(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-10
(45)【発行日】2024-01-18
(54)【発明の名称】手当て用品
(51)【国際特許分類】
A61M 27/00 20060101AFI20240111BHJP
A61F 13/00 20240101ALI20240111BHJP
A61F 13/02 20240101ALI20240111BHJP
【FI】
A61M27/00
A61F13/00 301G
A61F13/00 301M
A61F13/02 A
A61F13/02 310D
A61F13/02 355
A61F13/02 390
(21)【出願番号】P 2021506664
(86)(22)【出願日】2019-08-27
(86)【国際出願番号】 US2019048343
(87)【国際公開番号】W WO2020046935
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-01
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519352676
【氏名又は名称】アートラ・メディカル、エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】AATRU MEDICAL,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100180079
【氏名又は名称】亀卦川 巧
(74)【代理人】
【識別番号】230101177
【氏名又は名称】木下 洋平
(72)【発明者】
【氏名】ブアン、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ミッドオー、リチャード・エル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォイチェホフスキ、ティモシィ
(72)【発明者】
【氏名】ラッシュ、トーマス・イー
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/094061(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/226746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
A61F 13/00
A61F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
その下に通常の大気よりも低い圧力を作り出すのに有用な手当て用品であって、
ドレープと、
該ドレープの皮膚に面する表面に設けられているアクリル系感圧接着剤と、
吸収性材料からなる島状部と、
シリコーンゲルバッキングフィルムと、
該シリコーンゲルバッキングフィルムに設けられているシリコーンゲルを含
み、
前記ドレープが真空状態にすると前記ドレープの下を陰圧に維持することができる薄膜であり、
吸収性材料からなる島状部が、前記ドレープよりも小さな面積を有し、前記吸収性材料からなる島状部の周囲に接着剤で覆われた前記ドレープの第一余白を残すように、前記ドレープの前記皮膚に面する表面に取付けられ、
前記シリコーンゲルバッキングフィルムが、フレーム形状であって、前記ドレープよりも小さな面積を有し、前記吸収性材料からなる島状部よりも大きな面積を有し、前記シリコーンゲルバッキングフィルムが、該シリコーンゲルバッキングフィルムの周囲に接着剤で覆われたドレープの第二余白を残すように、前記ドレープに貼付けられ、
前記シリコーンゲルが、前記シリコーンゲルバッキングフィルムのフレーム形状と少なくとも実質的に一致し、前記シリコーンゲルの周囲に前記接着剤で覆われたドレープの第二余白を残した状態で、前記吸収性材料からなる島状部を取り囲
み、前記シリコーンゲルが前記手当て用品の下の雰囲気を陰圧に維持するためのシーリングガスケットとして機能することを特徴とする、
手当て用品。
【請求項2】
紙であるキャスティングシートをさらに含み、前記ドレープが前記キャスティングシート塗布される、請求項1の手当て用品。
【請求項3】
前記ドレープがポリウレタンフィルムである、請求項1または2の手当て用品。
【請求項4】
前記吸収性材料からなる島状部が高吸収性アクリレートを含む、請求項1または2の手当て用品。
【請求項5】
前記吸収性材料からなる島状部が、該吸収性材料からなる島状部の皮膚に面する側に孔を有するポリウレタンフィルム層を含む、請求項1の手当て用品。
