むことができる(米国特許第5,567,474号明細書、第5,776,369号明細書、および第5,976,403号明細書に開示されている)。リチウム金属粉末は、湿気および空気との反応性が大幅に低下する。
【0027】
リチウム金属粉末は、金属と合金にすることもできる。例えば、リチウム金属粉末は、I-VIII族元素と合金化され得る。IB族からの適切な元素は、例えば、銅、銀、または金を含み得る。IIB族からの適切な元素は、例えば、亜鉛、カドミウム、または水銀を含み得る。周期表のIIA族からの適切な元素は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、およびラジウムを含み得る。本発明で使用され得るIIIA族からの元素は、例えば、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、またはタリウムを含み得る。本発明で使用され得るIVA族からの元素は、例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、または鉛を含み得る。本発明で使用され得る第VA族からの元素は、例えば、窒素、リン、またはビスマスを含み得る。VIIIB族からの適切な元素は、例えば、ニッケル、パラジウム、または白金を含み得る。
【0028】
ポリマーバインダーは、リチウム金属粉末と相溶可能であるように選択される。「と相溶可能である(compatible with)」または「相溶性(compatibility)」は、ポリマーバインダーがリチウム金属粉末と激しく反応して安全上の問題を起こさないことを意図する。リチウム金属粉末とポリマーバインダーとは、反応してリチウム-ポリマー複合体を形成することができるが、そのような複合体は様々な温度で安定している必要がある。リチウムおよびポリマーバインダーの量(濃度)は、安定性と反応性に寄与することが認識されている。ポリマーバインダーは、約1,000~約8,000,000の分子量を有することができ、しばしば2,000,000~5,000,000の分子量を有する。適切なポリマーバインダーは、1つまたは複数のポリ(エチレンオキシド)、ポリスチレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、水素化ニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリラートゴム、ケイ素ゴム、ニトリルゴム、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、エチレンプロピレンジエンターモノマー、エチレンビニルアセテートコポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-プロピレンターポリマー、ポリブテンを含むことができる。バインダーは、ワックスであり得る。
【0029】
レオロジー改変剤は、リチウム金属粉末およびポリマーバインダーと相溶可能であるように選択される。レオロジー改変剤は、剪断条件下での粘度や流動などのレオロジー特性を提供する。レオロジー改変剤はまた、レオロジー改変剤の選択に応じて、導電性、改善された容量、および/または改善された安定性/安全性を提供することができる。このために、レオロジー改変剤は、異なる特性を提供するため、または添加剤特性を提供するよう、2つ以上の化合物の組み合わせであり得る。例示的なレオロジー改変剤は、1つまたは複数のカーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、ケイ素ナノチューブ、グラファイト、硬質炭素および混合物、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、およびその他のIIA族、IIIA族、IVB族、VB族、VIA族の元素/化合物、およびそれらの混合物または調合物を含み得る。リチウムイオン伝導率を高めることを目的とした他の添加剤、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、硝酸リチウム(LiNO3)、リチウムビス(シュウ酸塩)ホウ酸塩(LiBOB)、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)などの電気化学装置電解質塩が使用可能である。
【0030】
リチウムと相溶可能である溶媒は、非環式炭化水素、環式炭化水素、芳香族炭化水素、対称エーテル、非対称エーテル、環式エーテル、アルカン、スルホン、鉱油、およびそれらの混合物、調合物または共溶媒を含むことができる。適切な非環式および環式炭化水素の例には、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンなどが含まれる。適切な芳香族炭化水素の例には、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、イソプロピルベンゼン(クメン)などが含まれる。適切な対称、非対称および環状エーテルの例には、ジ-n-ブチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、グライムなどが含まれる。Shell Sol(登録商標)(Shell Chemicals)またはIsopar(登録商標)(Exxon)など、沸点範囲が調整された市販のイソパラフィン系合成炭化水素溶媒も同様に適する。
【0031】
ポリマーバインダーおよび溶媒は、互いに、およびリチウム金属粉末と相溶可能であるように選択される。一般に、バインダーまたは溶媒は、リチウム金属粉末と反応しないか、または何らかの反応が最小限に維持され、激しい反応が回避されるような量であるべきである。バインダーおよび溶媒は、印刷可能なリチウム組成物が作製され、使用される温度で互いに相溶可能であるべきである。好ましくは、溶媒(または共溶媒)は、印刷可能なリチウム組成物(例えば、スラリー形態)から容易に蒸発して、塗布後に印刷可能なリチウム組成物(スラリー)の乾燥を提供するのに十分な揮発性を有する。
