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特許7417584自動車のハイブリッドパワートレインを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】自動車のハイブリッドパワートレインを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/00 20160101AFI20240111BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20240111BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240111BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240111BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240111BHJP
   B60L 9/18 20060101ALI20240111BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60W10/00 900
B60K6/48 ZHV
B60L50/16
B60L50/60
B60L9/18 J
B60L15/20 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021501299
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 FR2019051694
(87)【国際公開番号】W WO2020016502
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】1856551
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】311009022
【氏名又は名称】ルノー エス.アー.エス.
(73)【特許権者】
【識別番号】516017684
【氏名又は名称】ユニバーシテ ド オルレアン
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】コラン, ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】アジェ-サイド, スワド
(72)【発明者】
【氏名】ケットゥフィ-シェリフ, アメード
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-163643(JP,A)
【文献】特開2014-136560(JP,A)
【文献】国際公開第2013/001634(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/00
B60W 10/00
B60K 6/48
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 9/18
B60L 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(1)のハイブリッドパワートレインを制御する方法であって、
前記パワートレインが、熱ドライブチェーン(20)および電気ドライブチェーン(30)を備え、前記電気ドライブチェーン(30)が、牽引バッテリ(31)、電圧変調装置(33)、インバータ(35)、第1の電気機械(36a)および第2の電気機械(36b)を備え、前記電圧変調装置(33)が、前記牽引バッテリ(31)によって出力され、かつ前記自動車(1)の前記第1の電気機械(36a)および前記第2の電気機械(36b)に供給される電流の供給電圧(Ue)を調節するために適合されるものであり、
前記方法が、
-式
【数1】

で表される方程式の解に対応する数式によって最適な供給電圧(Ueopt)を分析的に計算するステップであって、式中、Ueは前記供給電圧であり、Pbatは前記牽引バッテリ(31)によって供給された電力であり、かつ前記牽引バッテリ(31)によって供給された前記電力(Pbat)が、前記供給電圧(Ue)の2次関数の形式で表される、ステップと、
-前記最適な供給電圧(Ueopt)を供給するように前記電圧変調装置(33)を制御するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記最適な供給電圧(Ueopt)が、前記牽引バッテリ(31)の末端における電圧(Ubat)と、規定の最大電圧閾値(Uemax)との間に含まれている場合に、前記最適な供給電圧(Ueopt)の前記数式が、式-K1/2K2によって与えられ、式中、K1およびK2は前記第1の電気機械(36a)の第1の速度(ωe1)、前記第2の電気機械(36b)の第2の速度(ωe2)、前記第1の電気機械(36a)により生じた第1の電気トルク(Te1)および前記第2の電気機械(36b)により生じた第2の電気トルク(Te2)によって変化する規定の関数である、請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記式-K1/2K2が前記牽引バッテリ(31)の前記末端における前記電圧(Ubat)よりも低い場合に、前記最適な供給電圧(Ueopt)の前記数式が、前記牽引バッテリ(31)の前記末端における前記電圧(Ubat)に等しく選択される、請求項2に記載の制御方法。