【請求項6】
前記ドレープよりも大きな面積を有する剥離ライナーをさらに含み、該剥離ライナーは、該剥離ライナーの少なくとも一方の面にフッ素樹脂剥離コーティングが施されており、前記フッ素樹脂剥離コーティングは、前記接着剤で覆われたドレープの第二余白の前記アクリル系感圧接着剤と接し、且つ、前記シリコーンゲルと接している、請求項1の手当て用品。
【請求項7】
前記剥離ライナーがポリエステルフィルムである、請求項6の手当て用品。
【請求項8】
前記フッ素樹脂剥離コーティングが、前記吸収性材料からなる島状部の前記皮膚に面する側のポリウレタンフィルム層と接している、請求項6または7の手当て用品。
【請求項9】
前記シリコーンゲルバッキングフィルムが、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、または共重合ポリエステルフィルムである、請求項1の手当て用品。
【請求項10】
前記ドレープが、該ドレープを通って延び、シリコーンゲルで囲まれた
開口部を含む、請求項1の手当て用品。
【請求項11】
真空源と組み合わされて、該真空源が、前記ドレープを通って延びる
開口部と流体連通している、請求項10の手当て用品。
【請求項12】
前記真空源が、空気中に見出される少なくとも1つのガスを消費するように構成されたリアクタである、請求項11の手当て用品。
【請求項13】
手当て用品が組織部位の周囲の皮膚に貼付けられているとき、前記リアクタが、前記ドレープの下で、且つ、前記シリコーンゲルによって囲まれる囲まれた体積と流体連通する密閉チェインバに配置され、シリコーンゲルによって囲まれている閉鎖チャンバ内に配置され、該密閉チェインバおよび/または前記囲まれた体積と大気との間の圧力差が、大気圧に対して所定の閾値を超える場合のみ、前記密閉チェインバおよび/または前記囲まれた体積が周囲と連通する、請求項12の手当て用品。
【請求項14】
前記所定の閾値が-80mmHg~-150mmHgである、請求項13の手当て用品。
【請求項15】
その下に通常の大気よりも低い圧力を作り出すのに有用な手当て用品を組立てる方法であって、
キャスティングシートとキャスティングシートに形成されたドレープとを貫通する穴を形成し、
前記ドレープの皮膚に面する表面に吸収性材料からなる島状部を取付け、前記吸収性材料からなる島状部の周囲に接着剤で覆われた前記ドレープの第一余白を残して、前記ドレープの前記皮膚に面する表面が、当該上に設けられたアクリル系感圧接着剤を有し、
シリコーンゲルバッキングフィルムの周囲に接着剤で覆われた前記ドレープの第二余白を残して前記吸収性材料からなる島状部を取り囲むように、前記シリコーンゲルバッキングフィルム上にシリコーンゲルを具えて設けられる前記シリコーンゲルバッキングフィルムを前記ドレープの前記皮膚に面する表面に貼付けることを含む、
手当て用品を組立てる方法。
【請求項16】
前記接着剤で覆われたドレープの前記第二余白において前記アクリル系感圧接着剤と接し、且つ、前記シリコーンゲルと接しているフッ素樹脂剥離コーティングで覆われた剥離ライナーを設けることがさらに含まれる、請求項15の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
陰圧(negative pressure)とは、通常の大気圧よりも低い圧力を表現するために用いられる用語である。既知の局所的な陰圧装置は、面倒なしわ取り吸引装置から、流体透過性創腔充填要素、被覆包帯、皮膚を密閉するための適度な気密手段、及び創傷部位と創腔充填要素を、体液回収容器を介して排水管(drainage tube)に連結する創傷療法にまで及ぶ。
【背景技術】
【0002】
陰圧で使用される手当て用品(dressing)の一つの種類には、創傷部に配置された多孔質発泡体と多孔質発泡体の上に配置された手当て用品カバーとが含まれる。創傷の周りに水密シールが施された後、ポンプに接続された排水管は、創傷から滲出液を吸い上げる。陰圧で用いられるこれらの手当て用品に関しては、更なる改良が可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