【0032】
印刷可能なリチウム組成物の成分は、高濃度の固体を有するようにスラリーまたはペーストとして一緒に混合され得る。したがって、スラリー/ペーストは、堆積または塗布に先立ち、必ずしもすべての溶媒が加えられるわけではない濃縮物の形態であり得る。一実施形態において、リチウム金属粉末は、塗布または堆積されると、実質的に均一な分布のリチウム金属粉末が堆積または塗布されるように、溶媒中に均一に懸濁されるべきである。乾燥したリチウム粉末は、強い剪断力を加えるために激しくかき混ぜ、または撹拌することなどによって分散させることができる。
【0033】
別の実施形態では、ポリマーバインダー、レオロジー改変剤、コーティング試薬、およびリチウム金属粉末のための他の潜在的な添加剤の混合物が形成され、導入されて、リチウム融点より高い温度での分散中に、または参照により開示の全体が組み込まれる米国特許第7,588,623号に記載されているように、リチウム分散が冷却した後のより低い温度での分散中に、リチウム液滴に接触させることができる。このように改変されたリチウム金属は、結晶形態で、または選択した溶媒中の溶液形態で導入され得る。異なるプロセスパラメータの組み合わせが使用されて、特定の用途のための特定のコーティングおよびリチウム粉末特性を達成できることを理解されたい。
【0034】
従来の事前リチウム化の表面処理では、バインダー含有量が非常に低く、リチウムが非常に高い組成物が必要であり、例えば、参照により開示の全体が組み込まれる米国特許第9,649,688号明細書を参照されたい。しかしながら、本発明による印刷可能なリチウム組成物の実施形態は、乾燥基準で最大20パーセントを含む、より高いバインダー比に適合することができる。粘度および流動などの印刷可能なリチウム組成物の様々な特性は、リチウムの電気化学的活性を失うことなく、バインダーと改変剤の含有量を最大50%乾燥基準まで増やすことにより改変可能である。バインダー含有量を増加させると、印刷可能なリチウム組成物の装填(loading)および印刷中の流動が容易になる。例えば、一実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、約70%のリチウム金属粉末ならびに約30%のポリマーバインダーおよびレオロジー改変剤を含む。別の実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、約85%のリチウム金属粉末ならびに約15%のポリマーバインダーおよびレオロジー改変剤を含み得る。
【0035】
印刷可能なリチウム組成物の重要な態様は、懸濁液のレオロジー安定性である。金属リチウムは0.534g/ccの低密度であるため、溶媒懸濁液からリチウム粉末が分離するのを防ぐことは困難である。リチウム金属粉末の装填、ポリマーバインダーおよび従来の改変剤のタイプおよび量を選択することにより、粘度およびレオロジーを調整して、本発明の安定的懸濁液を生成することができる。好ましい実施形態は、90日を超えると分離を示さない。これは、1×104cps~1×107cpsの範囲の非常に高いゼロ剪粘度を有する組成物を設計することによって達成され得る。しかしながら、組成物が剪断に曝された場合に、特許請求された範囲の粘度特性を示すことは、塗布プロセスにとって非常に重要である。
【0036】
結果として得られる印刷可能なリチウム組成物は、好ましくは、10s-1で約20~約20,000cpsの粘度を有し、しばしば約100~約10,000cpsの粘度を有する。そのような粘度では、印刷可能なリチウム組成物は流動可能な懸濁液またはゲルである。印刷可能なリチウム組成物は、好ましくは、室温での貯蔵寿命がより長く、最大60℃、しばしば最大120℃、そして時には最大180℃の温度での金属リチウム損失に対して安定的である。印刷可能なリチウム組成物は、時間の経過とともに多少分離する可能性があるが、穏やかな撹拌および/または加熱により、懸濁液に戻すことがでる。
【0037】
一実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、溶液ベースで、約5~50パーセントのリチウム金属粉末、約0.1~20パーセントのポリマーバインダー、約0.1~30パーセントのレオロジー改変剤および約50~95パーセントの溶媒を含む。一実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、溶液ベースで、約15~25パーセントのリチウム金属粉末、分子量4,700,000を有する、約0.3~0.6パーセントのポリマーバインダー、約0.5~0.9パーセントのレオロジー改変剤および約75~85パーセントの溶媒を含む。典型的には、印刷可能なリチウム組成物は、プレスする前に約10ミクロン~200ミクロンの厚さに塗布または堆積される。プレス後、厚さは約1~50ミクロンに低減され得る。プレス技術の例は、例えば、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第3,721,113号明細書および第6,232,014号明細書に記載されている。
【0038】
一実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、集電体上の活性アノード材料に堆積または塗布されて、すなわち、事前にリチウム化されたアノードを形成する。適切な活性アノード材料には、グラファイトおよび他の炭素系材料、スズ/コバルト、スズ/コバルト/炭素、ケイ素カーボンなどの合金、様々なケイ素/スズ系複合化合物、ゲルマニウム系複合材料、チタン系複合材料、元素シリコンおよびゲルマニウムが含まれる。アノード材料は、箔、メッシュまたは発泡体であり得る。塗布(application)は、噴霧、押し出し、コーティング、印刷、塗装(painting)、浸漬、および噴霧によるものであり得、本願とともに係属している米国出願No.
