(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】植物油を含む無水化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/92 20060101AFI20240111BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240111BHJP
A61K 8/97 20170101ALI20240111BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
A61K8/92
A61K8/34
A61K8/37
A61K8/97
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2021505806
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2019068446
(87)【国際公開番号】W WO2020030367
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-13
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517175600
【氏名又は名称】ラボラトワール クラランス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フーコー ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】オペル キャロライン
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許発明第01271011(FR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/92
A61K 8/34
A61K 8/37
A61K 8/97
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)組成物の総重量に対して10%~40%の総重量含有率xを有する少なくとも1つの植物油と、
b)組成物の総重量に対して5%~21%の総重量含有率yを有する少なくとも1つのC
2~C
4の一価アルコールと、
c)組成物の総重量に対して総重量含有率zを有する、植物油を構成する化合物とは異なる少なくとも1つの化合物Cと、
を含み、
前記化合物Cは、8.6以
下の計算されたlogP値を有し、
前記化合物Cは、液体脂肪酸エステル、液体脂肪アルコールエステル、液体脂肪アルコール及びそれらの混合物からなる群より選択され、
前記組成物は充填剤を含まず、
90%≦x+y+z≦100%、及び、
z≧(0.21y-0.56)x、
である、無水化粧品組成物。
【請求項2】
少なくとも一つの化合物Cは、4.0~8.6の計算されたlogP値を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも一つの化合物Cは、4.0~7.7の計算されたlogP値を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
95%≦x+y+z≦100
%である、請求項1
~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
97%≦x+y+z≦100%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、
式R-O-R’で表わされ、R及びR’はアルキル基である有機化合物、親油性ゲル化剤、及びそれらの混合物からなる群より選択される化合物を含まない、請求項1
~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記C
2~C
4の一価アルコールが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタン-1-オール、イソブタノール及びそれらの混合物からなる群より選択され
る、請求項1~
6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記C
2
~C
4
の一価アルコールがエタノールである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
植物油が、25℃で2.5以上の誘電率εを有する、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、前記化合物C以外の液体脂肪酸エステル若しくは液体脂肪アルコールエステル、又は前記植物油を構成するもの以外の液体脂肪酸エステルを含まない、請求項1~
9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記化合物Cが、植物起源である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記化合物Cが、液体脂肪酸モノエステル、液体脂肪アルコールモノエステル及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記液体脂肪酸モノエステルが、式R
1C(=O)OR
1’を有し、
R
1が、3個~15個の炭素原