前述した観点から、手当て用品は、ドレープと、ドレープの皮膚に面する表面に設けられたアクリル系感圧接着剤と、吸収性材料からなる島状部(island)と、シリコーンゲルバッキングフィルム(silicone gel backing film)と、シリコーンゲルバッキングフィルムに設けられたシリコーンゲルとを含む。前記ドレープは、真空状態にしたときにドレープの下を陰圧に維持することが可能な薄膜である。吸収性材料からなる島状部は、ドレープよりも小さな面積を有し、吸収性材料からなる島状部の周囲に接着剤で覆われたドレープの第一余白(margin)を残すように、ドレープの皮膚に面する表面に取付けられる。シリコーンゲルバッキングフィルムは、フレーム形状を有し、ドレープよりも小さな面積を有し、吸収性材料からなる島状部よりも大きな面積を有する。シリコーンゲルバッキングフィルムは、シリコーンゲルバッキングフィルムの周囲に接着剤で覆われたドレープの第二余白を残すように、ドレープに貼付けられる。シリコーンゲルは、シリコーンゲルバッキングフィルムのフレーム形状と少なくとも実質的に一致し、シリコーンゲルバッキングフィルムの周囲に接着剤で覆われたドレープの第二余白を残した状態で、吸収性材料からなる島状部を取り囲む。
【0004】
上記手当て用品は、紙であるキャスティングシートをさらに含んでもよく、その場合、ドレープはキャスティングシートに塗布(cast)される。
【0005】
上記手当て用品のいずれにおいても、ドレープはポリウレタンフィルムであってよい。
【0006】
上記手当て用品のいずれにおいても、吸収性材料は、高吸収性アクリレートを含んでよい。
【0007】
上記手当て用品のいずれにおいても、シリコーンゲルバッキングフィルムは、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは共重合ポリエステルフィルムであってよい。
【0008】
上記手当て用品のいずれにおいても、ドレープよりも大きな面積を有する剥離ライナーを具えてもよい。剥離ライナーは、剥離ライナーの少なくとも一方の面がフッ素樹脂剥離コーティングで覆われてもよい。フッ素樹脂剥離コーティングは、接着剤で覆われたドレープの第二余白においてアクリル系感圧接着剤と接し、且つ、シリコーンゲルと接している。剥離ライナーは、ポリエステルフィルムであってよい。
【0009】
上記の手当て用品のいずれにおいても、ドレープは、ドレープを通って延び、シリコーンゲルによって囲まれた穴を具えてよい。この実施形態では、通気性/液体不透過性フィルタが、穴を覆ってもよい。この実施形態では、通気性/液体不透過性フィルタは、アクリル系感圧接着剤を介してドレープの皮膚に面する表面に貼付けられてもよい。または、空気透過性/液体不透過性フィルタは、ドレープの皮膚に面する表面の反対側の面に貼付けられてもよい。空気透過性/液体不透過性フィルタがアクリル系感圧接着剤を介してドレープの皮膚に面する表面に貼付けられている場合、空気透過性/液体不透過性フィルタはアクリル系接着剤に貼付けることができる。
【0010】
前記段落に記載した手当て用品は、ドレープを通って延びる穴と流体連通している真空源と組合わされてもよい。真空源は、空気中に見出される少なくとも1つのガス、例えば酸素または窒素を消費するように構成されたリアクタであってもよい。
【0011】
手当て用品を組立てる方法には、キャスティングシートとキャスティングシートに形成されたドレープとを貫通する穴を形成し、吸収性材料からなる島状部をドレープの皮膚に面する表面に取付けることが含まれる。ドレープの皮膚に面する表面は、その上に設けられたアクリル系感圧接着剤を有し、吸収性材料からなる島状部は、吸収性材料からなる島状部の周囲に接着剤で覆われたドレープの第一余白を残して取付けられる。前記方法には、さらに、シリコーンゲルバッキングフィルムの周囲に接着剤で覆われたドレープの第二余白を残して吸収性材料からなる島状部を取り囲むように、その上にシリコーンゲルを具えて設けられるシリコーンゲルバッキングフィルムをドレープの皮膚に面する表面に貼付けることが含まれる。
【0012】
方法には、接着剤で覆われたドレープの第二余白においてアクリル系感圧接着剤と接し、且つ、シリコーンゲルと接しているフッ素樹脂剥離コーティングで覆われた剥離ライナーを設けることがさらに含まれてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】
図3は、
図1の手当て用品を組立てるプロセスの一例を示すフロー図。
【
図4】
図4は、組織部位の周囲の皮膚に配置された手当て用品の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以下の明細書で説明され、添付の図面で示される構成要素の構造および配置の詳細に限定されるものではない。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施される。本明細書で使用される表現および用語は、説明の目的のためのものであり、限定的であるとみなされるべきではない。さらに、「含む」、「具える」、または「有する」およびこれらの変形の使用は、その後に記載された項目およびそれらの等価物、ならびに追加の項目を包含することを意図している。