(Attorney Matter 073396.1183)に記載のとおりである。当該出願は本願とともに出願され、その開示内容の全体が本明細書に組み入れられるものである。
【0039】
印刷可能なリチウム組成物を使用して事前にリチウム化されたアノードは、様々なタイプの電池に組み込むことができる。例えば、事前にリチウム化されたアノードは、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,851,083号明細書、第8,088,509号明細書、第8,133,612号明細書、第8,276,695号明細書、および第9,941,505号明細書に開示されているように電池に組み込むことができる。アノード材料上に印刷可能なリチウム組成物を印刷することは、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,906,233号に開示されているように、スミア塗布リチウムの代替となり得る。
【0040】
一実施形態では、活性アノード材料および印刷可能なリチウム組成物が一緒に提供され、集電体(例えば、銅、ニッケルなど)上に押し出される。例えば、活性アノード材料および印刷可能なリチウム組成物が混合され、共押出しされ得る。活性アノード材料の例には、グラファイト、グラファイト-SiO、グラファイト-SnO、SiO、硬質炭素および他のリチウムイオン電池およびリチウムイオンキャパシタアノード材料が含まれる。別の実施形態では、活性アノード材料および印刷可能なリチウム組成物は、共押出しされて、集電体上に印刷可能なリチウム組成物の層を形成する。上記の押し出し技術を含む印刷可能なリチウム組成物の堆積は、多種多様なパターン(例えば、ドット、ストライプ)、厚さ、幅などとして堆積することを含み得る。例えば、印刷可能なリチウム組成物および活性アノード材料は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国公開特許第2014/0186519号明細書に記載されているように、一連のストライプとして堆積され得る。ストライプは、リチウム化中の活性アノード材料を膨張させる3D構造を形成する。例えば、ケイ素は、リチウム化中に300~400%膨張し得る。このような膨張は、アノードおよびその性能に潜在的に悪影響を及ぼす。印刷可能なリチウムをケイ素アノードストライプ間に交互のパターンとしてY平面に薄いストライプとして堆積させることにより、シリコンアノード材料がX平面で膨張し、電気化学的研磨および粒子の電気的接触の喪失を軽減できる。したがって、印刷方法は、膨張用の緩衝材を提供できる。アノードを形成するために、印刷可能なリチウム配合物が使用される別の例では、カソードおよびセパレータと共に層状に共押出しされることで固体電池となる。
【0041】
一実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、基板をローラーでコーティングすることにより、基板または事前に成形されたアノードに塗布され得る。一例は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第4,948,635号明細書に記載されているようなグラビアコーティング装置である。この例では、一対の離隔配置されたローラーが、基板がグラビアローラーに向かって進むときに基板を支持する。グラビアローラーにコーティング材料を塗布するためにノズルが利用され、同時にグラビアローラーから余分なコーティングを除去するためにドクターブレードが利用される。グラビアローラーは、基板がグラビアローラーを通って移動するときに基板と接触して、インク組成物を塗布する。グラビアローラーは、基板の表面上に、例えば線または点などの様々なパターンを印刷するように設計され得る。
【0042】
別の実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、印刷可能なリチウム組成物を押出機から基板上に押し出すことにより、基板上に塗布され得る。押出機の一例は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,318,600号明細書に記載されている。そのような実施形態では、高圧により、印刷可能なリチウム組成物が押し出しノズルを通って押し出されて、基板の露出した表面領域をコーティングする。
【0043】