子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表し、
R
1’が、3個~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表す、請求項
12に記載の組成物。
【請求項14】
前記ラジカルR
1
が、5個~9個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表す、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記ラジカルR
1及びR
1’に含まれる炭素原子の総数が、8個~22
個である、請求項
13または14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ラジカルR
1
及びR
1
’に含まれる炭素原子の総数が、9個~18個である、請求項13または14に記載の組成物。
【請求項17】
前記化合物Cが、液体脂肪酸ジエステル、液体脂肪アルコールジエステル、液体脂肪酸トリエステル、液体脂肪アルコールトリエステル、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記化合物Cが、INCI名の以下の化合物:イソノナン酸イソノニル、アジピン酸ジブチル、カプリル酸プロピルヘプチル、炭酸ジカプリリル、カプリル酸カプリリル、カプリン酸カプリリル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、カプリル酸エチルヘキシル、カプリン酸エチルヘキシル、トリヘプタノイン、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記化合物Cが、不飽和直鎖液体脂肪アルコールの中か
ら選択される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記化合物Cが、11個~18個の炭素原子を含む不飽和直鎖液体脂肪アルコールの中から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記化合物Cが、分岐液体脂肪アルコールの中か
ら選択される、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
前記化合物Cが、12個~24個の炭素原子を含む分岐液体脂肪アルコールの中から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記化合物Cが、リノールアルコール、リノレンアルコール、オレインアルコール、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ウンデシレンアルコール、2-オクチル-1-ドデカノール、2-ブチル-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-デカノール、2-オクチル-1-ドデカノール及びそれらの混合物からなる群において選択される液体脂肪アルコールの中から選択さ
れる、請求項1~
11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記化合物Cが、2-オクチル-1-ドデカノールである、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記植物油が、カメリナ油、ソフトアーモンド油、アルガン油、アボカド油、ピーナッツ油、ツバキ油、サフラワー油、カロフィラム油、ナタネ油、ココナッツ油、コリアンダー油、綿実油、カボチャ種子油、麦芽油、ホホバ油又はホホバ液体ワックス、亜麻仁油、マカダミア油、トウモロコシ種子油、ヘーゼルナッツ油、落花生油、ベルノニア油、杏仁油、オリーブ油、マツヨイグサ油、パーム油、トケイソウ油、ブドウ種子油、バラ油、ヒマシ油、ライ麦油、ゴマ油、米ぬか油、ダイズ油、ヒマワリ油及びそれらの混合物からなる群より選択さ
れる、請求項1~
24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
前記植物油が、ヘーゼルナッツ油、ホホバ油、マカダミア油、ツバキ油、コリアンダー油、オリーブ油及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
植物油(複数の場合もある)の総重量含有率xが、組成物の総重量の10%~35%である、請求項1~
26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
C
2~C
4の一価アルコール(複数の場合もある)の総重量含有率yが、組成物の総重量の10%~21%である、請求項1~
27のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
請求項1~
28のいずれか一項に記載の組成物のケラチン物質への適用を含む、ケラチン物質ケアのための非治療的方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン物質のケアのための植物油を含む組成物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