【0015】
本開示は、全体として、陰圧型創傷手当て用品に関するが、本明細書に記載された手当て用品は、常に陰圧で使用される必要はない。
図1には、手当て用品20の下に通常の大気圧以下の圧力を作り出すのに有用な創傷手当て用品の一実施形態が示されている。手当て用品20は、全体として、ドレープ22、吸収性材料からなる島状部24、シリコーンゲル26、および剥離ライナー28を含む。手当て用品20の構成要素および構成要素を構成する材料の配置によって、創傷、外科的切開部、または他の組織部位(以下、単に「組織部位」と称する)を囲う手当て用品の適応が容易となり、その結果、ドレープ22の下および組織部位の周囲に陰圧環境が長時間維持され、また、皮膚に手当て用品を配置するための取り扱いも容易となる。
【0016】
ドレープ22は、真空にした際にドレープ22の下を陰圧に維持することが可能な薄膜である。ドレープ22が作られる薄膜は、ドレープの下を陰圧に維持することが可能であり、一方で、液体に対しては実質的に不透過性であるが、水蒸気に対しては多少透過性であってもよい。例えば、ドレープ22が作られる薄膜材料は、3M社から入手可能なTEGADERM(登録商標)ブランド、すなわち、「9834TPUテープ」で販売されているようなポリウレタン、または、他の半透膜材料で構成されていてもよい。同様な薄膜は、他の製造業者からも入手可能である。ドレープ22が作られる薄膜が、約836g/m2/day以上の水蒸気透過率を有していても、これらの薄膜は、組織部位の周縁部の周囲が適切に密閉されている場合、ドレープ22の下を陰圧に維持することができる。
【0017】
ドレープ22は、紙から作ることができるキャスティングシート30に塗布されてもよい。手当て用品20が組立てられるとき、キャスティングシート30は、キャスティングシート開口部32を具えるためにハーフカット(kiss cut)されてもよい。ドレープ22は、吸収性材料からなる島状部24およびシリコーンゲル26が、キャスティングシート30のキャスティングシート開口部32によって画定される「窓」内に見えるような透明材料から作られてもよい。クロスカット36は、キャスティングシート開口部32を画定する材料が取除かれた後、キャスティングシート30の内側面38から、キャスティングシートの外側面42まで延びてもよい。ドレープ22は非常に薄い膜から作られているので、ドレープ22と接続されたキャスティングシート30をフレーム形状とすることで、手当て用品20を組織部位に配置する間、把持するための比較的硬いすなわちより剛性が高いキャスティングシート30を具える方法により、手当て用品20を当てるのが容易になる。手当て用品20が配置された後、ドレープ22からキャスティングシート30を取外すために、キャスティングシート30は、クロスカット36で把持され、角に向かって引っ張られてもよい。
図1に示された実施形態で明らかなように、キャスティングシート30は、組織部位上に手当て用品20を配置する人が、手当て用品20を配置している間中、吸収性材料からなる島状部24およびシリコーンゲル26の両方を見ることができるように、シリコーンゲル26の領域の周りでハーフカットされる。
【0018】
図2を参照すると、アクリル系感圧接着剤50が、ドレープ22の皮膚に面する表面52に塗布される。他のタイプの接着剤がドレープ22に塗布されてもよいが、アクリル系感圧接着剤は、皮膚と接触したときに、比較的長い時間、例えば数日間持続可能な強い初期接着力をもたらすことが知られている。アクリル系感圧接着剤50は、ドレープ22の皮膚に面する表面52の全体に塗布されてもよく、このことはまた、組立て中において手当て用品20の他の構成要素を保持するのにも有用である。
【0019】
ドレープ22はまた、手当て用品20に真空源62を接続することを可能にする開口部60を含んでもよい。開口部60は、(キャスティングシート30のキャスティングシート開口部32を形成する部分を除去する前に)シリコーンゲル26によって囲まれた領域内でキャスティングシート30とドレープ22を貫通して切取られてもよい。(
図2に模式的に示されている)フィッティング64を開口部60の上に配置し、(同じく
図2に模式的に示されている)ホース66を介して真空源62に接続してもよい。
【0020】
吸収性材料からなる島状部24は、ドレープ22の皮膚に面する表面52に取付けられ、アクリル系感圧接着剤50を介してドレープ22に貼付けられる。