別の実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、印刷可能なリチウム組成物を基板上に印刷することにより、基板に塗布され得る。スロットダイ印刷ヘッドが使用されて、印刷可能なリチウム組成物のモノリシック、ストライプ、または他のパターンを基板上に印刷できる。スロットダイ印刷ヘッドを利用する互換性のあるプリンタの一例は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,494,518号明細書に記載されている。
【0044】
別の実施形態では、従来の炭素アノードは、印刷可能なリチウム組成物を炭素アノード上に堆積させることによって事前にリチウム化され得る。これにより、リチウムが炭素内に挿入された場合に電池の初期充電時に、いくらかのリチウムおよび電池の電解質が消費されるために不可逆性が発生し、初期容量が失われることにつながるという炭素アノードに関連する問題を未然に防ぐ。
【0045】
一実施形態では、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,837,659号明細書に記載されているように、印刷可能なリチウム組成物を使用し、アノードを事前にリチウム化することができる。例えば、この方法は、事前に製造され/事前成形されたアノードの表面に隣接して印刷可能なリチウム組成物の層を堆積するステップを含む。事前に製造された電極は、電気活性材料を含む。特定の変形例では、印刷可能なリチウム組成物は、堆積プロセスを介して担体/基板上に塗布され得る。印刷可能なリチウム組成物の層が堆積され得る担体基板は、ポリマーフィルム(例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリポリテトラフルオロエチレン)、セラミックフィルム、銅箔、ニッケル箔、または限定しない例による金属発泡体からなる群から選択され得る。次に、基板または事前に製造されたアノード上の印刷可能なリチウム組成物層に熱を加えることができる。基板または予め製造されたアノード上の印刷可能なリチウム組成物層はともに、圧力下でさらに圧縮され得る。加熱、および選択的な加圧により、リチウムが基板またはアノードの表面に移動することを促進する。事前に製造されたアノードに移動する場合に、特に予め製造されたアノードがグラファイトを含む場合、圧力および熱は、機械的リチウム化をもたらす可能性がある。このようにして、リチウムは電極に移動し、好ましい熱力学に起因して、活性物質に組み込まれる。
【0046】
一実施形態では、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第2018/0269471号明細書に記載されているように、印刷可能なリチウム組成物がアノード内に組み込まれ得る。例えば、アノードは、活性アノード組成物および印刷可能なリチウム組成物、ならびに存在する場合は任意の導電性粉末を含むことができる。追加または代替実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、電極の表面に沿って配置される。例えば、アノードは、活性アノード組成物を有する活性層と、活性層の表面上の印刷可能なリチウム組成物源層とを含むことができる。別の構成では、印刷可能なリチウム組成物源層は、活性層と集電体との間にある。また、いくつかの実施形態では、アノードは、活性層の両面に印刷可能なリチウム組成物源層を含むことができる。
【0047】
一実施形態では、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第2018/0013126号明細書に記載されているように、印刷可能なリチウム組成物が三次元電極構造内に組み込まれ得る。例えば、印刷可能なリチウム組成物は、三次元多孔性アノード、多孔性集電体あるいは多孔性ポリマーまたはセラミックフィルムに組み込むができ、印刷可能なリチウム組成物は、その中に堆積され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、印刷可能なリチウム組成物で事前にリチウム化された電極は、リチウムで事前に装填された電極を備えたセルに組み立て可能である。セパレータは、それぞれの電極の間に配置され得る。電流は、電極間に流れることが可能である。例えば、本発明の印刷可能なリチウム組成物で予めリチウム化されたアノードは、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第6,706,447号に記載されているような二次電池に形成され得る。
【0049】