【請求項4】
前記数式-K1/2K2が前記最大電圧閾値(Uemax)よりも大きい場合に、前記最適な供給電圧の前記数式(Ueopt)が、前記最大電圧閾値(Uemax)に等しく選択される、請求項2または3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記牽引バッテリ(31)によって供給された前記力(Pbat)が、式
【数2】

に従って表され、式中、Ueは前記供給電圧であり、K0、K1、およびK2は前記第1の電気機械(36a)の第1の速度(ωe1)、前記第2の電気機械(36b)の第2の速度(ωe2)、前記第1の電気機械(36a)により生じた第1の電気トルク(Te1)および前記第2の電気機械(36b)により生じた第2の電気トルク(Te2)によって変化する規定の関数である、請求項1~4のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項6】
前記最適な供給電圧(Ueopt)を分析的に計算するステップの前に、前記第1の電気機械(36a)が生じさせるべき第1の最適な電気トルク(Te1opt)および前記第2の電気機械(36b)が生じさせるべき第2の最適な電気トルク(Te2opt)を決定するステップもまた含み、前記第1の最適な電気トルク(Te1opt)および前記第2の最適な電気トルク(Te2opt)が、前記自動車(1)を推進させるために必要なエネルギー値(Pr)の関数および前記牽引バッテリ(31)に関連する等価係数(λ)の関数である、請求項1~5のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項7】
前記第1の最適な電気トルク(Te1opt)、前記第2の最適な電気トルク(Te2opt)および前記最適な電圧(Ueopt)が、前記自動車(1)の内燃機関(22)の燃料消費の関数およびアセンブリ(32)の電流消費の関数であるハミルトン関数(Hhyb)が最小化される場合に、少なくとも前記電圧変調装置(33)を備える前記アセンブリ(32)における電気損失を最小化する、請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記最適な供給電圧(Ueopt)を分析的に計算する前記ステップの前に、前記牽引バッテリ(31)によって供給された前記電力(Pbat)を決定するステップもまた含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記電圧変調装置(33)における電気損失(Ps)が、前記供給電圧(Ue)の線形関数の形式で表される、請求項1~8のいずれか1項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関連する技術分野
本発明は、一般にハイブリッドパワートレインを備えた自動車に関連し、特に複数の電気機械および内燃機関を含むパワートレインを備えた自動車に関する。
【0002】
これは更に特に自動車のハイブリッドパワートレインを制御するための方法に関し、当該パワートレインは、熱ドライブチェーンおよび電気ドライブチェーンを備え、当該電気ドライブチェーンは、牽引バッテリと、電圧変調装置と、インバータと、第1の電気機械と、第2の電気機械と、を備え、当該電圧変調装置は、牽引バッテリによって出力され、かつ自動車の第1の電気機械および第2の電気機械に供給されている電流の供給電圧を調節するために適合される。
【背景技術】
【0003】
技術的な背景
ハイブリッド自動車は、従来型の熱ドライブチェーン(内燃機関、燃料タンクおよび変速機)と、電気ドライブチェーン(牽引バッテリ、電圧ブースタ、インバータおよび1つまたは複数の電気機械)を含む。
【0004】
並行ハイブリッド化に関して言えば、こうした自動車は、単一の電気ドライブチェーンもしくは単一の熱ドライブチェーン、またはその他の電気ドライブチェーンおよび熱ドライブチェーンといった2つのドライブチェーンによって同時に牽引されることが可能である。
【0005】
汚染物質の放出を最大限減少させ、かつ車両に対する最大限可能な範囲を保証するために、2つのパワートレインの電流消費および燃料消費を最小化させようとする試みが常に行われている。
【0006】
この目的を達成するため、インバータ用の最適な供給電圧を見いだすこと、すなわち電気ドライブチェーンにおける電気損失を最小化することは1つの解決策である。
【0007】
この目的のため、ある1つの方法は、各トルクおよび電気機械の速度、電圧値に関連したマップによってこの最適な供給電圧を決定するという点から成る米国特許第8324856号明細書から公知である。
【0008】