図1でより明確に見られるように、吸収性材料からなる島状部24は、吸収性材料からなる島状部24の周囲に接着剤で覆われたドレープの第一余白M1を残すように、ドレープ22よりも小さな面積を有する。第一余白M1は、
図1において、互いに等しいかもしれないし、そうでないかもしれない垂直成分と水平成分とを有するように示されている。吸収性材料からなる島状部24が作られる吸収性材料は、超吸収性アクリレートであってもよい。そのような吸収性材料の例としては、商標「VILMED」(米国登録商標)の下で入手可能なハイドロアクティブ創傷パッドが挙げられる。
図2を参照して、所望により、吸収性材料からなる島状部24の皮膚と接触する側に、孔を有するポリウレタンフィルム層70を設けてもよく、これは皮膚および他の組織との親和性が非常に高い。また、ポリウレタンフィルム層70の代わりに、吸収性材料からなる島状部24の皮膚と接触する側にシリコーンコーティングを設けてもよい。
【0021】
シリコーンゲル26は、シリコーンゲルバッキングフィルム78に塗布される。シリコーンゲルバッキングフィルム78は、シリコーンゲル26をドレープ22に固定するようにドレープ22の皮膚に面する表面52と接するポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、または共重合ポリエステルフィルムであってもよい。典型的には、シリコーンはアクリル系接着剤とうまくくっつかず、図示された実施形態では、アクリル系感圧接着剤50がドレープ22に塗布される。シリコーンゲルバッキングフィルム78にシリコーンゲル26を具えることにより、ドレープ22上にアクリル系感圧接着剤50を利用可能にしつつ、シリコーンゲル26は、ドレープ22に対して固定され得る。これにより、組織部位の周囲の皮膚に接することができ、創傷部位の周囲のドレープ22の下に陰圧を得ることができるアクリル系感圧接着剤50のみを有するよりもはるかに高い密閉度をもたらすことができるシリコーンゲル26を手当て用品20に設けることができるという利点が得られる。
【0022】
シリコーンゲル26は、手当て用品20の下を(大気圧に対して)陰圧に維持すべく、手当て用品20のためのシーリングガスケットとして作用してもよい。陰圧創傷治療用途に使用される場合、シーリングガスケットは、以下の機能的特性を有することが望ましい。(1)シーリングガスケットが作られる材料の生体適合性が極めて高いこと。すなわち、それが存在する皮膚に目に見える影響を与えることなく、数日および数週間の間、測定される持続時間にわたって身に付けておくことが可能であること。(2)着用者が日常生活動作を行う際に当該材料が非密閉状態にならないように、当該材料が、皮膚に対して穏やかな接着特性を有すること。および(3)当該材料が、常に「真空」密閉を維持しながら、患者の動きに適応するために可撓性および順応性を有すること。利用可能な生体材料のうち、部品番号PS-1050としてポリマー・サイエンス、インコーポレイテッドから入手可能なゲルなどのシリコーンゲルが、ガスケット候補として特定される。ハイドロゲルのような他の材料は、シーリングガスケットとして機能し得るが、シリコーンゲルのような生体適合性はない。
【0023】
図1に戻って参照すると、シリコーンゲルバッキングフィルム78は、シリコーンゲルバッキングフィルム78およびシリコーンゲル26が吸収性材料からなる島状部24を取り囲むように、中央開口部82がシリコーンゲルバッキングフィルム78に設けられているという点で、フレーム形状を有している。シリコーンゲルバッキングフィルム78は、ドレープ22よりも面積(外形寸法)が小さく、吸収性材料からなる島状部24よりも面積(外形寸法)が大きい。このため、シリコーンゲルバッキングフィルム78がドレープ22に貼付けられたとき、シリコーンゲルバッキングフィルムの周囲には、接着剤で覆われたドレープの第二余白M2が位置する。シリコーンゲル26は、シリコーンゲルバッキングフィルム78に配置され、シリコーンゲル26の周囲に接着剤に覆われたドレープの第二余白M2を残しつつ、吸収性材料からなる島状部24を取囲むように、少なくとも実質的にシリコーンゲルバッキングフィルム78のフレーム形状と一致する。これにより、接着剤に覆われたドレープの第二余白M2は、組織部位の周囲の皮膚に貼付いて手当て用品20を所定の位置に保持することができる。アクリル系感圧接着剤は、気密封止または水密封止に特に適しているというわけではないので、シリコーンゲル26によって適切な密閉度がもたらされ、ドレープ22の下であってシリコーンゲル26によって囲まれる空間内の陰圧が維持される。