カソードは、典型的には炭素質材料およびバインダーポリマーに結合される活性物質から形成される。カソードに使用される活性物質は、好ましくは、リチウム化できる材料である。好ましくは、MnO2、V2O5、MoS2、金属フッ化物またはそれらの混合物などの脱リチウム化物質、硫黄および硫黄複合物質を活性物質として使用することができる。しかしながら、MがNi、CoまたはMnであるLiMn2O4およびLiMO2など、さらにリチウム化され得るリチウム化物質もまた使用され得る。脱リチウム化活性物質は一般に、比容量が高く、コストが低く、幅広い選択肢のカソード材料を有し、この構成では、リチウム化活性物質を含む従来の二次電池よりも増加したエネルギーおよび電力を供給できるので、好ましい。
【0050】
一実施形態では、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第2017/0301485号明細書に記載されているように、印刷可能なリチウム組成物が使用されて、リチウムイオンキャパシタ内のアノードなど、キャパシタを事前にリチウム化することができる。例えば、アノードは、硬質炭素、軟質炭素またはグラファイトを使用して構築することができる。次に、アノードは、アノードの上面に印刷可能なリチウム組成物層がコーティングされる前または最中に、集電体に取り付けられ得る。印刷可能なリチウム組成物がやはり使用されて、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,711,297号明細書に記載されているように、リチウムイオンキャパシタなどエネルギー蓄積装置を事前にリチウム化することができる。
【0051】
一実施形態では、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第2018/0241079号明細書に記載されているように、印刷可能なリチウム組成物が使用されて、ハイブリッド電池/キャパシタを事前にリチウム化することができる。「ハイブリッド電極」という用語は、電池の電極材料およびキャパシタの電極材料の両方を含む電極を指す。一実施形態では、ハイブリッドカソードは、電池カソード材料などのより高エネルギーの材料と、キャパシタカソード材料などの高出力材料との混合物を含むことができる。例えば、リチウムイオン電池のカソード材料は、ウルトラキャパシタまたはスーパーキャパシタのカソード材料と結合され得る。ハイブリッドリチウムイオンセルアセンブリを完成させるには、電極間のポリオレフィンセパレータと共に、ハイブリッドカソードをアノード電極に対して配置することができ、例えばハウジングなどのエネルギー蓄積装置容器などの密閉されたパッケージ内に配置する。電極スタックは、リチウムイオン電解質塩を含み、任意で電解質添加剤を含む溶媒などの適切な電解質で満たされ、その電解質に接触する。エネルギー蓄積装置のパッケージは、密封され得る。
【0052】
ハイブリッド化したカソードと組み合わせて使用されるアノードは、元素リチウムなどの元素金属を含むことができる。事前リチウム化の方法は、印刷可能なリチウム組成物を電極配合物に直接添加することである。この印刷可能なリチウム組成物は、電極配合物に均一に統合され、乾式プロセスで電極膜を形成するために使用可能であり、次いで、金属箔などの集電体にラミネートされて、アノードなどの電極を形成できる。印刷可能なリチウム組成物は、乾式電極に積層する前に集電体に塗布することもできる。本明細書の実施形態は、均質な、いくつかの実施形態では乾式の、および/または粒子状の材料を、アノードおよびハイブリッド化されたカソードの原料として使用することができる。本明細書のいくつかの実施形態は、各電極上の2つの別個の層(「電池材料」層および「キャパシタ材料」層など)の必要性を回避でき、製造の複雑さ、および追加の製造コストを導入する必要性を回避できる。追加の実施形態では、プリドーブ型電極はハイブリッドカソードである。リチウムを有するエネルギー蓄積装置に関して本明細書で説明される元素金属および関連する概念は、他のエネルギー蓄積装置および他の金属を用いて実施され得ることを理解されたい。
【0053】
別の実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、固体電池のアノードまたはカソードを事前にリチウム化するために塗布または堆積され得る。例えば、印刷可能なリチウム組成物を使用して、米国特許第8,252,438号明細書および第9,893,379号明細書に記載され、参照により全体が本明細書に組み込まれる固体電池を含む、固体電池で使用するためのモノリシックリチウム金属アノードを形成することができる。
【0054】