ただし、最適な供給電圧を決定するマップを読むことは、自動車の実際の走行状態において実行するには長くかつ複雑なステップである。このステップは、複数の電気機械が存在している場合に特に複雑である。これは開発されることになるマップが3つ以上の次元を含むためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第8324856号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的
先行技術の前述の欠点を克服するために、本発明は最適な供給電圧を分析的に計算することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
より詳細には、本発明によれば、導入部分にて定義されるような自動車のハイブリッドパワートレインを制御するための方法であって、
-下記式にて表される方程式の解に対応する数式によって最適な供給電圧を分析的に計算するステップであって、
【数1】
式中、Uは供給電圧であり、Pbatは牽引バッテリによって供給された電力であり、当該牽引バッテリにより供給された電力は当該供給電圧の2次関数の形式で表される、ステップと、
-当該最適な供給電圧を供給するように電圧変調装置を制御するステップと、を有する方法が提供される。
【0012】
したがって、本発明により、最適な供給電圧の正確な値を統合するように分析モデルが使用される。
【0013】
こうした分析モデルの使用は、主にすなわち、この分析モデルによりもたらされる結果の信頼性およびハイブリッド自動車の異なる分野におけるその導入の容易さといった2つの理由からここでは関心が持たれている。
【0014】
提案された解決策の他の利点は以下の通りである。この方法に必要な計算力は非常に小さい。このことにより、(電力パワートレインのあらゆる低下および車両の搭乗者が不意に不快さを持つことを避けるため)電圧変調装置の制御における持続性が保証される。こうすることで、任意の運転状態における自動車性能が十分に享受可能とする。
【0015】
個別に行われる、または技術的に考えられるあらゆる組合せにおける、本発明に従った自動車のハイブリッドパワートレインを制御するための方法の他の非限定的かつ有利な特徴は、以下の通りである:
-当該最適な供給電圧が牽引バッテリの末端における電圧と規定の最大電圧閾値との間に含まれている場合、当該最適な供給電圧の数式は、式 -K/2K によって与えられ、式中、KおよびKが、第1の電気機械の第1の速度、第2の電気機械の第2の速度、第1の電気機械によって生じた第1の電気トルクおよび第2の電気機械によって生じた第2の電気トルクによって変化する規定の関数であり、
-数式 -K/2K が牽引バッテリの末端における当該電圧よりも低い場合、当該最適な供給電圧の式が牽引バッテリの末端における電圧に等しく選択され、
-数式 -K/2K が当該最大電圧閾値よりも大きい場合、当該最適な供給電圧の式が最大電圧閾値と等しく選択され、
-牽引バッテリによって供給された力が、式:Pbat=K +K+Kによって表され、この場合、Uは供給電圧であり、K、KおよびKは第1の電気機械の第1の速度、第2の電気機械の第2の速度、第1の電気機械によって生じた第1の電気トルクおよび第2の電気機械により生じた第2の電気トルクによって変化する規定の関数であり、
-最適な供給電圧を分析的に計算するステップの前に、第1の電気機械が生じさせるべき第1の最適な電気トルクと、第2の電気機械が生じさせるべき第2の最適な電気トルクと、を決定し、第1の最適な電気トルクおよび第2の最適な電気トルクは、自動車を推進させるのに必要なエネルギー値の関数および牽引バッテリに関連する等価係数の関数であるステップもまた提供され、
-当該第1の最適な電気トルク、当該第2の最適な電気トルクおよび当該最適な電圧は、自動車の内燃機関の燃料消費の関数および当該アセンブリの電流消費の関数である、ハミルトン関数が最小化される場合、少なくとも電圧変調装置を備えるアセンブリにおいての電気損失を最小化し、
-最適な供給電圧を分析的に計算する前に、牽引バッテリにより供給された電力を決定するステップもまた提供され、
-電圧変調装置における電気損失は当該供給電圧の線形関数の形式で表される。
【0016】
例示的な実施形態
非限定的な実施例として与えられている添付の図面に関して続く説明は、本発明が何から成り、どのように実施され得るのかを明らかにするであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ハイブリッド自動車のドライブチェーンの概略図である。
図2】本発明に従う方法をフローチャート形式で示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従来、自動車はパワートレイン、車体構造および搭乗者のコンパートメント要素を特に支持するシャーシを含む。
【0019】
図1に示されるように、ハイブリッド自動車1において、ハイブリッドパワートレインは熱ドライブチェーン20および電気ドライブチェーン30を含む。
【0020】
サーマルパワートレイン20は、特に燃料タンク21、およびこのタンクにより燃料を供給され、自動車の駆動輪10とその出力シャフトが連結されている内燃機関22を含む。