【0024】
ドレープ22の開口部60を覆うように、通気性/液体不透過性フィルタ90が設けられてもよい。
図1および
図2に示されるように、通気性/液体不透過性フィルタ90は、ドレープ22の皮膚に面する表面に対して配置されているが、通気性/液体不透過性フィルタ90は、ドレープ22の外面に設けられてもよい。通気性/液体不透過性フィルタ90は、例えば、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のような疎水性材料から作られている。PTFEは、性質上「非粘着性」であるため、接着が困難な材料として知られている。従って、米国オクラホマ州クレアモアのエヌエックスティーナノ、エルエルシー(NXTNano LLC)から入手可能な微孔性膜のような他の疎水性材料を、通気性/液体不透過性フィルタ90に使用してもよい。エヌエックスティーナノ、エルエルシーは、静水頭(hydrostatic head)を14,000mmで維持しつつ、0.4cfmの直接排気(a direct venting)を有するナノファイバーで構成された微孔性膜を提供する。エヌエックスティーナノ、エルエルシーの材料は熱可塑性ポリウレタンであり、これにより、ドレープ22の皮膚に面する表面52上のアクリル系感圧接着剤50を介してドレープ22に貼付けることが容易になる。なお、通気性/液体不透過性フィルタを省略してもよく、吸収性材料からなる島状部24が真空源に運ばれる可能性があるような滲出液で満たされた場合には、手当て用品10が交換されてもよい。
【0025】
剥離ライナー28は、接着剤で覆われたドレープ22の第二マージンM2に沿って、且つ、シリコーンゲル26とともに、ドレープ22に接する。剥離ライナー28はまた、吸収性材料からなる島状部24、より具体的には吸収性材料からなる島状部24のポリウレタンフィルム層70にも接する。このように、剥離ライナー28は、アクリル系接着剤およびシリコーンゲルの両方と良好に作用することが好ましい。しばしば、剥離ライナーはシリコーンコーティングで覆われているが、シリコーンコーティングはシリコーンゲルと相容れないことが多い。これにより、剥離ライナー28がドレープ22、および手当て用品20の他の構成要素から取外されたときに、シリコーンゲルが剥離ライナー28とともに引っ張られる結果となり得る。
【0026】
図示された例では、剥離ライナー28は、ドレープ22のアクリル系感圧接着剤50、並びにシリコーンゲル26および吸収性材料からなる島状部24の適切な表面に接する剥離ライナー28の面をフッ素樹脂剥離コーティング100で覆われている。剥離ライナー28は、片面をフッ素樹脂剥離コーティング100で覆われたポリエステルフィルムであってもよく、これは、シリコーン系接着剤とともに用いられてもよい。この剥離コーティング100はまた、3M社から入手可能な9834TPUテープとともに入手可能であるような、ドレープ22の皮膚に面する表面のアクリル系感圧接着剤50にも適合する。剥離ライナー28は、ドレープ22よりも大きな面積を有し、ドレープ22が創傷部位の周囲の患者の皮膚に貼付けられる前にドレープ22から取外される。
【0027】
手当て用品を組立てる方法を、
図3に示すフロー図、並びに
図1および
図2に示された手当て用品の実施形態を参照して説明する。しかしながら、手当て用品を組立てる方法は、
図1および
図2に示された手当て用品20の実施形態のみに限定されるものではなく、また、特に言及されない限り、ステップが
図3に記載または示された特定の順序に限定されるものでもない。
【0028】
例えば、キャスティングシート30およびドレープ22は、コンバータに設けられた予め製造されたロールとして具えられてもよく、110では、開口部60が、キャスティングシート30およびドレープ22を貫通して形成されてもよい。開口部60は、キャスティングシート30およびドレープ22を貫通して穴を開けられ若しくは切取られてもよいし、または別の方法で設けられてもよい。
【0029】
112では、通気性/液体不透過性フィルタ90が、開口部60を覆ってドレープ22に貼付けられる。通気性/液体不透過性フィルタ90が、アクリル系感圧接着剤50を介してドレープ22の皮膚に面する表面52に貼付けられてもよい。または、通気性/液体不透過性フィルタ90が、皮膚に面する表面52と反対側のドレープ22の表面に貼付けられてもよい。
【0030】