別の実施形態では、印刷可能なリチウム組成物は、固体電池で使用するための固体電解質を形成するために、またはその固体電解質と組み合わせて使用することができる。例えば、印刷可能なリチウム組成物は、参照により全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,914,930号明細書に記載されているように、様々な固体電解質上に堆積させることができる。固体二次電池の一例は、リチウムを電気化学的に吸収および放出することができる正極、リチウムを電気化学的に吸収および放出することができる負極を含むことができ、負極は、集電体上に担持されている、活性物質を含む活性物質層、および非水電解質含む。方法は、印刷可能なリチウム組成物を負極の活性物質層の表面に接触させることにより、リチウムを負極の活性物質と反応させるステップと、その後、負極を正極と組み合わせて電極アセンブリを形成するステップとを含む。
【0055】
以下の例は、本発明の単なる例示であり、それに限定するものではない。
【0056】
例
例1
10gのスチレンブタジエンゴム溶液(S-SBR Europrene Sol R 72613)を21℃で12時間撹拌することにより、90gのトルエン(99%無水、Sigma Aldrich)に溶解する。トルエン(溶媒)中の6gの10wt%SBR(ポリマーバインダー)を0.1gのカーボンブラック(Timcal Super P)(レオロジー改変剤)および16gのトルエンと結合させ、Thinky ARE 250遊星型ミキサーで2000rpmで6分間分散させる。20~200μmのポリマーコーティングおよび20μmのd50を有する9.3gの安定化リチウム金属粉末(SLMP(登録商標)、FMC Lithium Corp.)をこの懸濁液に加え、Thinkyミキサー内で1000rpmで3分間分散させる。印刷可能なリチウムは、180μmの開口ステンレスメッシュを通してろ過される。次に、印刷可能なリチウム懸濁液を銅の集電体に湿式厚さ2mil(約50μm)でドクターブレードでコーティングする。
図2は、アノードとしての薄いリチウムフィルム対市販の薄いリチウム箔から生成された、印刷可能なリチウムによるパウチセルのサイクル性能を示すプロットである。
【0057】
例2
分子量135,000のエチレンプロピレンジエンターポリマー(EPDM)(Dow Nordel IP 4725P)10gを、p-キシレン90g(無水99%、Sigma Aldrich)に21℃で12時間撹拌し溶解する。p-キシレン(溶媒)中の6gの10wt%EPDM(ポリマーバインダー)を0.1gのTiO2(Evonik Industries)(レオロジー改変剤)および16gのトルエンと結合させ、Thinky ARE 250遊星型ミキサーで2000rpmで6分間分散させる。20~200μmのポリマーコーティングおよび20μmのd50を有する9.3gの安定化リチウム金属粉末(SLMP(登録商標)、FMC Lithium Corp.)をこの懸濁液に加え、Thinkyミキサー内で1000rpmで3分間分散させる。印刷可能なリチウムは、180μmの開口ステンレスメッシュを通してろ過される。次に、印刷可能なリチウム組成物を銅の集電体上に湿式厚さ2mil(約50μm)でドクターブレードでコーティングする。
【0058】
貯蔵寿命の安定性
印刷可能なリチウム成分は、室温での長い貯蔵寿命の間の化学的安定性、および輸送中や乾燥プロセス中など、高温でのより短い期間の安定性を保証するように選択されなければならない。印刷可能なリチウム組成物の安定性は、熱量測定を使用してテストされた。SLMP1.5gを体積10mlのハステロイARCボンベサンプル容器に追加した。4%のSBRバインダー溶液2.4gを容器に加えた。容器には24オームの抵抗ヒータおよび熱電対が取り付けられ、サンプルの温度を監視および制御した。設定されたボンベのサンプルを、断熱材と共に350mlの格納容器に装填した。Fauske IndustriesのAdvance Reactive Screening Systems Tool熱量計を用い、190℃までの一定割合の温度上昇中の印刷可能なリチウム溶液の相溶性を評価した。温度上昇率は2℃/分であり、サンプル温度は190℃で60分間保持された。テストは、溶媒の沸騰を防ぐために200psiのアルゴン圧力下で実施された。
図1は、SLMP/スチレンブタジエン/トルエン印刷可能リチウム組成物の反応性試験の温度および圧力のグラフである。
【0059】
印刷性能