過去数年間、化粧品の製造業者は、肌にやさしい、より自然な化粧品に対する消費者からの高まる需要に直面してきた。この需要を満たすために、多数の植物油ベースの化粧品組成物が市場に出されてきた。植物油はそれらの栄養特性で定評があり、それらの自然さ及び多機能的な側面のため消費者に特に好まれている。実際、これらのオイルを顔と体、及び毛髪の両方に使用することができる。それぞれが異なる特性を持つ多くの種類の植物油が存在する。しかしながら、これらのオイルの使用に関連する主な欠点は、触ると脂っぽく、皮膚に塗布する際に浸透が遅すぎる場合があることである。同様に、これらのオイルの中には、一部のユーザーには香りがきつすぎるものもある。
【0003】
これらの様々な課題を克服するため、本出願人は、触ると乾いた状態の、すなわち、脂っぽい膜を残さずに皮膚に素早く浸透することができ、嗅覚への影響が限定的な、より流動的でより軽い油性組成物を得るために、植物油にアルコールを加えようとした。しかしながら、アルコールを添加した後に得られる油性組成物は、植物油とアルコールとの非混和性のために濁る場合があり、視覚的に魅力が少ないことに加えて、その塗布中にオイルが皮膚又は毛髪に均一に分配されない可能性がある。
【0004】
その結果、透明で流動性があって、触ると乾いた状態の軽い油性組成物が依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加えて、配合成分の数が限られ、環境に配慮して嗅覚への影響が限られた、単純な油性組成物が必要とされている。
【0006】
本出願人は、これらの課題の全てが本発明による組成物によって解決することができることを予期せずして発見した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様によれば、本発明は、
a)組成物の総重量に対して10%~40%の総重量含有率xを有する少なくとも1つの植物油と、
b)組成物の総重量に対して5%~21%の総重量含有率yを有する少なくとも1つのC2~C4の一価アルコールと、
c)組成物の総重量に対して総重量含有率zを有する、植物油を構成する化合物とは異なる少なくとも1つの化合物Cと、
を含み、
化合物Cは、8.6以下の計算されたlogP値を有し、
化合物Cは、液体脂肪酸エステル、液体脂肪アルコールエステル、液体脂肪アルコール及びそれらの混合物からなる群より選択され、
組成物は充填剤を含まず、
90%≦x+y+z≦100%、及び、
z≧(0.21y-0.56)x、
である、無水化粧品組成物に関する。
【0008】
別の態様によれば、本発明は、上記で定義されたような組成物のケラチン物質への適用を含む、ケラチン物質処理の非治療的方法に関する。
【0009】
最後に、最後の態様によれば、本発明は、C2~C4の一価アルコール中の植物油の混和性を促進するための以下に定義されるような少なくとも1つの化合物Cの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「無水化粧品組成物」とは、組成物の総重量に対して0.5%未満、好ましくは0.3%未満、より好ましくは0.1%未満の総重量含有率の水を含む化粧品組成物、最も好ましくは水を含まない化粧品組成物を意味する。
【0011】
「植物油」とは、周囲温度(25℃)及び大気圧(1.013×105Pa)で液体であり、脂肪体の総重量に対して、95重量%~99重量%のトリグリセリドを含む油性植物から抽出された脂肪体を意味する。
【0012】
「C2~C4の一価アルコール」とは、単一のヒドロキシル基と、2個~4個の炭素原子を含む直鎖の又は分岐した炭素鎖とを含むアルコールを意味する。
【0013】
「エステル」とは、直鎖の又は分岐した又は環状の、飽和又は不飽和の、カルボン酸の一酸又は二酸又は三酸と、直鎖の又は分岐した又は環状の、飽和又は不飽和の、一価アルコール又はポリオールとの反応から生じるモノエステル、ジエステル又はトリエステルを意味する。
【0014】
「脂肪酸」とは、4個~22個の炭素原子を含むカルボン酸を意味する。
【0015】
「液体脂肪酸エステル」とは、周囲温度(25℃)及び大気圧(1.013×105Pa)で液体である脂肪酸エステルを意味する。
【0016】
「脂肪アルコール」とは、8個~30個の炭素原子、好ましくは10個~30個の炭素原子、より好ましくは12個~25個の炭素原子を含む、飽和又は不飽和の、直鎖の又は分岐した又は環状の、非グリセロール及び非オキシアルキレン化アルコールを意味する。
【0017】
「オキシアルキレン化」とは、二価ラジカル-R-O-を意味し、Rは、直鎖C1~C4、又は分岐C3~C4のアルキレンラジカルを意味する。
【0018】
「液体脂肪アルコール」とは、周囲温度(25℃)及び大気圧(1.013×105Pa)で液体である脂肪アルコールを意味する。
【0019】
「液体脂肪アルコールエステル」とは、周囲温度(25℃)及び大気圧(1.013×105Pa)で液体である脂肪アルコールエステルを意味する。
【0020】
「充填剤」とは、組成物が製造される温度に関係なく、組成物の媒質に不溶性の、無色又は白色の鉱物又は合成の任意の形態の粒子を意味する。充填剤は、有機及び/又は無機充填剤であり得る。
【0021】
「有機」とは、化学構造が少なくとも1つの炭素原子を含む任意の化合物又はポリマーを意味する。
【0022】
「無機」とは、化学構造が炭素原子を全く含まない任意の化合物又はポリマーを意味する。
【0023】
「親油性ゲル化剤」とは、脂肪相をゲル化することができる化合物を意味する。
【0024】