【0021】
次に電気ドライブチェーン30は牽引バッテリ31、電圧変調装置33、インバータ35および第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36bといった2つの(または代替的には3つ以上の)電気機械を含む。ここで、第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36bは同一のものではないと見なされる。
【0022】
電圧変調装置33は、ここでは入力側では牽引バッテリ31に、かつ出力側ではインバータ35に接続された電圧ブースタである。
【0023】
インバータ35は、電圧変調装置33から受け取った直流電流から交流電流を発生させるように設計されている。
【0024】
第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36bはここでは電気モータであり、それらの出力シャフトは自動車1の駆動輪10に連結されている。
【0025】
インバータ35、第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36bはここでは、単一の装置34へと組み合わされている。
【0026】
電圧変調装置33、インバータ35、第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36bはここでは、「電流消費アセンブリ32」として定義されている。
【0027】
2つのドライブチェーン20、30は共に接合されており、これにより自動車1の駆動輪10は伝達装置40を介して回転されることが可能である。
【0028】
自動車1は、ここでは計算機50と呼ばれる電気制御ユニット(またはECU)もまた備え、2つの前述のドライブチェーン(特に電圧変調装置33により生じた電圧および第1の電気機械36a、第2の電気機械36bおよび内燃機関22によって生じた力)を制御することが可能となる。
【0029】
計算機50は、プロセッサおよび以下に記載された方法の環境で使用されているデータを記録するメモリを備える。
【0030】
このメモリはまた、取扱説明書を含むコンピュータプログラムから成るコンピュータのアプリケーションもまた保存しており、プロセッサによりこれを実行することで、以下に記載された方法の計算機50による実行が可能となる。
【0031】
本発明の実行のために、計算機50はセンサに接続されている。
【0032】
内燃機関22の回転速度、第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36bの回転速度(すなわち速度)を計測するために適合されたセンサに特に接続されている。
【0033】
計算機50は、どの程度車両が加速または減速する必要があるのかを決定可能であるセンサにもまた接続されている。これは、(車両が運転手によって科される速度設定値を遵守しなければならない場合に)車両のアクセルペダル位置を計測するセンサ、または車両の速度を計測するセンサであり得る。
【0034】
計算機50はしたがって、車両の運転手によって必要とされたエネルギーに関連しているデータ値を決定することが可能であり、所望の動力を用いてこの車両を前方に移動する。計算機50は、以下で「車輪Pへの力」と呼ばれている駆動輪10が受けるべき動力値をより正確に決定するとここでは見なされる。
【0035】
本発明を完全に理解することが可能な他の概念がここで定義され得る。
【0036】
牽引バッテリ31によって電圧変調装置33へと供給された電力の値は、ここでは「バッテリ力Pbat」と呼ばれる。
【0037】
電圧変調装置33によってインバータ35へと供給された電力の値は、ここでは「電力供給Pelec」と呼ばれる。数式:Pelec=Pelec1+Pelec2によって、第1の電気機械36aの第1の電力供給Pelec1および第2の電気機械36bの第2の電力供給Pelec2へと電力の値は分解される。
【0038】
電圧変調装置33によって出力された電流の電圧値は、「供給電圧U」と呼ばれる。
【0039】
第1の電気機械36aによって駆動輪10へと供給されている力の値は、ここでは「第1の電気機械力Pm1」と呼ばれる。第2の電気機械36bによって駆動輪10へと供給されている力の値は、ここでは「第2の電気機械力Pm2」と呼ばれる。2つの電気機械によって駆動輪10へと供給されている全ての力の値は、「電気機械力P」と呼ばれ、これは数式:P=Pm1+Pm2によって表され得る。
【0040】
内燃機関22によって単独で駆動輪10へと供給されている力の値は、ここでは「熱機械力Pth」と呼ばれる。
【0041】
内燃機関22の燃料消費は、「燃料流量Q」と呼ばれる。
【0042】
牽引バッテリ31内に保存された電気エネルギーの「エネルギーコスト」は、熱エネルギーのコストに関しては「牽引バッテリ31の等価係数λ」と呼ばれる。この値は、自動車1を推進させる第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36bまたは内燃機関22よりも好ましいものに依存して選択されるであろう。この等価係数はg/Whで表される。