印刷適性に関する印刷可能なリチウム組成物の品質は、複数の要因によって測定され、例えば、基板または電極表面へのリチウムの装填量を制御する能力に直接影響する流動の不変性などである。流動を測定する効果的な方法は、流動コンダクタンスであり、これは、装填量を制御する要因、つまり押し出し中の圧力およびプリンタヘッドの速度に関連する平方センチメートルあたりの装填量の表現である。これは、最も単純に流動抵抗の逆数と考えることができる。
【0060】
この式は、様々な圧力と速度のプリント間の比較を可能にするために使用され、流動コンダクタンスの変化により、圧力と流動の非線形関係に対して人に警報を出すことができる。これらは、アノードまたはカソードの必要性に応じて、印刷可能なリチウムの装填量を増減させるために重要である。理想的な印刷可能なリチウム組成物は、押し出し圧力の変化に対して直線的に動作する。
【0061】
印刷適性をテストするには、印刷可能なリチウム組成物は180μmの開口ステンレス鋼メッシュを通してろ過され、Nordson EFD 10mlシリンジ内に装填される。シリンジは、Nordson EFD HP4xシリンジディスペンサに装填され、スロットダイ印刷ヘッドに取り付けられる。スロットダイ印刷ヘッドには、印刷可能なリチウム組成物の装填を実現するように設計されたチャネル開口部を有する100μm~300μmの厚さのシムとが備えられている。スロットダイヘッドはLoctite 300シリーズロボットに取り付けられている。印刷ヘッドの速度は200mm/sに設定され、印刷圧力はシムおよびチャネルの設計に応じて、20~200psiのアルゴンである。プリント長は14cmである。印刷実験の例では、印刷可能なリチウム組成物は、80psi~200psiの範囲のディスペンサ設定で単一のシリンジから30回印刷された。この印刷試験の実験では、流動コンダクタンスの平均は
【数1】
で、標準偏差は0.02であった。この印刷可能な組成物は完全に直線的に作用するわけではないが、ディスペンサ圧力の変化に対する組成物流動応答は予測可能であって、当業者がリチウム装填を所望のレベルに微調整できる。したがって、一定のディスペンサ圧力条件で、リチウムの装填は非常に不変的に制御され得る。例えば、
【数2】
のリチウム金属のプリントの場合、CVは約5%である。
【0062】
電気化学試験
印刷可能なリチウム組成物の事前リチウム化の効果は、必要な量の印刷可能なリチウムを事前に製造された電極の表面に印刷することによって評価され得る。事前リチウム化のリチウム量は、アノード材料をハーフセル形式でテストし、SEIの形成または他の副反応による最初のサイクルの損失を補償するために必要なリチウムを計算することによって決定される。印刷可能なリチウムの必要量を計算するには、組成物のリチウム金属としての容量が分かっている必要があり、その容量は、例として使用される組成物の乾燥リチウム基準で約3600mAh/gである。
【0063】
事前リチウム化の効果は、グラファイト-SiO/NCAパウチセルを使用してテストされる。グラファイト-SiOアノードシートの配合は、人造グラファイト(90.06%)+SiO(4.74%)+カーボンブラック(1.4%)+SBR/CMC(3.8%)である。電極の装填容量(capacity loading)は、87%の最初のサイクルCE(columbic efficiency)で3.59mAh/cm2である。印刷可能なリチウムは、グラファイト-SiOアノード上に0.15mg/cm2のリチウム金属で塗布される。電極を80℃で100分間乾燥させた後、電極の厚さの約75%のローラー隙間で積層する。7cm×7cmの電極を、印刷可能なリチウム処理されたアノードシートから打ち抜く。正極の配合は、NCA(96%)+カーボンブラック(2%)+PVdF(2%)である。正極は6.8cm×6.8cmで、積載能力は3.37mAh/cm2である。NCAカソードは90%の最初のサイクルCEを有する。カソードに対するアノードの容量比は1.06で、セル全体の最初のサイクルCEの基準線は77%である。単層パウチセルが組み立てられ、1M LiPF6/EC+DEC(1:1)が電解質として使用される。セルは21℃で12時間前処理され、次いで形成サイクルが40℃で実施される。形成プロトコルは、4.2Vまで0.1C充電、0.01Cまで定電圧、2.8Vまで0.1C放電である。
【0064】
以上、本明細書において好ましい実施形態およびその特定の例を参照して本手法が図示および説明されたが、他の実施形態および例が同様の機能を実行し、および/または同様の結果を達成できることは当業者には容易に明らかであろう。そのような同等の実施形態および例はすべて、本手法の精神および範囲内にある。