化合物の「n-オクタノール/水分配係数」とは、n-オクタノール中の化合物の平衡濃度と、この同じ化合物の水中の濃度との比を意味する。
【0025】
化合物の「計算されたlogP」とは、米国環境保護庁の汚染防止・毒物部及びSyracuse Research Corporation(SRC)によって開発されたソフトウェアスイートであるEPI(Estimation Programs Interface)Suite(商標)に含まれるKOWWIN(商標)v1.68ソフトウェアを使用して計算された化合物のn-オクタノール/水共有係数(sharing coefficient)の常用対数(decimal logarithm)を意味する。このソフトウェアスイートは、次のアドレスから無料でダウンロードすることができる:https://www.epa.gov/tsca-screening-tools/epi-suitetm-estimation-program-interface。
【0026】
「ケラチン物質」とは、特にヒトの皮膚、唇、毛髪、まつげ、眉毛、頭皮、爪を意味する。
【0027】
「植物起源の化合物」とは、植物に直接由来するか、又は植物の形質転換によって、好ましくは生物学的植物形質転換によって得られるか、又は植物起源の少なくとも1つの他の化合物から得られる化合物を意味する。例えば、植物起源のエステルは、アルコール及びカルボン酸から得ることができ、このアルコール及び/又はカルボン酸は植物起源である。
【0028】
「少なくとも1つ」という表現は、「1つ以上」という表現と同等である。
【0029】
「含む」という表現は、「からなる」という表現を含む。
【0030】
「…から(~)…の」という表現は、境界値が含まれるものとして理解されなければならない。
【0031】
無水化粧品組成物
本発明は、上記で定義されるような無水化粧品組成物に関する。
【0032】
上で説明したように、本出願人は、触ると乾いた状態の、より流動的でより軽い油性組成物、すなわち脂肪膜を全く残さずに皮膚に素早く浸透することができる組成物を得るために、植物油にアルコールを加えた。しかしながら、植物油はアルコール中ではほとんど混和されないか又は混和性ではなく、得られる組成物は濁っており、視覚的にあまり魅力的ではないことに加えて、皮膚又は毛髪へのオイルの不均一な塗布をもたらす可能性がある。本出願人は、驚くべきことに、透き通った油性組成物を得るためには、植物油(複数の場合もある)の含有量と、C2~C4の一価アルコール(複数の場合もある)の含有量と、化合物C(複数の場合もある)の含有量との間の特定の比率を考慮して、化合物C(複数の場合もある)を組成物に添加する必要があることを発見した。
【0033】
かかる組成物は、該組成物に含まれる配合成分の数が少ないために調製するのが非常に単純であることから、特に興味深い。
【0034】
充填剤は油性組成物に容易に分散せず、透き通った組成物を得ることができないため、組成物は充填剤を全く含まない。
【0035】
95%≦x+y+z≦100%が好ましい。
【0036】
97%≦x+y+z≦100%がより好ましい。
【0037】
好ましくは、組成物は、式R-O-R’で表わされ、R及びR’はアルキル基である有機化合物、親油性ゲル化剤及びそれらの混合物からなる群より選択される化合物を含まなくてもよい。実際に、親油性ゲル化剤は、粘性を組成物に与える可能性があり、これは、触ると乾いた状態の油性組成物を得ることに反する。
【0038】
式R-O-R’で表わされ、R及びR’はアルキル基である有機化合物の例として、ジカプリリルエーテルを挙げることができる。
【0039】
好ましくは、組成物は、化合物C以外の液体脂肪酸エステル若しくは液体脂肪アルコールエステル、又は植物油を構成するもの以外の液体脂肪酸エステルを含み得ない。
【0040】
化合物Cの計算されたlogPの値は、好ましくは4.0~8.6、より好ましくは4.0~7.7である。
【0041】
化合物Cは、好ましくは植物起源のものであり得る。植物起源の化合物Cを添加することにより、環境に更に配慮した油性組成物を得ることが可能になる。
【0042】
上記のように、化合物Cは、液体脂肪酸エステル、液体脂肪アルコールエステル、液体脂肪アルコール及びそれらの混合物からなる群より選択される。
【0043】
液体脂肪酸エステル及び液体脂肪アルコールエステル
有利には、化合物Cは、液体脂肪酸エステル、液体脂肪アルコールエステル及びそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0044】
液体脂肪酸エステル及び/又は液体脂肪アルコールエステルは、好ましくは植物起源のものであり得る。
【0045】
植物起源の液体脂肪酸エステルは、例えば、脂肪酸及びアルコールのエステル化によって得ることができ、この脂肪酸及び/又はアルコールは植物起源である。
【0046】
植物起源の液体脂肪アルコールエステルは、例えば、酸及び脂肪アルコールのエステル化によって得ることができ、この酸及び/又は脂肪アルコールは植物起源である。
【0047】
液体脂肪酸モノエステル及び液体脂肪アルコールモノエステル
化合物Cは、液体脂肪酸モノエステル、液体脂肪アルコールモノエステル及びそれらの混合物からなる群より選択され得る。
【0048】