【0043】
本発明の目的は、同時に電流消費アセンブリ32内での最小電気損失を保証しながらも、第1の電気機械36a、第2の電気機械36bおよび内燃機関22がそれぞれ、運転手によって必要とされる車輪Pへの力に関する需要に合致するようにしなければならないといった寄与を決定することである。次いでこの目的は、より具体的には、電気損失のこうした減少を保証することを可能とする、電圧変調装置33によりインバータ35へと供給されている最適な供給電圧値U optを見いだすことである。
【0044】
他の場合を示す場合、以下に記載されるであろう方法の目的は、車輪Pに対して必要な力の値の関数、内燃機関22の速度ωthの値の関数、第1の電気機械36aの第1の速度ωe1の値および第2の電気機械36bの第2の速度ωe2の値の関数、すなわちこれらの最小電気損失を保証する三つ組{U opt、Pth opt、P opt}として見いだされることである(指数「opt」は、最適値であることを意味する)。
【0045】
本発明の正確な理解を確かなものとするため、自動車1の基板上の計算機50が三つ組{U opt、Pth opt、P opt}の算出へと至らせる方法は、明細書の第1の部分により詳細に記載されている。
【0046】
本発明に至る推論は、本明細書の第2の部分に詳細に記載され得る。
【0047】
したがって第1の部分では、自動車1を出発させる場合に計算機50によって実行される方法が記載され得る。
【0048】
この方法は、以下に記載され、図2にて示された異なるステップを含む。これらのステップは再帰的、すなわちループ形式かつ通常時間のピッチにて実施される。
【0049】
図2にて見られるように、この方法は第1のステップE2にて開始される。このステップ中、計算機50は、例えば自動車のアクセルペダルの位置を考慮しつつ、車輪Pに必要な力を取得する。
【0050】
これはまた、例えば角度速度センサによって、第1の電気機械36aの第1の速度ωe1、第2の電気機械36bの第2の速度ωe2および内燃機関22の速度ωthを取得する。
【0051】
計算機50はまた、そのメモリ内で牽引バッテリ31の等価係数λの値を読み出す。この値は予め定められている(これは、一時的なピッチ~他のピッチでは不変であることを意味する)。
【0052】
この方法はステップE4で継続する。このステップでは、車輪Pに必要な力および等価係数λ(公知のように、車両の前進へのそれぞれのドライブチェーン20、30の寄与を計算するために的確である)を主に考慮しつつ、計算機50は、運転手の必要に合致させるように第1の電気機械36aが生じさせるべき第1の最適な電気トルクTe1 optおよび第2の電気機械36bが生じさせるべき第2の最適な電気トルクTe2 optを計算する。
【0053】
この目的のため、計算機50は最初に最適な電気機械力P optを決定する。特に計算機50は、以下に記載のアプローチによって、第1の電気機械36aの第1の電力供給Pelec1および第2の電気機械36bの第2の電力供給Pelec2から分析的にこの力を決定する。
【0054】
第1の最適な電気トルクTe1 optおよび第2の最適な電気トルクTe2 optの2つの値は、ステップE6における設定値の形式で、第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36bへと次いでそれぞれ伝送される。この指示の作成は瞬間的(10ミリ秒ほどの反応時間を有する2つの電気機械)なものではなく、実際にはこの時点において、第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36bは、第1の電流の電気トルクTe1 および第2の電流の電気トルクTe2 をそれぞれ生じさせる。
【0055】
ステップE8中、計算機50は、第1の電流の電気トルクTe1 および第2の電流の電気トルクTe2 、ならびに第1の電気機械36aの第1の速度ωe1および第2の電気機械36bの第2の速度ωe2を考慮しつつ、次いで電流消費アセンブリ32における電気損失を概算する。
【0056】
次いで、この電気損失値は、電圧変調装置33が電流消費アセンブリ32におけるこうした損失を最小化するように提供すべき最適な供給電圧U optを分析的に計算するために、ステップE10において計算機50により使用される。
【0057】
この目的のために、計算機50は式 -K/2K の中間電圧を計算する。式中、KおよびKは規定の関数である。こうした規定の関数は第1の電気機械36aの第1の速度ωe1、第2の電気機械36bの第2の速度ωe2、第1の電気機械36aによって生じた第1の電気トルクTe1および第2の電気機械36bにより生じた第2の電気トルクTe2によって変化する。これらは特に、第1の電気機械36aの第1の電流の電気トルクTe1 および第2の電気機械36bの第2の電流の電気トルクTe2 によって変化する。実際には、これらの関数KおよびKは、試験結果に基づき上流で決定される。次いで関数KおよびKは計算機50のメモリ内に保存される。
【0058】