114では、吸収性材料からなる島状部24が、ドレープ22の皮膚に面する表面52に取付けられる。ドレープ22の皮膚に面する表面52には、アクリル系感圧接着剤50が設けられている。このように、吸収性材料からなる島状部24は、吸収性材料からなる島状部24の周囲に接着剤で覆われたドレープの第一余白M1を残してドレープ22の皮膚に面する表面52に貼付けられる。
【0031】
116では、その上にシリコーンゲル26を具えて設けられたシリコーンゲルバッキングフィルム78が、シリコーンゲルバッキングフィルム78の周囲に接着剤で覆われたドレープの第二余白M2を残して吸収性材料からなる島状部24を取り囲むように、ドレープ22の皮膚に面する表面52に取付けられる。上述したように、シリコーンは、通常、アクリル系接着剤には付かない。このように、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレンまたは共重合ポリエステルフィルムから作ることができるシリコーンゲルバッキングフィルム78は、シリコーンゲル26がドレープ22に固定されるように、その上にシリコーンゲル26を具えて設けられる。
【0032】
118では、フッ素樹脂剥離コーティング100で覆われた剥離ライナー28が、接着剤に覆われたドレープの第二余白M2においてアクリル系感圧接着剤50に接するように、またシリコーンゲル26に接するように設けられる。フッ素樹脂剥離コーティング100は、アクリル系感圧粘着剤50とシリコーンゲル26の両方から剥離するように特別に処理されている。
【0033】
122では、キャスティングシート30が、キャスティングシート開口部32を具えるべく、吸収性材料からなる島状部24の周りでハーフカットされる。キャスティングシート30の内側部分が除去され、これにより、一種の窓として機能し得るキャスティングシート開口部32が形成される。ドレープ22は、透明な薄膜から製造されており、これにより、手当て用品20を組織部位に配置する操作者は、手当て用品を配置している間に組織部位を見ることができる。
【0034】
上述したように、シリコーンゲル26はシリコーンゲルバッキングフィルム78に塗布され、シリコーンゲルバッキングフィルム78は、中央開口部82がシリコーンゲルバッキングフィルム78に設けられているという点でフレーム形状を有し、これにより、シリコーンゲルバッキングフィルム78とシリコーンゲル26は、吸収性材料からなる島状部24を取り囲む。中央開口部82を形成するために、シリコーンゲル26及びシリコーンゲルバッキングフィルム78が、フレーム形状を構成する残りの部分から切り取られ、除去されてもよい。124では、シリコーンゲル26およびシリコーンゲルバッキングフィルム78のこの除去された部分が、別個の独立した手当て用品として包装されてもよい。このような手当て用品は、陰圧下にない閉塞性手当て用品として切開部位を覆うのに有用であり、または他の用途に用いられてもよい。
【0035】
図4を参照して、使用時には、手当て用品20は、アクリル系感圧接着剤50が皮膚Sに接触した状態で組織部位の周囲の皮膚Sに当てられる。キャスティングシートに形成されたキャスティングシート開口部32を有し、ドレープ22に取付けられたままのキャスティングシート30とともにドレープ22は、皮膚Sに接してもよい。次いで、キャスティングシート30は、クロスカット36の近くで把持され、ドレープ22から取外されてもよい。ドレープ22が皮膚Sに当てられると、シリコーンゲル26が組織部位を取り囲み、ドレープ22の下で、且つ、シリコーンゲル26によって囲まれる囲まれた体積130が画定される。真空源62は、ドレープ22を介して設けられた開口部60と連通し、真空源62と囲まれた体積130との間を気体が連通する。
【0036】
真空源62は、大気中のガスと反応して、これらのガスを大気から除去するように構成されたリアクタ132または同様の化学ポンプを具えてもよい。例えば、リアクタ132は、囲まれた体積130内のガス圧を約20%減少させるように、囲まれた体積130内の空気から酸素を除去する酸素捕集剤であってもよい。本実施形態の真空源62には、ケミカルポンプが含まれるので、囲まれた体積130の周囲のあらゆる漏れを防止することが重要である。真空源62内のリアクタ132を使い切る可能性のある外部酸素の侵入は、ドレープ22またはシリコーンゲル26を通って、若しくはシリコーンゲル26と皮膚Sとの間のいずれかによる侵入を防止することが重要である。
【0037】