液体脂肪酸モノエステルは、式R1C(=O)OR1’を有することができ、R1は、3個~15個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表し、R1’は、3個~10個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表す。R1は、好ましくは、3個~9個の炭素原子、より好ましくは5個~9個の炭素原子を含む直鎖又は分岐アルキルラジカルを表すことができる。
【0049】
ラジカルR1及びR1’に含まれる炭素原子の総数は、好ましくは8個~22個、より好ましくは9個~18個である。
【0050】
ジエステル及びトリエステル
化合物Cは、液体脂肪酸ジエステル、液体脂肪アルコールジエステル、液体脂肪酸トリエステル、液体脂肪アルコールトリエステル、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0051】
好ましい実施形態によれば、化合物Cは、INCI名の以下の化合物:イソノナン酸イソノニル、アジピン酸ジブチル、カプリル酸プロピルヘプチル、炭酸ジカプリリル、カプリル酸カプリリル、カプリン酸カプリリル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、ネオペンタン酸イソデシル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、カプリル酸エチルヘキシル、カプリン酸エチルヘキシル、トリヘプタノイン、及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0052】
液体脂肪アルコール
有利には、化合物Cは、液体脂肪アルコールの中から選択され得る。
【0053】
液体脂肪アルコールは、好ましくは植物起源のものであり得る。
【0054】
液体脂肪アルコールは、直鎖又は分岐又は環状、飽和又は不飽和であり得る。
【0055】
化合物Cは、不飽和直鎖液体脂肪アルコールの中から、好ましくは、11個~18個の炭素原子を含む不飽和直鎖液体脂肪アルコールの中から選択することができる。
【0056】
化合物Cは、分岐液体脂肪アルコールの中から、好ましくは12個~24個の炭素原子を含む分岐液体脂肪アルコールの中から選択することができる。
【0057】
化合物Cは、好ましくはリノールアルコール(linoleic alcohol)、リノレンアルコール(linolenic alcohol)、オレインアルコール(oleic alcohol)、イソセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ウンデシレンアルコール(undecylenic alcohol)、2-オクチル-1-ドデカノール、2-ブチル-1-オクタノール、2-ヘキシル-1-デカノール、2-オクチル-1-ドデカノール、2-デシル-1-テトラデカノール及びそれらの混合物からなる群より選択される液体脂肪アルコールの中から選択することができる。化合物Cは、更に好ましくは2-オクチル-1-ドデカノールであり得る。
【0058】
化合物C(複数の場合もある)の総重量含有率zは、好ましくは、組成物の総重量に対して55%~80%である。
【0059】
植物油(複数の場合もある)
上記のように、本発明による組成物は、少なくとも1つの植物油を含む。植物油は、バージンオイル(virgin oils)、精製油及びそれらの混合物の中から選択することができる。
【0060】
「バージンオイル」とは、ただ1度の単一のコールドプレスから得られ、化学処理を受けておらず、何らの添加剤も含まない植物油を意味する。
【0061】
「精製油」とは、溶剤を使用して抽出され、中和処理、脱色処理、脱臭処理、又は脱ろう処理の中から選択される1つ以上の処理を受ける植物油を意味する。
【0062】
好ましい実施形態によれば、植物油は、25℃で2.5以上の誘電率εを有する。
【0063】
本発明による組成物に使用することができる植物油は、カメリナ油、ソフトアーモンド油、アルガン油、アボカド油、ピーナッツ油、ツバキ油、サフラワー油、カロフィラム油、ナタネ油、ココナッツ油、コリアンダー油、綿実油、カボチャ種子油、麦芽油、ホホバ油又はホホバ液体ワックス、亜麻仁油、マカダミア油、トウモロコシ種子油、ヘーゼルナッツ油、落花生油、ベルノニア油、杏仁油、オリーブ油、マツヨイグサ油、パーム油、トケイソウ油、ブドウ種子油、バラ油、ヒマシ油、ライ麦油、ゴマ油、米ぬか油、ダイズ油、ヒマワリ油及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。植物油は、好ましくはヘーゼルナッツ油、ホホバ油、マカダミア油、ツバキ油、コリアンダー油、オリーブ油及びそれらの混合物からなる群より選択することができる。
【0064】
植物油(複数の場合もある)の総重量含有率xは、好ましくは組成物の総重量の10%~35%である。
【0065】
C2~C4の一価アルコール(複数の場合もある)
C2~C4の一価アルコールは、好ましくは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタン-1-オール、イソブタノール及びそれらの混合物からなる群より選択され得る。好ましい実施形態によれば、C2~C4の一価アルコールはエタノールである。
【0066】
一例として、本発明による組成物は、C2~C4の一価アルコールとしてのエタノールと、液体脂肪酸エステル、液体脂肪アルコールエステル及びそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物Cとを含むことができる。