この中間電圧 -K/2K が牽引バッテリ31の末端における電圧Ubatと最大電圧閾値 U max との間に含まれている場合、最適な供給電圧 U opt はこの中間電圧 -K/2K と等しいと考えられる。
【0059】
この電圧閾値 U max はテストベンチにて予め定められ、例えば計算機50のメモリ内に記録される。実際にはここでは、これは電流消費アセンブリ32(および特にインバータ35)がサポート可能である最大電圧値である。
【0060】
一方で、中間電圧 -K/2K が牽引バッテリ31の末端における電圧Ubatよりも低い場合、最適な供給電圧 U optは牽引バッテリ31の末端における電圧Ubatと等しいと考えられる。
【0061】
最終的には、中間電圧 -K/2K が最大電圧閾値 U max よりも大きい場合、最適な供給電圧 U opt はこの最大電圧閾値 U max と等しいと考えられる。
【0062】
要約すると、最適な供給電圧は、
【数2】
によって与えられる。
【0063】
最適な供給電圧値 U opt における設定値は、ステップE12にて電圧変調装置33へと伝送される。ただし、この設定値は瞬間的に生じるものではなく、電圧変調装置33は約10ミリ秒の反応時間を有する。実際には、この時点において、電圧変調装置33は次いで電流供給電圧と呼ばれる供給電圧U を供給する。
【0064】
この電流供給電圧値 U は次いで、車輪Pに必要な力、等価係数λおよび電流供給電圧 U (ステップE4に戻る)を主に考慮しつつ、運転手の必要に合致させるような方法で第1の電気機械36aが生じさせるべき新規の第1の最適な電気トルク Te1 opt および第2の電気機械36bが生じさせるべき新規の第2の最適な電気トルク Te2 opt を概算するために、計算機50によって再利用される。
【0065】
該ステップは第1の電気トルクおよび第2の電気トルクの供給電圧の電流値を最適値に収束させるために繰り返され、そうすることによって電気損失を最小化することが可能となる。
【0066】
実際には、各ループにて、パラメータ値は電流値によって再測定され、その後これは種々の最適値を再調節する。この制御は、これらの値が電気損失を最小化に向けて収束させるために実行される。
【0067】
最終的には、本発明に従う制御方法は、最適な供給電圧 U opt を供給するように電圧変調装置33を制御するステップで終了する。
【0068】
上記の方法につながる推論は、ここでは本明細書の第2の部分に記載され得る。
【0069】
使用された方法は、ポントリャーギンの最小原理に基づいている。この原理は特別な数学演算子であり、すなわちハミルトン関数に該当する。
【0070】
このハミルトン関数はここでは一方では燃料流量Qの関数として定義されるが、他方では、消費された電力Pbat(牽引バッテリ31によって供給されている)と等価係数λの積の関数として定義される。これは以下の式:Hhyb=Q+λ.Pbatで表される。
【0071】
ポントリャーギンの最小原理によれば、このハミルトン関数は求められている最適値を見いだすために最小化されなければならない。
【0072】
上記の該方法に対応する最適化プロセスは、2つの主要部分に分解され得る。
【0073】
第1の部分は供給電圧Uを最適化することから成る。上記のハミルトン関数を用いると、最適な供給電圧 U opt はしたがって、方程式:
【数3】
の解である。
【0074】
この方程式はまた、ハミルトン関数:
【数4】
の定義によって書かれている。最終的には、最適な供給電圧 U opt は式
【数5】
にて表されている方程式の解に対応する数式によって得られる。
【0075】
定義によれば、牽引バッテリ31によって供給された電力Pbatは、電力供給Pelecと電気損失P:Pbat=Pelec+Pに関連づけられている力へと分解される。
【0076】
一般的に、方程式
【数6】
を分析的に解くことは複雑である。ここで使用されている方法は、牽引バッテリ31によって供給された電力Pbat用の概算値を用いることから成る。
【0077】
この概算値によって、モデル化された電力 Pbat app は、電力供給Pelecおよび電気損失 P app
【数7】
に関連づけられているモデル化された力の関数として記載されている。
【0078】
試験結果を用いることにより、出願人は正確な概算値において、電圧ブースタの電気損失に関連づけられたモデル化された力 P app は、供給電圧Uの線形関数の形式で表される。
【0079】
このモデルに従い、次いでこの力は
【数8】
と書かれる。式中、Uは供給電圧であり、βおよびβは、第1の電気機械36aの第1の速度ωe1、第2の電気機械36bの第2の速度ωe2、第1の電気機械36aの第1の電気トルクTe1および第2の電気機械36bの第2の電気トルクTe2によって変化する規定の関数である。
【0080】
この概算値のフレームワーク内では、方程式
【数9】
を解くことは、次いで結果的に方程式
【数10】
を解くことになる。
【0081】
試験結果を用いることにより、出願人は、正確な概算値として、牽引バッテリ31によって供給されたモデル化された電力 Pbat app は、供給電圧Uの2次関数として表されていることもまた見いだされている。