図4において、リアクタ132は、手当て用品20が組織部位の周囲の皮膚Sに貼付けれたときに、ドレープ22の下で、且つ、シリコーンゲル26によって囲まれる囲まれた体積130と流体連通する密閉チェインバ134内に配置されている。ハウジング136によって画定され得る密閉チェインバ134および/または囲まれた体積130と大気との間の圧力差が、標準的な大気圧に対して所定の閾値を超える場合のみ、密閉チェインバ134および/または囲まれた体積130は周囲と連通する。これは、機械的ポンプを介して囲まれた体積から空気を周囲に引き込む機械的ポンプを採用する公知の陰圧システムとは対照的である。機械的ポンプは、通常、システム内の漏れによって、囲まれた体積に入る空気の比較的小さな流れの影響を克服することができるので、これらのシステムにおける漏れはそれほど重大ではない。対照的に、リアクタ132を使用する際の漏れが多すぎると、リアクタ132が消費され、酸素(または空気中に見出される他のガス)を除去することができなくなる。このように、密閉チェインバ134および/または囲まれた体積130は、密閉チェインバ134および/または囲まれた体積130と大気との間の標準的な大気圧に対する圧力差が所定の閾値を超えた場合(-80mmHg~-150mmHgの間であり得る。)にのみ、周囲と連通する。
【0038】
リリーフ弁138は、ハウジング136上に設けられてもよく、または密閉チェインバ134と連通してもよい。圧力差が-150mmHgを超える場合、例えば、大気圧が約760mmHgであって、囲まれた体積130内の圧力が約610mmHgを下回るような場合に、周囲と密閉チェインバ134との間の連通を可能にすべく、リリーフ弁138が開くように設定されてもよい。これは、囲まれた体積130が、機械的なポンプまたは他の機構を用いることによって、相対的な陰圧、例えば約760mmHg未満の圧力に最初に引き下げられ、密閉チャンバ134およびリアクタ132が後に継手64を介して囲まれた体積130と接続される場合に関連し得る。(20%の酸素を有する)空気が囲まれた体積130内にある一方で、囲まれた体積130が大気圧以下の圧力にあるときに、リアクタ132と密閉チェインバ134が囲まれた体積130と接続されている場合、酸素が囲まれた体積から除去されるにつれて、圧力が610mmHg以下に低下することがあり、これは、状況によっては望ましくない場合があるため、リリーフ弁138が設けられてもよい。
【0039】
シリコーンゲル26は、単にアクリル系接着剤単独よりも良好な密閉をもたらす。それにもかかわらず、シリコーンゲルおよび接着剤は、典型的には、シリコーンゲルがアクリル系接着剤にくっつかないという点で、ともに良好に作用しない。このように、シリコーンゲルバッキングフィルム78は、シリコーンゲルバッキングフィルム78がドレープ22に対して固定されるように、シリコーンゲル26とドレープ22の皮膚に面する表面のアクリル系感圧接着剤50との間に設けられてもよい。
【0040】
さらに、
図1および
図2で視認される剥離ライナー28は、ドレープ22が皮膚Sに触れる前に、ドレープ22の皮膚に面する表面52から剥離ライナー28が除去される。上述したように、剥離ライナー28は、フッ素樹脂剥離コーティング100で覆われ、これは、ドレープ22の皮膚に面する表面52のアクリル系感圧接着剤50からの除去だけでなく、シリコーンゲル26および吸収性材料からなる島状部24のポリウレタンフィルム層70からの除去にも適している。
【0041】
上述したように、吸収性材料からなる島状部24は、手当て用品20が組織部位の周囲の皮膚Sに貼付けられたとき、囲まれた体積130内に設けられる。さらに、吸収性材料からなる島状部24から真空源62に向かって手当て用品20の外に出る滲出液のような液体の移動を防止すべく、開口部60およびドレープ22を覆うように、通気性/液体不透過性フィルタ90が設けられてもよい。
【0042】
手当て用品および手当て用品を製造するための工程が、特に上記の詳細な説明に記載されている。修正および変更が、前記の詳細な説明を読んで理解した上で生じることがあり得る。しかしながら、本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではない。その代わりに、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって広く範囲が定められる。上述した実施形態の様々な実施形態、および他の特徴および機能、またはそれらの代替物または変種が、好ましくは、他の多くの異なるシステムまたはアプリケーションに結合され得ることが理解されるであろう。また、現在予測されていない、または予期されていない様々な代替、修正、変形、または改良が、当業者によって後になされ得ることもまた、以下の特許請求の範囲に包含されることを意図している。