【0067】
一例として、本発明による組成物は、C2~C4の一価アルコールとしてのエタノールと、液体脂肪アルコールの中から選択される少なくとも1つの化合物Cとを含むことができる。
【0068】
C2~C4の一価アルコール(複数の場合もある)の総重量含有率yは、好ましくは組成物の総重量の10%~21%である。
【0069】
他の化合物D(複数の場合もある)
本発明による組成物は、植物油とは異なる少なくとも1つの化合物D、C2~C4の一価アルコール、及び化合物Cを更に含むことができる。化合物D(複数の場合もある)の総含有率は、組成物の総重量に対して、0.2重量%~10重量%、好ましくは0.2重量%~5重量%、より好ましくは0.2重量%~3重量%である。化粧品に従来から使用されている少なくとも1つの添加剤及び/又は少なくとも1つの作用物質を化合物Dとして使用することができる。一例として、脂溶性作用物質は、ビタミンE、脂溶性天然着色剤、抗酸化剤、メントール及びその誘導体として言及され得る。
【0070】
方法
本発明はまた、上記で定義されるような組成物のケラチン物質への適用を含む、ケラチン物質ケアの非治療的方法に関する。組成物は、好ましくは皮膚に塗布される。
【0071】
用途
本発明はまた、C2~C4の一価アルコール中での植物油の可溶化の促進において使用するための、上記少なくとも1つの化合物Cの使用に関する。C2~C4の一価アルコールは、好ましくは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、及びそれらの混合物からなる群より選択され、より好ましくはエタノールである。
【0072】
好ましくは、この使用において、植物油の総含有率x(重量%)、C2~C4の一価アルコールの総含有率y(重量%)、及び化合物Cの総含有率z(重量%)は次のとおりである。
90%≦x+y+z≦100%、及び、
z≧(0.21y-0.56)x。
【実施例】
【0073】
以下の実施例は、本発明をよりよく理解することを可能にするが、限定する特徴を有するものではない。原材料は、化学名又はINCI名で命名されている。示される量は、特に明記しない限り、原材料の重量%によるものである。
【0074】
実施例1~実施例43による組成物を、種々の性質の組成物に関して本発明による組成物の優位性を示すために、以下の操作方法に従って調製した。組成物に含まれる各化合物Cについて計算されたlogP値を下記表に示す。INCI名「アルコール」は化学名「エタノール」に対応する。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
操作方法
各組成物について、植物油を、20±5℃の温度でマグネチックスターラーを使用して、シロップバイアル内で化合物C(存在する場合)と混合する。次にエタノールをバイアルに加えた後、バイアルを閉じる。透明な混合物が得られるまで撹拌を維持する。10分経過後に透明な混合物が得られない場合、撹拌を停止する。
【0087】
観察
上記の表において、記号(-)は、組成物の調製中に得られたものが視覚的に濁った混合物であることを示している。透明な混合物が得られる組成物は、組成物が常に安定していること、及び組成物に濁りが現れていないことを確実にするために、翌日(組成物の調製から24時間後)に確認する。記号(+)は、組成物の調製中に得られたものが視覚的に透明な混合物であり、翌日も安定したままであることを示している。記号(+/-)は、組成物の調製中に得られたものが視覚的に透明な混合物であるが、翌日には安定しておらず、混合物が濁り始めることを示している。
【0088】
結論
本発明による油性組成物(実施例5~実施例7、実施例9~実施例22、実施例29、実施例31~実施例33、実施例37~実施例39)は透明であることが観察された。加えて、これらの組成物は、新鮮で、流動性があり/軽く、オイルの香りがあまり目立たない。
【0089】
また、本発明によるものとは異なる特徴を有する油性組成物(実施例1~実施例4、実施例8、実施例23~実施例28、実施例30、実施例34~実施例36、実施例40~実施例43)は、それらの調製中又は翌日のいずれかにおいて視覚的に濁っていることが観察された。実施例1~実施例4、実施例27、実施例28、実施例30及び実施例34~実施例36の組成物は、化合物Cの総重量含有率が本発明の組成物よりも少ない組成物である。
【0090】
実施例40~実施例43の組成物は、植物油及びアルコールのみを含み、本発明に従って定義されるような化合物Cを全く含まない。実施例8、実施例23及び実施例24の組成物は、本発明に従って定義されるような化合物Cのものとは異なる計算されたlogPを有するエステルを含む。実施例25の組成物は、本発明に従って定義されるような化合物Cではない式R-O-R’で表わされ、R及びR’はアルキル基である有機化合物を含む。実施例26の組成物は、本発明に従って定義されるような化合物Cではないアルカンを含む。
【0091】
したがって、組成物が、本発明に従って定義されるようなどの化合物Cも含まない場合、又は本発明に従って定義されるものとは異なる含有量である場合、組成物を調製している最中又は翌日のいずれかに視覚的に濁った混合物が得られる。かかる混合物は、組成物を塗布する間、オイルが皮膚又は毛髪全体に均一に分配されない場合があるという結果をもたらす可能性がある。