【0082】
実際には、以下の式:
【数11】
によって与えられる。式中、Uは供給電圧であり、K、KおよびKは、第1の電気機械36aの第1の速度ωe1、第2の電気機械36bの第2の速度ωe2、第1の電気機械36aによって生じた第1の電気トルクTe1、第2の電気機械36bにより生じた第2の電気トルクTe2によって変化する規定の関数である。実際には、関数K、KおよびKは、試験結果を最適に二次調整することにより生じる。
【0083】
最終的には、牽引バッテリ31によって供給されたモデル化された電力 Pbat app を表す2次式を用いると、方程式
【数12】
の解は、事前に投入された中間電圧 U およびKおよび牽引バッテリ31によって供給されたモデル化された電力 Pbat app の規定の関数Kを有した状態で式:
【数13】
で書かれている。
【0084】
この解は、牽引バッテリ31によって供給されたモデル化された電力 Pbat app に関しては最小値に対応する場合には最適である。これは、牽引バッテリ31によって供給されたモデル化された電力 Pbat app は、供給電圧Uに関連する凸関数であることを意味する。次いで、これは規定の関数Kがプラスであると示している。
【0085】
最適な供給電圧 U opt の決定は、妥当性制約もまた充足させなければならない。制約は、牽引バッテリ31の末端における電圧Ubatおよび最大電圧閾値 U max を有する式:
【数14】
にて書かれる。最終的には、上記のように、供給電圧の最適化は以下の異なる場合にて生じる:
【数15】
最適化プロセスの第2の部分は、第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36b間の電気トルクの配分を最適化することから成る。
【0086】
電気トルクTe1およびTe2が、方程式Pm1=Te1×ωe1およびPm2=Te2×ωe2による電気機械力と関連することが公知である場合、電気トルクの最適化は、電気機械力Pm1およびPm2の最適化と等価である。
【0087】
この最適化は、まず第1に、第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36b間の「局所的な」最適化から成る。まず第1に、第1の電気機械36aおよび第2の電気機械36b間の電力を最適に配分することが決定されなければならない。
【0088】
この目的のために、第1の電気機械力Pm1と第2の電気機械力Pm2の2次関数によって、第1の電気機械36aの第1の電力供給Pelec1および第2の電気機械36bの第2の電力供給Pelec2をそれぞれモデル化することが知られている。換言すれば、第1の電気機械36aの第1の電力供給Pelec1および第2の電気機械36bの第2の電力供給Pelec2は、以下の式:
【数16】
および
【数17】
によって表され、この式では、Pm1は第1の電気機械力、Pm2は第2の電気機械力、a、b、c、a、bおよびcは規定のパラメータである。
【0089】
電力供給Pelecの定義におけるこれら2つの方程式を導入し、かつ電気機械力P=Pm1+Pm2の定義もまた用いることによって、電気機械力Pおよび第1の電気機械力Pm1の関数としてのみ電力供給Pelecを表すことが可能となる。
【0090】
電力供給Pelecの最適化によって、以下の式:
【数18】
または他には
【数19】
により、電気機械力Pの関数として第1の最適な電気機械力 Pm1 opt の決定が次いで生じる。
【0091】
代替的には、電気機械力Pおよび第2の電気機械力Pm2の関数としてのみ、電力供給Pelecを表すことが可能である。電力供給Pelecの最適化は次いで、第2の最適な電気機械力 Pm2 opt を決定することで実行され得る。
【0092】
電気トルクの最適化は、一方では2つの電気機械36a、36bの間の、他方では熱エンジンでの力の最適な配分を決定することに照準を合わせることで「全体的な」最適化を行いながら継続される。
【0093】
これまでに示したように、中でもモデル化された電力 Pbat app によって変化するハミルトン関数を最小化することが要求される。
【0094】
ただし、第1の決定された電気機械力 Pm1 app を用いることによって、牽引バッテリ31によって供給されたモデル化された電力 Pbat appを、規定のパラメータa、b、c、a、bおよびcによって変化するパラメータα、α、αを用いる式:
【数20】
によって、電気機械力Pの関数として表すことが可能となる。
【0095】
ハミルトン関数を最小化することで、方程式:
【数21】

【数22】
とも書ける)からの最適な電気機械力 P opt を導き出すことができる。
【0096】
最終的には、 P opt および Pm1 opt の知識(または代替的には P optと Pm2 opt との知識)により、 Pm2 opt (または代替的には Pm1 opt )を導き出すことができる。最適な電気トルクは、次いで方程式
【数23】
および
【数24】
から導き出すことができる。
図1
図2